説明

油圧回路

【課題】素早い動作が要求される油圧シリンダに対して油の供給制御を行う場合にも再生効率を向上すること。
【解決手段】ヘッド側油通路42及びボトム側油通路41の間の連通状態を切り換える再生用切換弁60は、通常状態においては再生油通路45を遮断する一方、ヘッド室10bと可変絞り弁50との間の圧力が、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合にのみ再生油通路45を連通させるように構成し、ヘッド側油通路42において再生油通路45との接続点から方向切換弁30までの間に配設した可変絞り弁50は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、ヘッド室10bと可変絞り弁50との間の圧力が、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合には差圧の大きさに従って絞りの開口面積が大きくなるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路に関するもので、詳細には、油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路との間を接続する再生油通路を備えるとともに、再生油通路にヘッド側油通路及びボトム側油通路の間を連通した状態と遮断した状態とに切り換える再生用切換弁を備えた油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダによって作業機を動作させるようにした建設機械には、再生油通路及び再生用切換弁を備えた油圧回路を適用するものが提供されている。この油圧回路では、油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路との間が再生油通路によって接続されているとともに、再生油通路に再生用切換弁が配設されている。再生用切換弁は、通常状態にある場合、再生油通路を遮断した状態に維持されている。一方、油圧シリンダが伸長動作される場合には、操作弁から方向切換弁に出力されるパイロット圧の一部が再生用切換弁に加えられ、再生用切換弁が開くことで再生油通路が開放される。
【0003】
従って、この油圧回路によれば、油圧シリンダのヘッド室から排出された油の一部を、油タンクに戻すことなくボトム室に供給し、油圧シリンダの伸長動作を早く行うことが可能となる。しかも、操作弁から出力されるパイロット圧によって再生用切換弁を切り換え動作させるようにしているため、操作弁の操作量に関わらず、油圧シリンダを伸長動作させる場合に常に再生油通路を介して油が再生されることになり、油の再生効率の点で有利となる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示された技術は、油圧ショベルのアーム用油圧シリンダに主眼を置いたものである。特許文献1には、再生用切換弁を設置する位置について開示されていないが、再生用切換弁にパイロット圧を作用させる配管が長くなることを避けるため、再生用切換弁を方向切換弁の近傍に設置することが好ましい。但し、方向切換弁の近傍に配置した場合には、油圧シリンダから再生用切換弁までの距離が長くなるため、圧力損失も大きくなる。
【0005】
特許文献1が適用対象とする油圧ショベルのアーム用油圧シリンダは、アームの動きを制御しながら駆動されるため、自然落下させるような素早い動作が要求されない。このため、メータアウト開口面積を小さく設定することができ、上流側の圧力を上昇させることができるため、ボトム室とヘッド室との間の有効差圧が比較的大きく設定され、上述の圧力損失が油の再生効率に大きな影響を与えることはない。
【0006】
しかしながら、例えばブルドーザのブレードを昇降させる油圧シリンダでは、ブレードを自然落下させる等、駆動対象に素早い動作が要求されるものもある。こうした油圧シリンダを備えた油圧回路では、メータアウト開口面積を小さく設定することができないため、ボトム室とヘッド室との間の有効差圧を大きくとることが困難である。このため、再生用切換弁を設ける位置が油圧シリンダから離れている場合には、圧力損失の影響によって油の再生効率が著しく低下する恐れがある。圧力損失を小さくして再生効率を高めるには、再生用切換弁を油圧シリンダの近傍に配置し、再生用切換弁と油圧シリンダとの間の配管長さを短くすることが有効である。しかしながら、この場合には、上述したように、再生用切換弁にパイロット圧を作用させる配管が長くなるという問題を招来する。
【0007】
一方、再生油通路及び再生用切換弁を備えた油圧回路には、操作弁からのパイロット圧に寄らずに再生用切換弁を切り換えるようにしたものも提供されている。例えば、図5及び図6に示す油圧回路は、油圧シリンダ1のヘッド室1aに接続されたヘッド側油通路2において再生油通路3の接続点から方向切換弁4までの間に絞り5を配設し、かつこの絞り5の前後差圧によって再生用切換弁6を切り換えるように構成したものである。
【0008】
