説明

水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置

【課題】水素ガスが圧縮機を通過することで発生するエネルギーロスを低減させた上で、回収容器内に回収された水素ガスを水素自動車の燃料タンクに充填することの可能な水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置を提供する。
【解決手段】圧縮機12により、圧縮された水素ガスを貯蔵容器36内に貯蔵し、次いで、貯蔵容器36内に貯蔵された水素ガスを導出させて冷却し、次いで、冷却した水素ガスにより、冷却手段よりも下流側に位置する管路及び該管路に設けられた機器を冷却し、次いで、管路及び該管路に設けられた機器の冷却に使用した水素ガスを回収容器82内に回収し、その後、回収容器82内に回収された水素ガスを、圧縮機12及び貯蔵容器36を経由することなく、水素自動車19の燃料タンクに充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置に関するものであって、より詳しくは、水素自動車の燃料となる水素ガスを水素自動車の燃料タンクに充填する水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池自動車のような水素自動車の燃料として用いられる水素ガスは、水素ガス供給源から水素自動車に至る管路に設けられた弁等を通過する際、ジュールトムソン効果により温度が上昇すると共に、水素自動車の燃料タンクに高圧に圧縮充填するための圧縮熱によっても温度上昇してしまう。
このように水素ガスの温度が上昇すると、燃料タンクの耐熱温度を超える問題や、充填後の冷却に伴う圧力降下等の問題が発生する。
【0003】
上記問題を解決可能な従来技術として、特許文献1がある。特許文献1には、冷却手段で冷却した水素ガスを充填管路、循環管路、及び回収管路等を通して回収容器に回収する予冷運転を行うことで、肉厚が厚く、熱容量が多大な配管や機器を水素自動車に水素ガスを充填する前に予め冷却する水素ガス充填方法及び水素ガス充填装置が開示されている。
特許文献1によれば、冷却に使用した水素ガスを回収容器に回収した後、減圧弁を通して圧力を降下させ、再度圧縮機を通して蓄圧器に充填することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の水素ガス充填方法及び水素ガス充填装置では、一旦圧縮機でエネルギーを使用して水素ガスを昇圧し、減圧弁を通過することから、該エネルギーを無駄に使用していた。
【0006】
そこで、本発明は、水素ガスが圧縮機及び減圧弁を通過することで発生するエネルギーロスを低減させた上で、回収容器内に回収された水素ガスを水素自動車の燃料タンクに充填することの可能な水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、圧縮機により、水素ガス供給源から供給された水素ガスを圧縮し、圧縮された前記水素ガスを貯蔵容器内に貯蔵する工程と、前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを導出させ、冷却手段により該水素ガスを冷却する工程と、冷却した前記水素ガスにより、前記冷却手段よりも下流側に位置する管路及び該管路に設けられた機器を冷却する工程と、前記管路及び該管路に設けられた機器の冷却に使用した前記水素ガスを回収容器内に回収する工程と、前記回収容器内に回収された前記水素ガスを、前記圧縮機を経由することなく、水素自動車に充填する第1充填工程と、を含むことを特徴とする水素ガス充填方法が提供される。
【0008】
また、請求項2に係る発明によれば、前記第1充填工程後に、前記冷却手段を介して、前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを、前記水素自動車に充填する第2充填工程を有することを特徴とする請求項1記載の水素ガス充填方法が提供される。
【0009】
また、請求項3に係る発明によれば、前記第1充填工程では、前記冷却手段により、前記回収容器内に回収された前記水素ガスを冷却した後、冷却された前記水素ガスを前記水素自動車に充填することを特徴とする請求項1または2記載の水素ガス充填方法が提供される。
【0010】
