説明

水質浄化方法及び水質浄化装置

【課題】浄化対象水域内における好気性微生物の生息状態に左右されず、長期間に亘って優れた水質浄化作用を持続可能な水質浄化技術を提供する。
【解決手段】水質浄化装置10は、好気性微生物を担持し浄化対象水域11内に配置された状態で前記好気性微生物が繁殖可能な複数の水質浄化材12と、酸素を含有する微細気泡MBを浄化対象水域11内に供給する微細気泡供給手段である複数の微細気泡発生器13と、を備えている。浄化対象水域11に浮かべられた浮島14から水中にワイヤ16で吊り下げ保持されたポンプPに複数の微細気泡発生器13が連結され、これらの微細気泡発生器13から水中に供給される微細気泡MBが到達可能な領域に複数の水質浄化材12が配置されている。また、大気中の空気を微細気泡発生器13に供給するための通気管15が浮島14からそれぞれの微細気泡発生器13に向かって配管されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湖沼、ダム湖、貯水池あるいは下水処理場などの各種閉鎖水域内の水質を浄化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
湖沼、ダム湖、貯水池などの各種閉鎖水域内の水質を浄化する技術に関しては、従来、様々な提案がなされているが、本発明に関連するものとして、マイクロバブルを利用した底質等浄化技術(例えば、特許文献1参照。)あるいは超微細気泡を利用したケミカルリアクター装置やバイオリアクター装置(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−330064号公報
【特許文献2】特開2005−152763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
湖沼、溜め池あるいは排水貯留槽などの浄化対象水域に対して特許文献1,2記載の水質浄化技術を使用すれば所定の水質浄化作用を得られるのであるが、これらの水質浄化技術は、好気性バクテリアなどの好気性微生物が浄化対象水域内に生息していないときは予定していた浄化作用が得られない。また、最初は生息していた好気性微生物が、浄化処理の進行に伴って減少したり、失われたりすると、水質浄化作用が著しく低下する。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、浄化対象水域内における好気性微生物の生息状態に左右されず、長期間に亘って優れた水質浄化作用を持続可能な水質浄化技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水質浄化方法は、好気性微生物を担持した水質浄化材を浄化対象水域内に配置し、酸素を包含する微細気泡を前記浄化対象水域に供給することを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、酸素を包含する微細気泡を浄化対象水域に供給することにより、浄化対象水域の溶存酸素濃度が上昇し、嫌気性微生物の活動が抑制されるとともに、浄化対象水域内に配置された水質浄化材に担持された好気性微生物の活動が促進され、浄化対象水域に存在する汚濁物質が分解されるので、浄化対象水域内における好気性微生物の生息状態に左右されず、優れた水質浄化作用を得ることができる。
【0008】
また、水質浄化材に担持された好気性微生物は、微細気泡の供給により生成される溶存酸素を利用して繁殖し続けるので、浄化対象水域内の好気性微生物が減少したり、死滅したりすることがなくなり、長期間に亘って優れた水質浄化作用を持続可能である。
【0009】
ここで、前記微細気泡の少なくとも一部が前記水質浄化材に接触するように供給することが望ましい。このような構成とすれば、水質浄化材に担持された好気性微生物近傍の溶存酸素量を集中的に高めることができるので、水質浄化作用が向上する。
【0010】
次に、本発明の水質浄化装置は、好気性微生物を担持し浄化対象水域内に配置された状態で前記好気性微生物が繁殖可能な水質浄化材と、酸素を含有する微細気泡を前記浄化対象水域内に供給する微細気泡供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、浄化対象水域内に前記水質浄化材を配置し、微細気泡供給手段により前記浄化対象水域内へ酸素を含有する微細気泡を供給することにより、浄化対象水域の溶存酸素濃度が上昇し、嫌気性微生物の活動が抑制されるとともに、水質浄化材に担持された好気性微生物の活動が促進され、浄化対象水域に存在する汚濁物質が分解されるので、浄化対象水域内における好気性微生物の生息状態に左右されず、優れた水質浄化機能を発揮する。
