説明

水質浄化用植生枡

【課題】河川や池、湖等に設置されて汚染水を効率的に浄化できる水質浄化用植生枡を提供する。
【解決手段】ポーラスコンクリート製の透水性枡体3の収容凹部2に、凝灰岩を破砕して形成した充填材5を充填することによって、水性植物を植生させる植生浄化部6を形成する。充填材の粒径を、ポーラスコンクリートの骨材7の径よりも大きくする。例えば充填材の径を25〜30mmに設定すると共に、ポーラスコンクリートの骨材の径を15〜20mmに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川等の水路や池、湖等に設置されることによって効率的な水質浄化を達成する水質浄化用植生枡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川等の水路や池、湖等における従来の水質浄化装置の一例としては、特開平7−184490号公報や特開2001−179292号公報が開示する水質浄化装置が提案されている。これらの装置は、上端が開放したポーラスコンクリート製の透水性枡体内に土砂や活性炭等の浄化材を収容して植生枡を構成してなるもので、該植生枡を河川等に設置することにより、枡体のポーラス部を通して枡体内に取り込んだ汚染水を、微生物による窒素や燐、有機物の分解作用と、水生植物による窒素や燐等の吸収による水質浄化作用とによって浄化せんとするものであった。
【0003】
これらの水質浄化装置は、何れも、前記ポーラス部の透通性によって汚染水を枡体内に流入させることが前提となっている。しかしながら、枡体内の浄化材収容層の透水能力が枡体の透水能力よりも小さい場合は、汚染水は、ポーラス部には入り込むことができても枡体内には殆ど流入できないことになる。その結果、前記ポーラス部の連続空隙部分に生物膜が形成されて該連続空隙が閉塞されてしまい、前記浄化材による水質浄化を達成できないのはもとより、前記ポーラス部の骨材表面での微生物による水質浄化機能も発揮されなくなってしまう。
【0004】
又、土砂等の粒径の小さい浄化材を透水性枡体内に収容した場合は、汚染水が枡体内に流入したとしても、浄化材の隙間が生物膜で短期間の内に閉塞されやすく、浄化材が本来の浄化機能を果たさないことになってしまう。
【0005】
なお前記浄化材の粒径が大きければ、枡体内への汚染水の流入は円滑に行われるであろう。しかし汚染水を円滑に流入させるだけでは不十分であり、浄化材は、汚染水の浄化に大きな役割を果たす水生植物の育成に必要な保肥力と、水路の水位が下がったときにも植物が枯死するのを防止できる保水力に優れたものでなければならないところ、従来装置はかかる配慮に欠けていた。
【特許文献1】特開平7−184490号公報(第2−3頁、図1−図4)
【特許文献2】特開2001−179292号公報(第1−4頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点に鑑みて開発されたものであり、ポーラスコンクリート製の透水性枡体内に充填材を充填することによって構成された水質浄化用植生枡において、汚染水が枡体内に円滑に入り込むようにして充填材や植物による水質浄化を効率的に達成できる水質浄化用植生枡の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る水質浄化用植生枡(以下植生枡という)は、汚染水を浄化する水質浄化用植生枡であり、上端開放の収容凹部を具えたポーラスコンクリート製の透水性枡体の該収容凹部に、凝灰岩からなる充填材を充填することによって、水生植物を植生させる植生浄化部を形成してなり、該充填材の粒径は、前記ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも大きいことを特徴とするものである。
【0008】
前記透水性枡体が水路に設置される場合、該透水性枡体は平面視で長方形状に形成し、該水路の流水の流れ方向で見た枡体長さを、流れ方向に直交する方向で見た枡体長さの1.5倍〜3倍に設定するのがよい。
【0009】
前記各植生枡において、前記ポーラスコンクリートの骨材の粒径を15〜20mmに、前記充填材の粒径を25〜30mmに設定するのがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る水質浄化用植生枡は、ポーラスコンクリートからなる透水性枡体の収容凹部に、凝灰岩からなる充填材を充填することによって植生浄化部を形成し、該充填材の粒径を、ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも大きく設定している。
かかることから本発明によるときは、透水部を通して枡体内に汚染水を円滑に流入させ得ると共に、凝灰岩による窒素や燐の吸着による効果的な水質浄化作用と植生浄化部に植えられた植物による窒素や燐、有機物の吸収作用、更に、微生物による窒素や燐、有機物の分解作用によって、流入した汚染水を効率的に水質浄化できる。又、凝灰岩の優れた保水力によって渇水期にも植物が枯死するのを防止でき、植物による浄化機能を保持できる。
透水性枡体内への汚染水の円滑な流入を図るだけであるならば、ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも粒径の大なる充填材を採用するだけで済むが、本発明は、凝灰岩の優れた窒素や燐の吸着機能と凝灰岩の優れた保水性とを水生植物の育成に活かして水生植物による良好な浄化機能をも発揮させることにより効率的な浄化機能を生み出す点に大きな意義がある。