また、請求項4に係る発明によれば、水素ガス供給源から供給された水素ガスを圧縮する圧縮機と、前記圧縮機により圧縮された前記水素ガスを貯蔵する貯蔵容器と、前記水素ガス供給源、前記貯蔵容器、及び水素自動車と接続され、前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを前記水素自動車に充填する充填管路と、前記圧縮機よりも下流側に位置する前記充填管路に設けられ、前記水素ガスを冷却する冷却手段と、前記貯蔵容器をバイパスするように、両端が前記圧縮機と前記冷却手段との間に位置する前記充填管路と接続されたバイパス用管路と、前記冷却手段の下流側に位置する前記充填管路から分岐した管路に接続され、前記冷却手段により冷却された前記水素ガスを回収する回収容器と、一端が前記バイパス用管路と接続され、他端が前記充填管路から分岐した管路と接続され、前記バイパス用管路を介して、前記回収容器に回収された前記水素ガスを前記水素自動車に充填する回収ガス充填管路と、を有することを特徴とする水素ガス充填装置が提供される。
【0011】
また、請求項5に係る発明によれば、前記充填管路から分岐した管路は、前記水素自動車と接続される側の前記充填管路の端と前記冷却手段との間に位置する前記充填管路から分岐すると共に、前記充填管路から分岐した管路の端が前記水素ガス供給源と前記圧縮機との間に位置する前記充填管路と接続されていることを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0012】
また、請求項6に係る発明によれば、前記水素自動車と接続される側の前記充填管路の端部から分岐し、前記水素ガスを放散する水素放散ラインと、前記充填管路から分岐した管路に替えて、前記水素放散ラインから分岐すると共に、端が前記水素ガス供給源と前記圧縮機との間に位置する前記充填管路と接続された管路と、を有することを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置が提供される。
【0013】
また、請求項7に係る発明によれば、前記回収ガス充填管路に、遮断弁を設けたことを特徴とする請求項4ないし6のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水素ガス充填方法によれば、冷却した水素ガスにより、冷却手段よりも下流側に位置する管路及び該管路に設けられた機器を冷却し、次いで、管路及び該管路に設けられた機器の冷却に使用した水素ガスを回収容器内に回収し、その後、回収容器内に回収された水素ガスを、圧縮機を経由することなく、回収容器内の圧力と貯蔵容器内の圧力との差(差圧)により、回収容器で一旦蓄圧した高圧の水素ガスを水素自動車(具体的には、燃料タンク)に充填することが可能となる。
【0015】
これにより、回収容器内に回収された水素ガスを水素自動車に充填する際、圧縮機でエネルギーを使用して水素ガスを昇圧させたり、減圧弁に水素ガスを通過させたりすることがなくなる。
【0016】
したがって、水素ガスが圧縮機及び減圧弁を通過することで発生するエネルギーロスを低減させた上で、回収容器内に回収された水素ガスを水素自動車の燃料タンクに充填することができる。
【0017】
また、回収容器を貯蔵容器として利用することが可能となるので、貯蔵容器を増加させたときと同様な効果を得ることができる。具体的には、例えば、水素自動車の連続充填台数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る水素ガス充填装置の系統図の概略を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る水素ガス充填装置の系統図の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る水素ガス充填装置の系統図の概略を示す図である。
図1を参照するに、第1の実施の形態の水素ガス充填装置10は、水素ガス供給源11と、圧縮機12と、充填管路14と、第1の接続部16と、第2の接続部18Aと、第3の接続部18Bと、フレキシブルホース21と、手動弁23,28,35,47,85と、自動弁24,29,38,45,48,64,77,79と、減圧弁26,73と、圧力計27,39,51,56,75,84と、逆止弁32,42,69と、貯蔵容器用分岐ライン34と、複数の貯蔵容器36と、バイパス用管路44と、流量調整弁53,67と、積算流量計54,68と、安全弁57と、冷却手段59と、循環管路62と、接続口65と、遮断弁72,92と、温度計76と、水素放散ライン78と、回収管路81と、回収容器82と、回収ガス充填管路91と、を有する。
