説明

油中水型乳化化粧料

【課題】なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽくならず、しかも、塗布後、化粧のりの良好な化粧膜を形成し、仕上げ化粧料を重ねづけした際、自然で美しい化粧仕上がりになる化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)〜(F):
(A)架橋型メチルポリシロキサンである(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.005〜10質量%、
(B)数平均分子量が1000〜3000であるポリエチレングリコール 0.1〜10質量%、
(C)タルク、シリカ、セリサイト、マイカ及びガラスから選ばれる板状粉体の表面を疎水化処理した板状粉体0.1〜20質量%、
(D)疎水性有機球状粉体 0.1〜20質量%、
(E)25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油 5〜80質量%、
(F)水
を含有する油中水型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、「化粧のりが良い」とは、ファンデーションなどの仕上げ化粧料に含まれる顔料等の粉体やポリマー等の皮膜剤が、肌表面にムラなく均一に付着して、美しい仕上がりになることを言う。しかし、塗布時に、肌上で仕上げ化粧料ののびが悪かったり、肌荒れなどが原因で、肌表面に凹凸が生じると、化粧料中の粉体が肌上で凝集したりムラづきを起し、化粧料本来の仕上がりが得られない。
【0003】
そこで、通常、一般消費者は、ファンデーションやおしろいなどの仕上げ化粧料をより美しく仕上げるために、事前に、化粧水、乳液、クリームなどのスキンケア化粧料や、化粧下地効果のある紫外線防止化粧料、仕上げ化粧料専用のベース化粧料(化粧下地)などを使用し、肌状態を整えてから仕上げ化粧料を塗布する工夫をしている。
しかし、一般的な乳液やクリームなどのスキンケア用化粧料や紫外線防止化粧料は、化粧の仕上がりにまで考慮した製品設計にはなっておらず、また、ファンデーション専用の化粧下地では、肌色補正やファンデーションの良好な化粧のりをうたったものがあるが、肌状態が悪化すると化粧のりが悪くなってしまい、その効果は未だ不十分であった。
【0004】
従来の化粧のりを良くする技術として、高重合シリコーンや水溶性高分子などの成分を化粧料に添加した化粧料(特許文献1〜4参照)や、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を含有する化粧料(特許文献5〜7参照)などが検討されている。
しかしながら、このような化粧料では、含有される粉体の肌への密着性が低いため、化粧のりや化粧仕上がりにおいて十分に満足できるものではなかった。また、経時でも肌がかさついたり粉っぽくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−130654号公報
【特許文献2】特開2001−172123号公報
【特許文献3】特開2004−339130号公報
【特許文献4】特開2004−346046号公報
【特許文献5】特開平1−190757号公報
【特許文献6】特開平1−250306号公報
【特許文献7】特開平3−115207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽくならず、しかも、塗布後、化粧のりの良好な化粧膜を形成し、仕上げ化粧料を重ねづけした際、自然で美しい化粧仕上がりになる化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、架橋型メチルポリシロキサンである(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、特定の分子量のポリエチレングリコール、特定の疎水性板状粉体、疎水性有機球状粉体及び低粘度シリコーン油を、特定の割合で組み合わせた油中水型乳化化粧料が、優れた使用感を有し、かさついたり粉っぽい感触になることがなく、肌上で粉体の凝集がみられず均一に塗布された状態を保つことができ、かつ、化粧のりの良好な化粧膜を形成できるので、続けて仕上げ化粧料を塗布することで、化粧のりの良い美しい化粧仕上がりを提供できることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)〜(F):
(A)架橋型メチルポリシロキサンである(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.005〜10質量%、
(B)数平均分子量が1000〜3000であるポリエチレングリコール 0.1〜10質量%、
(C)タルク、シリカ、セリサイト、マイカ及びガラスから選ばれる板状粉体の表面を疎水化処理した板状粉体0.1〜20質量%、
(D)疎水性有機球状粉体 0.1〜20質量%、
(E)25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油 5〜80質量%、
(F)水
