説明

水系固形化粧料

【課題】
携帯性に優れ、みずみずしい使用感で、塗膜の均一性、耐水性に優れ、使用時に化粧料表面をマット等の小道具で擦り取る動作を繰り返し行なっても、亀裂や割れ等が生じにくく化粧料表面の美観が保たれる水系固形化粧料を提供する。
【解決手段】
次の成分(A)〜(D);成分(A):寒天、成分(B):水溶性粘着剤、成分(C):水、成分(D):トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体を配合する水系固形化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯性に優れ、みずみずしい使用感を有する水系固形化粧料に関し、更に詳細には、均一な仕上がりで、塗膜の耐水性に優れ、使用時に化粧料表面をマット等の小道具で擦り取る動作を繰り返し行なっても亀裂が生じたり割れたりすることがなく、化粧料表面の美観が保たれる水系固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
水系固形化粧料は、水性成分を多く含有する水系の化粧料でありながら、固形状を呈する化粧料で、水性成分を多く含有する化粧料特有のみずみずしい使用感や自然で美しい仕上がりと、固形状化粧料が有する携帯性という両者の良さを併せ持つ画期的な化粧料である。この為、外出先で化粧直しすることの多いファンデーションやアイカラー等のメーキャップ化粧料や日焼け止め化粧料等として主に展開されているが、この具現化には、多くの課題があり、様々な面からの検討が成されてきた。
【0003】
水系固形化粧料は、一般に粉体や油剤を分散した水系成分と、寒天やゼラチン等の水溶性固化剤を混合して加熱溶解し、皿状の容器に流し込んだ後、冷却固化して成型し得られるが、化粧膜の耐水性が充分ではない場合があるため、配合する粉体の表面をフッ素系化合物や、シリコーン系油剤、金属石ケン、ロウ、油脂、炭化水素等の疎水性物質で処理することにより疎水化して配合し、撥水性を向上させる方法が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、水系固形化粧料は、ハンドバック等に入れて携帯されるため、携帯時に成形物が割れて崩れたり、水性成分が滲み出したりすることのないように耐衝撃性や保形性が保証された水準でなければならない。
さらに、水系固形化粧料は、成形された化粧料の表面をマットやスポンジ等の小道具で擦り取って肌に塗布するものであるため、小道具への取れ、塗布時ののび広がり、塗膜の均一性等、小道具とのマッチングや使用感の良さも、商品の重要品質として要求され、例えば、充填時の成型方法により、小道具への取れを良くする方法が提案されている(特許文献2参照)。
また、さらに、使い終わるまでの一定期間、その間、品質や使用に問題なく、見た目にもきれいな状態で繰り返し使えることも求められる。特に水系固形化粧料は、粉体等を分散した水系成分を水溶性固化剤で固めた比較的柔らかいベースであるため、マット等の小道具で擦り取った後の化粧料表面に、亀裂や割れ、えぐれ等の極端な凸凹や偏りが生じることなく、滑らかで美しい表面が保たれること、即ち化粧料表面の美観が維持されることは、小道具への取れを一定のものとし、ムラづきのない均一で美しい仕上がりにもつながり、商品品質上、重要なことである。
【特許文献1】特開平5−178723号公報
【特許文献2】特開平7−17828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように使用上問題のない良好な水系固形化粧料とするためには多くの解決すべき点があり、特許文献1のように疎水性物質で表面処理した粉体を配合した化粧料では、化粧膜の耐水性の向上は見られるものの、化粧膜の均一性が不十分であったり、却って損なわれたりする場合があった。
また、特許文献1のように、水溶性固化剤と水溶性粘着剤を配合することで、亀裂や割れが生じないよう化粧料のゲル強度を出そうとした場合、化粧料自体は固くなるものの、マット等の小道具が化粧料表面で上滑りし、化粧料が取れず肌に塗布できない場合があったり、無理に擦り取ろうとして、表面に亀裂が入ったり、割れたり、或いは力のかかった部分がえぐられ、穴状に掘れてしまう場合等があった。
また、特許文献2の充填成型時に化粧料表面に抱水性シートを使用する方法は、水系固形化粧料特有の問題点の解決法の1つであるが、これはマット等の小道具が化粧料表面で上滑りするのを防止し、取れを良くするための方法であって、化粧料を繰り返し使用して行く段階で化粧料表面に生じる亀裂や割れ等を改善し、美観を維持するための方法ではない。つまり、水系固形化粧料において、繰り返し擦り取る動作を行なっても、亀裂や割れ等が生じにくく化粧料表面の美観を維持するための方法については、これまで特に提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような状況を鑑み、本発明者らは、鋭意検討した結果、疎水化処理剤の中でも特にトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを用いて処理した粉体を、寒天、水溶性粘着剤、水と組み合わせて用いることで上記課題を解決する、つまり、水系固形化粧料としてのみずみずしい使用感と携帯性を併せ持ち、さらに化粧膜の耐水性、均一性に優れ、繰り返し使用しても化粧料表面に亀裂や割れ等が生じにくく美観が保たれる水系固形化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)寒天
(B)水溶性粘着剤
(C)水
