説明

汚泥の炭化処理設備

【課題】脱水汚泥に対する乾燥効率を高めて乾燥に要する熱エネルギーを節減できるとともに設備を小型化でき、また乾燥汚泥を所望の適正な含水率に容易に制御することのできる汚泥の炭化処理設備を提供する。
【解決手段】脱水汚泥を乾燥処理後、炭化炉10にて炭化処理する汚泥の炭化処理設備において、炭化炉10からの排ガスを乾燥用の熱源として乾燥機54に供給するようになす。また乾燥機54として、脱水汚泥の一部と予め生成させた脱水汚泥の乾燥粉との混合物を破砕して破砕物に熱風を吹き付け、熱風の気流により破砕物を搬送するとともに乾燥して乾燥粉となす気流式乾燥機を用い、サイクロン分離機72で乾燥粉を分離して取り出す。そして乾燥粉の一部に脱水汚泥の残りの一部を加えて混合し、炭化処理に適した乾燥汚泥としてこれを炭化炉10に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は有機物含有汚泥を炭化処理する汚泥の炭化処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭等から排出される有機物含有の排水は、一般に下水処理設備で活性汚泥法等により排水処理される。
この排水処理に伴って余剰の有機物含有の下水汚泥が発生するが、排水処理量の増加とともに下水汚泥の発生量も年々増加し、その処理処分が大きな問題となっている。
下水汚泥を処分するに際し、その下水汚泥には多量の水が含有されていてそのままでは処分できず、そこで減量化のために濃縮及び脱水処理したり、或いは更に焼却したり、溶融したりするなど様々な処理が現在施されている。
【0003】
しかしながら下水汚泥を焼却或いは溶融処理すると多量のエネルギーを消費し、処理コストが高いものとなる。
そこでエネルギー消費の少ない下水汚泥の処理の方法の一つとして、下水汚泥を乾留処理により炭化することが提案されている。
この炭化処理は、下水汚泥が基質中に炭素分を45質量%程度含んでいることから、焼却,溶融処理のように汚泥中の炭素分を消費してしまうのでなく、汚泥を無酸素或いは低酸素状態で熱分解(炭化)することにより炭素分を残留させ、新しい組成を持つ炭化物(炭化製品)として生成させるものである。
【0004】
従来にあって、この炭化処理は下水処理設備で発生した余剰の下水汚泥を高分子凝集剤の添加等により凝集させ、続いてこれを脱水機にかけて脱水し、含水率75〜85%程度(通常は80%程度)の脱水汚泥とする。
その後この脱水汚泥を乾燥機内部に投入して、そこで含水率25〜45%程度(通常は40%程度)まで乾燥する。
この乾燥処理では、汚泥の乾燥を行うとともに、これをその後の炭化処理に適した適正粒度、例えば10mm程度の大きさの団子状の粒とする造粒を併せて行う。
そしてこのようにして得た乾燥汚泥を炭化炉内に投入し、これを炭化炉内で乾留処理して汚泥を炭化製品とし、炭化炉から排出する。
【0005】
図3はこの炭化処理を行うための従来の炭化処理設備の具体的構成を示している。
図中200は熱風発生炉で、脱水汚泥を乾燥するための熱源となる熱風がここで発生せしめられる。
201は受入ホッパであり、含水率80%程度まで脱水された脱水汚泥が、この受入ホッパ200に先ず受け入れられる。
ここに受け入れられた脱水汚泥は、中継ホッパ202を経て定量供給装置204,搬送装置205により造粒機を兼ねた乾燥機206へと送られ、ここで所定の含水率、具体的には40%程度の含水率まで乾燥処理されるとともに、粒径10mm程度の団子状の粒に造粒される。
【0006】
乾燥機206は、図4に示しているように回転ドラム208の内部に撹拌軸210を有している。ここで撹拌軸210は、回転ドラム208の中心から偏心した位置に設けられている。
この撹拌軸210からは複数の撹拌羽根212が放射状に延び出している。
一方、回転ドラム208の内周面には、周方向に所定間隔で複数の板状のリフター214が回転ドラム208と一体回転する状態で設けられている。
