説明

水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤

【課題】水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の水温による溶出速度の差を縮めることによって、温水と冷水での持ち回数の差が小さく、季節や地域によらず安定な溶出特性を有する水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を提供する
【解決手段】金属イオン担持ゼオライトを0.5〜20重量%含有することを特徴とする水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量の金属イオン担持ゼオライトを含有する水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗トイレ用の洗浄剤は、主に、貯水タンクの上部の手洗い部分に収容容器と共に設置して使用されるオンタンク用の洗浄剤と、貯水タンク内に浸漬して使用されるインタンク用の洗浄剤の2つのタイプに分類される。これらの内、オンタンク用の洗浄剤は、設置が容易である、洗浄剤の残存量を容易に確認できる、香料の配合によって芳香効果をも付与できる等の使用上の利点があり、今日では広く流通している。
【0003】
オンタンク用の洗浄剤には、その基本性能として、優れた洗浄特性と溶出特性を兼ね備えることが必要とされる。前者の特性、即ち洗浄特性は、トイレ便器にフラッシュされる水に、優れた洗浄作用を付与する特性であり、洗浄剤として不可欠なものである。また、後者の特性、即ち溶出特性は、寒暖の差があっても、洗浄用の水との短時間の接触で所望量の洗浄成分を安定に溶出させるという特性であり、温度の影響を受けることなく一年を通して安定な洗浄効果を付与する上で必須とされるものである。このような特性は、水洗トイレオンタンク用の洗浄剤に不可欠である。すなわち、水洗トイレオンタンク用の洗浄剤の溶出特性は、寒暖の差の影響を受けにくいことが望ましく、一年を通して溶出速度が安定している、もしくは一定であることが求められる。従来、水洗トイレオンタンク用洗浄剤として、上記洗浄特性及び溶出特性に着目して、種々の処方が検討、開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−273483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のような背景から、本発明は、水温による影響をうけにくく、温水と冷水での持ち回数の差が小さいため、季節や地域によらず安定な溶出特性を有する水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を行ったところ、トイレ用固形洗浄剤に所定量の金属イオン担持ゼオライトを配合することによって水温による溶出速度の差(すなわち持ち回数の差)を小さくすることができることを見出した。また、本発明者らは、金属イオン担持ゼオライトに加えて有機酸塩、無機酸塩等のビルダーを配合することによって、さらに安定した溶出特性を付与できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げる水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤である:
項1.金属イオン担持ゼオライトを0.5〜20重量%含有することを特徴とする水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項2.さらに有機酸塩及び無機酸塩のいずれか少なくとも1種のビルダーを含有する項1に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項3.前記ビルダーが無機酸塩である項2に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項4.前記ビルダーが硫酸塩及び炭酸塩のいずれか1種である項2又は3に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項5.前記ビルダーが少なくとも硫酸ナトリウムを含むものである項2〜4のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項6.前記ビルダーの配合割合が、15〜60重量%である項2〜5のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項7.前記金属イオン担持ゼオライトに担持される金属イオンが、少なくとも銀イオン及び亜鉛イオンのいずれか一方を含む項1〜6のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項8.前記金属イオン担持ゼオライトとビルダーの配合比率が、金属イオン担持ゼオライト1重量部に対して、0.01〜420重量部である項2〜7のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項9.さらに界面活性剤を含有する項1〜8のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項10.前記界面活性剤が、少なくともアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤のいずれか一方を含む項9に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項11.混練成型物である、項1〜10のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
項12.金属イオン担持ゼオライトを含む原料を混練成型する工程を含む、金属イオン担持ゼオライトを含有する水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の製造方法。