を含有する油中水型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の油中水型乳化化粧料は、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽい感触になることがなく、さらに他の粉体を含有した際も経時でも肌上で粉体の凝集がみられず均一に塗布された状態を保つことができる。例えば、本発明の化粧料に紫外線防御粉体を配合する場合、高い紫外線防御効果と優れた効果持続性が得られる。さらに、仕上げ化粧料を塗布する前にあらかじめ本発明の化粧料を肌に塗布しておけば、仕上げ化粧料の化粧のりが良く、自然で美しい化粧仕上がりを得ることができる。ここでいう仕上げ化粧料とは、リキッドファンデーション、パウダーファンデーション、クリームファンデーション、おしろい(フェイスパウダー)などのような、肌の色調を調整し、色ムラや凹凸を目立たなく仕上げ、肌を美しくきれいに見せることのできるメイクアップ化粧料のことである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔成分(A)〕
成分(A)の架橋型メチルポリシロキサンである(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー(INCI名)は、既知の化合物であり、常法に従って製造することができる。例えば、ジメトキシジメチルシロキサンとビニルジメチルメトキシシロキサンを脱アルコール縮合させた後、アゾビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤を用いて、付加重合させることにより製造することができる。
成分(A)は、一般的には、低粘度シリコーン油と混合して膨潤させてペースト状になったものを用いるのが、本発明の効果をより十分に発揮することができる。具体的には、後述する成分(E)の25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油との混合物として使用するのが好ましい。
【0011】
成分(A)としては、例えば、KSG−15、KSG−16、KSG−1610(信越化学工業社);9546 Silicone Elastomer Blend(東レ・ダウコーニング社);SFE−839(GE Silicones社);SUNGEL C7、SUNGEL CD20、SUNGEL D20、SUNGEL CP20、DC 1−9852(SUNJIN社);CHEMSIL K−61、CHEMSIL K−51(Thornley Company);Lotioncrafter EL51、Lotioncrafter EL61(Lotioncrafter社)等の市販品を用いることができる。
中でも、KSG−15、KSG−16が、肌へののびとなじみが良く、疎水性粉体の分散が良好である点で好ましい。
【0012】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.005〜10質量%含有され、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%含有される。この範囲内であれば、肌に塗布するときののびとなじみが良好である。
【0013】
〔成分(B)〕
本発明で用いられる成分(B)のポリエチレングリコールは、数平均分子量が1000〜3000のもので、具体的にはポリエチレングリコール1000(PEG−20)、ポリエチレングリコール1540(PEG−32)、ポリエチレングリコール2000(PEG−40)等が挙げられる。この数平均分子量は、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社、2006年)の第1382頁に記載の方法に従って求められるものである。
製造におけるハンドリング性や、べたつきがないなど化粧料の感触面から、特に、数平均分子量1200〜2000のポリエチレングリコールが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール1540(PEG−32)、ポリエチレングリコール2000(PEG−40)が好ましく、ポリエチレングリコール1540(PEG−32)が最も好ましい。
【0014】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜10質量%含有され、好ましくは0.2〜7質量%、より好ましくは0.3〜5質量%含有される。この範囲内であれば、肌でののびが良く、べたつきのない使用感を得ることができる。
【0015】
〔成分(C)〕
本発明で用いる成分(C)は、タルク、シリカ、セリサイト、マイカ、ガラスの表面を疎水化処理した板状粉体である。
中でもタルク、シリカ、ガラスが好ましく、更にはタルクが、なめらかできしみ感のない肌感触が得られる点で好ましい。
【0016】
形状は、特に限定されるものではないが、平均厚さが0.001〜5μm、平均粒子径が0.01〜50μmであるものが好ましく、更に、平均厚さが0.01〜2μm、平均粒子径が0.1〜30μmであるものが好ましく、特に、平均厚さが0.01〜1μm、平均粒子径が1〜30μmであるものが、塗布時のきしみ感や粉っぽさがない点で好ましい。
【0017】
