説明

汎用保持具

【課題】 身体、物品および機械器具などの各種の保持対象物に応じて最適な形状で硬化し、優れた安定性で保持対象物を保持することができる安価な汎用保持具を提供する。
【解決手段】 可撓性を有する容器2内に複数の粒状物3が空気とともに収容され、容器2内の空気を排出して0.1Pa以下に減圧し、粒状物3の容器2内の流動を阻止して容器2の形状を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の容器内に粒状物を空気または水などの流体とともに収容し、流体を排出することによって任意の物体の形状に変形させて、その被保持物を保持することができる汎用保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術では、クッション材として使用するとき、使用者の身体の部位の形状に適合するように変形して、使用時の位置ぶれを生じず、まとわりつくような不快感を解消して、未使用時の収容および輸送に至便なクッションが提案されている。
【0003】
具体的には、ガスバリア性を有する容器内に、小粒状形態でかつそれ自体が緩衝機能を有する多数の小粒状体を収容し、容器は少なくとも多数の小粒状体を集合体として形状を保持できる程度に内部の空気を抜いた状態が得られるように構成されたクッション材が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
他の従来の技術では、アルミホイールなどのシートからなる外気を遮断する機能を有する包袋内に密封して保存する医療用ギブス材であって、グラスファイバなどの織目の粗い布地を積層し、この積層布地に、水分にさらされると材料を硬化して剛性の自己維持構造を形成する合成樹脂調合溶剤を塗布するか含浸させて、水分供給によって硬化現象を呈する反応システムを備えた芯材とし、その芯材の一方の面には、疎水性繊維からなる不織布などの布地を配し、その芯材の他方の面には、その芯材の面に接する側の面を、前記芯材の反応システム形成材の逆浸を可及的に阻止する加工を施して成る面とした親水性繊維から成る水分供給機能をもつ布地を配して、前記芯材を挟持させた状態で、前記疎水性繊維から成る不織布等の布地と前記親水性繊維から成る不織布等の布地の両側縁を接着して3層構造とした医療用ギブス材が提案されている。
【0005】
前記包袋に密封封入する前記ギブス材は、芯材を所望の長さ、幅に設定し、芯材の一方の面に配する疎水性繊維から成る不織布と、芯材の他方の面に配し、芯材の面に接する側の面を前記芯材の反応システム形成材の逆浸を可及的に阻止する加工を施して成る面とした親水性繊維から成る水分供給機能を持つ布地は、それぞれ前記芯材に適応する長さ、幅のものを、その長さ方向に沿った両側縁を接着して3層構造とされる。
【0006】
前記ギブス材を密封封入する前記包袋は、前記ギブス材の幅、長さに応じた幅、長さに形成した医療用ギブス材、および、前記親水性繊維から成る不織布等の布地を前記疎水性繊維から成る水分供給機能をもつ布地とは両者を識別する手段としていずれかの布地に着色した医療用ギブスが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−135221号公報
【特許文献2】特開2004−242931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1に記載される従来の技術では、クッションに座るなどして一旦形状を決めて、空気を抜いた後は、中に小粒状は集合体となり、容器内での移動を遮断することができ、空気の抜き加減の強弱で、表面の質感を硬くも柔らかくも自在に調整できるとあるが、この点、空気の抜き加減の強いときの質感は固定化が完全であるため、座り姿勢への影響が従来の固定椅子と同様に、即座に座り心地に影響し、安定した姿勢に至るまでにクッションの形状が固定してしまい、その結果、姿勢とクッションの形状との不一致による不安定感を生じるという問題がある。
【0009】
また、硬化状態を弱く調節すれば、姿勢の変化などによってクッションの形状が大きく変化して位置ぶれし、この位置ぶれによってもまた、姿勢とクッションとの不一致が生じ、姿勢の安定が得られ難く、座り心地に対する不安定感が時間とともに増幅する等の問題がある。
【0010】
前述の特許文献2に記載される従来の技術では、医療用ギブス材として患部に合わせた加工が容易で、硬化時間が数分後の短時間処置が可能であるが、ギブス材から含浸した水分を絞り出すには、必要以上に水分が保護袋に浸透しないよう、水分の絞り出しに操作加減をしなければならない。万一、過多含浸であれば、水分によって粘度をゆるくした親水性調合溶剤が疎水性物質で作られている保護袋に逆浸し、これをそのままの状態で患部に当てがうときは、保護包みが湿った状態で患部に当てがうことになり、患者に不快感を与えるという問題がある。
【0011】