項13.金属イオン担持ゼオライトを0.5〜20重量%含有する水洗トイレオンタンク用固形組成物の水洗トイレオンタンク用洗浄剤の製造のための使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温水と冷水での持ち回数の差が小さく、溶出速度が安定な水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を得ることができる。従って、本発明の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤は、季節や地域による寒暖の差の影響を受けにくく、一年を通じて一定の溶出特性を保持することができる。
【0008】
また、本発明のトイレ用固形洗浄剤の製造方法は、混練成型によって固形状に成型することを特徴とする。このようにして得られる固形洗浄剤は、固体の形状を保持しつつ、オンタンク式洗浄剤として用いた場合、水圧によって崩壊がコントロールされやすい、適度な硬度を有するものである。
【0009】
このような本発明の固形洗浄剤は、例えば、全量約25gの固形洗浄剤の場合、持ち回数が25℃の水温で約400〜600回、5℃の水温で約500〜800回であり、水温差(例えば25℃と5℃)による持ち回数の差を約300回以下、好ましくは約200回以下と小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤>
本発明の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤は、所定量の金属イオン担持ゼオライトを含有することを特徴とする。また、本発明の固形洗浄剤は、水洗トイレのオンタンク用の洗浄剤(即ち、水洗トイレの手洗い部分に設置して使用される洗浄剤であり、水洗トイレにおいて水の供給流路に設置される洗浄剤)として用いられる。本発明の固形洗浄剤を水洗トイレオンタンク用洗浄剤として使用する場合、当該固形洗浄剤は、そのまま水洗トイレの手洗い部分に設置して使用してもよいが、通常、容器に収容した状態で、水洗トイレの手洗い部分に設置して使用される。以下、本発明の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の各成分について説明する。
【0011】
(i)金属イオン担持ゼオライト
本発明において使用される金属イオン担持ゼオライトは、金属イオンがゼオライト(zeolite:アルミノケイ酸塩)にイオン交換反応によって担持されたものである。
【0012】
ゼオライトとしては、天然ゼオライト(沸石と呼ばれることがある)や、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、P型ゼオライト、X型ゼオライト等の人工ゼオライト等、各種ゼオライトを用いることができる。
【0013】
ゼオライトに担持される金属イオンとしては、銀イオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、錫イオン、鉄イオン、ニッケルイオン、白金イオン、金イオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオン及び銅イオンのうちの少なくとも1つとすることができ、好ましくは銀イオン、亜鉛イオン、より好ましくは銀イオンである。
【0014】
上記ゼオライトには、これらの金属イオンから選択される1種類の金属イオンを担持させてもよいが、2種以上の金属イオンを担持させることもできる。加えて、本発明では、金属イオン担持ゼオライトを1種単独で使用してもよいが、2種以上の金属イオン担持ゼオライトを組み合わせて用いても良い。
【0015】
金属イオンは、金属イオン担持ゼオライト中に、金属イオンとして通常0.01〜20重量%程度、好ましくは0.1〜15重量%程度、より好ましくは1〜10重量%程度の比率で担持されている。例えば、金属イオンが銀イオンの場合、銀イオンとして0.1〜15重量%程度の範囲であることが好ましい。また、金属イオンが亜鉛イオンの場合、亜鉛イオンとして0.1〜20重量%程度、好ましくは0.1〜10重量%程度の範囲である。
【0016】
また、2種以上の金属イオン担持ゼオライトを組み合わせて用いる場合、金属イオン担持ゼオライト総量中の各金属イオンの含有比率としては、特に限定されず、適宜設定され得る。例えば、金属イオン担持ゼオライトとして銀イオン担持ゼオライトと亜鉛イオン担持ゼオライトを併用する場合、金属イオンの重量に換算した比率としては、銀イオン1重量部に対して亜鉛イオン0.005〜100重量部程度、好ましくは0.05〜80重量部程度、より好ましくは0.5〜20重量部程度である。従って、2種以上の金属イオン担持ゼオライトを併用する場合は、上記各金属イオンの含有比率を参考に適宜配合量を設定することができる。
【0017】
本発明の固形洗浄剤において、上記金属イオン担持ゼオライトの配合割合は、他の配合成分の種類や配合割合等に応じて適宜設定すればよいが、一例として、該固形洗浄剤の総量に対して、上記金属イオン担持ゼオライトが0.5〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは2〜10重量%となる割合が挙げられる。
【0018】
また、簡便には、上記のようなゼオライトを商業的に入手することもできる。下記表1に、市販されている銀イオン及び亜鉛イオンの両方を担持するゼオライトとして、商品名:ゼオミック、品番:AJ10N、株式会社シナネンゼオミックの物性の一例を示す。
【0019】
【表1】

【0020】
また、他の商品として、株式会社シナネンゼオミック製の商品名:ゼオミック、品番:AG10N(表1に示される組成においてMがAg);商品名:ゼオミック、品番:ZA10N(表1に示される組成においてMがZn)等が挙げられ、これらのゼオライトの物性(性状、真比重、嵩比重、平均粒径、pH)は上記表1に記載されるAJ10Nの物性と同等である。
【0021】
前記金属イオン担持ゼオライトを所定量配合することによって、水温による溶出特性の変動が小さい水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を得ることができる。
