説明

水溶性β−ヒドロキシニトリルの製造

水溶性β−ヒドロキシニトリルの製造方法。1,2−エポキシドと無機シアン化物塩とを水性メタノールを有する溶剤及びバッファー中で反応させ、β−ヒドロキシニトリルを生成させる。このバッファーはβ−ヒドロキシニトリル以外の反応生成物の生成を実質的に抑制する。場合により、水はアセトニトリルとの共沸蒸留によってβ−ヒドロキシニトリルから除去され、次いで、真空蒸留及びろ過によって精製されてよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は水溶性β−ヒドロキシニトリルの製造方法に関する。本発明は、より詳細には、末端1,2−エポキシドと無機シアン化物とからのβ−ヒドロキシニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術の記載
β−ヒドロキシニトリルはシアン化物又はシアン化物同等物とエポキシドとの開環反応により製造できる。末端エポキシドの開環反応には溶剤としてメタノールが一般に使用される。というのは、幾つかのシアン化物、特にシアン化カリウムはその中に適度に可溶性であるからである。しかしながら、メタノールを使用するときの問題は、所望しない副生成物を生成する副反応が生じる可能性があることである。末端エポキシドとシアン化カリウムとの反応時に、β−ヒドロキシニトリルのカリウムアルコキシドが生成される。カリウムアルコキシドは非常にアルカリ性であり、残りのシアン化物とともに、反応生成物混合物を非常にアルカリ性にする。カリウムアルコキシドは、その後、メタノールと反応してカリウムメトキシドを生成することがあり、その後、それがエポキシドと反応して、所望されない副生成物であるメチルエーテルを生成することがある。
【0003】
メタノールを溶剤として使用した場合の所望されない副反応の問題を解決するために従来技術で使用されている1つの手段は酸性反応条件とすることで生成物混合物のアルカリ性を低下させることである。しかしながら、これは酸性条件が急騰又は加速した開環反応速度をもたらすとともに、産業上の衛生及び安全面の問題をもたらすことがあるので問題となる。
【0004】
遭遇する別の問題は、反応性生物混合物からの水溶性β−ヒドロキシニトリルの分離である。非水溶性β−ヒドロキシニトリルの分離は問題にならない。というのは、伝統的な抽出及びクロマトグラフィー技術を用いることができるからである。しかしながら、このような伝統的な抽出技術は水溶性β−ヒドロキシニトリルでは有用でない。というのは、残存したシアン化物又はシアン化物塩も水溶性であり、水溶性β−ヒドロキシニトリルをこれらから分離することができないからである。
【0005】
製品の色も幾つかの水溶性β−ヒドロキシニトリル、特に3−ヒドロキシバレロニトリルの製造の間に遭遇する別の問題である。β−ヒドロキシニトリルがエポキシドとシアン化カリウムの開環反応により製造されるときに、濃い色の精製油は蒸留時に得られる。使用に適するように、濃い色の蒸留物油を精製してさらに不純物を低減して、より薄い色又は実質的に無色の油としなければならない。従来のプロセスから濃い色の油をさらに精製することは慣用の蒸留技術によるのは難しい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
末端1,2−エポキシドと無機シアン化物との開環反応によるβ−ヒドロキシニトリルの製造方法の改良法が存在することが望ましい。所望されない副生成物が低減され又は無くされる方法が存在することがさらに望ましい。シアン化物塩又は残存シアン化物から水溶性β−ヒドロキシニトリルを分離することができる方法が存在することがさらに望ましい。得られる蒸留物油の色が薄い、たとえば、3−ヒドロキシバレロニトリルの場合に薄い黄色であるβ−ヒドロキシニトリルの製造方法が存在することがさらになお望ましい。開発又は商業規模に容易に適合されうるβ−ヒドロキシニトリルの製造方法が存在することがさらになお望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明によると、水溶性β−ヒドロキシニトリルの製造方法が提供される。この方法はバッファーとともに水性有機溶剤中において1,2−エポキシドと無機シアン化物塩とを反応させてβ−ヒドロキシニトリルを生成させることを含む。このバッファーはβ−ヒドロキシニトリル以外の反応生成物の生成を少なくとも部分的に抑制する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましい態様の詳細な説明
所望されない副生成物の発生率を低減し又は無くして、末端1,2−エポキシドと無機シアン化物との開環反応によってβ−ヒドロキシニトリルが製造されうることが驚くべきことに発見された。水溶性β−ヒドロキシニトリルがシアン化物塩及び残存シアン化物から分離されうることも驚くべきことに発見された。3−ヒドロキシバレロニトリルを有する反応生成物混合物は従来の方法により得られる反応生成物混合物よりも薄い色、すなわち、薄い黄色でもって直接的に得ることができることも驚くべきことに発見された。
