説明

油性組成物

【課題】高温でも安定な油性ゲル組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類
【化1】


(R1は炭素数4〜30の炭化水素基;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子;X1、X2、及びX3は水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基;X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し;R2及びR3は水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基;a個のRは水素原子又はアミジノ基であるか、総炭素数1〜8の炭化水素基;aは2又は3の数;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油
を含有し、20℃における粘度が1000mPa・s以上である油性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
低分子のオイルゲル化剤は、油中で分子がネットワークを形成することによって増粘するという特徴を有するものである。加熱条件下で、油剤中に低分子オイルゲル化剤を分散させ、室温に冷却することにより、油剤をゲル化させることが可能である(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
しかしながら、このようなゲル化は、ゲル化剤の分子間水素結合を基本とした自己組織化によるものであるため、得られたゲルには融点が存在し、融点以上の温度で著しく減粘してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Terech, P.;Rodriguez, V.;Barnes, J.D.;McKenna, G.B. Langmuir 1994, 10 3406.
【非特許文献2】Fukasawa, J-I;H.J.Colloid Interface Sci. 1991, 143(1), 69.
【非特許文献3】Terech, P. et.al., Chem. Rev. 1997,97,3133-3159.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ゲル形成後に、高温においても減粘することがないオイルゲル化剤、油性ゲル組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カルボキシル基を有するアニオンポリマーを、スフィンゴシン類で中和することにより、油をゲル化することができ、高温でも安定な油性組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油
を含有し、20℃における粘度が1000mPa・s以上である油性組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の油性組成物は、カルボキシル基を有するアニオンポリマーが、スフィンゴシン類で中和されることにより、分子の絡み合いにより増粘し、液体油がゲル化するものであり、高温でも安定であり、粘度が低下することはない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明で用いる成分(A)のスフィンゴシン類は、前記一般式(1)で表わされるものである。
式中、R1は、ヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基である。特に、炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y側末端にヒドロキシル基を持つ炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で、分岐鎖アルキル基の場合は分岐鎖がメチル分岐のもの等が好ましい。具体的には、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、1−ヒドロキシトリデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソステアリル基が好ましい。
【0012】
Yはメチレン基(CH2)、メチン基(CH)又は酸素原子のいずれかを示す。
1、X2、及びX3は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基、グリセリル基、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成する置換基を示す。特に、X1、X2、及びX3のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子、及びX4が水素原子であるものが好ましい。なお、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。
【0013】
2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、特にR3は水素原子であることが好ましい。
【0014】
また、aは2又は3の数を示し、aが2のときRはR4及びR5を示し、aが3のときRはR4、R5及びR6を示す。
【0015】
4、R5及びR6は、各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。ここで炭化水素基に置換し得るヒドロキシアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のヒドロキシアルコキシ基が好ましい。またアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましい。R4、R5及びR6としては、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる1〜6個が置換した総炭素数1〜8の炭化水素基が挙げられる。
【0016】
特に水素原子、又はメチル基、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換していてもよいアルキル基が好ましい。
【0017】
一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類としては、次の一般式(2)で表わされる天然又は天然型スフィンゴシン類、及びその誘導体(以下、天然型スフィンゴシンと記載する。)又は一般式(3)で表わされるスフィンゴシン構造を有する擬似型スフィンゴシン類(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する。)が好ましい。
(I)一般式(2)で表わされる天然型スフィンゴシン。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Y1はメチレン基又はメチン基を示し;X5、X6及びX7は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X8は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Y1がメチン基のとき、X5とX6のいずれか一方が水素原子を示し、他方は存在しない。X8がオキソ基を形成するとき、X7は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のR1は各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合があってもよいことを示す)
【0020】
ここでR11としては、炭素数7〜19の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましく、特に炭素数13〜15の直鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましい。aは2が好ましく、R1は各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。
【0021】
一般式(2)で表わされる天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(−)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。
特に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0022】
【化3】

