説明

水素に富むガスを発生させるための炭化水素の触媒による変換のための方法及び装置

本発明は、水素に富むガスを発生させるための炭化水素の触媒による変換、前記装置の使用及び水素を発生させるための方法に関する。該装置は、改質触媒(5)、炭化水素を触媒に供給するための手段(8)を含む。改質触媒は燃焼プロセスの排気ガスが導通する排気導管(3)内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、炭化水素の触媒による変換に関する。
【0002】
背景技術
水素は多くの化学プロセスのための重要な要素であり、数多くの技術手法において使用されている。水素は、例えば燃料電池を搭載した車両における電気エネルギーの発生のための燃料として必要とされている。しかしながら、水素貯蔵の危険性のために、水素は典型的には自動車上には貯蔵されない。その代わりに、水素を含有するガス流を形成させるためにガソリン又はディーゼル燃料から水素を車両内で製造するための装置及び方法が開発されてきた。
【0003】
例えば1つの方法では、水蒸気が燃料に添加され、この混合物は水蒸気改質法と呼称される方法で水素及び一酸化炭素に変換される。水素はPEM燃料電池のための燃料として使用される。この水蒸気改質法は吸熱反応であり、改質反応器を約700〜800℃の必要な反応温度に加熱するための付加的な燃焼器を必要とする。
【0004】
それとは異なり、改質法を、自己熱的に、所定の量の酸素を水蒸気と燃料との混合物に添加し、第一の熱を燃料の接触部分酸化(CPO)により発生させ、その後、水蒸気改質を開始させることにより行うことができる。前記の方法によれば、改質油は、PEM燃料電池の汚染を回避するために、水素約30〜40体積%及び付加的に一酸化炭素10〜15体積%を含有し、その際一酸化炭素は後続の浄化工程(高温及び低温シフト工程;HTS及びLTS;選択酸化PROX)により50体積ppm以下に低減されねばならない。
【0005】
炭化水素の自己熱水蒸気改質のための方法はUS2002/0009408A1に記載されている。前記の方法には、予熱温度への反応混合物の加熱、及びその後の、自己熱水蒸気改質を実施するための触媒反応器への反応混合物の供給が必要である。全体的に、慣用の自己熱水蒸気改質は巨大でかつ精巧な装置内で実施される。
【0006】
水素又は水素に富むガスは種々の目的のための車両において使用することができるため、よりコンパクトな装置及び車両内で水素を発生させるための効率的な方法の開発が求められている。本発明は、前記問題に対する1つの解決法を提供する。
【0007】
発明の概要
本発明は炭化水素の触媒による変換に向けたものであり、かつ炭化水素を発生させるための装置、該装置を使用するための方法及び水素に富むガス流を発生させるための方法を提供する。生じるガス流を、例えば燃料電池、粒子フィルター及びNOx吸蔵触媒といった装置にさらすことができる。
【0008】
装置は、触媒、並びに、触媒に炭化水素を供給するための装置を含む。装置内で、触媒は、燃焼プロセスの排気ガスが導通する排気導管内に配置されている。付加的な炭化水素が排気流に添加され、十分な改質条件が確立された際に外部着火機序の導入なしに水素の給源として使用されることができる。従ってこれは、内燃機関の排気ガスからの、特に希薄燃焼エンジンの排気ガスからの水素の効率的な発生を可能にする。
【0009】
1つの実施態様によれば、本発明は、
a)第一の排気ガス導管、ここで、前記の第一の排気ガス導管は第一の部分排気ガス流を通過させることができる;
b)前記の第一の排気ガス導管内に連続して配置されている燃料噴射装置及び改質触媒;及び
c)第二の排気ガス導管、ここで、前記の第二の排気ガス導管は第二の部分排気ガス流を通過させることができる
を含む、炭化水素の触媒による変換のための装置を提供する。
【0010】
有利に、本発明の装置は希薄条件下で内燃機関、殊にディーゼル機関の排気系において運転される。
【0011】
第二の実施態様によれば、本発明は水素及び一酸化炭素に富む排気ガスを発生させるための方法を提供し、前記方法は:
a)燃料を希薄な排気ガス流に導入し、その標準化された空気/燃料比を1以下の値に低下させ、かつ前記の排気ガス流を改質触媒に導通させる工程、
b)触媒上で噴射燃料の第一の部分を燃焼させ、前記触媒を改質温度に加熱する工程;及び
