説明

水素化処理触媒及びその製造方法、ならびにその炭化水素精製における使用

本発明は、耐火性酸化物担体、いずれも酸化された形態にある少なくとも一種のVIII族の金属、および少なくとも一種のVI族の金属を含んでなる変成された水素化精製触媒であって、ベンゾチオフェン化合物から誘導された少なくとも一種のスルホンまたはスルホキシド化合物を含んでなることを特徴とする水素化精製触媒に関する。本発明はさらに、その製造方法および炭化水素の精製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、水素化処理触媒及びその製造方法、ならびに当該触媒の、炭化水素、特に沸点が好ましくは40〜560℃である石油留分から得られる炭化水素の精製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、脱硫、脱窒素、および脱芳香族成分処理した炭化水素化合物の需要が増加しており、炭化水素の精製に関してさらに効果的な触媒を開発するための多くの研究がなされている。しかし、これらの、硫黄含有量10ppm未満を目標とする新規な触媒は、非常に高価であり、限られた数の物質からしか得られない。さらに、これらの触媒は、一度再生すると当初から、同様の操作条件下での新しい状態における初期活性よりもはるかに低い活性を示す。特殊な回復処理をさらに行うことによってのみ初期活性を回復でき、10ppm未満の硫黄含有量を達成できる。
【0003】
耐火性酸化物から形成された担体を基材とし、酸化されたCo/MoまたはNi/Mo金属対を含んでなる多くの「従来型」触媒が、新しい、または再生された状態で、精油所において水素化処理または水素化分解に、今日でもなお広く使用されている。燃料中の硫黄含有量に関する規格が非常に厳しくなった場合、脱硫および/または脱窒素処理における触媒活性を大幅に増加させることが不可能であることがわかると、これらの触媒をもはや使用できなくなり、これらの触媒は、最終的に回収し貯蔵するか、または破壊しなければならない。さらに、この貯蔵または固体の除去が、環境的および安全上の制約となり、精製業者にとって多大なコスト増加になるという危険性がある。
【0004】
そこで、本出願人は、耐火性酸化物およびVIおよびVIII族の金属を基材とする「従来型」触媒を新規な手段により変成させ、これらの触媒に、市販されている最良の触媒の活性と少なくとも同等であり、特に再生された触媒の活性よりも高い、脱硫および脱窒素活性を与えることを意図している。
【0005】
すべての水素化処理または水素化分解触媒は、使用前に硫黄化処理する必要がある。この硫黄化処理は、その場で、つまり水素化処理反応器中においてか、または応器外において(ex situ)、硫化水素、メルカプタン、硫化物、多硫化物、および/または天然硫黄を使用して行うことができ、これらの化合物は単独で、溶剤との混合物として、または原料と同時に導入する。これらの触媒の中には、硫黄化の前に変成させるものがあるが、この変成では、触媒をキレート化または硫黄化する化合物で処理する。例えば、これらの触媒を、チオグリコール型の酸またはチオアルコール、チオアセトン化合物およびチオジアゾールまたはチオシアネートを使用して変成させる方法が公知であり、例えば特に住友の特許(欧州特許第289211号、欧州特許第300629号、欧州特許第338788号、欧州特許第357295号、欧州特許第456592号、欧州特許第478365号、および欧州特許第506206号)に開示されている。他の触媒の中には、アルコール−酸有機化合物(欧州特許第482817号)、所望によりエーテル化されたモノ−、ジ−、またはポリアルコール(欧州特許第601722号、米国特許第3954673号、米国特許第4012340号および国際特許公開WO01/76741号)、または下記の種類の化合物、すなわち尿素、ポリアミン、EDTA、ヒドラジンおよび他の窒素系化合物を使用して変性されているものもある(欧州特許第181035号、欧州特許第335754号、欧州特許第1043069号、国際特許公開WO01/76741号、米国特許第3954673号および米国特許第4012340号)。
【0006】
Eurecatの欧州特許第628347号は、耐火性酸化物およびVIおよびVIII族金属を基材とする触媒を変性し、硫黄化するために、これらの従来型触媒を、分解点T1が220℃未満である第一硫黄化合物、および分解点T2が220℃を超える第二硫黄化合物を含んでなる混合物で予備硫黄化する方法を提供している。第一硫黄化合物は、C−SまたはS−S構造を含み、第二硫黄化合物は少なくとも一個のS=O構造を含み、スルホンまたはスルホキシド型の化合物、例えばアルキル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルスルホン、から選択される。
