説明

水素化精製触媒組成物

【課題】 軽油の水素化脱硫反応中に発生する硫化水素や窒素の被毒による活性低下や貴金属凝集による活性低下を防止し、アルキルジベンゾチオフェンなどの水素化脱硫されにくい硫黄化合物を含む分解軽油の水素化精製に使用して、高い水素化能を有し、脱硫活性が高いなどの優れた効果を示す、水素化精製触媒組成物の提供。
【解決手段】 下記(a)〜(e)の性状を有する超安定性Y型ゼオライトに貴金属成分を担持してなる水素化精製触媒組成物。
(a)SiO/Alモル比が80〜800の範囲
(b)結晶格子定数(UD)が24.28〜24.32Åの範囲
(c)細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積が0.10ml/g以上
(d)比表面積が700m/g以上
(e)NaO含有量が0.06wt%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化精製触媒組成物に関し、さらに詳しくは、炭化水素の流動接触分解(FCC)装置で生産される分解軽油〔Light Cycle Oil(LCO)〕に含まれている硫黄化合物などの水素化精製に使用して、高い脱硫活性を示す水素化精製触媒組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃エンジン用燃料として使用される軽油は、直流軽油に流動接触分解(FCC)装置で生産される分解軽油などを混合調整した後に水素化脱硫して製造されている。特に、製油所では分解軽油は増産傾向にあり直留軽油に対する混合比率を高くする傾向にある。
しかし、分解軽油には硫黄化合物などの大気汚染物質が多く含まれているため、分解軽油の混合比率が高くなると、大気汚染などの環境問題が生じる。そのため、分解軽油中の硫黄化合物や多環芳香族化合物などを低減させる水素化処理触媒組成物が種々提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、超安定性Y型ゼオライト(USY)に担持されたPdおよびPt触媒上での軽油の水素化脱芳香族化、水素化脱窒素、水素化脱硫の研究がなされており、担持金属のPd/Pt重量比による水素化脱芳香族化などへの影響が報告されている。この研究では、従来のCo−Mo又はNi−Mo系触媒はアルキルジベンゾチオフェンなどの水素化脱硫を行うに十分な水素化能を備えていないので、高い水素化脱硫活性等を有する触媒を見出すことを目的としており、担体としてSiO/Alモル比が33.5、BET法での比表面積が592.5m/gでt−プロットによるメソポアの表面積が51m/gの性状を有する水素タイプ超安定性Y型ゼオライト(H−USY)が使用されている。
しかし、貴金属系触媒は、軽油の水素化脱硫反応中に発生する硫化水素により被毒されて活性低下が急速に進行し、また、反応中の貴金属凝集により活性が急速に低下する問題があった。さらに、担体のH−USYはSiO/Alモル比が低いので酸性度が高いために窒素により被毒されて急速な活性低下を生じるなどの問題があった。
【0004】
また、本出願人の出願にかかる特許文献1には、SiO/Alモル比が100〜800の範囲にある超安定性Y型ゼオライトとアルミナ−ボリアとからなる担体に周期律表第VIII族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属成分を担持させたことを特徴とする芳香族炭化水素の水素化触媒組成物が開示されており、該水素化触媒組成物は、軽油中の芳香族炭化水素などの水素化において高い水素化活性を示すことが記載されている。
しかし、これらの水素化触媒組成物は水素化脱芳香族化には高い水素化能を有するものの、硫黄化合物の水素化脱硫活性についてはさらなる改善が望まれていた。
【0005】
【非特許文献1】Z.Varga, et al., Studies in surface Science and Catalysis 142,587−594,2002.