(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体
を配合することを特徴とする水系固形化粧料を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、成分(A)を0.3〜6質量%、成分(B)を0.05〜2質量%、成分(D)を2〜30質量%配合する水系固形化粧料を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、上記成分(A)〜(D)に加えて、さらに成分(E)として油剤を配合することを特徴とする水系固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水系固形化粧料は、みずみずしい使用感と携帯性を併せ持つ化粧料において、均一な仕上がり、塗膜の耐水性に優れ、化粧料表面をマット等の小道具で擦り取る動作を使用の度に繰り返し行なっても亀裂や割れ等が生じにくく化粧料表面の美観が保たれる優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いられる成分(A)の寒天は系全体を固化し、固形化粧料としての形態を保持し、使用に適した硬さを与えるものである。成分(A)の寒天のゼリー強度は、系全体を固化し、固形化粧料としての形態の保持が可能なものであれば特に限定されないが、20〜2000g/cmのものが好ましく、より好ましくは30〜1000g/cmである。
ここでゼリー強度とは1.5質量%(以下、単に「%」と記す)となるように寒天を水に加熱溶解し、20℃で15時間放置、凝固せしめたゲルについて、その表面を1cm当たり20秒間耐え得る最大質量のことを言う。
【0012】
本発明に用いられる成分(A)の配合量は、特に制限はないが、0.3〜6%が好ましく、0.5〜4%がより好ましい。この範囲であれば、寒天によるゲル化力が適当で、化粧料が固くなりすぎることも、反対に固形化粧料としての形態を保持できない程柔らかくなることもなく、コンパクト容器等に内蔵し携帯することができ、小道具への取れや肌へののび広がりが良好で均一な化粧膜が得られる。
【0013】
本発明に用いられる成分(B)の水溶性粘着剤は、上記成分(A)の寒天のような、系を固化し固形化粧料とするだけの固化能はないが、粘着性を有し、系全体に結合力(引っ張り強度)を持たせることのできる高分子で、成分(A)の働きを補強するために用いられる。
即ち、成分(A)の寒天は、系を固化する作用は強いものの、これを他の成分と合わせて化粧料とし、マットやスポンジで擦り取る等の力を加えた場合には、もろく崩れ易い。成分(B)は、これを補強する目的で用いられる。
かかる水溶性粘着剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アルギン酸ソーダ、カラギーナン、クインスシードガム、キサンタンガム、ペクチン等の天然多糖類;ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル、ポリビニルピロリドン等の合成高分子等が挙げられ、カラギーナン、クインスシードガム、キサンタンガム、ペクチン等の天然多糖類が、粘着性のより高いゲルが得られ好ましい。
【0014】
これら水溶性粘着剤の配合量は、0.05〜2%が好ましく、0.1〜1%が更に好ましい。この範囲であれば、化粧料とした場合の結合力が適度であるので、化粧料の表面をマット等で擦り取る動作を繰り返しても、亀裂や割れが生じたり、或いはえぐられて穴状に掘れたりすることなく滑らかな表面のままで化粧料表面の美観が保たれ、また、使用時に水溶性粘着剤特有のべたつきもなく、肌へののび広がりに優れたものとなる。
【0015】
成分(C)の水は、本発明において、みずみずしい使用感を発現するために必須のものである。成分(C)の配合量は、特に制限はないが、みずみずしい使用感を充分に発現するためには40〜95%が好ましく、50〜80%がより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、処理を施す粉体本来の着色効果やカバー力、紫外線遮蔽効果等に加え、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理することにより、使用時ののび広がりを良くし粉っぽさのない優れた使用感で、化粧塗膜に均一性と耐水性を付与するために配合される。また、他の成分と組合せることにより、系全体の結合力を増し、繰り返し擦り取って使用しても化粧料表面に亀裂や割れが生じにくく美観が保たれるようにするために配合される。
成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、各種粉体を下記化学式(1)で示されるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names):パーフルオロオクチルトリエトキシシラン)で表面処理して得られるものである。
C−(CF−(CH−Si−(OCHCH ・・・(1)
【0017】
成分(D)の処理を施す粉体としては、通常化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、無水ケイ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上を複合化したものを用いても良い。
【0018】
