説明

水耕栽培用プランター

【課題】汚れが取れやすく、耐久性に優れ、しかも洗浄時に欠け・割れ・表面の窪みを生じにくく、軽量で、植物の生育が良好な水耕栽培用プランターを提供する。
【解決手段】植物栽培液が収容可能なトレイ11をプラスチックシートの真空成形品で構成し、トレイ11の上部に載置され、植物を保持するための定植用筒部45を複数有する定植パネル30を、定植用筒部45が下方へ屈曲形成されたプラスチックシートの真空成形品からなる上側シート41と、定植用筒部45が嵌る凸部56が上方へ屈曲形成されたプラスチックシートの真空成形品からなる下側シート51とで構成し、上側シート41と下側シート51を周縁及び定植用筒部45が嵌った凸部56の天面で接着して貼り合わせた複合体で構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培培養液が収容可能なトレイと前記トレイの上部に載置される植物保持パネルとよりなる植物栽培用プランターを上下に複数段で配置し、植物培養液を上方の植物栽培用プランターから下方の植物栽培用プランターへ流す水耕栽培装置に用いられる水耕植物栽培用プランターに関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培液を収容可能なトレイとトレイの上部に載置される定植パネルとからなる植物栽培用プランターをラック等に上下複数段で配置し、植物栽培液を上方の植物栽培用プランターから下方の植物栽培用プランターへ流れるようにした水耕栽培装置が提案されている。
【0003】
従来のトレイ(ベッドとも称される)は、上方が開放された発泡スチロール製の容器からなる。また、従来の定植パネルは、発泡スチロールの板状体に複数の定植用孔が形成されたものからなる。前記定植パネルは、定植用孔に野菜等の植物の基部が配置保持されてトレイの側壁上端等に載置され、定植用孔に保持された植物の根がトレイ内の植物栽培液に届くようにされる。また、前記定植パネルは、定植用孔に保持されて成長した野菜等の植物が収穫等により定植用孔から抜き取られた後、再び次の栽培に使用される。
【0004】
水耕栽培に使用されるプランターのトレイや定植パネルは、使用中にコケが発生しやすいため、及び衛生的な生育環境を維持するためなどから、定期的に高圧水を吹き付ける高圧洗浄が行われる。しかしながら、発泡スチロールからなるトレイ及び定植パネルは、発泡スチロールに起因する微細な凹凸が表面に存在するため、表面の微細な凹凸に汚れが入り込み、丁寧に洗っても汚れが取れなくなったり、微細な凹凸に入り込んで取れなくなった汚れなどによって細菌が繁殖しやすい問題がある。また、発泡スチロールからなるトレイや定植パネルは、使用中の劣化により脆くなるため、高圧水の吹きつけによる洗浄時に欠けたり、割れたりし易い問題がある。さらに、発泡スチロールは使用期間が長くなると、表面に触れた際に白い粉が付着したりするようになるため、発泡スチロールからなる定植パネルに定植された植物に白い粉が付着するおそれがある。そのため、発泡スチロール製のトレイ及び定植パネルの耐用期間が短く、コストが嵩む問題がある。
【0005】
前記発泡スチロールの問題を解決するため、プラスチックの射出成形品によってトレイと定植パネルを形成すると、取り扱いに必要な剛性を持たせるには、トレイ及び定植パネルの肉厚を大にしなければならず、重くなったりコストが嵩むようになったりする問題がある。さらに、定植パネルの肉厚を薄くすると、使用時の剛性が不足して撓んだりするようになる問題の他に、植物育成時に定植パネルの上方に設けられる照明器具からの育成用照射光によって定植パネルの裏側の植物の根が存在する空間まで明るくなり、植物の育成に悪影響を与える問題も生じるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−336337号公報
【特許文献2】特開平10−155377号公報
【特許文献3】特開2002−272289号公報
