説明

油中水型乳化皮膚外用剤

【課題】適度な粘性を有し、かつ、べたつかず、のびがよく、コクのある油中水型乳化皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】(C)界面活性剤、(D)油剤、(E)水を含む油中水型乳化皮膚外用剤において、(A)グリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物及び(B)リン脂質を添加することにより増粘した油中水型乳化皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリンと脂肪酸と二塩基カルボン酸のエステル化合物を含有する油中水型乳化皮膚外用剤が知られている(特許文献1:特開2003−212747号公報)。グリセリンと脂肪酸と二塩基カルボン酸のエステル化合物を含有させることにより、油分の均一なゲルが形成され、水相の分散化が安定化される。しかしながら、必ずしも十分な粘性が得られにくいという問題があった。連続相である油相にワックス類を配合して粘性を高め、油中水型乳化を安定させる技術も知られているが、種々の温度変化に対して配合したワックス類の軟化や融解が生じ、乳化安定性は十分ではないとされる。使用感触についても、ワックス類に由来する、べたつき、油っぽい、のびが重いなどという問題が生じるとされる。
デキストリン脂肪酸エステルを含有する油中水型乳化皮膚外用剤が知られている(特許文献2:特開平4−312512号公報)。デキストリン脂肪酸エステルの配合量が1重量%未満では、乳化を安定させることができず、10重量%を超えると粘度が著しく高くなり、使用時ののびが悪く、油性感、べたつき感を与えるとされるものであり、使用感と粘性の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−212747号公報
【特許文献2】特開平4−312512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油中水型乳化皮膚外用剤の粘性を高めることにより、液だれが生じなくなり、皮膚外用剤を指先に取り、皮膚に塗布することが容易となる。しかしながら、粘性を高めるために添加する原料によっては、べたつきが増大し、皮膚外用剤を塗り伸ばしにくくなり、使用感が悪くなる。
油中水型乳化皮膚外用剤は保湿機能が高く、スキンケア効果も期待できるが、塗布時の伸びが重いという問題が有る。伸びを軽くするために粘性を落とすと、コク感が低下する。シリコーン油をメインの油剤とすれば、伸びは軽くなるが、シリコーン油は保湿性が低いため、高い保湿効果は期待できない。
そこで、シリコーン油の比率が20質量%以下の油剤を用いて、適度な粘性を有し、かつ、べたつかず、のびがよく、コクのある油中水型乳化皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.(C)界面活性剤、(D)油剤、(E)水を含む油中水型乳化皮膚外用剤において、
(A)グリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物及び(B)リン脂質を添加することにより増粘したことを特徴とする油中水型乳化皮膚外用剤。
2.(D)油剤が、0〜20質量%のシリコーン油を含有する油剤であることを特徴とする1.記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
3.(C)界面活性剤が、ポリアルキレングリコールジポリヒドロキシカルボン酸エステル又はポリリシノレイン酸ポリグリセリルであることを特徴とする1.又は2.に記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
4.(B)リン脂質が水素添加レシチンであることを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
5.剤型が乳液である1.〜4.のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
6.剤型がクリームである1.〜4.のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。

