説明

水素化および脱水素化反応において使用する焼結耐性触媒ならびにその製造方法

本発明は、新規の耐熱性パラジウム触媒、その製造方法および水素化反応、特にニトロ化合物の水素化におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の熱安定性パラジウム触媒、その製造方法および水素化反応、特にニトロ化合物の水素化におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
担持異種貴金属触媒は、化学製品製造の多くの分野、特に水素化および脱水素化の分野において重要な役割を果たす。高い活性を得るために、触媒活性成分は、非常に小さな金属クラスター状に細かく分散(数nmの大きさ)されて担持体に適用される。この方法は、高い触媒活性をもたらす金属の高比表面積を生じる。欠点は、比較的高い温度での流動性のため、焼結、すなわち金属粒子の成長が、触媒工程の反応温度で頻繁に起こることである(Ertl等、「Handbook of Heterogenous Catalysis」、1997年、第3巻、第1276〜1278頁)。これは、触媒活性金属表面積の減少、すなわち、触媒活性の減少を引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ertl等著、「Handbook of Heterogenous Catalysis」、1997年、第3巻、第1276〜1278頁
【0004】
焼結工程の低下は、支持体と金属クラスター間の相互作用の最適化により、またはプロモーターの添加により、個々の場合において達成される。
しかしながら、これらの既知の解決策はある程度の焼結を防止できるのみであるため、その構造に起因して焼結を防止する、新しい型の耐熱性触媒の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、その特異的な構造に起因して、完全に焼結を防止し得る耐熱性パラジウム触媒を開発することである。該触媒の活性は、長時間にわたり維持されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この課題は、ナノ粒子パラジウムおよび多孔質酸化ジルコニウムシェルで構成されている以下に記載する本発明の触媒により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】工程a)により得られるパラジウムナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図2】工程b)により得られるPd−SiOナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図3a】工程d)により得られるPd−ZrO粒子の透過電子顕微鏡写真を示す。
【図3b】工程d)により得られるPd−ZrO粒子のXPS分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
同様の構造粒子は、CO酸化に使用される金触媒で既知である(Arnal等、「Angew. Chem.」、2006年、118、第8404〜8407頁)。しかしながら、パラジウムまたは同様の粒子に基づくパラジウム系触媒は、今のところ知られていない。これはおそらく、他の金属と比較して、ナノ粒子を形成する(これは、触媒の生産をかなり簡素化する)金の高い傾向に起因する。
【0009】
本発明は、水素化および脱水素化において使用するための、酸化ジルコニウムを含んでなる気体および液体透過性シェルを有する少なくとも1つのパラジウムナノ粒子に基づく触媒を提供する。
【0010】
該パラジウムナノ粒子は、好ましくは0.1〜100nmの範囲の、特に好ましくは0.3〜70nmの範囲の、とりわけ好ましくは0.5〜30nmの範囲の平均粒度分布(d50)を有する。
酸化ジルコニウムを含有するシェルの内径は、好ましくは10〜1000nm、非常に好ましくは15〜500nm、とりわけ好ましくは20〜300nmである。
酸化ジルコニウムを含有する層厚は、通常、10〜100nmの範囲であり、好ましくは15〜80nm、特に好ましくは15〜40nmの範囲である。
【0011】
典型的な実施態様において、本発明の触媒は、酸化ジルコニウムを含有する気体および液体透過性シェルを有する多くのパラジウムナノ粒子を含む。
【0012】
さらに、本発明は、
a)パラジウムナノ粒子の生成
b)生成したパラジウムナノ粒子のSiOによる包み込み
c)Pd/SiO球への酸化ジルコニウム層の塗布
d)塩基によるSiO層の洗い流し
の工程を含んでなる触媒の製造方法を提供する。
【0013】
該触媒は、液相中でパラジウム含有前駆体の還元により生成されるパラジウムナノ粒子を用いて製造される。