また、端面処理の不具合からグラスファイバの針状の折損した破片が皮膚に刺さる危険性がある。さらに、芯材である支持層を包み込む保護包みは、管状形式に形成しているので、医療用材料であるギブス材を作る際、特殊な設備を要すること、および親水性調合溶剤のバラツキが大きいために不良発生率が高く、歩留まりの低下によって製造コストが高価になるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、身体、物品および機械器具などの各種の保持対象物に応じて最適な形状で硬化し、優れた安定性で保持対象物を保持することができる安価な汎用保持具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、可撓性を有する容器内に複数の粒状物が流体とともに収容され、容器内の流体を排出して0.1Pa以下に減圧することによって、前記粒状物の容器内の流動を阻止して前記容器の形状が固定されることを特徴とする汎用保持具である。
【0014】
本発明に従えば、可撓性を有する容器内に収容される粒状物は、容器内の流体を排出して0.1Pa以下に減圧することによって流動が阻止され、その結果、容器の形状が固定される。前記容器内に粒状物とともに収容される流体は、空気であってもよく、水であってもよく、粒状物に対して化学変化を起こすことがなく、人体に無害なガスまたは液体を適宜選択して用いることができる。
【0015】
前記容器内の粒状物は、容器内の圧力を0.1Pa以下になるまで流動状態を維持するので、前記従来の技術のように、脱気直後に硬化して定形化し、身体などの被保持物の形状と合致しないという不具合が生じない。このような容器内における粒状物の流動は、粒状物の形状、表面粗さ、粒径、容器の容積に対する充填量などの諸条件を最適となるように調整すればよい。これによって安価に、身体を保持する場合には不安感、不安定感を使用者に生じさせず、また物品を保持する場合には安定性を損なわずに、保持することができる。
【0016】
また本発明は、前記容器には、前記粒状物が収容される収容空間と大気とに連通する連通孔が形成される通路部材と、この通路部材の前記連通孔を閉鎖する開閉可能に装着される弁体とが設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、容器には連通孔を有する通路部材と弁体とが設けられるので、この弁体によって前記連通孔を開放し、容器内の流体を排出して形状を固定し、前記弁体によって前記連通孔を閉鎖することによって、前記形状が固定された状態、または形状が固定されずに流動可能な不定形状態を維持することができ、汎用保持具を繰り返し使用することが可能となる。
【0018】
また本発明は、前記容器は、複数が整列して連結され、各容器には、各容器の前記粒状物が収容される各収容空間と大気とに連通する連通孔が形成される通路部材と、この通路部材に前記連通孔を開閉可能に装着される弁体とが設けられることを特徴とする。
【0019】
本発明に従えば、複数の容器が整列して連結され、これらの容器には連通孔を有する通路部材と弁体とが個別に、または共通に設けられるので、この弁体によって前記連通孔を開放し、各容器内の流体を排出して形状を固定し、前記弁体によって前記連通孔を閉鎖することによって、前記形状が固定された状態、または形状が固定されずに流動可能な不定形状態を維持することができ、汎用保持具を繰り返し使用することが可能となる。
【0020】
また本発明は、前記容器は、高気密性フィルムからなる外層と、外層の内面に接合され、伸縮性および通気性を有する繊維材料からなる内層とを含む多層シートによって、扁平な袋状に形成されることを特徴とする。
【0021】
本発明に従えば、気密性が高気密性フィルムからなる外層の内面に、可撓性を有する繊維材料からなる内層が接合された多層シートによって袋状に形成されるので、常に繊維材料が内方に臨み、粒状物に対して適度の摺動摩擦効果が得られ、形状固定時に粒状物の集合体と容器とのずれを防止し、被保持物を安定に保持することができる。
【0022】
また本発明は、前記粒状物は、撥水性を有し、粒径が0.1mm以上30mm以下の中実の粒状体からなることを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、容器内の粒状物は撥水性を有するので、水分を吸収せず、粒状物同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。また粒状物の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物の形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物に対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物は中実の粒状体からなるので、個々の粒状物の弾性変形が少なく、重量の大きい被保持物に対して有利に適用することができる。
【0024】