【特許文献1】特開2001−79416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述の問題点を解決し、軽油の水素化脱硫反応中に発生する硫化水素や窒素の被毒による活性低下や貴金属凝集による活性低下を防止し、アルキルジベンゾチオフェンなどの水素化脱硫されにくい硫黄化合物を含む分解軽油の水素化精製に使用して、高い水素化能を有し、脱硫活性が高いなどの優れた効果を示す、水素化精製触媒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の性状を有する超安定性Y型ゼオライトを担体に使用した貴金属系水素化精製触媒組成物は分解油の水素化脱硫に優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第1は、下記(a)〜(e)の性状を有する超安定性Y型ゼオライトに貴金属成分を担持してなる水素化精製触媒組成物に関する。
(a)SiO/Alモル比が80〜800の範囲
(b)結晶格子定数(UD)が24.28〜24.32Åの範囲
(c)細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積が0.10ml/g以上
(d)比表面積が700m/g以上
(e)NaO含有量が0.06wt%以下
本発明の第2は、前記貴金属成分が白金(Pt)およびパラジウム(Pd)からなる請求項1記載の水素化精製触媒組成物に関する。
本発明の第3は、前記白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の担持量が合計で金属として0.1〜10wt%の範囲にあり、かつPt/Pd原子比が0.1/1〜10/1の範囲にある請求項2記載の水素化精製触媒組成物に関する。
本発明の第4は、下記式(1)で表されるCOガス吸着率(%)が60%以上である請求項1〜3記載の水素化精製触媒組成物に関する。
COガス吸着率(%)=K×100/R ・・・(1)
ここで、Kは触媒組成物1gあたりのCOガス吸着量(モル数)、
Rは触媒組成物1gあたりの担持貴金属成分量(モル数)、を表す。
【0009】
本発明での超安定性Y型ゼオライトは、下記の性状を有する。
(a)SiO/Alモル比が80〜800の範囲である点。
本発明でのSiO/Alモル比は超安定性Y型ゼオライトの化学分析値から求めた値である。該ゼオライトのSiO/Alモル比が80未満の場合は、脱硫反応と共に水素化反応の活性が低くなるので好ましくない。また、SiO/Alモル比が800を超えた場合は、硫黄化合物に対する耐性が著しく減少し、脱硫活性が低下するとともに水素化活性も低下するので好ましくない。該ゼオライトのSiO/Alモル比は好ましくは90〜500、より好ましくは100〜200の範囲にあることが望ましい。
【0010】
(b)結晶格子定数(UD)が24.28〜24.32Åの範囲である点。
該ゼオライトの結晶格子定数(UD)が24.28Åより小さい場合は、ゼオライト結晶格子からのアルミニウム離脱による活性点の減少が大きく脱硫活性と水素化活性が低下するので好ましくない。また24.32Åより大きい場合は、ゼオライトの酸性度が高く芳香族などによる被毒を受けて脱硫活性と水素化活性および活性安定性が低下する。
【0011】
(c)細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積が0.10ml/g以上である点。
該ゼオライトの細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積が0.10ml/gより小さい場合には、反応すべき油分子の細孔内拡散が量的に制約される。
軽油を構成する炭化水素の平均分子径は3.5nmより大きいため、該ゼオライトの細孔直径3.5nmより小さい細孔では軽油の拡散が悪く、水素化脱硫反応が起こりにくい。一方、該ゼオライトの細孔直径が5.0nmより大きい細孔の生成は、ゼオライト結晶構造の破壊を生じるため好ましくない。
該ゼオライトの細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積は、好ましくは0.11ml/g〜0.20ml/gの範囲にあることが望ましい。
【0012】
(d)比表面積が700m/g以上である点。
該ゼオライトの比表面積が700m/gより小さい場合には、反応場が少なくなり水素化活性と脱硫活性が低下する。該ゼオライトの比表面積は、好ましくは720m/g〜800m/gの範囲にあることが望ましい。