この油圧回路では、絞り5の上流側の圧力が下流側の圧力よりも設定した値だけ大きくなると、図5に示す状態から図6に示す状態に切り換わり、再生油通路3が開放される。従って、ヘッド側油通路2とボトム側油通路7とが連通され、油圧シリンダ1のヘッド室1aから排出された油の一部を、方向切換弁4を経ることなくボトム室1bに供給することができ、油圧シリンダ1の伸長動作を早く行うことが可能となる。しかも、再生用切換弁6に対してパイロット圧を作用させるための配管が不要であるため、再生用切換弁6を油圧シリンダ1の近傍に配置することができ、ブレードを自然落下させるような素早い動作が要求される油圧シリンダ1に適用した場合にも油の再生効率を損なう恐れがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−230107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、建設機械に適用される油圧回路においては、負荷変動が発生した場合の油圧シリンダ1への影響を抑制するため、方向切換弁4にメータアウト開口面積4aが設定されている。図5及び図6に示した従来の油圧回路にあっては、上述した絞り5の開口面積をメータアウト開口面積4aよりも小さく設定することができない。このため、操作弁(図示せず)の操作量が小さく、ヘッド側油通路2に小量の油が通過しただけでは再生用切換弁6を切り換えることが困難であり、比較的大量の油が通過した場合にしか油の再生を行うことができない等、再生効率の点で必ずしも好ましいとはいえない。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みて、素早い動作が要求される油圧シリンダに対して油の供給制御を行う場合にも再生効率を向上することのできる油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧回路は、油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と、前記油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路と、油圧ポンプから吐出された油を供給する給油通路と、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路に対して前記給油通路の接続態様を切り換えることにより前記油圧シリンダの駆動を制御する方向切換弁と、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を接続する再生油通路と、前記再生油通路に配設し、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を連通した状態と遮断した状態とに切り換える再生用切換弁と、前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記方向切換弁までの間に配設した可変絞り弁とを備え、前記再生用切換弁は、通常状態においては前記再生油通路を遮断する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合にのみ前記再生油通路を連通させるように構成し、前記可変絞り弁は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合には差圧の大きさに従って前記絞りの開口面積が大きくなるように構成したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述した油圧回路において、前記可変絞り弁に対してバイパス油通路を設けるとともに、前記バイパス油通路に前記ヘッド室から前記方向切換弁に向いた油の通過を阻止するチェック弁を配設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る油圧回路は、油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と、前記油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路と、油圧ポンプから吐出された油を供給する給油通路と、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路に対して前記給油通路の接続態様を切り換えることにより前記油圧シリンダの駆動を制御する方向切換弁と、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を接続する再生油通路と、前記再生油通路に配設し、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を連通した状態と遮断した状態とに切り換える再生用切換弁と、前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記方向切換弁までの間に配設した可変絞り弁と、前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記可変絞り弁を迂回して前記方向切換弁までの間を接続するバイパス油通路と、前記バイパス油通路に配設し、前記ヘッド室から前記方向切換弁に向いた油の通過を阻止するチェック弁とを備え、前記再生用切換弁は、通常状態においては前記再生油通路を遮断する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合にのみ前記再生油通路を連通させるように構成し、前記可変絞り弁は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合には差圧の大きさに従って前記絞りの開口面積が大きくなるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ヘッド側油通路において再生油通路との接続点から方向切換弁までの間に可変絞り弁を配置し、かつこの可変絞り弁は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、ヘッド室と可変絞り弁との間の圧力が、可変絞り弁と方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合に差圧の大きさに従って絞りの開口面積が大きくなるように構成しているため、操作量が小さく、比較的小量の油を通過させた場合にも油の再生を行うことができ、再生効率を向上することが可能となる。しかも、大量の油を通過させる場合には、絞りの開口面積も大きくなるため、操作弁の操作によって油圧シリンダの動作を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である油圧回路を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した油圧回路において再生用切換弁が動作した状態を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した油圧回路において可変絞り弁が動作した状態を示す図である。
