説明

水田作業機

【課題】変速レバーに多くの機能を与えることによって、水田作業機における操作性の向上を図る。
【解決手段】変速レバーを後進変速操作経路の中立位置Nrに操作した状態でのエンジンの回転速度と、変速レバーを後進変速操作経路の後進1速r1に対応した位置に操作した状態でのエンジンの回転速度とが同じになるように構成する。変速レバーを後進変速操作径路の最高速位置に操作した状態でのエンジンの回転速度が、変速レバーを前進変速操作径路の最高速位置に操作した状態でのエンジンの回転速度よりも小さくなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機や水田直播機などの水田作業機に利用する走行変速操作構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、田植機においては、走行用変速装置として、ギヤシフト式のものに代えてに静油圧式の無段変速装置(HST)やベルト式の無段変速装置が導入されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
無段変速装置の導入は、ギヤシフト式の変速装置のように主クラッチの操作を要することなく軽快に変速操作を行うことができるとともに、特に油圧式においては零速発進を行うことができるものであり、変速操作性を向上する上で有効なもであるが、走行変速以外の各種操作はそれぞれ別の操作具を操作することになっており、走行変速操作に関連して他の操作を行うような場合には、変速レバーから他の操作具に持ち替えを行う必要があり、煩わしいものとなっていた。特に畦際での機体方向転換時には多くの操作を短時間に行うことが多く、その操作が一層煩わしいものとなっていた。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、変速レバーに多くの機能を与えることによって、走行変速操作に関連して他の操作をレバーの持ち替えなく軽快かつ速やかに行えるようにして、水田作業機における操作性の向上を図ることを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔請求項1に係る発明の構成、作用および効果〕
【0006】
請求項1に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する変速レバーを、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成した水田作業機の走行変速操作構造であって、
前記変速レバーとエンジンの調速機構を連係し、前記変速レバーを前進変速操作径路において中立位置から高速位置側へ操作するに連れて前記調速機構を高回転側に作動させ、変速レバーを中立位置側へ操作するに連れて調速機構を低回転側に作動させるように設定し、
前記前進変速操作径路と後進変速操作径路とを、互いに平行、かつ、段違い状に偏位させて接続するとともに、の中立位置から引き続く前進方向への直線移動操作によって移行可能な副前進変速操作径路を、前進変速操作径路における低速域部分の横側に連設してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、作業走行のために変速レバーを高速側に操作するとこれに連動してエンジン回転速度が高められ、高い出力のもとでの水田走行作業が行われる。また、畦際での機体方向転換に際して変速レバーを減速操作するとこれに連動してエンジン回転速度も落され、レバー操作に応じた任意の低速度で軽快に機体操縦を行うことができる。
【0008】
畦際での機体方向転換において、前後進を繰り返しての機体方向転換を行う場合、後進変速操作径路と副前進変速操作径路とに亘って変速レバーを直線的に移動させて前後進を選択する、いわゆるシャトル変速を行うことができる。そして、このシャトル変速の前進変速は低速域のみで行われることになる。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によると、片方の手で操縦ハンドルを操作しながらもう片方の手で走行変速とアクセル操作とをレバーの持ち替えなく行うことができ、操作性が向上する。
また、低速でのシャトル変速を変速レバーの直線操作で軽快に行うことができ、畦際での機体方向転換も軽快迅速に行うことができる。
【0010】
〔請求項2に係る発明の構成、作用および効果〕
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記変速レバーが前記副前進変速操作径路へ操作されることに連動して、前記水田作業装置を自動的に上昇させる低速アップ制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0012】
上記構成によると、前進高速での一行程の作業走行が終了して畦際に至ると、変速レバーを低速域に操作して機体の方向転換を行うことになるが、この場合、前進変速操作径路の低速域に操作した変速レバーを横方向に移動させて副前進変速操作径路に操作すると、田面にまで下降されていた水田作業装置は自動的に上昇されることになり、直ちに機体旋回に移行することができる。
【0013】
従って、請求項2に係る発明によると、畦際での機体方向転換に伴う操作が一層簡便となり、取扱い性が向上する。
【0014】
〔請求項3に係る発明の構成、作用および効果〕