【0013】
(e)NaO含有量が0.06wt%以下である点。
該ゼオライトのNaO含有量が0.06wt%より多い場合には、過剰にゼオライトの酸性度減少を起こし水素化活性と脱硫活性が低下する。該ゼオライトのNaO含有量は、製造コストの面から、好ましくは0.04〜0.01wt%の範囲にあることが望ましい。
【0014】
本発明の水素化精製触媒組成物は、前述の超安定性Y型ゼオライトに貴金属成分を担持したものである。該貴金属成分としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金成分などが例示される。本発明では、前述の金属成分の担持量が金属として0.1〜10wt%の範囲であることが好ましい。該金属成分の担持量が0.1wt%より少ない場合には所望の脱硫活性が得られないことがあり、また、10wt%より多くしても脱硫活性の増加は少なくコスト高になる。該金属成分のさらに好ましい担持量は、金属として0.5〜5wt%の範囲である。
【0015】
本発明では、特に、前述の貴金属成分として白金(Pt)とパラジウム(Pd)を組み合わせて使用することが好ましい。白金とパラジウムを組み合わせて使用することにより高い水素化能を維持し硫黄化合物に対する耐性が増大される。
前記白金(Pt)とパラジウム(Pd)の担持量(PtとPdの合計)は、前述の金属成分の担持量の場合と同様に、金属として0.1〜10wt%の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5wt%の範囲にある。また、白金とパラジウムを組み合わせでは、Pt/Pd原子比が0.1/1〜10/1の範囲であることが好ましい。該Pt/Pd原子比が0.1/1より小さい場合には、水素化活性と脱硫活性が低下し、該Pt/Pd原子比が10/1より大きい場合にも水素化活性と脱硫活性が低下することがあり、いずれも併用の効果が消失する。
該Pt/Pd原子比は0.5/1〜8/1さらに好ましくは1/1〜7/1の範囲にあることが望ましい。
【0016】
本発明の水素化精製触媒組成物は、また、前述の超安定性Y型ゼオライトに担持された前述の貴金属成分の分散性が重要である。該貴金属成分の分散性を測定するのに、COガスの吸着量を測定する方法が一般に用いられている。
本発明の水素化精製触媒組成物では、下記式(1)で表されるCOガス吸着率(%)が60%以上であることが好ましい。
COガス吸着率(%)=K×100/R ・・・(1)
ここで、Kは触媒組成物1gあたりのCOガス吸着量(モル数)、
Rは触媒組成物1gあたりの担持貴金属成分量(モル数)、を表す。
該COガス吸着率(%)が60%より小さい場合には、前記貴金属成分の分散性が悪いために、高い脱硫活性と水素化活性を得ることができないことがある。
なお、COガス吸着率(%)の測定には全自動触媒ガス吸着装置(大倉理研株式会社製)を用いた。先ず触媒0.1gを専用セルに充填し、300℃水素気流中で1時間還元処理を行った後にヘリウムガスを流通しながら50℃まで降温する。50℃でヘリウム気流中、10vol%COガス濃度のヘリウムガスをパルスで注入し、排出ガスのCOガス濃度をCOメーターで測定してその差を第1回パルス吸着におけるCOガス吸着量とする。この操作を繰り返し、排出ガスのCOガス濃度が注入COガス濃度と同一になった時点でCOガス吸着操作を終了する。そして合計のCOガス吸着量を求めた後に(1)式でCOガス吸着率を算出する。
【0017】
前記性状を有する超安定性Y型ゼオライトは、次の方法により製造することが出来る。
市販のナトリウムY型ゼオライト(Na−Y)を、アンモニウムイオン交換してアンモニウムY型ゼオライト(NH−Y)を調製し、該NH−Yを水蒸気雰囲気中で加熱処理して超安定性Y型ゼオライト(USY)を調製し、次いで硫酸などの酸水溶液で脱アルミニウム処理する方法で所望の性状を有する超安定性Y型ゼオライトを調製することができる。水蒸気雰囲気中での加熱処理条件および脱アルミニウム処理条件により超安定性Y型ゼオライトの性状が制御される。
本発明の水素化精製触媒組成物は、例えば、テトラアンミン白金(II)塩化物一水和物やテトラアンミンパラジウム(II)塩化物一水和物などの水に溶解性の貴金属化合物を含有する水溶液の所定量を通常の方法で上記ゼオライトに含浸した後、空気気流中で乾燥焼成して製造される。
【0018】