【0022】
(ii)界面活性剤
本発明の固形洗浄剤は、通常、上記金属イオン担持ゼオライトと共に洗浄特性を付与するために界面活性剤を含有する。本発明において使用される界面活性剤としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、カチオン界面活性剤としては、例えばアルキル(C6〜C20)トリメチルアンモニウム塩,ジアルキル(C6〜C20)ジメチルアンモニウム塩、及びアルキル(C6〜C20)ジメチルベンジルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アルキル(C6〜C20)アミン塩、アルキル(C6〜C20)アミンエチレンオキサイド付加物、アルキルピリジニウム等が挙げられ、好ましくはジメチルベンジルアンモニウム塩である。
【0023】
アニオン界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルサルコシン塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−グリセリンモノアルキルエーテル−α′−スルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−アシル−α′−スルホニルジグリセリド塩、N−アシルメチルタウリン塩、脂肪酸イソプロパノールアミド硫酸エステル塩及びN−アシルグルタミン酸ナトリウム並びにこれらのカリウム塩及びリチウム塩等が挙げられ、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルサルコシン塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩であり、より好ましくはα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムである。
【0024】
非イオン界面活性剤としては、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アルカノールアミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンのブロック共重合体(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイドのブロック共重合体、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド・ブチレンオキサイドの共重合体)、グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪族エステル、ソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、多価アルコールのヒドロキシアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられ、好ましくは高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシアルキレンのブロック共重合体であり、より好ましくは、ポリオキシアルキレンのブロック共重合体である。
【0025】
上記界面活性剤を1種単独で用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、好ましくは上記アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤の中から選択された界面活性剤を少なくとも1種以上用いる。
【0026】
上記界面活性剤の配合量は、本発明の固形洗浄剤に良好な洗浄性を付与し、且つ本発明の効果を損なわない量であれば特に限定されないが、通常、10〜80重量%程度、好ましくは20〜60重量%程度、より好ましくは30〜50重量%程度である。
【0027】
通常、上記界面活性剤を配合することによって、水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤は、溶出特性が不安定になりがちであるが、本発明の固形洗浄剤は前記(i)金属イオン担持ゼオライトや下記の(iii)ビルダーを配合することによって、安定した溶出特性を付与することができる。特に、ポリオキシアルキレンブロックポリマーを界面活性剤として用いた場合には、温度差によって溶出特性が不安定化する傾向が大きいが、本発明は特に金属イオン担持ゼオライトとして銀イオン担持ゼオライト、下記ビルダーとして硫酸ナトリウムを組み合わせることによって、温水であっても冷水であっても、溶出特性をさらに安定に保つことができる。
【0028】
(iii)ビルダー
本発明の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤にビルダーを配合することによって、さらに安定した溶出特性を付与することができる。本発明において使用されるビルダーは、有機酸塩及び無機酸塩から選択される。本発明において使用される有機酸塩としては、所望の効果を得られる限り特に限定されないが、例えばクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、グリコール酸、アスコルビン酸等のアルカリ金属塩が挙げられ、好ましくはクエン酸のアルカリ金属塩である。
【0029】
また、無機酸塩としては、所望の効果が得られる限り特に限定されないが、具体的には、アルカリ金属の塩化物、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩等が挙げられ、好ましくは炭酸塩、硫酸塩が使用できる。このような無機酸塩としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ砂等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属の硫酸塩及びアルカリ金属の炭酸塩であり、より好ましくは硫酸ナトリウムである。