これら粉体の疎水化処理方法としては、通常の化粧料用粉体に施されている方法、例えば、シリコーン処理、脂肪酸処理、ラウロイルリジン処理、界面活性剤処理、金属石鹸処理、フッ素処理、レシチン処理等が含まれ、中でも、シリコーン処理、脂肪酸処理及びフッ素処理が好ましい。具体的には、シリコーン処理としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルポリシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、トリエトキシカプリリルシラン、シリコーン樹脂等による処理;脂肪酸処理としては、例えば、ミリスチン酸、ステアリン酸等による処理;フッ素処理としては、例えば、パールフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルシラン等による処理などが挙げられる。疎水化処理剤の使用量は、処理前の粉体質量に対して、通常0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であるのが好ましい。
【0018】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10%含有される。この範囲内であれば、肌でのなじみが良く、塗布後の肌が白っぽくならない。
【0019】
〔成分(D)〕
本発明で用いる成分(D)の疎水性有機球状粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されず、例えば、ポリアミドパウダー、ナイロンパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリ四弗化エチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、ポリウレタンパウダー、ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂;ジメチルシリコーンを架橋したシリコーンエラストマーパウダーやポリメチルシルセスキオキサンパウダー等のシリコーンパウダー;アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、(メタクリル酸ラウリル/ジメタクリル酸エチレングリコール)コポリマー等のような、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の重合体又は共重合体のパウダー等の架橋型あるいは非架橋型の有機球状粉体が挙げられる。また、疎水化処理については、先に挙げた方法と同様の方法が挙げられる。
粉体の平均粒子径は0.1〜50μm、更に0.5〜30μm、特に1〜15μmであるのが、肌へののびやなじみが良い点で好ましい。
【0020】
成分(D)としては、ナイロンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキレングリコール及びメタクリル酸アルキレングリコールから選ばれる1種又は2種以上の重合体又は共重合体のパウダーが好ましい。
【0021】
例えば、KMP−590、KSP−100、KSP−101、KSP−105、KSP−300(信越化学工業社);トスパール120A、トスパール145A、トスパール2000B、トスパール1110A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社);トレフィルE506S、トレフィルE508、EP−9215、BY29−129(東レ・ダウコーニング社);ポリトラップ(ダウ・コーニング社);フロービーズCL−2080、フロービーズHE−3040、フロービーズEA−209(住友精化社);オルガソール(アルケマ社);マツモトマイクロスフェアーM、マツモトマイクロスフェアーM−100、マツモトマイクロスフェアーM−101、マツモトマイクロスフェアーM−201、マツモトマイクロスフェアーM−306、マツモトマイクロスフェアーS−100(松本油脂製薬社);ナイロンSP−500、ナイロンSP−10、ナイロンSP−20(東レ社)等の市販品を用いることができる。
【0022】
特に、ポリメチルシルセスキオキサンパウダーであるKMP−590(信越化学工業社)や、トスパール120A、トスパール145A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)、ポリメチルメタクリレートパウダーであるマツモトマイクロスフェアーシリーズ(松本油脂製薬社)が、塗布時ののびが良く、白浮きしない仕上がりになる点で好ましい。
【0023】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜20質量%好ましくは0.5〜10質量%含有される。この範囲内であれば、塗布した際に白浮きのない均一な仕上がりを得ることができる。
【0024】
〔成分(E)〕
本発明で用いる成分(E)は、25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油である。25℃での動粘度は、毛細管式粘度計を使って、一定容量の液体が25℃、一気圧下で粘度計の毛細管を流れる時間を測定し、この流出時間と粘度計定数から次式を用いて算出される。毛細管式粘度計は、一般にウベローデやキャノン−フェンスケなどが用いられる。
<動粘度の算出方法>
動粘度(mm2/s)=流出時間(秒)×粘度計定数
【0025】