また本発明は、前記粒状物は、撥水性を有し、粒径が0.1mm以上30mm以下の中空の粒状体からなることを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、容器内の粒状物は撥水性を有するので、水分を吸収せず、粒状物同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。また粒状物の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物の形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物に対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物は中空の粒状体からなるので、個々の粒状物の弾性変形が大きく、重量の小さい被保持物に対して有利に適用することができる。
【0026】
また本発明は、前記粒状物は、遠赤外線を発生する物質からなることを特徴とする。
本発明に従えば、粒状物として遠赤外線を発生する物質からなるので、体温および加熱された物品などから発生する熱によって、身体に対しては温熱効果が得られ、物品に対しては保温効果が得られる。
【0027】
また本発明は、前記汎用保持具は、ギブス、室内装飾品および家庭用品の敷物、患者搬送台用マット、身体の所定部位を保護するためのパッド、ならびに建物および機械器具の隙間に充填される間詰材のうちから選ばれた1つに用いられることを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、汎用保持具が、ギブス、敷物、マット、パッドおよび間詰材のうちから選ばれた1つに用いられる。医療用ギブスとして用いられた場合、治療目的を達成するまでの期間中、その患部を治療目的が達成されるのに好適な状態で固定することができる。また身体の所定部位が手足の折り曲げ関節部の患部、たとえば、手首、肘部、肩など、および足首、膝部、足指など、さらに他の部位である腕部、脚部、大腿、腹部などの所望の部位の患部にあった包装体である筒状、靴下状もしくはシート状の形態を装着して、実際に仮固定することができるため、簡易軽量ギブスの代用として応急処置として有効である。さらに前記汎用保持具は、流体として空気が用いられる場合、真空ポンプによって空気を脱気することが可能であり、しかも複数の連結する容器によって構成したとき、身体の個々の部位の凹凸状態に追従して肌に密着し、患部形状に沿って外見上の質感を失わない状態で固定することができ、使用上においても違和感がなく、患者にとって使用し易いという利点がある。
【0029】
また汎用保持具が敷物として用いられた場合、破損し易い高価な陶磁器、ガラス製品および彫刻物・美術品などの所定部位に装着された状態では、これらの被保持物の所定部位の外方に凸の部分が圧接して密着し、凹凸面の全体に形状を追従させ、確実に被保持物を安定して保持することができる。しかも、高価な被保持物の輸送にあたっては、輸送中の繰り返す振動によって底づき、横ぶれ等による傷の発生および破損があってはならず、他のものと完全隔離して、尚かつ細心な注意と完全固定が必要不可欠であって、優れた緩衝効果を発揮でき、被保持物の保護を好適に果たすことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、粒状物は、容器内の圧力を0.1Pa以下になるまで流動状態を維持するので、身体を保持する場合には不安感、不安定感を使用者に生じさせず、また物品を保持する場合には安定性を損なわずに保持することができる汎用保持具を安価に実現することができる。
【0031】
また本発明によれば、容器には連通孔を有する通路部材と弁体とが設けられるので、形状の固定および解除を容易に行うことができ、汎用保持具を繰り返し使用することが可能となる。
【0032】
また本発明によれば、複数の容器が連結されるので、弁体によって形状の固定および解除を容易に行うことができ、汎用保持具を繰り返し使用することが可能となる。
【0033】
また本発明によれば、容器は気密性が高気密性フィルムからなる外層によって達成され、その内面に可撓性を有する繊維材料からなる内層が接合された多層シートによって袋状に形成されるので、容器と粒状物とがずれにくく、被保持物の位置ずれが生じ難くなり、安定に保持することができる。
【0034】
また本発明によれば、容器内の粒状物は水分を吸収しないので、粒状物同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。また粒状物の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物の形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物に対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物は中実の粒状体からなるので、個々の粒状物の弾性変形が少なく、重量の大きい被保持物に対して有利に適用することができる。
【0035】
また本発明によれば、容器内の粒状物は水分を吸収しないので、粒状物同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。また粒状物の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物の形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物に対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物は中空の粒状体からなるので、個々の粒状物の弾性変形が大きく、重量の小さい被保持物に対して有利に適用することができる。
