説明

油性物質と増粘ゲル化剤を含む化粧料

【課題】シリコーンオイル、鉱物油、高級エステルなどの油性物質を含有する、感触、艶などに優れ、かつ液だれを防止して、液層の分離のない保存安定性の優れた化粧料を提供する。
【解決手段】(1)カルボン酸で変性されたアルコキシチタン又はアルコキシジルコニウム誘導体、(2)アミノ基又はカルボキシル基変性のシリコーンオイル、を含有する増粘ゲル化剤と、(3)油性物質を配合することを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性物質とそれをゲル化増粘することができる増粘ゲル化剤を含む化粧料に関するものである。さらに詳しくは、シリコーンオイル、炭化水素油、エステル油などの油性物質と、アルコキシチタン又はジルコニウムのカルボキシレートと変性シリコーンを増粘ゲル化剤とした化粧品に関するものであり、経時安定性に優れ、液だれ、べとつきがなくさっぱりとした使用感がある化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料用のシリコーンオイルは、炭化水素系やエステル系の油性物質と比較してさらさらとした使用感、撥水性があり、安全性に優れている。しかしシリコーンオイルは他の化粧用油性物質と相溶性が悪いため、安定した化粧料の調製が困難であり、化粧品からシリコーンオイルがしみ出して分離を起こし、製品の艶が落ちてしまうなどの問題があった。また化粧料にシリコーンオイルを多く含ませると使用時に液だれが生じてしまうという欠点もあった。
【0003】
そのため化粧料の安定性や使用感を向上させるためには、シリコーンオイルを始めとした油性物質を増粘又はゲル化させることが有効な手段であり、研究、開発が続けられてきた。特許文献1のゲル化物の場合では、有機変性粘土鉱物を使用するゲル化剤である。 特許文献2では、蔗糖の脂肪酸エステルを使用してのシリコーンオイルのゲル化物が記載されている。特許文献3では、両末端に飽和炭化水素基を含有するシリコーンオイルを使用するゲル化剤が記載されており、製法としてはエチレンのリビング重合を行っている。特許文献4ではポリエーテルグラフトオルガノシロキサンがゲル化剤として用いられているが、このゲル化剤は水を併用している。
【0004】
特許文献5には本発明者らが発明した、アルコキシチタン又はジルコニウムのカルボキシレートと変性シリコーンが、油性物質の増粘ゲル化剤として使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−113646号公報
【特許文献2】特開昭63−235366号公報
【特許文献3】特開平7−215817号公報
【特許文献4】特開平8−73744号公報
【特許文献5】特開2007−197646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1、特許文献2、特許文献3の場合ではゲル化物が濁りやすく、かつ分離を起こしたり、べとつきなどの感触に問題があり、特許文献4の場合では製造に厳密な管理を必要とするという問題点があった。本発明においては、シリコーンオイルを含む油性物質を容易に増粘又はゲル化させ、粘性調節により分離、液だれを防止して、かつ感触に優れた化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく研究検討を重ねた結果、チタンカルボキシレート又はジルコニウムカルボキシレートとアミノ基又はカルボキシル基を有する変性シリコーンを含む増粘ゲル化剤と、油性物質を含む化粧料が、分離、液だれがなく、感触、艶などに優れた化粧料を提供することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)(A)アルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートと、(B)アミノ基を有する変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを含む油性物質の増粘ゲル化剤と、(2)油性物質を含有することを特徴とする化粧料である。
【0009】
さらに本発明は、(3)(C)アルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートに水を加えた後、生成したアルコール及び未反応の水を除去して成る水変性したアルコキシチタンのカルボキシレート又は水変性したアルコキシジルコニウムのカルボキシレートと、(B)アミノ基を有する変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを含む油性物質の増粘ゲル化剤と、(2)油性物質を含有することを特徴とする化粧料である。
【0010】
さらに本発明は、少なくとも前記油性物質の一部がシリコーンオイルである上記のいずれかに記載の化粧料である。
【0011】
さらに本発明は、少なくとも前記シリコーンオイルの一部が揮発性シリコーンオイルである上記に記載の化粧料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、油性物質に対し少量の添加量で容易に分散し、安定に増粘又はゲル状態を作る事の出きる増粘ゲル化剤と、油性物質とを含む化粧料である。特にシリコーンオイルは化粧料に汎用されているにもかかわらず、これに適したゲル化剤が無くこの開発が望まれていた。アルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムにカルボン酸を接触させて製造したアルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートと、アミノ基を有する変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを含む増粘ゲル化剤と油性物質を含む化粧料は、液だれ、容器内での分離がなく、使用時の感触、艶などに優れた特性を有していることを見出し、本発明に至った。