成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の製造方法(表面処理方法)は特に限定されないが、特開2007−238690号公報等に記載の方法に従って処理することができる。例えば、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをミキサー内で添加し、粉体と混合した後、熱処理を行い、必要に応じて粉砕することにより、目的とする表面処理粉体を得ることができる。あるいは、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをアセトン、トルエン等の有機溶媒に加熱溶解もしくは分散し、その中に粉体を加えて混合した後に有機溶媒を除去し、乾燥後粉砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン以外のフッ素系化合物やシリコーン系油剤、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石ケン、界面活性剤等の他のコーティング剤で前処理または同時に処理しても良い。
【0019】
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への処理量は処理粉体全量中0.05〜20%が好ましく、0.1〜15%の範囲がより好ましい。この範囲であれば処理剤同士の縮合や未反応の処理剤の残存による感触や流動性への悪影響等が起きることなく、粉体に対して疎水性を十分に付与することができ、これを配合して得られる水系固形化粧料は使用時ののび広がりが良好で粉っぽさがなく優れた使用感で、均一で耐水性に優れた化粧塗膜が得られ、繰り返し擦り取って使用しても化粧料表面に亀裂や割れ等が生じにくく美観が保たれる。
【0020】
また、本発明に用いられる粉体は全てトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理したものを使用する必要はなく、本発明の効果を妨げない範囲で未処理の粉体や一般油剤、他のフッ素系油剤、シリコーン系油剤、界面活性剤等で処理したものを組み合わせて使用することもできる。
【0021】
成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の配合量は、特に限定はないが、2〜30%配合するのが好ましく、3〜20%がより好ましい。この範囲であれば、使用時ののび広がりが良好で粉っぽさのない優れた使用感が得られ、均一で耐水性に優れた化粧膜が得られると共に、系全体の結合力が上がり、繰り返し擦り取って使用しても化粧料表面に亀裂や割れ等が生じにくく美観が保たれる。
【0022】
本発明の水系固形化粧料には、更に成分(E)として油剤を配合することができる。成分(E)を配合することにより、マットへの取れ、塗布時ののびやなめらかさ、使用中のしっとり感をより良好なものとすることができる。
成分(E)の油剤としては特に制限はなく、通常化粧料に用いられる固形、半固形、液体の各種動植物油、鉱物油及び合成油を使用することができ、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状や動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油ゲル化剤等を使用することができる。
例えば、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等の炭化水素類;オリーブ油、ホホバ油、ミンク油、モクロウ等の油脂類;ミツロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、ホホバ油、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル等のトリグリセライド、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレスレテロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル油類、ステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸;セタノール等の高級アルコール類;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、三次元架橋構造を有するジメチルポリシロキサン重合物等のシリコーン油類、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体等が挙げられるが、中でも液体油が、塗布時ののびのよさやなめらかな使用感が得られるためより好ましい。
これら成分(E)の油剤を配合する場合は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は特に限定はないが、1〜30%配合するのが好ましく、2〜20%配合するのが更に好ましい。
【0023】
本発明の水系固形化粧料には、前記成分(A)〜(E)の他、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、低級アルコール、樹脂、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美容成分、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0024】