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の発明において、前記水田作業装置が上昇された状態で前記変速レバーが前記副前進変速操作径路へ操作されることに連動して、前記水田作業装置を自動的に下降させる自動下降制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0016】
上記構成によると、畦際での機体方向転換が終了しかかると、前進変速操作径路の低速位置にある変速レバーを再び横方向に移動させて副前進変速操作径路に操作することで、上昇されていた水田作業装置が自動的に下降され、次行程の作業に備えられる。
【0017】
従って、請求項3に係る発明によると、畦際での機体方向転換に伴う減速操作、
アクセルダウン操作、水田作業装置の昇降操作を変速レバーだけで行うことができ、取扱い性が更に向上する。
【0018】
〔請求項4に係る発明の構成、作用および効果〕
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、前記走行機体の操向操作に連動して前記水田作業装置を自動的に上昇させるオートアップ制御手段と、前記変速レバーが後進変速径路に操作されることに連動して前記作業装置を自動的に上昇させるバックアップ制御手段とを備えてあることを特徴とする。
【0020】
上記構成によると、一行程の作業走行が終了して、畦際において方向転換のために機体を大きく操向するとオートアップ制御が働いて水田上の水田作業装置は自動上昇される。また、スイッチターンのために後進操作した場合には、バックアップ制御が働いて水田作業装置が自動上昇され、水田作業装置の後端が畦に衝突するような事態が未然に回避される。
【0021】
従って、請求項4に係る発明によると、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明の上記効果をもたらすのみならず、更に機能が高いものとなり、畦際での機体方向転換を一層容易に行えるようになる。
【0022】
〔請求項5に係る発明の構成、作用および効果〕
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明において、前記オートアップ制御手段をオン・オフ可能に構成するとともに、オートアップ制御手段がオフ状態にあっても、バックアップ制御手段および低速アップ制御手段が作動するよう構成してあることを特徴とする。
【0024】
上記構成によると、変形圃場では畦際でなくても大きく機体の操向を行うことがあるので、オートアップ制御が行われないようにオフ状態に切換えておく。この場合でも、バックアップ制御および低速アップ制御による作業装置上昇は実行されるので、畦際での向転換に際しては、これらの制御を利用して水田作業装置上昇のための操作を省略することができる。
【0025】
従って、請求項5に係る発明によると、変形圃場でも畦際での向転換における水田作業装置上昇操作を不要にして、操作性を向上することができる。
【0026】
〔請求項6に係る発明の構成、作用および効果〕
【0027】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、前記変速レバーが前進変速操作径路に在る時には、エンジン回転速度が、中立位置を最低回転速度として変速レバーが高速位置側にあるほどエンジン回転速度が高くなり、記変速レバーが前記副前進変速操作径路にある時はエンジン回転速度が最高回転速度よりも低い所定の設定回転速度に維持されるように、変速レバー操作に対する調速機構のエンジン調速パターンを設定してあることを特徴とする。
【0028】
上記構成によると、圃場内では高速で走行するほど走行負荷が増大するが、前進走行時には、高速で走行するほどエンジン回転速度が高く設定され、走行負荷に見合ったエンジン出力で駆動される。また、エンジンをかけたままでの機体停止中は変速レバーを中立位置に操作しておくだけでエンジン回転速度を落しておくことができる。
また、変速レバーを副前進変速操作径路に操作して
【0029】
従って、請求項6に係る発明によると、前進走行時には滑らかに加減速して適切な出力で駆動することができるとともに、走行停止時における燃料の節約と騒音低減を図ることができ、かつ、後進走行も出力不足なく的確に行える。
【0030】
〔請求項7に係る発明の構成、作用および効果〕
【0031】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の発明において、前記後進変速操作径路の全域においてエンジン回転速度を設定値に維持するとともに、この設定されたエンジン回転速度と、変速レバーが前記副前進変速操作径路にある時のエンジン回転速度とを同一あるいは略同一にしてあることを特徴とする。
【0032】
上記構成によると、変速レバーを後進変速操作径路と副前進変速操作径路に亘って直線的に操作して前後進変速(シャトル変速)を行う場合、中立位置からの滑らかな前進ゼロ発進および後進ゼロ発進を、高過ぎずかつ低過ぎないエンジン回転速度のもとで的確に行うことができる。
【0033】
従って、請求項7に係る発明によると、請求項6の発明の上記効果をもたらすとともに、走行負荷が大きい畦際でのシャトル変速による機体方向転換を円滑かつ確実に行うことができる。
【0034】
〔請求項8に係る発明の構成、作用および効果〕
【0035】