【発明の効果】
【0006】
界面活性剤、油剤、水を含む油中水型乳化皮膚外用剤において、グリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物及びリン脂質を添加することにより、使用感に優れた油中水型乳化皮膚外用剤を実現できた。乳液あるいはクリームとして剤型に適した皮膚外用剤用乳化剤を提供できる。
シリコーン油の比率が20質量%以下の油剤を用いて、適度な粘性を有し、かつ、べたつかず、のびがよく、コクのある油中水型乳化皮膚外用剤を実現した。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いる(A)成分のグリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物は、市販品を用いることができる。例えば、日清オイリオ(株)製ノムコートHK−G(ベヘン酸/エイコサン二酸グリセリル)、ノムコートSG(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸グリセリル)等が挙げられる。本発明に用いるグリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物の配合量は0.5〜3質量%が好ましい。
【0008】
本発明に用いる(B)成分のリン脂質としては、卵黄レシチンや大豆レシチン等の天然のリン脂質、レシチン中の不飽和炭素鎖を水素添加により飽和結合に変えた水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン等のリン脂質、天然レシチンから精製するか、あるいは合成したホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール等が挙げられる。
これらの中で、水素添加レシチン(水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン)が安定性の点で特に好ましい。これらのリン脂質を単独で、あるいは組み合わせて用いることができる。本発明に用いるリン脂質の配合量は0.1〜2質量%が好ましい。
【0009】
本発明に用いる(C)成分の界面活性剤は、油中水型乳化に適する界面活性剤であればいずれでも良く、HLBが8以下の界面活性剤が好ましい。HLBは水と油への親和性のバランスを表す指標で、種々の定義が存在する。HLBの数値が低いほど親油性の傾向が強い。
(C)成分の界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレングリコールポリヒドロキシカルボン酸エステル、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
(C)成分の界面活性剤としては、特にポリアルキレングリコールポリヒドロキシカルボン酸エステル又はポリリシノレイン酸ポリグリセリルが好ましい。
ポリアルキレングリコールジポリヒドロキシカルボン酸エステルは、油中水型乳化剤として知られている。市販品を用いることができ、例えば、クローダジャパン(株)製アラセルP−135(ポリエチレングリコール(30)ジポリヒドロキシステアリン酸エステル)(HLB=5〜6)等が挙げられる。
ポリリシノレイン酸ポリグリセリルは、油中水型乳化剤として知られている。市販品を用いることができ、例えば、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL HEXAGLYN PR−15(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6)(HLB=3.2)、NIKKOL DECAGLYN PR−20(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−10)(HLB=3.4)、太陽化学(株)製サンソフトNo.818R(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6)(HLB=3)等が挙げられる。
本発明に用いる(C)成分の界面活性剤の配合量は1〜5質量%が好ましい。
【0010】
本発明に用いる(D)成分の油剤としては、炭化水素類、エステル油類、油脂類、ロウ類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、ステロール類、シリコーン油類等が挙げられる。 また、精油、油溶性ビタミン、油溶性紫外線吸収剤等の油性剤も(D)成分の油剤とすることができる。
(D)成分の油剤は液状油剤が好ましい。固形、半固形油剤の配合量が多いとべたつきが生じ、のびが悪くなる可能性がある。
炭化水素類としては、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。エステル油類としては、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸フィトステリル等が挙げられる。油脂類としては、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、メドウホーム油、シアバター等が挙げられる。ロウ類としては、ホホバ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、ラノリン等が挙げられる。高級脂肪酸類としては、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。高級アルコール類としては、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。ステロール類としては、コレステロール、フィトステロール等が挙げられる。シリコーン油類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等があげられる。シリコーン油は、伸びは軽くなるが、保湿性が低いため本発明では必ずしもシリコーン油を配合する必要は無い。配合する場合は、本発明では油剤のシリコーン油の比率を20質量%以下とするのが好ましい。シリコーン油の場合は、0〜20%を配合した油剤とすることにより、適度な粘性を有し、かつ、べたつかず、のびがよく、コクのある油中水型乳化皮膚外用剤が実現できる。油剤のシリコーン油の比率を50質量%以上とすると、本発明の系では、乳化安定性が悪くなる。
本発明に用いる油剤の配合量は20〜40質量%が好ましい。
剤型としては、乳液あるいはクリームとして適する粘性を実現することができる。
本発明では、のびやコクなどの評価項目と併せて、使用状態に近い25℃における粘度が20,000mPa・s未満のものを乳液、20,000mPa・s以上のものをクリームとした。コクの強い乳液を実現するためには、25℃における乳液の粘度は、10,000mPa・s以上が好ましく、コクの強いクリームを実現するためには、25℃におけるクリームの粘度は40,000mPa・s以下が好ましい。
【0011】
その他の成分として、皮膚外用剤に一般的に配合される多価アルコール、糖類、水溶性高分子、油溶性増粘剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、粉体、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、香料、pH調整剤、薬効剤等を含有させることができる。
【実施例】
【0012】
油中水型乳化皮膚外用剤の調製
表1〜6の組成にて、油中水型乳化皮膚外用剤を調製した。成分(A),(B),(C),(D),(G)を80℃で溶解混合し、そこへ80℃に加温した成分(E),(F)の溶解混合水溶液を滴下し、ホモミキサーを用いて乳化した。撹拌しながら室温まで冷却し、油中水型乳化皮膚外用剤とした。
ここで、(A)成分はグリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物、(B)成分はリン脂質、(C)成分は界面活性剤、(D)成分は0〜20質量%のシリコーン油を含有する油剤、(E)成分は水、(F)成分は水溶性成分、(G)成分は(A)成分以外の油相増粘剤である。(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルは日清オイリオ(株)製ノムコートHK−G、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルは日清オイリオ(株)製ノムコートSGを用いた。(B)成分の水添レシチンは日光ケミカルズ(株)製レシノールS−10を用いた。(C)成分のポリアルキレングリコールジポリヒドロキシカルボン酸エステルはクローダジャパン(株)製アラセルP−135、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−6は日光ケミカルズ(株)製NIKKOL HEXAGLYN PR−15、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル−10は日光ケミカルズ(株)製NIKKOL DECAGLYN PR−20を用いた。
【0013】
粘度測定
実施例1〜17、比較例1〜38の油中水型乳化皮膚外用剤について、調製翌日並びに1ヵ月後の5℃、25℃、40℃保管品の粘度を測定した。装置はB型粘度計を用い、ローターはNo.4を用い、回転数12rpm、保持時間30秒で測定した。
【0014】
剤型の判定
調製翌日の25℃における粘度が20,000mPa・s未満のものを乳液、20,000mPa・s以上のものをクリームとした。25℃における粘度は、乳液は、10,000mPa・s以上が好ましく、クリームは40,000mPa・s以下が好ましい。
【0015】
使用感評価
油中水型乳化皮膚外用剤の「べたつきの無さ」、「のびの良さ」、「コクの強さ」を以下の基準にて評価した。尚、各表それぞれについて、標準品を設定し、標準品との比較評価とした。ここで、「べたつきの無さ」とは、皮膚外用剤を塗布中、塗布後にべたつきが無いかを評価した。「のびの良さ」は皮膚外用剤の塗り広げ易さを評価した。「コクの強さ」は皮膚外用剤を塗り広げる際の、剤の固さの感触及び塗布する指と塗布される皮膚との間の剤の厚さの感触に基づいて総合的に評価した。
各表それぞれに標準品を設定した理由は、乳液、クリーム等剤型によって、べたつき、のび、コクの水準が異なるため、一律に評価すると発明の効果を把握することが困難となるためである。
【0016】
「べたつきの無さ」
5:標準品と比べて顕著にべたつきが少ない
4:標準品と比べてべたつきが少ない
3:標準品と同等
2:標準品と比べてべたつく
1:標準品と比べて顕著にべたつく
【0017】
「のびの良さ」
5:標準品と比べて顕著にのびが良い
4:標準品と比べてのびが良い
3:標準品と同等
2:標準品と比べてのびが悪い
1:標準品と比べてのびが顕著に悪い
【0018】
「コクの強さ」
5:標準品と比べて顕著にコクが強い
4:標準品と比べてコクが強い
3:標準品と同等
2:標準品と比べてコクが弱い
1:標準品と比べてコクが顕著に弱い
【0019】
【表1】