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明についてさらに詳細に説明する。化粧料はその製品の形態により、液状油性化粧料、液状水性化粧料、油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料、固形化粧料などに分けられる。本発明の化粧料は、製品に油性物質を使用するものであれば、特に限定されるものでなく、液状油性化粧料としては、例えばサンスクリーンクリーム、サンスクリーンジェル、油性ファンデーション、オイルクレンジングジェル、モイスチャークリーム、エリモントクリーム、マッサージクリーム、マニキュア、ポマードなどが挙げられ、油中水型乳化化粧料、水中油型乳化化粧料としては、例えばサンスクリーン乳液、乳化ファンデーション、乳化美白クリーム、乳化ハンドクリーム、乳化パックなどが挙げられ、固形化粧料としては、例えば口紅、リップグロス、パウダーファンデーション、パウダーアイシャドウ、プレストパウダー、ほほ紅などが挙げられる。
【0014】
本発明は、液状油性化粧料や固形化粧料の油性物質の増粘ゲル化に関する化粧料だけでなく、増粘ゲル化剤が油中水型乳化化粧料や水中油型乳化化粧料の油性物質を増粘ゲル化するため、乳化安定性に優れた乳化化粧品も提供することもできる。
【0015】
本発明に使用することのできる油性物質とは、液状又は半固体の比較的極性の低い物質であって、例えば鉱物油類、植物油類、動物油類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、高級エステル類、シリコーンオイル類、液状樹脂類などである。具体的には、鉱物油類としては、流動パラフィン、イソパラフィン、灯油、ミネラルスピリット、キシレン、トルエン、ワセリンなどが挙げられ、植物油類はとして、ひまし油、アボガド油、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、サフラワ油、胡麻油、大豆油、つばき油、綿実油、菜種油、アーモンド油などが挙げられ、動物油類としては黄卵油、トータ油、馬油、魚油、ラノリンなどが挙げられ、高級脂肪酸類としては、ベヘン酸、アラキドン酸、イソステアリン酸、ウンデシル酸、オレイン酸、軟質ラノリン酸などが挙げられ、高級アルコール類としては、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデシルアルコール、ヘキシルデシルアルコールなどが挙げられ、高級エステル類としては、イソステアリン酸イソセチル、オクタン酸セチル、オクタン酸セトステアリル、オレイン酸デシル、ステアリン酸イソセチル、ミリスチン酸イソプロビル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ラウリン酸ヘキシル、ジカプリン酸プロピレングリコールなどが挙げられ、グリセリルエステル類としては、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリオレイン酸グリセリル、トリべへン酸グリセリル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリルなどが挙げられる。液状樹脂類としては、液状エポキシ樹脂、液状ブタジエン樹脂などを挙げる事ができる。
【0016】
シリコーンオイル類としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのジオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどの環状シロキサン、ポリオキシエチレン変性メチルポリシロキサン、ポリオキシプロピレン変性メチルポリシロキサンなどのポリエーテル変性シロキサンが挙げられる。なかでも揮発性シリコーンオイルは、他の油性物質との相溶性の良さから化粧料の溶媒として用いられるほかに、使用時のさらさらとした触感、化粧料の延びの良いことから化粧料の原料として多用されている。
【0017】
揮発性シリコーンオイルとは、環状または直鎖状、分岐鎖状のポリシロキサンで、常温で揮発性を有するものであり、25℃での粘度が8mm/s以下のものが好適に使用される。環状シリコーンオイルとしてはオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどがあり、市販品としてはモメンティブ・パフォーマンス・ジャパンのTSF−405、信越シリコーンのKF−995、東レ・ダウコーニングのDC246FLuidなどが挙げられる。直鎖状シリコーンオイルとしてはジメチルシロキサンの3量体、4量体、6量体などがあり、市販品としては東レ・ダウコーニングのSH200C Fluid−2cs、信越シリコーンのKF−96A−1csなどを挙げることができる。分岐鎖状のシリコーンオイルとしてはメチルエチルトリシロキサン、メチルカプリルトリシロキサンなどがあり、市販品としてはモメンティブ・パフォーマンス・ジャパンのSILSOFT ETS、東レ・ダウコーニングのFZ−3196などを挙げることができる。そのほかにメチル(トリストリメチルシロキシ)シランなどがあり、市販品としては、信越シリコーンのTMF−1.5などを挙げることができる。
【0018】
本発明に用いる(A)のアルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートは、アルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムにカルボン酸を反応させて作る事が出来る。
【0019】
アルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムとは、モノマーであるテトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウム又はそれらの縮合重合体であり、代表的な構造式の一例は式(1)で示される。
【0020】
【化1】