【0036】
また本発明によれば、粒状物として遠赤外線を発生する物質からなるので、体温および加熱された物品などから発生する熱によって、身体に対しては温熱効果が得られ、物品に対しては保温効果が得られる。
【0037】
また本発明によれば、汎用保持具が、ギブス、敷物、マット、パッドおよび間詰材のうちから選ばれた1つに用いられ、高い汎用性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明の実施の一形態の汎用保持具1の脱気前の状態を示す断面図である。本実施の形態の汎用保持具1は、袋状の容器2と、この容器2内に流体である空気とともに収容される複数の粒状物3と、容器2の設けられ、容器2内の収容空間と大気とに連通する連通孔4が形成される通路部材5と、通路部材5の外部に突出した先端部に前記連通孔4を開閉可能に装着される弁体6とを含む。
【0039】
容器2は、外側には気密性を有し、かつ被保持物の外形に対応する柔軟性を有する高ガスバリア性フィルムから成る外層7と、外層7の内面に接合され、粒状物3を自由に流動し易くあるいは集合体となって形状変化に追従することができる伸縮性のある繊維材料である織物または編物ならなる内層8とを有する2枚の可撓性シートの周縁部を、前記通路部材5を介在させた状態で、ホットメルト接着剤によって加熱加圧することに形成される。
【0040】
前記通路部材5は、軟質合成樹脂製の棒状体からなり、その内部には前記連通孔4が形成され、このような通路部材5の外部側の一端部に前記弁体6が装着される。前記弁体6は、容器5内の前記収容空間の圧力P1が外部の圧力P2よりも高くなる(P1>P2)と開放し、低くなる(P1≦P2)と閉鎖するように設定圧力が設定された逆止弁によって実現されてもよく、あるいは手動で開閉することができる開閉弁によって実現されてもよい。また、汎用保持具1がギブスなどとして使用される場合には、患者によって勝手に外されては困るため、前記逆止弁および開閉弁に代えて、接着剤、熱硬化形接着剤、揮発性溶媒形接着剤、光硬化形接着剤などのシール材によって連通孔4を気密に閉塞するようにしてもよい。
【0041】
容器5内に収容される粒状物3は、容器5内の収容空間の容積の80〜90%程度収容され、収容空間の圧力P1が大気圧〜0.1Pa以下になるまで流動状態を維持する。これによって、前記従来の技術のように、脱気直後に硬化して定形化し、身体などの被保持物の形状と合致しないという不具合が生じない。このような容器5内における粒状物3の流動は、粒状物3の形状、表面粗さ、粒径、容器の容積に対する充填量などの諸条件を最適となるように調整すればよい。これによって安価に、身体を保持する場合には不安感、不安定感を使用者に生じさせず、また物品を保持する場合には安定性を損なわずに、保持することができる。
【0042】
前記高ガスバリア性を有するフィルムは、従来公知である水物包装用のレトルトパウチおよび冷凍食品用包装材と同様なものを採用することができる。前記高ガスバリア性のフィルムとしては、空気に対して高い非透過性を有する包装材料には、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニデンフィルム層を有する三層ラミネートフィルムや、アルミニウム層を有するラミネートフィルムがある。三層ラミネートフィルムでは、エチレンビニルアルコール共重合体フィルムの内層には、未延伸のポリプロピレンフィルムをラミネートすることが良く、熱融着性が良好となる。さらにエチレンビニルアルコール共重合体フィルムの外層には、2軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等をラミネートすることが好ましい。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフイン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド等の厚みである包装材料を用いることもでき、これらの合成樹脂製積層シートを用いるのが好適である。
【0043】
このうち、2軸延伸ポリエステルフィルムでは、易滑性または離型性、サンドマット処理などをした厚さ20〜100μmの範囲で、酸素透過率5cc/m/hr/atm以下、機械的特性の引張強さが150〜200MPa/25μm程度あればよい。
【0044】
前記内側の繊維材料3としては、織物では、ポプリン、サージ、ギャバジンおよびサテン類の綿布、毛織物またはタフタ、ポンジー、オーガンジーなどの合繊織物、特にポリウレタン弾性繊維混ストレッチ織物で良く、経編物では、ハーフトリコット、サテントリコット、もしくは2ウェイトリコット、丸編物では、天竺、インターロック(2段)、ベア(BARE)天竺等である。ここで、糸使いは、フィラメントとして、ナイロン、ポリエステル、アクリロニトリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、レーヨン、アセテート、絹類または混紡糸、交撚糸等が好ましく用いる。