【0020】
表1では、実施例1を乳液剤型の官能評価の標準品とした。
(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%配合するとともに(B)成分の水添レシチンを0.2、0.5、1質量%配合した実施例1〜3は、「べたつきの無さ」や「のびの良さ」が変化することなく、水添レシチンを増量するにつれて粘度(調製翌日25℃)が12,050mPa・sから、14,900mPa・s、17,700mPa・sと増大し、べたつきを抑え、のびの良さを維持しながらコクを強めることができた。コクが強く、べたつきが少なく、のびの良い乳液状の油中水型乳化皮膚外用剤に適している。
一方、(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%配合し、(B)成分の水添レシチンを配合しない比較例3の粘度(調製翌日25℃)は6,700mPa・sであり、実施例1の1/2、実施例3の1/3であって、コクのある乳液としては粘性が不足であり、コク感に劣るものである。(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを2質量%(比較例4)、3質量%(比較例5)に増量すると、(B)成分の水添レシチンを配合しなくても、増粘するが、べたつきが生じ、のびが悪くなる問題が生じる。
実施例1〜3と同様の効果が(A)成分としてトリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%配合した実施例4〜6、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを0.5質量%、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルを0.5質量%(合わせて1質量%)配合した実施例7〜9において認められる。
比較例1に示される、(C)(D)(E)の3成分構成では、べたつきとのびは満足できるが、粘性は不十分であり、安定性及びコクも不十分であって、乳液として皮膚外用剤に使用するには適していない。比較例1に水添レシチンを配合した比較例2では、ほぼ同程度の粘性であって、ほとんど改善されない。比較例1に(A)成分を添加することにより、(B)成分を配合しなくても増粘効果は得られるが、べたつきが生じ、のびが悪くなるのは前述の通りである。さらに、(B)成分を添加せず、(A)成分のみ増量して増粘した場合(比較例3〜5、6〜8、9〜11)は、25℃の粘度と5℃の粘度の差が大きく、粘度の温度安定性に劣る傾向がある。特に、(A)成分としてトリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルを用いた比較例6〜8についてこの傾向が顕著である。
【0021】
【表2】