【0020】
水素ガス供給源11は、充填管路14の一端14Aと接続されており、充填管路14の一部を介して、圧縮機12と接続されている。水素ガス供給源11は、水素ガスを圧縮機12に供給する。
水素ガス供給源11としては、例えば、19.6MPaの水素ガスが充填されている水素カードルや水素トレーラー等を用いることができる。
【0021】
圧縮機12は、水素ガス供給源11から供給された水素ガスを圧縮し、圧縮した水素ガスを圧縮機12の吐出側(出口側)に位置する充填管路14に吐出する。
充填管路14は、他端14B(終端)が第1の接続部16と接続されている。充填管路14は、水素ガスを輸送可能な状態で、水素ガス供給源11、貯蔵容器36、及び水素自動車19と接続されている。
充填管路14は、貯蔵容器36内に貯蔵された水素ガス、及び回収容器82内に回収された水素ガスを、水素自動車19の燃料タンクに充填するための管路である。
【0022】
第1の接続部16は、充填管路14の他端14B(終端)に設けられている。第1の接続部16は、フレキシブルホース21の一端に設けられた第2の接続部18Aと継手により接続されている。
【0023】
フレキシブルホース21の他端には、水素自動車19の燃料タンクと接続される第3の接続部18Bが設けられている。第3の接続部18Bとしては、例えば、カプラのメス側(ソケット)を用いることができ、水素自動車19に設けられたカプラのオス側(プラグ)と着脱可能とされる。水素自動車19の燃料タンクとしては、例えば、70MPaまで水素ガスを充填可能なタンクを用いることができる。
【0024】
また、70MPa以上の高圧水素ガスが流れる管路及び該管路に設けられた機器には、高圧対応のものが使用されている。
具体的には、例えば、外径12.7mmの管路(配管)の場合、肉厚が4.8mmのものが使用することができる。また、外径9.53mmの管路(配管)の場合、肉厚が3.7mmのものが使用することができる。
【0025】
手動弁23は、水素ガス供給源11の吐出側(出口側)に位置する充填管路14に設けられている。自動弁24は、圧縮機12の入口側に位置する充填管路14に設けられている。減圧弁26は、手動弁23と自動弁24との間に位置する充填管路14に設けられている。
【0026】
圧力計27は、手動弁23と減圧弁26との間に位置する充填管路14を流れる水素ガスの圧力を測定可能な状態で、充填管路14と接続されている。
手動弁28は、圧縮機12の吐出側に位置する充填管路14に設けられている。自動弁29は、手動弁28の下流側に位置する充填管路14に設けられている。逆止弁32は、自動弁29の下流側に位置する充填管路14に設けられている。
【0027】
貯蔵容器用分岐ライン34は、逆止弁32の下流側に位置する充填管路14から分岐している。また、貯蔵容器用分岐ライン34の端部側は、3つのラインに分岐されている。分岐された各ラインは、手動弁35を介して、それぞれ1つの貯蔵容器36と接続されている。
【0028】
自動弁38は、貯蔵容器用分岐ライン34の分岐位置よりも下流側に位置する充填管路14に設けられている。
圧力計39は、貯蔵容器用分岐ライン34の分岐位置と自動弁38との間に位置する充填管路14を流れる水素ガスの圧力を測定可能な状態で充填管路14と接続されている。
逆止弁42は、自動弁38の下流側に位置する充填管路14に設けられている。
【0029】
バイパス用管路44は、自動弁29,38、逆止弁32,42、及び複数の貯蔵容器36をバイパスするように、両端が圧縮機12と冷却手段59との間に位置する充填管路14と接続されている。自動弁45は、バイパス用管路44に設けられている。
【0030】
手動弁47は、逆止弁42の下流側に位置する充填管路14に設けられている。自動弁48は、手動弁47の下流側に位置する充填管路14に設けられている。
圧力計51は、手動弁47と自動弁48との間に位置する充填管路14を流れる水素ガスの圧力を測定可能な状態で充填管路14と接続されている。
【0031】
流量調整弁53は、自動弁48の下流側に位置する充填管路14に設けられている。積算流量計54は、流量調整弁53の下流側に位置する充填管路14に設けられている。
圧力計56は、流量調整弁53と積算流量計54との間に位置する充填管路14を流れる水素ガスの圧力を測定可能な状態で充填管路14と接続されている。