工程a)におけるパラジウムナノ粒子の生成は、特に好ましくはアルコールに溶解させたパラジウム塩、例えば、PdCl、HPdCl、Pd(NO、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、塩化ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトネートを、パラジウム含有前駆体として使用して行う。
【0014】
パラジウム含有前駆体の反応は、化学的および/または電気化学的に行うことができる。「活性水素」を有する還元剤、例えば水素、メタノール、エタノール、プロパノールおよび長鎖アルコール、エタンジオール、グリコール、1,3−プロパンジオール、グリセロールおよびポリオールを用いることが好ましい。メタノール、エタノール、プロパノールおよびポリオールを、パラジウム含有前駆体の還元のために用いることが特に好ましい。
【0015】
粒度および粒度分布は、パラジウム含有前駆体と還元剤との比率に影響され得る。
【0016】
パラジウム含有前駆体の還元は、通常、0〜250℃、好ましくは10〜200℃、特に好ましくは15〜150℃の温度で行う。
【0017】
パラジウム含有前駆体の還元は、表面活性安定剤(または界面活性剤とも称される)の存在下または非存在下のどちらで行ってもよい。しかしながら、パラジウムナノ粒子の合成は、パラジウムナノ粒子の凝集を防止し、粒度およびナノ粒子の形態の設定を調整できる安定剤を使用して行うことが好ましい。ポリビニルピロリドン(PVP)、アルコールポリエチレングリコールエーテル(例えば、Marlipal(登録商標))、ポリアクリレート、ポリオール、長鎖n−アルキル酸、長鎖n−アルキル酸エステル、長鎖n−アルキルアルコールおよびイオン性界面活性剤(例えば、AOT、CTAB)などのコロイド安定剤を、このために使用することが好ましい。パラジウム含有前駆体と安定剤と還元剤の混合は、適当な恒温反応器(例えば、攪拌槽型反応器、内部に静的混合を有する流反応器、マイクロリアクター)を使用して液相で、半バッチ式または連続式のいずれで行ってもよい。さらに、パラジウムナノ粒子を生成するための上記出発物質は、液滴量の液液エマルション(例えば、ミニエマルションまたはマイクロエマルション)に溶解し、その後2つのエマルション溶液を混合することにより反応させることができる。
【0018】
上述した方法の1つにより得られるパラジウムコロイドは、平均粒度分布(d50)が好ましくは0.1〜100nmの範囲、特に好ましくは0.3〜70nmの範囲、非常に好ましくは0.5〜30nmの範囲にある、非常に狭い粒度分布を好ましくは有する。上述した安定剤の使用は、反応溶液から(例えば限外濾過または遠心分離により)分離した後、適当な溶剤にパラジウムナノ粒子を再分散させることを可能にする。SiO層の適用に適当な溶剤、例えば水、メタノール、エタノールおよび他のアルコールを使用することが好ましい。
【0019】
工程b)において、工程a)で生成されたパラジウムナノ粒子を、遠心分離や沈殿等により分離した後、ケイ酸塩のシェルで包み込む。このSiOによる包み込みは、加水分解性Si前駆体の加水分解または沈降により達成され得る。加水分解性Si前駆体としては、テトラメチルオルトケイ酸、テトラエチルオルトケイ酸、テトラプロピルオルトケイ酸または同様の加水分解性Si化合物が好ましく挙げられる。
【0020】
加水分解は、好ましくは、アンモニア溶液、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、グリセロールなど、またはそれらの混合物を含む加水分解溶液を用いて行い得る。
【0021】
加水分解は、特に、室温(20℃)から加水分解溶液の沸点の温度で行い得る。加水分解は、とりわけ好ましくは、室温で行う。
【0022】
工程b)において得られるPd−SiO粒子の径は、好ましくは10〜1000nmであり、特に好ましくは15〜500nmであり、とりわけ好ましくは20〜300nmである。さらなる工程のため、Pd−SiO粒子は、好ましくは、例えば、沈殿、遠心分離または蒸発および洗浄水による洗浄による液相からの分離サイクルにより精製される。
【0023】
工程c)において、工程b)で生成された好適な球状Pd−SiOナノ粒子は、酸化ジルコニウムを含有する気体および液体透過性シェルにより完全に覆われる。ZrOによる包み込みは、加水分解性Zr前駆体の加水分解または沈降により達成され得る。好ましいZr前駆体は、ジルコニウムアルコキシド、例えば、ジルコニウムメトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、または、他にジルコニウムハライド、例えばZrCl、ZrBr、ZrIまたは同様の加水分解性Zr化合物である。
【0024】
