説明

油圧作業機械の流量制御装置

【課題】特定アクチュエータへ供給可能な最大流量である設定流量の設定調整を、オペレータが行うことができる油圧作業機械の流量制御装置の提供。
【解決手段】第1油圧ポンプ1及び第2油圧ポンプ2と、これらの油圧ポンプ1,2から吐出される圧油を合流させる開閉弁3と、この開閉弁3を介して供給される合流圧油によって小割圧砕機を作動させる小割圧砕機用アクチュエータ4、旋回モータを含む複数のアクチュエータとを有する油圧ショベルに備えられ、小割圧砕機用アクチュエータ4に供給可能な最大流量が、予めコントローラ9の記憶部9dに小割圧砕機用アクチュエータに係る設定最大流量Q1として記憶されるとともに、この油圧ショベルに設けられ、小割圧砕機用アクチュエータ4に係る設定最大流量Q1を変更可能なモニタ装置10の入力装置10b等を含む流量調整手段を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の油圧ポンプからの合流された圧油で駆動し、特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータを有する油圧ショベル等の油圧作業機械に備えられ、特定アクチュエータに供給可能な最大流量が予め設定される油圧作業機械の流量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の油圧ポンプからの合流された圧油で駆動し、特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータを備えた油圧作業機械は、特許文献1に開示されている。
【0003】
また、アタッチメントのモード切換手段の切り換え動作に応じて、過負荷とならないようにポンプの最大トルクを設定してポンプレギュレータを制御することにより油圧ポンプの吐出量を制限し、アタッチメントの種類に応じた最大流量を設定する従来技術として、特許文献2に示されるものがある。
【特許文献1】特開2004−245262公報
【特許文献2】特許第3609923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に示されるような合流回路に備えられる特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータへの最大流量を、例えば特許文献2に示されるようにして予め設定する場合、従来一般に、その最大流量の設定は油圧作業機械を製作したメーカ側に依存されている。したがって、現実の作業の実施に際して油圧作業機械の特定アクチュエータの作動態様が、その油圧作業機械のオペレータの意図する作動態様に合致しないことも起こり得る。
【0005】
このような場合、油圧作業機械のメーカ側に特定アクチュエータの設定された最大流量の調整を依頼することが行われている。この依頼によりメーカ側の保守サービス員は、その油圧作業機械が配備されている作業現場まで携帯型の特殊な装置を持参し、その特殊な装置を油圧作業機械のコントローラに接続して、オペレータの意図する作動態様となるようにポンプの最大トルクの調整等の必要な操作を実施して、予め設定された特定アクチュエータへの最大流量を、設定されている流量から変更させる処理を行っている。
【0006】
すなわち、従来にあっては、予め設定された特定アクチュエータへの最大流量を変更させる設定調整を、油圧作業機械のオペレータが行うことができず、このためにこの設定調整が煩雑になって時間がかかり、設定調整が行われるまでの間の油圧作業機械の操作性が低下する問題がある。
【0007】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、特定アクチュエータへ供給可能な最大流量である設定流量の設定調整を、オペレータが行うことができる油圧作業機械の流量制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、複数の油圧ポンプと、これらの油圧ポンプから吐出される圧油を合流させる合流手段と、この合流手段を介して供給される合流圧油によって特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータを含む複数のアクチュエータとを有する油圧作業機械に備えられ、上記特定アクチュエータに供給可能な最大流量が予め特定アクチュエータ設定流量として設定される油圧作業機械の流量制御装置において、上記油圧作業機械に設けられ、上記特定アクチュエータ設定流量を変更可能な流量調整手段を備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、流量調整手段を操作することにより、特定アクチュエータへ供給可能な最大流量である特定アクチュエータ用設定流量を変更させることができる。