説明

水素を用いる化学反応器ユニットから生じる水素系ガス流を転換するための方法

本発明は、水素を消費する少なくとも2つの反応器ユニットR1およびR2から生じる水素に基づくガス流出物を変換するための方法に関する。前記流出物は異なる程度の水素純度を有する。異なる水素流出物は前記の異なる水素流出物のためのガス分離ユニットUで処理する。その場合、非常に純粋な水素が得られ、追加の反応ユニット器R3に供給するために用いることができる。また、ユニットUは低度の水素純度を有する残留流れも生産し、これを石油化学設備の燃焼ガスネットワークに送ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、水素を用いる化学反応器ユニットから生じる水素系流出物の価値を回復するための方法に関する。
【0002】
多数の石油化学プロセスは、水素リッチなガスを用いる水素化工程を採用する。これは、石油炭化水素から直接生じる高い化学活性の生成物を組み合わせる基礎(building-block)化学製品の合成の場合である。かなり水素リッチなガスを含む主要な基礎化学製品は以下のとおりである。
【0003】
−アンモニア、メタノール、
−芳香族炭化水素:ベンゼン、トルエン、キシレン、
−シクロヘキサン、アニリン、トルエンジアミン(TDA)、
−アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、カプロラクタム、
−オキソアルコール、ブタンジオール(BDO)、過酸化水素、
−塩素、スチレン、直鎖アルキルベンゼン(LAB)、メチルエチルケトン(MEK)。
【0004】
これらの基礎化学薬品の合成のための方法は、共通して少なくとも3つの特徴を有する。まず、これらは全て、基礎化学薬品の合成の間に水素化工程を用いる。次に、これらのプロセスは全て、水素がリッチなガス(50から95重量%)のリサイクルを利用する。最後に、これらのプロセスは、水素リッチなガスをリサイクルするためのループからの部分的な取り出しを実施して、このループにおける不活性物質の蓄積を制限する。化学的に消費されるか、機械的損失、溶解または取り出しによって失われる水素は、水素リッチな補給ガス(その組成は、その製造方法に従って変化する)によって補われる。操作条件と処理される化合物は方法に従って変化するけれども、一般的に以下のことがいわれている。
【0005】
−水素の全消費量は、水素化すべき生成物の重量と比較して高い。
【0006】
−水素/炭化水素比は、反応に理論的に必要な水素の量よりはるかに大きい。
【0007】
−補給水素は、取り出しによる水素の損失を制限するために、高純度のものでなくてはならない。
【0008】
したがって、これらのさまざまなプロセスの間に、高純度の補給水素だけでなく、リサイクルループから取り出すことによっていまだ水素がリッチなガスの除去を行うことも必要である。多くの工業的な事例において、石油化学ユニットの性能、特に得られる製品のグレードは供給水素の純度により限定される。さらに、リサイクルガスに実施される取り出し操作の影響のもとでは、補給ガスの純度の低下とともに水素の消費が増加する。これは、そのユニットについて追加の操作コストをもたらす。
【0009】
これらの問題を回避するために、反応領域における水素分圧を増加させるという提案がなされてきた。第1の解決策は、リサイクルガスのフラクションを完全に取り出し、その中の不活性物質(軽質炭化水素、痕跡量の反応物または水素化生成物など)の濃度を限定することからなる。しかし、この高圧取り出し操作には、多数の欠点がある。
【0010】
−水素分圧への影響が一般的にかなり低い。
【0011】
−リサイクルガスは水素リッチなので、取り出し操作の結果の1つは、燃料ガスシステムへ向かう水素の損失である。そして、燃料ガスとしてわずかな程度に、この水素の価値を回復する。
【0012】
−この損失により、多量の補給ガスを導入しなければならない。
【0013】
第2の解決策は、PSAタイプの吸着技術によりリサイクルループからのガスを精製することからなる。この方法は、処理される唯一のガスが中位の純度(70から90体積%のH2)のものであり、99体積%を超える純度で得られる収率が並であるときに、石油化学においてある程度まで用いられるだけである。その結果、もたらされる水素の損失は、吸着をそれほど魅力的にするわけでない。