加水分解は、好ましくは、活性水素原子を有する化合物、例えば水、メタノール、エタノール、プロパノール、グリセロールなどを用いて行い得る。加水分解は、特に好ましくは、コロイド安定剤、例えば、アルコールポリエチレングリコールエーテル(例えばMarlipal(登録商標))、PVP、ポリアクリレート、ポリオール、長鎖n−アルキル酸、長鎖n−アルキル酸エステルおよび長鎖n−アルキルアルコールの存在下行われる。加水分解は、0〜200℃の温度で行い得る。10〜100℃の温度を用いることが特に好ましい。酸化ジルコニウム層の厚さは、使用する加水分解性Zr前駆体の量により調整し得る。
【0025】
Zr前駆体の加水分解後、1時間〜5日間にわたり熟成させることが好ましい。その後、粒子を、従来の工業的方法(遠心分離、沈殿、濾過等)により溶液から分離し、オーブンで乾燥し、その後焼成する。乾燥は、焼成とは別に二段階で行ってもよく、または、室温から焼成温度まで温度を段階的に高くすることにより行ってもよい。乾燥は、好ましくは、100〜250℃の温度で行う。一方、焼成は、好ましくは250〜900℃の温度により行い得る。
【0026】
工程d)において、工程c)により生成された構造のシェルを有する基本的に球状のPd−SiO−ZrOからシェルを除去する。SiOの除去は、好ましくは、塩基性溶液を用いてSiOを分解することにより行う。溶液の塩基性成分としては、全てのアルカリ金属、アルカリ土類金属水酸化物、例えばNaOH、KOH、LiOH、Mg(OH)、Ca(OH)等を使用し得る。溶液は、水溶液またはアルコール性溶液(MeOH、EtOH、PrOH、i−PrOHなど)であり得る。SiO核の分解は、通常、0〜250℃、好ましくは10〜100℃の温度で起こる。アルカリ溶液は、SiO核が完全に分解するまでの反応を可能にする。これは、通常、2〜24時間のアルカリ溶液の活性を必要とする。長い時間新鮮なアルカリ溶液を使用して、工程d)を実行することが好ましい。
【0027】
工程d)に続いて、得られたPd−ZrOナノ粒子は、通常、分離され乾燥される。分離は、好ましくは遠心分離、濾過または沈殿により行われる。乾燥は、好ましくは100〜250℃の気流中で行われる。または、乾燥は、保護ガスまたは水素下で行われる。
【0028】
本発明の他の好ましい実施態様において、はじめに粉末状で存在する触媒が加工され、成形体を生成する。作られる成形体は球状、環状、星型(三葉状、四葉状)、ペレット、円筒形、または車輪状(Wagon wheel)であることが好ましい。大きさは、好ましくは0.2〜10nm、より好ましくは0.5〜7nmである。加工は、例えば加圧成形、噴霧乾燥および押出などの既知の方法で、特にバインダーの存在下行われる。他の好ましい手段は、構造体触媒(モノリス)のウォッシュコートとしての本発明の触媒の活用である。
【0029】
本発明のPd−SiOナノ粒子は、耐熱性触媒として適当に使用し得る。ZrOバリアにより、Pdナノ粒子の焼結は生じず、それは工程条件の下での作動寿命およびサイクルタイムを、従来の触媒に比べてかなり高めることを意味する。製造時間の増加(触媒再生の排除)または製造サイクルの延長は、水素化または脱水素化の生産コストをかなり下げることができる。
【0030】
さらに、本発明は、ニトロ化合物(例えばニトロベンゼン)の水素化、アルケン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン)の水素化、ベンゼンからシクロヘキサン、ナフタレンからデカリンのような環水素化、ニトリル化合物からアミンへの水素化などにおける、本発明の触媒の使用を提供する。水素化は、100〜800℃の温度、特に好ましくは150〜700℃の温度で、気相中で行い得る。水素化剤として水素を使用することが好ましい。ここでの阻害因子は、水素化される化合物または生成物の安定性であり、また、反応成分の蒸気圧または反応装置の圧力耐性である。水素化は、通常、1〜200barの圧力で行われる。
【0031】
さらに、本発明は、ニトロ化合物、例えばニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ジニトロトルエン、ニトロトルエン、ニトロクロロベンゼン、ニトロナフタレン、ジニトロナフタレンなどの移動水素化における本発明の触媒の使用を提供する。水素化は、工程に依存して(液相または気相)、100〜600℃の温度で行い得る。
【0032】
さらに、本発明は、プロパンからプロピレン、エタンからエチレン、ブタンからブテンおよびブタジエンならびにエチルベンゼンからスチレンなどのような脱水素化における本発明の触媒の使用を提供する。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の触媒を使用することを特徴とする、触媒存在下、気相中の水素を用いてニトロベンゼンをアニリンに転換するための水素化工程を提供する。
【0034】
触媒的水素化または脱水素化は、好ましくは、断熱的にまたは等温的に、あるいはほぼ等温的に、バッチ式、好ましくは連続的に、移動床または固定床工程で、好ましくは異種触媒により、100〜800℃、好ましくは150〜700℃、特に好ましくは200〜650℃の反応器温度、1〜250bar(10000〜250000hPa)、好ましくは1〜200barの圧力で行い得る。触媒的水素化または脱水素化が行われる従来の反応装置は、固定床または流動床反応器である。また、触媒的水素化または脱水素化は、複数の工程で好ましく行い得る。