c)前記の噴射燃料の第二の部分を、一酸化炭素及び水素を含有するガスに変換する工程
を含む。
【0012】
前記方法は、水素及び一酸化炭素に富むガスを発生させるための手段を提供する。使用される排気流はすでに水を含有し、かつ炭化水素を触媒上で燃焼させるのに適当な温度を有する。噴射燃料の第一の部分と組み合わせられた前記の排気ガス流は、接触部分酸化により熱、一酸化炭素及び水素を発生させるために使用され、これは排気ガス中に含有される酸素を伴った、触媒での噴射された炭化水素の第一の部分の燃焼によるものである。酸素含分の低下及び排気ガス流の温度の上昇に伴い、運転条件は、噴射燃料の第二の部分の水蒸気改質にとってより有利となる。
【0013】
前記方法は、排気ガス中に水が含まれているために、部分酸化の間の煤煙の形成が低減されるという利点をもたらす。更に、高温であるために、系は、排気ガス中に含まれる酸素を伴って付着する煤煙を自動的に焼き去る。
【0014】
本発明は特に、可動及び比較的小さな定置の適用のために水素及び一酸化炭素を発生させるために有益である。水素及び一酸化炭素に富む排気ガスは多様な方法で使用することができる。例えば慣用的には、炭化水素を希薄燃焼エンジンの排気ガスに噴射し、窒素酸化物吸蔵触媒を、吸蔵された窒素酸化物に関してか又は硫黄化合物での毒作用に関して再生する。付加的な炭化水素を、粒子フィルターが後に続いている酸化触媒の前で噴射し、粒子フィルターを酸化触媒上での炭化水素の燃焼により発生する熱を用いて再生することも公知である。そのような全ての適用において、炭化水素を、上記の方法で発生した水素及び一酸化炭素と置換することは有利であり、それというのも、水素及び一酸化炭素は炭化水素よりも更に反応性の種であるためである。
【0015】
従って、本発明によれば、全ての適用のために(所定の課題を実行するために付加的な炭化水素を排気ガス流に噴射しなければならない場合であっても)、炭化水素を直接使用するのではなく、その代わりに炭化水素を改質し、生成された水素及び一酸化炭素を使用して課題を果たすことが検討されている。
【0016】
図面の簡単な説明
図1:本発明による装置の所定の実施態様の概略図を示す。
【0017】
図2:第一の排気導管及び第二の排気導管の相互の可能な配置を示す。
【0018】
図3:燃料電池を含む、本発明による装置の所定の実施態様の概略図を示す。
【0019】
詳細な説明
本発明は、水素に富むガスを発生させるための炭化水素の触媒による変換に向けたものである。装置、該装置を使用するための方法及びプロセスが提供される。
【0020】
本発明の開示は、触媒又は水素発生技術に関する入門書であることを意図するものではない。基本的概念は当業者に公知であり、ここでは詳細には記載しない。
【0021】
1つの実施態様によれば、本発明は、水素に富むガスを発生させるために、炭化水素の触媒による変換のための装置を提供する。該装置は、触媒及び触媒に炭化水素を供給するための装置を含む。炭化水素を供給するための装置はここでは「燃料噴射装置」と呼称される。
【0022】
本発明の装置は、例えばディーゼル機関又は他の希薄燃焼エンジンの排気流内に配置されてよい。ディーゼル機関が典型的に希薄条件下で運転されることは当業者に公知である。従って、ディーゼル機関において、燃料噴射装置による炭化水素の添加の前の排気ガスは、1より大きいか又は1にほぼ等しい、標準化されたラムダ値又は標準化された空気/燃料比を有する。
【0023】
触媒は排気導管内に配置されており、この排気導管はここでは「第一の排気ガス導管」と呼称され、燃焼プロセスの排気ガスの第一の部分である第一の排気ガス流を通過させる。有利に、希薄な運転条件下で、触媒は炭化水素を水と二酸化炭化炭素とに変換し、改質条件下で、供給された炭化水素を少なくとも部分的に一酸化炭素及び水素に変換することができる。更に有利に、触媒は改質触媒又は三元触媒である。
【0024】
本発明の装置は更に第二の排気ガス導管を含む。第一の排気ガス導管及び第二の排気ガス導管は物理的に別個で平行な排気流を形成してよいか、又は第一の排気ガス導管は第二の排気ガス導管内に配置されていてよく、その場合、第一の排気ガス導管の外表面は第二の排気ガス導管の内表面を形成する。
【0025】