【0014】
第3の解決策、たとえば米国特許US6179996に開示されるものは、水素リッチな流出物を逆選択性膜により処理することからなる。水素選択性膜と比較して、このタイプの膜の利点は、水素を加圧下に維持することである。他方、望ましい水素純度と収率との間に妥協点を見つけなくてはならない。したがって、シクロヘキサンを与えるベンゼンの水素化から生じるガス流出物を処理して、処理される水素のほぼ30%を失う条件で、75体積%の水素純度を90体積%まで変化させることができる。同様に、アニリンを与えるニトロベンゼンの水素化の場合には、83体積%の水素純度から95%の水素純度までの変化が、処理される水素のほぼ40%の損失をもたらす。
【0015】
各々の石油化学プロセスによって必要とされる補給ガスの水素の純度は一般的に99体積%を超える。事実として、プロセス(接触改質、水蒸気分解など)の近くに利用できる水素源が常に存在するわけではなく、水素は必要とする純度で専用の生産業者によって供給されなければならない。水素源が近くで利用できれば、生産される水素を精製して、補給ガスの仕様に合わせる。ここで、補給ガスを精製するための技術は、リサイクルガスのための上述した技術と同様である。水素リッチなガスを精製するための2つの主要な経路は、吸着(PSA)または低温分離とこれに続くメタン化工程のままである。というのは、化合物COおよびCO2は、石油化学で用いられる水素化触媒のほとんどにとって毒であるからである。
【0016】
本発明の1つの目的は、上記問題を解決すること、より具体的には水素化工程を用いる石油化学プロセスの全水素消費を減少させることにある。
【0017】
もう1つの目的は、主補給ガスを精製することによって、および/または取り出し操作で失われる水素分子を回復することによって、水素化工程を用いるある種の石油化学プロセスの処理能力の障害を取り除くかまたは能力を増加させることにある。
【0018】
本発明の特徴および利点は、以下の記載を読むことで明らかになるであろう。本発明の実施形態は、添付の図面によって例示される非限定的な例として示される。
【0019】
これらの目的に対して、本発明は、水素が消費される少なくとも2つの反応ユニットR1およびR2(ユニットR2は圧力Pで水素リッチなガス流出物を生産し任意に水素プアなガス流出物を生産し、ユニットR1は少なくとも1種の水素プアなガス流出物を生産する)から生じる水素系ガス流出物の価値を回復するための方法であって、以下の工程を行う:
−工程a)の間に、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物を混合して、得られる混合物が圧力Pを示すようにし、
−工程b)の間に、工程a)の間に圧力Pに調節された、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物の混合物を、ユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物が供給されるガス分離ユニットUにおいて処理し、第1の出口でユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物の濃度より高い水素濃度を示す富化流を与え、第2の出口で廃棄流を与え、
−工程c)の間に、ユニットUの第1の出口から生じる富化流を、水素が消費される反応ユニットR3に再注入する。
【0020】
本発明は、石油化学サイトのユニットのような水素が用いられるいくつかの反応ユニットからなる水素ガスシステムの間のガス分離ユニットUの装置からなる。ガス分離ユニットUは、ユニットR1およびR2からの異なる水素純度をもつ水素含有ガスを処理し、高純度水素を反応ユニットR3に供給するか、または収量の損失なしにこの反応ユニットR3からのリサイクル水素を精製する。本発明は、水素が消費されるいくつかの反応ユニット、特に少なくとも2つの反応ユニットR1およびR2からの水素含有流出物の使用によって、設定された目的を達成することを可能にする。「反応ユニット」と言う用語は、反応が行われる生産サイトを意味するものと理解される。反応ユニットは、同様に、生産操作からのさまざまな流出物が収集されるタンクの組み合わせとしての反応器でもよい。