説明

水溶性化粧品及び食品

【課題】 ユビキノン類は、非常に有用な原料であるが、化粧品に利用する原料等その他の溶媒には、難溶性であり、結晶性も高いので、効率的に利用することができる水溶性化粧品及び食品を提供する。
【解決手段】ユビキノン類と多価アルコールを強力に分散することによって解決した。さらには、リン脂質を配合するとさらに良好な結果が得られた。また、多価アルコールの中でもグリセリンが水溶性化粧品及び食品に最適なことも見い出すことができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明品は、ユビキノン類を安定に配合することができる水溶性化粧品及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ユビキノン類は人の細胞中のミトコンドリアに存在する補酵素で、細胞を活性化させ人体のエネルギー生産に不可欠な成分で、肌のくすみや、肌荒れを改善する効果があり、また、抗色素沈着剤としての利用はすでに行われている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、ユビキノン類はエーテルにはよく溶けるが、化粧品に利用する原料等その他の溶媒には、難溶性であり、結晶性も高い。このため様々な工夫がされている(特許文献3および4参照)。
また、特殊な界面活性剤を用いてユビキノン類を水溶性にしたのち化粧品に配合する方法も知られている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特公昭62−121号
【特許文献2】特開昭61−289029号
【特許文献3】特公平7−74145号
【特許文献4】特開2004−210669
【特許文献5】特表2002−541216
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユビキノン類を配合するため、多量の乳化剤を必要としたり、配合にステロール類の配合を必要としたりした。また、近年、日本の食生活も変化し、皮脂の量も多くなり、官能的にもさっぱりした化粧品が求められているが、ユビキノンを配合した化粧品は油脂の量が多い乳化物が多いのが現状である。上記のように特殊な界面活性剤を用いてユビキノン類を水溶性にして水などに配合する例が知られているが、この方法では官能に制限があり、また特殊な界面活性剤を利用しなければならない等制限が多い。
本発明者は油分を含まず(或いは油分が少ない)簡単に或いは様々な官能に対応できるようなユビキノン類の配合した水溶性化粧品および食品を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は化粧品(或いは食品)で汎用されている原料から種々の組み合わせを試験し本課題を最も解決する方法を検討した。その結果、ユビキノン類と多価アルコールさらにはこれにリン脂質を配合して、これらを強力に分散することによって解決できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明の実施形態を説明する。ユビキノン類は2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの誘導体で側鎖のイソプレン単位によって、コエンザイムQ6、コエンザイムQ7、コエンザイムQ8、コエンザイムQ9、コエンザイムQ10等があるが、コエンザイムQ10が最も汎用され、すでに市販されている。多価アルコールは様々な物質が利用できるが、例示すると、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3ブチレングリコール、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−へキシレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、キシロース、トレハロース等がある。
【0006】