【0030】
上記ビルダーの中でも本発明の効果をより一層顕著に現すものとして、硫酸ナトリウムが挙げられる。上記有機酸塩及び無機酸塩を1種単独で用いることもできるが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明の固形洗浄剤にビルダーを配合する場合、総量で1〜83.5重量%程度、好ましくは15〜60重量%程度、より好ましくは20〜60重量%程度、さらに好ましくは30〜50重量%程度である。
【0032】
ビルダーを15重量%以上配合することによって、温水と冷水での持ち回数の差をより小さくすることができ、特に混練成型によって固形洗浄剤を製造する際に良好な保型性を付与することができることから、実用上及び生産上、十分適した固形洗浄剤を得ることができる。
【0033】
ビルダーと金属イオン担持ゼオライトの配合比率は上記配合割合を満たす限り適宜設定され得るが、例えば金属イオン担持ゼオライト1重量部に対してビルダー0.01〜420重量部程度、好ましくは0.1〜400重量部程度、より好ましくは0.5〜200重量部程度、さらに好ましくは1〜100重量部程度である。
【0034】
ビルダーとして硫酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムを使用する場合、上記配合割合を充足し、且つ、金属イオン担持ゼオライト1重量部に対して硫酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムを0.5〜400重量部程度、好ましくは1〜200重量部程度、より好ましくは1〜100重量部程度、さらに好ましくは1.25〜100重量部程度、特に好ましくは1.25〜89重量部程度配合する。
【0035】
本発明の好ましい実施態様としては、ビルダーとして硫酸ナトリウム、金属イオン担持ゼオライトとして銀イオン担持ゼオライト若しくは亜鉛イオン担持ゼオライト、又はこれら金属イオン担持ゼオライトの混合物、あるいは銀イオン及び亜鉛イオンの両方を担持したゼオライトを用いる。各成分の配合量は、上記配合比率に基づいて適宜設定することができる。
【0036】
(iv)その他の成分
本発明の固形洗浄剤には、使用時にトイレ便器にフラッシュされる水(使用後のトイレ便器を洗浄するために流される水)に着色する目的で公知の着色剤を配合することができる。本発明に使用される着色剤としては、特に限定されないが、例えば青色1号、青色2号、青色3号、青色205号、黄色3号、黄色4号、黄色202号の(1)、黄色203号、赤色105号、赤色106号、赤色2号及び赤色3号等が例示される。
【0037】
前記着色剤の配合量は色調に応じて適宜設定され得るが、例えば、本発明の固形洗浄剤の総量に対して0.5〜30重量%程度、好ましくは1〜20重量%程度、より好ましくは1〜15重量%程度である。
【0038】
さらに、上記成分に加え、本発明の固形洗浄剤に着色する目的で顔料を配合することができる。本発明の固形洗浄剤に配合される顔料としては、有機顔料又は無機顔料のいずれであってもよい。また、白色顔料又は有色顔料の別も問うものではなく、固形洗浄剤に付与する色調に応じて適宜選択すればよい。無機顔料の具体例としては、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム及びその水和物、酸化鉄、硫化カドミウム、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛、カーボンブラック等が例示される。有機顔料としては赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色220号、赤色221号、橙色203号、橙色204号、黄色205号、赤色404号、赤色405号、黄色401号、青色404号等が例示されるが、これらに限られるものではない。
【0039】
本発明の固形洗浄剤に顔料を配合する場合、その配合割合としては、例えば、該固形洗浄剤の総量に対して、顔料が0.05〜2重量%、好ましくは0.05〜1.5重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%が挙げられる。
【0040】
本発明の固形洗浄剤には、上記成分に加えて、更に必要に応じて、上記以外のビルダー、酵素、殺菌剤、キレート剤、香料、消臭剤、油性成分の乳化可溶化剤、増量剤、溶解性調整剤、漂白剤、撥水剤、親水剤、充填剤、pH調整剤、増粘剤、成形性向上剤、滑沢剤、緩衝剤等の添加剤を適量含むことができる。
【0041】
本発明に使用されるビルダーとしては、前記以外の当該技術分野において使用される化合物を用いることができ、具体的には、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ブドウ糖、ショ糖、果糖、乳糖、カラギーナン、ジェランガム、グァーガム、タマリンドガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ソルビトール、澱粉、高級アルコール等が例示される。
【0042】
本発明に使用される酵素としては、具体的には、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナーゼ等が例示される。
【0043】
本発明に使用される殺菌剤としては、具体的には、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ジデシルジメチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、セチルピリジニウム塩、ベンゾイソチアゾリンなどの複素環化合物、酸化銀、銀含有の水溶性ガラス、銀を担持させたゼオライト等の銀化合物、その他金属化合物等が例示される。
【0044】
本発明に使用されるキレート剤としては、具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、及びそれらの塩等が例示される。
【0045】
