説明

水配管用内面被覆鋼管

【課題】水配管用として好適な、耐剥離性に優れた内面被覆鋼管を提供する。
【解決手段】鋼管内面に、リン酸塩系の化成処理層、プライマー層、および変性ポリエチレン系樹脂を主成分とする内面被覆層をこの順に積層してなる内面被覆鋼管であって、前記プライマー層が、平均厚さ:15〜25μmで、平均分子量2800〜3900のビスフェノール型エポキシ樹脂と、所定量のジシアンジアミドもしくはその誘導体と、あるいはさらに所定量のアミノ系もしくはエポキシ系シランカップリング剤とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成された層とする。これにより、従来のポリエチレン樹脂を用いた内面被覆鋼管に比べて、優れた耐温水性を有し、耐久性に優れた内面被覆鋼管となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水、排水等の配管等に好適な内面被覆鋼管に係り、とくに内面被覆層の耐剥離性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給水、排水等に使用される配管には、内面の防食性を付与するため、鋼管内面の被覆層として硬質の塩化ビニル樹脂をライニングした内面被覆鋼管が使用されてきた。しかし、塩化ビニル樹脂は、低温での耐衝撃性が低く、これら内面被覆鋼管を配管として寒冷地で使用する際、施工時に屋外に放置された場合などに、内面被覆層にダメージを受ける場合があり、使用上、問題を残していた。また、近年、塩化ビニル樹脂は、廃却の際に有害物を発生することや、廃却の際に鋼管と塩化ビニル樹脂との分離を必要とするため分離処理の負荷が大きいことなど、環境負荷の大きい材料であるという認識がもたれている。
【0003】
このような問題に対し、例えば特許文献1には、鋼管の内面に、最大到達架橋度がゲル分率で10〜80%である架橋ポリエチレン樹脂からなる樹脂ライニング層を有する樹脂ライニング鋼管が提案されている。特許文献1に記載された技術では、かかる架橋ポリエチレン樹脂製のパイプを、鋼管内径より小さく縮径したのち、鋼管内で加熱し膨張させて、鋼管内面に架橋ポリエチレン樹脂ライニング層を形成し、内面被覆鋼管を得ている。特許文献1に記載された技術によれば、最大到達架橋度がゲル分率で10〜80%である架橋ポリエチレン樹脂は成形後の良好な形状記憶性を有するため、密着性に優れた樹脂ライニング鋼管を安定的にしかも製造効率よく製造できるとしている。
【0004】
また、特許文献2には、内面側がポリエチレンまたはポリプロピレンからなり、外面側がカルボン酸基もしくはエステル基を有する熱可塑性樹脂の少なくとも1つの樹脂層からなる2層以上の層からなり、鋼管内径より大きな径を有するライニング層用樹脂管の母管を、加熱下で鋼管内径より小さく延伸縮径し、ついで鋼管内に挿入し、加熱膨張させて鋼管内面をライニングする内面樹脂ライニング鋼管の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術によれば、ライニング層と鋼管との接着力が高く、衝撃性に優れた内面被覆鋼管を安定して製造できるとしている。
【0005】
また、例えば、非特許文献1に示されるように、鋼管内面の被覆層として、ポリエチレン樹脂をライニングした内面被覆鋼管も使用されている。これは、内面に化成処理、プライマー処理等の表面処理が施され、加熱された状態の鋼管に、ポリエチレン樹脂粉体を粉体塗装する方法により、内面被覆層を形成したものであるが、環境によっては、管端部から内面被覆層が剥離するなどの問題があった。
【特許文献1】特開2001−9912号公報
【特許文献2】特開2002−257265号公報
【非特許文献1】日本水道協会規格 JWWA K132
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術で製造された内面被覆鋼管では、架橋材から溶出する成分があり、該内面被覆鋼管を水道水用配管に適用した場合には、衛生性の観点から問題を残していた。また、特許文献2に記載された技術では、内面被覆層に形状復元性を付与するために、製造工程が複雑となり、製造コストが高騰するとともに、工業的な速度で均一な内面被覆層を形成することは、困難であるという問題があった。
【0007】