請求項8に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する変速レバーを、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成した水田作業機の走行変速操作構造であって、
前記変速レバーとエンジンの調速機構を連係し、前記変速レバーを前進変速操作径路において中立位置から高速位置側へ操作するに連れて前記調速機構を高回転側に作動させ、変速レバーを中立位置側へ操作するに連れて調速機構を低回転側に作動させるように設定し、
前記前進変速操作径路と後進変速操作径路とを、互いに平行、かつ、段違い状に偏位させて接続するとともに、前進変速操作径路の低速域の横側に、後進変速操作径路の延長線上に位置する副前進変速操作径路を連設し、
この副前進変速操作径路と後進変速操作径路との間は、変速レバーの短絡操作を牽制阻止する隔壁を形成し、
変速レバーが前記副前進変速操作径路へ操作されることに連動して前記水田作業装置を自動的に上昇させる低速アップ制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0036】
上記構成によると、作業走行のために変速レバーを高速側に操作するとこれに連動してエンジン回転速度が高められ、高い出力のもとでの水田走行作業が行われる。また、畦際での機体方向転換に際して変速レバーを減速操作するとこれに連動してエンジン回転速度も落され、レバー操作に応じた任意の低速度で軽快に機体操縦を行うことができる。
【0037】
前進高速での一行程の作業走行が終了して畦際に至ると、変速レバーを低速域に操作して機体の方向転換を行うことになるが、この場合、前進変速操作径路の低速域に操作した変速レバーを横方向に移動させて副前進変速操作径路に操作すると、田面にまで下降されていた水田作業装置は自動的に上昇されることになり、そのまま機体旋回に移行することができる。
ここで、副前進変速操作径路から後進変速操作径路へは短絡して移動することができないので、副前進変速操作径路で減速操作しても不用意に後進変速操作径路に操作して後進させてしまうようなことはない。
【0038】
従って、請求項8に係る発明によると、片方の手で操縦ハンドルを操作しながらもう片方の手で走行変速とアクセル操作とをレバーの持ち替えなく行うことができ、操作性が向上する。
また、畦際での機体方向転換に伴う作業装置上昇操作が一層簡便となり、取扱い性が向上する。
【0039】
〔請求項9に係る発明の構成、作用および効果〕
【0040】
請求項9に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する変速レバーを、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成した水田作業機の走行変速操作構造であって、
前記前進変速操作径路の全域において変速レバーを横方向にも操作可能に構成し、この横方向へのレバー操作によって前記水田作業装置を上昇させる上昇制御手段を備えてあることを特徴とする。
【0041】
上記構成によると、一行程の作業走行が終了して畦際に到達すると、変速レバーを前進変速操作径路の任意の位置で横方向へ移動することで直ちに水田作業装置を上昇させることができる。
【0042】
従って、請求項9に係る発明によると、畦際での機体方向転換に先立って、変速レバーの操作だけで旋回速度の設定と水田作業装置の上昇を行うことができ、畦際での機体方向転換に伴う操作が簡便となり、取扱い性が向上する。
【0043】
〔請求項10に係る発明の構成、作用および効果〕
【0044】
請求項10に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する変速レバーを、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成した水田作業機の走行変速操作構造であって、
前記前進変速操作径路において変速レバーを左および右方向にも操作可能、かつ、左右方向の中間に付勢復帰されるように構成し、この左右方向の一方向へのレバー操作によって前記水田作業装置を上昇させるとともに作業クラッチを切り作動させ、水田作業装置上昇後における左右方向の他方向への1回目のレバー操作によって水田作業装置を下降させ、他方向への2回目のレバー操作によって、作業クラッチを入り作動させるよう構成してあることを特徴とする。
【0045】
上記構成によると、一行程の作業走行が終了して畦際に至ると、必要に応じて変速レバーを任意の変速位置に減速操作して機体の方向転換を行うことになるが、この場合、減速操作前あるいは減速操作後に変速レバーを横一側方に移動させると、田面にまで下降されていた水田作業装置は上昇され、かつ、作業クラッチが自動的に切られることになり、直ちに機体旋回に移行することができる。
【0046】
また、機体方向転換が終了するまでに任意の変速位置に在る変速レバーを横他側方に移動させることで、上昇されていた水田作業装置が下降されることになる。この場合、作業クラッチは入れられることはない。その後、水田作業装置が田面に接地した状態で機体の条合せを行った後、先の作業行程の作業跡(田植機の場合は植付け条)の終端位置に作業装置が合致したところで変速レバーを再び横他側方に移動させることで、作業クラッチが入れられ、先の作業行程の作業跡の終端位置と始端位置が揃った状態で次行程の作業走行が開始される。その後、必要に応じて所望の作業速度への変速操作を行う。
【0047】