これらのユニットは流出物がある種の特性を示すように選択しなければならず、本発明の方法によれば、流出物の各々の一部のみを処理することが可能であることが理解される。2つのユニットR1およびR2は、各々、異なる濃度で水素を含む少なくとも1種の流出物を生産しなければならない。ユニットR2は、ユニットR1およびR2から生じる全ての他の水素含有流出物より高い水素濃度を示す水素含有流出物を生産する。したがって、「水素リッチな流出物」と言う用語は、最も高い水素純度を示す反応ユニットから生じる流出物を表す。一般的に、この水素リッチな流出物は、50ないし99体積%の水素濃度を示す。ユニットR2から生じるこの水素リッチな流出物は、少なくとも5バール、好ましくは少なくとも15バールの圧力Pを示しうる。ユニットR1およびR2から生じる他のガス流出物は「水素プア」であり、これは各々について水素濃度の値が水素リッチな流出物の水素濃度の値より少なくとも10%だけ、好ましくは少なくとも15%だけ、より好ましくは15から50%だけ低いことを意味する。本発明によれば、R2は少なくとも1種の水素プアなガス流出物を生産する。好ましくは、この水素プアなガス流出物は、圧力Pに近い圧力を示す。本発明の方法によれば、R1またはR2のいずれかによって、他の追加の水素プアなガス流出物が生産されることもある。本発明によれば、水素プアな流出物または水素プアな流出物の混合物の圧力は、Pに近づくように調節される。R1のみが水素プアな流出物を生産する場合、圧力は圧縮または水頭損失によって調節することができる。R1および/またはR2がいくつかの水素プアな流出物を生産する場合、これらを全て混合して、混合物がPに等しい圧力を示すようにする。このような圧力を得るためには、圧力P未満の圧力をもつ水素プアな流出物の一部を圧縮することが必要であろう。しかし、水素プアな流出物の少なくとも1つがPより大きな圧力を示す場合、この圧縮は任意でもよい。加えて、水素プアな流出物の1つの圧力がPより大きい場合、例えば水頭手段の損失によって、圧力を減少させることができる。本発明は、R2から生じる水素プアな流出物またはR1および任意にR2から生じる水素プアな流出物の混合物がすでにPに近い圧力を示す方法も包含する。これらの場合には、圧力の調節は必要ない。これらさまざまな流出物の処理によって、本発明はR2から生じる水素リッチな流出物を富化して、これを水素が消費される反応ユニット中で使用することが可能にすることができる。この富化は、水素プアな流出物を減少させることにより得られる。したがって、ユニットは99体積%を超える水素純度を一般的に示す富化流を生産し、ユニットは燃料ガスシステムに運搬できる低水素純度かつ低圧の廃棄流をも生産する。廃棄流の圧力と水素濃度は、それぞれ、ユニットUに入る全ての流出物の圧力値および水素濃度値より低い。
【0021】
本発明の具体的な別の形態によれば、水素が消費される反応ユニットR3は、反応ユニットR2でありうる。この場合、本発明は、反応ユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物を回復すること、およびR1から生じる水素プアなガス流出物を用いてこれを水素富化することの両方を可能にし、ユニットR2におけるこの富化流出物をリサイクルすることを可能にする。この別の形態の間に、ユニットR3(またはR2)によって生産される水素リッチなガス流出物が、ガス分離ユニット(U)に供給する前に圧縮される必要があるだろう。
【0022】
本発明によれば、ガス分離ユニット(U)は好ましくは吸着タイプのものである。好ましくは、ガス分離ユニット(U)が内蔵コンプレッサーと組み合わせた圧力スイング吸着(PSA)ユニットであり、ユニットの各々の吸着塔に対して、吸着、減圧、パージおよび再加圧の段階を規定する一連の段階を有する圧力スイングサイクルを使用し、
−吸着段階の間、
・第1工程の間に、ユニットR2から生じる圧力Pを示す水素リッチなガス流出物を吸着塔の層と接触させ、
・第2工程の間に、
・一方で、工程a)の間に圧力Pに調節された、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物の混合物と、
・他方でPSAからのリサイクルガスとからなる、