【0009】
1つの態様において、本方法はβ−ヒドロキシニトリル以外の反応生成物の生成を実質的に抑制するバッファーを用いる。バッファーはエポキシド開環反応の間に発生されるアルコキシドをプロトン化しそしてアルコキシドとメタノールとの間の副反応を抑制することができる。バッファーはアルコキシドをプロトン化するために十分に酸性でなければならないが、開環反応を過度に促進し又は他のプロセス制御及び/又は衛生上の問題を生じるほど酸性ではない。バッファーは好ましくはpKaが約9.1〜約13であり、最も好ましくは約10〜約12である。適切なバッファーは、無機バッファー、たとえば、重炭酸ナトリウム又は重炭酸カリウム、及び、有機バッファー、たとえば、フェノール、スクシンイミド、ベンゼンスルホンアミド、及び、それらの組み合わせを含む。好ましいバッファーは重炭酸ナトリウムである。
【0010】
場合により、本発明はアセトニトリルとともに行なう共沸蒸留を用いて、β−ヒドロキシニトリルを有する反応生成物混合物から少なくとも一部分の又は実質的に全ての水を除去することができる。蒸留を行なうために、生成物混合物中で水との共沸混合物を形成するための特定の割合でアセトニトリルを生成物混合物に加え、すなわち、ブレンドする。共沸蒸留の間に得られる水とアセトニトリルとの相対比は生成物混合物の組成によって変わるであろうが、通常、大気圧で、約15wt%〜約17wt%の水と、約83wt%〜約85wt%のアセトニトリルであろう。沸騰又は蒸留の共沸温度は、通常、大気圧で、約76℃〜約82℃であろう。他の有用な共沸物はトルエン、アセトン及び2−ブタノン(メチルエチルケトン)を含む。
【0011】
生成物の回収を補助しそして溶剤、不純物及び副生成物を除去するために、他の従来の蒸留プロセスを本方法において用いてもよい。蒸留は大気圧、高圧又は減圧下もしくは真空下で用いられてよい。
【0012】
さらに、場合により、本方法は反応混合物及び/又は生成物混合物を精製するためにろ過を用いてよい。ろ過は、反応/生成物混合物から沈殿する種々の無機塩を除去するために、蒸留操作の間又は蒸留操作の後に1回又はそれ以上の回数で行なってよい。無機塩は主として化学的にバッファーに関連している。好ましい方法において、エポキシドに対して若干不足のシアン化物が用いられ、そのため、通常、シアン化物塩に化学的に関連した塩は、あったしても、殆どない。どのような従来のろ過媒体を用いてもよく、たとえば、ろ紙、布及びシリカゲルであって、無水硫酸ナトリウムを伴って又は伴わないで用いてよい。シリカゲル及び無水硫酸ナトリウムはろ過媒体及び乾燥剤の2つの機能を有する。ろ過は真空又は圧力による援助を伴っても、又は、援助なしでもよい。ろ過の後に、場合により、ろ過媒体は実質的に全ての生成物が回収されるように塩化メチレンなどの適切な溶剤によって洗浄されてよい。
【0013】
生成物は油の形を取る。本方法の利点は、所望の純度によって、薄い又は無色の高純度の生成物油を得ることができることである。この生成物油は、従来の方法を用いて得られる濃く、重い油とは対照的である。
【0014】
好ましい方法において、水を除去するための1回以上の共沸蒸留、メタノール及び1,2−エポキシドを除去するための1回以上の従来の蒸留、無機塩を除去するための蒸留と蒸留との間の1回以上のろ過によって反応混合物は精製される。反応混合物の共沸蒸留は、通常、薄い黄色の生成物油を生じさせる。油を無色にするために従来の蒸留を用いてもよい。たとえば、約3トル以下で行なわれる真空蒸留、特に、たとえば、約0.5トル以下で行なわれる高真空蒸留は高純度の生成物を得るために特に有用である。生成物自体が蒸留され、凝縮されそして回収される高真空蒸留は特に有用である。
【0015】
本方法は、様々な水溶性生成物のβ−ヒドロキシニトリルを製造するのに有用である。適切なβ−ヒドロキシニトリルは以下の反応シーケンスにおける生成物に対応するものである。
【0016】
【化1】

【0017】
上式中、R及びRは、独立に、水素、又は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フェニル、(CHX、COR、CO、又は、S(O)基であり、そしてXは独立にフェニル、COR、CO、S(O)、OR、NR又はN(O)R基であり、そしてR及びRは独立に、水素又はメチル又はエチル基であり、そしてnは独立に1又は2であり、mは独立に0、1、2又は3である。
【0018】