この流量調整手段は油圧作業機械に設けられているので、オペレータによる設定調整が可能となる。すなわち、特定アクチュエータへ供給可能な予め設定された最大流量の変更を流量調整手段を介して、オペレータが容易にリアルタイムに行うことができる。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、上記流量調整手段が、上記油圧作業機械に備えられるモニタ装置の入力装置と、この入力装置が接続されるコントローラとを含むことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、油圧作業機械に搭載されることが多いモニタ装置を、特定アクチュエータへの最大流量の設定調整に有効に活用させることができる。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、上記合流手段による上記複数の油圧ポンプから吐出される圧油の合流操作と、上記複数の油圧ポンプのうちの1つの油圧ポンプから吐出される圧油のみの供給操作のいずれか一方の操作を選択可能な選択手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、選択手段によって複数の油圧ポンプの圧油の合流操作が選択されたときには、特定アクチュエータを駆動させることができ、1つの油圧ポンプのみの圧油の供給操作が選択されたときには、1つの油圧ポンプからの圧油によって要求流量が比較的少ない、あるいは、ほとんど他のアクチュエータとの複合操作が実施されない別のアクチュエータを駆動させることができる。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、上記コントローラが、上記選択手段で上記合流操作が選択されたとき、上記モニタ装置の画面を合流流量に関係する画面である第1画面に切り換え、上記選択手段で1つの油圧ポンプから吐出される圧油の供給操作が選択されたとき、上記モニタ装置の画面を上記1つの油圧ポンプから吐出される圧油の流量に関係する画面である第2画面に切り換える画面切換手段を含むことを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、モニタ装置の画面を、コントローラに含まれる画面切換手段によって、合流時、非合流時のそれぞれに対応する第1画面、あるいは第2画面に自動的に切り換えることができ、モニタ装置の画面を見ながら特定アクチュエータの最大流量の設定調整を精度良く行うことができる。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、上記コントローラが上記特定アクチュエータ設定流量を記憶する記憶部を含むとともに、上記流量調整手段が、上記選択手段で上記合流操作が選択されたとき、上記コントローラの上記記憶部で記憶される上記特定アクチュエータ設定流量に相当する流量を上記特定アクチュエータへ供給可能にする流量制御弁と、上記モニタ装置の上記入力装置における操作に伴って上記コントローラから出力される制御信号に応じて駆動され、上記流量制御弁を制御可能な電磁弁とを含むことを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、上記複数のアクチュエータが、上記合流手段を介して供給される圧油によって駆動し、上記特定アクチュエータとは異なる他のアクチュエータを含み、上記コントローラの上記記憶部に、上記他のアクチュエータに供給可能な最大流量である他のアクチュエータ設定流量を記憶させ、上記記憶部に記憶される上記特定アクチュエータ設定流量、及び上記他のアクチュエータ設定流量のそれぞれに相当する流量を上記特定アクチュエータ、上記他のアクチュエータに供給可能にしたことを特徴としている。このように構成した本発明は、特定アクチュエータと他のアクチュエータとの精度の高い複合操作を実現できる。