このなかでグリセリンが最も本発明に用いる多価アルコールとしては最適である。勿論、食品として用いる場合は、食品の原料として認められている物質から選択し、また、化粧品の場合、抗菌性のある多価アルコールを選択することも有用である。また、配合は複数の多価アルコールを併用することは有効であり、目的によって多価アルコールを選択する。これらの配合比率(この配合比率は強力に分散するときの比率である)はユビキノン類1に対して、多価アルコールが3〜100を配合する。そのときに、多価アルコールの20%以上をグリセリンとすることが好ましい。さらに好ましくは、30%以上をグリセリンとすることにより、よい結果をもたらすことが判明した。
【0007】
さらに、ユビキノン類の配合量や製品の目的や用途等を考え、リン脂質を配合する。
リン脂質は特に限定はなく、卵黄、大豆、トウモロコシ等の動植物、大腸菌等の微生物から抽出される天然のリン脂質及びそれらの水素添加物並びに合成のリン脂質が挙げられる。具体的にはフォスファチジルコリン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルイエタノールアミン、フォスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、フォスファチジルグリセロール、ジパルミトイルフォスファチジルコリン等から1種或いは数種目的に合わせて選択すればよい。
【0008】
その他の原料は必要に応じて配合する。これらを強力に分散する。その1つの方法として高圧ホモジナイザーがある。
高圧ホモジナイザーとして、例えば、マイクロフルイダイザー〔みずほ工業(株)製〕、アルティマイザー〔(株)スギノマシン製〕等が挙げられ、処理方法としては、1,000kg/cm以上、好ましくは1,500kg/cmで処理する。また、複数回処理することも選択できる。
【0009】
高圧ホモジナイザーで処理する部分は水溶性化粧品或いは食品の全体である必要はなく、ユビキノンと多価アルコールと必要に応じてリン脂質が含まれていればよく、多価アルコールはその一部を含めばよい。また、そのほかの原料に関しては処理量や処理時の粘度などを勘案し決定すればよい。これによって処理量が大きく変化し、必要な部分のみ高圧ホモジナイザーで処理する方が効率的である。
【0010】
ユビキノンと多価アルコールとリン脂質以外で配合する原料は、ガム質、糖類又は水溶性高分子化合物、ビタミン類、アミノ酸類、植物又は動物系原料由来の添加物、微生物培養代謝物酵母代謝物、無機顔料、紫外線吸収・遮断剤、美白剤、収斂剤、抗酸化剤、抗菌・殺菌剤等、特に限定はなく必要に応じて配合する。しかし、本発明の目的は油分と界面活性剤の量が少ない製品を目指しているので、油分と界面活性剤は必要最低限にする方がよい。
【0011】
製品は化粧品であれば、ローションは勿論、粘剤を配合してジェル状でもよく、また、スプレー等にしてもよい。食品の場合、飲料等に配合できる。
また、これらの混合物を水相として、油分を混合して乳化物とすることも可能である(この混合に高圧ホモジナイザーを用いることは任意に選択できる)。
【実施例】
【0012】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらになんら制約されるものではない。配合量は重量部で示す。
【0013】
実施例1 ローション
コエンザイムQ10 1
グリセリン 3
水 100
作成方法はおのおの計量後、攪拌しつつ、マイクロフルイダイザイー(みづほ工業社製M−110−E/H)で1800kg/cmで2回処理した。
【0014】
実施例2 ローション
コエンザイムQ10 2
グリセリン 3
1,3ブチレングリコール 5
1,2−へキシレングリコール 3
水 100
作成方法は実施例1と同じ
【0015】
実施例3 ローション
コエンザイムQ10 3
グリセリン 5
1,3ブチレングリコール 5
トレハロース 2
大豆リン脂質 注1 2
水 100
作成方法はおのおの計量後、加温(60℃)、攪拌しつつ、マイクロフルイダイザイー(みづほ工業社製M−110−E/H)で1800kg/cmで2回処理した。
【0016】
実施例4 ローション