生成物のβ−ヒドロキシニトリルはラセミ体又は鏡像異性体が豊富にあるか又は純粋であってよい。好ましい生成物のβ−ヒドロキシニトリルは、R及びRが独立に、水素、又は、メチル、エチル、(CHX、COR、CO、又はS(O)基であり、Xが独立に、COR、CO、S(O)、OR、NR、又は、N(O)R基であり、R及びRが独立に水素又はメチル基であり、nが1であり、そしてmが独立に0、1、2又は3である構造を有する。より好ましい生成物のβ−ヒドロキシニトリルは、R及びRが独立に、水素、又は、メチル、エチル、(CHX基であり、Xが独立に、COR、CO、S(O)、OR、NR基であり、R及びRが独立に水素又はメチル基であり、nが1であり、そしてmが独立に0、1、2又は3である構造を有する。最も好ましい生成物のβ−ヒドロキシニトリルはRがエチルでRが水素である構造を有する。
【0019】
適切な生成物のβ−ヒドロキシニトリルは、制限するわけではないが、以下のものを含む:ラセミ又はキラルの3−ヒドロキシバレロニトリル(3−ヒドロキシペンタンニトリル)及びラセミ又はキラルの3−ヒドロキシブタンニトリル。好ましいβ−ヒドロキシニトリルは3−ヒドロキシバレロニトリルである。3−ヒドロキシバレロニトリルのキラル種は(R)−3−ヒドロキシバレロニトリル及び(S)−3−ヒドロキシバレロニトリルである。
【0020】
本方法は、β−ヒドロキシニトリルとともに、反応体として無機シアン化物を用いる。適切な無機シアン化物は、制限するわけではないが、以下のものを含む:シアン化カリウム、シアン化ナトリウム及びシアン化銅。シアン化カリウムは好ましい。
【0021】
本方法は水性有機溶剤中で行なわれる。適切な水性有機溶剤は、制限するわけではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はエーテル、たとえば、テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンを含むものが挙げられる。水の含有分は、バッファー及びエポキシド及びシアン化物が全て反応混合物中に少なくとも部分的に可溶性であるようなレベルとすべきである。水の含有分は、通常、水性有機溶剤の合計体積を基準として、約10体積%(vol%)〜約90vol%、より好ましくは、約40vol%〜約60vol%であろう。
【実施例】
【0022】
ラセミの3−ヒドロキシバレロニトリル及び(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルを本発明の方法によって製造した。
例1−ラセミの3−ヒドロキシバレロニトリルの実験室合成
メカニカルスターラ、温度プローブ、滴下ロート及び水性水酸化ナトリウムスクラバーに接続したガスアウトレットを備えた1リットルのジャケット付きガラス反応器にシアン化カリウム(41.1グラム(g)、631ミリモル(mmol)、0.9当量(eq.))及び重炭酸ナトリウム(58.25g、693mmol、1.0eq.)を装填した。再循環バスを反応器ジャケットに接続し、20℃に設定した。その後、反応器に、150ミリリットル(mL)のメタノール及び150mLの脱イオン水を装填した。反応混合物を約30分間激しく攪拌し、そして1,2−エポキシブタン(50.0g、693mmol、1.0eq.)を滴下ロートを介して約15分間にわたって反応混合物に添加し、その間、反応温度を20〜24℃に維持した。1,2−エポキシブタンの添加が完了した後に、温度を約15分間にわたって徐々に約28℃に上げた。その後、反応混合物を約17時間にわたって一晩攪拌した。滴下ロートを蒸留器に交換し、バッチを大気圧で蒸留し、反応混合物から主としてメタノールである低沸点成分の殆どを除去した。メタノールの殆どを留去した後に(ヘッド温度=72℃)、まだ熱い間に蒸留器ポットにアセトニトリル(合計1100mL、500mL、500mL及び100mLの部分で)を装填し、蒸留を続け、アセトニトリルと水との共沸混合物によって水を除去した。反応混合物から水がなくなるにつれて、固形分が蒸留容器の壁に沈殿した。ヘッド温度が75℃に達するまで蒸留を続けた。蒸留ポット中の生成物混合物を20℃に冷却し、一晩保持した。生成物混合物はカールフィッシャー分析によって5.6wt%の水を含んだ。生成物混合物を油として蒸留容器からドレンした。沈殿した固形物をアセトニトリル(400mL)ですすぎ、アセトニトリルをロータリーエバポレータにより除去し、そして得られた油を生成物混合物と混合した。混合した材料を真空下に濃縮し、主としてアセトニトリルである揮発性材料を除去し、その後、油を真空下に蒸留し、ラセミの3−ヒドロキシバレロニトリル(53.47g、539mmol、85%収率)を無色の油として提供した(沸点(bp)90℃〜105℃(2〜3トル)、HNMR(CDCl)δ3.82(m,1H)、3.05(s,1H)、2.5(m,2H)、1.59(m,2H)、0.95(t、J=7Hz,3H)。NMRは核磁気共鳴スペクトロスコピーである。
【0023】
例2−(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルのキロでの実験室合成