また、水配管用として使用される配管においては、通常、管端の防食のために、管端防食継手が使用されている。しかし、施工時の不良や、長期の使用により劣化して、管端が水に接する環境(以下、接水環境ともいう)下に晒される場合がある。水配管として内面被覆鋼管を適用した場合に、接水環境下では内面被覆層の剥離が生じること、剥離した部分の鋼管が錆び、赤水などの原因となる。このため、とくに水配管用に適用される内面被覆鋼管には、接水環境における内面被覆層の耐水性、すなわち、接水環境における内面被覆層の耐剥離性の向上が要望されている。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、内面被覆層に塩化ビニル樹脂を使用せずに、水配管用として、水に接する環境(接水環境)下においても、耐剥離性に優れた内面被覆鋼管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記した目的を達成するために、変性ポリエチレン系樹脂を使用した内面被覆層とし、内面被覆層の下層であるプライマー層を、所定の分子量を有するビスフェノール型エポキシ樹脂と、所定量のジシアンジアミドもしくはその誘導体とを含有する熱硬化性樹脂組成物から形成し、平均膜厚が15〜25μmの層とし、さらにプライマー層の下層である化成処理層をリン酸塩系の化成処理層とすることにより、耐剥離性が顕著に向上することを見出した。
【0010】
また、本発明者らは、上記した熱硬化性樹脂組成物に、さらにカップリング剤を含有させることにより、接水環境下での内面被覆層の耐剥離性がさらに向上することを見出した。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は次のとおりである。
【0011】
(1)鋼管内面に、化成処理層、プライマー層、および内面被覆層をこの順に積層してなる内面被覆鋼管であって、前記化成処理層が、リン酸塩系の化成処理層であり、前記内面被覆層が、変性ポリエチレン系樹脂を主成分とする層であり、前記プライマー層が、平均分子量2800〜3900のビスフェノール型エポキシ樹脂と、該ビスフェノール型エポキシ樹脂を100質量部としたときの質量比で1.5〜8.5質量部のジシアンジアミドもしくはその誘導体とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成された層であり、該プライマー層の平均厚さが15〜25μmであることを特徴とする水配管用内面被覆鋼管。
【0012】
(2)(1)において、前記プライマー層がさらにアミン系もしくはエポキシ系シランカップリング剤を、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記ジシアンジアミドもしくはその誘導体との合計量100質量部に対する質量比で、0.5〜1.0質量部含有する熱硬化性樹脂組成物から形成された層であることを特徴とする水配管用内面被覆鋼管。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内面被覆層と鋼管との密着力が顕著に向上し、従来のポリエチレン樹脂を用いた内面被覆鋼管に比べて、接水環境下においても優れた耐久性を有し、水配管用として好適な内面被覆鋼管を容易に製造でき、産業上格段の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の内面被覆鋼管は、図1に示すように、鋼管1内面に、化成処理層2、プライマー層3、および内面被覆層4をこの順に積層してなる鋼管である。
本発明の内面被覆鋼管の基材として使用される鋼管は、通常、内面にブラスト処理、酸洗処理を施し、化成処理層を形成しやすくしておくことが好ましい。なお、使用する鋼管の外面は、とくに限定する必要はないが、必要に応じてブラスト処理、酸洗処理、化成処理、めっき処理、プライマー処理、あるいは樹脂被覆を施してもよい。また、使用する鋼管は、用途に応じて、所望の強度、延性、靭性等の特性を有する鋼管を選定することは言うまでもない。
【0015】
本発明の内面被覆鋼管内面に形成される化成処理層2は、リン酸塩系の化成処理層とする。リン酸塩系の化成処理層は、内面をリン酸亜鉛、リン酸亜鉛カルシウムなどのリン酸塩系の化成処理液を単独、もしくは混合した処理を行うことにより形成することが好ましい。化成処理に際しては、化成処理液を鋼管内面に吹き付けたり、流し込んだり、もしくは化成処理液の浴中に鋼管を浸漬するなどの方法を適用することができる。なお、適宜、促進剤などを併用してもよく、また、液温を60℃以上の温度に加温してもよい。
【0016】