【0022】
表2では、実施例10をクリーム剤型の官能評価の標準品とした。
表1では(A)成分を1質量%配合した系を中心として評価したが、表2では(A)成分を2質量%配合した系を中心として比較評価した。
(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを2質量%配合するとともに(B)成分の水添レシチンを0.2、0.5、1質量%配合した実施例10〜12は、「べたつきの無さ」や「のびの良さ」が変化することなく、水添レシチンを増量するにつれて粘度(調製翌日25℃)が23,400mPa・sから、28,400mPa・s、38,400mPa・sと増大し、べたつきを抑え、のびの良さを維持しながらコクを強めることができた。コクが強く、べたつきが少なく、のびの良いクリーム状の油中水型乳化皮膚外用剤が得られた。
一方、(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを2質量%配合し、(B)成分の水添レシチンを配合しない比較例4の粘度(調製翌日25℃)は13,600mPa・sであり、実施例10の1/2、実施例12の1/3であり、コク感に劣るものである。(A)成分の(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを3質量%(比較例5)に増量すれば、(B)成分の水添レシチンを配合しなくても、増粘することが可能であるが(調製翌日25℃の粘度が19,350mPa・s)、実施例10の粘度よりも低く、コクが弱く、べたつきが生じ、のびが悪い。
実施例10〜12と同様の効果が(A)成分として(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%(合わせて2質量%)配合した実施例13において認められる。
【0023】
【表3】

【0024】
表3では、実施例10をクリーム剤型の官能評価の標準品とした。
(A)成分を2質量%配合した系で、(B)成分を配合した実施例10〜13と、(B)成分のかわりに(D)成分として固形・半固形油剤を配合した比較例12〜17、20、21と(B)成分のかわりに(G)成分として油相の増粘剤(パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン)を配合した比較例18、19を比較評価した。
(A)成分として(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを2質量%配合し、固形・半固形油剤を配合した比較例12〜14は、25℃の粘度は適切であるが、低温下では高粘度化して固くなり、使用に適さないものであった。常温においても、べたつきがあって、のびが悪く使用性が悪い。比較例15〜17は、いずれも十分に増粘させることができず、べたつきやのびさらにコクの悪さが生じた。比較例15〜17は、十分な粘性が得られず乳液状であり、のび、コクも劣る。
最も増粘した比較例14の粘度(調製翌日25℃)は28,650mPa・sであり、(B)成分を0.2質量%配合した実施例10(調製翌日25℃の粘度が23,400mPa・s)よりも粘性が高いが、顕著にべたつき、顕著にのびが悪い。また、比較例14は(B)成分を0.5質量%配合した実施例11とほぼ同等の粘度であるが、べたつきの無さ、のびの良さの点で、実施例11が顕著に優れている。(B)成分を1質量%配合した実施例12は実施例10、11と「べたつきの無さ」、「のびの良さ」が同等でありながら、さらに粘性が高く、コクが強いものである。実施例10、11、12において、水添レシチン添加量の増加に伴い増粘し、コクの強さも増加する。
(A)成分として(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリルを1質量%(合わせて2質量%)配合した系において、(B)成分を配合した実施例13はクリームとして十分な粘度を有するが、(B)成分の替わりに油相の増粘剤である(パルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリン)を0.2質量%ずつ配合した比較例18、19においては、殆ど増粘効果が認められなかった。(B)成分の替わりに固形油剤であるミツロウ、マイクロクリスタリンワススを添加した比較例20、21においても殆ど増粘効果は認められなかった。
したがって、(A)成分と(B)成分を併用添加することが有効であることが分かる。
比較例12−21として、水添レシチンを配合せずに、増粘効果がある固形油剤としてトリ(カプリル酸/カプリン酸/ミリスチン酸/ステアリン酸)グリセリル、パルミチン酸セチル、ミツロウ、マイクロクリスタリンワッススを添加して、評価した結果、常温下での粘度適性は確保できたが、官能評価を満足することはできなかった。特に、コクを強くすると低温下では固化が進み実用できない。固形油剤は、本発明の系に粘性や官能に悪影響を与えない範囲の微量であれば添加することができる。
【0025】
【表4】