その結果として、回転ドラム208内部の汚泥(脱水汚泥)は回転ドラム208の回転に伴って、リフター214により底部から上方に持ち上げられ、そしてその頂部近くで自重により落下する。
落下した汚泥は、その下側に位置する撹拌羽根212の高速回転により細かく砕かれ、回転ドラム208の底部側へと落下する。
【0007】
回転ドラム208内部の汚泥はこのような撹拌作用を受けながら、図3の熱風発生炉200から乾燥機206の内部に導かれた熱風に曝されて乾燥処理され、次第に水分が減少していく。
そしてこの回転ドラム208の傾斜勾配により、更には撹拌羽根212による破砕及びその際の飛散作用によって、汚泥が回転ドラム208内部を適正な粒度に造粒されながら軸方向に漸次送られて行く。
このようにして乾燥機206で乾燥及び造粒処理された後の乾燥汚泥は、続いて搬送装置216,220により中継ホッパ218を経て炭化炉222へと搬送され、そこで10mm程度の適正な粒度に造粒された含水率40%程度の団子状の乾燥汚泥が乾留処理により炭化される。
【0008】
この炭化炉222は外熱式ロータリーキルン型のもので、この炭化炉222には、図5にも示しているように炉体224の内部に乾留容器としての円筒形状のレトルト226が設けられており、前段の乾燥機206で乾燥及び造粒処理された乾燥汚泥が、図示を省略するスクリューフィーダにてレトルト226内部に投入される。
【0009】
投入された乾燥汚泥は、先ず炉体224内部に配設された助燃バーナ(外熱室用バーナ)228による外熱室230内部の雰囲気加熱によって加熱される。
すると乾燥汚泥中に含まれていた可燃ガスが、レトルト226に設けられた吹出パイプ232を通じて外熱室230の雰囲気中に抜け出し、そしてこの可燃ガスが着火して以後はその可燃ガスの燃焼によりレトルト226内部の汚泥の加熱が行われる。
この段階で助燃バーナ228は燃焼停止される。
【0010】
図5に示しているように、炉体224の内部には外熱室230と仕切られた排ガス処理室234が設けられており、外熱室230からの排ガスはここに導かれる。
この排ガス処理室234には排ガス処理室用バーナ236が設けられており、排ガス処理室234内に導かれた排ガス中の未燃ガスが、この排ガス処理室用バーナ236にて2次燃焼される。
【0011】
レトルト226内部の汚泥は、図中左端からレトルト226の回転とともに図中右方向に移って行き(レトルト226には若干の勾配が設けてある)、そして最終的に乾留残渣(炭化製品)がレトルト226の図中右端の出口238、つまり炭化炉222から排出される。
一方炭化炉222から排出された排ガスは、図3に示しているように熱交換器を経て煙突から大気に放出される。
この種の汚泥の炭化処理設備は、例えば下記特許文献1,特許文献2に開示されている。
【0012】
しかしながら図3に示す従来の汚泥の炭化処理設備の場合、乾燥機206での乾燥用の熱風を発生させるための熱風発生炉200を設置しておくことが必要で、その設置のための費用が高くなり、また熱風発生炉200の設置によって設備が必然的に大型化してしまい、更に熱風発生炉200における熱風の発生により設備のランニングコストが高くなる問題が生じていた。
【0013】
また乾燥機206は、含水率80%程度の高含水の汚泥を全量そこに投入してこれを乾燥するものであり、しかもこの乾燥機206は脱水汚泥を10mm程度の大きさの団子状の粒に造粒する造粒機も兼ねており、脱水汚泥と熱風との接触面積が小さいことが相俟って乾燥に長時間(約30分程度)を要し、このために熱効率が悪く、熱エネルギーを多く消費する問題があり、このこともまた設備のランニングコストを高める要因となっていた。
【0014】
加えてこの乾燥機206は、回転ドラム208とその駆動装置,撹拌羽根212とその駆動装置,リフター214等を有する大型で且つ構造が複雑なもので設備費が高くなる問題がある他、乾燥機206から排出される乾燥汚泥を後の炭化炉222での炭化に適した含水率40%程度に含水率制御することが難しいといった問題が生じていた。
【0015】