【0007】
これらの変性はすべて、水素化処理、特に脱硫におけるこれらの触媒の効果を改良することを目標としているが、常に精油工業の管理下にあるとは限らない薬品の使用を必要とする。さらに、これらの変性は、直接蒸留から得られる中間留分またはディーゼル燃料の成分として使用される、精製留分における2005年までにヨーロッパで予想される規格により必要とされる硫黄含有量を常に達成できる訳ではない。
【0008】
幾つかの国、例えばスエーデン、米国、特にカリフォルニアその他で、軽油の総硫黄含有量は、すでに0.005重量%に制限されており、この限度は、最終的にはOECDの国々でも一般的になろう。ヨーロッパに関して、この総硫黄0.005重量%の目標は、2005年までに達成すべきであるが、2010年までに0.001%の含有量がすでに提案されている。
【0009】
米国特許公開第3945914A号には、第一工程で、硫黄を含んでなる炭化水素の少なくとも一部を、酸化性化合物(過酸、過酸化水素および過酸化物)の存在下で酸化し、次いで、第二工程で、酸化された硫黄を含んでなる炭化水素を金属と260℃を超える温度で接触させて金属硫化物に転化することにより、炭化水素を脱硫するための方法が開示されている。
【0010】
必要とされる金属は、溶解した形態またはアルミナ型の耐火性酸化物上に担持された形態にある、所望により他の金属と組合せたモリブデンである。
【0011】
この2工程方法では、ベンゾチオフェン誘導体のスルホンおよびスルホキシド(炭化水素中で支配的な、他の硫黄を含んでなる化合物のスルホンおよびスルホキシドを含む)は、これらの温度で、金属と反応して金属硫化物を形成するため、固体触媒により吸収されることはなく、この反応は炭化水素の脱硫を促進する。さらに、この特許によると、担体は、金属の硫黄化反応に関与せず(段落4、25〜29行目)、触媒は硫黄化する必要はないため重要ではない。
【発明の概要】
【0012】
本願の出願人は、耐火性酸化物およびVIおよびVIII族の金属を基材とし、予め設定された硫黄含有量を達成し、変成していない従来型触媒に対して反応温度を少なくとも5〜25℃増加し、処理のための他の操作条件、圧力、水素の量、および毎時空間速度(HSV)は同等である、新規な種類の水素化処理触媒を設計した。そのような反応温度に関する増加により、50ppmよりはるかに低い、さらにはこれらの同じ操作条件を変えることにより、10ppmよりも低い硫黄含有量を達成できる。
【0013】
そこで、本発明の第一の目的は、耐火性酸化物から形成された担体、いづれも酸化された形態にある少なくとも一種のVIII族の金属および少なくとも一種のVI族の金属を含んでなる水素化処理触媒であって、少なくとも一種のベンゾチオフェン化合物から誘導された少なくとも一種のスルホン化合物および/またはスルホキシド化合物を含んでなることを特徴とする、水素化処理触媒である。
【0014】
本明細書においては、用語「金属触媒」は、耐火性酸化物から形成された担体、および酸化された形態にある、VI族およびVIII族のそれぞれから少なくとも一種の金属を含んでなる、すべての触媒を意味する。
【0015】
用語「水素化処理」は、炭化水素の元となる精製留分が何であれ、処理する炭化水素の硫黄含有量を下げる目的で水素が関与するすべての方法を意味するものとし、特に水素化処理(脱硫、脱窒素および脱芳香族成分)または水素化分解を含んでなる方法を意味する。
【0016】
本発明の触媒に特徴的な化合物は、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、および、より一般的には、所望により脂肪族および/または芳香族環を含んでなるアルキルまたはアリル炭化水素鎖により置換されていても、いなくてもよいポリアリールチオフェン、のスルホンおよびスルホキシドから選択されるものであり、この化合物は、単独でも、混合物としても使用できる。好ましくは、この化合物は、市販のスルホンおよび/またはスルホキシド化合物、または原油の精製により得られる炭化水素留分中に存在するベンゾチオフェン化合物の酸化から得られる生成物である。
【0017】
本発明の好ましい実施態様では、スルホンおよび/またはスルホキシド化合物の少なくとも一種は、脱硫した、または脱硫していない炭化水素留分を、有機または無機の過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに、有機または無機過酸、から選択された酸化性化合物により、所望により触媒の存在下で、酸化することにより得られる。過酸化水素およびtert−ブチルヒドロペルオキシドが好ましい酸化剤である。
【0018】