装置内で、機関からの排気ガスの一部分は第一の排気ガス導管を通過し、機関からの排気ガスの他の部分は第二の排気ガス導管を通過する。燃料噴射機序又は燃料噴射装置は、炭化水素を、第一の排気ガス導管を導通する第一の排気ガス流に添加する。有利に、燃料噴射機序又は燃料噴射装置は、炭化水素を、触媒の上流で、第一の排気ガス導管に添加する。必要な燃料及び排気ガス流の量は、触媒を通過する流量、触媒の温度、及び、利用工程、例えば水素及び一酸化炭素を下流の触媒の再生のために使用する工程において必要なH濃度及びCO濃度と相関関係にある。
【0026】
有利に、装置は更に、触媒の温度を測定するための温度プローブを含む。温度プローブの使用により、噴射燃料を添加すべき時の自動モニタリングが可能となる。従って、噴射を自動始動することができる。
【0027】
第一の排気ガス導管及び第二の排気ガス導管は全ての排気ガス系の一部であり、エンジンの下流に配置されている。第一の排気ガス導管及び第二の排気ガス導管は、エンジンからの排気ガスの一部が一方又は他方の排気ガス導管に進入し、その際、第一の部分排気ガス流及び第二の部分排気ガス流がそれぞれ形成されるように構造化されている。
【0028】
有利に、装置は、前記の第一の排気ガス導管と前記の第二の排気ガス導管との間に排気ガスの部分流を制御するための手段を含む。そのような手段は、第一の排気ガス導管に進入する排気ガスの量を制御するためのスロットルであってよく、更に有利に、同様に、別個のスロットルが、第二の排気ガス導管に進入する排気ガスの量を制御するために使用される。
【0029】
基本的な実施態様において、第一の排気ガス導管及び第二の排気ガス導管はモーターの下流に配置されており、上記のスロットル又はガスの体積流量を制御するための他の機序は、排気ガス導管のそれぞれの開始部に存在している。更に、有利に、第一の排気ガス導管内には、第一の排気ガス導管のためのスロットルの下流で炭化水素を供給する手段と連結した、霧化空気を供給する手段が存在する。この炭化水素はここでは「噴射燃料」と呼称される。
【0030】
噴射燃料の進入箇所の下流には改質領域が存在し、この領域内には上記の改質触媒(”第一の触媒”又は”触媒コンバータ”)が配置されており、適当な条件下で水素が発生する。改質領域の更に下流では、第一の排気ガス流が第二の排気ガス流と合流し、合流排気ガス流が形成される。この合流排気ガス流はその後、例えば粒子フィルター又は窒素吸蔵触媒にさらされてよい。
【0031】
第一の排気ガス導管を第二の排気ガス導管内に配置することは特に有利である。この副次的な実施態様下で、第一の排気導管は、外表面領域と内表面とを有する短い導管片が形成されるように設計されていてよい。短い導管は、排気ガスの第二の部分流が第一の排気導管の外表面領域に沿って導かれるように第二の排気導管内に配置されていてよい。この実施態様において、第二の排気ガス導管内の排気ガスの熱は第一の排気ガス導管の外表面領域を加熱するために使用されることができ、これは内表面領域及び第一の排気ガス自体を加熱し、かつ改質条件の確立を助長する。
【0032】
本発明の装置は、ここでは「第二の触媒」と呼称される他の触媒が第一の触媒の下流に配置されている適用を含む、多数の種々の適用において使用することができる。例えば、第一の触媒の排気ガスは燃料電池のアノードへ燃料として供給されてよい。その後、アノード排気ガスは第二の排気ガス流と合流されてよい。
【0033】
他の実施態様において、装置は第一の触媒の下流に配置されたNOx吸蔵触媒を含み、かつ増加したレベルの水素を含む排気ガスを、NOx吸蔵触媒のエンジン独立再生のために利用することができる。
【0034】
更に他の実施態様において、装置は第一の触媒の下流に配置された粒子フィルターを含んでよい。増加した量の水素を含む排気ガスを、粒子フィルターのエンジン独立再生のために利用することができる。
【0035】
装置は特に可動及び比較的小さな定置の適用のための水素の発生のために有益であり、例えば自動車のための電力供給ユニットとして使用することができる。
【0036】
本発明の方法の装置を運転するための有利なプロセス下で、噴射燃料を第一の触媒の上流で希薄な第一の排気ガス流に導入して空気/燃料比を1以下の値に低下させることにより、水素を発生させることができる。エンジンからの排気流に進入する残留する未燃焼及び部分的に燃料した炭化水素、並びに、噴射燃料からの炭化水素は、触媒を改質温度に加熱するために触媒において燃焼されてよい。改質条件が確立された後、噴射燃料からの炭化水素の他の部分を、一酸化炭素及び水素を含むガスに変換することができる。
