説明

永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置

【課題】搬送台車間のピッチが変化しても、推力の変動が少ないリニア同期モータ駆動型搬送物仕分装置を提供すること。
【解決手段】所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、連結された前記複数の搬送台車の1台おきにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルの長さが、2つの前記2次側磁石プレートに同時に対向することがないような長さであると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、個別に磁場を発生させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に敷設された走行用レールに沿って走行し、その走行用レールの少なくとも1箇所に設けられた投入部で受け取った搬送物を運搬し、所定を方面に排出する複数の搬送台車を有する搬送物仕分装置に関し、さらに詳しくは、走行用レール側に備えられた一次側コイルと、搬送台車側に備えられた二次側磁石により、推力を発生させて、搬送台車を走行駆動する永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や半導体の製造工場内のような塵埃や油蒸気の発生を嫌う環境において物品を搬送仕分けする手段として、所望の搬送路に沿って床に敷設した走行用レールに従ってリニアモータ駆動により、台車を走行させる搬送台車装置が実用化されている。
【0003】
このようなリニアモータ駆動式搬送仕分装置には、地上側の走行用レールにリニアモータの一次コイルを設置し、これに交流電流を供給することにより、搬送台車側に備えられたリアクションプレートと呼ばれる二次導体に推力を発生させて搬送台車を走行させるリニア誘導モータ駆動式搬送仕分装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3349080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、リニア誘導モータ駆動の場合、エネルギー効率(力率)が悪く、エネルギーのロスが多かった。一方、リニア誘導モータに代えて、二次側にN極とS極が交互に配置された永久磁石を用いたリニア同期モータ駆動を用いることによって、省電力化を図ることが試みられている。
【0005】
しかしながら、リニア同期モータを用いる場合、図4及び図5に示したように各搬送台車に配置される二次側磁石のN極とS極のピッチτを全てコイルピッチに合わせる必要があり、隣接する搬送台車間の間隔も常にτの整数倍になるように調整する必要がある。もし、隣接する搬送台車間の間隔がτの整数倍にならない場合、図6に示すように、一次側コイルが隣接する2つの搬送台車に跨った際に、双方の搬送台車の二次側磁石と一次側コイルとが引き合いあるいは、反発し合うこととなり、双方の推進力が相殺され推進力が大幅に低下することになる。実際には、隣り合う搬送台車を連結桿によって無端循環状に連結した場合、走行路に沿って円滑な走行を確保するために搬送台車と連結桿との間に遊びを持たせる必要があるため、隣接する搬送台車の間隔を常にτの整数倍に維持することは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、搬送台車間のピッチが変化しても、推進力の変動が少ない永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本請求項1に係る搬送物仕分装置は、所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、連結された前記複数の搬送台車の1台おきにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルの長さが、2つの前記2次側磁石プレートに同時に対向することがないような長さであると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、個別に磁場を発生させることを特徴としている。
【0008】
また、本請求項2に係る発明は、所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、連結された前記複数の搬送台車の全てにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルが複数の巻線分割エリアを有すると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、前記巻線分割エリア毎に個別に磁場を発生させることにより、上記の目的をさらに達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る搬送物仕分装置によれば、所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、連結された前記複数の搬送台車の1台おきにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルの長さが、2つの前記2次側磁石プレートに同時に対向することがないような長さであると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、個別に磁場を発生させる構成にしたことによって、一次側コイルが、2つの2次側磁石との間において、推進力が相殺されることを防止し、低騒音で低振動である円滑なリニア同期モータ駆動が実現される。また、搬送台車間のピッチを自由に設定できるため、設計の自由度が拡大する。
【0010】
本請求項2に係る搬送物仕分装置によれば、所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、連結された前記複数の搬送台車の全てにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルが複数の巻線分割エリアを有すると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、前記巻線分割エリア毎に個別に磁場を発生させる構成にしたことによって、推進力の変動が少なくなり、より一層円滑なリニア同期モータ駆動が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