本発明の水系固形化粧料は、例えば、成分(A)及び成分(B)、(C)を80〜95℃に加熱溶解した後、成分(D)、場合により成分(E)も加え攪拌混合し、皿状の容器等に流し込んだ後、20℃以下に冷却固化して成型することにより製造することができ、下地化粧料、日焼け止め料、ファンデーション、アイシャドウ、ホホ紅等の固形状の製品とすることができる。かくして得られる本発明の水系固形化粧料は、外相が水性成分の水系化粧料で固形状のものである。
【実施例】
【0025】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1〜5及び比較例1〜4:ファンデーション
表1に示す組成により下記製造方法で水系固形ファンデーションを製造し、(イ)(繰り返し擦り取った時の)化粧料表面の美観の維持、(ロ)化粧膜の耐水性、(ハ)マットへの取れ易さ、(ニ)みずみずしさ、(ホ)仕上がりの均一性について、下記の評価方法及び下記基準によりそれぞれ評価した。その結果を併せて表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
以下の全ての実施例、及び比較例中の処理粉体(*1〜*4)は次のようにして製造した。
*1、*2(トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理):
イソプロピルアルコールに各粉体を添加分散し、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを添加し(*1は粉体97に対して3、*2は粉体95に対して5)、80℃で加熱混合することで表面処理する。乾燥し、イソプロピルアルコールを揮発後、粉砕処理して得た。
*3(シリコーン処理):
イソプロピルアルコールに各粉体及びジメチルポリシロキサン(シリコン KF−96(100CS)(信越化学工業社製)を加え(粉体97に対して3)、120℃で2時間焼付け処理を行った後、粉砕して得た。
*4(パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理):
水中に各粉体を加えスラリー状態とし、そこにパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩(アサヒガードAG530(旭硝子社製))の水分散物を徐々に加え(粉体95に対して5)混合した後、室温で静置し、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩処理を行った後、粉砕して得た。
*5:UP−37(伊那寒天社製 ゲル強度700g/cm
【0029】
(製造方法)
A.(22)〜(27)を95℃に加温溶解する。
B.Aを60℃まで冷却し、(1)〜(20)を加え混合分散する。
C.Bに(21)を加え混合した後、容器(直径50mm、深さ8mmの円筒トレー状)に充填し、冷却する。
【0030】
<評価方法>
(イ)(繰り返し擦り取った時の)化粧料表面の美観の維持:
ファンデーション用のマットで各試料表面を通常の化粧動作と同程度の力で繰り返し擦り取り、亀裂や割れの生じる回数を下記判定基準によって判定した。
<判定基準>
◎:31回以上擦り取っても化粧料表面に亀裂や割れが生じない。
○:21〜30回の擦り取りで化粧料表面に亀裂や割れが生じる。
△:11〜20回の擦り取りで化粧料表面に亀裂や割れが生じる。
×:10回以内の擦り取りで化粧料表面に亀裂や割れが生じる。
【0031】
(ロ)化粧膜の耐水性:
人工皮革(BEAULAX社製 バイオスキン(黒))にファンデーション用のマットで各試料を3mg/cm塗布し、2分放置乾燥した後、試料調製者がこの時点での化粧膜の状態を肉眼にて観察すると共に、色差計(MINOLTA社製 分光色差計CM−503d)で測色した。
そして、各試料を塗布した人工皮革を流水中(0.5L/S)に3分間浸した後、10分間室温にて乾燥し、再度、肉眼観察及び色差計で測色して、流水に浸す前と浸した後の化粧膜の変化及び色の変化(ΔE値)を下記判定基準により評価した。
<判定基準>
◎:肉眼観察では特に変化が見られず、流水に浸す前後でのΔE値が3.0以下。
○:僅かに化粧膜が流れているが、あまり変化がなく、
ΔE値が3.0を超えて6.0以下。
△:かなり化粧膜が流れ落ちていて、ΔE値が6.0を超えて9.0以下。
×:殆ど化粧膜が残っておらず、ΔE値が9.0を超える。
【0032】
(ハ)マットへの取れ易さ
(ニ)みずみずしさ
(ホ)仕上がりの均一性
(ハ)〜(ホ)の評価項目について、10名の専門パネラーによる使用テストを行い、下記評価基準に従って絶対評価をし、更にその10人の評点の平均点を下記判定基準により判定した。
<評価基準>
3点:非常に良い
2点:良い
1点:普通
0点:悪い
<判定基準>
◎:2.5点以上
○:1.8点以上2.5点未満
△:1.0点以上1.8点未満
×:1.0点未満
【0033】
表1の結果から明らかなように、成分(D)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体を配合した実施例1〜5のファンデーションはいずれも、化粧料表面を繰り返し擦り取っても亀裂や割れが生じにくく、凸凹のない滑らかで美しい表面が保たれる(美観が維持される)ため、マットへの取れも一定で良好であり、みずみずしい使用感と、ムラのない均一で美しい仕上がり、耐水性に優れた化粧膜が得られるものであった。