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、上記特定アクチュエータ設定流量と上記他のアクチュエータ設定流量の合計流量を、上記合流手段の作動による合流流量に等しくなるように設定し、上記コントローラが、上記流量調整手段による上記特定アクチュエータ設定流量の変更に伴い、その変更された特定アクチュエータ設定流量と上記合流流量とに基づいて、上記他のアクチュエータ設定流量を変更させる処理を行う処理手段を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、予め設定される特定アクチュエータへの最大流量を変更可能な流量調整手段を油圧作業機械に設けたことから、この流量調整手段による特定アクチュエータへの最大流量の設定調整をオペレータが行うことができ、この特定アクチュエータへの最大流量の設定調整が従来よりも容易であるとともに、リアルタイムに行うことができ、油圧作業機械の操作性を従来に比べて向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,本発明に係る油圧作業機械の流量制御装置を実施するための最良の形態を図に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る油圧作業機械の流量制御装置の一実施形態を示す油圧回路図、図2は図1に示す一実施形態に備えられるモニタ装置を示す図で、(a)図は第1画面を示す図、(b)図は第1画面とは異なる第2画面を示す図である。
【0022】
本実施形態に係る流量制御装置は、油圧作業機械、例えば油圧ショベルに備えられるものである。図示しないが油圧ショベルは、走行体、旋回体の他、ブーム、アーム、バケットが含まれるフロント作業機等を備えている。また、走行体を駆動する走行モータ、旋回体を駆動する旋回モータ、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、バケットを駆動するバケットシリンダ等の複数のアクチュエータを備えている。さらに、バケットに代えて小割圧砕機、ブレーカ等の特定アタッチメントが装着されて作業が行われることもある。この場合には、特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータが備えられる。
【0023】
本実施形態は、バケットに代えて特定アタッチメント、例えば建物を形成していたコンクリート壁が破壊されて生じたコンクリート塊を、把持した状態で圧力をかけ、細かく砕く作業などに活用される小割圧砕機を備えるとともに、この小割圧砕機を作動させる小割圧砕機用アクチュエータを特定アクチュエータとして備えたものである。説明を簡単にするために、図1においては、走行モータ、旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダ等の他のアクチュエータ、及びこれらの他のアクチュエータの操作回路部分については、図示を省略してある。
【0024】
図1に示すように、本実施形態は、複数の油圧ポンプ例えばそれぞれ可変容量型油圧ポンプから成る第1油圧ポンプ1、及び第2油圧ポンプ2を備えている。第1油圧ポンプ1の押しのけ容積はポンプレギュレータ1aによって制御される。ポンプレギュレータ1aは、電磁弁15を介して供給されるパイロット圧によって制御される。
【0025】
また、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油と第2油圧ポンプ2から吐出される圧油を合流させる合流手段、例えば開閉弁3と、この開閉弁3を切り換えるパイロット圧の供給が可能な電磁弁11を備えている。
【0026】
また、開閉弁3を介して供給される第2油圧ポンプ2の圧油と、第1油圧ポンプ1の圧油とが合流して供給され、特定アタッチメントである図示しない小割圧砕機を作動させる特定アクチュエータ、すなわち小割圧砕機用アクチュエータ4を備えている。これらの第1油圧ポンプ1、第2油圧ポンプ2と、小割圧砕機用アクチュエータ4との間には、小割圧砕機用アクチュエータ4の作動を制御する方向制御弁6を配置してある。この方向制御弁6は、操作装置5の操作に伴って供給されるパイロットポンプ14の二次圧によって切り換え操作される。
【0027】
前述した方向制御弁6と、第1油圧ポンプ1との間には、第1油圧ポンプ1から方向制御弁6へ供給される流量を制御可能な流量制御弁12を設けてある。この流量制御弁12の開口量は、電磁弁13を介して供給されるパイロットポンプ14の二次圧によって制御される。
【0028】
なお、前述した開閉弁3を制御する電磁弁11には、操作装置5の操作に伴って発生するパイロットポンプ14の二次圧が、シャトル弁5aによって取り出されて供給されるようになっている。
【0029】