本発明の内面被覆鋼管では、上記した化成処理層の上層として、プライマー層を有する。プライマー層は、ビスフェノール型エポキシ樹脂ならびにジシアンジアミドもしくはその誘導体を含有する、熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された層とする。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、平均分子量が2800〜3900とする。平均分子量がこの範囲を低く外れると、プライマー層がもろいものとなり、一方、この範囲を高く外れると、塗装性が悪く、良好なプライマー層が形成されなくなる結果、接水環境下での耐剥離性が低下する。このため、使用するビスフェノール型エポキシ樹脂の平均分子量を2800〜3900に限定した。
【0017】
プライマー層に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、上記したビスフェノール型エポキシ樹脂を100質量部としたとき、1.5〜8.5質量部のジシアンジアミドもしくはその誘導体を含有する。ジシアンジアミドもしくはその誘導体はエポキシ樹脂を硬化する硬化剤として作用するが、1.5質量部未満では、上記した効果が期待できない。一方、8.5質量部を超える含有は、反応しきれない硬化剤が残留し、好ましくない。このため、ジシアンジアミドもしくはその誘導体の含有量は、ビスフェノール型エポキシ樹脂を100質量部としたとき、1.5〜8.5質量部に限定した。なお、ジシアンジアミドの誘導体としては、グアニジン化合物等が例示できる。
【0018】
なお、硬化剤としての、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンのブチルグリシジルエーテル付加物等の脂環族アミンやテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物は、使用時に2液硬化型となるため、作業性が劣るとともに、内面被覆層を粉体塗装する際にプライマー層が劣化するため、使用しないことが望ましい。また、メタキシレンジアミンとエピクロルヒドリンの縮合物などの芳香族アミンは、上水用にも使用される配管に適用する場合には、衛生上の観点から好ましくない。
【0019】
なお、例えばイミダゾ−ル系化合物に代表される硬化促進剤を添加した場合、後述する変性ポリエチレン樹脂粉末を粉体塗装する際の高温により、硬化が進みすぎ、プライマー層が劣化してしまう可能性が高いうえ、さらにコストが高くなるため、添加しないようにするのが望ましい。
また、プライマー層は、上記したビスフェノール型エポキシ樹脂ならびにジシアンジアミドもしくはその誘導体に加えて、さらにカップリング剤を含有した熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された層とすることがより好ましい。これにより、接水環境下における内面被覆層の耐剥離性がさらに向上する。
【0020】
上記した熱硬化性樹脂組成物に含有させるカップリング剤としては、アミン系、もしくはエポキシ系シランカップリング剤が最も好ましく、必要に応じて少なくとも1種を選択して含有できる。好ましいカップリング剤としては、具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が例示できる。
【0021】
これらカップリング剤の含有量は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記ジシアンジアミドもしくはその誘導体との合計量100質量部に対する質量比で、0.5〜1.0質量部とすることが好ましい。カップリング剤の含有量が0.5質量部未満では、上記した効果を期待できなくなる。一方、1.0質量部を超えて含有すると、上記した効果が飽和するとともに、硬化不足等の悪影響を及ぼす可能性がある。このため、カップリング剤の含有量は、ビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記ジシアンジアミドもしくはその誘導体との合計量100質量部に対する質量比で、0.5〜1.0質量部に限定することが好ましい。
【0022】
また、プライマー層には、必要に応じて、顔料として、無機化合物を含有してもよい。顔料として好ましい無機化合物としては、酸化チタン、シリカ等が例示できる。顔料としての無機化合物は、性能を損なわない範囲で、好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂を100質量部としたとき、5質量部以下、含有してもよい。通常防錆性向上のために用いられているクロム系化合物、亜鉛系化合物は、上水用として使用する配管である本発明鋼管では、衛生上の観点から好ましくない。
【0023】