【図4】図4は、図1に示した油圧回路を適用した建設機械を概念的に示す斜視図である。
【図5】図5は、従来の油圧回路を示す図である。
【図6】図6は、図5に示した油圧回路において再生用切換弁が動作した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧回路の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態である油圧回路を示す図である。ここで例示する油圧回路は、油圧シリンダ10と、油圧シリンダ10に対して油圧ポンプ20からの油の供給方向を切り換える方向切換弁30とを備え、図示せぬ操作弁を介して方向切換弁30を動作させることにより油圧シリンダ10の駆動を制御するものである。本実施の形態では、特に、図4に示すブルドーザにおいてブレード(駆動対象)Bを昇降させる油圧シリンダ10を駆動するための油圧回路を例示している。油圧シリンダ10は、シリンダチューブ11に対してピストンロッド12が伸長/縮退動作するもので、シリンダチューブ11が車体Vに取り付けられ、ピストンロッド12の先端部がブレードBに取り付けられている。
【0019】
図1に示すように、油圧回路の方向切換弁30は、操作弁(図示せず)から出力されるパイロット圧により動作し、2つの入出力ポートap,bpに対する給油ポートcpとドレンポートdpとの接続態様を選択的に切り換えるものである。具体的には、操作弁(図示せず)からパイロット圧が供給されていない場合、両端の中立バネ31によって方向切換弁30が図1に示す中立位置にあり、2つの入出力ポートap,bpと、給油ポートcp及びドレンポートdpとの間を遮断した状態に維持する。この状態から、図1中において左方に位置する圧力室32aにパイロット圧が供給されると、図2に示すように、方向切換弁30が伸長位置に切り換わり、第1入出力ポートapと給油ポートcpとの間が接続されるとともに、第2入出力ポートbpとドレンポートdpとの間が接続される。これに対して図1に示す中立位置から図1中において右方に位置する圧力室32bにパイロット圧が供給されると、方向切換弁30が縮退位置に切り換わり(図示せず)、第1入出力ポートapとドレンポートdpとの間が接続されるとともに、第2入出力ポートbpと給油ポートcpとの間が接続された状態となる。図2に示すように、方向切換弁30の伸長位置において第2入出力ポートbpからドレンポートdpに至る弁通路33のメータアウト開口面積33aは、圧力室32aに供給されるパイロット圧の大きさに応じて変化する。
【0020】
方向切換弁30の第1入出力ポートapは、ボトム側油通路41を通じて油圧シリンダ10のボトム室10aに接続してあり、第2入出力ポートbpは、ヘッド側油通路42を通じて油圧シリンダ10のヘッド室10bに接続してある。方向切換弁30の給油ポートcpには、油圧ポンプ20の吐出口21との間を接続する供給油通路43が接続してあり、方向切換弁30のドレンポートdpには、油タンクTとの間を接続するドレン油通路44が接続してある。
【0021】
従って、方向切換弁30が伸長位置に切り換わると、図2に示すように、油圧シリンダ10のボトム室10aに接続されたボトム側油通路41が、方向切換弁30の第1入出力ポートap及び給油ポートcpを介して供給油通路43に接続されるとともに、油圧シリンダ10のヘッド室10bに接続されたヘッド側油通路42が方向切換弁30の第2入出力ポートbp及びドレンポートdpを介してドレン油通路44に接続される。これとは逆に、方向切換弁30が縮退位置に切り換わると(図示せず)、油圧シリンダ10のボトム室10aに接続されたボトム側油通路41が方向切換弁30の第1入出力ポートap及びドレンポートdpを介してドレン油通路44に接続されるとともに、ヘッド室10bに接続されたヘッド側油通路42が方向切換弁30の第2入出力ポートbp及び給油ポートcpを介して供給油通路43に接続されることになる。
【0022】
また、この油圧回路には、図1からも明らかなように、再生油通路45、可変絞り弁50、再生用切換弁60及びバイパス油通路70から構成される再生弁ユニット100が設けてある。
【0023】
再生油通路45は、ボトム側油通路41とヘッド側油通路42との間を接続する油通路であり、その途中に後述する再生用切換弁60を備えている。
【0024】
可変絞り弁50は、ヘッド側油通路42において再生油通路45との接続点から方向切換弁30までの間に配設したもので、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持し、かつヘッド室10bと可変絞り弁50との間の圧力と、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力との差圧に応じて絞りの開口面積を変更するものである。具体的に説明すると、可変絞り弁50の一方の端部には、絞りの開口面積が最小となる方向に向けて押圧する減少側圧力室51及び絞り用バネ52が設けてあり、他方の端部には、絞りの開口面積が増大する方向に向けて押圧する増大側圧力室53が設けてある。減少側圧力室51には、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力を作用させる第1圧力油路54が接続してあり、増大側圧力室53には、ヘッド側油通路42と再生油通路45との接続点の圧力を作用させる第2圧力油路55が接続してある。絞りの最大開口面積は、方向切換弁30のメータアウト開口面積33aの最大値以上に設定してある。