メカニカルスターラ、温度プローブ、滴下ロート及び水性水酸化ナトリウムスクラバーに接続したガスアウトレットを有する還流凝縮器を備えた12リットルの4つ口丸底フラスコを用いた。フラスコに、シアン化カリウム(821g、12.61mol、0.9eq.)、NaHCO(1165g、13.87mol、1.0eq.)、メタノール(3L)及び水(3L)を装填した。混合時に緩やかな発熱を生じ、温度が20℃から約25℃に上昇した。ウォータバスで温度が22℃になるようにして、反応混合物を30分間攪拌した。その後、(R)−(+)−1,2−エポキシブタン(1000g、13.87mmol、1.0eq.)を100mLの増分で反応混合物に約1.75時間にわたって添加し、その間、アイスバスの間欠使用で温度を18.0〜22.6℃に維持した。バッチを周囲温度で約13時間にわたって一晩、攪拌した。バッチの温度は、翌朝、20.9℃であった。反応容器に蒸留器を取り付け、反応混合物を大気圧で蒸留し、反応混合物から主としてメタノールである低沸点成分の殆どを除去した。メタノールの殆どを除去した後に(ヘッド温度=79℃)、まだ熱い間に蒸留ポットにアセトニトリル(合計18L、2〜4Lの部分で)を装填し、蒸留を数日間にわたって続け、アセトニトリルと水との共沸混合物によって水を除去した。反応混合物から水がなくなるにつれて、固形分が蒸留容器の壁に沈殿した。ヘッド温度が78℃に達するまで蒸留を続けた。蒸留ポット中の生成物混合物を20℃に冷却し、一晩保持した。2Lの粗いガラスフリットを、アセトニトリルで予備調整された257gのシリカゲルとともに装填した。生成物混合物をシリカゲルをとおしてろ過した。沈殿した固形物をアセトニトリル(500mL)で2回すすぎ、合わせたろ液を真空下に濃縮し、主としてアセトニトリルである揮発性材料を除去し、1283gの(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルを淡い黄色の油として提供した。油を真空下に蒸留し、ガスクロマトグラフィー分析の全体純度によって97面積%純度及び100%鏡像異性過剰の(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリル(1078g、539mmol、86%収率)を無色の油として提供した(bp:100℃〜105℃(0.45トル)、HNMR(CDCl)δ3.82(m,1H)、3.25(s,1H)、2.5(m,2H)、1.59(m,2H)、0.95(t、J=7Hz,3H)。
【0024】
例3−(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルのパイロットプラント合成
20℃に設定したジャケット温度の50ガロンの窒素パージされたガラスライニングされた反応器に、脱イオン水(45kg)、シアン化カリウム(12.3kg、188.9mol)、重炭酸ナトリウム(17.5kg、208.3mol)及びメタノール(36.1kg)を装填した。バッチを約30分間攪拌し、その後、(R)−(+)−1,2−エポキシブタン(15kg、208.0mol)を約6時間にわたって装填し、その間、温度を約19〜24℃に維持した。バッチを約12時間にわたって一晩攪拌した。反応器を大気圧蒸留に設定し、バッチ温度が85℃より高くなるまでバッチを大気圧で蒸留した。バッチを80℃に冷却し、アセトニトリル(235.8kg)を分割して添加し、そして蒸留を続けた。アセトニトリルの約半分が蒸留された後に、バッチを冷却し、オーロラろ過装置でろ過し、累積した沈殿固形分を除去し、ろ液を反応器に装填した。バッチの水含有分がカールフィッシャー分析で<3%となるまでアセトニトリルの蒸留を続け、バッチを冷却した。オーロラフィルターを乾燥シリカゲル(15.4kg)で装填し、そのシリカゲルをアセトニトリル(24.7kg)で濡らした。過剰のアセトニトリルを取り出し、シリカゲルベッドに硫酸ナトリウム(3kg)を注意深く層になるように入れた。シリカゲル/硫酸ナトリウムろ過媒体をフィルタークロスで覆い、シリカゲル/硫酸ナトリウムろ過媒体を通してバッチをろ過した。バッチを反応器に再装填し、反応器を大気圧蒸留に設定し、バッチを最小の攪拌可能な体積にまで蒸留し、アセトニトリル中の(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルの溶液22.0キログラム(kg)を提供した。溶液は16.23kg(86%収率)の(R)−(+)−3−ヒドロキシバレロニトリルを含んでいることが判った。
【0025】
上記の説明は本発明の例示に過ぎないことを理解すべきである。種々の変更及び修正は本発明を逸脱することなく当業者によってなされることができる。したがって、本発明は添付の特許請求の範囲に入る全てのこのような変更、改良及び修正を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッファーとともに水性有機溶剤中において1,2−エポキシドと無機シアン化物塩とを反応させて、β−ヒドロキシニトリルを有する反応生成物を形成させることを含む、水溶性β−ヒドロキシニトリルの製造方法であって、前記バッファーは前記β−ヒドロキシニトリル以外の反応生成物の生成を少なくとも部分的に抑制する、方法。