【0021】
ここで式中、Rは炭化水素基であり、Mはチタン又はジルコニウム、nは1以上の整数である。具体的には、例えばi−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、エチル基、i−オクチル基、ラウリル基、ステアリル基などがある。また各Rが異なった混合アルキル基からなるアルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムなどもあり、無論ここに例示したものに限らない。また、n=1の場合はモノマーでありテトラアルコキシチタン、又はテトラアルコキシジルコニウムである。好ましいテトラアルキルチタンはテトラエトキシチタン、テトラi−プロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラt−ブトキシチタン、テトラi−ブトキシチタン、テトラオクトキシチタンなどが挙げられる。好ましいテトラアルコキシジルコニウムはテトラi−プロポキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトラt−ブトキシジルコニウム、テトラi−ブトキシジルコニウム、テトラオクトキシジルコニウムなどが挙げられる。n=2以上の場合は縮合重合体である。縮合重合体の代表的な構造式は(1)で示されるが、実際にはより複雑な構造をとっているものもあり、一部のアルコキシ基は水酸基となっているものもあると考えられる。本発明に用いられるカルボキシレートは、これらのアルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムをカルボン酸と反応させることにより得ることが出きる。
【0022】
テトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウムの縮合重合体は、モノマーであるテトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウムに水を反応させて作ることができる。しかしテトラアルコキシチタン又はテトラアルコキシジルコニウムは水との反応性が非常に強いため、直接水を加えると直ちに酸化チタンまたは酸化ジルコニウムに近い構造まで反応が進み白色の不溶化物を生じる。そのため反応が急速かつ部分的に進行する事を押さえるために大量の溶剤を用い、水の添加量を規定のモル数に調整して緩やかに反応させる。代表的な反応の一例は通常下記一般式(2)で表されている。
【0023】
【化2】

【0024】
ここで式中、Rは炭化水素基、ROHはアルコール、Mはチタン又はジルコニウムを表し、nは1以上の整数である。
【0025】
本発明に用いられる、(A)アルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートは、アルコキシチタン又はアルコキシジルコニウムをカルボン酸と混合し室温にて放置、又は加熱することにより容易に得ることが出来る。もちろん、この場合アルコキシチタンとアルコキシジルコニウムの混合物を使用しても良い。
【0026】
反応に用いられるカルボン酸類としては、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノンデシル酸、アラキン酸、リグノセン酸、イソステアリン酸、イソオクタン酸、イソパルミチン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、リシノール酸、安息香酸、トルイル酸などがある。このうち、特に好ましいものは、炭素数が8以上の脂肪族カルボン酸である。カルボン酸の量はチタン及びジルコニウムの合計原子数に対し0.2倍以上、4.0倍以下の分子数が特に好ましい。カルボン酸との反応例を式(3)に示す。この例では、チタン又はジルコニウムの原子数に対し同分子数のカルボン酸が反応した例であり、同分子数のアルコールが副生成物として生成する。
【0027】
【化3】