安全弁57は、流量調整弁53と積算流量計54との間に位置する充填管路14から分岐したラインに設けられている。
【0032】
冷却手段59(冷却機)は、積算流量計54の下流側(圧縮機12の配設位置よりも下流側)に位置する充填管路14に設けられている。
冷却手段59は、冷媒通路59A内に水素ガス流通管59Bを挿入したシェル&チューブ式熱交換器であって、水素ガス流通管59Bを流れる水素ガスを、冷媒通路59Aに供給される冷媒で冷却する構成とされている。
また、冷却手段59には、エチレングリコールを冷媒とするチラー冷却器を用いることも可能であり、この場合、熱交換器に冷媒を循環させる循環管路を接続するとよい。
【0033】
また、冷却手段59として、空気を冷媒とするプレートフィン式熱交換器を用いてもよい。さらに、液体窒素やフロン等の冷媒で水素ガスを直接冷却してもよいし、液体窒素やフロン等で別の冷媒を冷却し、該冷媒で水素ガスを冷却する熱交換器を設けてもよい。
【0034】
循環管路62は、冷却手段59の下流側に位置する充填管路14(言い換えれば、冷却手段59と第1の接続部16との間に位置する充填管路14)から分岐しており、その端62Aが水素ガス供給源11と圧縮機12との間に位置する充填管路14(具体的には、自動弁24と圧縮機12との間に位置する充填管路14)と接続されている。
【0035】
循環管路62には、循環管路62の分岐位置から循環管路62の端62Aに向かう方向に対して、自動弁64と、接続口65と、流量調整弁67と、積算流量計68と、逆止弁69と、遮断弁72と、減圧弁73と、がこの順で設けられている。
【0036】
循環管路62の分岐位置から充填管路14の他端14Bの間に位置する充填管路14には、圧力計75と、水素自動車19に充填する水素ガスの温度を測定する温度計76と、自動弁77と、がこの順で設けられている。
【0037】
水素放散ライン78は、第1の接続部16と自動弁77との間に位置する充填管路14(言い換えれば、水素自動車19と接続される側の充填管路14の端部)から分岐している。水素放散ライン78は、水素ガスを放散するためのラインである。水素放散ライン78には、自動弁79が設けられている。
【0038】
回収管路81は、逆止弁69と遮断弁72との間に位置する循環管路62から分岐されており、端部が回収容器82と接続されている。
回収容器82は、循環管路62及び回収管路81を介して、冷却手段59よりも下流側に位置する管路及び該管路に設けられた機器を冷却した水素ガス(冷却手段59により冷却された水素ガス)を回収するための容器である。
回収管路81には、回収管路81の分岐位置から回収容器82に向かう方向に対して、圧力計84と、手動弁85と、がこの順で設けられている。
【0039】
回収ガス充填管路91は、一端91Aが自動弁45の上流側に位置するバイパス用管路44と接続されると共に、他端91Bが回収管路81の分岐位置に対応する循環管路62と接続されている。
回収ガス充填管路91は、バイパス用管路44を介して、回収容器82に回収された水素ガスをバイパス用管路44の下流側に位置する充填管路14に輸送することで、該水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填する。
【0040】
第1の実施の形態の水素ガス充填装置によれば、水素ガス供給源11及び貯蔵容器36と接続され、貯蔵容器36内に貯蔵された水素ガスを水素自動車19に充填する充填管路14と、貯蔵容器36をバイパスするように、両端が圧縮機12の吐出側に位置する充填管路14と接続されたバイパス用管路44と、貯蔵容器36よりも下流側に位置する充填管路14に設けられ、かつ充填管路14を流れる水素ガスを冷却する冷却手段59と、充填管路14から分岐し、圧縮機12の下流側に位置する充填管路14と接続された循環管路62と、充填管路14、及び該充填管路14に設けられた機器を冷却し、かつ循環管路62を流れる水素ガスを回収する回収容器82と、一端91Aがバイパス用管路44と接続されると共に、他端91Bが循環管路62と接続され、バイパス用管路44を介して、回収容器82に回収された水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填する回収ガス充填管路91と、を有する。
【0041】
これにより、回収容器82内に回収された水素ガスを、圧縮機12及び減圧弁73を経由することなく、回収回路82内の圧力と貯蔵容器36内の圧力との差(差圧)により、回収容器82で一旦蓄圧した高圧の水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填することが可能となる。