<水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の製造方法>
本発明の固形洗浄剤は、上記配合成分を所定量混合し、所定の形状に成形することによって製造される。本発明の固形洗浄剤は、使用簡便性、美観等の観点から、1成型物当たり10〜40g程度、好ましくは20〜30g程度となるように成形することが望ましい。
【0046】
本発明の固形洗浄剤は、固形洗浄剤の分野で一般に利用される方法によって製造でき、特に限定されないが、例えば、上記配合成分を所定量混合して得られた混練物を各種成型処理に供して成型物を得ることができる。成型処理としては、例えば、得られた混練物をプレス又は打錠等によって成型する混練打錠成型法;混練機にて上記配合成分を混練しつつ押し出し、該混練機の吐出部まで押し出された混練物をカット機でカットして成型する混練押出成型法等が挙げられる。成形処理に供する際には、必要に応じて、結合剤、滑沢剤等を配合することができる。
【0047】
本発明の固形洗浄剤としては、混練成型物であることが好ましい。混練成形によって得られた固形洗浄剤は、固体の形状を保持するために必要な硬度を有しつつ、水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤として好適な崩壊特性をも有するものである。
【0048】
本発明の固形洗浄剤は、これらの特性を満たすために、通常200g以上、好ましくは400g以上、より好ましくは600g以上の硬度を有することが望ましい。ここでいう硬度は、固形洗浄剤作製24時間後における、レオメーター(SUN RHEO METER CR−500DX;株式会社サン科学製)により、検体温度25℃、感圧軸(アダプター)の針径3mmφ、針入速度60mm/minにおいて、感圧軸を4.5mmまで検体に押し込む際に感圧軸にかかる荷重(g)である。
【0049】
前記硬度を有する本発明の固形洗浄剤を得るため、例えば、打錠成形を行う場合、その打錠圧は、前記硬度に基づいて適宜設定され得るが、通常100〜1000kgf/cm程度の範囲が適宜用いられ、洗浄剤の形を整える程度であれば、100kgf/cm程度以上を用いれば十分である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下特に記載しない限り、組成物中の各成分の単位は重量%である。
【0051】
1.水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の製造
下記表3及び4に示す組成の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤(実施例1〜8及び比較例1〜5、直径30mmの円柱状、1個当たり25g)を調製した。具体的には、配合成分の内、粉体成分の所定量をヘンシェルミキサ−(三井三池工業株式会社製)にて約3000rpmで10秒程度撹拌し、次いで、残りの配合成分(液体成分)の所定量を添加して、再度10秒程度撹拌した。得られた混合物1kgを混練機(栗本鉄工株式会社製、S1−KRCニ−ダ−)にて、96rpmの速度で直径約20mmの円柱状に練り出した。得られた円柱状の混練物を25g単位で取りだし、油圧打錠機(理研精機株式会社製)にて打錠圧100kgf/cm2で直径30mmの円柱状に打錠成型して、水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を製造した。
【0052】
2.水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の性能評価(1)
得られた水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を、水洗トイレオンタンク用の固形洗浄剤として用いて、下記の評価試験を行った。
【0053】
[溶出速度の評価試験]
水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を、オンタンク用芳香洗浄剤容器(小林製薬株式会社製「ブルーレットおくだけ ブーケの香り」本体容器:花形容器)に収容し、家庭用水洗トイレのロ−タンク(貯水量:10リットル、東陶機器株式会社製 TOTO S721B)手洗い部に取り付けた。ロ−タンクへのトイレタンク手洗い部からの流入水の温度を25℃又は5℃に維持し、流入水の流速は50mL/秒に調整し、タンクの満水時間(トイレの水を水流「大」のレバーで4秒間フラッシュした後、タンクへの水の貯水が終了するまでの時間)を60秒になるように調整し(結果的に、1フラッシュ当たりのトイレタンク手洗い部からの総流水量は3Lになる。)、それぞれ1時間に1回の割合で水流「大」のレバーを自動的に4秒間フラッシュするように設定して、水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤が無くなるまでのフラッシュ回数を計測した。ここで、流入水の温度25℃は夏場の使用条件を、また流入水の温度5℃は冬場の使用条件を想定している。
【0054】
測定されたフラッシュ回数から、下記表2に示される判定基準に従って溶出速度の評価を行った。なお、本試験において、フラッシュ回数が350回以上であれば、通常約1ヶ月の使用に耐え得ると想定されている。
【0055】
【表2】

【0056】
本試験例において、上記評価基準の2〜4点を水温による影響を受けにくく、一定の溶出特性を有する固形用洗浄剤とした。なお、上記評価基準において2点は、固形用洗浄剤として実用上問題のないレベルである。
【0057】
3.評価結果
得られた結果を下記表3及び4に表す。なお下記表3及び4において、ゼオミックAJ10Nは、銀イオンと亜鉛イオンの両方を担持するゼオライトである。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