また、本実施形態は、運転室8内にモニタ装置10とコントローラ9とを備えている。また、コントローラ9に接続可能な例えば携帯型のオン・オフ操作器7を備えている。このオン・オフ操作器7は、例えば運転室8内の所定の場所に保管されるようになっている。
【0030】
モニタ装置10は、画面を表示する表示部10aと、複数の操作キーが配列されている入力装置10bとを備えている。コントローラ9は、入力部9a、出力部9b、演算部9c、及び記憶部9dを備えている。前述したモニタ装置10の入力装置10b、及び電磁弁11,13,15は、このコントローラ9に接続されている。
【0031】
前述したオン・オフ操作器7は、開閉弁3の作動による第2油圧ポンプ2の圧油と第1油圧ポンプ1の圧油の合流操作と、2つの油圧ポンプ1,2のうちの1つの油圧ポンプ、すなわち第1油圧ポンプ1から吐出される圧油のみの供給操作のいずれか一方の操作を選択可能な選択手段を構成している。
【0032】
コントローラ9の記憶部9dには、例えば第1油圧ポンプ1の最大吐出流量QA、第2油圧ポンプ2の最大吐出流量QB、これらの最大吐出流量QA,QBの合計流量QTの他に、例えば小割圧砕機用アクチュエータ4の要求される設定最大流量Q1、図示しない旋回モータの要求される設定最大流量Q2、図示しないブレーカ用アクチュエータの要求される設定最大流量Q3等のアクチュエータが要求する設定最大流量が予め記憶されている。なお例えば、小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1と、図示しない旋回モータの設定最大流量Q2と、第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の合計流量QTとの関係が、Q1+Q2=QTとなるようにQ1,Q2を設定してある。
【0033】
また、コントローラ9の演算部9cには、モニタ装置10の表示部10aに図2の(a)図に示す第1画面が表示された際の入力装置10bの操作キー10b1の押し操作に応じて前述した小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1を減少させ、操作キー10b2の押し操作に応じて設定最大流量Q1を増加させる処理を行う小割圧砕機用アクチュエータ流量増減手段が備えられている。また、モニタ装置10の表示部10aに図2の(b)図に示す第2画面が表示された際の入力装置10bの操作キー10b1の押し操作に応じて例えば図示しないブレーカ用アクチュエータの設定最大流量Q3を減少させ、操作キー10b2の押し操作に応じて設定最大流量Q3を増加させる処理を行うブレーカ用アクチュエータ流量増減手段が備えられている。
【0034】
さらに、この演算部9cには、前述したオン・オフ操作器7で第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の合流操作が選択されたとき、モニタ装置10の表示部10aの画面を合流流量に関係する画面である図2の(a)図に示す第1画面に切り換え、オン・オフ操作器7で第1油圧ポンプ1から吐出される圧油のみの供給操作が選択されたとき、モニタ装置10の表示部10aの画面を第1油圧ポンプ1から吐出される圧油の流量に関係する画面である図2の(b)図に示す第2画面に切り換える画面切換手段が備えられている。
【0035】
また、この演算部9cには、小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1の変更に伴い、その変更された設定最大流量と、前述した第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の合計流量QTとに基づいて、他のアクチュエータ、例えば図示しない旋回モータの設定最大流量Q2を変更させる処理を行う処理手段が備えられている。
【0036】
上述した各構成要素のうちの流量制御弁12、電磁弁13、パイロットポンプ14、コントローラ9、及びモニタ装置10の入力装置10bは、本実施形態に係る流量制御装置を構成するとともに、コントローラ9の記憶部9dに予め記憶されている特定アクチュエータ設定流量、すなわち小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1を変更可能な流量調整手段を構成している。また、この流量調整手段は、この油圧ショベルに備えられる機器によって構成されている。すなわち、この流量調整手段は、油圧ショベルに設けられている。
【0037】
上述のように構成した本実施形態の動作について以下に説明する。
【0038】