【特許文献4】特開2006−197843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、表面に付着した汚れが取れやすく、耐久性に優れ、しかも洗浄時に欠け・割れ・表面の窪みを生じにくく、軽量で、植物の生育が良好な水耕栽培用プランターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、植物栽培液が収容可能なトレイと前記トレイの上部に載置される定植パネルとよりなる水耕栽培用プランターにおいて、前記トレイは、プラスチックシートから形成され、底面と該底面の周縁から起立した側壁を有し、前記底面には上方へ向けて屈曲形成された複数のリブが設けられると共に、前記底面の縁に排水孔が形成され、前記定植パネルは、プラスチックシートから形成された上側シートと下側シートとが積層されて張り合わされた複合体で構成され、周縁で前記トレイの側壁上端に載置される大きさを有し、前記上側シートは、周縁が貼り合わせ用周縁部とされ、前記上側シートの貼り合わせ用周縁部よりも内側には、一端側に給水孔を有すると共に、複数位置に下方へ突出した定植用筒部が形成され、前記下側シートは、周縁に前記上側シートの貼り合わせ用周縁部と当接する下側シートの貼り合わせ用周縁部を有し、前記下側シートの貼り合わせ用周縁部で包囲された内側部分には、前記上側シートの給水孔の位置に給水用開口部が形成されると共に、前記給水用開口部を除く部分に下方へ窪んだ凹部が形成され、前記凹部の底面には、前記上側シートの前記定植用筒部と対応する複数位置に、上向きに突出して前記上側シートの下面と当接する天面に定植用筒部挿入孔を有する凸部が屈曲形成され、前記上側シートの前記定植用筒部が前記下側シートの凸部の天面における前記定植用筒部挿入孔に挿入され、前記下側シートの凸部の天面における前記定植用筒部挿入孔の周縁で前記上側シートの下面と接着されると共に、前記上側シートの貼り合わせ用周縁部と前記下側シートの貼り合わせ用周縁部が接着されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、前記定植パネルが前記トレイに載置された際に、前記下側シートの凹部の底面が前記トレイの底面のリブの頂部と当接して支持されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記定植パネルは、前記上側シートが白色からなり、前記下側シートが黒色からなることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記トレイと前記上側シート及び前記下側シートには紫外線吸収剤と抗菌剤が含有されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項において、前記トレイと前記上側シート及び前記下側シートは真空成形品からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、トレイがプラスチックシートの成形品からなり、定植パネルがプラスチックシートの成形品からなる上側シートと下側シートを貼り合わせた複合体からなるため、発泡スチロールからなるものと比べて表面に微細な凹凸が無く汚れが付着し難い。しかも、発泡スチロールのように劣化によって白い粉を生じにくく、また洗浄時に欠け・割れ・表面の窪みを生じにくい。さらに、定植パネルは、上側シートと下側シートの貼り合わせ用周縁部が接着されると共に、下側シートの凸部の天面における定植用筒部挿入孔の周縁で上側シートの下面と接着されているため、肉厚が薄くても変形しにくく、剛性が高く、軽量性が良好であり、洗浄等の際に取り扱いが容易である。しかも、上側シートと下側シートの肉厚を大にしなくてもよいため、製品コストを抑えることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、定植パネルはトレイに載置された際に、下側シートの凹部の底面がトレイの底面のリブの頂部と当接して支持されるため、水耕栽培用プランターの使用時に、定植用筒部に定植された植物などの重みで定植パネルが変形しにくく、定植パネルの上側シートと下側シートの肉厚を厚くしなくてもよいことから、定植パネルの軽量性が良好でしかも製品コストを抑えることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、定植パネルの上方から受ける照射光を定植パネルにおける白色の上側シートで反射して定植パネル上方に位置する植物の葉に効率よく光を当てることができると共に、黒色の下側シートによって定植パネルの下方を暗くでき、定植パネルの下方に位置する植物の根の成長に良好な環境を形成することができ、植物の成長が良好になる。