このように、本発明の水素化処理触媒は、市販の触媒に匹敵する(事実市販の触媒よりも優れてさえいる)活性および選択性の特徴を示し、有利なことに、精油所で製造することができ、この同じ精油所で直ちに使用することができる。さらに、この触媒は、現場ですでに入手できる再生触媒(これは、市販されている、水素化処理に関して最も効果的な水素化処理触媒よりはるかに安価である)から製造できるという優位性を示す。
【0019】
水素化処理で有効であるためには、触媒は、少なくとも0.01重量%、好ましくは0.01〜10重量%の、少なくとも一種のスルホンおよび/またはスルホキシド化合物を含んでなる。
【0020】
本発明の別の課題は、水素化処理触媒の製造方法である。本方法は、スルホンおよび/またはスルホキシド化合物を金属触媒の表面で形成する、および/またはその表面に堆積させる、工程を含んでなることが必要である。これらの化合物の堆積は、触媒の表面で含浸、グラフト化または形成することにより行うことができる。
【0021】
より詳細には、本発明の方法は、金属触媒を含んでなる反応器中に、少なくとも一種のベンゾチオフェン化合物と、有機または無機の過酸化物およびヒドロペルオキシドおよび有機または無機過酸からなる群から選択される酸化性化合物を含んでなる有機液体とを導入する工程、常温および大気圧から出発する工程、および形成されたスルホキシドおよび/またはスルホン化合物を担持している触媒を回収する工程からなる。
【0022】
使用する有機液体は、パラフィン、芳香族およびナフテン系炭化水素およびベンゾチオフェン化合物用の溶剤、例えばベンゼン、トルエン、および/またはキシレン、および原油精製から得られる炭化水素留分から選択される。好ましい態様では、有機液体は、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素留分である。
【0023】
本発明の水素化処理触媒の製造方法は、その好ましい実施態様において、金属触媒の存在下で、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素留分の酸化脱硫を行う。好ましくは、この金属触媒は、シリカおよび/またはアルミナから製造された担体、およびVI族およびVIII族の、ニッケル/モリブデン、コバルト/モリブデン、ニッケル/タングステン、ニッケル/コバルト/モリブデンおよびニッケル/タングステン/モリブデンの組合せからなる群から選択された、酸化された形態にある金属の組合せを含んでなる。
【0024】
この金属触媒は、本発明では、新たに調製したものであっても、市販の触媒であってもよく、新しい状態で、または再生後(すなわち、実質的には水素化処理操作の際にこの触媒上に堆積したコークスを燃焼させた後)に使用する。
【0025】
本発明の製造方法は、水素化処理反応器に装填する前の反応容器外で、あるいは水素化処理反応器として使用することになる反応器中で行うことができる。
【0026】
無論、この製造方法を、他のいずれかの触媒担体に、水素化処理における活性を増加する目的で応用しても、本発明の範囲から離れることにはならない。
【0027】
本発明の第三の課題は、この触媒を、その場でまたは他の場所で、硫化水素、メルカプタン、硫化物、および/または多硫化物、および他の硫黄化する化合物から選択された少なくとも一種の硫黄化合物を使用して硫黄化した後で、当該触媒を炭化水素の水素化処理に使用することであり、この化合物は、気体形態または液体形態で固体または液体を溶剤中に希釈した後で、または液体形態のまま直接、さらには所望により水素化処理すべき原料の添加剤として、導入される。この硫黄化は水素化処理すべき原料のみで行うこともできる。
【0028】
本発明の第四の課題は、硫黄含有、窒素含有、および/または芳香族炭化水素の原料を、硫黄分10ppm未満に精製する方法であって、本発明の変性された金属触媒の存在下で、この金属触媒を硫黄化した後で、留分を水素化処理する第一工程、および水素化処理した原料を酸化脱硫する第二工程を含んでなるものである。
【0029】
本発明の精製方法の好ましい態様においては、水素化処理した原料の酸化脱硫を、金属触媒、および、有機または無機の過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに有機または無機過酸から選択された酸化剤の存在下で行う。好ましくは、酸化剤は過酸化水素またはtert−ブチルヒドロペルオキシドである。金属触媒は、シリカおよび/またはアルミナから製造された担体、およびVI族およびVIII族の、ニッケル/モリブデン、コバルト/モリブデン、ニッケル/タングステン、ニッケル/コバルト/モリブデンおよびニッケル/タングステン/モリブデンの組合せからなる群から選択された、酸化された形態にある金属の組合せを含んでなる。
【0030】