圧力Pをもつ混合物を導入して吸着塔の層と接触させ、
水素以外の化合物を吸着し、吸着塔の層の水頭で、ユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物の濃度より高い水素濃度を示す富化流を生産し、
−減圧段階の間に、PSAから生じる廃棄流を生産し、
−パージ段階の間に、パージガスを生産し、
−PSAからのリサイクルガスが、圧力Pに圧縮した廃棄流であるか、または圧力Pに圧縮したパージガスかのいずれかである。このPSAプロセスによれば、第1の吸着段階において、R2から生じる水素リッチなガス流出物をPSAの第1の吸着層と接触させ、第2の段階において、それはユニットR1とR2から生じる他の水素プアな流出物とPSAから生じるリサイクルガスとの混合物であり、これを第1の吸着アセンブリと接触させる。リサイクルガスは単独のまたは混合物としての2種のガスからなっていてもよい。PSAから生じる廃棄ガスは圧縮されており、PSAから生じるパージガスは圧縮されている。好ましくは、これはパージガスであり、廃棄ガスではない。廃棄ガスは、PSAの減圧段階の最終段階から生じ、CPSA処理デバイスのPSAに組み込まれたコンプレッサーによって部分的に圧縮されるが、パージガスはPSAのパージ段階から生じ、リサイクルガスとして用いる前に、PSAに組み込まれた同じコンプレッサーによって部分的に圧縮される。これら2つのガスはともに、水素と不可避的に不純物を含む。いったん圧縮して、これらをR1および/またはR2から生じる水素プアな流出物と混合する。この混合は、R1とR2から生じる水素プアな流出物の圧力値に応じてさまざまな方式で行うことができる。非常に低い圧力を示す水素プアな流出物を廃棄ガスまたはパージガスと混合することができ、その後この混合物をPSA中に組み込まれたコンプレッサーによって圧力Pまで圧縮することができる。水素プアな流出物がPより大きな圧力を示す場合、他の水素プアな流出物の圧縮を避けてもよい。この場合、廃棄ガスまたはパージガスのみを圧縮してリサイクルガスを形成する。圧力Pでこれらの混合されたガスの全てを吸着剤の層へ導入することにより、ガスを再処理することができる。吸着段階の間に、ガス流出物を「並流」方向で層の底部に導入する。この接触工程の間に、H2以外の最も吸着性の高い化合物を吸着剤に吸着させ、本質的に水素を含むガスを約1バールの水頭損失まで減圧した圧力Pで生産する。この工程の間に、生産される水素は一般的に、少なくとも99mol%を超える、好ましくは少なくとも99.5mol%を超える純度を有する。したがって、この水素をR3のような別の水素化反応ユニットにおいて用いることができる。
【0023】
効率的な精製を得るために、PSAの層の吸着剤は、特に、不純物の吸着および脱着が可能でなければならない。吸着層は一般的に、いくつかの吸着剤の混合物からなり、前記混合物は、例えば、活性炭、シリカゲル、アルミナまたはモレキュラーシーブから選択される少なくとも2種の吸着剤を含む。好ましくは、シリカゲルは0.4ないし0.8cm3/gのポア体積と600m2/gを超える比表面積を示すべきである。好ましくは、アルミナは0.2cm3/gを超えるポア体積と220m2/gを超える比表面積を示す。ゼオライトは好ましくは、4.2Å未満のポアサイズを有し、5未満のSi/Alモル比を有し、NaおよびKを含む。活性炭は、好ましくは、800m2/gを超える比表面積および8ないし20Åのマイクロポアサイズを示す。好ましい形態によれば、PSAの各々の吸着剤層は、異なる性質の少なくとも3層の吸着剤からなる。PSAの各々の吸着剤層は、底部において、活性炭および/または炭素モレキュラーシーブの層によって、任意に頂部においてモレキュラーシーブの層によって被覆された、アルミナおよび/またはシリカゲルからなる保護層を含んでいてもよい。比率は、処理すべきガス混合物の性質に従って(特にCH4およびC3+炭化水素のパーセンテージに従って)変化する。例えば、75mol%のH2、5mol%のC3+および20mol%の軽質炭化水素(C1〜C2)を含む、COおよびN2の無水ガス混合物を、底部層に少なくとも10体積%のアルミナおよび15体積%のシリカゲルを含み、残部が活性炭で得られる層を有する吸着ユニットで処理することができる。
【0024】