コエンザイムQ10 0.1
グリセリン 3
1,2−ペンタンジオール 5
水 30

アスコルビン酸グリコシド 5
イソプレングリコール 5
0.5%カルボキシビニルポリマー水溶液 注2 1
オウゴン抽出液 注3 1
水 100
Aを実施例1と同様に処理した後、Bを攪拌しつつ加えた。
【0017】
実施例5 乳液

コエンザイムQ10 1
グリセリン 15
水 30
B−1
スクワラン 1
ローズマリー油 注4 1
d・α・コトフェノール 注5 1
ビタミンA油 注6 1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 注7 10
B−2
1,3ブチレングリコール 10
グリセリン 5
1,2−ペンタンジオール 10
フェノキシエタノール 1
桑白皮抽出液 注8 1
ヒアルロン酸液 注9 3
水 50
Aを実施例1と同様に処理した後、B・2を攪拌しつつ加えた。これとB−1を加温(65°C)しつつホモミクサー(特殊機化工業社製、T.KオートホモミクサーMARK220型)5000rpm 20分間攪拌して乳液を得た。
【0018】
実施例6 飲料

コエンザイムQ10 1
グリセリン 8
水 30

ソルビトール 30
リンゴ果汁 300
Aを実施例1と同様に処理した後、Bを攪拌しつつ加えた。
【0019】
なお、上記の実施例に用いた原料について説明する。
注1=大豆リン脂質は、日光ケミカルズ社製、レシノールS−10(商品名)を用いた。
注2=カルボキシビニルポリマーは、グッドリッチ社製、ハイビスワコ−104(商品名)の中和したものを用いた。
注3=オウゴン抽出液は、丸善製薬社製、オウゴン抽出液BG−JC(商品名)を用いた。
注4=ローズマリー油は、山本香料社製、Rosemary oil(商品名)を用いた。
注5=d・α・コトフェノールは、理研ビタミン社製、理研Eオイル1000(商品名)を用いた。
注6=ビタミンA油は、理研ビタミン社製、理研パルミテートを用いた。
注7=ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、日光ケミカルズ社製、ニッコールHCO−60(商品名)を用いた。
注8=桑白皮抽出液は、一丸ファルコス社製、ファルコレックスソウハクヒBG(商品名)を用いた。
注9=ヒアルロン酸液は、旭化成社製、バイオヒアルロン酸液(商品名)を用いた。
【0020】
評価1
実施例1から実施例3とこれらの分散方法をマイクロフルイダイザイー(みずほ工業社製M−110−E/H)で1800kg/cm2 で2回処理から、ホモミクサー(特殊機化工業社製、T.K.オートホモミクサーMARK2 20型)5000rpm 20分間攪拌に変えて作成した比較例1−1から比較例3−1を作成し、これら粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SALD−7000)を用いて測定した。また、実施例1〜3のグリセリンを1,3ブチレングリコールに置き換え、処理方法は実施例と同様に置き換えたものを比較例1−2から比較例3−2も作成した。その結果を表1に示す(なお測定は作成後24時間後に行った。)。
【0021】
【表1】

【0022】
評価2
実施例5と実施例5で、マイクロフルイダイザイー(みずほ工業社製M−110−E/H)で1800kg/cm2 で2回処理を行うところを、ホモミクサー(特殊機化工業社製、T.K.オートホモミクサーMARK2 20型)5000rpm 20分間攪拌に変えて作成した比較例5を作成した。これを女性10名に3ヶ月間1日2回使用してもらった。なお、顔の片側に実施例、他の一方に比較例を使用してもらい、比較例と比較で判定してもらった。その結果は
A 肌のくすみ
1.比較例より非常に効果があった。 6名
2.比較例より効果があった。 3名
3.比較例よりやや効果があった。 1名
B 肌荒れ
1.比較例より非常に効果があった。 5名
2.比較例より効果があった。 3名
3.比較例よりやや効果があった。 2名
C 美白効果
1.比較例より非常に効果があった。 4名
2.比較例より効果があった。 5名
3.比較例よりやや効果があった。 1名
【0023】
このように作成したユビキノン類を配合した実施例は微粒子に分散され、長期的に安定であり、また、分散性がよいので、有効性も発揮する。これは粒子径の影響だけでなくその処方バランスによって生じている。また油分や、界面活性剤を多く使用した化粧品に比較して官能的に優れており、用途に応じて様々な官能が得られることも今までの化粧品等に比較して非常に優れている点である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユビキノン類と多価アルコールを強力に分散したことを特徴とする水溶性化粧品及び食品。
【請求項2】
リン脂質を配合したことを特徴とする請求項1に記載の水溶性化粧品及び食品。
【請求項3】
多価アルコールの20%以上がグリセリンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水溶性化粧品及び食品。
【請求項4】
水溶性混合物と油分を混合した乳化物であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の水溶性化粧品及び食品。

【公開番号】特開2006−143651(P2006−143651A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336219(P2004−336219)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(397019287)コスメテックスローランド株式会社 (13)
【Fターム(参考)】