またプライマー層は、上記の熱硬化性樹脂組成物を炭化水素系、アルコール系、エーテル系、エステル系などの通常用いられる溶剤で20〜35質量%に希釈したものを、鋼管内面に流し込む、スプレー塗装するなどの方法で塗装して形成することができる。この場合、塗装前に鋼管を加熱してもよく、また、塗装後に鋼管を熱風もしくは高周波誘導加熱などの方法で加熱しても良い。なお、プライマー層の平均厚さは鋼管内面に塗布する熱硬化性樹脂組成物の量より計算するなどの方法で求めた平均的厚さが15〜25μm相当のものとする。平均厚さが15μm未満では、耐剥離性が低下する。一方平均厚さが25μmを超えて厚くなると、均一な塗装膜が得られにくく、また、上層である変性ポリエチレン樹脂層が形成されにくくなる。
【0024】
本発明の内面被覆鋼管では、上記したプライマー層の上層として内面被覆層を有する。本発明では、内面被覆層は、変性ポリエチレン樹脂組成物から形成した変性ポリエチレン樹脂層とする。変性ポリエチレン樹脂は、既知のものであり、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂等を無水マレイン酸等の酸無水物により、常法に従い、グラフト変性したもので、変性量が通常、6質量%以下で、メルトインデックスが2g/10min以上8g/10min以下のものとすることが好ましい。変性ポリエチレン樹脂組成物は、変性ポリエチレン樹脂を主成分とし、必要に応じて、酸化防止剤、顔料を添加できる。また、変性ポリエチレン樹脂に加えて、性能を損なわない範囲でポリエチレン樹脂等の他の樹脂を含有してもよい。
【0025】
なお、変性ポリエチレン樹脂層の平均厚みは、0.3〜1.0mmとすることが好ましい。平均厚みが0.3mm未満では、施工時の疵等により穴があき、下層である透水性の高いプライマー層が露出し防食性が低下する。また、1.0mmを超えて厚くすると、粉体塗装に多大の時間を要し、生産性が低下する。
変性ポリエチレン樹脂層は、210℃以上に加熱した鋼管内面に、変性ポリエチレン樹脂粉末を粉体塗装することにより形成することができる。なお、粉体塗装後、必要に応じて140℃以上の温度で保熱することが均一な被膜形成の観点から好ましい。
【0026】
また、上記した変性ポリエチレン樹脂層の上層として、さらにポリエチレン樹脂層を形成し、二層からなる内面被覆層としてもよい。ポリエチレン樹脂層は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、あるいは高密度ポリエチレン樹脂等のポリエチレン樹脂粉末を、変性ポリエチレン樹脂層と同様に、粉体塗装して形成することができる。ポリエチレン樹脂層の平均厚みは、変性ポリエチレン樹脂層との合計厚みが0.5〜1.0mmとなるように形成することが好ましい。なお、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂等のエチレンと不飽和結合を有するモノマーとの共重合樹脂は、軟化温度が低くなりすぎて、内面被覆層の形成に使用できない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
酸洗処理した鋼管(内径27.6mmφ×外径34.0mmφ×4m)を、リン酸亜鉛カルシウム系処理液中に浸漬し、内面にリン酸亜鉛カルシウム系化成処理層を形成した。ついで、該化成処理層の上層として表1に示す平均厚さのプライマー層を形成した。プライマー層は、表1に示す平均分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とし、表1に示す量のジシアンジアミドもしくはその誘導体と、あるいはさらに表1に示す量の化合物とを含んだ熱硬化性樹脂組成物が、30質量%となるように溶剤希釈した混合液を塗布することにより形成した。この際、プライマー層の平均厚さが表1に示した厚さになるように、鋼管内面積より計算した量の樹脂が塗布されるように当該混合液の塗布量を調整した。
【0028】
ついで、プライマー層の上層として内面被覆層を形成した。まず、鋼管を230℃に加熱し、該加熱された鋼管内面に、変性ポリエチレン樹脂の粉末を粉体塗装して、表1に示す平均厚さの内面被覆層(変性ポリエチレン樹脂層)を形成した。なお、変性ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を無水マレイン酸変性して得られたものを使用した。なお、この変性ポリエチレン樹脂は密度:0.923 g/cm、メルトインデックス:4.9g/10minである。この変性ポリエチレン樹脂を粉体塗装したのち、さらに150〜250℃の炉内で保熱後、自然冷却して、内面被覆鋼管とした。
【0029】