また、本発明の水素化精製触媒組成物は、通常の水素化精製反応条件が採用可能であり、具体的な水素化精製条件としては、水素圧力が2.0〜15.0MPa、反応温度が250〜400℃、液空間速度が0.3〜3.0h−1、水素対反応液比が50〜500リットル/1リットル反応液などが例示される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水素化精製触媒組成物は、アルキルジベンゾチオフェンなどの水素化脱硫されにくい硫黄化合物を含む軽油の水素化精製に使用して高い脱硫活性を示し、軽油の水素化脱硫反応中に発生する硫化水素や窒素の被毒による活性低下や貴金属凝集による活性低下が少ないので、工業用触媒として有用である。
【実施例】
【0020】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0021】
製造例1
市販のNa−Y型ゼオライト〔触媒化成工業(株)製〕9.0kgを90リットルの水に懸濁し、硫安2.56kgを加えて1時間攪拌した後これを濾過洗浄した。さらに25リットルの水に硫安2.64kgを溶解し、濾過洗浄したゼオライトをこの硫安水でイオン交換した後、濾過・洗浄・乾燥してナトリウム交換率65%のNH−Y型ゼオライトを得た。
このNH−Y型ゼオライトを660℃で1時間、飽和水蒸気を流通しながら加熱しH−Y型ゼオライトを得た。このH−Y型ゼオライトを90リットルの水に懸濁し硫安7.9kgを加えて90℃で1時間攪拌したのち濾過洗浄し乾燥してナトリウム交換率85%のH−Y型ゼオライトを得た。このH−Y型ゼオライトを700℃で1時間、飽和水蒸気を流通しながら加熱しSiO/Al比が5、UDが24.33Åの超安定性Y型ゼオライト(USY−5)8kgを調製した。
前記超安定性Y型ゼオライト(USY−5)7kgを70リットルの水に懸濁し、懸濁液に25wt%硫酸18.6kgを添加した後、1時間攪拌して濾過洗浄した。得られた洗浄品を3等分し、その1/3量を130℃で乾燥を行ない、SiO/Alモル比50目標(化学分析値によるSiO/Alモル比は48)の超安定性Y型ゼオライト(USY−50)を約1.7kg得た。
前記洗浄品の残りの1/3量を水25リットルに懸濁し、懸濁液に25wt%硫酸1.2kgを添加した後、1時間攪拌して濾過洗浄し、130℃で乾燥を行ないSiO/Alモル比120目標(化学分析値によるSiO/Alモル比は119)の超安定性Y型ゼオライト(USY−120)を約1.6kg得た。
更に、前記洗浄品の残りの1/3量を水25リットルに懸濁し、懸濁液に25wt%硫酸1.8kgを添加した後、1時間攪拌して濾過洗浄し、130℃で乾燥を行ないSiO/Alモル比150目標(化学分析値によるSiO/Alモル比は149)の超安定性Y型ゼオライト(USY−150)を約1.6kg得た。
これらの超安定Y型ゼオライトの性状を表1に示す。
【0022】
実施例1
テトラアンミン白金(II)塩化物一水和物([Pd(NH]Cl・HO)およびテトラアンミンパラジウム(II)塩化物一水和物([Pt(NH]Cl・HO)を用いて、PtとPdのモル比が4:1の混合溶液を調製し、該溶液を製造例1の超安定性Y型ゼオライト(USY−150)にポアーフィリング法で含浸した後、酸素気流中、300℃で3時間焼成し、Pt担持量0.38wt%およびPd担持量0.82wt%の貴金属担持水素化精製触媒組成物(USY−150S)を調製した。
該水素化精製触媒組成物のCOガス吸着率(%)の測定には全自動触媒ガス吸着装置(大倉理研株式会社製)を用いた。先ず触媒0.1gを専用セルに充填し、300℃水素気流中で1時間還元処理を行った後にヘリウムガスを流通しながら50℃まで降温する。50℃でヘリウム気流中、10vol%COガス濃度のヘリウムをパルスで注入し、排出ガスのCOガス濃度をCOメーターで測定してその差を第1回パルス吸着におけるCOガス吸着量とする。この操作を繰り返し、排出ガスCOガス濃度が注入COガス濃度と同一になった時点でCOガス吸着操作を終了する。そして合計のCOガス吸着量を求めた後に、前述の(1)式でCOガス吸着率を算出する。
測定結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
製造例1の超安定性Y型ゼオライト(USY−120)を使用した以外は、実施例1と同様にして貴金属担持水素化精製触媒組成物(USY−120S)を調製した。該触媒USY−120SのCO吸着率の測定結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