PSAの減圧段階の間に廃棄ガスを生産する。廃棄ガスは、P未満の圧力で開始された向流的な減圧によって生産することができる。この廃棄ガスは不純物を含み、R1およびR2から生じる全ての流出物より低い水素濃度を示す。この廃棄ガスを、プロセスから排出して、上述したようにCPSAにおけるリサイクルガスとして燃焼または再使用することができる。
【0025】
サイクルの低圧に達したら、パージ段階を行い、吸着塔の再生を完了させる。パージ段階の間に、ガスを吸着塔に向流的に導入してパージガスを生産する。パージ段階の間に、吸着塔に向流的に導入されるガスは、減圧段階の工程の1つから生じるガス流である。パージガスは、一般的に、再圧縮後にリサイクルガスとして用いられる。
【0026】
再圧縮段階の間に、減圧段階のさまざまな工程の間に生産されるガスのような水素を含むガス流向流方向の導入によって、吸着塔の圧力を増加させる。
【0027】
内蔵コンプレッサー(CPSA)と組み合わせた圧力スイング吸着ユニットの使用は、水素を含む全ての流出物の同時処理を可能にし、各々の流れを圧力スイング吸着ユニットによって別々に処理した場合よりも良好な水素回復量を達成するという利点を示す。加えて、2つの別の流出物によるCPSAの供給のために、第3の反応ユニットのための水素の均一生産を維持することができる。これは、2つのユニットR1およびR2が、これらが作り出す流出物によって互いに補い合うことができるためである。一般的には、R1およびR2から生じる流出物の一部のみを処理する。
【0028】
本発明は、同じサイトにあるさまざまなユニットR1、R2およびR3の組み合わせによって実施することができる。したがって、本発明は特に、ユニットR1がシクロヘキサンの合成のベンゼンの水素化のためのユニットであり、ユニットR2がフェノールの水素化またはε−カプロラクタムの合成のためのユニットであり、R3がヒドロキシルアミンの合成のためのユニットである(フェノールの水素化とヒドロキシルアミンの合成はカプロラクタムの合成における2段階である)場合に関する。本発明は、いくつかのR1ユニットと1つのR2ユニットで実施することができる。したがって、本発明は、1つはトルエンの水素化による脱アルキル化のためのユニットであり、他方はシクロヘキサンの生産のためのユニットである、2つの反応ユニットR1があり、ユニットR2がキシレンまたはトルエンの水素不均化(hydrodisproportionation)のためのユニットである場合に関する。
【0029】
図1は、本発明による方法の具体的な実施を例示する。水素を用いる2つの反応ユニットR1およびR2が例示した石油化学サイトにある。これらは、一般的かつ純粋な水素源1によって水素2、3が供給される。反応に続いて、ユニットR1およびR2において以下のことを行う。
【0030】
−R2は2種の水素含有流出物を生産する。水素リッチで圧力Pを示す流出物6および水素が減少しP未満の圧力を示す流出物7である。
【0031】
−R1は水素を含む2種の流出物を生産する。水素が減少し圧力Pを示す流出物5、および水素が減少しP未満の圧力を示す流出物4である。
【0032】
これら4種の水素含有流出物を分離ユニットUによって処理する(これはPSAとコンプレッサーとの組み合わせである)。水素リッチな流出物6をPSAの水頭に導入し、そこに存在する不純物を除去する。PSAからのパージガス10を流出物7および4と混合する(これらは水素が減少し、P未満の圧力を示す)。これら3種の流出物10、4および7の混合物を、任意に、圧力Pに達するまでユニットUのコンプレッサーによって圧縮し、圧縮した混合物をユニットR1から生じる流出物5と混合し、流出物4、5および7とパージガス10との混合物が圧力Pを示し、吸着段階の工程の1つの間にPSAによって処理するようにする。PSAは流れ9を生産し、これは流出物6より高い水素濃度とPに近い圧力を示す。この流れ9を、高純度水素源1の寄与とともにまたは寄与なしで反応ユニットR3において用いる。PSAは、反応ユニットR1およびR2からのさまざまな水素含有流出物からの不純物を含む低圧の廃棄流8も生産する。
【0033】