本発明の好ましい実施態様では、特に水素化処理および酸化脱硫操作を同じ精油所で行う場合、酸化脱硫サイクルの後で得られる使用済みの金属触媒(但し本発明により変成された金属触媒)を、水素化処理反応器の外または内で硫黄化した後に、水素化処理触媒として使用する。酸化脱硫サイクルの最後は、流出液の総硫黄含有量が再び10ppmを超えた時点に対応するのが有利である。
【0031】
上記のことを考慮して、本発明の方法は、同じ反応器中で、または少なくとも2基の個別の、例えば直列に配置された反応器中で行うことができる。
【0032】
2基の個別の反応器を使用する配置では、反応器は水素化処理および酸化脱硫に交互に操作し、それぞれの反応器が同じ精製サイクルで異なった処理を行うことができる。この実施態様の利点は、水素化処理に使用した触媒だけを排出し、再生してから酸化脱硫で再使用すればよいことである。さらに、酸化脱硫から得られた触媒は、水素化処理に直接使用した場合よりも、はるかに高い活性を示す。
【0033】
別の配置としては、2基の反応器の一方を常に水素化処理で操作し、他方を常に酸化脱硫で操作する。その場合、酸化脱硫サイクルの最後における触媒を排出し、水素化処理反応器に再装填し、最後に、従来の方法により硫黄化する。さらに、従来の未変性水素化処理金属触媒を酸化脱硫反応器に装填する。上記の配置と同様に、水素化処理触媒はなお再生しなければならない。
【0034】
この精製方法は、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素原料に特に好適であり、これら原料は、特に常圧蒸留、減圧蒸留、FCC接触分解、水素化分解、コーキングまたはビスブレーキングから得たものでよい。
【実施例】
【0035】
下記の例は本発明を説明するためであって、制限するものではない。
【0036】
例I
本例では、5種類の硫黄化された触媒の製造を説明するが、これらの触媒は、続いて脱硫、脱窒素および脱芳香族成分処理に使用する。これらの触媒はすべて、市販の触媒Aから製造するものであり、この触媒は、アルミナ担体上にコバルト3%およびモリブデン10%の組合せを含んでなり、市販されており、一般的に製油業者により水素化脱硫装置で使用されているものである。
【0037】
この触媒に適用する変成および/または硫黄化処理を下記の表Iに示す。
【0038】
【表1】

【0039】
TBHPを含んでなる軽油を使用する他の場所における変性は、下記のように行う。
【0040】
丸底フラスコ中に入れた、硫黄1重量%を含んでなる直接蒸留軽油(GO1)600g(約700ml)にTBHP溶液38gを加える。次いで、この混合物に触媒A100gを加える。この混合物を70℃で3時間、中速度で攪拌する。続いて、変性された触媒を濾過により回収し、常温でトルエン200mlで3回洗浄し、最後に常温でペンタン200mlで3回洗浄する。こうして回収された触媒を、換気されている加熱炉中、80℃で3時間空気乾燥させる。
【0041】
反応容器中での変性においては、触媒A100mlをCatatest型のパイロット装置の反応器中に導入する。TBHP溶液を加えた軽油(GO1またはGO2)を、この触媒上に毎時空間速度(HSV)1h−1、大気圧、温度70℃で通す。7時間(GO1)または70時間(GO2)後、添加剤を加えた軽油の注入を停止する。反応器中に存在する過剰の軽油を除去するために、僅かな窒素流を順流で通す。
【0042】
ジベンゾチオフェンスルホン(dBTS)を使用する反応容器外での変性においては、軽油/TBHP混合物を市販のスルホンのエタノール溶液で置換する以外は、軽油およびTBHPを使用する変性と同様である。
【0043】
触媒BおよびCは、硫黄1重量%を含んでなる直接蒸留軽油で触媒Aを濡らすことにより形成し、操作は、反応容器外または内における変性に関して上記のようにして行う。これらの触媒は、本発明の他の4種類の触媒D、E、FおよびGとの比較用の触媒を構成する。
【0044】
これらの触媒はすべて、触媒Aの製造業者により推奨される手順に従って、DMDS2重量%を加えた軽油で硫黄化した。
【0045】
例II
本例は、本発明の触媒が、未変性の市販触媒Aよりも、水素化脱硫および脱窒素において、はるかに高い活性を有することを示す。
【0046】
例Iの触媒A、B、C、D、E、FおよびGを、順流で操作するパイロット水素化処理装置の管状反応器中で、直接蒸留軽油を水素化処理することにより安定化させる第一工程に付す。続いて、直接蒸留軽油75体積%、および接触分解から得られる、通常はLCO(Light Cycle Oil)と呼ばれる220〜350℃炭化水素留分25体積%を含んでなる炭化水素原料を水素化処理する。この混合物の特徴は下記の表IIに示される通り。
【0047】
【表2】

【0048】
操作条件は下記の表IIIに示される通り。
【0049】
【表3】

【0050】