製造例1の超安定性Y型ゼオライト(USY−50)を使用した以外は、実施例1と同様にして貴金属担持水素化精製触媒組成物(USY−50S)を調製した。USY−50S触媒のCO吸着率の測定結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
製造例1の超安定性Y型ゼオライト(USY−5)を使用した以外は、実施例1と同様にして貴金属担持水素化精製触媒組成物(USY−5S)を調製した。USY−5S触媒のCO吸着率の測定結果を表1に示す。
【0026】
実施例3 水素化精製反応1
実施例1、2および比較例1、2の各触媒を用いて4,6−ジメチルジベンゾチオフェンの水素化脱硫活性試験を行った。水素化脱硫活性試験を行うに先立ち、各触媒は水素気流中300℃で3時間、貴金属の還元処理を行った。テトラリン30wt%を混合したn−ヘキサデカン溶液に、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンとn−ブチルアミンを添加して硫黄濃度300ppmと窒素濃度20ppmの反応油を調製した。それぞれ触媒0.25gを充填したリアクターにこの反応油を流通して、水素圧力3.9Mpa、反応温度280℃、重量液空間速度16h−1、水素対油比500リットル/リットルの条件で水素化精製反応を実施した。
反応開始30時間後の4,6−ジメチルジベンゾチオフェン脱硫活性を図1に示す。図1から分かる様に、超安定性Y型ゼオライトのSiO/Alモル比が80以上の範囲で高い脱硫活性を示した。
【0027】
実施例4 水素化精製反応2
実施例1、2および比較例1、2の各触媒を用いて脱硫活性の寿命テストを行った。各触媒は反応に先立ち水素気流中300℃で3時間、貴金属の還元処理を行った。テトラリン30wt%を混合したn−ヘキサデカン溶液に、4,6−ジメチルジベンゾチオフェンとn−ブチルアミンを添加して硫黄濃度300ppmと窒素濃度20ppmの反応油を調製した。それぞれ触媒0.25gを充填したリアクターにこの反応油を流通して、水素圧力3.9Mpa、反応温度280℃、重量液空間速度16h−1、水素対油比500リットル/リットルの条件で水素化精製反応を実施した。
反応開始から50時間までの4,6−ジメチルジベンゾチオフェン脱硫活性推移を図2に示す。図2から本発明の触媒は脱硫活性が高く、長時間にわたって活性低下が少ないことが分かる。
【0028】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、反応開始30時間後の4,6−ジメチルジベンゾチオフェン脱硫活性を示す図である。
【図2】図2は、反応開始から50時間までの4,6−ジメチルジベンゾチオフェン脱硫活性推移を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)の性状を有する超安定性Y型ゼオライトに貴金属成分を担持してなる水素化精製触媒組成物。
(a)SiO/Alモル比が80〜800の範囲
(b)結晶格子定数(UD)が24.28〜24.32Åの範囲
(c)細孔直径3.5〜5.0nmの範囲にある細孔の細孔容積が0.10ml/g以上
(d)比表面積が700m/g以上
(e)NaO含有量が0.06wt%以下
【請求項2】
前記貴金属成分が白金(Pt)およびパラジウム(Pd)からなる請求項1記載の水素化精製触媒組成物。
【請求項3】
前記白金(Pt)およびパラジウム(Pd)の担持量が合計で金属として0.1〜10wt%の範囲にあり、かつPt/Pd原子比が0.1/1〜10/1の範囲にある請求項2記載の水素化精製触媒組成物。
【請求項4】
下記式(1)で表されるCOガス吸着率(%)が60%以上である請求項1〜3記載の水素化精製触媒組成物。
COガス吸着率(%)=K×100/R ・・・(1)
ここで、Kは触媒組成物1gあたりのCOガス吸着量(モル数)、
Rは触媒組成物1gあたりの担持貴金属成分量(モル数)、を表す。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−175295(P2006−175295A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368059(P2004−368059)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】