【0028】
ここで式中、Rは炭化水素基、Mはチタン又はジルコニウムであり、nは1以上の整数である。R2COOHはカルボン酸、ROHは副生したアルコールを表す。
【0029】
上記の反応の例では、チタン又はジルコニウム1原子に対し1分子のカルボン酸を反応させているが、カルボン酸の量を増減する事によりカルボキシル化の程度を調整することができる。
【0030】
アルコキシチタンのカルボキシレート、アルコキシジルコニウのカルボキシレートは、水を加えることによりさらに変性することもできる。直接に水を加える場合は、充分に攪拌しながら少量ずつ加える。親水性溶剤の存在下で水を加え変性することもできる。親水性溶剤として好ましいものは、親水性アルコール類、親水性エーテル類、親水性ケトン類等である。特に好ましい親水性溶剤は、炭素数2から4のアルコールであり、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノールなどが挙げられる。また、炭素数が5以上のアルコールは水の溶解度が落ちるので好ましくない。親水性エーテル類としては、テトラヒドロキシフランやジオキサンなどがある。親水性ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどがある。水を加えることにより、一部のアルコキシ基は加水分解し水酸基を生じ、さらには縮合して重合することもある。その後生成したアルコール及び未反応の水を除去して(C)の水変性したアルコキシチタンのカルボキシレート又は水変性したアルコキシジルコニウムのカルボキシレートを得る。
【0031】
以上より本発明に使用するチタン又はジルコニウム化合物の平均組成は式(4)で表さられる。
【0032】
【化4】