一方下記特許文献3には、熱風発生炉200を設置するのに代えて、炭化炉222からの排ガスを乾燥機206に導いて乾燥機206での乾燥用の熱源として用いる点が開示されている。
この特許文献3に開示のものによれば、熱風発生炉200の設置を不要化でき、従って熱風発生炉200に要する設備コストを削減することができるとともに、熱風発生炉200の省略によって設備全体を小型化でき、併せて熱風発生炉200での熱風発生によるランニングコストを低減することが可能となる。
【0016】
しかしながらこの特許文献3に開示のものでは、脱水汚泥の乾燥用として上記の乾燥機206を用いており、従って乾燥機206による乾燥に起因して生ずる上記の問題、即ち乾燥に長時間を要し、その間に多量の熱エネルギーを消費してしまい、また乾燥機206が大型且つ構造複雑であるために乾燥機206に要する設備コストが高価となり、更に乾燥機206による脱水汚泥の乾燥に際し、乾燥汚泥の含水率を後工程の炭化炉での炭化処理に必要且つ適正な含水率に制御することが難しいとといった問題点が依然として残っている。
【0017】
【特許文献1】特開平11−37644号公報
【特許文献2】特開平11−33599号公報
【特許文献3】特開平11−37645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明はこのような事情を背景とし、乾燥機を含む全体の設備を小型化でき且つ設備コストを低減することができるとともに、脱水汚泥に対する乾燥効率を高めて乾燥に要する熱エネルギーを節減でき、また乾燥汚泥を所望の適正な水分率に容易に制御することのできる汚泥の炭化処理設備を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
而して請求項1のものは、有機物含有汚泥を脱水処理した後の脱水汚泥を乾燥機に通して乾燥処理し、乾燥汚泥を炭化炉に通して炭化処理し、炭化製品とする汚泥の炭化処理設備において、前記炭化炉からの排ガスを乾燥用の熱源とし、該排ガスを前記乾燥機に熱風として供給するようになすとともに、該乾燥機として、前記脱水汚泥の一部に該脱水汚泥の乾燥粉を加えた混合物を破砕して破砕物に前記熱風を吹き付け、該熱風の気流により該破砕物を搬送するとともに乾燥して前記乾燥粉となし、気流とともに排出する気流式乾燥機を用い、更に、(イ)前記脱水汚泥の一部と前記乾燥粉とを混合し、前記乾燥機への供給用の前記混合物を生成する第1混合手段と、(ロ)該乾燥機から排出された前記乾燥粉を前記気流から分離する分離機と、(ハ)該分離機からの前記乾燥粉の一部を前記乾燥機への供給用に、残りの一部を前記炭化炉への供給用に分ける分配手段と、(ニ)該炭化炉への供給用に分けられた前記乾燥粉の残りの一部に前記脱水汚泥の残りの一部を加えて混合し、前記炭化炉への供給用の乾燥汚泥となす第2混合手段と、を設け、該第2混合手段による混合後の前記乾燥汚泥を前記炭化炉に通して炭化処理するようになしたことを特徴とする。
【0020】
請求項2のものは、請求項1において、前記分離機がサイクロン分離機であることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0021】
以上のように本発明は、炭化炉からの排ガスの熱風を乾燥用の熱源として乾燥機に供給するとともに、かかる乾燥機として、脱水汚泥の一部に予め生成させた脱水汚泥の乾燥粉を加えた混合物を破砕して破砕物に炭化炉からの排ガスの熱風を吹付け、熱風の気流により破砕物を搬送するとともに乾燥して乾燥粉となし、これを気流とともに排出する気流式乾燥機を用いるようになしたものである。
【0022】
この発明では、更に、脱水汚泥の一部に上記乾燥粉を混合して乾燥機への供給用の混合物を生成する第1混合手段と、乾燥機からの乾燥粉を気流から分離する分離機と、分離機からの乾燥粉の一部を乾燥機への供給用に、残りの一部を炭化炉への供給用に分配する分配手段と、炭化炉への供給用の乾燥粉の残りの一部に脱水汚泥の残りの一部を加えて混合し、炭化炉への供給用の乾燥汚泥となす第2混合手段と、を設けたものである。