【0037】
例えば、排気が最低温度、例えば200℃を超えた時に、ディーゼル機関又は定置燃焼器からの排気ガスの部分流(第一の排気ガス流)を使用することができる。炭化水素含有燃料、例えばディーゼル、ガソリン又は液体ガスを第一の排気ガス流に添加することができる。この部分流の間で、炭化水素含有燃料を噴射した後に、標準化された空気/燃料比λの最大値が1未満であり、有利に0.8未満であり、有利に0.5〜0.6であるように空気の添加が制限される。液体燃料が使用される場合、有利に燃料は、単成分ノズル又は2成分ノズル、超音波噴霧器又は燃料霧化のための他の同等の手段により計量供給される。
【0038】
排気ガスは希薄であり、エンジンからの未燃焼又は部分的に燃焼した炭化水素は熱の発生下に水及び一酸化炭素に変換される。このプロセスは約200〜250℃で開始される。付加的な燃料がこの流れに噴射されてよく、これは十分な改質条件が確立されるまでHO及びCOに変換され、熱を発生させる。HO及びCOに変換される噴射燃料の部分は「噴射燃料の第一の部分」と呼称することができる。しかしながら、十分に濃厚な条件が生じた場合、熱及び水の存在により、水蒸気改質条件及び一酸化炭素及び水素の形成が確立される。
【0039】
CO及びHに変換される噴射燃料の部分は「噴射燃料の第二の部分」と呼称することができる。この「噴射燃料の第一の部分」及び「噴射燃料の第二の部分」という語句は2つの異なる生成物の識別に好都合であるために使用される。燃料の部分自体は同一の燃料噴射装置から連続流中に供給することができ、噴射燃料の部分が第一の部分を意味するか又は第二の部分を意味するかは、炭化水素から水素へ変換するための必須条件が達成されたか否かによって指令される。
【0040】
従って、標準的な操作条件下で、希薄な排気ガスは第一の排気ガス導管と第二の排気ガス導管の双方に進入する。適当な温度での燃料の噴射はモニタリングされ、上記の温度プローブにより開始されてよい。
【0041】
触媒内で濃厚な条件下で行われる水素の形成は、水蒸気改質プロセスの燃焼、及び燃料中の炭化水素の部分酸化である。典型的な水蒸気改質プロセス下では付加的な水の供給が必要とされる。しかしながら、本発明によれば、(水蒸気の形の)水は既に排気ガス流中に存在する。排気ガス中の水(水蒸気)は煤煙の形成を阻止する。
【0042】
改質温度は、有利に噴射燃料の第一の部分と組み合わせられ、かつ排気ガス導管内で適当な導入箇所で燃焼された排気ガスにより達成される。この自動始動機序は付加的なハードウェア、例えば点火プラグ、高電圧装置及び安全装置の必要性を回避する。
【0043】
生成されるガスを、粒子フィルター又はNOx吸蔵触媒の再生のために直接使用することができる。更に、前記ガスを燃料電池の運転のために使用することができる。
【0044】
本発明を、添付の図を用いて更に説明する。
【0045】
図1は本発明による装置の特別な実施態様の概略図を示す。ディーゼル機関(1)の希薄な排気ガスが排気導管(2)を通じてエンジンを退去する。排気導管(2)は第一の排気導管(3)と第二の排気導管(4)とに分かれる。第一の排気導管(3)は第一の部分排気ガス流を改質触媒(5)に導通させ、第二の排気ガス導管により運搬される第二の部分排気ガス流と再度合流する。再度合流した排気ガス流を排気ガス浄化ユニット(9)内で浄化し、その後、排気ガスを大気中に放出する。排気ガス浄化ユニット(9)は単一の触媒又は複数の触媒の適当な配列及び/又は粒子フィルターであってよい。一種以上の触媒の最終的な選択は、達成された排気ガス浄化の程度に依存する。
【0046】
前記装置は、一酸化炭素及び水素に富む排気ガスを製造するために、要求に合わせて、例えば浄化ユニット中に含まれる触媒を処理するために使用される。そのような処理は、排気ガス浄化ユニット中に含まれる粒子フィルター又は窒素酸化物吸蔵触媒を再生するために開始されることができる。
【0047】
