説明

汚水の処理方法及びその設備

【課題】汚水に溶解した成分の析出を行い、更に、凝集剤の添加によって発生するフロックの比重を高めて、後の操作を容易にした汚水の処理方法及びその設備を提供する。
【解決手段】汚染物質を含む汚水の処理方法であって、汚水を第1の攪拌槽13に入れpH調整剤を混入して攪拌し、溶解している汚染物質の析出を行う。更にこの汚水を第2の攪拌槽18に入れて、pHが中性となった汚水に、凝集剤15と微粒砂16を投入して攪拌し、汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させ、この凝集物を含む汚水を第3の攪拌槽20に入れて攪拌し、凝集物を肥大化させ、分離槽21に入れて凝集物を沈殿させる。そして、この凝集物を含む汚泥水を送る管路に空気を入れて上位置にある第1のサイクロン22に搬送し、第1のサイクロン22によって汚泥水を凝集物と一次処理水に分ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水(有機物を含む廃水)、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水の処理方法及びその設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図2に従来の一般的な汚水の処理方法のフロー図を示すが、処理対象である汚水を原水貯留槽70に貯留し、第1槽71でポリ塩化アルミニウム(PAC)、酸化第2鉄又は硫酸バンドの溶液(又は混合液)72をポンプ73で投入し、次に第2槽75で中和剤(例えば、苛性ソーダ)76とアニオン系高分子凝集剤77をポンプ78、79で投入する。これによって、第2槽75で中和反応と汚染物質の凝集反応を起こすので、沈殿槽80で処理水81と汚泥82に分離し、処理水81は放流水調整槽83に貯留した後放流する。汚泥82は汚泥濃縮貯留槽85にて一旦貯留した後、第3槽86に入れてカチオン系の高分子凝集剤87を入れて、凝集物を脱水機88で脱水処理をして外部に放出している。なお、90〜93はポンプを示す。
【0003】
また、特許文献1、2には、杭打ちやトンネル掘削、ボーリング、湖沼の堆積土の除去工事等で発生する活性汚泥等の懸濁成分を含む汚水に、アルギン酸ナトリウム及び反応遅延剤を溶解した後、更にマグネシウム塩と水銀塩を除く2価以上の金属塩を添加して、懸濁成分を凝集させて除去する方法が提案されている。
そして、特許文献3には、家庭からの排水、池水、下水等のSS成分(浮遊物質)、TP成分(総リン)を含む汚水を処理する装置で、汚水に無機系の凝集剤を入れて混合して、汚水を上澄液と汚泥に分離する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−182349号公報
【特許文献2】特開平8−276105号公報
【特許文献3】特開平9−323004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図2記載の汚水の処理方法においては、強酸性の凝集剤を使用し、かつ複数種の汚水を処理しようとする場合で、生産物の多様化により汚水(廃水)の性状が変わった場合には、汚水の種類に合わせて処理設備を変える必要がある。また、この処理方法においては、臭いや残色を十分に除去することは困難である。
【0006】
一方、特許文献1、2、3記載の技術においては、水中に浮遊又は懸濁している成分についての除去は可能であるが、水中に溶けている成分については除去するのが困難であるという問題がある。
また、汚水に周知の無機系又は有機系の凝集剤を入れただけでは、凝集に時間がかかり、更に凝集したフロックは汚水に含まれる成分によっては、比重によって浮上する場合、浮遊する場合、沈降する場合があり分離が複雑であるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、汚水に溶解した成分の析出を行い、更に、凝集剤の添加によって発生するフロック(凝集物)の比重を高めて、後の操作を容易にした汚水の処理方法及びその設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う第1の発明に係る汚水の処理方法は、工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水の処理方法であって、