【0033】
ここで式中、Mはチタン又はジルコニウム、RCOOはアシロキシ基、OHは水酸基、ROはアルコキシ基であり、2a+b+c+d=4、2>a≧0、4>c≧0、4>d≧0、4≧b>0である。
【0034】
変性シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルの中で、主にジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルの側鎖又は末端に他の有機基を導入したもので、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基などを有するものがある。
【0035】
本発明に用いられる(B)のアミノ基を有する変性シリコーンオイル又はカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルとは、おのおの分子内に少なくとも1個のアミノ基又はカルボキシル基を含有するシリコーンオイルであり、主にジメチルシリコーンオイルやメチルフェニルシリコーンオイルの側鎖又は末端におのおのアミノ基又はカルボキシル基を有する有機基を導入したものである、その種類については特に限定はない。アミノ基を有する有機基の例としては、−CNH、−CNHCHNHなど、カルボキシル基を有する有機基の例としては、−CCOOH などが挙げられる。
【0036】
アミノ基を有する変性シリコーンオイルは、シリコーンメーカーにより販売されているものを用いる事ができる。例えば、東レ・ダウコーニング販売のSF8452C(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コーポリマー、SS−3511(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コーポリマー、SS−3552(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コーポリマー、SF8457C(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コーポリマー、信越シリコーン販売のKF−8010、X−22−161A、KF−860、KF−393、KF−859、KF−861、KF−867、KF−869、KF−880、KF−8002、KF−8004、KF−8005、KF−858、KF−864、KF−865、KF−868、KF−8003、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン販売のTSF405−15K、XF42−B1989、XF42−B8922、TSF4702、TSF4703、SF4704、TSF4705、TSF4706、TSF4707、TSF4709などが挙げられる。さらにアミノ基を有する変性シリコーンオイルには、アミノ基の他にさらに異なった有機基を有しているものもある。ポリエーテル基を有しているものでは、例えば信越シリコーン販売のX−22−3939A、X−22−3908A、アルコキシ基を有しているものとしては、例えば信越シリコーン販売のXF−857、KF−862、KF−8001などがある。
【0037】
同様に、カルボキシル基を有する変性シリコーンオイルも、シリコーンメーカーにより販売されているものを用いる事ができる。東レ・ダウコーニング販売のBY16−880、SF8418など、信越シリコーン販売のX−22−162C、X−22−3701E、X−22−3710、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン販売のTSF4770などが挙げられる。
【0038】
本発明のアルコキシチタン誘導体及び/又はアルコキシジルコニウム誘導体と、アミノ基を有す変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルとの配合比率は、10対1から1対100の重量比率が特に好ましい。
【0039】
また上記増粘ゲル化剤と油性物質との配合比率は目的とする粘性特性などにより異なるが、10対10から10対300の重量比率が特に好ましい。
【0040】
配合方法は特に限定はなく、始めにアルコキシチタン誘導体又はアルコキシジルコニウム誘導体とアミノ基を有す変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを混合し、続いて油性物質を混合してもよく、又は始めにアルコキシチタン誘導体又はアルコキシジルコニウム誘導体と油性物質を混合し、続いてアミノ基を有す変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを加え混合してもよく、又は始めにアミノ基を有す変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルと油性物質を混合し、続いてアルコキシチタン誘導体及び/又はアルコキシジルコニウム誘導体を混合しても良く、又は3者を一括し混合しても良い。さらに混合を速めるために加温して行うこともできる。
【0041】
上記必須成分の他に、発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて顔料、染料、分散剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗炎症剤、老化防止剤、乾燥剤、冷感剤、発毛剤、育毛剤、血行促進剤、ビタミン類、アミノ酸類、刺激緩和剤、創傷治癒促進剤、鎮痛剤、香料、溶剤、水、極性油性物質、界面活性剤、制汗剤、保湿剤、pH調整剤、樹脂などを適宜配合して化粧料を作る。
【0042】
以下に本発明を合成例、実施例によりさらに詳しく説明する。
【0043】
合成例1
テトライソプロポキシチタン14.2gにn−ステアリン酸42.6gを加え30分間還流した。その後90℃、減圧下30mmHgでイソプロパノ−ルを留去して、イソプロポキシチタンのn−ステアレート(S−1)48.2gを得た。イソプロポキシチタンのn−ステアレートは微黄色の固体で80℃に加熱すると粘稠液体となり、チタン含有量は4.98%であった。
【0044】
合成例2
テトライソプロポキシチタン14.2gにイソステアリン酸35.5gを加え30分間還流した。液温を40℃として、0.45gの水とイソプロパノ−ル20gの混合液を1時間かけて攪拌しながら添加した。その後90℃、減圧下30mmHgでイソプロパノ−ルを留去して、水変性したイソプロポキシチタンのイソステアレート(S−2)39.9gを得た。水変性したイソ−プロポキシチタンのn−ステアレートは微黄色の粘稠な液体で、チタン含有量は6.00%であった。
【実施例1】
【0045】
油性ファンデーション
実施例1では、ゲル化剤として合成例1で作ったS−1、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルを、油性物質としてはデカメチルペンタシロキサンなどを使用して、表1に示す配合にて油性ファンデーションの製造を行った。まず成分1から3までを混合し、つづいて成分4を加え80℃に加熱し、続いて5から7、8から10の順に加え、均一になるように充分撹拌し油性ファンデーションを得た。
[比較例1]
【0046】
なお、比較例1ではS−1を加えずに実施例1と同様にして製造した。実施例1の油性ファンデーションは、40℃で3ヶ月保存しても容器内で分離は起こさず、液だれもなく使用感に優れ、べとつきがなく、化粧持ちも良かった。一方、比較例1の油性ファンデーションは液だれがあり使用に問題があった。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
口紅
合成例1で作ったS−1、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルを、油性物質としてはデカメチルペンタシロキサンなどを使用して表2に示す配合にて、口紅の製造を行った。まず成分1から10までを80℃に加熱し混合し、続いて成分11から13を徐々に加え、均一になるように充分撹拌し、容器に流し込み冷却して口紅を得た。実施例2の口紅は、40℃で3ヶ月保存しても油状の滲み出しは起きず、油感やべたつきがなく使用感にも優れ、高い艶と化粧持ちもが良かった。
【0049】
【表2】

【実施例3】
【0050】
ほほ紅
合成例1で作ったS−1、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイル、油性物質としてはジメチルシロキサンなどを使用して表3に示す配合にてほほ紅を作った。まず、成分1から7までを80℃に加熱し混合し溶解し、成分8から11を加え均一に混合し、最後に成分12、13を加え混合し、仕上げ粉砕、金型プレスをしてほほ紅を得た。これは、容器内での油分の染み出しがなく、カバー力に優れ、保持力にも優れていた。
【0051】
【表3】