【請求項2】
前記バッファーはpKaが約9.1〜約13である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バッファーはpKaが約10〜約12である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記バッファーは重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、フェノール、スクシンイミド、ベンゼンスルホンアミド及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記バッファーは重炭酸ナトリウムである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記β−ヒドロキシニトリルは3−ヒドロキシバレロニトリル及び3−ヒドロキシブタンニトリルからなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記β−ヒドロキシニトリルは3−ヒドロキシバレロニトリルである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記1,2−エポキシドは以下の構造
【化1】

を有する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記1,2−エポキシドは1,2−エポキシブタンである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記無機シアン化物塩はシアン化カリウム、シアン化ナトリウム及びシアン化銅からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記無機シアン化物塩はシアン化カリウムである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記無機シアン化物塩はシアン化カリウムであり、前記1,2−エポキシドは1,2−エポキシブタンであり、前記β−ヒドロキシニトリルは3−ヒドロキシバレロニトリルであり、そして前記バッファーは重炭酸ナトリウムである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記有機溶剤はメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンからなる群の少なくとも1つより選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記水性有機溶剤は水性メタノールである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記水性有機溶剤は前記水性有機溶剤の合計体積を基準として約10vol%〜約90vol%の水含有率を有する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記水性有機溶剤は前記水性有機溶剤の合計体積を基準として約40vol%〜約60vol%の水含有率を有する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
アセトニトリルとの共沸蒸留によって前記反応生成物からの前記水の少なくとも一部分を除去することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記共沸蒸留の蒸留物は、大気圧で行なったときに約15wt%〜約17wt%の水及び約83wt%〜約85wt%のアセトニトリルを含み、前記共沸蒸留の蒸留物は約76℃〜約82℃の温度において大気圧で行なわれる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
真空蒸留及びろ過により前記反応生成物を精製することをさらに含む、請求項17記載の方法。

【公表番号】特表2006−513246(P2006−513246A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566521(P2004−566521)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/039084
【国際公開番号】WO2004/063144
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(504469570)ローディア ファーマ ソリューションズ インコーポレイティド (3)
【Fターム(参考)】