【0012】
この場合、前記水質浄化材が多孔構造を有することが望ましい。このような構成とすれば、多孔構造に含まれる多数の微細孔が好気性微生物にとって好適な生息場所となり、好気性微生物の繁殖や活動が活発となるため、浄化対象水域に存在する汚濁物質の分解作用が高まり、水質浄化機能が向上する。
【0013】
また、前記水質浄化材に、通水性を有する貫通孔を設けることが望ましい。このような構成とすれば、水質浄化材の表面積が増え、水との接触面積が増大するので、浄化作用が高まる。また、酸素を含有する微細気泡を貫通孔内に送り込むことにより水質浄化材全体に酸素を供給できるので、水質浄化材に生息する好気性微生物の活性化に有効である。
【0014】
さらに、前記水質浄化材が、粒状骨材、セメント系固化剤及び好気性微生物の混合物を固化させて形成されたものであることが望ましい。このような構成とすれば、好気性微生物の生息に適した多孔構造を有する水質浄化材を比較的容易に形成することができる。
【0015】
一方、前記好気性微生物として、バチルスサブチルス(Bacillus Subtilis)、バチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)のうちの1以上を含むことが望ましい。これら好気性微生物は、耐アルカリ性に優れ、高温にも耐え得るので、セメント系固化剤を用いた水質浄化材の製造工程で死滅することがなく、長期間に亘って優れた水質浄化作用を発揮する。
【0016】
ここで、前記微細気泡供給手段として、流体が通過可能な管体と、前記管体内に配置されたオリフィスと、酸素を含む気体を前記管体内に導入するため当該管体の前記オリフィスの下流側に配置された気体導入経路と、を備えた微細気泡発生器を用いることが望ましい。
【0017】
このような構成とすれば、前記オリフィスの上流側の前記管体の開口端から当該管体内に向かって流体を圧送すれば、前記気体導入経路を経由してオリフィスの下流側に流入する酸素を含む気体が管体内にて大量の微細気泡に変化し、管体の下流側の開口端から放出されるので、酸素を含有する微細気泡を効率的に浄化対象水域内へ供給することが可能となり、優れた水質浄化機能が得られる。また、管体の入口から管体内へ流入した流体はオリフィスを通過することによって流速を増した状態となって管体の出口から微細気泡を伴って浄化対象水域内へ放出されるので、微細気泡の到達距離を伸ばすことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、浄化対象水域内における好気性微生物の生息状態に左右されず、長期間に亘って優れた水質浄化作用を持続可能な水質浄化技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態である水質浄化装置の使用状態を示す図である。
【図2】図1に示す水質浄化装置を構成する水質浄化材の斜視図である。
【図3】図1に示す水質浄化装置を構成する微細気泡発生器の断面図である。
【図4】微細気泡発生器と水質浄化材の配置形態を示す図である。
【図5】微細気泡発生器と水質浄化材の配置形態を示す図である。
【図6】微細気泡発生器と水質浄化材の配置形態を示す図である。
【図7】微細気泡発生器と水質浄化材の配置形態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態である水質浄化装置の水質浄化機能を確認する試験装置を示す図である。
【図9】図8に示す試験装置による試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、水質浄化装置10は、好気性微生物(図示せず)を担持し浄化対象水域11内に配置された状態で前記好気性微生物が繁殖可能な複数の水質浄化材12と、酸素を含有する微細気泡MBを浄化対象水域11内に供給する微細気泡供給手段である複数の微細気泡発生器13と、を備えている。浄化対象水域11に浮かべられた浮島14から水中に長さ調節可能なワイヤ16で吊り下げ保持されたポンプPに複数の微細気泡発生器13が連結され、これらの微細気泡発生器13から水中に供給される微細気泡MBが到達可能な領域に複数の水質浄化材12が配置されている。また、大気中の空気を微細気泡発生器13に供給するための通気管15が浮島14からそれぞれの微細気泡発生器13に向かって配管されている。通気管15の上方部分(浮島14から大気中に突出している部分)には微細気泡発生器13への空気供給量を調整するための吸気バルブ29が設けられている。