かかるシリコーン油としては、通常の化粧料に用いられるものであれば特に制限されないが、25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油である低重合度の直鎖状又は分岐状ジメチコン、環状のシクロシロキサン、メチルフェニルシロキサン、アルキル等による変性シリコーンなどが挙げられる。
【0026】
より具体的には、直鎖状ジメチコンのシリコーンKF−96シリーズの1〜100CS(信越化学工業社)、シリコーンSH200 Fluidシリーズの1〜100CS、2−1184 Fluid(以上、東レ・ダウコーニング社)、TSF451シリーズの5A〜100A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社);分岐状メチルトリメチコンであるTMF−1.5(信越化学工業社);環状のシクロペンタシロキサンやシクロヘキサシロキサンであるKF−995(信越化学工業社)、SH245 Fluid、DC345 Fluid、DC246 Fluid(東レ・ダウコーニング社)、TSF405、SF1258(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社);メチコンであるSH1107C(東レ・ダウコーニング社)、TSF484A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社);変性シリコーンであるジフェニルジメチコンのKF−50−100CS、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンのKF−56A(以上、信越化学工業社)、カプリリルメチコンのFZ−3196(東レ・ダウコーニング社)、SILSOFT 034(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)、セチルジメチコンの2502 Cosmetic Fluid、フェニルトリメチコンのSH556 Fluid、ビス(ヒドロキシエトキシプロピル)ジメチコンの5562 Carbinol Fluid(以上、東レ・ダウコーニング社)、ビスフェニルプロピルジメチコンのSF1555、エチルトリシロキサンのSILSOFT ETS(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)等が挙げられる。
【0027】
特に、のびが軽く肌上での広がりが良い点で、25℃での動粘度が20mm2/s以下の直鎖状又は分岐状ジメチコン、環状シリコーンが好ましい。具体的には、20mm2/s以下の直鎖状又は分岐状ジメチコンや、環状のシクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサンが挙げられ、シリコーンKF−96(5CS)、シリコーンKF−96(10CS)、TMF−1.5(以上、信越化学工業社)、シリコーンSH200 Fluid 2CS、シリコーンSH200 Fluid 6CS、SH245 Fluid(以上、東レ・ダウコーニング社)、SF1258(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社)等が挙げられる。
【0028】
また、(E)シリコーン油の配合形態としては、成分(A)である架橋型メチルポリシロキサンを膨潤させてゲル状シリコーン(例えば、信越化学工業のKSG−15、KSG−16等)として用いる形態や、単独に用いる形態を挙げることができるが、これらの形態を併用しても良い。この場合、ベースオイルとして使用される低粘度シリコーン油量は成分(E)の含有量に含まれる。
【0029】
成分(E)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に5〜80質量%含有され、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60%含有される。この範囲内であれば、成分(A)を十分に膨潤させることができ、成分(C)や(D)の疎水性粉体が皮膚上で均一に付着しやすくなり、本発明の効果が十分に発揮される。
【0030】
〔成分(F)〕
成分(F)の水は、全組成中に1〜60質量%、更に3〜50%、特に5〜40質量%含有されるのが、乳化状態が良好で、皮膚上に均一に塗布しやすくなる点で好ましい。
【0031】
本発明の油中水型乳化化粧料においては、成分(A)、(B)及び(E)を組み合わせて用いることにより、化粧料の伸びが非常になめらかなものになる。特に、成分(A)及び(B)の質量割合は、(A)/(B)=0.005〜5、更に0.01〜3、特に0.1〜2であるのが、べたつきのない優れた使用感で、かつ、ムラなく肌に塗布できる点で好ましい。
また、成分(C)及び(D)の質量割合は、(C)/(D)=0.01〜10、更に0.05〜5、特に0.1〜3であるのが、肌表面の皮丘や皮溝など凹凸部位を覆うことができ、極めてなめらか感のある化粧膜を構成することができるので好ましい。
更に、((A)+(B))/((C)+(D))=0.01〜10、更に0.02〜5、特に0.03〜3であるとき、ファンデーションのような仕上げ化粧料を塗布した場合、ファンデーションの密着性が向上するとともに、化粧料ののびの良さが感じられ、粉体が均一に塗布できるため、化粧のりの向上感を実感することができる。
【0032】
〔成分(G)〕