【0025】
再生用切換弁60は、ヘッド室10bと可変絞り弁50との間の圧力と、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力との差圧に応じて再生油通路45を開閉し、ヘッド側油通路42とボトム側油通路41との間を連通した状態と遮断した状態とに切り換えるものである。具体的に説明すると、再生用切換弁60の一方の端部には、再生油通路45を遮断する方向に向けて押圧する遮断側圧力室61及び遮断用バネ62が設けてあり、他方の端部には、再生油通路45を連通させる方向に向けて押圧する連通側圧力室63が設けてある。遮断側圧力室61には、可変絞り弁50と方向切換弁30との間の圧力を作用させる第3圧力油路64が接続してあり、連通側圧力室63には、ヘッド側油通路42と再生油通路45との接続点の圧力を作用させる第4圧力油路65が接続してある。
【0026】
バイパス油通路70は、ヘッド側油通路42において再生油通路45との接続点から可変絞り弁50を経ることなく可変絞り弁50と方向切換弁30との間に位置する部位に至る迂回通路である。バイパス油通路70には、ヘッド室10bから方向切換弁30に向いた油の通過を阻止するチェック弁71が設けてある。
【0027】
上記のように構成した油圧回路では、方向切換弁30を図1に示す中立位置から縮退位置に切り換えると、ボトム側油通路41が方向切換弁30の第1入出力ポートap及びドレンポートdpを介してドレン油通路44に接続されるとともに、ヘッド側油通路42が方向切換弁30の第2入出力ポートbp及び給油ポートcpを介して供給油通路43に接続される。従って、油圧ポンプ20の駆動により、油圧シリンダ10のヘッド室10bに油が供給されるとともに、ボトム室10aの油が油タンクTに排出されることになり、油圧シリンダ10が縮退してブルドーザのブレードBが上昇する。この場合、ヘッド側油通路42には、可変絞り弁50を設けるようにしているが、可変絞り弁50に対してバイパス油通路70を設けるようにしている。このため、方向切換弁30からヘッド側油通路42に吐出された油は、バイパス油通路70を経由してヘッド室10bに供給されることとなり、可変絞り弁50が最小値に維持された状態にあっても、油圧シリンダ10の縮退動作が遅延したり、無駄な圧力損失を招来する恐れはない。
【0028】
一方、ブレードBが上昇した状態から方向切換弁30を図2に示す伸長位置に切り換えると、ボトム側油通路41が方向切換弁30の第1入出力ポートap及び給油ポートcpを介して供給油通路43に接続されるとともに、ヘッド側油通路42が方向切換弁30の第2入出力ポートbp及びドレンポートdpを介してドレン油通路44に接続される。従って、油圧ポンプ20の駆動により、油圧シリンダ10のボトム室10aに油が供給されるとともに、ヘッド室10bの油が油タンクTに排出されることになり、油圧シリンダ10が伸長してブルドーザのブレードBが下降する。
【0029】
ここで、図1に示す中立位置から方向切換弁30を伸長位置に切り換えた直後においては、可変絞り弁50の絞りの開口面積が最小に維持された状態にある。このため、油圧シリンダ10のヘッド室10bから排出された油が小量だけ通過した場合にも、可変絞り弁50の前後に差圧が生じ、図2に示すように、前後差圧による荷重が遮断用バネ62の設定荷重以上となり、再生用切換弁60が再生油通路45を連通させるように切り換えられることになる。この結果、ヘッド側油通路42とボトム側油通路41とが連通され、油圧シリンダ10のヘッド室10bから排出された油の一部が油タンクTにドレンされることなくボトム室10aに供給されることになり、油圧シリンダ10の伸長動作を素早く、つまりブレードBを素早く下降させることが可能となる。しかも、再生用切換弁60に対して操作弁(図示せず)からのパイロット圧を作用させるための配管が必要ないため、油圧配管を簡素なものとしながら再生用切換弁60を油圧シリンダ10の近傍に配置することができ、圧力損失を最小限に抑えて油の再生効率を向上させることが可能となる。
【0030】
また、操作弁(図示せず)の操作量が少なくてヘッド側油通路42に少量の油が通過した場合であっても、操作弁(図示せず)の操作量が多くてヘッド側油通路42に多量の油が通過した場合であっても、可変絞り弁50の前後に生じる差圧の変化が小さくなる。従って、仮に操作弁(図示せず)を介して方向切換弁30をメータアウト開口面積33aが小さくなる方向に急激に動作させた場合にも、再生用切換弁60を通過する油の流量が急激に変化して油圧シリンダ10の動作に影響を与えることはなく、継続してブレードBを滑らかに降下させることが可能となる。
【0031】
これに対して、操作弁(図示せず)の操作によって方向切換弁30を瞬時に伸長位置に切り換えた場合には、油圧シリンダ10のヘッド室10bから排出される油の流量が大量となるため、可変絞り弁50の前後に生じる差圧も大きくなる。この可変絞り弁50の前後差圧が絞り用バネ52の設定荷重を上回ると、図3に示すように、差圧に応じて可変絞り弁50の絞りの開口面積が増大することになる。可変絞り弁50の絞りの開口面積の最大値は、方向切換弁30のメータアウト開口面積33aの最大値より大きく設定されている。従って、上述の油圧回路によれば、操作弁(図示せず)が大きく操作された場合にも、油圧シリンダ10の伸長動作速度、つまりブレードBの下降速度を、方向切換弁30のメータアウト開口面積33aによって制御することが可能となり、ブレードBの作業性に影響を及ぼすことはない。