【0023】
要するに本発明の汚泥の炭化処理設備では、脱水汚泥の全量を乾燥機に投入せず、その一部を予め生成させてある脱水汚泥の乾燥粉とともに混合物として乾燥機に投入する。
ここで脱水汚泥の含水率は前述したように80%程度である。一方乾燥粉はその含水率が10%〜20%程度(通常15%以下程度)である。
【0024】
従って乾燥機に投入される混合物は、脱水汚泥に較べて含水率の低いものである。
このときの脱水汚泥と乾燥粉との混合の比率は、混合物の含水率が乾燥機による乾燥に適した含水率となるように調節する。
【0025】
本発明で用いる気流式乾燥機は、その混合物を破砕した上で破砕物に対し炭化炉からの熱風(排ガス)を吹き付けて気流搬送し、同時にこれを乾燥して乾燥粉となし、気流とともに外部に排出する。
乾燥のための所要時間は秒単位であり、ほぼ一瞬の極めて短時間で混合物を乾燥処理することが可能である。
【0026】
乾燥機から排出された乾燥粉は、分離機により外部に流出する気流から分離され、そしてその一部が再び乾燥機への供給用に分けられて、新たに送られて来た脱水汚泥の一部とともに混合され、乾燥機に再供給される。
即ちこの発明では、脱水汚泥の乾燥粉が乾燥機と分離機とを通る循環路を循環移動せしめられる。この循環移動は、上記のように乾燥機に投入される脱水汚泥の含水率を、乾燥に適した含水率とするための含水率調整の意味を有している。
【0027】
そして分離機からの乾燥粉のうち、残りの一部が本来の炭化処理用に炭化炉へと供給される。
但し脱水汚泥を乾燥粉とした状態のまま、これを炭化炉に供給すると、炭化炉での炭化処理を良好に行うことができない。
そこで本発明では、炭化炉への供給用の乾燥粉に対し脱水汚泥の残りの一部を混合することによって、炭化炉での炭化処理に適した40%程度の含水率に水分調整し、且つ炭化炉での処理に適した、大きさが10mm程度の団子状の粒となして乾燥汚泥とする。
【0028】
つまり、従来乾燥機から炭化炉に供給される乾燥汚泥とほぼ同様の性状に乾燥汚泥の含水率と粒の大きさを調節する。
そしてその上でこれを炭化炉に通してそこで炭化処理し、最終的に炭化製品となすものである。
【0029】
かかる本発明では、乾燥機での乾燥を極めて短時間の内に行うことができる。
この効果は、炭化炉での処理に適した大きさの粒に造粒する造粒機としての働きを乾燥機に持たせず、純粋に乾燥のための機能だけを持たせるようにし、これに応じて乾燥機では脱水汚泥よりも含水率を少なくした混合物を細かく破砕し、熱風吹付けと熱風による気流搬送で微細な乾燥粉となるまで乾燥するようになしたことによりもたらされる効果である。
【0030】
従って本発明では、乾燥機による乾燥を従来に較べて極めて短時間のうちに高効率で行うことができ、炭化炉からの排ガスを熱源として用いることと併せて乾燥機での所要熱エネルギーを大幅に節減することができる。
【0031】
一方で本発明では、このようにして乾燥粉としたものを、その後に改めて脱水汚泥と混合し、炭化炉への供給用として適正な含水率及び適正な大きさの粒の乾燥汚泥となし、炭化炉へと供給する。
従って脱水汚泥を一旦乾燥粉としているにも拘わらず、後の炭化工程で良好にこれを炭化処理することができる。
【0032】
かかる本発明では、熱風発生炉の省略によってその設置のための費用を節減できるとともに、熱風発生炉の設置の省略により設備全体を小型化することができる。
また乾燥機での乾燥のための所要熱エネルギーを少なくでき、ランニングコストを従来に増して低減することができる。
【0033】
加えて本発明で用いる乾燥機は構造が簡単で且つこれを小型化でき、このことによっても設備全体の小型化及び低コストを実現することができる。
【0034】
更に本発明では、乾燥粉と脱水汚泥とを混合して炭化炉への供給用の乾燥汚泥となす際、それらの混合の比率を単に変えるだけで、簡単に乾燥汚泥の含水率を適正な含水率に調節することができる。
【0035】