本発明の油中水型乳化化粧料は、HLB8以下の非イオン界面活性剤を含有することができる。特に(G)HLB8以下のポリエーテル変性シリコーンを含有することが望ましい。ポリエーテル変性シリコーンは、分子中にポリオキシアルキレン鎖を有する直鎖状あるいは分岐状のシリコーンであり、ポリオキシアルキレン鎖以外にアルキル鎖やポリグリセリン鎖などが同時に変性されていても良い。
かかるポリエーテル変性シリコーンは、成分(A)の架橋型メチルポリシロキサンとのなじみが良く、優れた乳化性能を有する。25℃で液体であるポリエーテル変性シリコーンが、より成分(A)とのなじみが良好である点で好ましい。ポリエーテル変性シリコーンのHLBは、下記に示す方法により求められる。
【0033】
<HLBの概算方法>
HLB値=ポリエーテルの分子量/ポリエーテル変性シリコーンの分子量×0.2
【0034】
具体的には、市販品として、信越化学工業社のPEG−3ジメチコン(KF−6015)、PEG−10ジメチコン(KF−6017)、PEG−9メチルエーテルジメチコン(KF−6016)、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−6028)、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(KF−6038)、PEG/PPG−20/22ブチルエーテルジメチコン(KF−6012)、PEG/PPG−10/3オレイルエーテルジメチコン(KF−6026);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社のPEG/PPG−20/15ジメチコン(SF1528、SF1540);東レ・ダウコーニング社のPEG−10ジメチコン(SS−2910)、PEG−12ジメチコン(SH3772M、SH3773M、SH3775M)、PEG/PPG−20/20ジメチコン(SH3749)、PEG/PPG−19/19ジメチコン(BY22−008M、BY11−030、BY25−337)、ラウリルPEG/PPG−18/18メチコン(5200 Formulation Aid)、ポリシリコーン−13(FZ−2222、FZ−2233、FZ−2231)などが挙げられる。
さらに、PEG−3ジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−12ジメチコン、PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG/PPG−19/19ジメチコン、ポリシリコーン−13が好ましく、特にPEG−3ジメチコン、PEG−10ジメチコン、PEG−12ジメチコン、PEG/PPG−19/19ジメチコンが、べたつきが少なく、架橋型メチルポリシロキサンとのなじみが良好な点で好ましい。
【0035】
成分(G)は、1種又は2種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜10質量%、更に0.1〜5質量%、特に0.5〜3質量%含有するのが、べたつかずに肌へのなじみが良く、また、化粧膜のなめらか感や、仕上げ化粧料の密着感が向上する点から好ましい。
【0036】
〔成分(H)〕
本発明の油中水型乳化化粧料は、成分(C)及び(D)以外の粉体を含有することができ、その粉体を肌上にムラなく均一に付着させることができる。特に、(H)酸化チタン、酸化亜鉛を配合すると、高い紫外線防御効果を得ることができる。
酸化チタン及び酸化亜鉛の平均粒子径は0.001〜1μm、その形状としては、例えば粒状、球状、板状、紡錘状、樹枝状、バルーン状等が好ましい。また、酸化チタン及び酸化亜鉛の粉体表面に、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム等で表面処理を行い、粉体表面の活性を抑制することもできる。更に、紫外線防御効果の持続性や粉体の感触向上のために、これら粉体の表面を疎水化処理しても良い。疎水化処理は、前記成分(C)と同様に行うことができる。
【0037】
酸化チタン、酸化亜鉛は、それぞれ1種以上を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。成分(H)は、全組成中に1〜50質量%、特に3〜30質量%含有するのが、塗布後の肌が白浮きすることなく十分な紫外線防御効果が得られるので好ましい。
【0038】
本発明の油中水型乳化化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、成分(E)以外の油性成分、保湿剤、紫外線吸収剤、色素、増粘剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、ビタミン類、抗炎症剤、香料、その他の薬効成分等を、適宜含有することができる。
【0039】
本発明の油中水型乳化化粧料は、例えば、(A)架橋型メチルポリシロキサンを(E)低粘度シリコーン油で膨潤させたシリコーンゲルと、(C)疎水化処理した板状粉体、(D)疎水性有機球状粉体(更に、(G)ポリエーテル変性シリコーン、(H)酸化チタン粉体、酸化亜鉛粉体、その他油性成分)を十分に攪拌混合した油相に、(F)水に(B)ポリエチレングリコール(及びその他水性成分)をあらかじめ溶解しておいた水相を添加して乳化し、ホモジェナイザーなどで高速攪拌処理することにより、製造することができる。
【0040】