【0045】
前記粒状物3としては、合成樹脂製の球状、直方体状または発泡体もしくは成型物であればよく、特に、軽量発泡体が好ましい。小粒状体の大きさは、球形の場合、粒径が0.4〜5mm程度の小粒が好ましいが、これに限るものではなく、0.1mm以上30mm以下のものを適宜用いることができる。
【0046】
また、前記空気を脱気する真空ポンプとしては、救急車に備えつけの小型ポンプ、または救急病院などの医療施設に備えつけの小型真空ポンプを使用することができる。
【0047】
図2は、図1に示される汎用保持具1に被保持物Mを乗載して保持した状態を示す断面図である。被保持物Mは、たとえば破損し易い重量物のクリスタイルグラスカップであって、このような被保持物Mを汎用保持具1上に乗せたところ、被保持物Mの底および下部周辺部を汎用保持具1が被保持物Mの重量によって外面に沿って変形して密着し、この状態は、弁体6を開放し、真空ポンプなどを用いて通路部材5の連通孔4から空気を脱気した後、再び弁体6を閉鎖して完全に脱気を終えた状態である。
【0048】
容器2内に収容した粒状物3の動きは、図1に示されるように、かなりの隙間や分散遊離して流動可能な不定形の状態から、空気を脱気した後には、図2に示されるように、もはや粒状物3は個々に流動することができなくなった状態となり、粒状物3の集合体として被保持物Mの形状に沿って形状固定された状態となる。
【0049】
また、日常品として、汎用保持具に表層カバーで互換性を有するためにハスナー付きの織物または編み物等にプリントしたものを用いてもよい。
【0050】
このような汎用保持具1によれば、可撓性を有する容器2内に収容される粒状物3は、容器2内の空気を排出して0.1Pa以下に減圧することによって流動が阻止され、その結果、容器2の形状が固定される。前記容器2内に粒状物3とともに収容される流体として、前記空気に限らず、水であってもよく、粒状物3に対して化学変化を起こすことがなく、人体に無害なガスまたは液体を適宜選択して用いることができる。
【0051】
前記容器2内の粒状物3は、容器2内の圧力を0.1Pa以下になるまで流動状態を維持するので、前記従来の技術のように、脱気直後に硬化して定形化し、身体などの被保持物の形状と合致しないという不具合が生じない。このような容器2内における粒状物3の流動は、粒状物3の形状、表面粗さ、粒径、容器2の容積に対する充填量などの諸条件を最適となるように調整すればよい。これによって安価に、身体を保持する場合には不安感、不安定感を使用者に生じさせず、また物品を保持する場合には安定性を損なわずに、保持することができる。
【0052】
また、容器2には連通孔4を有する通路部材5と弁体6とが設けられるので、この弁体6によって前記連通孔4を開放し、容器2内の空気を排出して形状を固定し、前記弁体6によって前記連通孔4を閉鎖することによって、前記形状が固定された状態、または形状が固定されずに流動可能な不定形状態を維持することができ、汎用保持具1を繰り返し使用することが可能となる。
【0053】
また、気密性が高気密性フィルムからなる外層7の内面に、可撓性を有する繊維材料からなる内層8が接合された多層シートによって袋状の容器2が形成されるので、常に繊維材料が内方に臨み、粒状物3に対して適度の摺動摩擦効果が得られ、形状固定時に粒状物3の集合体と容器2とのずれを防止し、被保持物Mを安定に保持することができる。
【0054】
また、容器2内の粒状物3は撥水性を有することによって、水分を吸収せず、粒状物2同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。この粒状物3の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物Mの形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物Mに対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物3は中実の粒状体からなることによって、個々の粒状物3の弾性変形が少なく、重量の大きい被保持物Mに対して有利に適用することができる。
【0055】
図3は、本発明の実施の他の形態の汎用保持具1aを示す斜視図である。なお、前述の実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。本実施の形態の汎用保持具1aは、身体の足10の膝11の上下両側に装着される汎用保持具であって、複数(本実施の形態では2)の容器2が整列して連結され、これらの容器2には連通孔4を有する通路部材5と弁体6とが共通に設けられる。この弁体6によって前記連通孔4を開放し、各容器2内の空気を排出して形状を固定し、前記弁体6によって前記連通孔4を閉鎖することによって、前記形状が固定された状態、または形状が固定されずに流動可能な不定形状態を維持することができ、汎用保持具1aを繰り返し使用することが可能となる。
【0056】