一方、成分(D)の処理粉体の代わりに未処理粉体を配合した比較例1は、粉体の撥水性が弱く、また、粉体と他の成分を併用することによる系全体の強度向上効果が弱いため、化粧膜の耐水性、均一性に欠け、繰り返し擦り取るとすぐに亀裂や割れが生じて化粧料表面の美観が損なわれるものであった。成分(D)の代わりに、シリコーンを用いて疎水化した粉体を配合した比較例2は、マットへの取れや仕上がりの均一性は劣り、化粧料表面を繰り返し擦り取った際にはすぐに亀裂が生じ、化粧料表面の美観が損なわれてしまうものであった。また、成分(D)の代わりに、他のフッ素系化合物であるパーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩で処理した粉体を配合した比較例3、この処理粉体とさらに成分(E)の油剤を加えた比較例4は、共に化粧膜の耐水性には優れるものの、仕上がりの均一性には欠けるもので、また、繰り返し擦り取ると亀裂が生じ易く化粧料表面の美観が損なわれるものであった。
【0034】
実施例6:ほほ紅
(処方) (%)
(1)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
酸化チタン *1 3
(2)雲母チタン 10
(3)セリサイト 5
(4)黄酸化鉄 0.1
(5)ベンガラ 0.8
(6)黒酸化鉄 0.1
(7)赤色226号 0.4
(8)ポリオキシエチレン(5)ヒマシ油 0.5
(9)大豆リン脂質 0.5
(10)香料 適量
(11)メチルパラベン 0.1
(12)1,3−ブチレングリコール 8
(13)寒天 *5 3
(14)ヒドロキシメチルセルロース 1
(15)精製水 残量
【0035】
(製造方法)
A.(11)〜(15)を加温溶解する。
B.Aに(1)〜(9)を加えて混合分散する。
C.Bに(10)を添加混合した後、容器(縦23mm、横50mm、深さ5mm)に充填し、冷却固化してほほ紅を得た。
実施例6のほほ紅は、化粧膜の均一性、耐水性に優れ、メーキャップ効果の持続するもので、且つ、繰り返し化粧料を使用しても化粧料表面に亀裂や割れ等が生じにくく美観が保たれ、携帯に便利なものであった。
【0036】
実施例7:O/W乳化型アイシャドウ
(処方) (%)
(1)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
二酸化チタン *1 1
(2)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
雲母チタン *1 15
(3)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
セリサイト *1 4
(4)黄酸化鉄 1.5
(5)ベンガラ 0.2
(6)黒酸化鉄 0.5
(7)黄色4号 0.5
(8)ポリオキシエチレン(5)ヒマシ油 1
(9)ジメチルポリシロキサン *6 5
(10)香料 適量
(11)メチルパラベン 0.2
(12)1,3−ブチレングリコール 5
(13)グリセリン 3
(14)寒天 *5 3
(15)ポリアクリル酸ナトリウム *7 0.8
(16)精製水 残量
*6:シリコンKF−96(10CS)(信越化学工業社製)
*7:アロンビスS(日本純薬社製)
【0037】
(製造方法)
A.(11)〜(16)を加温溶解する。
B.Aに(1)〜(9)を加えて混合分散する。
C.Bに(10)を添加混合した後、容器(縦25mm、横30mm、深さ4mm)に充填し、冷却固化してアイシャドウを得た。
実施例7のアイシャドウは、化粧膜の均一性、耐水性に優れ、メーキャップ効果の持続するもので、且つ、繰り返し化粧料を使用しても表面に亀裂が生じにくく、携帯にも便利なものであった。
【0038】
実施例8:サンカット(登録商標)料:
(処方) (%)
(1)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
微粒子酸化チタン *2 8
(2)オレイン酸ポリオキシエチレン(10)ソルビタン 1
(3)大豆リン脂質 0.5
(4)メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 3
(5)オクタン酸セチル 1
(6)香料 適量
(7)メチルパラベン 0.1
(8)1,3−ブチレングリコール 6
(9)寒天 *5 3
(10)キサンタンガム 0.3
(11)精製水 残量
【0039】
(製造方法)
A.(7)〜(11)を加温溶解する。
B.Aに(1)〜(5)を加えて混合分散する。
C.Bに(6)を添加混合した後、容器に充填し、冷却固化してサンカット(登録商標)料を得た。
実施例8のサンカット(登録商標)料は、携帯に便利で、みずみずしい使用感で、化粧膜の均一性、耐水性にも優れ、日焼け止め効果の高いもので、繰り返し化粧料を使用しても化粧料表面に亀裂や割れが生じたり、えぐれて穴状に掘れてしまうこと等がなく、外観の美しさが保たれる優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D);
(A)寒天
(B)水溶性粘着剤
(C)水
(D)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体
を配合することを特徴とする水系固形化粧料。
【請求項2】
成分(A)を0.3〜6質量%、成分(B)を0.05〜2質量%、成分(D)を2〜30質量%配合することを特徴とする請求項1記載の水系固形化粧料。
【請求項3】
さらに、成分(E)として、油剤を配合することを特徴する請求項1又は2記載の水系固形化粧料。

【公開番号】特開2010−95487(P2010−95487A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269124(P2008−269124)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】