図2は、本発明による方法の別の形態の具体的な実施を例示する。水素を用いる3つの反応ユニットR11、R12およびR2が例示した石油化学サイトにある。R11とR12は等価である。これらは水素リッチ源によって供給され、ユニットUに供給する水素含有流出物を生産する。R11は一般的で純粋な水素源1によって水素21が供給される。R12も水素源1によって水素22が供給される。一般的な水素源1は反応ユニットR2に供給することもできる。反応に続いて、ユニットR11、R12およびR2において以下のことを行う。
【0034】
−R2は水素含有流出物を生産する。これは流出物6であり、これは水素リッチで初期圧力Pを示す。
【0035】
−R11は2種の水素含有流出物を生産する。水素が減少しPを超える圧力を示す流出物51、および水素が減少しP未満の圧力を示す流出物41である。
【0036】
−R12は2種の水素含有流出物を生産する。水素が減少しPを超える圧力を示す流出物52、および水素が減少しP未満の圧力を示す流出物42である。
【0037】
これら6種の水素含有流出物を分離ユニットUにより処理する(これはPSAとコンプレッサーの組み合わせである)。流出物6をPSAの水頭に導入し、そこに存在する不純物を除去する。PSAからのパージガス10を、水素が減少した流出物41および42と混合する。これらの流出物10、41および42の混合物を、ユニットR11およびR12から生じる流出物51および52とともに圧縮させて組み合わせた混合物が圧力Pを示すようにさせることによって、任意に圧力Pに達するまでユニットUのコンプレッサーによって圧縮してもよい。1つの別の形態によれば、流出物51および/または52の少なくとも1つがPより大きい圧力を示してもよい。この場合、流出物41、42、51および52およびパージガス10の単純な混合により圧力Pの混合物が直接得られるならば、コンプレッサーの使用は不要であることがわかるであろう。圧力Pの流出物41、42、51、および52ならびにパージガス10の混合物を、吸着層の間にPSAによって処理する。PSAは流れ9を生産し、これは流出物6よりも高い水素濃度とPに近い圧力を示す。この流れ9を、高純度水素源1の寄与とともにまたは寄与なしで反応ユニットR2にリサイクルする。PSAは、反応ユニットR11、R12およびR2からのさまざまな水素含有流出物からの不純物を含む低圧の廃棄流8も生産する。本発明によれば、2つのR1ユニットを有することは必須ではない。検討している石油化学サイトに応じて、本発明による方法において、単一のR1ユニットまたは2を超えるR1ユニットを用いてもよい。上で定義したデバイスの使用によって、反応ユニットR1、R2、およびR3がある石油化学サイトのオペレーターは、さまざまなユニットによって用いられる水素含有ガスの品質を改善し、補給水素の消費を減少させることができる。というのは、もはや取り出すこと(図2の放出11)が必要ないからである(水素分子はこの取り出し操作から回復されていた)。本発明による方法は、オペレーターが本発明による方法の使用と同時にサイトに水素含有補給ガスを導入しつづけるならば、そのオペレーターは反応ユニットのいくつかの障害を除去することも可能にする。
【0038】
現行の解決策と比較して、本発明には多数の利点がある。まず、水素化反応ユニットの出口で数種の水素含有ガスの価値を回復することを可能にし、一方でこれらのガスは一般的に燃料として用いられる。次に、本発明により、以下の利点とともに水素含有リサイクルガスを精製することができる。
【0039】
−リサイクルガスの生成の間に得られる水素収率は、100%に達し得る(この水素収率は、ユニットUの第1の出口から生じる流れ(9)の水素流量の、水素リッチなガス流出物(6)の水素流量に対する比に相当する)。
【0040】
−放出(11)をなしですますことができる。
【0041】
−ユニットは障害を除去できるか、または製品の特性を改善できる。加えて、「新鮮な」水素の寄与がかなり減少する。さらに、本発明は、高水素純度のガス混合物、中位水素純度の高圧ガス混合物および低水素純度の低圧ガス混合物を、同じ圧力スイング吸着サイクルで処理することを可能にする。最後に、本発明による方法は、複合の燃料ガスシステムの圧力で廃棄流を生産し、そうしてこの系に排出することができる。
【0042】
例1−フェノールの水素化によるε−カプロラクタムの合成(ナイロン製造サイト)