従って、請求項10に係る発明によると、畦際での方向転換に伴う作業装置昇降操作と作業クラッチの入り切り操作を変速レバーだけで行うことができ、レバーの持ち替えなどを要することなく軽快に方向転換走行を行うことができる。
【0048】
〔請求項11に係る発明の構成、作用および効果〕
【0049】
請求項11に係る発明は、請求項10記載の発明において、変速レバーを左および右方向に操作して水田作業装置の昇降および作業クラッチの入り操作を行う操作域を前進低速域にのみ設定してあることを特徴とする。
【0050】
上記構成によると、変速レバーを横移動操作して水田作業装置の昇降および作業クラッチの入り切りを行うことのできる変速域は前進低速域に限られ、高速で前進走行している際に誤って変速レバーを横操作して、不用意に作業装置を上昇させてしまうことはない。
【0051】
従って、請求項11に係る発明によると、畦際で方向転換のために前進速度を減速した状態でのみ水田作業装置の昇降および作業クラッチの入り切りを行うことができ、請求項10に係る発明の上記効果をもたらすとともに、作業走行中の誤った作動を未然に回避することができ、取扱い性において一層優れたものとなる。
【0052】
〔請求項12に係る発明の構成、作用および効果〕
【0053】
請求項12に係る発明は、走行機体に水田作業装置を駆動昇降自在に連結するとともに、走行速度を無段に変速する変速レバーを、前進変速操作径路から後進変速操作径路に亘って中立位置を介して一連に移動操作可能に構成した水田作業機の走行変速操作構造であって、
前記変速レバーを前進変速操作径路の所定変速位置で左および右方向にも操作可能に構成し、この所定変速位置での左または右方向へのレバー操作によって、突出作動させる線引きマーカの選択を行うよう構成してあることを特徴とする。
【0054】
上記構成によると、一行程の作業走行が終了して畦際に至ると水田作業装置を上昇させてた状態で機体をUターン旋回して方向転換を行うことになるが、この場合、次行程の走行基準線を田面に引っ掻き形成するために突出されていた一方(機体旋回側)の線引きマーカーは格納され、機体の方向転換後の次行程では他方の線引きマーカーを突出させることになる。この場合、機体の方向転換作動の途中あるいは方向転換作動後の適当なタイミングで、変速レバーを前進変速操作径路の所定変速位置で左あるいは右方向に操作することで、次に突出させる線引きマーカーを左右いずれか選択することができる。
【0055】
従って、請求項12に係る発明によると、畦際での方向転換に伴う線引きマーカーの選択操作を、畦際での方向転換のために走行速度を変更する変速レバーで行うことができ、レバーの持ち替えなどを要することなく複合した操作を軽快に行うことができる。
【0056】
〔請求項13に係る発明の構成、作用および効果〕
【0057】
請求項13に係る発明は、請求項12記載の発明において、突出作動させる線引きマーカの選択操作を行う前記所定変速位置を、前進変速操作径路中の中速位置としてあることを特徴とする。
【0058】
上記構成によると、線引きマーカーの選択を行うことのできる変速域は前進中速位置に限られ、高速での作業走行から畦際での機体方向を行う際、中速位置への減速後に線引きマーカーの選択操作を行うことができる。
【0059】
従って、請求項13に係る発明によると、畦際での減速操作と線引きマーカーの選択操作とを合理的に関連することで、変速レバーを最少限に操作して手際よく複合操作を行うことができ、取扱い性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】田植機の全体側面図
【図2】田植機の全体平面図
【図3】変速操作構造の側面図
【図4】制御ブロック図
【図5】第1例のレバー案内部を示す平面図
【図6】変速レバー位置とエンジン回転数との関係を示す図
【図7】第3例のレバー案内部を示す平面図
【図8】第4例のレバー案内部を示す平面図
【図9】第5例のレバー案内部を示す平面図
【図10】第6例のレバー案内部を示す平面図
【図11】第7例のレバー案内部を示す平面図
【図12】第8例のレバー案内部を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1に、本発明に係る水田作業機の一例である、乗用型田植機の全体側面が、また、図2にその全体平面がそれぞれ示されている。この田植機は、前輪1および後輪2を備えた4輪駆動式の乗用走行機体3の後部に、水田作業装置として6条植え仕様の苗植付け装置4が、油圧シリンダ5によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構6を介して昇降可能に連結されるとともに、機体後部に施肥装置7が備えられた基本構造を有している。
【0062】
前記走行機体3の前部にはガソリン仕様のエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な主変速装置である静油圧式の無段変速装置(HST)9にベルト伝達され、その変速出力がミッションケース10に入力されて更に副変速装置(図示せず)で高低2段にギヤ変速された後、前輪1と後輪2に伝達されるようになっている。また、ミッションケース10内で走行系から分岐された作業用動力が苗植付け装置4に軸伝達されるようになっている。そして、前記無段変速装置9を操作する変速レバー11が、搭乗運転部のステアリングハンドル12の左脇に前後揺動可能に配備されるとともに、ミッションケース10内の副変速装置を操作する副変速レバー13が、搭乗運転部の運転座席14の左脇に配備され、さらに、搭乗運転部の右前足元には、踏み込みによってミッションケース10内の主クラッチを切るとともに走行系に備えたブレーキを制動作動させる機体停止用のペダル15が配備されている。