【0035】
操作の断熱的、等温的またはほぼ等温的な方法において、中間冷却または中間加熱と連続して接続されている、複数の、すなわち2〜10、好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜5、特に2〜3の反応器を使用し得る。水素化の場合、水素は第1反応器の上流に反応剤とともに全て加えてもよく、またはその添加は種々の反応器に分けられていてもよい。この個々の反応器の一連の配置は、1つの装置に組み込まれてもよい。
【実施例】
【0036】
実施例1:
パラジウムナノ粒子の生成−工程a):
マグネットスターラー、コンデンサーおよび加熱装置の備わったフラスコで、106.4mg(2.0mmol)のPdClを、6mlのHCl(0.2M)と294mlの蒸留水と混合する。これにより約300mlの2.0mMHPdCl溶液が得られる。15ml(30μmolのPd)の2.0mMHPdCl溶液を、100mlフラスコ中で31.5mlの水と3.5mlのメタノールと混合する。さらに、300μmol(33.25mg)のPVP40(Sigma−Aldrich)を加え、混合物全体を空気雰囲気中、還流下、3時間加熱する(温度=80℃)。該溶液は、加熱直後、茶色に変わる。パラジウムナノ粒子の沈殿をともなうこの着色溶液を10000rpmで遠心分離する。その後、上澄み液を静かに移す。湿潤パラジウム粒子は、この状態でさらなる合成に使用し得る。図1は、得られたパラジウムナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す(器具:Tecnai 20 LaB陰極、カメラ:Tietz F114T 1x1K(FEI/Philips製)、製造業者の指示に従った方法)。平均粒子径は8nmである。
【0037】
Pd−SiOナノ粒子の生成−工程b):
工程a)のパラジウムナノ粒子を、3mlの水に再分散させる(超音波浴:10分)。合成の開始前に、下記の溶液を準備しておかなくてはならない:
a.エタノール−NH溶液(全10.5ml):0.5mlの濃アンモニア溶液(28〜30%)を10mlのエタノールと混合する。
b.エタノール−TEOS溶液(全7.6ml):0.6mlのテトラエチルオルトケイ酸塩を7mlのエタノールと混合する。
水溶性パラジウムナノ粒子分散体(3ml)をしっかりと(5分間)攪拌する。その後、エタノール−NH混合物を加える。その後すぐに、エタノール−TEOS混合物を、素早く添加する。反応混合物を室温(20℃)で一晩攪拌する。Pd−SiOナノ粒子を遠心分離(10000rpm、25分間)し、それぞれ、遠心分離後の上澄み液を移し、再び遠心分離する前に超音波浴(5分間)を用いて適当な洗浄液により残っている固形物(コロイド)を再分散させることにより、水で2回、無水エタノールで1回洗浄する。最後に、Pd−SiOナノ粒子を無水エタノール(40g)にとり、超音波浴(5分、USバス)を用いて再分散させる。このようにして得られるPd−SiOナノ粒子を貯蔵し、またはそのまま次工程で使用し得る。図2は、このようにして得られたPd−SiOナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を示す(器具:Tecnai 20 LaB陰極、カメラ:Tietz F114T 1x1K(FEI/Philips製)、製造業者の指示に従った方法)。Pd−SiOナノ粒子の平均粒子径は、120nmである。
【0038】
Pd−SiO−ZrOナノ粒子の生成−工程c):
合成の開始前に、Marlipal(登録商標)O13/40溶液(エトキシル化イソトリデカノール;Sasol製)を、11gの水に0.43gのMarlipal(登録商標)を溶解することにより調製する。工程b)で得られたPd−SiOナノ粒子(30μmol金属浴)を、40gのエタノールに分散させ、隔壁により閉られた100mlフラスコ内へ無水エタノールを用いて移し、その後30℃まで加熱する。予め調製した水溶性Marlipal(登録商標)溶液0.125ml(125μl)を、30℃に加熱されたPd−SiOナノ粒子の攪拌分散体に加える。30分後、0.45mlのジルコニウムn−ブトキシド(ブタノール中80重量%)を加える。4時間攪拌後、分散体の液相を水に置き換える。このために、分散体を遠心分離(10000rpm;15分間)し、上澄み液を移し、上澄み液を取り除いた後の固形物を、25mlの水に再分散させる(超音波浴:5分間)。遠心分離と再分散の一連の作業を3回行う。その後、粒子を2日間、室温で熟成させる。その後、試料を乾燥させ、空気雰囲気中、加熱炉で焼成する。このために、全部で7.5時間にわたって、温度を100℃から900℃に段階的に上げる。
【0039】