脱硫および脱窒素における活性を比較するために、水素化処理された原料の98%脱硫または50%脱窒素を達成するように反応温度を調節する。特定の触媒に対して、基準触媒Aに関する対応する温度と比較して、この温度が低い程、この触媒は脱硫または脱窒素において活性がより高いことになる。
【0051】
基準触媒Aに関して、水素化脱硫および脱窒素に対するそれぞれの温度THDSおよびTHDNは、98%脱硫および50%脱窒素を達成するのに必要な温度に対応する。
【0052】
試験結果は下記の表IVに示される通り。
【0053】
【表4】

【0054】
触媒D、E、FおよびG(本発明の)は、HDSおよびHDNで、基準触媒Aの活性よりはるかに高い活性を示すのに対し、触媒BおよびCは、触媒Aの活性と同等の活性を示す。
【0055】
例III
本発明の新たに変成した水素化処理触媒、これと同様の触媒を水素化処理サイクル後に再生した触媒、次いで本発明により変成した触媒、の性を本例で比較する。
【0056】
最初の水素化処理サイクルの後、例IIの触媒Gを、酸化性雰囲気中、450℃で少なくとも5時間、コークスを燃焼させることにより再生する。この再生した触媒を、触媒Gに関する例IIに記載するように変成し、触媒G’を形成し、続いて例IIに記載するように硫黄化する。次いで、触媒Gに適用したサイクルと等しい、新たな水素化処理サイクルを行う。
【0057】
下記表Vにおいて、GおよびG’に必要な水素化処理温度を、基準触媒Aと比較する。
【0058】
【表5】

【0059】
表Vから、再生および本発明の再変成の後、再生された市販の触媒は、新しく変成した触媒の性能と事実上同等の性能を再度獲得することが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性酸化物から形成された担体、いずれも酸化された形態にある、少なくとも一種のVIII族金属、および少なくとも一種のVI族金属、を含んでなる変成された水素化処理触媒であって、少なくとも一種のベンゾチオフェン化合物から誘導された少なくとも一種のスルホン化合物および/またはスルホキシド化合物を含んでなる、触媒。
【請求項2】
前記化合物が、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、および、より一般的には、所望により脂肪族および/または芳香族環を含んでなるアルキルまたはアリル炭化水素鎖により置換されていても、いなくてもよいポリアリールチオフェン、のスルホンおよびスルホキシドから選択されるものであり、前記化合物が、単独で、または同じ群の他の化合物との混合物として使用される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記化合物が、市販のスルホンおよび/またはスルホキシド化合物、または原油の精製により得られる炭化水素留分中に存在するベンゾチオフェン化合物を酸化して得られるスルホンおよび/またはスルホキシド化合物である、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記スルホンおよび/またはスルホキシド化合物の少なくとも一種が、脱硫された、または脱硫されていない炭化水素留分を、有機および無機の過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに有機または無機過酸から選択される酸化性化合物により、所望により触媒の存在下で、酸化することにより得られるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
少なくとも一種のスルホンおよび/またはスルホキシド化合物を少なくとも0.01重量%含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒の製造方法であって、スルホンおよび/またはスルホキシド化合物を、耐火性酸化物から形成された担体、ならびに、VI族およびVIII族のそれぞれから選択された少なくとも一種の酸化された形態にある金属、を含んでなる金属触媒の表面で形成する工程、および/または前記表面に堆積させる工程を含んでなる、方法。
【請求項7】