【0063】
前記苗植付け装置4には、苗を載置して一定ストロークで往復横移動する苗のせ台16と、この苗のせ台16の下端から一株分づつ苗を切り出して植付ける6組の回転式の植付け機構17と、圃場の植付け予定箇所を均平にする3個の整地フロート18、等が装備されており、後向き片持ち状に並列支持した3個の植付けケース19の後部左右に植付け機構17が2組づつ装着されている。また、苗植付け装置4には、往復植付け形態での一行程の植付け走行中に、Uターン後の次行程における走行基準線を未植え側の田面に引っ掻き形成する左右一対の線引きマーカー20が、横側方に突出する作用姿勢と起立された格納姿勢とに切換え揺動自在に備えられており、この線引きマーカー20は苗植付け装置4の上昇に連動して格納揺動されてロックされ、ロック解除された線引きマーカー20だけが苗植付け装置4の下降時に作用姿勢に付勢揺動するよう構成されている。
【0064】
3個の前記整地フロート18は、それぞれ後支点を中心に上下揺動可能に支持されるとともに、中央の整地フロート18は、苗植付け装置4を田面に対して追従昇降制御するためのセンサフロートSFとして利用されている。つまり、このセンサフロートSFの上下位置がポテンショメータからなるセンサ21で検出され、その検出値と予め設定された基準値とが制御装置22で比較され、センサ21からの検出値が基準値に保持されるように前記油圧シリンダ5の電磁制御弁23を作動制御して苗植付け装置4を昇降させることで、苗植付け装置4を田面に対して追従させる自動昇降制御装置が構成されている。
【0065】
前記変速レバー11は走行速度を変更するのみならず、他の機構部位を作動させる複合操作レバーとしての機能を発揮するものであり、そのいくつかの例を以下に説明する。
【0066】
〔第1例〕
【0067】
図3〜図5に、変速操作構造の第1例が示されている。この例では、変速レバー11はエンジン8のアクセル調節レバーおよび苗植付け装置上昇用レバーとしての機能をも併せ持っている。つまり、エンジン8に備えられた調速機構25は、調速レバー26の操作位置に対応してエンジン回転速度が設定範囲内に安定維持されるように、エンジン回転速度変動に基づいてスロットル開度を自動調節するよう構成されたものであり、周知のメカニカルガバナが使用されている。そして、減速機付きの電動モータ27で駆動される作動レバー28と前記調速レバー26とが操作ワイヤ29で連係され、調速機構25のアクセルセット作動が電動モータ27を介して電気的に実行されるようになっている。そして、前記電動モータ27は前記制御装置22によって作動制御されるようになっており、この制御装置22に、前記変速レバー11の操作位置を検出するポテンショメータ30、作動レバー28の作動位置を検出するフィードバック用のポテンショメータ31、が接続されており、これらの検知情報に基づいて電動モータ27が作動制御されて、前記調速機構25のアクセルセット操作が以下のように行われる。
【0068】
ここで、図3に示すように、変速レバー11は、固定枠41に横向き水平支点a周りに回動自在に支持された支持板42に前後向き支点b周りに横揺動自在に支持されて、固定のレバーガイド43から上方に挿通延出されており、変速レバー11と一体回動する前記支持板42から下方に向けて延出された操作ロッド44が、支点c周りに回動自在なベルクランク45、および、ロッド46を介して無段変速装置9の変速操作軸47に設けた操作アーム48に機械的に連動連結されている。また、変速レバー11の支点部から下方に屈曲延出した案内ロッド部11aが固定枠41に取付けられたガイド板49のガイド溝50に挿通案内されることでレバー移動径路が規制されている。前記ガイド溝50は前後方向に向かう段違い状に形成されており、レバーガイド上方から見た操作径路は、図5に示すように、前進変速操作径路Fと後進変速操作径路Rとが、互いに平行、かつ、段違い状に偏位されて中立位置Nで連通接続された状態になっている。
【0069】
前記支持板42の外周には多数(この例では9個)の位地決め用の凹部51が形成されるとともに、この凹部49のいずれか一つに板バネ製のデテントレバー52の先端ローラ53が弾性係入して、変速レバー11を複数の操作位置に保持するように構成されている。具体的には、前進変速操作径路Fでは、中立位置Nの他に5段の前進変速位置f1〜f5が設定されるとともに、後進変速操作径路Rでは、中立位置Nの他に3段の後進変速位置r1〜r3が設定されている。
【0070】
なお、詳細な構造は省略するが、前記ベルクランク45と前記機体停止用のペダル15とが機械的に接当連係されており、前進あるいは後進中にペダル15を踏み込んで、主クラッチを切るとともにブレーキを制動操作して機体停止を行うと、ベルクランク45が踏力の一部によって強制的に中立まで接当回動され、変速レバー11が中立位置Nに強制復帰移動されるようになっている。
【0071】