本発明では、上記分離機としてサイクロン分離機を用いることができ(請求項2)、この場合乾燥機から流出する気流から乾燥粉を簡単に且つ効率高く分離し、回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は外熱式ロータリキルン型の炭化炉で、その構造及び働きは図5に示したものと同様である。
即ちこの炭化炉10は、炉体12の内部に乾留容器としての円筒形状のレトルト14を有しており、このレトルト14の図中左端側の内部に、含水率が40%程度に調節された乾燥汚泥が投入される。
投入された乾燥汚泥は、先ず炉体12内部に配設された助燃バーナ16による外熱室18内部の雰囲気加熱によって加熱される。
すると乾燥汚泥中に含まれていた可燃ガスが、レトルト14に設けられた吹出パイプ20を通じて外熱室18の雰囲気中に抜け出し、そしてこの可燃ガスが着火して以後はその可燃ガスの燃焼によりレトルト14内部の汚泥の加熱が行われる。
この段階で助燃バーナ16は燃焼停止される。
【0037】
炉体12の内部には、外熱室18と仕切られた排ガス処理室24が設けられており、外熱室18からの排ガスがここに導かれる。
排ガス処理室24には排ガス処理室用バーナ26が設けられており、排ガス処理室24内に導かれた排ガス中の未燃ガスが、この排ガス処理室用バーナ26にて2次燃焼される。
【0038】
排ガス処理室24内の排ガスは、続いて排気口28から排出される。
この実施形態では、排気口28から排出された炭化炉10からの排ガスが排ガス供給路30を通じて後述の乾燥機54に、乾燥用の熱源(熱風)として供給される。
【0039】
一方レトルト14内部の汚泥は、図中左端からレトルト14の回転とともに図中右方向に移って行き(レトルト14には若干の勾配が設けてある)、そして最終的に乾留残渣(炭化製品)がレトルト14の図中右端の出口、つまり炭化炉10から排出される。
【0040】
32は受入ホッパであり、含水率80%程度まで脱水された脱水汚泥がこの受入ホッパ200に先ず受け入れられる。
ここに受け入れられた脱水汚泥は、その一部(ここでは全体の85%程度)が中継ホッパ34を経て定量供給装置36,搬送装置38により混合機(第1混合機)40に送られる。
【0041】
この混合機40にはまた、予め脱水汚泥を乾燥して成る乾燥粉が、後述のサイクロン分離機72から供給される。
そして混合機40に供給された脱水汚泥の一部と、サイクロン分離機72から供給された乾燥粉の一部とがこの混合機40で互いに混合される。
【0042】
混合機40はパドルミキサーから成るものであって、ケーシング42の内部に一対の回転軸44,46(図2(B)参照)が設けられていて、それぞれにミキシング羽根48,50が放射状に固設されており、それら回転軸44,46が互いに逆向きに回転することで、脱水汚泥と乾燥粉とをミキシング羽根48,50の重なり部分でこねるようにして混合し、更に回転軸44,46に対しそれぞれ傾斜形状をなすミキシング羽根48,50の送り作用で軸方向に送り、その過程で脱水汚泥と乾燥粉との混合を進めていく。
【0043】
ここで回転軸44と46とは不等速で回転する。従ってミキシング羽根48と50との間には周速に差があり、その周速の差に基づいて脱水汚泥と乾燥粉とを高効率でこね合せ混合作用する。
そして軸方向端部の出口から、十分に混合した脱水汚泥と乾燥粉との混合物を排出する。排出された混合物はフィーダ52にて乾燥機54内部に供給される。
【0044】
乾燥機54は気流式乾燥機であって、上下に縦長の円筒形状をなすケーシング56を有している。
このケーシング56の内部且つ下部には、図2(A)に示しているように破砕部58が設けられている。
破砕部58は一対の回転軸60,62と、それぞれ放射状に固設された破砕羽根64,66を有しており、それらが高速回転することによって、フィーダ52にて乾燥機54のケーシング56内部に供給された上記の混合物、即ち脱水汚泥と乾燥粉との混合物を細かく破砕する。
【0045】
ケーシング56にはまた吹込口68が設けられており、上記炭化路12からの排ガスが、この吹込口68からケーシング56内部に熱風(熱風の温度はここでは約300℃)として吹き込まれる。