【0021】
それぞれ水質浄化材12を水中にて保持する手段は限定しないが、例えば、浮島14からワイヤやチェーン(図示せず)などで吊り下げたり、水中に留まる浮体(図示せず)に係止したり、水底11bに沈めたりすることができる。
【0022】
また、浄化対象水域11に存在する水11aの溶存酸素濃度を測定するための酸素濃度計DOが浮島14から水11aの中に向かって垂下され、酸素濃度計DOの測定データを陸地Lにある制御部19に送信するための通信機20が浮島14に立設され、浮島14を浄化対象水域11で航行させるためのプロペラ17が浮島14の底部に設けられている。ポンプP、酸素濃度計DO、プロペラ17及び通信機20などは、浮島14の上面に敷設された太陽電池パネル18から供給される電力により稼働する。なお、浮島14の移動手段はプロペラ17に限定しないので、例えば、陸地Lに配備した電動ウインチ(図示せず)などから繰り出したワイヤロープを浮島14に繋ぎ、電動ウィンチなどを作動させてワイヤロープを巻き取ることによって浮島14引き寄せて動かすなどの手段を採用することも可能である。
【0023】
制御部19は、通信機20から送信された酸素濃度計DOの測定データに基づいて決定した制御信号を通信機20へ送信し、ポンプP、吸気バルブ29及びプロペラ17の稼働状態をコントロールする。浮島14はプロペラ17の回転により浄化対象水域11を航行することができるので、浄化対象水域11の所定範囲内を自動的に回遊するように設定したり、酸素濃度計DOの測定値の低い領域へ自動的に移動するように設定したり、あるいは陸地Lからの遠隔操作により浮島14を特定領域へ移動させたりすることができる。
【0024】
図2に示すように、水質浄化材12は全体が肉厚の円筒形状をした多孔構造体であり、円筒形の軸心に相当する部分に、通水性を有する貫通孔12aが設けられている。水質浄化材12は、粒状骨材である粒径2.5mm〜10mm程度の砕石と、セメント系固化剤であるセメントペーストと、好気性微生物であるバチルスサブチルス(Bacillus Subtilis)に分類される好気性納豆菌群との混合物を固化させて形成されたものである。具体的には、好気性納豆菌群を混ぜ込んだセメントペーストに砕石と水とを混合し、この混合物を型枠に入れて成型した後、養生、固化させ、脱型すれば水質浄化材12が完成する。
【0025】
水質浄化材12の形状や材質は限定しないので、好気性微生物の繁殖に適した多数の微細孔を有する多孔構造体であれば、円筒形状以外の形状(例えば、多角筒形状、ブロック形状、平板形状、曲板形状など)とすることができる。また、好気性微生物として、好気性納豆菌群以外の微生物、例えば、バチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)あるいはバチルススパリカス(Bacillus sphaericus)のうちの1以上を使用することができる。
【0026】
図3に示すように、微細気泡発生器13は、流体(水及び微細気泡)が通過可能な円筒状の管体21と、管体21内に配置されたオリフィス22と、酸素を含む気体(空気)を管体21内に導入するため管体21のオリフィス22の下流側に設けられた気体導入経路である導入管23及び導入室24と、導入室24に配置された通気性を有する円筒状の多孔構造体25と、を備えている。
【0027】
図1に示す通気管15の下流側が導入管23に接続され、ポンプPの出水管P1が管体21の上流側の入口21fに接続される。浄化対象水域11内からポンプPによって吸い込まれた水11aを管体21の入口21fに圧送すると、通気管15を経由して管体21内に空気が吸い込まれ、後述する生成過程によって形成された、酸素を含有する多数の微細気泡MB混じりの水が管体21の出口21eから放出される。
【0028】
微細気泡発生器13は、同軸上に隙間をおいて配置された外内径の等しい2つの短管21a,21bの間に多孔構造体25及びオリフィス22を挟持し、多孔構造体25の外周側に円筒状の封止部材27を取り付けて導入室24を形成し、封止部材27の一部に開設された導入孔27aに導入管23を接続した構造である。短管21aの下流側の開口端に形成された凹部26aにオリフィス22及び多孔構造体25の上流側開口端25aが嵌め込まれ、短管21bの上流側の凹部26bに多孔構造体25の下流側開口端25bが嵌め込まれている。21a,21bの外周と封止部材27との間にはそれぞれOリング28が配置されている。
