説明

油中水型乳化組成物

【課題】伸びが良く、べたつきが無く、下地効果を有し、保存安定性にも優れる油中水型乳化組成物を提供する。
【解決手段】(A)揮発性シリコーン油、(B)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はモノイソステアリン酸ジグリセリル、及び(C)下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンを含有する油中水型乳化組成物。
【化1】


(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はのびが良く、べたつきが無く、下地効果を有し、保存安定性にも優れる油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化化粧料は、肌へのなじみが良く、肌表面に油膜を作ることから水分の蒸散を防ぎ、肌を乾燥から守り、肌に潤いを与えることが知られている。また撥水性に優れ、化粧くずれが少ないことからメークアップ化粧料、日焼け止め化粧料などに広く用いられている。しかしながら、油中水型乳化化粧料は、油が外相であるため、のびが重く、べたつきを生じたり、感触が悪くなる場合がある。近年、油中水型乳化化粧料において、さっぱりとしてべたつきが少ないものを得るため、油剤としてシリコーン油を配合したり、水分を高配合することが検討されている(特許文献1〜5)。しかしながら、油中水型乳化化粧料にシリコーン系油剤や水を多量に配合することは、保存安定性の点から困難であった。このため、経時での保存安定性が良好で、のびが良く、べたつきが無く使用感に優れた油中水型乳化化粧料が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平4−370152号公報
【特許文献2】特開平5−178733号公報
【特許文献3】特開平6−40847号公報
【特許文献4】特開2001−58917号公報
【特許文献5】特開2001−139424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明では、のびが良く、べたつきが無く、下地効果を有し、保存安定性にも優れる油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための本発明は、(A)揮発性シリコーン油、(B)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はモノイソステアリン酸ジグリセリル、及び(C)下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンを含有する油中水型乳化組成物にある。
【0006】
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、zは20〜200、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す。)
【0007】
第2の本発明は、さらに(D)下記一般式(2)で表される架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有する上記の油中水型乳化組成物にある。
【0008】
【化2】

(式中、p1、p2は10〜200、qは1〜10、rは3〜20の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る油中水型乳化組成物は、保存安定性に優れ、皮膚に外用した場合、のびが良く、べたつきを感じさせないという優れた官能特性を有し、さらに下地効果においても優れた特性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳説する。本発明で(A)成分として用いられる揮発性シリコーン油は、大気圧下における沸点が250℃以下のシリコーン油であり、例えば式{(CHSiO}で示される環状ジメチルポリシロキサン(式中、mは3〜6の整数)、式(CHSiO{(CH)RSiO}Si(CHで示されるシロキサン化合物(式中、nは0〜4の整数、Rは炭素数1〜8の炭化水素基又は−OSi(CH)、又はこれらの混合物である。その具体例としては、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、カプリリルメチコン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン等が挙げられる。
【0011】
本発明の油中水型乳化組成物における(A)揮発性シリコーン油の含有量は、乳化組成物の総量を基準として1〜40質量%(以下、単に%と記す。)が好ましく、特に好ましくは5〜30%である。これらの範囲内であれば、揮発性シリコーンの持つさっぱりとした感触がより強く感じられ、乳化組成物の保存安定性においても特に優れる。
【0012】
本発明で(B)成分として用いられるモノイソステアリン酸ソルビタンは、ブドウ糖を還元して得られるd−ソルビトール又はその分子内脱水物であるソルビタンと、イソステアリン酸を等モル反応させて得られるソルビタン脂肪酸エステルである。同じく(B)成分として用いられるモノイソステアリン酸ジグリセリルは、グリセリンの二量体であるジグリセリンとイソステアリン酸を反応させて得られるモノエステルである。
【0013】
本発明の油中水型乳化組成物における(B)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はモノイソステアリン酸ジグリセリルの含有量は、乳化組成物の総量を基準として0.1〜3%が好ましく、特に好ましくは0.3〜1.5%である。これらの範囲内であれば、乳化組成物の保存安定性において特に優れ、使用感においてもべたつき感を感じさせないより優れた感触が得られる。(B)成分のうち、モノイソステアリン酸ソルビタンは、のびの良さの面でモノイソステアリン酸ジグリセリルよりも優れるため、本発明において特
に好ましく用いられる。
【0014】
本発明で(C)成分として用いられるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンは、前記一般式(1)で表される公知の物質である。特に、該一般式においてRが水素原子で、xが5〜50、yが1〜15、zが20〜150、aが14〜18、bが3、cが3〜11、dが0〜13のものが入手しやすく、効果の面でも優れるため好ましく用いられる。相当する原料としては、ゴールドシュミット社製の「ABIL EM90」が挙げられる。
【0015】
本発明の油中水型乳化組成物における(C)ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンの含有量は、乳化組成物の総量を基準として0.1〜3%が好ましく、特に好ましくは0.5〜2%である。これらの範囲内であれば、乳化組成物の保存安定性において特に優れ、使用感においてものびの良さの点でより優れた感触が得られる。
【0016】
本発明では、さらに(D)成分として架橋型ポリエーテル変性シリコーンを配合することにより、のびの良さの点でより優れた感触を有し、下地効果が向上した油中水型乳化組成物とすることができる。本発明で用いられる架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、下記一般式(2)で表されるものである。
【0017】
【化3】