吹き込まれた熱風は、脱水汚泥と乾燥粉との混合物の破砕物に対し勢い良く吹き付けられ、かかる破砕物が熱風の上向きの気流によりケーシング56内部を上方に搬送され、そしてその過程で混合物に対する乾燥が行われる。
【0046】
ケーシング56内部を熱風の気流とともに搬送される混合物の破砕粒子はその上昇端で乾燥粉となり、排出口70から気流とともに外部に排出されて、サイクロン分離機72へと供給される。
尚このとき排出される気流(排ガス)の温度は、ここでは約100℃程度である。
【0047】
本実施形態において、この乾燥機54による乾燥のための所要時間は約1秒程度である。
また乾燥粉の粒度は75〜590μmの範囲で、その平均粒度は350μmである。但しこれは篩にかけた後の粒度であって、その篩の目開きは最小75μm,最大590μmである。
【0048】
この乾燥機54では、熱風量20m/分(乾燥機54の排出口70における流速3.5m/秒に相当)のとき、800μmまでの大きさの粉体粒子の輸送が可能である(但しその比重を1と仮定した場合)。
【0049】
サイクロン式分離機72は、乾燥粉を気流とともに内部に流入させ、そして回転に基づく遠心力で乾燥粉を気流から分離する。
そして分離された乾燥粉が図中下向きに落下せしめられて、その一部が再び混合機40へと供給される。
【0050】
この乾燥粉は、脱水汚泥の含水率が80%程度であるのに対し、含水率が15%程度ないしそれ以下の低含水率のものであり、脱水汚泥に対しかかる乾燥粉が混合されることで、混合物の含水率が乾燥機54での乾燥に適した低含水率とされる。
このときの混合物における含水率の調節は、脱水汚泥と乾燥粉との混合の比率によって簡単に調節することができる。
【0051】
この実施形態では、サイクロン72で分離された乾燥粉のうちの一部だけが乾燥機54へと供給され、残りの一部が炭化炉10による炭化処理用として混合機(第2混合機)42へと供給される。
即ちサイクロン分離機72からの乾燥粉が乾燥機54側と炭化炉10側とに分配される。
【0052】
その分配は乾燥粉の供給路上に設けられた分配ダンパ75にて行われる。
従ってここでは分配ダンパ75が、サイクロン分離機72からの乾燥粉を乾燥機54側と炭化炉10側とに分配する分配手段を構成している。
【0053】
この混合機78にはまた、受入ホッパ32内の脱水汚泥の残りの一部(ここでは全体の15%程度)が、搬送装置79により乾燥機54をバイパスして供給される。
この混合機78もまたパドルミキサーから成るものであって、その構造は基本的に混合機40と同様であり、一対の回転軸44,46と、それらに固設されたミキシング羽根48,50を有しており、それらの回転によって乾燥粉と搬送装置79にて搬送されてきた脱水汚泥とを混合する。
【0054】
この混合機78は次のような意味を有する。
即ち乾燥機54で乾燥された後の乾燥粉は、そのままでは炭化炉10における炭化処理用として適したものではなく、直接にこれを炭化炉10へと供給することはできない。
【0055】
そこで混合機78において、乾燥粉に含水率80%程度の脱水汚泥を加えてそれらを混合し、含水率40%程度且つ大きさが10mm程度の団子状の粒から成る乾燥汚泥をそこで形成する。そして造粒後の乾燥汚泥を中継ホッパ80を経て搬送装置82により炭化炉10へと供給する。
その後の乾燥汚泥の炭化処理については先に述べた通りである。
【0056】
上記サイクロン分離機72で乾燥粉から分離された気流(排ガス)は、排ガスファン86の送出作用によりバグフィルター84を通過してそこで集塵が行われた後、脱臭装置(ここでは触媒脱臭装置)88を通って煙突90から大気に放出される。
【0057】
この触媒脱臭装置88は、炭化炉10からの排ガスが臭気を伴っていることから、その臭気を取り除くために設けられているものである。
尚、触媒脱臭による脱臭を効率的に行うためには排ガスを加熱する必要がある。サイクロン分離機72から排出された排ガスの温度は300℃に満たない低い温度であり、そこでこれを加熱し、300℃程度の温度まで昇温させた上で触媒脱臭による脱臭を行う。