図6に、変速レバー11の変速位置とエンジン8の目標回転速度(アクセルセット速度)との関係が示されている。つまり、変速レバー11が中立位置Nにあると、目標回転速度がアイドリング回転速度n0(例えば1700rpm)に設定されるとともに、中立位置Nから前進3速[f3]までは直線的に増速され、前進3速[f3]から前進5速[f5]までは最高回転速度n4(例えば3600rpm)に設定され、前進1速[f1]では第1設定回転速度n1(例えば2500rpm)、前進2速[f2]では第2設定回転速度n2(例えば3000rpm)が現出される。また、後進変速操作径路Rでは目標回転速度は最高回転速度より少し低い第3設定回転速度n3(例えば3200rpm)に設定されている。
【0072】
この場合、変速レバー11による変速セットとアクセルセットの関係特性が予め記憶設定されており、変速レバー11の操作位置に対応した調速レバー26の目標回転速度セット位置が割り出され、この割り出された目標回転速度セット位置に向けて調速レバー26を移動させるように電動モータ27がフィードバック制御され、変速レバー11の操作位置に対応したアクセルセットが自動的に行われるのである。
【0073】
また、後進変速操作径路Rの中立位置N(r)から引き続く前進方向への直線移動操作によって移行可能な副前進変速操作径路F’が、正規の前進変速操作径路Fにおける低速側部分(1速[f1]から2速[f2])の横側に連設されている。従って、変速レバー11を副
前進変速操作径路F’と後進変速操作径路Rに亘って直線的に操作して速やかな前後進切換え変速〔シャトル変速〕を行うことができるようになっている。このシャトル変速による前進最高速度は副前進変速操作径路F’の前端によって2速[f2]に制限されるので、不用意に後進から前進高速に切換えてしまうおそれはない。
【0074】
また、レバー操作径路脇には、変速レバー11が後進変速操作径路Rあるいは副前進変速操作径路F’に在ることを検知する手段が配備されている。このレバー位置検出手段は、後進変速操作径路Rあるいは副前進変速操作径路F’に在る変速レバー11に接当揺動操作される感知レバー56と、その揺動を検知するスイッチ57とで構成されており、このスイッチ57と前記ポテンショメータ30との検出情報から、変速レバー11が後進変速操作径路Rに在るか、副前進変速操作径路F’に在るかが判断され、後進変速操作径路Rに在ることが判断されると、上記のように最高速度より低い第3設定回転速度n3にア
クセルセットがなされるとともに、副前進変速操作径路F’に在ることが判断された場合も、後進変速操作径路Rと同じ第3設定回転速度n3にアクセルセットされる。
【0075】
また、変速レバー11が正規の前進変速操作径路Fから副前進変速操作径路F’に操作されたことが判断されると、苗植付け装置4の強制上昇制御が実行されるとともに、変速レバー11が後進側の中立位置N(r)および後進変速操作径路Rに操作されたことが判断
されることによっても苗植付け装置4の強制上昇制御が実行されるようになっている。つまり、変速レバー11が副前進変速操作径路F’に操作されての低速前進での自動上昇制御〔低速アップ制御〕と、後進される際の自動上昇制御〔バックアップ制御〕が実行されて、苗植付け装置4が優先的に上限まで駆動上昇されるようになっているのである。
【0076】
ここで、低速アップ制御が行われる副前進変速操作径路F’で前進速度(f1’〜f2’)が選択されると、前進変速操作径路Fで同じ前進速度(f1〜f2)が選択される場合よりもエンジン回転速度が高く(後進時のエンジン回転速度と同じ)アクセルセットされているので、エンジン8に直結された油圧ポンプからの吐出量が十分確保され、油圧シリンダ5の作動速度が速いものとなって、苗植付け装置4は速やかに上昇されることになる。
【0077】
また、前記制御装置22には、前輪1の中立からの切れ角度を検知する操向角センサ58が接続されており、前輪1が設定角度(例えば30度)以上に大きく操向されたことが検知されると、苗植付け装置4を自動的に上昇させる制御〔オートアップ制御〕が実行されるようになっている。また、このオートアップ制御は切換えスイッチ59によってオン・オフ操作可能となっており、変形圃場ではスイッチ59をオフ位置に切換えてオートアップ制御を停止しておくことで、機体を大きく操向する機会の多い曲線植付け走行時に、オートアップ制御によって不用意に苗植付け装置4が上昇されてしまうことを回避することができる。そして、切換えスイッチ59によってオートアップ制御を停止していても、変速レバー11の操作位置の判断に基づく前記低速アップ制御とバックアップ制御は常に優先的に実行されるようになっている。
【0078】
また、上記した低速アップ制御、バックアップ制御、および、オートアップ制御が働いて苗植付け装置4が駆動上昇されると、苗植付け装置4への動力伝達を断続する作業クラッチとしての植付けクラッチ60(ミッションケース10に内装)が電動モータ61によって切り操作されるようになっている。
【0079】
なお、前記ステアリングハンドル12の右脇には、中立復帰付勢された十字揺動式の操作レバー62が配備されるとともに、この操作レバー62の上下操作が図示しないスイッチによって検出されるようになっている。そして、この操作レバー62を中立から1回上方に操作することで、苗植付け装置4が優先的に上限まで駆動上昇されるとともに、植付けクラッチ60が電動モータ61によって切り操作される。また、苗植付け装置4が上昇されている状態で操作レバー62を中立から1回下方に操作することで、苗植付け装置4が優先的に下降される。また、この下降操作の後に操作レバー62を中立から2回目に再度下げ操作することで、植付けクラッチ60が電動モータ61によって入り操作され、苗植付け装置4の駆動が開始されるようになっている。
【0080】