図4は、本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1bを示す斜視図であり、図4(a)は汎用保持具1bを帯状とし、この汎用保持具1bを足首30から脹脛31の両側にわたって貼り付け、捻挫を仮固定する簡易軽量ギブスとして装着した状態を示し、図4(b)は汎用保持具1bを肘32から手首33にわたって貼り付け、手首33の第2関節までを仮固定した簡易軽量ギブスとして装着した状態を示す。なお、前述の実施の各形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。
【0057】
図4(a)は、汎用保持具1bが簡易軽量ギブスとして足に用いられた状態を示し、足首30の腫れを軽減するために、足首関節が完全に硬くならない程度に固定する目的で密着させたものであり、装着時の空気の脱気も大気圧程度に加減している。図4(b)は、汎用保持具1bは、第2腕部40の筋肉の腱鞘炎を軽減するために、手首33から腕部間接32までを固定する目的で密着させたものであり、装着時の脱気も図4(a)と同程度のものである。
【0058】
図5は、本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1cを示す斜視図であり、図5(a)は筒状の汎用保持具1cで腕部の第2関節41を応急処理として装着した状態を示し、図5(b)は脚部の膝関節50に装着した状態を示す。なお、前述の実施の各形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。
【0059】
簡易軽量ギブスとして用いられる汎用保持具1cは、図5(a)に示されるように、腕部の第2関節41の患部を仮固定することによって、装着時の脱気の程度も、歩行する際に僅かな動きを許容する程度にして、故障の程度をさらに悪化させること無く、家庭での養生目的に使用したものである。また図5(b)に示されるように、簡易軽量ギブスとして用いられる汎用保持具1cは、脚部の膝関節50の軽い捻挫の回復を促進する目的で装着したもので、図5(a)と同様に、脱気加減をして装着されている。
【0060】
これらは、通常の生活を維持しながら回復を待つ手段に使用するのに好適な簡易軽量ギブスである。
【0061】
図6は、本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1dを示す斜視図であり、足首30の関節または足指60を応急処置として装着した状態を示す。なお、前述の実施の各形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。
【0062】
簡易軽量ギブスとして用いられる汎用保持具1dは、足首関節30または足指60の患部を仮固定する。これは重症で医師の手当である石膏ギブスや松葉杖を適用されないで、軽症で歩行の出来る程度のものである。
【0063】
図4〜図6に示したように、簡易軽量ギブスとして用いられる汎用保持具1b,1c,1dは、医療用ギブスに匹敵する効能を有し、かつ軽量で取り扱い易いという利点を有する。
【0064】
本発明の実施のさらに他の形態では、容器内の粒状物は撥水性を有することによって、水分を吸収せず、粒状物同士の付着が防がれ、確実に均一に分散させて流動状態とし、集合させて所要形状の一塊の集合体に硬化させることができる。また粒状物の粒径が0.1mm以上30mm以下に選ばれるので、被保持物の形状に応じて、形状固定時における容器表面に凹凸を形成して、被保持物に対する接触状態または当接状態を最適化することができる。しかも、この粒状物は中空の粒状体からなるので、個々の粒状物の弾性変形が大きく、重量の小さい被保持物に対して有利に適用することができる。
【0065】
また本発明の実施のさらに他の形態では、粒状物として遠赤外線を発生する物質、たとえばファインセラミックスからなることによって、体温および加熱された物品などから発生する熱によって、身体に対しては温熱効果が得られ、物品に対しては保温効果が得られる。
【0066】
また本発明の実施のさらに他の形態では、汎用保持具が、ギブス、敷物、マット、パッドおよび間詰材のうちから選ばれた1つに用いられる。前述したように医療用ギブスとして用いられた場合、治療目的を達成するまでの期間中、その患部を治療目的が達成されるのに好適な状態で固定することができる。また身体の所定部位が手足の折り曲げ関節部の患部、たとえば、手首、肘部、肩など、および足首、膝部、足指など、さらに他の部位である腕部、脚部、大腿、腹部などの所望の部位の患部にあった包装体である筒状、靴下状もしくはシート状の形態を装着して、実際に仮固定することができるため、簡易軽量ギブスの代用として応急処置として有効である。さらに前記汎用保持具は、流体として空気が用いられる場合、真空ポンプによって空気を脱気することが可能であり、しかも複数の連結する容器によって構成したとき、身体の個々の部位の凹凸状態に追従して肌に密着し、患部形状に沿って外見上の質感を失わない状態で固定することができ、使用上においても違和感がなく、患者にとって使用し易いという利点がある。
【0067】