表3及び4に示される結果から、金属イオン担持ゼオライトを配合しない場合(比較例1〜3)は、上記基準を満たさず、一定の溶出特性を保持できないことが示された。一方、金属イオン担持ゼオライトの配合量が0.5〜20重量%であって、金属イオン担持ゼオライトを1重量部とした場合の硫酸ナトリウムの配合比率が1.25〜89重量部である場合、冷水(5℃)と温水(25℃)の持ち回数の差が約40〜250回であり、良好な溶出特性が維持されていることが示された(実施例1〜8)。
【0061】
さらに、金属イオン担持ゼオライトの配合量が0.5〜10重量%であって、金属イオン担持ゼオライトを1重量部とした場合の硫酸ナトリウムの配合比率が3.5〜89重量部である場合、冷水(5℃)と温水(25℃)の持ち回数の差が約40〜180回であり、より顕著に優れた溶出特性が維持されていることが示された(実施例1〜4、6及び7)。
【0062】
以上より、本発明の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤によれば、水温によるフラッシュ回数の差を縮められることが示された。
【0063】

4.水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の性能評価(2)
上記『1.水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の製造』の記載に従って実施例9〜11を調製し、得られた水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤を水洗トイレオンタンク用の固形洗浄剤として用いて、上記『2.水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の性能評価』に記載される評価試験方法に従って溶出速度の評価を行った。結果を下記表5に示す。なお、下記表5中、ゼオミックAJ10Nは、銀イオンと亜鉛イオンの両方を担持するゼオライトであり、ゼオミックAG10Nは銀イオンのみを担持するゼオライトであり、ゼオミックZA10Nは亜鉛イオンのみを担持するゼオライトである。
【0064】
【表5】

【0065】
上記表5に示される結果より、銀イオンのみを担持するゼオライトを用いた固形洗浄剤(実施例9)についても、銀イオンと亜鉛イオンの両方を担持するゼオライトと同程度の溶出性能を示すことが示された。
【0066】
また、亜鉛イオンのみを担持するゼオライトを用いた固形洗浄剤(実施例10)については、実施例3や実施例9よりもやや劣る結果が示された。しかしながら、実施例10の溶出性能は、実用レベルとして問題はなく、亜鉛イオン担持ゼオライトを用いた場合であっても本願発明の効果を十分に奏し得る固形洗浄剤が得られることが示された。
【0067】
さらに、硫酸ナトリウムをビルダーとして使用する実施例3と炭酸ナトリウムをビルダーとして使用する実施例11の結果を比較すると、ビルダーとして炭酸ナトリウムを添加するよりも、硫酸ナトリウムを添加する方がさらに水温によるフラッシュ回数の差を小さくでき、本願発明の効果をより一層顕著に奏し得ることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン担持ゼオライトを0.5〜20重量%含有することを特徴とする水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項2】
さらに有機酸塩及び無機酸塩のいずれか少なくとも1種のビルダーを含有する請求項1に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項3】
前記ビルダーが無機酸塩である請求項2に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項4】
前記ビルダーが硫酸塩及び炭酸塩のいずれか1種である請求項2又は3に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項5】
前記ビルダーが少なくとも硫酸ナトリウムを含むものである請求項2〜4のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項6】
前記ビルダーの配合割合が、15〜60重量%である請求項2〜5のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項7】
前記金属イオン担持ゼオライトに担持される金属イオンが、少なくとも銀イオン及び亜鉛イオンのいずれか一方を含む請求項1〜6のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項8】
前記金属イオン担持ゼオライトとビルダーの配合比率が、金属イオン担持ゼオライト1重量部に対して、0.01〜420重量部である請求項2〜7のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項9】
さらに界面活性剤を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項10】
前記界面活性剤が、少なくともアニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤のいずれか一方を含む請求項9に記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項11】
混練成型物である、請求項1〜10のいずれかに記載の水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤。
【請求項12】
金属イオン担持ゼオライトを含む原料を混練成型する工程を含む、金属イオン担持ゼオライトを含有する水洗トイレオンタンク用固形洗浄剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−30036(P2009−30036A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168139(P2008−168139)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】