図1で例示したスキームを、フェノールの水素化によるε−カプロラクタムの製造のための方法のさまざまな工程に適用する。ユニットR1はシクロヘキサンの合成のためのベンゼンの水素化のためのユニットであり、ユニットR2はε−カプロラクタムの合成のためのフェノールの水素化のためのユニットであり、ユニットR3は「ヒドロキシルアミン」の合成のためのユニットである。これらのユニットは、ナイロンの製造のための同じサイトにありうる。
【0043】
さまざまな流出物の特性を下記の表1にまとめる。
【表1】

【0044】
導入したおよびPSAとコンプレッサーを備えた精製ユニットUから生じるさまざまな流出物の特性を下記の表2にまとめる。
【表2】

【0045】
本発明による方法は、サイトの燃料システムへ向かう水素の損失を減少させることを可能にする。本発明がなければ、3つのユニットの操作は、取り出し操作によって6200Nm3/hの損失をもたらす。水素リッチな流出物6を処理するための通常のPSAの装置は、この損失を約1850Nm3/hに減少することを可能にする。本発明によれば、この水素損失を600Nm3/hに減少させることができる。その結果、ユニットR3の操作に必要な高純度補給水素(1)の消費は、12500から6900Nm3/hに変化し、45%だけ減少する。
【0046】
例2−芳香族錯体の製造サイト
図2で例示したスキームを、R11およびR12という2つの反応ユニットR1で実施する。1つはトルエンの水素脱アルキル化のためのユニットであり、他方はシクロヘキサンの製造のためのユニットである。ユニットR2はキシレンまたはトルエンの水素不均化(hydrodisproportionation)のためのユニットである。これらのユニットは、例えば、ポリエステルの製造のための芳香族塩基の製造の間に同じサイトでありうる。
【0047】
キシレンまたはトルエンの水素不均化のためのユニットR2は、80体積%に近い水素純度で水素含有流出物を生産する。本発明は、この流出物を精製してユニットR2に向けてリサイクルすることを可能にする。
【0048】
さまざまな流出物の特性を下記の表3にまとめる。
【表3】

【0049】
導入したおよびPSAとコンプレッサーを備える精製ユニットUから生じるさまざまな流出物の特性を下記の表4にまとめる。
【表4】

【0050】
本発明による方法は、水素不均化反応ユニットR2において15から20%だけ水素分圧を増加させることを可能にする。したがって、このユニットの障害を除去することができる(異性体化された炭化水素の処理のための能力の増加)。また、分解反応を減少させ、同じ変換率で異性体化された生成物に対する選択性を改善することもできる。
【0051】
最後に、本発明の使用により、ガスの取り出しを全くなくすこと、および補給水素の寄与が極度に限定することができる。したがって、取り出し操作なしですますことにより1300Nm3/hの節約を達成することができ、補給の減少により1500Nm3/hの節約を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の模式図である。
【図2】本発明の別の形態の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素が消費される少なくとも2つの反応ユニットR1およびR2(ユニットR2は圧力Pで水素リッチなガス流出物(6)を生産し任意に水素プアなガス流出物(7)を生産し、ユニットR1は少なくとも1種の水素プアなガス流出物(4、5)を生産する)から生じる水素系ガス流出物の価値を回復するための方法であって、以下の工程を行う:
−工程a)の間に、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物(5、4、7)を混合して、得られる混合物が圧力Pを示すようにし、
−工程b)の間に、工程a)の間に圧力Pに調節された、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物(5,4,7)の混合物を、ユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物(6)が供給されるガス分離ユニットUにおいて処理し、第1の出口でユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物(6)の濃度より高い水素濃度を示す富化流(9)を与え、第2の出口で廃棄流(10)を与え、