前記汚水を第1の攪拌槽に入れてpH調整剤を混入して攪拌し、溶解している前記汚染物質の析出を行う第1工程と、
前記第1工程で処理された汚水を第2の攪拌槽に入れて、pHが中性となった該汚水に、凝集剤と比重が1より大きい微粒砂を投入して攪拌し、該汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる第2工程と、
前記第2工程で処理した凝集物を含む汚水を第3の攪拌槽に入れて攪拌し、該凝集物を肥大化させる第3工程と、
前記第3工程で処理された汚水を、分離槽に入れて更に前記凝集物を沈殿させる第4工程と、
前記第4工程で発生した凝集物を含む汚泥水を送る管路に空気を入れて上位置にある第1のサイクロンに搬送し、該第1のサイクロンによって前記汚泥水を前記凝集物と一次処理水に分ける第5工程とを有する。
ここで、微粒砂は例えば10〜500μmの粒度の粒を全体の80質量%以上含むものが好ましい。
【0009】
第1の発明に係る汚水の処理方法において、前記第5工程で処理された凝集物を一旦汚泥槽に溜めて、ポンプで第2のサイクロンに搬送し、該第2のサイクロンで前記微粒砂を前記凝集物の汚泥から回収する第6工程とを有するのが好ましい。
【0010】
また、前記第2工程で使用する凝集剤には、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムの粉末を含み、更にアルギン酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムを含むのが好ましい。
更に、前記第2工程で処理される汚水がアルカリ性又は酸性である場合には、前記第2の攪拌槽に中和剤も合わせて入れるのが好ましい。
【0011】
また、第1の発明に係る汚水の処理方法において、更に、前記第5工程で発生する一次処理水を第4の攪拌槽に入れて、過酸化水素を添加して攪拌し、該一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行うA工程と、
前記A工程で処理した一次処理水を第5の攪拌槽に入れて、粉末活性炭を入れて攪拌し、残留過酸化水素の除去を行うと共に該一次処理水の残留有機物及び残留懸濁物の処理を行うB工程と、
前記B工程で処理された一次処理水を第6の攪拌槽に入れて攪拌し、第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させるC工程と、
前記C工程で処理した一次処理水を第2の分離槽に入れて、凝集物を浮上及び/又は沈降させて排除し、残余水は放流するD工程とを有するのが好ましい。
【0012】
第2の発明に係る汚水の処理設備は、工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水の処理設備であって、

投入された前記汚水にpH調整剤を混入して第1の攪拌手段によって攪拌し、溶解している前記汚染物質の析出を行う第1の攪拌槽と、
前記第1の攪拌槽で処理されて、pHが中性となった汚水に、凝集剤と微粒砂を投入して、第2の攪拌手段によって攪拌し、該汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる第2の攪拌槽と、
前記第2の攪拌槽で処理した凝集物を含む汚水を第3の攪拌手段で攪拌し、該凝集物を肥大化させる第3の攪拌槽と、
前記第3の攪拌槽で処理された汚水中の前記凝集物を沈殿させる分離槽と、
前記分離槽で沈殿した凝集物を含む汚泥水を前記凝集物と一次処理水に分ける第1のサイクロンとを有する。
【0013】
なお、第2の発明に係る汚水の処理設備において、前記第1のサイクロンで分離した前記凝集物から、遠心力を用いて前記微小粒の砂を回収する第2のサイクロンを更に有するのが好ましい。これによって回収された微粒砂は、再度凝集物沈降促進材として使用できる。ここで、第2のサイクロンは、第1のサイクロンより固形物の分離能力が高いもの(例えば、流体の速度を速くする等)を使用する。
【0014】