図1中の矢印(8)は炭化水素、例えばディーゼル燃料を改質触媒(5)の前で第一の排気ガス流中に導入するための手段を表す。この炭化水素はその後、改質触媒上での自己熱水蒸気改質により、一酸化炭素及び水素に変換される。この課題のために当業者に公知の任意の適当な改質触媒、例えばUS2002/0009408A1に記載された、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン又はその混合酸化物又はゼオライトから成る群から選択された酸化担持材料上に少なくとも1種の白金群金属を含有する触媒を使用することができる。極めて有利に、触媒は活性酸化アルミニウム上のロジウム及び場合により白金を含有する。慣用の三元触媒を使用することもできる。
【0048】
(8)で炭化水素を第一の排出ガス流に導入するための手段は、当業者に公知の任意の噴霧ノズル、例えば、ディーゼル燃料を霧化するために空気を使用する超音波ノズル、単一成分ノズル又は二成分ノズルであってよい。
【0049】
バルブ(6)及び(7)は任意のものであり、第一の排気流と第二の排気流との間の質量流量関係を変化させることができる。それにより、再合流された排気ガス流の空気/燃料比を、希薄な状態から後続の排気ガス浄化ユニット(9)で処理するために必要な値にまで変化させることができる。
【0050】
図2は本発明の装置の有利な配置を示す。ノズル(8)を介して導入された炭化水素の自己熱改質のための触媒(5)を含む第一の排気ガス導管(3)が、第二の排気ガス導管(4)の内部に配置されている。この装置内では、第二の排気ガス導管(4)はディーゼル機関の排気ガス導管(2)の一区域のみを形成している。ディーゼル機関のマニホルドから生じる排気ガス流(10)は第一の排気ガス流(11)と第二の排気ガス流(12’及び12’’)とに分かれる。第一の排気ガス流は第一の排気ガス導管(3)に進入する。第一の排気ガス導管を去った後、第一の排気ガス流は第二の排気ガス流と再合流し、再合流した排気ガス流(13)を形成する。
【0051】
第一の排出ガス導管に進入する排気ガス流の温度はディーゼル機関の運転ポイントに依存し、100〜500℃の間で変動し得る。図2の実施態様において、第二の排気ガス流は第一の排気ガス導管のジャケット表面に沿って流動し、自己熱改質の開始温度を確立しかつ維持するのに役立ち、これは接触部分酸化のための触媒(5)の着火温度に依存する。従って、自己熱水蒸気改質を実施するための第一の排気ガス流への炭化水素の導入は、ディーゼル機関の排気ガス温度が前記の着火温度を超えた時にのみ開始される。
【0052】
第一の排気ガス導管を去る改質された排気ガス流は約600〜800℃の温度を有する。
【0053】
図3は本発明の装置の他の実施態様を示す。この実施態様において、固体酸化物燃料電池(14)は改質触媒(5)の後に配置されている。改質触媒を去る改質された排気ガス流は増加した量の一酸化炭素及び水素を含有し、固体酸化物燃料電池のための燃料ガスとして直接使用される。固体酸化物燃料電池は高い運転温度を有し、かつポリマー電解質燃料(PEM)電池として毒作用を有する一酸化炭素に対して敏感でないため、改質された排気ガス流を燃料として直接使用することができる。しかしながら、本発明の範囲内では、改質された排気ガス流を冷却及び清浄化してPEM燃料電池のための燃料として使用することができるようにすることも検討された。図3に示されているように、燃料電池の排ガスは第二の排気ガス流と再合流され、最終的に排気ガス浄化ユニット(9)内で浄化される。
【0054】
本発明をある程度詳細に記載しかつ説明したが、請求項はそのように制限されるのではなく、請求項の各要素の語句及びそれと等価なものと釣り合いのとれた範囲であるべきであることが認識されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による装置の所定の実施態様の概略図を示す概略図。
【図2】第一の排気導管及び第二の排気導管の相互の可能な配置を示す概略図。
【図3】燃料電池を含む、本発明による装置の所定の実施態様の概略図。
【符号の説明】
【0056】
1 ディーゼル機関、 2 排気導管、 3 第一の排気導管、 4 第二の排気導管、 5 改質触媒、 6 バルブ、 7 バルブ、 8 炭化水素を導入するための手段、 9 排気ガス浄化ユニット、 10 ディーゼル機関のマニホルドから生じる排気ガス流、 11 第一の排気ガス流、 12’ 第二の排気ガス流、 12’’ 第二の排気ガス流、 13 再合流した排気ガス流、 14 固体酸化物燃料電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素の自己熱水蒸気改質のための装置において、前記装置が、