【0026】
表4では、実施例10をクリーム剤型の官能評価の標準品とした。
表1〜3は(C)成分の界面活性剤としてジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールを使用していたが、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールに替えてポリリシノレイン酸ポリグリセリルを用いた系で発明の効果を確認した。
実施例14、15に示したとおり、界面活性剤としてポリリシノレイン酸ポリグリセリルを用いた系においても、(A)成分とともに(B)成分の水添レシチンを配合することにより、「べたつき」や「のび」を変化させずに増粘させ、コクを強めることができる。
【0027】
【表5】

【0028】
表5では、実施例1を乳液剤型の官能評価の標準品とした。
シリコーン油を含有する油剤に対する本発明の適用性を確認した。(D)成分としてシリコーン油(ジメチルシリコーン50CS)を油剤中10質量%含有する油剤を用いた実施例16及びシリコーン油(ジメチルシリコーン50CS)を油剤中20質量%含有する油剤を用いた実施例17においては、(A)成分と(B)成分を共に配合することにより、べたつきを生じさせず、のびを損なわずに増粘させ、コクを強めることが可能であるが、(D)成分としてシリコーン油(ジメチルシリコーン50CS)を油剤中50質量%含有する油剤を用いた比較例30においては、(A)成分と(B)成分を共に配合することにより油が分離し、本発明を適用することができなかった。(D)成分としてシリコーン油(ジメチルシリコーン50CS)を油剤中50質量%含有する油剤を用いた系では、(A)成分を1質量%配合することにより(B)成分を配合しなくても分離が生じる(比較例29)。
本試験例では、シリコーン油の配合は、油剤の20%以下が適していることが確認できた。
【0029】
【表6】

【0030】
表6では、実施例1を乳液剤型の官能評価の標準品とした。
(A)成分のグリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物に替えて、油相の増粘剤として知られている脂肪酸デキストリン((G)成分)について、グリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物と同様に、(B)成分のリン脂質と共に配合することによって増粘作用が生じるか調べた。
その結果、パルミチン酸デキストリンを1質量%配合した系において、水添レシチンの配合の有無によって粘度に差が生じなかった(比較例31、32)。また、(パルミチン酸/オクタン酸)デキストリンを1質量%配合した系においては、水添レシチンを添加することによって逆に粘性が低下した(比較例35、36)。
したがって、(A)成分と(B)成分を配合することによる増粘効果は、他の油相の増粘剤には見られない特別な効果であると考えられる。

【0031】
処方例1 クリーム
配合成分 配合量(質量%)
マカデミアナッツ油 6
スクワラン 6
ホホバ種子油 6
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 5
トコフェロール 0.05
ネオペンタン酸イソステアリル 2
ジメチルシリコーン(50CS) 3
ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール 3
トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル 1
(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル 1
水添レシチン 0.5
グリセリン 7
1,3−ブチレングリコール 5
ジプロピレングリコール 3
ペンチレングリコール 2
塩化ナトリウム 0.5
トリメチルグリシン 3
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
精製水 残余

【0032】
処方例2 乳液
配合成分 配合量(質量%)
スクワラン 7
ホホバ種子油 7
ジメチルシリコーン(6CS) 2
ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル) 2
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 7
ジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール 3
トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル 0.5
(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル 0.5
水添レシチン 0.2
グリセリン 5
1,3−ブチレングリコール 10
塩化ナトリウム 0.5
ラフィノース 2
キサンタンガム 0.05
精製水 残余

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C)界面活性剤、(D)油剤、(E)水を含む油中水型乳化皮膚外用剤において、
(A)グリセリンと脂肪酸及び二塩基カルボン酸とのエステル化合物及び(B)リン脂質を添加することにより増粘したことを特徴とする油中水型乳化皮膚外用剤。
【請求項2】
(D)油剤が、0〜20質量%のシリコーン油を含有する油剤であることを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
【請求項3】
(C)界面活性剤が、ポリアルキレングリコールジポリヒドロキシカルボン酸エステル又はポリリシノレイン酸ポリグリセリルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
【請求項4】
(B)リン脂質が水素添加レシチンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
【請求項5】
剤型が乳液である請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。
【請求項6】
剤型がクリームである請求項1〜4のいずれかに記載の油中水型乳化皮膚外用剤。


【公開番号】特開2011−68571(P2011−68571A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219208(P2009−219208)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】