【0029】
図3に示すように、ポンプP(図1参照)から管体21の入口21fに水が送り込まれると、オリフィス22を通過して高速化した水流によりオリフィス22の下流側に負圧が生じるので、通気管15(図1参照)及び導入管23を経由した空気が導入室24に流入し、多孔構造体25を通過して管体21内に流れ込む。管体21内に流入した空気は、オリフィス22下流に発生している高速の加圧水流及び循環渦Vによって剪断されるとともに当該加圧水流に混合され、出口21eから酸素を含有する多数の微細気泡MB混じりの水となって放出される。なお、ポンプPからの給水量および吸気バルブ29の開度を調整することにより微細気泡MBの発生量とサイズを調整することができる。
【0030】
従って、図1に示すように、浄化対象水域11に水質浄化装置10をセッティングした後、ポンプPを稼働させると、複数の微細気泡発生器13から浄化対象水域11内へ酸素を含有する大量の微細気泡MBが供給されるので、浄化対象水域11の溶存酸素濃度が上昇する。これにより、浄化対象水域11内においては、嫌気性微生物の活動が抑制されるとともに、水質浄化材12に担持された好気性納豆菌群の活動が促進され、浄化対象水域11に存在する汚濁物質が分解されるため、水質が大幅に浄化される。水質浄化装置10においては、予め好気性納豆菌群を担持した水質浄化材12を水中に投入して、水質浄化作業を開始するので、浄化対象水域11内における好気性微生物の生息状態に左右されず、優れた水質浄化機能を発揮する。
【0031】
水質浄化材12を構成する多孔構造に含まれる多数の微細孔が好気性納豆菌群にとって好適な生息場所となり、好気性納豆菌群の繁殖や活動が活発となるため、浄化対象水域11に存在する汚濁物質を効率良く分解することができる。また、水質浄化材12に担持された好気性納豆菌群は、微細気泡MBの供給により生成される水11a中の溶存酸素を利用して繁殖し続けるので、長期間に亘って優れた水質浄化作用を持続可能である。
【0032】
一方、図1に示すように、微細気泡発生器13から放出される微細気泡MBの少なくとも一部が水質浄化材12に接触するように設定したことにより、水質浄化材12に担持された好気性納豆菌群近傍の溶存酸素量を集中的に高めることができるので、好気性納豆菌群の活動が活発となり、水質浄化作用の向上に有効である。また、微細気泡MB混じりの水流が水質浄化材12に接触することにより、水質浄化材12から好気性納豆菌群の一部が離脱し、微細気泡MB混じりの水流とともに浄化対象水域11へ拡散していくので、浄化領域の拡大を図ることができる。
【0033】
また、水質浄化材12に、通水性を有する貫通孔12aを設けたことにより、広い表面積を確保することができるので、水11aと水質浄化材12との接触面積が増大し、浄化作用の向上に有効である。また、微細気泡発生器13から放出された、酸素を含有する微細気泡MBを水質浄化材12の貫通孔11内に送り込めば、水質浄化材12全体に酸素を供給できるので、水質浄化材12に生息する好気性納豆菌群の活性化に有効である。
【0034】
さらに、水質浄化材12に担持させている好気性納豆菌群は、耐アルカリ性に優れ、高温にも耐え得るので、セメントペーストを用いた水質浄化材12の製造工程で死滅することがなく、長期間に亘って優れた水質浄化作用を発揮する。
【0035】
一方、微細気泡供給手段である微細気泡発生器13は、円筒状の管体21と、管体21内に配置されたオリフィス22と、管体21のオリフィス22の下流側に設けられた導入管23及び導入室24と、導入室24に配置された通気性を有する円筒状の多孔構造体25と、を備えている。このような構造としたことにより、管体21内において、前述した生成過程を経て形成される、酸素を含有する大量の微細気泡MBを効率的に浄化対象水域11内へ供給することができるため、優れた水質浄化機能を発揮する。
【0036】
また、管体21の入口21fから管体21内へ流入した水はオリフィス22を通過することによって流速を増した状態となって管体21の出口21eから微細気泡MBを伴って放出されるので、微細気泡MBをより遠くまで到達させることができ、浄化領域の拡大を図ることができる。
【0037】
微細気泡発生器13と水質浄化材12の配置形態は限定しないので、使用条件に応じて任意の配置形態を採用することができるが、図4〜図7に基づいて、微細気泡発生器13と水質浄化材12の配置形態について例示する。
【0038】