【0042】
したがって、回収容器82内に回収された水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填する際、圧縮機12でエネルギーを使用して水素ガスを昇圧したり、圧縮機12の手前に設けられた減圧弁73に水素ガスを通過させて減圧させたりすることがなくなる。
【0043】
よって、水素ガスが圧縮機12及び減圧弁73を通過することで発生するエネルギーロスを低減させた上で、回収容器82内に回収された水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填することができる。
【0044】
また、回収容器82を貯蔵容器36として利用することが可能となるので、貯蔵容器36を増加させたときと同様な効果を得ることができる。具体的には、例えば、水素自動車19の連続充填台数を増加させることができる。
【0045】
また、減圧弁73の上流側に遮断弁72を設けることにより、回収容器82内の水素ガスで水素自動車19の燃料タンクを充填させる際、該水素ガスが減圧弁73及び圧縮機12を通過することを防止できる。
さらに、回収ガス充填管路91に遮蔽弁92を設けることで、回収したい水素ガスがバイパス用管路44に流れることを防止できる。
【0046】
なお、各種冷却方法により事前に温度計76を構成する筐体(図示せず)を充分に冷却することが可能なため、水素自動車19に充填される水素ガスの温度(充填温度)を正確に測定することができる。
また、温度計76を第1の接続部16の近くに配置することにより,燃料タンクへ充填直前の水素ガスの温度をより正確に測定できる。
【0047】
さらに、貯蔵容器36から冷却手段59までをまとめて、或いは、貯蔵容器36を保冷可能な建屋又はケーシングで囲み、その中を機械式冷凍機で冷却することで、冷却手段59に供給する水素ガスを冷却してもよい。
【0048】
また、建屋又はケーシング内を冷却する手段として、液体窒素のような不活性の極低温ガスを用い、建屋又はケーシング内の圧力を大気圧よりも高くしておいてもよい。これにより、建屋又はケーシング内への酸素(大気)の侵入を防止できる。
また、仮に、水素ガスの漏洩が生じたとしても、建屋又はケーシング内の雰囲気を水素の爆発下限界域に維持することが可能であるため、安全性を高めることができる。
加えて、建屋又はケーシング内に水素センサーを設けることにより、漏洩を早期に発見することができる。
【0049】
また、第1の実施の形態では、一系統のみを例示したが、貯蔵容器36から第1の接続部16までの管路を複数系統設けておくことにより、一つの管路で水素自動車19に水素ガスを充填しているときに、他の管路の予冷運転を行うことが可能となる。これにより、水素自動車19への水素ガスの充填を連続的に行うことができる。
【0050】
次に、図1を参照して、第1の実施の形態の水素充填装置10を用いた水素ガス充填方法について説明する。
【0051】
始めに、貯蔵容器36内に所定圧力とされた水素ガスを充填する処理を行う。具体的には、以下の方法により、貯蔵容器36内に所定圧力とされた水素ガスを充填する。
始めに、手動弁23、減圧弁26、及び自動弁24を介して、水素ガス供給源11から水素ガスを圧縮機12に供給する。圧縮機12では、供給された水素ガスを水素自動車19の充填圧力以上の所定圧力に昇圧させる。
このとき、貯蔵容器36の下流側に設けられた自動弁38、バイパス用管路44に設けられた自動弁45、回収ガス充填管路91に設けられた遮断弁92は閉じられている。
【0052】
次いで、上記所定圧力とされた水素ガスは、手動弁28、自動弁29、及び逆止弁32を経由して、貯蔵容器用分岐ライン34に供給され、手動弁35を通過して貯蔵容器36内に充填される。
また、貯蔵容器36内の水素ガスの圧力は、圧力計39によって測定される。
【0053】
次いで、遮蔽弁92が閉じた状態で、充填管路14を冷却する運転(予冷運転)を行う。具体的には、以下の方法により、予冷運転を行う。
貯蔵容器36の下流側に設けられた自動弁29を閉じると共に、貯蔵容器36の下流側に設けられた自動弁38を開くことで、自動弁38、逆止弁42、手動弁47、及び自動弁48を介して、貯蔵容器36内に貯蔵された水素ガスの一部を充填管路14内に導出させる。
【0054】