そして、第2の発明に係る汚水の処理設備において、更に、前記第1のサイクロンで前記凝集物を除いた残りの一次処理水に過酸化水素を添加して攪拌し、該一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行う第4の攪拌槽と、
前記第4の攪拌槽で処理した一次処理水に粉末活性炭を入れて攪拌し、残余過酸化水素を除去すると共に、該一次処理水の脱臭を行う第5の攪拌槽と、
前記第5の攪拌槽で処理した一次処理水に第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させる第6の攪拌槽と、
前記第6の攪拌槽で処理した一次処理水を入れて、凝集物を浮上及び/又は沈降させて排除し、残余水は排水する第2の分離槽とを有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る汚水の処理方法は、汚水を第1の攪拌槽に入れてpH調整剤を混入して攪拌し、溶解している汚染物質の析出を行う第1工程を有しているので、汚水中に溶解している重金属(銅、6価クロム等)、汚濁物質等を析出することが可能となる。
そして、第1工程で処理された汚水を第2の攪拌槽に入れて、凝集剤と微粒砂を投入して攪拌し、汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる。ここで、第2の攪拌槽には、凝集剤の他に、微粒砂を混入しているので、微粒砂が凝集物の核となり凝集物の比重が大きくなって沈殿し易くなる。
第3工程及び第4工程では、第2工程で生じた凝集物を肥大化させて分離槽で沈殿させる。そして、第5工程で、肥大化した凝集物を含む汚泥水を第1のサイクロンに通して凝集物とその残りの一次処理水に分けて別々に処理する。
【0016】
そして、第1の発明に係る汚水の処理方法において、採集された凝集物を第2のサイクロン(例えば、マイクロサンドサイクロン)を通して微粒砂を回収した場合には、この微粒砂を再度第2工程で使用することが可能であり、微粒砂の消費を押さえて全体のコストを削減できる。また、この第2のサイクロンによって微粒砂が分離された凝集物は汚泥として、例えば、脱水処理し廃棄又は埋め立て処分がなされる。
【0017】
第1の発明に係る汚水の処理方法において、第2工程で使用する凝集剤としては、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムの粉末を含み、更にアルギン酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムを含むのが好ましい。ここで、水酸化カルシウムは汚水の0.001〜0.06質量%、水酸化アルミニウムは水酸化カルシウムより多い0.003〜0.01質量%程度が好ましい。水酸化カルシウムは水に溶けて強いアルカリ性を示し、凝集効果を強める効果を発揮する。水酸化アルミニウムは水に難溶であるので、汚水中に浮遊し凝集物の核となる。アルギン酸ナトリウムは汚水の0.001〜0.02質量%程度、重炭酸ナトリウムは、汚水の0.001〜0.01質量%程度がよい。なお、これらの数字は経済性も考慮し、過去の操業データから決めたもので、必ずしもこの量によって本発明が限定されるものではない。
なお、汚水の種類によって、無機質系の凝集剤を先に入れた後、有機高分子系の凝集剤を入れてもよい。
【0018】
また、第1の発明に係る汚水の処理方法で使用する凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル、その他、周知の高分子凝集剤や無機質凝集剤(例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、鉄塩、塩化アルミニウム)も使用できる。
【0019】
第1の発明に係る汚水の処理方法において、第5工程で発生する一次処理水を第4の攪拌槽に入れて、過酸化水素を添加して攪拌し、一次処理水の殺菌及び脱色を行うA工程を設けた場合には、排出される処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行うことができる。この場合、例えば、有機物を含む汚水、染料を含む汚水等に最適に適用できる。
A工程で処理した一次処理水を第5の攪拌槽に入れて、粉末活性炭を入れて攪拌し、一次処理水の脱臭を行うと共に、残留過酸化水素、残留有機物及び残留懸濁物質の除去処理を行うB工程を有する場合には、処理水の脱臭を行え、汚水に異臭を含むものに適している。