本発明の化粧料の形態としては、乳液、クリーム等のスキンケア化粧料、メイクアップ下地化粧料、メイクアップ化粧料、日やけ止め乳液や日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料などが挙げられる。中でも、メイクアップ下地化粧料、紫外線防御化粧料が好ましく、特に、紫外線防御化粧料が好ましい。
【0041】
本発明の化粧料は、25℃における粘度が、100〜150000mPa・s、更に500〜100000mPa・s、特に1000〜50000mPa・sであるのが、良好な使用性が得られることと、本発明の効果が明確に発揮される点で好ましい。粘度は、ブルックフィールド型BL/BM/BH粘度計により、回転数6rpm又は12rpmで、粘度に応じたローターを用いて25℃で1分間測定したときの値である。
【実施例】
【0042】
実施例1〜7及び比較例1〜3
表1及び表2に示す組成の化粧料を、下記製造方法により製造した。得られた化粧料について、粘度を測定し、使用感(のびの良さ、なじみの良さ、べたつきのなさ、粉っぽさのなさ、かさつきのなさ)、紫外線防御効果(耐水性)及びその持続効果、塗布膜の状態変化並びに仕上げ化粧料の塗布ムラのなさを評価した。結果を表1及び表2に併せて示す。
【0043】
(製造方法)
成分(A)を成分(E)とあらかじめ十分混合して成分(A)を膨潤させた後、他の油相成分(成分(G)を含む)と粉体類(成分(C)、(D)、(H)を含む)を加え、室温にてディスパーで十分撹拌した後、あらかじめ加熱攪拌して溶解させた水相(成分(B)、(F)を含む)を加え、室温で混合する。アジホモミキサーに移し換え、乳化粒子を均一に調整し、粉体類を均一に細かく分散させるため、30分間高速攪拌を行った後、脱気を行い、油中水型乳化化粧料を得た。
【0044】
(評価方法)
(1)粘度:
各化粧料について、ブルックフィールド型BM粘度計により、回転数6rpmで、No.3のローターを用い、25℃で測定したとき、1分後の値を示した。
【0045】
(2)使用感:
10名の専門パネラーが、各化粧料を使用したときの「のびの良さ」、「なじみの良さ」及び「べたつきのなさ」、また塗布後5時間経過したときの「粉っぽさのなさ」と「かさつきのなさ」について官能評価し、次の基準により判定した。
◎:9〜10名が良好と評価した。
○:7〜8名が良好と評価した。
△:4〜6名が良好と評価した。
×:3名以下が良好と評価した。
【0046】
(3)紫外線防御効果及びその持続効果(耐水性試験)、塗布膜の状態変化:
各化粧料について、in vitroのSPFを測定した。すなわち、石英ガラス板上のサージカルテープに各化粧料を2mg/cm2になるよう均一に塗布し、20分以上放置して乾燥させた後、テープに一定の距離(10mm)から紫外線を照射した。その際の透過紫外線をSPFアナライザー(UV−1000S、Labsphere社製)で、290〜400nmの範囲でテープ上の5箇所以上において検出し、平均化したスペクトルを得た。このスペクトルに効果係数を乗じて、in vitroのSPF値を算出した。
また、SPF値測定後のサンプルをガラス板ごと塗布面が上にくるように37℃の水浴に浸し、水温を37℃に保ちながら80分間軽く水を攪拌し続けた。終了後、ガラス板をゆっくり取り出し、30分以上放置して乾燥させた後、再び前記と同様にSPF値を測定した。
【0047】
さらに、この浸水処理前後のサンプルの塗布膜の状態変化を調べるため、あらかじめSPF値を測定する前にサンプル表面を高解像度ダイレクトスキンアナライザーシステム(デジタルハイスコープシステム KH-2700、ハイロックス社製)の20倍カメラで3箇所以上撮像しておく。浸水処理後のサンプルも同箇所を同様に撮影して、前後の撮影写真を比べながら均一さ、粉体の凝集のなさなどについて比較観察し、次の基準により判定した。
<塗布膜の状態変化>
◎:全く変化なし。
○:ほとんど変化なし。
△:粉体の凝集塊や不均一な状態が部分的に観察される。
×:塗布部が塗布面からはがれてしまっていたり、粉体の凝集塊や塗布ムラが目立つ。
【0048】
(4)仕上げ化粧料の塗布ムラのなさ(粉体の均一な密着性):
ヒト前腕屈側部の5×5cm角上に、各化粧料を1mg/cm2になるように均一に塗布する。3分間風乾後、各化粧料を塗布した上から、仕上げ化粧料として固型粉末タイプのパウダーファンデーション(組成は下記参照)を、パウダーファンデーション用パフを用いて、0.1mg/cm2になるように塗布する。塗布部を高解像度ダイレクトスキンアナライザーシステム(デジタルハイスコープシステム KH-2700、ハイロックス社製)の100倍カメラで撮像する。得られたグレイスケールのデジタル画像(総画素数:307,200ピクセル)を、パウダーファンデーション粉体の凝集部分を抽出するために画像処理ソフトを用いて一定の閾値で2階調化処理を行い、白色部(粉体の凝集部分)の総面積(ピクセル単位)を求める。白色部の総面積が多いほどファンデーション粉体が凝集して、塗布ムラが生じていることを意味する。本発明の各化粧料のみを塗布した場合(パウダーファンデーションを塗布する前)は同様の解析を行っても白色部はほとんど認められないことを確認している。
【0049】
<仕上げ化粧料(固型粉末パウダーファンデーション)の配合組成表>
ステアリン酸亜鉛 2.0(質量%)
フッ素処理タルク 45.0
フッ素処理ポリメタクリル酸メチル 6.0