【0023】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine) (SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。
【0024】
(II)一般式(3)で表わされる擬似型スフィンゴシン。
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R14はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;X9は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;a個のR2は各々独立して水素原子又はアミジノ基を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、aは2又は3の数を示す)
【0027】
ここでR14としては、炭素数14〜20のイソ分岐アルキル基が好ましく、特にイソステアリル基が好ましい。イソステアリル基は、動植物油由来の脂肪酸を用いたダイマー酸製造時の副生成物由来のイソステアルアルコールを原料油として得られるイソステアリル基がもっとも好ましい。
また、aが2のときR2はR15及びR16を示し、aが3のときR2はR15、R16及びR17である。
【0028】
15、R16及びR17は、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる置換基を有する総炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
特に、R15及びR16のいずれか1つが水素原子で、他方が2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである2級アミンが好ましい。
【0029】
擬似型スフィンゴシンとしては、R14がイソステアリル基、X9は水素原子で、R15が水素原子、R16が2−ヒドロキシエチル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、又は2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換したアルキル基であるものが好ましい。
擬似型スフィンゴシンの具体例としては、次の擬似型スフィンゴシン(i)〜(iv)が挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
なかでも、擬似型スフィンゴシン(ii)が好ましい。
成分(A)は、1種以上を用いることができ、本発明の組成物中に4〜60質量%、特に9〜30質量%含有するのが、ポリマーを完全中和する観点から好ましい。
【0032】
本発明で用いる成分(B)は、カルボキシル基を有するアニオンポリマーであり、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られたポリマーが好ましい。また、成分(B)は、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーと、これら以外で、疎水性で不飽和結合等の重合基を有するモノマーとの共重合で得られたポリマーであっても良い。更には、架橋剤を含有したものでも良い。
より具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル(C10-30)/(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンアルキル(C10-30)エーテル等が挙げられる。
これらのポリマーの中で、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30)クロスポリマー、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)が、取り扱いの点で好ましい。
【0033】
これらのポリマーとしては、アキュリン88、アキュリン22、アキュリン28、アキュリン38(以上、ローム・アンド・ハース社製)、カーボポール980、カーボポール981、カーボポールUltrez 10、カーボポールUltrez 20、カーボポールUltrez 21、カーボポールETD2020、カーボポールAQUA-SF1、PEMULEN TR-1、PEMULEN TR-2(以上、ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ社製)等の市販品を使用することができる。
【0034】
成分(B)のアニオンポリマーは、重量平均分子量が10万以上、特に100万以上であるのが好ましく、1000万以下であることが、取り扱いやすさと十分な増粘効果が得られる点で好ましい。
【0035】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、本発明の組成物中に0.5〜10質量%、特に1〜7質量%含有するのが、十分な増粘効果が得られるので好ましい。成分(B)の含有量を調整することにより、みずみずしい外観のオイルジェルや、固いゲルなど、目的に応じたゲルを得ることができる。
【0036】
本発明において、成分(A)と成分(B)の質量割合は、(A)/(B)=5〜30、特に5〜12であるのが、十分な増粘効果が得られるので好ましい。
【0037】
本発明で用いる成分(C)は、炭化水素油、エステル及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油である。
具体的には、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリカプロイン、2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、メドフォーム油、オリーブ油等のエステル油;セチルイソブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油が挙げられる。なお、これらは、25℃での粘度が、0.5〜500mPa・sであるものである。
これらの中で、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素油;セチルイソブチルエーテル、ジオクチルエーテル、エチレングリコールモノラウリルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル等のエーテル油は、増粘しやすいという点で好ましい
【0038】
成分(C)は、1種以上を用いることができ、本発明の組成物中に30〜95.5質量%、特に70〜90.5質量%含有するのが、最適な増粘効果が得られるので好ましい。
【0039】
本発明の油性組成物は、成分(A)、(B)及び(C)を混合して均一にする工程、及び得られた混合物を成分(A)の融点以上に加熱する工程を含む方法により、製造することができる。
加熱工程は、いずれの段階で行っても良く、例えば、成分(A)、(B)及び(C)を混合して均一にした後、加熱する方法;成分(C)に成分(A)を分散して加熱した後、成分(B)を添加して分散させる方法等により、製造することができる。