【0020】
そして、B工程で処理された一次処理水を第6の攪拌槽に入れて攪拌し、第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させるC工程と、C工程で処理した一次処理水を第2の分離槽に入れて、凝集物を浮上及び/又は沈降させて排除し、残余水は排水するD工程を有する場合には、更に外部に排出する汚水を清浄化でき、より確実に汚水中に含まれる不純物を除去できる。
【0021】
第2の発明に係る汚水の処理設備は、第1〜第3の攪拌槽、分離槽、第1のサイクロンを有して、第1の発明に係る汚水の処理方法を実施しているので、第1の発明に係る汚水の処理方法と同一の効果を有する。
また、第2のサイクロンを用いて分離槽で沈殿した凝集物(汚泥)から微粒砂を回収する場合も、更に回収した微粒砂の利用が可能となる。
特に、第2の発明に係る汚水の処理設備において、第4〜第6の攪拌槽、第2の分離槽を用いる場合は、第1の発明に係る汚水の処理方法におけるA工程〜D工程を実施でき、前記した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る汚水の処理方法を適用した汚水の処理設備の説明図である。
【図2】従来例に係る汚水の処理方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る汚水の処理設備10は、工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水から汚染物を除去して外部に排出する設備である。
【0024】
この汚水の処理設備10は、汚水を入れた後pH調整剤11を混入して第1の攪拌手段12によって攪拌し、溶解している汚染物質の析出を行う第1の攪拌槽13と、第1の攪拌槽13で処理された汚水に中和剤14を入れると共に、凝集剤15と例えば10〜500μm(好ましくは、20〜200μm、更に好ましくは20〜100μm)の粒度のものが80%以上を占める微粒砂16を投入して、第2の攪拌手段17によって攪拌し、汚水のpHを中性にすると共に、汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる第2の攪拌槽18と、第2の攪拌槽18で処理した凝集物を含む汚水を第3の攪拌手段19で攪拌し、凝集物を肥大化させる第3の攪拌槽20と、第3の攪拌槽20で処理された汚水を入れて生じた凝集物を沈殿させる分離槽21と、分離槽21内の凝集物を含む汚泥水を凝集物と一次処理水に分ける第1のサイクロン22とを有する。
【0025】
そして、第1のサイクロン22で分離した凝集物を一旦汚泥槽23に溜めて、汚泥槽23からポンプ24で汲み上げた凝集物(汚泥)から遠心力を用いて微粒砂を回収する第2のサイクロン(分離機)25が設けられている。以下、これらについて説明する。
【0026】
第1〜第3の攪拌槽13、18、20は処理する汚水の量によって異なるが、トラック等に搭載する場合には、100〜200Lの容量の断面円形のタンクを使用するのが好ましい。第1〜第3の攪拌手段12、17、19はそれぞれ電動モータとその回転軸の先部に設けられた攪拌羽根とを有し、攪拌羽根をタンク内に浸けて使用する市販のものが使用されている。なお、攪拌羽根の回転速度は、100〜1000rpm程度でよい。
【0027】
凝集剤15は無機質系凝集剤として、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、重炭酸ナトリウム等を使用し、有機高分子系凝集剤としては、例えばアルギン酸ナトリウムを使用する。これらは予め混合粉を作り同時に入れてもよいし、別々に入れてもよい。投入量は、汚染水の含有物によって変わるが、通常50〜2000ppmの範囲が好ましい(より好ましくは、80〜1000ppm)。
【0028】