【0058】
図中92はその熱源を発生させるための灯油タンクで、この灯油タンク92から供給された灯油を燃焼させて、脱臭装置88で排ガスの加熱を行う。
尚この灯油タンク92の灯油は炭化炉10での燃焼用としても供給される。
【0059】
以上のような本実施形態の汚泥の炭化処理設備では、熱風発生炉の省略によってその設置のための費用を節減できるとともに、熱風発生炉の設置の省略により設備全体を小型化することができる。
また乾燥機54での乾燥のための所要熱エネルギーを少なくでき、ランニングコストを従来に増して低減することができる。
【0060】
また本実施形態で用いる乾燥機54は構造が簡単で小型化であり、これによっても設備全体の小型化及び低コスト化を実現することができる。
更に本実施形態では、乾燥粉と脱水汚泥とを混合して炭化炉10への供給用の乾燥汚泥となす際、それらの混合の比率を単に変えるだけで簡単に乾燥汚泥の含水率を適正な含水率に調節することができる。
【0061】
本実施形態では、乾燥粉の分離用としてサイクロン分離機72を用いており、乾燥機54から流出する気流から乾燥粉を簡単に且つ効率高く分離し、回収することができる。
【0062】
以上本発明の実施形態を詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態の汚泥の炭化処理設備を示した図である。
【図2】図1における乾燥機とその周辺部の拡大図及び図1における混合機の要部の拡大図である。
【図3】従来の汚泥の炭化処理設備の一例を示す図である。
【図4】図3における乾燥機の構成を示す図である。
【図5】図3における炭化炉を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 炭化炉
40 混合機(第1混合手段)
54 乾燥機
72 サイクロン分離機
74,76 ロータリバルブ
78 混合機(第2混合手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有汚泥を脱水処理した後の脱水汚泥を乾燥機に通して乾燥処理し、乾燥汚泥を炭化炉に通して炭化処理し、炭化製品とする汚泥の炭化処理設備において
前記炭化炉からの排ガスを乾燥用の熱源とし、該排ガスを前記乾燥機に熱風として供給するようになすとともに
該乾燥機として、前記脱水汚泥の一部に該脱水汚泥の乾燥粉を加えた混合物を破砕して破砕物に前記熱風を吹き付け、該熱風の気流により該破砕物を搬送するとともに乾燥して前記乾燥粉となし、気流とともに排出する気流式乾燥機を用い
更に
(イ)前記脱水汚泥の一部と前記乾燥粉とを混合し、前記乾燥機への供給用の前記混合物を生成する第1混合手段と
(ロ)該乾燥機から排出された前記乾燥粉を前記気流から分離する分離機と
(ハ)該分離機からの前記乾燥粉の一部を前記乾燥機への供給用に、残りの一部を前記炭化炉への供給用に分ける分配手段と
(ニ)該炭化炉への供給用に分けられた前記乾燥粉の残りの一部に前記脱水汚泥の残りの一部を加えて混合し、前記炭化炉への供給用の乾燥汚泥となす第2混合手段と
を設け、該第2混合手段による混合後の前記乾燥汚泥を前記炭化炉に通して炭化処理するようになしたことを特徴とする汚泥の炭化処理設備。
【請求項2】
請求項1において、前記分離機がサイクロン分離機であることを特徴とする汚泥の炭化処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−238129(P2008−238129A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−85938(P2007−85938)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000230571)日本下水道事業団 (46)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】