図4に示す配置形態においては、微細気泡発生器13の管体21の軸心と、水質浄化材12の貫通孔12aの軸心と、を略水平方向にて一致させ、且つ、管体21の出口21eを水質浄化材12の一方の開口端に接近させた状態で配置されている。これにより、微細気泡発生器13の管体21の出口21eから放出された微細気泡MB混じりの水流は水質浄化材12の貫通孔12a内を通過して拡散していくので、水質浄化材12に担持された好気性微生物に十分な酸素を供給することができる。また、微細気泡MB混じりの水流が水質浄化材12の貫通孔12aを通過する際に水質浄化材12から好気性微生物の一部が離脱し、前記水流とともに拡散していくので、水質浄化領域の拡大を図ることができる。
【0039】
図5に示す配置形態においては、微細気泡発生器13の管体21の軸心と、水質浄化材12の貫通孔12aの軸心と、を略垂直方向にて一致させ、且つ、管体21の出口21eを水質浄化材12の一方の開口端に接近させた状態で配置されている。これにより、微細気泡発生器13の管体21の出口21eから放出された微細気泡MB混じりの水流は水質浄化材12の貫通孔12a内を通過して水底11bに向かって拡散していくので、水質浄化材12に担持された好気性微生物及び水底11bに生息する好気性微生物に十分な酸素を供給することができる。また、微細気泡MB混じりの水流が水質浄化材12の貫通孔12aを通過する際に水質浄化材12から好気性微生物の一部が離脱し、前記水流とともに水底11bに到達するので、水底11b中の好気性微生物の増加を図ることができる。
【0040】
図6に示す配置形態においては、微細気泡発生器13の管体21の軸心を略水平方向に配置し、水質浄化材12の貫通孔12aの軸心を略垂直方向に配置し、且つ、管体21の出口21eを水質浄化材12の外周面に接近させた状態で配置されている。これにより、微細気泡発生器13の管体21の出口21eから放出された微細気泡MB混じりの水流は水質浄化材12の外周面に接触した後、拡散していくこととなる。従って、水質浄化材12に担持された好気性微生物に十分な酸素を供給することができ、また、微細気泡MB混じりの水流が水質浄化材12の外周面に接触する際に水質浄化材12から好気性微生物の一部が離脱し、前記水流とともに拡散していくので、水質浄化領域の拡大を図ることができる。
【0041】
図7に示す配置形態においては、微細気泡発生器13の管体21の軸心が略垂直方向をなすとともに管体21の出口21eを水底11bに向けて配置し、水質浄化材12の貫通孔12aの軸心が略垂直方向をなすともに水底11bから離した状態で配置されている。これにより、管体21の出口21eから放出された微細気泡MB混じりの水流は水底11bに接触した後、水底11bに沿って流動したり、水底11bとの接触によって跳ね返されて流動したりする。
【0042】
水底11bに沿って流動する微細気泡MBは水底11bに生息する好気性微生物に対する酸素供給源となり、水底11bとの接触によって跳ね返されて流動する微細気泡MBは水質浄化材12に担持された好気性微生物に対する酸素供給源となる。また、水質浄化材12の貫通孔12aの軸心が略垂直方向をなすように配置されたことにより、浄化対象水域内に自然発生する上下方向の対流が水質浄化材12の貫通孔12aを通過するので、水質浄化作用の向上に有効である。
【0043】
次に、図8,図9に基づいて、本発明に係る水質浄化装置を使用した水質浄化試験の結果について説明する。図8に示す試験装置30においては、タンク30内に収容した供試液(生活排水)W中に、図2に示す水質浄化材12及び図3に示す微細気泡発生器13が配置され、タンク内30内の生活排水Wを吸い込んで微細気泡発生器13の管体21の入口21fに圧送するポンプPと、微細気泡発生器13に大気中の空気を供給する通気管35と、が設けられている。タンク30内の供試液Wの容量は500リットルであり、供試液Wの水面から2300mmの深さに微細気泡発生器13が配置されている。また、比較例とするため、試験装置30から水質浄化材12を無くした構成の試験装置(図示せず)を用意した。
【0044】
図8に示す試験装置30と、試験装置30から水質浄化材12を無くした構成の試験装置において、1日3回(朝、昼、夕)各1時間ずつポンプPを稼働させることを3週間に亘って行った後、各タンク内の供試液WのBOD(Biochemical Oxygen Demand)を測定したところ、図9に示すような結果が得られた。図9(a)は試験装置30における試験結果を示し。図9(b)は試験装置30から水質浄化材12を無くした構成の試験装置における試験結果を示している。図9(a),(b)のいずれも、試験開始日(First day)におけるBODの測定値を基準値(1)とし、試験開始から3週間後のBODを前記基準値に対する割合で算出して棒グラフ化したものである。