第1の攪拌槽13では、処理しようとする汚水にpH調整剤11を入れて攪拌し、重金属イオン等の含有物を析出させるが、処理しようとする汚水の種類によって、析出物を生じさせるpHが異なるので、pH調整剤も異なる。従って、この実施の形態に係る汚水の処理方法においては、第1の攪拌槽13に汚水を入れる前に、汚水の成分を分析しておくのが好ましい。表1には、第1の攪拌槽13、第2の攪拌槽18、第3の攪拌槽20に投入する薬剤等とその状態を示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、汚水が食品(有機物)、染色(又は顔料)、銅等の重金属、6価クロムを含有する場合、pH調整剤(例えば、塩化第2鉄、水酸化カルシウム、苛性ソーダ、硫酸第1鉄)を入れて第1の攪拌手段12で汚水を攪拌し、pHを調整し溶解している汚染物質を析出させる。析出した物質は水中にコロイド状態となって浮遊(懸濁)する(以上、第1工程)。なお、汚水の攪拌時間は液量にもよるが、5〜10分程度である。
【0031】
以上の工程で処理された汚水を第2の攪拌槽18に入れて、表1に示す中和剤14を入れると共に、凝集剤15と比重が1より大きく10〜500μmの粒度のものが80%以上を占める微粒砂16を投入して攪拌し、汚水のpH(水素イオン濃度)を中性(pH7)にする。中和剤としては、例えば、汚水が酸性の場合はアルカリ剤(例えば、苛性ソーダ、水酸化カルシウム)を、汚水がアルカリ性の場合は酸又は酸性剤(硫酸、塩化第2鉄)を入れる。これによって汚水中の懸濁成分(汚染物質、即ち固体粒及び析出物)が凝集する。この場合、微粒砂も凝集物の中に包含されることになる。この工程においても、汚水の攪拌時間は液量にもよるが、5〜10分程度である(以上、第2工程)。
【0032】
次に、第2の攪拌槽18で処理された凝集物を含む汚水の全部を第3の攪拌槽20に入れて、更に、第3の攪拌手段19で5〜10分間攪拌する。これによって、凝集物は肥大化する(以上、第3工程)。
なお、この実施の形態においては、連続作業を行うために、第1〜第3の攪拌槽13、18、20を別々の槽で形成し、第1〜第3の攪拌手段12、17、19を別々に配置したが、一つの槽で第1〜第3の工程を行うようにすることもでき、設備全体の小型化が可能となる。
【0033】
第3工程で処理された凝集物を含む汚水を、底部が逆円錐形状となって徐々に縮径した分離槽21に入れて10〜20分、攪拌しないで放置する。これによって、凝集物が沈殿して水と凝集物の分離が促進する。(以上、第4工程)。
分離槽21の底部には、排出管27が設けられている。この排出管27の途中にはブロア29の吹出口28が設けられ管路に空気を入れて、上部位置にある第1のサイクロン22に凝集物を含む汚泥水が送られる。第1のサイクロン22では、微粒砂が混入して全体的比重が大きくなった凝集物と水(一次処理水)が分離される(以上、第5工程)。
【0034】
第1のサイクロン22によって分離した凝集物は汚泥となって汚泥槽23に貯留される。そして、汚泥槽23からポンプ24で第2のサイクロン25に送られる。第2のサイクロン25は遠心力によって汚泥から微粒砂を分離し、汚泥と微粒砂に分ける。微粒砂は再度第2工程で使用する微粒砂として使用することができる(以上、第6工程)。
【0035】
ここで、汚泥槽23に溜まった汚泥を脱水し、そのまま廃棄又は埋め立て処分する場合も本発明は適用される。
第1のサイクロン22によって凝集物が分離された一次処理水が、無色、無臭であればそのまま放流するが、色や臭気が残っていれば、処理汚水に含まれる汚染物質を十分に処理できていないため、次の処理を行う。
【0036】
即ち、汚水の処理設備10には、第1のサイクロン22からの一次処理水の処理を行うために、一次処理水に過酸化水素を添加して攪拌し、一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行う第4の攪拌槽31と、第4の攪拌槽31で処理した一次処理水に粉末活性炭を入れて攪拌し、一次処理水の脱臭を行い、残留過酸化水素の除去も行う第5の攪拌槽32と、第5の攪拌槽32で処理した一次処理水に第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させる第6の攪拌槽33と、第6の攪拌槽33で処理した一次処理水を入れて、凝集物を浮上させて排除し、残余水は排水する第2の分離槽34とを有するのが好ましい。
【0037】