また、操作レバー62を前方に揺動操作すると、左側の線引きマーカー20の格納ロックが解除されるとともに、操作レバー62を後方に揺動操作すると、右側の線引きマーカー20の格納ロックが解除されるように、操作レバー62と図示しないマーカー格納ロック機構とが機械的にワイヤ連係されている。
【0081】
〔第2例〕
【0082】
上記第1例と同じ構造において、変速レバー11が前進変速操作径路Fから副前進変速操作径路F’に操作されたことが判断されると、苗植付け装置4の強制上昇制御が実行されるとともに植付けクラッチ60が切られ、変速レバー11が再び前進変速操作径路Fから副前進変速操作径路F’に操作されたことが判断されると、苗植付け装置4の強制下降制御が実行されるように、つまり、変速レバー11が副前進変速操作径路F’に操作されたびに苗植付け装置4の上昇制御と下降制御を交互に行うように構成することもできる。
【0083】
〔第3例〕
【0084】
図7に第3例における変速操作径路が示されている。この例は、前記第1例における副前進変速操作径路F’を前進変速操作径路Fの全域の横側に形成したものであり、前後進切換えを直線操作で速やかに行うことができるとともに、変速レバー11を前進変速操作径路Fの任意の変速位置から副前進変速操作径路F’に横移動して苗植付け装置4を上昇作動させる形態で実施することもできる。
また、この第3例に前記第2例の技術を導入して、変速レバー11が副前進変速操作径路F’に操作されたびに苗植付け装置4の上昇制御と下降制御を交互に行うように構成することもできる。
【0085】
〔第4例〕
【0086】
図8に第4例における変速操作径路が示されている。この例は、前記第1例の構造において、後進変速操作径路Rと副前進変速操作径路F’との間に隔壁65を形成したものであり、直線操作による前後進切換え(シャトル変速)はできないが、変速レバー11による低速アップ制御とバックアップ制御を行うことができる。
この場合も、第2例のように、変速レバー11が副前進変速操作径路F’に操作されたびに苗植付け装置4の上昇制御と下降制御を交互に行うように構成することもできる。
【0087】
〔第5例〕
【0088】
図9に第5例における変速操作径路が示されている。この例は、前記第1例を基本構造として、上記副前進変速操作径路F’よりも高速で、最高速度[f5]より低速である中速
位置[f4]において前進変速操作径路Fから左右にマーカー選択操作径路ML,MRが延
出されている。また、この例では、副前進変速操作径路F’の全域と、後進変速操作径路Rの中立位置N(r)から後進2速までの低速域では支持板42に位置決め用のノッチ51
がなく、無段階に変速保持することができるようになっている。また、変速レバー11が副前進変速操作径路F’に操作されたびに苗植付け装置4の上昇制御と下降制御を交互に行うように構成されている。さらに、マーカー選択操作径路ML,MRのいずれかに操作することで、植付けクラッチ60が電動モータ61によって入れられるようになっている。 おのように、この例では、変速レバー11で苗植付け装置4の昇降、植付けクラッチ60の入り切り、および、線引きマーカー20の選択まで行うことができるので、第1例における操作レバー62は不要となっている。
【0089】
この構成によると、一行程の植付け走行を終えた畦際において、変速レバー11を副前進変速操作径路F’に操作することで、走行速度を減速するとともに、低速アップ制御で苗植付け装置4を上昇させ、かつ、植付けクラッチ60を切りことができ、この状態で機体の方向転換を行う。そして、方向転換が終了しかかると、変速レバー11を前進変速操作径路Fから再度副前進変速操作径路F’に操作することで苗植付け装置4を、植付けクラッチ60が切られたままの状態で田面まで下降させる。条合わせを行った後、変速レバー11を前進変速操作径路Fの中速位置[f4]に増速操作して左右のマーカー選択操作径
路ML,MRの一方に操作することで、左右いずれかの線引きマーカーを作用姿勢に突出させることができる。そして、この例の場合、変速レバー11をマーカー選択操作径路ML,MRのいずれかに操作することで、植付けクラッチ60が電動モータ61によって入れられ、中速度での植付け走行が開始されることになる。その後、必要に応じて、変速レバー11を最高速度[f5]を選択して、能率的な植付け走行を行うことができる。
【0090】
〔第6例〕
【0091】
図10に第6例における変速操作径路が示されている。この例は、上記第5例を変形したものであり、マーカー選択操作径路ML,MRは、前進変速操作径路Fの最高速度位置から左右に延出され、かつ、図示しないが、変速レバー11の握り部に植付けクラッチ入り切り用のスイッチが指操作可能に備えられている。
【0092】
この構成によると、一行程の植付け走行を終えた畦際において、変速レバー11を副前進変速操作径路F’に操作することで、走行速度を減速するとともに、低速アップ制御で苗植付け装置4を上昇させ、かつ、植付けクラッチ60を切りことができ、この状態で機体の方向転換を行う。そして、方向転換が終了しかかると、変速レバー11を前進変速操作径路Fから再度副前進変速操作径路F’に操作することで苗植付け装置4を、植付けクラッチ60が切られたままの状態で田面まで下降させる。条合わせを行った後、変速レバー11を前進変速操作径路Fの最高速度位置[f5]に増速操作して左右のマーカー選択操