前記金属触媒を含んでなる反応器中に、少なくとも一種のベンゾチオフェン化合物と、有機または無機の過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに有機または無機過酸からなる群から選択された酸化性化合物、とを含んでなる有機液体を導入し、常温および大気圧から出発して、次いで、形成されたスルホキシドおよび/またはスルホン化合物を担持している触媒を回収する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機液体が、パラフィン、芳香族およびナフテン系炭化水素およびベンゾチオフェン化合物用の溶剤、ならびに原油精製から得られる炭化水素留分、から選択されるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機液体が、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素留分である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記金属触媒の存在下で、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素留分の酸化脱硫を行う、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が、シリカおよび/またはアルミナから製造された担体と、VI族およびVIII族の、ニッケル/モリブデン、コバルト/モリブデン、ニッケル/タングステン、ニッケル/コバルト/モリブデンおよびニッケル/タングステン/モリブデンの組合せからなる群から選択された、酸化された形態にある金属の組合せ、とを含んでなる、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記金属触媒が未使用であるか、または再生されている、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記水素化処理触媒の製造が、水素化処理反応器の中または外で行われる、請求項6〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒の、前記触媒を反応器の中または外で、硫化水素、メルカプタン、硫化物、および/または多硫化物、および他の硫黄化する化合物から選択された少なくとも一種の硫黄化合物により、または水素化処理すべき原料により硫黄化した後での、炭化水素の水素化処理への使用。
【請求項15】
硫黄含有、窒素含有、および/または芳香族炭化水素、の原料を、硫黄分10ppm未満にまで精製するための方法であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒の存在下で、前記触媒を硫黄化した後で、炭化水素原料を水素化処理する第一工程、および前記水素化処理された原料を酸化脱硫する第二工程を含んでなる、方法。
【請求項16】
前記酸化脱硫が、VI族およびVIII族のそれぞれから選択された少なくとも一種の金属を担持する耐火性酸化物を基材とする金属触媒、および、有機または無機の過酸化物およびヒドロペルオキシド、ならびに有機または無機過酸、好ましくは過酸化水素およびtert−ブチルヒドロペルオキシド、から選択された酸化剤、の存在下で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化脱硫サイクルの後で得られる変成された金属触媒が、水素化処理反応器外で硫黄化されるか、または水素化処理反応器中で硫黄化された後に、水素化処理触媒として使用される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
同じ反応器中で、または少なくとも2基の個別の反応器中で行われる、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記2基の個別反応器が、水素化処理および酸化脱硫で交互に稼働し、それぞれ異なった処理を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応器の一方が常に水素化処理で稼働し、他方の反応器が常に酸化脱硫で稼働する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記炭化水素原料が、最低および最高沸点が40〜560℃である炭化水素原料である、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−516222(P2006−516222A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502101(P2006−502101)
【出願日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000071
【国際公開番号】WO2004/067683
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(591187760)トタル、フイナ、エルフ、フランス (2)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL FINA ELF FRANCE
【Fターム(参考)】