【0032】
尚、上述した実施の形態では、ブルドーザにおいてブレードBを昇降させるための油圧回路を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば油圧ショベルのアーム用油圧シリンダを駆動するための油圧回路にも適用することが可能である。
【0033】
また、可変絞り弁50に対してバイパス油通路70を設けるとともに、このバイパス油通路70に、ヘッド室10bから方向切換弁30に向いた油の通過を阻止するチェック弁を設けるようにしているため、油圧シリンダ10を縮退動作させる際に遅延が発生したり、無駄な圧力損失を招来する恐れがないが、再生効率を向上させるだけであれば、必ずしも可変絞り弁50に対してバイパス油通路70等を設ける必要はない。
【符号の説明】
【0034】
10 油圧シリンダ
10b ヘッド室
20 油圧ポンプ
30 方向切換弁
33a メータアウト開口面積
41 ボトム側油通路
42 ヘッド側油通路
43 供給油通路
44 ドレン油通路
45 再生油通路
50 可変絞り弁
54 第1圧力油路
55 第2圧力油路
60 再生用切換弁
61 遮断側圧力室
62 遮断用バネ
63 連通側圧力室
64 第3圧力油路
65 第4圧力油路
70 バイパス油通路
71 チェック弁
100 再生弁ユニット
B ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と、
前記油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路と、
油圧ポンプから吐出された油を供給する給油通路と、
前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路に対して前記給油通路の接続態様を切り換えることにより前記油圧シリンダの駆動を制御する方向切換弁と、
前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を接続する再生油通路と、
前記再生油通路に配設し、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を連通した状態と遮断した状態とに切り換える再生用切換弁と、
前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記方向切換弁までの間に配設した可変絞り弁と
を備え、前記再生用切換弁は、通常状態においては前記再生油通路を遮断する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合にのみ前記再生油通路を連通させるように構成し、
前記可変絞り弁は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合には差圧の大きさに従って前記絞りの開口面積が大きくなるように構成した
ことを特徴とする油圧回路。
【請求項2】
前記可変絞り弁に対してバイパス油通路を設けるとともに、前記バイパス油通路に前記ヘッド室から前記方向切換弁に向いた油の通過を阻止するチェック弁を配設したことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路。
【請求項3】
油圧シリンダのヘッド室に対して油を流通させるヘッド側油通路と、
前記油圧シリンダのボトム室に対して油を流通させるボトム側油通路と、
油圧ポンプから吐出された油を供給する給油通路と、
前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路に対して前記給油通路の接続態様を切り換えることにより前記油圧シリンダの駆動を制御する方向切換弁と、
前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を接続する再生油通路と、
前記再生油通路に配設し、前記ヘッド側油通路及び前記ボトム側油通路の間を連通した状態と遮断した状態とに切り換える再生用切換弁と、
前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記方向切換弁までの間に配設した可変絞り弁と、
前記ヘッド側油通路において前記再生油通路との接続点から前記可変絞り弁を迂回して前記方向切換弁までの間を接続するバイパス油通路と、
前記バイパス油通路に配設し、前記ヘッド室から前記方向切換弁に向いた油の通過を阻止するチェック弁と
を備え、前記再生用切換弁は、通常状態においては前記再生油通路を遮断する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合にのみ前記再生油通路を連通させるように構成し、
前記可変絞り弁は、通常状態においては絞りの開口面積を最小値に維持する一方、前記ヘッド室と前記可変絞り弁との間の圧力が、前記可変絞り弁と前記方向切換弁との間の圧力よりも設定した値を超えて高くなった場合には差圧の大きさに従って前記絞りの開口面積が大きくなるように構成した
ことを特徴とする油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−40641(P2013−40641A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177020(P2011−177020)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】