【0045】
試験装置30における試験結果を示す図9(a)を見ると、試験開始から3週間経過した時点でBODは1/10程度までに大幅に低下しており、水質浄化材12と微細気泡発生器13とを使用したことにより、優れた水質浄化作用が得られることが分かる。
【0046】
一方、試験装置30から水質浄化材12を無くした構成の試験装置における試験結果を示す図9(b)を見ると、試験開始から3週間経過した時点でのBODは7/10程度までに低下しているが、図9(a)の結果に比べると、その水質浄化作用は不十分であることが分かる。なお、図9(b)においてBODが7/10程度まで低下した理由は、供試液(生活排水)中に初めから含まれていた好気性微生物が、微細気泡発生器13から供給される酸素を含有した微細気泡MBによって増殖したり、活性化したりしたことによるものではないかと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の水質浄化技術は、湖沼、ダム湖、貯水池、水源地、クリーク、港湾・内海などの閉鎖水域あるいは下水処理場などにおける水質浄化手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 水質浄化装置
11 浄化対象水域
11a 水
12 水質浄化材
12a 貫通孔
13 微細気泡発生器
14 浮島
15,35 通気管
16 ワイヤ
17 プロペラ
18 太陽電池パネル
19 制御部
20 通信機
21 管体
21a,21b 短管
21f 入口
21e 出口
22 オリフィス
23 導入管
24 導入室
25 多孔構造体
25a 上流側開口端
25b 下流側開口端
26a,26b 凹部
27 封止部材
27a 導入孔
28 Oリング
29 吸気バルブ
30 試験装置
31 タンク
L 陸地
MB 微細気泡
P ポンプ
V 循環渦
W 供試液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物を担持した水質浄化材を浄化対象水域内に配置し、酸素を包含する微細気泡を前記浄化対象水域に供給することを特徴とする水質浄化方法。
【請求項2】
前記微細気泡の少なくとも一部が前記水質浄化材に接触するように供給することを特徴とする請求項1記載の水質浄化方法。
【請求項3】
好気性微生物を担持し浄化対象水域内に配置された状態で前記好気性微生物が繁殖可能な水質浄化材と、酸素を含有する微細気泡を前記浄化対象水域内に供給する微細気泡供給手段と、を備えたことを特徴とする水質浄化装置。
【請求項4】
前記水質浄化材が多孔構造を有することを特徴とする請求項3記載の水質浄化装置。
【請求項5】
前記水質浄化材に、通水性を有する貫通孔を設けたことを特徴とする請求項3または4記載の水質浄化装置。
【請求項6】
前記水質浄化材が、粒状骨材、セメント系固化剤及び好気性微生物の混合物を固化させて形成されたものである請求項3〜5のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項7】
前記好気性微生物が、バチルスサブチルス(Bacillus Subtilis)、バチルスツリュゲナイセス(Bacillus thuringiensis)、バチルススパリカス(Bacillus sphaericus)のうちの1以上を含むことを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項8】
前記微細気泡供給手段として、流体が通過可能な管体と、前記管体内に配置されたオリフィスと、酸素を含む気体を前記管体内に導入するため当該管体の前記オリフィスの下流側に配置された気体導入経路と、前記気体導入経路に配置された通気性を有する多孔構造体と、を備えた微細気泡発生器を用いたことを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の水質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−189254(P2011−189254A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56386(P2010−56386)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(303048341)株式会社ビッグバイオ (10)
【Fターム(参考)】