【0011】
(2) 特に、透水性枡体を平面視で長方形状に形成すると共に、水路の流水の流れ方向で見た枡体の長さを、流れに直交する方向で見た枡体の長さの1.5倍〜3倍に設定した場合は、水質浄化用植生枡を水路に設置したときに、透水性枡体の容積を大きく確保しつつ、流水に対する設置安定性を向上させ得る利点がある。
【実施例1】
【0012】
図1〜2において本発明に係る植生枡1は、上端開放の収容凹部2を具えたポーラスコンクリート製の透水性枡体3の該収容凹部2に、凝灰岩を破砕して形成した充填材5を充填することによって、水生植物を植生させる植生浄化部6を形成したものである。
【0013】
前記透水性枡体3は、上端開放で内面がテーパ状を呈する前記収容凹部2を具えた有底の直方体箱状を呈し、全体がポーラスコンクリートで一体に形成されている。該透水性枡体3の各部の寸法を例示すれば、その長辺寸法が約1000mm、短辺寸法が約500mm、高さが約500mm、肉厚が約70mm、収容凹部2の深さが約400mmに設定されされている。前記ポーラスコンクリートの骨材7は凝灰岩である必要はなく、その粒径は15〜20mmに設定される。これに対して前記充填材5は前記のように凝灰岩からなり、その粒径は、ポーラスコンクリートの骨材7の径よりも大きい25〜30mmに設定されている。
【0014】
然して図3〜4に示すように、河川等の水路や池、湖の水際等に、前記構成を有する植生枡1の複数個を集合状態で設置すると、ポーラスコンクリートの透水部9を通して透水性枡体3内に円滑に流入した汚染水の浄化が次のようにして行われる。即ち、各透水性枡体3に収容されている凝灰岩(充填材5)は、天然ゼオライトを含んでおり高い陽イオン吸着能力を有するため、汚染水に含まれている窒素や燐が該凝灰岩の細かな空隙や細孔内に効果的に吸着されることで水質浄化が図られる。又、凝灰岩の吸着した窒素や燐、有機物が、凝灰岩の表面に形成された生物膜の微生物により分解されることで水質浄化が図られる。加えて、このように分解された窒素や燐、有機物は、その一部が前記のように植物に吸収されることで水質浄化が図られる。又、植物の根の表面に形成された生物膜の微生物によって窒素や燐、有機物が分解されることで水質浄化が図られる。
【0015】
又、前記凝灰岩は高い吸水率を有するため、凝灰岩(充填材5)を充填して形成された植生浄化部6に、窒素や燐の吸収能力の高い葦等の水生植物10を栽培した場合、これらの植物は、植生浄化部6における水位が低いときにも枯死するのが防止され、該水生植物による浄化が保持される。
【0016】
図3に矢印で示すように、透水性枡体3内に流入した汚染水は、このように浄化された後に前記透水部9を通して水路等に放流される。
【0017】
なお前記植生浄化部が目詰まり状態となったときは、例えば半年〜1年間隔で、充填材を洗浄乃至交換する。吸着を終えた充填材は、窒素や燐を十分に含んでいるために、土壌改良材として再利用することもできる。
【0018】
なお透水性枡体3の平面視の形態は、前記長方形状の他、円形状や菱形状、六角形状、楕円形状等、各種に設定され得る。
【0019】
又、図4に示すように透水性枡体3を水路11に設置する場合、該透水性枡体3を平面視で長方形状に形成すると共に水路11の流水の流れ方向で見た枡体長さを、流れ方向に直交する方向で見た枡体長さの1.5倍〜3倍に設定することにより、透水性枡体の容積を大きく確保しつつ、流水に対する設置安定性向上を期し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る植生枡を示す斜視図である。
【図2】その断面図である。
【図3】植生浄化部における水生植物の繁茂状態を汚染水の通過状態と共に示す断面図である。
【図4】植生浄化部の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 植生枡
2 収容凹部
3 透水性枡体
5 充填材
6 植生浄化部
7 ポーラスコンクリートの骨材
9 ポーラスコンクリートの透水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染水を浄化する水質浄化用植生枡であり、上端開放の収容凹部を具えたポーラスコンクリート製の透水性枡体の該収容凹部に、凝灰岩からなる充填材を充填することによって、水生植物を植生させる植生浄化部を形成してなり、該充填材の粒径は、前記ポーラスコンクリートの骨材の粒径よりも大きいことを特徴とする水質浄化用植生枡。
【請求項2】
前記透水性枡体が水路に設置される場合、該透水性枡体は平面視で長方形状に形成されており、該水路の流水の流れ方向で見た枡体長さが、流れ方向に直交する方向で見た枡体長さの1.5倍〜3倍であることを特徴とする請求項1記載の水質浄化用植生枡。
【請求項3】
前記ポーラスコンクリートの骨材の粒径が15〜20mmであり、前記充填材の粒径が25〜30mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の水質浄化用植生枡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−51434(P2006−51434A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234532(P2004−234532)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000137074)株式会社 ホクコン (40)
【Fターム(参考)】