そして、第4〜第6の攪拌槽31〜33には、それぞれモータと攪拌羽根を有する攪拌手段36〜38(構造は第1の攪拌手段12と同一)が設けられている。第2の分離槽34は下部が逆円錐状となって、上部には掻取り羽根40とその駆動モータ41からなる浮上物の掻取り手段42が設けられ、掻取られた浮上物(汚泥)を入れる浮上汚泥ピット43に流し込むようになっている。なお、第4〜第6の攪拌槽31〜33は第1〜第3の攪拌槽13、18、20と同一容積となっている。
【0038】
第1のサイクロン22で発生した一次処理水を第4の攪拌槽31に入れて、過酸化水素を一次処理水の0.1〜0.5質量%程度入れて攪拌し、一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行い、浮上物質を浮上させる(以上、A工程)。そして、A工程で処理した一次処理水を第5の攪拌槽32に入れて、粉末活性炭を一次処理水の0.1〜1質量%入れて攪拌し、一次処理水の残留過酸化水素の吸収分解を行うと共に、残留有機物及び残留懸濁物質の吸着処理を行う(以上、B工程)。この後、B工程で処理された一次処理水を第6の攪拌槽33に入れて第2の凝集剤を入れて攪拌し、含まれる浮遊物(残余物)を更に凝集させる(以上、C工程)。
【0039】
C工程で使用する凝集剤としては、第2工程で使用した凝集剤15と同一のものであるのが好ましいが、その他の無機質凝集剤又は有機高分子凝集剤であっても本発明は適用される。一次処理水には粉末活性炭が混入しているので、これが凝集物中に取り込まれる。C工程で処理されて凝集物を含む一次処理水は第2の分離槽34に入れて、沈降汚泥と浮上汚泥に分離され、沈降汚泥はブロア44を用いる汚泥ポンプで引き抜き回収されて排出され、浮上汚泥は掻取り手段(スカムスキマー)42で回収して排出される。分離処理後の水は放流される(以上、D工程)。
【0040】
前記実施の形態においては、具体的数字を用いて本発明を説明したが、攪拌槽や分離槽の大きさ、攪拌手段の構成又は動作等は本発明の要旨を変更しない範囲での数値変更を行ってもよい。
また、処理対象となる汚水も具体的例を用いて説明したが、その他の汚水であっても本発明は適用される。
以上の実施の形態において、凝集剤15及び第2の凝集剤としては、例えば商品名「スーパー・フロックレーション・パウダー」(「株式会社内田水処理E・I」販売)を用いるのが好ましい。ここで、「スーパー・フロックレーション・パウダー」は水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酸化ケイ素を主成分としている。
【符号の説明】
【0041】
10:汚水の処理設備、11:pH調整剤、12:第1の攪拌手段、13:第1の攪拌槽、14:中和剤、15:凝集剤、16:微粒砂、17:第2の攪拌手段、18:第2の攪拌槽、19:第3の攪拌手段、20:第3の攪拌槽、21:分離槽、22:第1のサイクロン、23:汚泥槽、24:ポンプ、25:第2のサイクロン、27:排出管、28:吹出口、29:ブロア、31:第4の攪拌槽、32:第5の攪拌槽、33:第6の攪拌槽、34:第2の分離槽、36〜38:攪拌手段、40:掻取り羽根、41:駆動モータ、42:掻取り手段、43:浮上汚泥ピット、44:ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水の処理方法であって、
前記汚水を第1の攪拌槽に入れてpH調整剤を混入して攪拌し、溶解している前記汚染物質の析出を行う第1工程と、
前記第1工程で処理された汚水を第2の攪拌槽に入れて、pHが中性となった該汚水に、凝集剤と比重が1より大きい微粒砂を投入して攪拌し、該汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる第2工程と、
前記第2工程で処理した凝集物を含む汚水を第3の攪拌槽に入れて攪拌し、該凝集物を肥大化させる第3工程と、
前記第3工程で処理された汚水を、分離槽に入れて更に前記凝集物を沈殿させる第4工程と、