次いで、流量調整弁53により、導出された水素ガスを所定の流量に調整し、その後、積算流量計54を介して、所定の流量とされた水素ガスを冷却手段59の水素ガス流通管59Bに導入させる。
【0055】
次いで、水素ガス流通管59Bに導入した水素ガスを、冷媒通路59Aを流れる冷媒と熱交換させて、水素ガスを所定温度に冷却する。
また、水素ガスを所定温度に冷却する際、水素ガスの冷却温度はできるだけ低温とすることが望ましいため、冷却手段59の冷却能力を考慮して、流量調整弁53で水素ガスの流量(流速)を制御するとよい。
【0056】
このとき、充填管路14の他端14B側(終端側)に設けられた自動弁77を閉じ、循環管路62に設けられた自動弁64を開くことで、冷却手段59で冷却された水素ガスが充填管路14から循環管路62に流れる。
【0057】
次いで、循環管路62に流れた水素ガスは、流量調整弁67、積算流量計68、及び逆止弁69を通過し、閉状態となっている減圧弁73の下流側で回収管路81に流れる。
その後、回収管路81に流れた水素ガスは、手動弁85を通って回収容器82に回収される。このとき、回収容器82内の圧力は、徐々に上昇する。
また、回収容器82に回収された水素ガスの圧力は、圧力計84によって測定される。
【0058】
さらに、自動弁64の下流側に位置する接続口65に、フレキシブルホース21に設けられた第3の接続部18Bを接続した状態で、自動弁64を閉じて自動弁77を開くことにより、冷却手段59で冷却された水素ガスを、自動弁77からフレキシブルホース21に流すことで、接続口65を経由して循環管路62にも冷却された水素ガスを流すことが可能となるので、冷却手段59の下流側に位置する配管や機器、フレキシブルホース21、第3の接続部18Bまでも冷却することができる。
【0059】
このように、冷却手段59で冷却した水素ガスを、冷却手段59の吐出側から循環管路62の分岐位置までの間に位置する充填管路14の一部、循環管路62の分岐位置から回収管路81の分岐位置までの間に位置する循環管路62の一部、及び回収管路81を介して、回収容器82に回収する予冷運転を行うことで、水素自動車19の燃料タンク内に水素ガスを充填する前に、予め、肉厚が厚く、熱容量が多大な配管(充填管路14の一部、循環管路62の一部、回収管路81等)や該配管に設けられた機器を冷却することができる。
【0060】
次いで、回収容器82内に回収された水素ガスを、圧縮機12及び貯蔵容器15を経由することなく、水素自動車19の燃料タンクに充填する(第1充填工程)。
具体的には、以下の方法により、第1充填工程の処理を行う。
【0061】
上記配管や機器を所定温度に冷却した後、自動弁64を閉じ、フレキシブルホース21に設けられた第3の接続部18Bを水素自動車19に接続する。
次いで、遮断弁92を開き、かつ遮断弁72を閉じ、回収容器82の内圧と水素自動車19の燃料タンクとの圧力差(差圧)により、回収容器82内に貯蔵された水素ガスを燃料タンクに充填(差圧充填)する。
このとき、水素ガスは、回収管路81、回収ガス充填管路91、回収ガス充填管路91の接続位置よりも下流側に位置する充填管路14、冷却手段59、及びフレキシブルホース21を介して、燃料タンクに充填される。
【0062】
次いで、回収容器82の内圧と水素自動車19の燃料タンクの内圧との差が所定の値よりも減少した際、遮断弁92を閉じ、3つの手動弁35のうちの1つを開き、自動弁38を開くことで、手動弁35を介して、貯蔵容器36(1本目の貯蔵容器36)内に貯蔵された水素ガスを燃料タンクに充填する(1回目の第2充填工程)。
このとき、水素ガスは、貯蔵容器用分岐ライン34、充填管路14、冷却手段59、及び自動弁77を介して、燃料タンクに充填される。
【0063】
次いで、貯蔵容器36の内圧と燃料タンクの内圧との差が所定の値よりも減少した際、開いた状態とされた手動弁35を閉じ、残りの2つの手動弁35のうちの一方の手動弁35を開き、一方の手動弁35と接続された貯蔵容器36(2本目の貯蔵容器36)内に貯蔵された水素ガスを燃料タンクに充填する(2回目の第2充填工程)。
【0064】
次いで、貯蔵容器36の内圧と燃料タンクの内圧との差が所定の値よりも減少した際、開状態とされた手動弁35を閉じ、残りの手動弁35を開き、該手動弁35と接続された貯蔵容器36(3本目の貯蔵容器36)内に貯蔵された水素ガスを燃料タンクに充填する(3回目の第2充填工程)。
【0065】