【0016】
請求項4の発明によれば、トレイと上側シート及び下側シートには紫外線吸収剤と抗菌剤が含有されているため、トレイと定植パネルの長期使用による劣化を防ぐことができると共に、長期使用によっても細菌の繁殖を抑え、衛生的な環境で植物を栽培することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、トレイと上側シート及び下側シートが真空成形品からなるため、製造が容易で製品コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る水耕栽培用プランターの斜視図である。
【図2】同実施形態における定植パネルとトレイを分離した状態の斜視図である。
【図3】同実施形態における定植パネルを構成する上側シートと下側シートの斜視図である。
【図4】同実施形態における4A−4Aないし4E−4E断面図である。
【図5】同実施形態における5A−5Aないし5E−5E断面図である。
【図6】同実施形態における6A−6Aないし6E−6E断面図である。
【図7】同実施形態に係る水耕栽培用プランターの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示す本発明の一実施形態に係る水耕栽培用プランター10は、トレイ11と定植パネル30とよりなる。
前記トレイ11は、プラスチックシートの真空成形品からなり、図2に示すように、底面12と該底面12の周縁から起立した側壁13とを有し、前記側壁13で包囲されたトレイ内部21に植物栽培液が収容可能となっている。前記トレイ11は、本実施形態では、平面視略長方形からなる。前記トレイ11を形成するプラスチックシートとしては、表面が平滑のものであり、例えばポリプロピレンシートを挙げることができる。またプラスチックシートの厚みは、例えば2〜4mm程度を挙げる。
【0020】
また、図2及び図4の4D−4D断面図、図5の5D−5D断面図、図6の6D−6D断面図のように、前記トレイ11の底面12には上方へ向けて屈曲形成された複数の第1リブ15及び第2リブ17と排水孔25が形成されている。
前記第1リブ15は、前記トレイ11の剛性を高めると共に、前記定植パネル30が前記トレイ11上に載置された際に、前記定植パネル30における後述の下側シートの凹部の底面と当接して定植パネル30を支持するようになっている。さらに前記第1リブ15は、前記定植パネル30が前記トレイ11上に載置された際に、後述する定植パネル30の定植用筒部間に位置し、定植用筒部に保持される植物の生長を妨げないように、定植用筒部の底面を塞がない位置になっている。さらに図示の例では、前記第1リブ15は、前記トレイ11の長さ方向Lに沿って、かつ前記トレイ11の幅方向Wに所定間隔で複数本立設され、長さ方向両端15A、15Bが、前記トレイ11の長さ方向L両端の側壁13A、13Bから所定距離離れて位置している。
【0021】
一方、前記第2リブ17は、前記第1リブ15の一端15Aと該一端15Aに対して対向する前記トレイ11の一側の側壁13Aとの間に位置し、前記第1リブ15とは直角方向となる前記トレイ11の幅方向Wに沿って所定間隔で複数形成されている。前記第2リブ17間には隙間18が形成されている。前記隙間18の位置は、前記第1リブ15の延長線上に位置するように設けられ、また隙間18の大きさ、すなわち前記第2リブ17の間隔は適宜決定されるが、例として3〜10mm程度を挙げる。前記第2リブ17の高さは、前記第1リブ15の高さより所定距離低く、例えば10mm低くされている。前記トレイ11の底面12において、前記第2リブ17と前記トレイ11の一側の側壁13Aとの間には、下方へ窪んだ排水用窪み部19が前記トレイ11の幅方向Wに沿って形成されている。前記排水用窪み部19の底面は、前記幅方向Wの中央部が最低となるように傾斜して形成され、中央部に前記排水孔25が下方へ突出した短筒状に形成されている。前記排水孔25の径は適宜決定されるが、例として前記トレイ11の内部における長さ方向Lの寸法が55mm、幅方向Wの寸法が37mm、深さ(高さ)が50mmの場合において、排水孔25の内径25mmを挙げる。
【0022】