さらに接水環境下における耐剥離性を見るため、以下の方法により耐温水性を評価した。得られた内面被覆鋼管から、長さ:50cmの試験片を切断採取し、該試験片を3%食塩水(液温:60℃)に、28日間浸漬した。浸漬後、目視で、試験片端部の被覆層の剥離状態を観察し、耐温水性の評価とした。剥離長さが3mm未満のものを◎、3mm以上5mm未満のものを○、剥離長さが5mm以上のものを×として評価した。
【0030】
得られた結果を表1に併記した。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明例はいずれも、優れた耐温水性を示している。
(実施例2)
実施例1と同様に、酸洗処理した鋼管(内径27.6mmφ×外径34.0mmφ×4m)を、リン酸亜鉛カルシウム系処理液中に浸漬し、内面にリン酸亜鉛カルシウム系化成処理層を形成した。ついで、該化成処理層の上層として表2に示す平均厚さのプライマー層を形成した。プライマー層は、表2に示す平均分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂を主成分とし、表2に示す量のジシアンジアミドもしくはその誘導体と、さらに表2に示すカップリング剤と、あるいはさらに表2に示す量の化合物とを含んだ熱硬化性樹脂組成物が、30質量%となるように溶剤希釈した混合液を塗布することにより形成した。この際、実施例1と同様に、プライマー層の平均厚さが表2に示した厚さになるように、鋼管内面積より計算した量の樹脂が塗布されるように当該混合液の塗布量を調整した。
【0033】
ついで、実施例1と同様に、プライマー層の上層として内面被覆層を形成した。まず、鋼管を230℃に加熱し、該加熱された鋼管内面に、変性ポリエチレン樹脂の粉末を粉体塗装して、表2に示す平均厚さの内面被覆層(変性ポリエチレン樹脂層)を形成した。なお、変性ポリエチレン樹脂としては、実施例1と同様に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を無水マレイン酸変性して得られたものを使用した。なお、この変性ポリエチレン樹脂は密度:0.923 g/cm、メルトインデックス:4.9g/10minである。この変性ポリエチレン樹脂を粉体塗装したのち、さらに150〜250℃の炉内で保熱後、自然冷却して、内面被覆鋼管とした。
【0034】
これら鋼管について、実施例1と同様に、接水環境下における耐剥離性を見るため、耐温水性を評価した。耐温水性の評価方法は実施例1と同様とした。
得られた結果を表2に併記した。
【0035】
【表2】

【0036】
プライマー層にシランカップリング剤を含有させることにより、さらに優れた耐温水性を示し、接水環境下における耐剥離性がさらに向上することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明鋼管の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 鋼管
2 化成処理層
3 プライマー層
4 内面被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管内面に、化成処理層、プライマー層、および内面被覆層をこの順に積層してなる内面被覆鋼管であって、
前記化成処理層が、リン酸塩系の化成処理層であり、
前記内面被覆層が、変性ポリエチレン系樹脂を主成分とする層であり、
前記プライマー層が、平均分子量2800〜3900のビスフェノール型エポキシ樹脂と、該ビスフェノール型エポキシ樹脂を100質量部としたときの質量比で1.5〜8.5質量部のジシアンジアミドもしくはその誘導体とを含む熱硬化性樹脂組成物から形成された層であり、該プライマー層の平均厚さが15〜25μmであることを特徴とする水配管用内面被覆鋼管。
【請求項2】
前記プライマー層が、さらにアミン系もしくはエポキシ系シランカップリング剤を、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂と、前記ジシアンジアミドもしくはその誘導体との合計量を100質量部としたときの質量比で0.5〜1.0質量部含有する熱硬化性樹脂組成物から形成された層であることを特徴とする請求項1に記載の水配管用内面被覆鋼管。

【図1】
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【公開番号】特開2009−74685(P2009−74685A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198304(P2008−198304)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】