なお、水素自動車19に水素ガスを充填する際、貯蔵容器36から冷却手段59に至る管路に設けられた各種弁や積算流量計54の部分で断熱膨張し、ジュールトムソン効果によって温度が上昇した水素ガスは冷却手段59で冷却され、冷却手段59以降の管路に設けられた弁やフレキシブルホース21の接続部で断熱膨張しても、これらの管路や弁等があらかじめ十分に冷却されているので、燃料タンクに充填する水素ガスの温度上昇を抑制可能であり、冷却手段59で冷却された低温の水素ガスを、低温を維持した状態又は必要以上の加温が生じない状態で水素自動車19の燃料タンクに充填できる。
【0066】
また、低温の水素ガスが流れる部分の配管や機器は、断熱材等で断熱しておくことが望ましい。また、低温の水素ガスが流れる部分の配管や機器の冷却の程度を確認するため、配管の外面に温度センサーを設け、該温度センサーで測定した温度に応じて冷却手段59の冷却能力や水素ガスの流速を制御することが望ましい。
さらに、充填待機中に該温度センサーの信号を取り込み、予め設定した温度になるように各弁を自動制御することにより、充填前の待ち時間を短縮できる。
【0067】
第1の実施の形態の水素充填方法によれば、回収容器82内に回収された水素ガスを、圧縮機12及び減圧弁73を経由することなく、回収回路82内の圧力と貯蔵容器36内の圧力との差(差圧)により、回収容器82で一旦蓄圧した高圧の水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填することが可能となる。
【0068】
したがって、回収容器82内に回収された水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填する際、圧縮機12でエネルギーを使用して水素ガスを昇圧したり、圧縮機12の手前に設けられた減圧弁73に水素ガスを通過させて減圧させたりすることがなくなる。
【0069】
よって、水素ガスが圧縮機12及び減圧弁73を通過することで発生するエネルギーロスを低減させた上で、回収容器82内に回収された水素ガスを水素自動車19の燃料タンクに充填することができる。
【0070】
また、回収容器82を貯蔵容器36として利用することが可能となるので、貯蔵容器36を増加させたときと同様な効果を得ることができる。具体的には、例えば、水素自動車19の連続充填台数を増加させることができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る水素ガス充填装置の系統図の概略を示す図である。図2において、第1の実施の形態の水素ガス充填装置10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0072】
図2を参照するに、第2の実施の形態の水素ガス充填装置100は、第1の実施の形態に設けられた循環管路62の替わりに、水素放散ライン78の分岐位置と自動弁79との間に位置する水素放散ライン78から分岐すると共に、端が水素ガス供給源11と圧縮機12との間に位置する充填管路14と接続された循環管路101(管路)を設けたこと以外は、第1の実施の形態の水素ガス充填装置10と同様な構成とされている。
【0073】
第2の実施の形態の水素ガス充填装置100によれば、循環管路62の替わりに、水素放散ライン78の分岐位置と自動弁79との間に位置する水素放散ライン78から分岐すると共に、端が水素ガス供給源11と圧縮機12との間に位置する充填管路14と接続された循環管路101を設けることにより、第1の実施の形態の水素ガス充填装置10と比較して、冷却手段59により冷却された水素ガスが冷却可能な管路及び該管路に設けられた機器の範囲を広げることができる。
【0074】
また、第2の実施の形態の水素ガス充填装置100は、第1の実施の形態の水素ガス充填装置10と同様な効果を得ることができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、冷却された水素ガスを回収する回収容器を有し、該回収容器内の水素ガスを水素自動車の燃料タンクに充填する水素ガス充填方法、及び水素ガス充填装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10,100…水素ガス充填装置、11…水素ガス供給源、12…圧縮機、14…充填管路、14A,91A…一端、14B,91B…他端、16…第1の接続部、18A…第2の接続部、18B…第3の接続部、21…フレキシブルホース、23