【実施例4】
【0052】
オイルクレンジングジェル
合成例1および2で作ったS−1、S−2、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイル、油性物質としてデカメチルシクロペンタシロキサンなどを使用して表4に示す配合にて、オイルクレンジングジェルを製造した。まず成分1から5までを混合しこれに成分6、7を加え充分に撹拌混合した。これは40℃で3ヶ月保存しても分離は起こさなかった。肌上に充分なじませた油性ファンデーションと唇上につけた口紅を、オイルクレンジングジェルを適量とり指でこすってなじませてから、コットンを用いてふき取った。ふき取りの感触は軽く、油性ファンデーションと口紅は全てふき取られた。
【0053】
【表4】

【実施例5】
【0054】
油中水型乳化ファンデーション
実施例5では、合成例2で作ったS−2、カルボキシル基を有する変性シリコーンオイル、油性物質としてイソノナン酸イソノニルなどを使用して表5に示す配合にて、油中水型乳化ファンデーションを製造した。まず成分1から9までを80℃に加熱し均一に混合し、次に成分10から12をこれに加え分散混合した。続いて40℃にて成分13、14を加え充分に撹拌混合して油中水型の乳化ファンデーションを得た。
[比較例2]
なお比較例2では、S−2を加えずに実施例5と同様に製造した。実施例5では、使用後の肌感覚が滑らかでさっぱりとしており、化粧持ちも良かった。また、40℃、3ヶ月保存で油分の分離がなく安定であったが、比較例2では油分が一部分分離し粘度低下が見られた。
【0055】
【表5】

【実施例6】
【0056】
水中油型スキンケア乳液
合成例2で作ったS−2、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイル、油性物質としてイソオクタン酸セチルなどを使用して表6に示す配合にて、水中油型スキンケア乳液を製造した。まず50℃に加熱した成分1から9に10を加え均一溶液とし、これをあらかじめ混合した成分11から14に加えて撹拌乳化した。この水中油型スキンケア乳液は、使用後の肌感覚が滑らかでさっぱりとしており、化粧持ちも良かった。またこの水中油型スキンケア乳液は、40℃で3ヶ月保存の安定性にも優れていた。
【0057】
【表6】

【実施例7】
【0058】
サンスクリーンクリーム
合成例2で作ったS−2、アミノ基を有する変性シリコーンオイルおよびカルボキシル基を有する変性シリコーンオイル、油性物質としてデカメチルシクロペンタシロキサンなどを使用して表6に示す配合にて、サンスクリーンクリームの製造を行った。まず成分1から6までを80℃に加熱し混合し、つづいて成分7、8を徐々に加え、均一になるように充分撹拌しサンスクリーンクリームを得た。このサンスクリーンクリームは、40℃で3ヶ月保存しても分離は起こさず、べとつきがなくシリコーン特有の軽い使用感があり、液だれも起こらなかった。
【0059】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、油性物質の分離、滲み出し、使用時の液だれがなく、かつ使用感に優れた化粧料を広く提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(1)及び(2):
(1)(A)アルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートと、(B)アミノ基を有する変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを含む油性物質の増粘ゲル化剤
(2)油性物質
を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
次の成分(3)及び(2):
(3)(C)アルコキシチタンのカルボキシレート又はアルコキシジルコニウムのカルボキシレートに水を加えた後、生成したアルコール及び未反応の水を除去して成る水変性したアルコキシチタンのカルボキシレート又は水変性したアルコキシジルコニウムのカルボキシレートと、(B)アミノ基を有する変性シリコーンオイル及びカルボキシル基を有する変性シリコーンオイルの少なくとも1種以上の変性シリコーンオイルを含む油性物質の増粘ゲル化剤
(2)油性物質
を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項3】
少なくとも前記油性物質の一部がシリコーンオイルである請求項1又は請求項2のいずれかに記載の化粧料。
【請求項4】
少なくとも前記シリコーンオイルの一部が揮発性シリコーンオイルである請求項3
に記載の化粧料。

【公開番号】特開2010−241766(P2010−241766A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94933(P2009−94933)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(507368803)
【出願人】(506055173)
【Fターム(参考)】