作径路ML,MRの一方に操作することで、左右いずれかの線引きマーカーを作用姿勢に突出させることができる。そして、この例の場合、変速レバー11をマーカー選択操作径路ML,MRのいずれかに操作することで、植付けクラッチ60が電動モータ61によって入れられ、高速での植付け走行が開始されることになる。
【0093】
ここで、植付けクラッチ60は変速レバー11の握り部に設けたスイッチによっても入り操作できるので、条合わせを行った後、変速レバー11を前進変速操作径路Fの任意の位置に操作するとともに、そのスイッチを操作してして植付けクラッチ60を入れて植付け走行を開始し、その後に左右のマーカー選択操作径路ML,MRの一方に操作して所要の線引きマーカー20を作用姿勢に切換えることもできる。
【0094】
また、田植え作業の形態としては、畦際に一行程分のスペースを空けて往復植えを開始し、往復植えが終了した後に畦際に沿って周り植えを行う形態あり、この場合、往復植えを開始する前に、一方の線引きマーカー20を作用姿勢に切換えて植付けを行わないで線引きだけを行う走行時には、マーカー選択操作径路ML,MRの一方を操作して線引きマーカー20を作用姿勢に切換えた後に、変速レバー11のスイッチを指操作してして植付けクラッチ60を切ることができる。
【0095】
〔第7例〕
【0096】
図11に第7例における変速操作径路が示されている。この例では、前進変速操作径路Fにおいて変速レバー11は、左右に操作可能、かつ、横方向操作の中立に復帰付勢されており、低速域において変速レバー11が左方へ横操作されることで苗植付け装置4が上昇されるとともに植付けクラッチ60が切り操作され、変速レバー11が右方へ横操作されることで苗植付け装置4が下降され、更に、苗植付け装置4が下降操作された後の2回目の右方への横操作で植付けクラッチ60が入り操作されるようになっている。
【0097】
また、前進変速操作径路Fの中速位置からは左右にマーカー選択操作径路ML,MRが延出されており、このマーカー選択操作径路ML,MRへの選択操作によって操作された側の線引きマーカー20の格納ロックが解除されるとともに、植付けクラッチ60が入り操作されるようになっている。
【0098】
〔第8例〕
【0099】
図12に第8例における変速操作径路が示されている。この例は、上記第7例を変形したものであり、前記マーカー選択操作径路ML,MRが前進変速操作径路Fの最高速度位置から延出され、前進変速操作径路Fの全域において、左方への横操作で苗植付け装置4が上昇されるとともに植付けクラッチ60が切り操作され、変速レバー11が右方へ横操作されることで苗植付け装置4が下降され、更に、苗植付け装置4が下降操作された後の2回目の右方への横操作で植付けクラッチ60が入り操作されるようになっている。
【符号の説明】
【0100】
3 走行機体
4 水田作業装置
8 エンジン
11 変速レバー
20 線引きマーカー
25 調速機構
60 作業クラッチ(植付けクラッチ)
F 前進変速操作径路
F’ 副前進変速操作径路
R 後進変速操作径路
N 中立位置
N(r) 後進変速操作径路の中立位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進変速操作経路と後進変速操作経路とを、前記前進変速操作経路の中立位置と前記後進変速操作経路の中立位置とが隣接して連通するように、所定間隔を置いて平行に備え、
走行速度を無段に変速する変速レバーを、前記前進及び後進変速操作経路の中立位置、前記前進及び後進変速操作経路に沿って操作可能に構成し、
前記変速レバーとエンジンの調速機構とを連係して、
前記変速レバーを前記後進変速操作経路の中立位置に操作した状態でのエンジンの回転速度と、前記変速レバーを前記後進変速操作経路の後進1速に対応した位置に操作した状態でのエンジンの回転速度とが同じになるように構成し、
前記変速レバーを前記後進変速操作径路の最高速位置に操作した状態でのエンジンの回転速度が、前記変速レバーを前記前進変速操作径路の最高速位置に操作した状態でのエンジンの回転速度よりも小さくなるように構成している水田作業機。
【請求項2】
前記変速レバーを前記前進変速操作経路の中立位置側から前記前進変速操作経路の高速位置側へ操作するに連れて、前記調速機構を高回転側に作動させ、前記変速レバーを前記前進変速操作経路の高速位置側から前記前進変速操作経路の中立位置側へ操作するに連れて、前記調速機構を低回転側に作動させるように構成している請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記変速レバーを前記前進変速操作経路の中立位置側から前記前進変速操作経路の高速位置側へ操作するに連れて、前記調速機構を直線的に高回転側に作動させ、前記変速レバーを前記前進変速操作経路の高速位置側から前記前進変速操作経路の中立位置側へ操作するに連れて、前記調速機構を直線的に低回転側に作動させるように構成している請求項2に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−249635(P2012−249635A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−158742(P2012−158742)
【出願日】平成24年7月17日(2012.7.17)
【分割の表示】特願2010−95749(P2010−95749)の分割
【原出願日】平成13年9月28日(2001.9.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】