(式中、p1、p2は10〜200、qは1〜10、rは3〜20の整数を表す。)
【0018】
本発明で用いられる架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、特開平4−272932号公報、及び特開平5−140320号公報に記載されている方法により製造することができる。
【0019】
本発明で用いられる架橋型ポリエーテル変性シリコーンは、予めシリコーン油と剪断力下で混練処理し、ペースト状ポリエーテル変性シリコーン組成物とされたものを使用するのが好ましい。ここで用いられるシリコーン油としては、25℃における粘度が100mPa・s以下の低粘度シリコーン油が好ましく用いられ、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン等の鎖状シリコーン油や、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等の環状シリコーン油等が例示される。これらシリコーン油は1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
架橋型ポリエーテル変性シリコーンとシリコーン油との剪断力下での混練物であるペースト状ポリエーテル変性シリコーン組成物は、例えば「KSG」シリーズ(信越化学工業社製)等として市販されており、商業的に入手可能である。本発明では、KSG−21又はKSG−210(信越化学工業社製)を使用するのが特に好ましい。
【0021】
本発明の油中水型乳化組成物における(D)架橋型ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、乳化組成物の総量を基準として0.1〜3%が好ましく、特に好ましくは0.5〜1.5%である。これらの範囲内であれば、のびの良さやべたつきを感じさせないという感触の面で、より優れた効果が得られる。
【0022】
本発明の油中水型乳化組成物には、上記の必須成分に加えて、必要に応じて上記以外の紫外線吸収剤、上記以外の油性成分、乳化剤(界面活性剤)、紫外線散乱剤、保湿剤、粉体、香料、防腐剤、植物エキス、フッ素化合物、樹脂、粘剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等を配合することができる。
【0023】
本発明の油中水型乳化組成物は、化粧クリーム、乳液、サンスクリーン剤、化粧下地等の皮膚化粧料に応用できる。
【実施例】
【0024】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例に先立ち、各実施例で採用した評価方法を説明する。
【0025】
<官能特性評価>
10名の専門パネラーが評価試料を顔面に塗布し、その時の感触(のびの良さ、べたつき感の無さ)について、下記評価基準に従って5段階で評点をつけた。専門パネラー10名の評点の平均点を求め、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を◎、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
【0026】
(評価基準)
5:非常に好ましい
4:好ましい
3:どちらともいえない
2:好ましくない
1:非常に好ましくない
【0027】
<下地効果>
10名の専門パネラーが評価試料を顔面に塗布し、その上から市販のファンデーションにより化粧を行い、その時のファンデーションの塗布性(均一に肌に塗布されるかどうか)及び5時間経過後の化粧状態に関して、上記と同様の評価基準に従って5段階で評点をつけた。専門パネラー10名の評点の平均点を求め、4.0以上を◎、3.0以上4.0未満を◎、2.0以上3.0未満を△、2.0未満を×とした。
【0028】
<保存安定性>
評価試料を、遠心分離機(高速冷却遠心機CR21G、日立工機社製)で遠心分離処理した(20℃、5000rpm、1時間)。処理後の状態を目視観察し、3段階[○:状態変化なし、△:僅かに分離を認める、×:明らかに分離を認める]で評価した。
【0029】
実施例1〜3、比較例1〜3(化粧クリーム)
表1に示した処方の油中水型乳化組成物(化粧クリーム)を常法により作製し、前記各評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。尚、表1における配合量は質量%である。
【0030】
(表1)