前記トレイ11においては、前記第2リブ17と反対側の前記側壁13Bとの間の空間にトレイ11の上方から供給された植物栽培液は、前記第2リブ17と反対側の前記側壁13Bとの間の空間に滞留した後、前記第2リブ17間の隙間18を通って前記排水用窪み部19に至り、さらに前記排水用窪み部19の最も低い位置にある排水孔25から流出する。その際、前記第2リブ17と反対側の前記側壁13Bとの間に収容される植物栽培液の高さは、最高でも前記第2リブ17の高さであり、前記第2リブ17の高さが前記第1リブ15の高さよりも低くされているため、前記第1リブ15の頂部と当接して支持される前記定植パネル30の下面と植物栽培液の液面間に空気層が形成される。
【0023】
前記トレイ11の側壁13の上端には、外方へ突出したフランジ部14が形成されている。前記フランジ部14は下向きの溝形状からなっている。前記フランジ部14によって前記トレイ11の剛性が高められている。
【0024】
一方、前記定植パネル30は、周縁が前記トレイ11の側壁13上端に載置される大きさを有し、図1〜図6に示すようにプラスチックシートから真空成形で形成された上側シート41と下側シート51とが積層され、接着により張り合わされた複合体で構成されている。図示の定植パネル30は、前記トレイ11の側壁13上端に載置された際に、前記トレイ11の上方全体を覆うことができる大きさの長方形となっている。前記上側シート41と下側シート51を構成するプラスチックシートとしては、表面が平滑のものであり、例えばポリプロピレンシートを挙げることができる。またプラスチックシートの厚みは、例えば0.5〜1.5mmを挙げる
【0025】
前記上側シート41は、周縁が下側シートとの貼り合わせ用周縁部41Aとされている。また、図示の例では、長さ方向の一端側に一辺に沿って下方へ窪んだ給水孔用凹部42が形成され、前記給水孔用凹部42の底面42Aに給水孔43が複数形成されている。前記給水孔43は、前記定植パネル30が前記トレイ11の側壁13上端に正しく載置された場合に、前記トレイ11の第1リブ15の一端15Bと該一端15Bと対向する前記トレイ11の側壁13Bとの間に位置するように形成されている。また、前記上側シート41における前記給水用凹部42と、該給水用凹部42とは反対側の端部13Aとの間には、複数位置に下方へ突出した定植用筒部45が屈曲により形成されている。前記定植用筒部45は上面と下面が開口し、内径が上方から下方へ向けて小さくなっている。図4の4A−4A及び図6の6A−6A断面図に示す符号45Aは、前記定植用筒部45の下端の開口部分を示す。前記定植用筒部45は、前記定植パネル30が前記トレイ11の側壁13上端に正しく載置された場合に、前記第1リブ15の両端15A、15B間にあり、かつ隣り合う前記第1リブ15間に位置し、さらに前記定植用筒部45の下端46が前記第2リブ17の頂部よりも上方に位置するように形成されている。前記定植用筒部45には植物の基部が保持される。前記上側シート41は、定植パネル30の上方からの照明光を反射して定植パネル上の植物の葉に効率よく照射されるように白色とするのが好ましい。
【0026】
前記下側シート51は、周縁に前記上側シート41の周縁と当接する貼り合わせ用周縁部52を有し、前記貼り合わせ用周縁部52で包囲された内側部分には、前記上側シート51の給水用凹部42と対応する位置に前記給水用凹部42が嵌る給水用開口部52Aが形成され、前記給水用開口部52Aを除く部分に下方へ窪んだ凹部53が形成され、前記凹部53の底面54には、前記上側シート41の前記定植用筒部45と対応する複数位置に、上向きに突出して前記上側シート41の下面47と当接する天面57に定植用筒部挿入孔58を有する凸部56が屈曲形成されている。前記下側シート51は、定植パネル30の下方に突出する植物の根の成長を良好とするため、光を通しにくい黒色とするのが好ましい。
【0027】
前記上側シート41と下側シート51は、前記上側シート41の前記定植用筒部45が前記下側シート51の凸部56の天面57における前記定植用筒部挿入孔58に挿入され、前記上側シート41周縁の貼り合わせ用周縁部41Aと前記下側シート51周縁の貼り合わせ用周縁部52が接着されると共に、前記下側シート51の凸部56の天面57における前記定植用筒部挿入孔58の周縁で前記上側シート41の下面47と接着される。