Pd−ZrOナノ粒子の生成−工程d):
工程c)で得られたPd−SiO−ZrOナノ粒子(30μmol金属浴)を、50mlの1モルNaOH溶液中で、室温で3時間攪拌する。その後、コロイドを遠心分離(10000rpm;30分間)により洗浄し、上澄みを移し50mlの1モルNaOH溶液にとる。分散体を2時間50℃で攪拌し、その後室温で一晩攪拌する。最後に、粒子を、遠心分離/再分散の一連の作業により、5回水で洗浄する。このようにして得られるPd−ZrO粒子は、もはやSiO核を有さず、多孔性シェルで焼結バリアを有する。図3aは、透過電子顕微鏡写真を示す(器具:Tecnai 20 LaB陰極、カメラ:Tietz F114T 1x1K(FEI/Philips製)、製造業者の指示に従った方法)を示し、図3bは、XPS分析(器具:Phoenix(EDAX/Ametek製);製造業者の指示に従った方法)の結果を示す。Pd−ZrO粒子の平均径は、130nmである。XPS分析から、SiOがもはやナノ粒子に存在しないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのナノ粒子パラジウムクラスター、ならびに、酸化ジルコニウムを含有する気体および液体透過性シェルを含んでなる、水素化および脱水素化における使用のための触媒。
【請求項2】
ナノ粒子パラジウムクラスターが、0.1〜100nmの範囲の平均粒度分布(d50)を有し、シェルが、10〜1000nmの範囲の内径を有する酸化ジルコニウムを含有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
酸化ジルコニウムを含有するシェルの層厚が、10〜100nmの範囲にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の触媒を使用することを特徴とする、触媒存在下、気相中の水素を用いて有機化合物を水素化する方法。
【請求項5】
ニトロ化合物の水素化または移動水素化あるいは脱水素化反応における、請求項1〜3のいずれかに記載の触媒の使用。
【請求項6】
触媒を、100〜600℃の温度で、液相または気相におけるニトロ化合物の水素化に使用する、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の触媒を使用することを特徴とする、触媒存在下、気相中の水素を用いてニトロベンゼンをアニリンに転換する方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の触媒を使用することを特徴とする、触媒存在下、気相中で有機化合物を脱水素化する方法。
【請求項9】
a)0.1〜100μmの範囲の平均粒度分布(d50)を有するパラジウムナノ粒子の生成
b)生成したパラジウムナノ粒子のSiOによる包み込み
c)Pd/SiO球への酸化ジルコニウム層の塗布
d)塩基によるSiO層の洗い流し
の工程を含んでなる触媒の製造方法。
【請求項10】
工程a)におけるパラジウムナノ粒子の生成が、ポリビニルピロリドン、アルコールポリエチレングリコールエーテル、ポリアクリレート、ポリオール、長鎖n−アルキル酸、長鎖n−アルキル酸エステル、長鎖n−アルキルアルコールおよびイオン性界面活性剤からなる群から選択される、少なくとも1つのコロイド安定剤の存在下、液相において、パラジウム含有前駆体の還元により行われることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程c)における酸化ジルコニウム層の塗布が、アルコールポリエチレングリコールエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオール、長鎖n−アルキル酸、長鎖n−アルキル酸エステルおよび長鎖n−アルキルアルコールからなる群から選択される、少なくとも1つのコロイド安定剤の存在下、加水分解性Zr前駆体の加水分解または沈降により行われることを特徴とする、請求項9または10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2010−540232(P2010−540232A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527353(P2010−527353)
【出願日】平成20年9月20日(2008.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007954
【国際公開番号】WO2009/043496
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504109610)バイエル・テクノロジー・サービシーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Technology Services GmbH
【Fターム(参考)】