[第1油圧ポンプと第2油圧ポンプの合流操作]
今例えば、特定アクチュエータである小割圧砕機用アクチュエータ4と、図示しないアクチュエータである旋回モータとの複合操作によって、旋回させながら小割圧砕機を駆動させる操作が行われているものとする。
【0039】
なお、このような複合操作の実施に際しては、オン・オフ操作器7がコントローラ9に接続され、例えばオン・オフ操作器7のオン操作が行われる。
【0040】
これによりオン・オフ操作器7のオン信号がコントローラ9の入力部9aを介して演算部9cに入力され、このオン信号に応じて演算部9cの画面切換手段によってモニタ操作10の表示部10aの画面が図2の(a)図に示す第1画面に自動的に切り換えられる。
【0041】
前述のように演算部9cにオン・オフ操作器7のオン信号が入力されると、この演算部9cにおける指令により出力部9bから電磁弁11に制御信号が出力され、この電磁弁11は図1に示す上段位置に切り換えられる。これにより操作装置5の操作に伴って発生したパイロット圧が、シャトル弁5a、電磁弁11を介して開閉弁3の制御部に与えられる。図1は、このようにして開閉弁3が開位置に切り換えられた状態が示されている。
【0042】
開閉弁3が開位置となることにより、第2油圧ポンプ2の圧油が開閉弁3を介して方向制御弁6に供給され、第1油圧ポンプ1の圧油が開位置に保持されている流量制御弁12を介して方向制御弁6に与えられる。したがって、操作装置5の操作に伴って第1油圧ポンプ1の圧油と第2油圧ポンプ2の圧油の合流流量の一部が方向制御弁6を介して小割圧砕機用アクチュエータ4に供給され、残りの流量が図示しない旋回用方向制御弁を介して図示しない旋回モータに供給される。このようにして旋回と小割圧砕機の複合操作が行われる。
【0043】
このように旋回と小割圧砕機の複合操作が行われている状態において、この複合操作における良好な操作性を得ようとして、オペレータが予め設定されている小割圧砕機用アクチュエータ4への設定最大流量Q1を調整しようとしたときには、すなわち設定最大流量Q1の設定調整を必要と感じたときには、例えばモニタ装置10の表示部10aに表示されている第1画面を見ながらの入力装置10bの操作キー10b1、あるいは10b2の押し操作が行われる。例えば、オペレータによって入力装置10bの操作キー10b2が1回押されると、単位増量値+ΔQ1に相当する信号が入力装置10bからコントローラ9に出力される。2回押されると+2ΔQ1に相当する信号が、3回押されると+3ΔQ1に相当する信号がそれぞれコントローラ9に出力される。これとは逆に、入力装置10bの操作キー10b1が1回押されると、単位減量値−ΔQ1に相当する信号が入力装置10bからコントローラ9に出力される。2回押されると−2ΔQ1に相当する信号が、3回押されると−3ΔQ1に相当する信号がそれぞれコントローラ9に出力される。
【0044】
このような入力装置10bからの増減信号を入力部9aを介して入力したコントローラ9の演算部9cは、小割圧砕機用アクチュエータ流量増減手段により、記憶部9dに記憶されている小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1を増減させる処理を行う、すなわち、
Q1=Q1±nΔQ1 (n=1,2,3,・・・)
の演算を行う。
【0045】
この演算に伴い、図示しない旋回モータの設定最大流量Q2も、
Q2=QT−(Q1±nΔQ1)
に変更される。この演算は、演算部9cに含まれる処理手段によって実行される。
【0046】
このような演算で求められた小割圧砕機用アクチュエータ4に係る新たな設定最大流量Q1、及び旋回モータに係る新たな設定最大流量Q2が、記憶部9dにそれまでのものに書き換えられて記憶される。
【0047】
これとともに、小割圧砕機用アクチュエータ4に係る新たな設定最大流量Q1に相当する制御信号が出力部9bから電磁弁13に出力される。これにより電磁弁13が作動し、パイロットポンプ14から供給されるパイロット圧が電磁弁13を介して流量制御弁12のパイロット制御部に与えられ、流量制御弁12はその開口量を変更する。これに応じて第1油圧ポンプ1から流量制御弁12を介して方向制御弁6に供給される流量が、前述した入力装置10bの操作キー10b1、あるいは10b2の操作に応じた流量となるように制御され、小割圧砕機用アクチュエータ4に供給される流量と、図示しない旋回モータに供給される流量の合流流量の割合がオペレータの望む作動態様となるように変化する。すなわち、オペレータの意図する旋回と小割圧砕機の複合操作を実現させることができる。