【0028】
前記トレイ11と前記定植パネル30を構成するプラスチックシートは、真空成形可能なプラスチックであれば特に限定されないが、特にポリプロピレンが好ましい。また、前記トレイ11及び前記定植パネル30を構成するプラスチックシートは、長期使用による劣化を抑えるための紫外線吸収剤と、細菌の増殖を抑えるための抗菌剤を含むのが好ましい。
【0029】
前記水耕栽培用プランター10は、使用時に前記定植パネル30の給水孔43が、前記トレイ11の第1リブ15の一端15Bと該一端15Bと対向する前記トレイ11の側壁13Bとの間に位置するようにして、図4の4E−4E断面図、図5の5E−5E断面図、図6の6E−6E断面図に示すように前記定植パネル30が前記トレイ11の側壁13上端に載置される。前記定植パネル30が前記トレイ11の側壁13上端に載置された状態では、図5の5E−5E断面図及び図6の6E−6E断面図のように、前記定植パネル30の下側シート51における凹部53の底面54が前記トレイ11の底面の第1リブ15の頂部と当接して支持される。
【0030】
前記水耕栽培用プランター10は、水耕栽培時、図7に示すように、前記定植パネル30の定植用筒部45には野菜等の植物Pが植え付けられた状態でラック61の上下複数の棚63、65に載置されて上下複数段で配置され、上の段に位置する水耕栽培用プランター10Aにおけるトレイ11の排水孔25には、下の段に位置する水耕栽培用プランター10Bの給水用凹部42上に至る給水連結パイプ71が接続される。そして、最上段の水耕栽培用プランター10Aにおける定植パネル30の前記給水用凹部42に上方から植物栽培液Fを供給する。また、各段における水耕栽培用プランターの上方には照明器具(図示せず)が設けられ、前記照明器具により各水耕栽培用プランターの植物の育成に必要な光線を照射するようになっている。
【0031】
前記最上段の水耕栽培用プランター10Aにおける定植パネル30の給水用凹部42に供給された植物栽培液Fは、前記給水用凹部42の底面に形成されている前記吸水孔43を通って前記トレイ11内の前記給水用凹部42側の側壁13Bと前記第2リブ17間に滞留し、前記第2リブ17間の前記隙間18を通って徐々に前記第2リブ17と側壁13A間に至り、前記排水孔25から給水連結パイプ71を通って下段の水耕栽培用プランター10Bにおける定植パネル30の給水用凹部42に供給される。前記定植パネル30の定植用筒部45に保持された植物Pの根は、前記定植用筒部45の底部から下方へ伸び、前記トレイ11内の前記給水用凹部42側の側壁13Bと前記第2リブ17間に滞留している植物栽培液Fに浸かる。また、前記トレイ11内の前記給水用凹部42側の側壁13Bと前記第2リブ17間に滞留している植物栽培液Fの最高水位は前記第2リブ17の頂部の位置であり、前記第2リブ17の頂部よりも上方に前記定植用筒部45の下端が位置するため、前記定植用筒部45の下端と前記植物栽培液Fの上面間に空間層が形成され、植物が良好な環境で育成することができる。
【0032】
前記水耕栽培用プランター10は、所定期間使用された後、前記トレイ11及び定植パネル30が洗浄されて再び使用される。前記トレイ11及び定植パネル30がプラスチックシートからなり、発泡スチロールのような微細な凹凸が表面にないため、洗浄により汚れが取れやすく、清潔を維持することができる。また、高圧洗浄水を前記トレイ11及び定植パネル30に当てて洗浄しても、発泡スチロール製とは異なり、前記トレイ11及び定植パネル30が欠けたり割れたり、表面に窪みを生じたりし難く、耐久性が良好である。しかも、前記トレイ11及び定植パネル30のプラスチックシートはリブや凹部によって剛性が高められているため、プラスチックシートの厚みを適度に薄くしても剛性が得られることから、前記トレイ11及び定植パネル30は軽量であり、ラックへの配置や洗浄等の際の取り扱いが容易である。
【0033】
なお、前記の例においては、各トレイに一つの定植パネルを載置しているが、トレイのサイズ大きい場合には、一つのトレイに二つ以上の定植パネルを並べて載置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10、10A、10B 植物栽培用プランター
11 トレイ