【0031】
表1に示すように、本発明の実施例は、のびが良く、べたつきが無く、優れた下地効果を有し、保存安定性にも優れていた。一方、必須成分のいずれかを欠いた比較例は、官能特性、下地効果、保存安定性のいずれかの点で劣ることがわかる。
【0032】
実施例4(サンスクリーン剤)
原 料 名 配合量(質量%)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. デカメチルシクロペンタシロキサン 12.0
2. カプリリルメチコン 10.0
3. モノイソステアリン酸ソルビタン 1.2
4. ポリオキシアルキレンアルキル共変性 1.0
オルガノポリシロキサン(注1)
5. 架橋型ポリエーテル変性シリコーン混合物(注3) 4.0
6. ポリオキシアルキレン変性シリコーン混合物(注4) 5.0
7. ジメチルポリシロキサン(6cs) 5.0
8. メチルフェニルポリシロキサン(注5) 5.0
9. シリコーン処理微粒子酸化亜鉛 15.0
10. 1,3−ブチレングリコール 7.0
11. グリチルリチン酸ステアリル 0.1
12. フェノキシエタノール 0.3
13. 精製水 残 部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
注4:BY22−008(東レダウコーニング社製)
注5:SH−556(東レダウコーニング社製)
【0033】
上記組成の油中水型乳化組成物(サンスクリーン剤)を作製し評価したところ、のびが良く、べたつきが無く、下地効果に優れ、保存安定性の点においても優れていた。
【0034】
上記実施例4において使用したシリコーン処理微粒子酸化亜鉛は、次のように調製した。微粒子酸化亜鉛ZnO350(住友大阪セメント社製、平均一次粒子径20nm、比表面積45m2/g)96質量部と、メチルハイドロジェンポリシロキサンHRS−2(信越化学工業社製)4質量部を、ヘキサン400質量部と共に混合しスラリー化した後、減圧下に加熱しヘキサンを除去し、ついで得られた粉末をアトマイザー(ピンミル)を用いて粉砕し、ステンレス製バットに移した。ステンレス製バットを送風気流型で熱交換器を有するガス式乾燥機に入れ、室温から180℃まで2時間かけて昇温させた後に180℃にて10時間乾燥させてシリコーン処理微粒子酸化亜鉛を得た。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の油中水型乳化組成物は、のびが良く、べたつきが無く、下地効果に優れ、保存安定性にも優れており、化粧クリーム、乳液、サンスクリーン剤、化粧下地等の皮膚化粧料として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)揮発性シリコーン油、(B)モノイソステアリン酸ソルビタン及び/又はモノイソステアリン酸ジグリセリル、及び(C)下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサンを含有する油中水型乳化組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、xは5〜50、yは1〜30、zは20〜200、aは2〜20、bは1〜5、cは2〜20、dは0〜20の整数を表す。)
【請求項2】
さらに(D)下記一般式(2)で表される架橋型ポリエーテル変性シリコーンを含有する請求項1記載の油中水型乳化組成物。
【化2】

(式中、p1、p2は10〜200、qは1〜10、rは3〜20の整数を表す。)

【公開番号】特開2010−120913(P2010−120913A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298807(P2008−298807)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】