【0048】
なお上記では、第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の合流流量による旋回と小割圧砕機の複合操作を例に挙げて説明したが、本発明は、このような旋回と小割圧砕機の複合操作に限らない。特定アタッチメントの種類に応じて様々な複合操作を、オペレータの望む作動態様となるように、油圧ショベルに設けた流量調整手段を介して同様にして実現させることができる。
【0049】
また、第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の合流流量による特定アタッチメントの単独操作においても同様であり、設定最大流量を入力装置10bの操作キーの操作によってオペレータの望む作動態様となるように設定調整することができる。
【0050】
[第1油圧ポンプの圧油のみの供給操作]
今例えば、小割圧砕機に代えてブレーカが装着され、小割圧砕機用アクチュエータ4に代えて図示しないブレーカ用アクチュエータが設けられ、第1油圧ポンプ1の圧油のみが方向制御弁6を介して図示しないブレーカ用アクチュエータに供給され、ブレーカの操作が行われるものとする。このとき例えば、オン・オフ操作器7がコントローラ9に接続され、オン・オフ操作器7のオフ操作が選択される。
【0051】
オン・オフ操作器7のオフ信号が入力部9aを介して演算部9cに入力され、この演算部9cはオフ信号に応じて画面切換手段によってもモニタ装置10の表示部10aの画面を図2の(b)図に示す第2画面に自動的に切り換えられる。
【0052】
前述のように演算部9cにオフ信号が入力されると、電磁弁11は下段位置となり、開閉弁3はばね力により閉位置に保持される。すなわち、第2油圧ポンプ2の圧油の供給が阻止され、第1油圧ポンプ1の圧油のみが流量制御弁12を介して方向制御弁6に供給される状態となる。
【0053】
このようにしてブレーカ操作が行われている状態において、このブレーカ操作の良好な操作性を得ようとして、オペレータが予め設定されている図示しないブレーカ用アクチュエータへの設定最大流量Q3の調整、すなわち設定調整の必要を感じたときには、モニタ装置10の表示部10aに表示されている図2の(b)に示す第2画面を見ながらの入力装置10bの操作キー10b1、あるいは10b2の押し操作が行われる。例えばオペレータによって例えば入力装置10bの操作キー10b2が1回押されると、単位増量値+ΔQ3に相当する信号が入力装置10bからコントローラ9に出力される。2回押されると、+2ΔQ3に相当する信号が、3回押されると+3ΔQ3に相当する信号が入力装置10bからそれぞれコントローラ9に出力される。これとは逆に、入力装置10bの操作キー10b1が1回押されると、単位減量値−ΔQ3に相当する信号が入力装置10bからコントローラ9に出力される。2回押されると、−2ΔQ3に相当する信号が、3回押されると−3ΔQ3に相当する信号が入力装置10bからそれぞれコントローラ9に出力される。
【0054】
このような入力装置10bからの増減信号を入力した演算部9cは、図示しないブレーカ用アクチュエータの設定最大流量Q3を増減させる処理、すなわち、
Q3=Q3±nΔQ3 (n=1,2,3,・・・)
を演算する。
【0055】
このような演算で求められたブレーカ用アクチュエータに係る新たな設定最大流量Q3が記憶部9dにそれまでのものに書き換えられて記憶される。また、ブレーカ用アクチュエータに係る新たな設定最大流量Q3に相当する制御信号が出力部9bから電磁弁15に出力される。これにより電磁弁15が作動し、パイロットポンプ14から供給されるパイロット圧が電磁弁15を介してポンプレギュレータ1aの制御部に与えられ、このポンプレギュレータ1aを作動させる。このポンプレギュレータ1aの作動により第1油圧ポンプ1の押しのけ容積が変更される。すなわち、方向制御弁6を介して図示しないブレーカ用アクチュエータに供給される流量が、入力装置10bの操作キー10b1、あるいは10b2の操作に応じた流量となるように制御され、図示しないブレーカ用アクチュエータに供給される流量がオペレータの望む作動態様となるように変化する。このようにして、オペレータの意図するブレーカ操作を実現させることができる。
【0056】
なお、上記ではブレーカ操作を例に挙げて説明したが、ブレーカに代えて各種の特定アタッチメントを設けることができる。すなわち、第1油圧ポンプ1から吐出される圧油のみによって駆動可能なものにあって、予め設定されている最大流量の設定調整をする場合には、上述と同様にしてこの設定調整を実現させることができる。