−工程c)の間に、ユニットUの第1の出口から生じる富化流(9)を、水素が消費される反応ユニットR3に再注入する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ユニットR2(6)から生じる水素リッチな流出物が少なくとも5バールの圧力を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ユニットR2(6)から生じる水素リッチな流出物が少なくとも15バールの圧力を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ユニットR2(6)から生じる水素リッチな流出物が50ないし99体積%の水素濃度を示すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
R1および任意にR2から生じる水素プアなガス流出物(4、5、7)が、水素リッチな流出物の水素濃度の値に対して少なくとも10%低い水素濃度を示すことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法
【請求項6】
水素が消費される反応ユニットR3が反応ユニットR2であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ガス分離ユニット(U)が吸着タイプのものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ガス分離ユニット(U)が内蔵コンプレッサーと組み合わせた圧力スイング吸着(PSA)ユニットであり、ユニットの各々の吸着塔に対して、吸着、減圧、パージおよび再加圧の段階を規定する一連の段階を有する圧力スイングサイクルを使用し、
−吸着段階の間、
・第1工程の間に、ユニットR2から生じる圧力Pを示す水素リッチなガス流出物(6)を吸着塔の層と接触させ、
・第2工程の間に、
・一方で、工程a)の間に圧力Pに調節された、R1および任意にR2から生じる全ての水素プアなガス流出物(5、4、7)の混合物と、
・他方でPSAからのリサイクルガスとからなる、
圧力Pをもつ混合物を導入して吸着塔の層と接触させ、
水素以外の化合物を吸着し、吸着塔の層の水頭で、ユニットR2から生じる水素リッチなガス流出物(6)の濃度より高い水素濃度を示す富化流を生産し、
−減圧段階の間に、PSAから生じる廃棄流(10)を生産し、
−パージ段階の間に、パージガスを生産し、
−PSAからのリサイクルガスが、圧力Pに圧縮した廃棄流(10)であるか、または圧力Pに圧縮したパージガスかのいずれかであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ユニットR1がシクロヘキサンの合成のためのベンゼンの水素化のためのユニットであり、ユニットR2がε−カプロラクタムの合成のためのフェノールの水素化のためのユニットであり、R3がヒドロキシルアミンの合成のためのユニットであることを特徴とする請求項1ないし5および7または8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
2つの反応ユニットR1を備え、一方はベンゼンのトルエンの水素化脱アルキル化のためにユニットであり、他方はシクロヘキサンの生産のためのユニットであり、ユニットR2はキシレンまたはトルエンの水素不均化反応のためのユニットであることを特徴とする請求項6および7または8のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−516151(P2007−516151A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537377(P2006−537377)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050511
【国際公開番号】WO2005/042640
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】