本実施例における搬送物仕分装置は、図1に示すように、連結された搬送台車の1台おきにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置されている。1次側コイルは、2次側磁石プレートよりも短いので、2つの2次側磁石プレートに同時に対向することがない。そして、1次側コイルに2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、1次側コイルの電流位相をリセットする。それによって、2次側磁石プレートには常に同方向の推進力が加わる。しかしながら、1台おきに2次側磁石プレートが設置されているために、リニア誘導モータ駆動に比べて効率は改善するものの、推進力の変動が大きくなり、推進力が発生しない区間が発生する。
【実施例2】
【0013】
図2に示した例では、1次側コイルをAコイルとBコイルの2系統にして交互に配置している。そのためAコイルを抜けてきた2次側磁石プレートは、すぐにBコイルに侵入し、Bコイルと2次側磁石プレートとの相互作用により推進力が発生する。そして、Aコイルと2次側磁石プレートとの相互作用による推進力と、Bコイルと2次側磁石プレートとの相互作用により推進力とが交互に発生する。そのため、実施例1のものに比べて推進力の変動が抑制される。
【実施例3】
【0014】
図3に示した例では、2次側磁石プレートは、全ての搬送台車に配備されている。そして、一つの1次側コイルを巻線分割エリアAと巻線分割エリアBに分割しており、各巻線分割エリアは、2つの2次側磁石プレートにさしかかる位置関係となる。これは隣り合う2次側磁石プレートの隙間よりも各巻線分割エリアが長いためである。各巻線分割エリアは2つの2次側磁石プレートにさしかかるタイミングで巻線分割エリアの通電を遮断するように制御するので、非通電時には推進力が落ち、駆動効率が悪い。そこで、各巻線分割エリアの長さを2次側磁石プレートの隙間ピッチ程度に短くすれば、各巻線分割エリアが2つの2次側磁石プレートにさしかかる状態が少なくなり、巻線分割エリアへの通電を遮断する時間が短くなるので、推進力の低下が少なくなり駆動効率が向上する。その結果、巻線分割エリアAによる推進力と巻線分割エリアBによる推進力を合成した合成推力は、1次側コイルを分割しなかったものに比べて大きな推進力が得られると共に、2次側磁石プレートのピッチが変動した場合であっても、推進力が相殺されることなく常に一定方向の推進力を発生させることが可能になる。また、巻線分割エリアA及び巻線分割エリアBのうち、非通電の巻線分割エリアに発生する誘起電圧を計測することにより、磁石位相、速度を求めることができ、これらを各巻線分割エリアのドライブにフィードバックすることによって、特別なセンサを別途も受けることなくきめ細かな走行制御を行うことが可能になる。
【0015】
また、本実施例では、一つの1次側コイルを複数の巻線分割エリアに分けているが、各巻線分割エリア毎に個別に1次側コイルを形成し並べて配置することでも実現可能である。しかしながら、各巻線分割エリア毎の複数の1次側コイルを配置する、すなわち地上側に固定するのは手間であり、多くの時間を要する。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置によれば、搬送台車間のピッチが任意であってもリニア同期モータ駆動が可能であって、しかも、推進力のムラを補完し合って推進力変動を抑制できるため、様々な用途に適用可能であり、その産業上の利用可能性はきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施例2を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施例3を説明する説明図である。
【図4】従来例を説明する説明図である。
【図5】従来例を説明する説明図である。
【図6】従来例を説明する説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、
連結された前記複数の搬送台車の1台おきにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、
前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルの長さが、2つの前記2次側磁石プレートに同時に対向することがないような長さであると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、個別に磁場を発生させること
を特徴とする永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置。
【請求項2】
所定の走行路に沿って敷設される走行用レールと、該走行用レールに沿って移動する複数の搬送台車と、隣り合う前記搬送台車が連結桿によって無端循環状に連結されている永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置において、
連結された前記複数の搬送台車の全てにN極とS極が交互に並ぶ2次側磁石プレートが配置され、
前記走行用レールに沿って、前記2次側磁石プレートに対向して1次側コイルが設置され、該1次側コイルが複数の巻線分割エリアを有すると共に、前記1次側コイルを前記2次側磁石プレートが侵入してくるタイミングに合わせて、前記巻線分割エリア毎に個別に磁場を発生させること
を特徴とする永久磁石式リニア同期モータ駆動の搬送物仕分装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−69791(P2006−69791A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258807(P2004−258807)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】