【0057】
以上のように構成した本実施形態によれば、流量調整手段を構成するモニタ装置10の入力装置10bの操作キー10b1,10b2を押し操作することにより、特定アクチュエータである小割圧砕機用アクチュエータ5の設定最大流量Q1を変更させることができる。この入力装置10bを含む流量調整手段の構成要素は全てこの油圧ショベルに設けられている。したがって、この油圧ショベルのオペレータによる小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1の設定調整が可能となる。すなわち、小割圧砕機用アクチュエータ4へ供給可能な予め設定された最大流量の変更を流量調整手段を介して、オペレータが容易にリアルタイムに行うことができる。これにより、油圧ショベルの操作性を向上させることができる。
【0058】
また、オン・オフ操作器7によって第1油圧ポンプ1と第2油圧ポンプ2の圧油の合流操作が選択されたときには、特定アクチュエータである小割圧砕機用アクチュエータ4を駆動させることができ、第1油圧ポンプ1の圧油のみの供給操作が選択されたときには、第1油圧ポンプ1からの圧油のみによって要求流量が比較的少ない、あるいは、ほとんど他のアクチュエータとの複合操作が実施されない別のアクチュエータ、例えばブレーカ用アクチュエータを駆動させることができる。
【0059】
また、油圧ショベルに搭載されることが多いモニタ装置10を、小割圧砕機用アクチュエータ4の最大流量の設定調整に有効に活用させることができる。
【0060】
また、モニタ装置10の表示部10aの画面を、コントローラ9の演算部9cに含まれる画面切換手段によって、合流時、非合流時のそれぞれに対応する第1画面、あるいは第2画面に自動的に切り換えることができ、モニタ装置10の画面を見ながら小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1の設定調整を精度良く行うことができる。
【0061】
また、コントローラ9の記憶部9dに記憶される小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1と、旋回モータの設定最大流量Q2のそれぞれに相当する流量を、小割圧砕機用アクチュエータ4に係る方向制御弁6、および図示しない旋回モータ用方向制御弁を介して小割圧砕機用アクチュエータ4、旋回モータのそれぞれに供給可能にしたことから、小割圧砕機用アクチュエータ4と、旋回モータとの複合操作、すなわち旋回しながらの小割圧砕機の作動を高い精度で実現させることができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、2つの油圧ポンプ1,2の合流、及び非合流を選択する選択手段として携帯型のオン・オフ操作器7を備えた構成にしてあるが、本発明は、このように構成することには限られない。例えば、運転室8内に配置されるオン・オフスイッチによって構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、特定アクチュエータ設定最大流量、すなわち小割圧砕機用アクチュエータ4の設定最大流量Q1を変更可能な流量調整手段が、モニタ装置10の入力装置10bを含む構成になっているが、本発明は、このように構成することには限られない。入力装置10bに相当するもの、すなわち設定最大流量Q1を増減させる信号を出力させる装置を、モニタ装置10の入力装置10bとは別に、例えば回転操作式のダイヤル操作器等によって構成し、そのようなダイヤル操作器等を運転室8内に配置する構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る油圧作業機械の流量制御装置の一実施形態を示す油圧回路図である。
【図2】図1に示す一実施形態に備えられるモニタ装置を示す図で、(a)図は第1画面を示す図、(b)図は第1画面とは異なる第2画面を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 第1油圧ポンプ
1a ポンプレギュレータ
2 第2油圧ポンプ
3 開閉弁(合流手段)
4 小割圧砕機用アクチュエータ(特定アクチュエータ)
5 操作装置
5a シャトル弁
6 方向制御弁
7 オン・オフ操作器(選択手段)
8 運転室
9 コントローラ(流量調整手段)
9a 入力部
9b 出力部
9c 演算部
9d 記憶部