a)第一の排気ガス導管、ここで、前記の第一の排気ガス導管は第一の部分排気ガス流を通過させることができる;
b)前記の第一の排気ガス導管内に連続して配置されている燃料噴射装置及び改質触媒;及び
c)第二の排気ガス導管、ここで、前記の第二の排気ガス導管は第二の部分排気ガス流を通過させることができる
を含むことを特徴とする、炭化水素の自己熱水蒸気改質のための装置。
【請求項2】
前記装置が更に、前記の第一の排気ガス導管と前記の第二の排気ガス導管との間に排気ガスの部分流を制御するための手段を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記の改質触媒の下流で、前記の第一の排気ガス導管と前記の第二の排気ガス導管とが結合して結合排気ガス導管が形成されており、前記の第一の排気ガス流と前記の第二の排気ガス流とが合流排気ガス流を形成している、請求項2記載の装置。
【請求項4】
結合排気ガス導管が、合流排気ガス流を大気中への放出前に浄化するための排気ガス浄化ユニットを含む、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記の排気ガス浄化ユニットが連続してディーゼル酸化触媒及び粒子フィルターを含む、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記の排気ガス浄化ユニットが窒素酸化物吸蔵触媒を含む、請求項4記載の装置。
【請求項7】
更に、前記の第一の排気ガス導管内でかつ前記の改質触媒の下流に配置されている固体酸化物燃料電池を含む、請求項4記載の装置。
【請求項8】
ディーゼル機関及び請求項1の装置を含む自動車用エンジン。
【請求項9】
水素及び一酸化炭素に富む排気ガスを発生させるための方法において、前記方法が、
a)燃料を希薄な排気ガス流に導入し、その標準化された空気/燃料比を1以下の値に低下させ、かつ前記の排気ガス流を改質触媒に導通させる工程、
b)触媒上で噴射燃料の第一の部分を燃焼させ、改質触媒を改質温度に加熱する工程;及び
c)前記の噴射燃料の第二の部分を、一酸化炭素及び水素を含有するガスに変換する工程
を含むことを特徴とする、水素及び一酸化炭素に富む排気ガスを発生させるための方法。
【請求項10】
一酸化炭素及び水素を含有するガスを第二の排気ガス流と合流させ、一酸化炭素及び水素に富む合流排気ガス流を形成させる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
合流排気ガス流を大気中に放出する前に排気ガス浄化ユニット内で処理する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
NOx吸蔵触媒を再生するための方法において、請求項10記載の方法を含み、かつ水素に富む前記の合流排気ガスをNOx吸蔵触媒にさらすことを特徴とする、NOx吸蔵触媒を再生するための方法。
【請求項13】
粒子フィルターを再生するための方法において、請求項10記載の方法を含み、かつ水素に富む前記の合流排気ガスを粒子フィルターにさらすことを特徴とする、粒子フィルターを再生するための方法。
【請求項14】
燃料電池における発電のための方法において、請求項9記載の一酸化炭素及び水素を含有するガスを燃料として燃料電池にさらすことを特徴とする、燃料電池における発電のための方法。
【請求項15】
自己熱水蒸気改質のための装置を用いる方法において、前記の方法が自動車を運転することを含み、その際、前記の自動車が請求項1の装置を含むことを特徴とする、自己熱水蒸気改質のための装置を用いる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−526864(P2007−526864A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508264(P2006−508264)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006006
【国際公開番号】WO2004/110596
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】