また汎用保持具が敷物として用いられた場合、破損し易い高価な陶磁器、ガラス製品および彫刻物・美術品などの所定部位に装着された状態では、これらの被保持物の所定部位の外方に凸の部分が圧接して密着し、凹凸面の全体に形状を追従させ、確実に被保持物を安定して保持することができる。しかも、高価な被保持物の輸送にあたっては、輸送中の繰り返す振動によって底づき、横ぶれ等による傷の発生および破損があってはならず、他のものと完全隔離して、尚かつ細心な注意と完全固定が必要不可欠であって、優れた緩衝効果を発揮でき、被保持物の保護を好適に果たすことができる。
【0068】
本発明は、前述の実施の各形態に限定されるものでなく、生活の一助としての役割が年々増す傾向にあり、本発明を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の一形態の汎用保持具1の脱気前の状態を示す断面図である。
【図2】図1に示される汎用保持具1に被保持物Mを乗載して保持した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態の汎用保持具1aを示す斜視図である。
【図4】本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1bを示す斜視図であり、図4(a)は汎用保持具1bを帯状とし、この汎用保持具1bを足首30から脹脛31の両側にわたって貼り付け、捻挫を仮固定する簡易軽量ギブスとして装着した状態を示し、図4(b)は汎用保持具1bを肘32から手首33にわたって貼り付け、手首33の第2関節までを仮固定した簡易軽量ギブスとして装着した状態を示す。
【図5】本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1cを示す斜視図であり、図5(a)は筒状の汎用保持具1cで腕部の第2関節41を応急処理として装着した状態を示し、図5(b)は脚部の膝関節50に装着した状態を示す。
【図6】本発明の実施のさらに他の形態の汎用保持具1dを示す斜視図であり、足首30の関節または足指60を応急処置として装着した状態を示す。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b,1c,1d 汎用保持具
2 容器
3 粒状物
4 連通孔
5 通路部材
6 弁体
7 外層
8 内層
10 足
11 膝
30 足首
31 脹脛
32 肘
33 手首
40 第2腕部
50 膝関節

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する容器内に複数の粒状物が流体とともに収容され、容器内の流体を排出して0.1Pa以下に減圧することによって、前記粒状物の容器内の流動を阻止して前記容器の形状が固定されることを特徴とする汎用保持具。
【請求項2】
前記容器には、前記粒状物が収容される収容空間と大気とに連通する連通孔が形成される通路部材と、この通路部材の前記連通孔を閉鎖する開閉可能に装着される弁体とが設けられることを特徴とする請求項1記載の汎用保持具。
【請求項3】
前記容器は、複数が整列して連結され、各容器には、各容器の前記粒状物が収容される各収容空間と大気とに連通する連通孔が形成される通路部材と、この通路部材に前記連通孔を開閉可能に装着される弁体とが設けられることを特徴とする請求項1記載の汎用保持具。
【請求項4】
前記容器は、高気密性フィルムからなる外層と、外層の内面に接合され、伸縮性および通気性を有する繊維材料からなる内層とを含む多層シートによって、扁平な袋状に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の汎用保持具。
【請求項5】
前記粒状物は、撥水性を有し、粒径が0.1mm以上30mm以下の中実の粒状体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の汎用保持具。
【請求項6】
前記粒状物は、撥水性を有し、粒径が0.1mm以上30mm以下の中空の粒状体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の汎用保持具。
【請求項7】
前記粒状物は、遠赤外線を発生する物質からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の汎用保持具。
【請求項8】
前記汎用保持具は、ギブス、室内装飾品および家庭用品の敷物、患者搬送台用マット、身体の所定部位を保護するためのパッド、ならびに建物および機械器具の隙間に充填される間詰材のうちから選ばれた1つに用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の汎用保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−29249(P2007−29249A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214163(P2005−214163)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(505092717)有限会社CNJ JAPAN (3)
【Fターム(参考)】