前記第4工程で発生した凝集物を含む汚泥水を送る管路に空気を入れて上位置にある第1のサイクロンに搬送し、該第1のサイクロンによって前記汚泥水を前記凝集物と一次処理水に分ける第5工程とを有することを特徴とする汚水の処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の汚水の処理方法において、前記第5工程で処理された凝集物を一旦汚泥槽に溜めて、ポンプで第2のサイクロンに搬送し、該第2のサイクロンで前記微粒砂を前記凝集物の汚泥から回収する第6工程とを有することを特徴とする汚水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の汚水の処理方法において、前記第2工程で使用する凝集剤には、水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムの粉末を含み、更にアルギン酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムを含むことを特徴とする汚水の処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1記載の汚水の処理方法において、前記第2工程で処理される汚水がアルカリ性又は酸性である場合には、前記第2の攪拌槽に中和剤も合わせて入れることを特徴とする汚水の処理方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1記載の汚水の処理方法において、前記第5工程で発生する一次処理水を第4の攪拌槽に入れて、過酸化水素を添加して攪拌し、該一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行うA工程と、
前記A工程で処理した一次処理水を第5の攪拌槽に入れて、粉末活性炭を入れて攪拌し、残留過酸化水素の除去を行うと共に該一次処理水の残留有機物及び残留懸濁物質の処理を行うB工程と、
前記B工程で処理された一次処理水を第6の攪拌槽に入れて攪拌し、第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させるC工程と、
前記C工程で処理した一次処理水を第2の分離槽に入れて、凝集物を浮上及び/又は沈降させて排除し、残余水は放流するD工程とを有することを特徴とする汚水の処理方法。
【請求項6】
工事汚濁水、重金属含有水、有機廃水、酸化剤若しくは還元剤を含む排水、又は溜め池水であって汚染物質を含む汚水の処理設備であって、
投入された前記汚水にpH調整剤を混入して第1の攪拌手段によって攪拌し、溶解している前記汚染物質の析出を行う第1の攪拌槽と、
前記第1の攪拌槽で処理されて、pHが中性となった汚水に、凝集剤と微粒砂を投入して、第2の攪拌手段によって攪拌し、該汚水中に含まれる固体粒及び析出物を凝集させる第2の攪拌槽と、
前記第2の攪拌槽で処理した凝集物を含む汚水を第3の攪拌手段で攪拌し、該凝集物を肥大化させる第3の攪拌槽と、
前記第3の攪拌槽で処理された汚水中の前記凝集物を沈殿させる分離槽と、
前記分離槽で沈殿した凝集物を含む汚泥水を前記凝集物と一次処理水に分ける第1のサイクロンとを有することを特徴とする汚水の処理設備。
【請求項7】
請求項6記載の汚水の処理設備において、前記第1のサイクロンで分離した前記凝集物から遠心力を用いて前記微粒砂を回収する第2のサイクロンを更に有することを特徴とする汚水の処理設備。
【請求項8】
請求項6又は7記載の汚水の処理設備において、前記第1のサイクロンで前記凝集物を除いた残りの一次処理水に過酸化水素を添加して攪拌し、該一次処理水の殺菌、脱臭及び脱色を行う第4の攪拌槽と、
前記第4の攪拌槽で処理した一次処理水に粉末活性炭を入れて攪拌し、残余過酸化水素を除去すると共に、該一次処理水の脱臭を行う第5の攪拌槽と、
前記第5の攪拌槽で処理した一次処理水に第2の凝集剤を入れて残余物を凝集させる第6の攪拌槽と、
前記第6の攪拌槽で処理した一次処理水を入れて、凝集物を浮上及び/又は沈降させて排除し、残余水は排水する第2の分離槽とを有することを特徴とする汚水の処理設備。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−24737(P2012−24737A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168416(P2010−168416)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(510205032)株式会社内田水処理E・I (1)
【Fターム(参考)】