プロピルパラベン 0.3
スクワラン 3.0
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 2.0
ジメチルポリシロキサン 8.0
フッ素処理ベンガラ被覆雲母チタン 12.0
フッ素処理雲母チタン 7.0
フッ素処理無水ケイ酸 1.0
フッ素処理酸化亜鉛 3.1
フッ素処理酸化チタン 8.0
フッ素処理ベンガラ 0.6
フッ素処理黄酸化鉄 1.8
フッ素処理黒酸化鉄 0.2
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
実施例1〜7の化粧料はいずれも、使用感と経時の肌感触はともに良好で、紫外線防御効果が高く、さらに耐水性も高い。耐水試験前後の塗布膜を比較しても変化がみられず、粉体の凝集はみられず均一な状態であった。さらに本発明品を塗布した後に仕上げ化粧料のパウダーファンデーションを塗布したときの化粧膜は粉体の凝集がみられず、粉体が肌に均一に密着しており、ムラのない美しい仕上がりであった。
【0053】
実施例8(W/Oクリーム)
表3に示す組成のW/Oクリームを、実施例1〜7と同様にして製造した。
得られたクリームは、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽい感触になることがなかった。さらに、このクリームを塗布した後、仕上げ化粧料のパウダーファンデーションを重ねづけすると、化粧のりの良い、自然で美しい化粧仕上がりであった。
【0054】
【表3】

【0055】
実施例9(W/O日やけ止めクリーム)
表4に示す組成のW/O日やけ止めクリームを、実施例1〜7と同様にして製造した。
得られたクリームは、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽい感触になることがなく、高い紫外線防御効果と優れた効果持続性(耐水性)を示した。さらに、このクリームを塗布した後、仕上げ化粧料のパウダーファンデーションを重ねづけすると、化粧のりの良い、自然で美しい化粧仕上がりであった。
【0056】
【表4】

【0057】
実施例10(W/O化粧下地化粧料)
表5に示す組成のW/O化粧下地化粧料(使用する前に振とうするタイプ)を、実施例1〜7と同様にして製造した。
得られたファンデーションは、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽい感触になることがなく、高い紫外線防御効果と優れた効果持続性(耐水性)を示した。さらに、このファンデーションを塗布した後、仕上げ化粧料のパウダーファンデーションを重ねづけすると、化粧のりの良い、自然で美しい化粧仕上がりであった。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例11(W/Oファンデーション)
表6に示す組成のW/Oファンデーションを、実施例1〜7と同様にして製造した。
得られたファンデーションは、なめらかなのびでべたつかない優れた使用感を有し、経時でもかさついたり粉っぽい感触になることがなく、化粧のりが良く、塗布ムラのない均一な化粧料膜を形成した。また、高い紫外線防御効果と優れた効果持続性(耐水性)を示した。さらに、このファンデーションを塗布した後、仕上げ化粧料のパウダーファンデーションを重ねづけすると、化粧のりの良い、自然で美しい化粧仕上がりであった。
【0060】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F):
(A)架橋型メチルポリシロキサンである(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.005〜10質量%、
(B)数平均分子量が1000〜3000であるポリエチレングリコール 0.1〜10質量%、
(C)タルク、シリカ、セリサイト、マイカ及びガラスから選ばれる板状粉体の表面を疎水化処理した板状粉体0.1〜20質量%、
(D)疎水性有機球状粉体 0.1〜20質量%、
(E)25℃での動粘度が100mm2/s以下のシリコーン油 5〜80質量%、
(F)水
を含有する油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
更に、(G)HLB8以下のポリエーテル変性シリコーン 0.01〜10質量%を含有する請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
更に、(H)酸化チタン又は酸化亜鉛 1〜50質量%を含有する請求項1又は2記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項4】
成分(A)、(B)、(C)及び(D)の質量割合が、
(A)/(B)=0.005〜5、
(C)/(D)=0.01〜10、
((A)+(B))/((C)+(D))=0.01〜10
である請求項1〜3のいずれか1項記載の油中水型乳化化粧料。

【公開番号】特開2010−184912(P2010−184912A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31478(P2009−31478)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】