10 モニタ装置
10a 表示部
10b 入力装置(流量調整手段)
10b1 操作キー
10b2 操作キー
11 電磁弁
12 流量制御弁(流量調整手段)
13 電磁弁(流量調整手段)
14 パイロットポンプ(流量調整手段)
15 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の油圧ポンプと、これらの油圧ポンプから吐出される圧油を合流させる合流手段と、この合流手段を介して供給される合流圧油によって特定アタッチメントを作動させる特定アクチュエータを含む複数のアクチュエータとを有する油圧作業機械に備えられ、
上記特定アクチュエータに供給可能な最大流量が予め特定アクチュエータ設定流量として設定される油圧作業機械の流量制御装置において、
上記油圧作業機械に設けられ、上記特定アクチュエータ設定流量を変更可能な流量調整手段を備えたことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の発明において、
上記流量調整手段が、上記油圧作業機械に備えられるモニタ装置の入力装置と、この入力装置が接続されるコントローラとを含むことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項3】
上記請求項2記載の発明において、
上記合流手段による上記複数の油圧ポンプから吐出される圧油の合流操作と、上記複数の油圧ポンプのうちの1つの油圧ポンプから吐出される圧油のみの供給操作のいずれか一方の操作を選択可能な選択手段を備えたことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項4】
上記請求項3記載の発明において、
上記コントローラが、
上記選択手段で上記合流操作が選択されたとき、上記モニタ装置の画面を合流流量に関係する画面である第1画面に切り換え、上記選択手段で1つの油圧ポンプから吐出される圧油のみの供給操作が選択されたとき、上記モニタ装置の画面を上記1つの油圧ポンプから吐出される圧油の流量に関係する画面である第2画面に切り換える画面切換手段を含むことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項5】
上記請求項3項記載の発明において、
上記コントローラが上記特定アクチュエータ設定流量を記憶する記憶部を含むとともに、
上記流量調整手段が、
上記選択手段で上記合流操作が選択されたとき、上記コントローラの上記記憶部で記憶される上記特定アクチュエータ設定流量に相当する流量を上記特定アクチュエータへ供給可能にする流量制御弁と、上記モニタ装置の上記入力装置における操作に伴って上記コントローラから出力される制御信号に応じて駆動され、上記流量制御弁を制御可能な電磁弁とを含むことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項6】
上記請求項5記載の発明において、
上記複数のアクチュエータが、上記合流手段を介して供給される圧油によって駆動し、上記特定アクチュエータとは異なる他のアクチュエータを含み、
上記コントローラの上記記憶部に、上記他のアクチュエータに供給可能な最大流量である他のアクチュエータ設定流量を記憶させ、
上記記憶部に記憶される上記特定アクチュエータ設定流量、及び上記他のアクチュエータ設定流量のそれぞれに相当する流量を上記特定アクチュエータ、上記他のアクチュエータに供給可能にしたことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。
【請求項7】
上記請求項6記載の発明において、
上記特定アクチュエータ設定流量と上記他のアクチュエータ設定流量の合計流量を、上記合流手段の作動による合流流量に等しくなるように設定し、
上記コントローラが、
上記流量調整手段による上記特定アクチュエータ設定流量の変更に伴い、その変更された特定アクチュエータ設定流量と上記合流流量とに基づいて、上記他のアクチュエータ設定流量を変更させる処理を行う処理手段を含むことを特徴とする油圧作業機械の流量制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−162866(P2007−162866A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361883(P2005−361883)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】