,28,35,47,85…手動弁、24,29,38,45,48,64,77,79…自動弁、26,73…減圧弁、27,39,51,56,75,84…圧力計、32,42,69…逆止弁、34…貯蔵容器用分岐ライン、36…貯蔵容器、44…バイパス用管路、53,67…流量調整弁、54,68…積算流量計、57…安全弁、59…冷却手段、59A…冷媒通路、59B…水素ガス流通管、62,101…循環管路、62A…端、65…接続口、72,92…遮断弁、76…温度計、78…水素放散ライン、81…回収管路、82…回収容器、91…回収ガス充填管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機により、水素ガス供給源から供給された水素ガスを圧縮し、圧縮された前記水素ガスを貯蔵容器内に貯蔵する工程と、
前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを導出させ、冷却手段により該水素ガスを冷却する工程と、
冷却した前記水素ガスにより、前記冷却手段よりも下流側に位置する管路及び該管路に設けられた機器を冷却する工程と、
前記管路及び該管路に設けられた機器の冷却に使用した前記水素ガスを回収容器内に回収する工程と、
前記回収容器内に回収された前記水素ガスを、前記圧縮機を経由することなく、水素自動車に充填する第1充填工程と、
を含むことを特徴とする水素ガス充填方法。
【請求項2】
前記第1充填工程後に、前記冷却手段を介して、前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを、前記水素自動車に充填する第2充填工程を有することを特徴とする請求項1記載の水素ガス充填方法。
【請求項3】
前記第1充填工程では、前記冷却手段により、前記回収容器内に回収された前記水素ガスを冷却した後、冷却された前記水素ガスを前記水素自動車に充填することを特徴とする請求項1または2記載の水素ガス充填方法。
【請求項4】
水素ガス供給源から供給された水素ガスを圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機により圧縮された前記水素ガスを貯蔵する貯蔵容器と、
前記水素ガス供給源、前記貯蔵容器、及び水素自動車と接続され、前記貯蔵容器内に貯蔵された前記水素ガスを前記水素自動車に充填する充填管路と、
前記圧縮機よりも下流側に位置する前記充填管路に設けられ、前記水素ガスを冷却する冷却手段と、
前記貯蔵容器をバイパスするように、両端が前記圧縮機と前記冷却手段との間に位置する前記充填管路と接続されたバイパス用管路と、
前記冷却手段の下流側に位置する前記充填管路から分岐した管路に接続され、前記冷却手段により冷却された前記水素ガスを回収する回収容器と、
一端が前記バイパス用管路と接続され、他端が前記充填管路から分岐した管路と接続され、前記バイパス用管路を介して、前記回収容器に回収された前記水素ガスを前記水素自動車に充填する回収ガス充填管路と、
を有することを特徴とする水素ガス充填装置。
【請求項5】
前記充填管路から分岐した管路は、前記水素自動車と接続される側の前記充填管路の端と前記冷却手段との間に位置する前記充填管路から分岐すると共に、前記充填管路から分岐した管路の端が前記水素ガス供給源と前記圧縮機との間に位置する前記充填管路と接続されていることを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置。
【請求項6】
前記水素自動車と接続される側の前記充填管路の端部から分岐し、前記水素ガスを放散する水素放散ラインと、
前記充填管路から分岐した管路に替えて、前記水素放散ラインから分岐すると共に、端が前記水素ガス供給源と前記圧縮機との間に位置する前記充填管路と接続された管路と、
を有することを特徴とする請求項4記載の水素ガス充填装置。
【請求項7】
前記回収ガス充填管路に、遮断弁を設けたことを特徴とする請求項4ないし6のうち、いずれか1項記載の水素ガス充填装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−108537(P2013−108537A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252479(P2011−252479)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】