このようにして得られたオイルゲルは、室温で放置するか、水等の冷媒を用いて強制的に冷却することで、室温まで冷却することができる。
【0040】
本発明においては、成分(B)のカルボキシル基を有するアニオンポリマーは、通常水溶性で油には溶けない。しかし、成分(A)のスフィンゴシン類と混合し、加熱溶解することで中和され、これがオイルゲル化剤として作用する。成分(A)で中和された成分(B)は、成分(C)との親和性が増し、成分(C)中に容易に溶解することができる。この結果、油を増粘させることができるものである。このようにして得られたゲルは、特別な融点を有さず、高温でも粘度の低下が少ない。
【0041】
本発明の油性組成物は、成分(C)を連続相とする油をゲル状にしたものであり、20℃における粘度が1000mPa・s以上、好ましくは10,000mPa・s以上のものである。また、10000Pa・s以下のものが、扱いやすさの点で好ましい。粘度の測定は、後述するヘリカル型粘度計により、測定されるものである。
【0042】
本発明の油性組成物は、化粧料、軟膏、塗料、絵の具等として適用することができる。
化粧料とする場合には、さらに、前記以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染料、香料、色素、防汚剤、保湿剤等を含有することができ、皮膚、口唇、睫毛、爪、毛髪に使用される油性化粧料とすることができる。例えば、口紅、リップグロス、リップライナー等の口唇化粧料や、マスカラ、アイライナー、アイシャドウ、チークカラー、ファンデーション、コンシーラー等のメイクアップ化粧料;クリーム、乳液、美容液、マッサージ剤、デオドラント、サンスクリーン、育毛剤、ヘアカラー、ヘアワックス、ヘアフォームなどとすることができる。
【0043】
また、本発明においては、成分(B)のカルボキシル基を有するアニオンポリマーを、成分(A)のスフィンゴシン類(1)で中和した化合物を、オイルゲル化剤として使用することができる。前述したように、アニオンポリマーとスフィンゴシン類を混合し、スフィンゴシン類の融点以上に加熱することにより、アニオンポリマーは中和され、塩を形成することができる。この塩は、炭化水素油、エステル油、エーテル油等と混合して加熱することにより、容易に溶解して粘度を出すことができ、冷却して室温になっても十分な粘度を有することができる。
【実施例】
【0044】
実施例1〜11及び比較例1〜4
表1及び表2に示す組成の油性組成物を製造し、ゲル粘度及びゲルの安定性を評価した。結果を 表1及び表2に併せて示す。
【0045】
(製造方法)
(1)実施例1〜6:
成分(A)と成分(C)を混合し、撹拌して均一にした。その後、成分(B)を加えて均一に分散した後、成分(A)の融点以上(90℃)に加熱し、成分(B)の溶解を確認後、室温まで冷却して、油性組成物を得た。
【0046】
(2)実施例7〜11:
成分(A)を融点以上(90℃)に加熱して融解させ、90℃に加熱した成分(C)と混合して溶解させた。その後、成分(B)を加え、成分(B)が溶解して均一になったことを確認した後、室温まで冷却して、油性組成物を得た。
【0047】
(3)比較例:
成分(A)を融点以上(90℃)に加熱して融解させ、90℃に加熱した成分(C)又はシリコーン油と混合して均一に溶解又は分散させた。その後、成分(B)又はポリマーを加え、十分に撹拌して均一にした後、室温まで冷却して、油性組成物を得た。
比較例4は、成分(C)にパルミチン酸デキストリンを加え、70℃に加熱し、十分に撹拌して均一にした後、室温まで冷却して、油性組成物を得た。
【0048】
(評価方法)
(1)ゲル粘度:
各組成物について、20℃あるいは60℃における粘度を、B8R型ヘリカル型粘度計(東機産業社)を用い、ローターT-F、回転数12rpm、1分で測定を行った。
【0049】
(2)ゲルの安定性:
各組成物について、20℃1カ月保存後、その外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
1;ゲルの性状が変化しない。
2;ゲルに分離があった。
3;ゲルが変色した。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
実施例12(保湿オイルジェル)
以下に示す組成の保湿オイルジェルを製造した。
得られたオイルジェルは、みずみずしい透明な外観であり、皮膚に塗布することにより、高い保湿効果を得ることができる。また、高温においても安定で、減粘することもない。
【0053】
(成分)
(1)スクワラン 40.0(質量%)
(2)流動イソパラフィン 50.0
(3)フィトスフィンゴシン 0.1
(4)ヒドロキシエチルイソステアリロキシイソプロパノールアミン 8.9
(5)カーボマー(カーボポール980、
ルーブリゾール・アドバンスト・マテリアルズ) 1.0
【0054】
(製造方法)
成分(1)、(2)、(3)及び(4)を90℃で混合し、撹拌して均一にした。その後、90℃で成分(5)を加えて均一に分散させ、成分(5)の溶解を確認した後、室温まで冷却して、保湿オイルジェルを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類
【化1】

(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)、
(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマー、
(C)炭化水素油、エステル油及びエーテル油から選ばれる25℃で液体の油
を含有し、20℃における粘度が1000mPa・s以上である油性組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の質量割合が、(A)/(B)=5〜30である請求項1記載の油性組成物。
【請求項3】
成分(B)が、重量平均分子量10万以上のアクリル酸又はメタクリル酸系ポリマーである請求項1又は2記載の油性組成物。
【請求項4】
化粧料である請求項1〜3のいずれか1項記載の油性組成物。
【請求項5】
成分(A)、(B)及び(C)を混合して均一にする工程、及び
得られた混合物を成分(A)の融点以上に加熱する工程
を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の油性組成物の製造方法。
【請求項6】
成分(B)カルボキシル基を有するアニオンポリマーを、成分(A)一般式(1)
【化2】

(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の直鎖、分岐鎖又は環状の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)
で表わされるスフィンゴシン類で中和して得られるオイルゲル化剤。

【公開番号】特開2011−136950(P2011−136950A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298190(P2009−298190)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】