12 底面
13 側面
15 第1リブ
12 第2リブ
25 排水孔
30 定植パネル
41 上側シート
41A 貼り合わせ用周縁部
43 給水孔
45 定植用筒部
47 上側シートの下面
51 下側シート
52 貼り合わせ用周縁部
52A 給水用開口部
53 凹部
54 凹部の底面
56 下側シートの凸部
57 凸部の天面
58 定植用筒部挿入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物栽培液が収容可能なトレイ(11)と前記トレイの上部に載置される定植パネル(30)とよりなる水耕栽培用プランターにおいて、
前記トレイ(11)は、プラスチックシートから形成され、底面(12)と該底面の周縁から起立した側壁(13)を有し、前記底面(12)には上方へ向けて屈曲形成された複数のリブ(15)が設けられると共に、前記底面(12)の縁に排水孔(25)が形成され、
前記定植パネル(30)は、プラスチックシートから形成された上側シート(41)と下側シート(51)とが積層されて張り合わされた複合体で構成され、周縁で前記トレイ(11)の側壁(13)上端に載置される大きさを有し、
前記上側シート(41)は、周縁が貼り合わせ用周縁部(41A)とされ、前記上側シート(41)の貼り合わせ用周縁部(41A)よりも内側には、一端側に給水孔(43)を有すると共に、複数位置に下方へ突出した定植用筒部(45)が形成され、
前記下側シート(51)は、周縁に前記上側シートの貼り合わせ用周縁部(41A)と当接する下側シートの貼り合わせ用周縁部(52)を有し、前記下側シートの貼り合わせ用周縁部(52)で包囲された内側部分には、前記上側シートの給水孔(45)の位置に給水用開口部(52A)が形成されると共に、前記給水用開口部(52A)を除く部分に下方へ窪んだ凹部(53)が形成され、前記凹部(53)の底面(54)には、前記上側シート(41)の前記定植用筒部(45)と対応する複数位置に、上向きに突出して前記上側シート(41)の下面(47)と当接する天面(57)に定植用筒部挿入孔(58)を有する凸部(56)が屈曲形成され、
前記上側シート(41)の前記定植用筒部(45)が前記下側シート(51)の凸部(56)の天面(57)における前記定植用筒部挿入孔(58)に挿入され、前記下側シート(51)の凸部(56)の天面(57)における前記定植用筒部挿入孔(58)の周縁で前記上側シート(41)の下面(47)と接着されると共に、前記上側シート(41)の貼り合わせ用周縁部(41A)と前記下側シート(51)の貼り合わせ用周縁部(52)が接着されていることを特徴とする水耕栽培用プランター。
【請求項2】
前記定植パネル(30)が前記トレイ(11)の上部に載置された際に、前記下側シート(51)の凹部(53)の底面(54)が前記トレイ(11)の底面(12)のリブ(15)の頂部と当接して支持されることを特徴とする請求項1に記載の水耕栽培用プランター。
【請求項3】
前記定植パネル(30)は、前記上側シート(41)が白色からなり、前記下側シート(51)が黒色からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の水耕栽培用プランター。
【請求項4】
前記トレイ(11)と前記上側シート(41)及び前記下側シート(51)には紫外線吸収剤と抗菌剤が含有されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の水耕栽培用プランター。
【請求項5】
前記トレイ(11)と前記上側シート(41)及び前記下側シート(51)は真空成形品からなることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の水耕栽培用プランター。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−183046(P2012−183046A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49849(P2011−49849)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(599125319)株式会社大和真空 (3)
【Fターム(参考)】