説明

油易洗浄性樹脂組成物及び機能性内装部材

【課題】簡単に油を拭き取ることができると共に、高い耐薬品性を有する塗膜を形成する。
【解決手段】(1−A)親水性基を付与したアクリルポリオールと、(1−B)Mw50000以下のアクリルポリオールと、有機金属化合物や塩基性有機シラン化合物と、ポリイソシアネートやアミノ樹脂の硬化剤とを含有する樹脂組成物に関する。(1−A)成分を10〜60質量%、(1−B)成分を10〜60質量%含有する。(1−A)成分は、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを30〜70質量%、アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを5〜40質量%、アミド基を有するモノマーを10〜40質量%、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマーを10〜30質量%の割合で共重合した重合組成物と、活性水素基を有する界面活性剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油易洗浄性の樹脂組成物、及びこの樹脂組成物の被膜を表面に形成した機能性内装部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅部材において、特にキッチン部材のように油が付着し易いものでは、油の除去し易い材料として、タイル等の無機系材料やガラス等の親水系材料や、あるいはテフロン(登録商標)等に代表される撥水、撥油系の材料が用いられている。
【0003】
また、レンジフードのような油が付着しやすい環境で使用されるキッチン部材の表面処理として、親水塗装を施して、油汚れを多量の水を使って浮かせることによって、油汚れが容易に除去できるようにしたり(特許文献1、2参照)、撥水塗装を施して、油汚れを容易に拭き取ることができるようにしたりすることが行なわれている(特許文献3、4参照)。
【特許文献1】特開2000−199637号公報
【特許文献2】特開2006−292326号公報
【特許文献3】特開平10−57732号公報
【特許文献4】特開平10−9630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように親水塗装や撥水塗装をして表面を油易除去性にするにあたって、一般的な親水塗装、撥水塗装はいずれも一長一短あるのが現状である。例えば、親水塗装では、水ガラスに代表されるAlやSiOやMgOを主成分とする無機化合物を焼付けするようにした無機系親水材料を用いることが多い。しかし、これらは高温処理する必要があるため、塗装する基材が金属やセラミック等に限定されるものであり、また塗膜にクラックが生じ易いという欠点もある。さらに形成された塗膜は表面粗さが大きく、汚れが凹凸の隙間に詰まると水拭きだけで汚れを除去するのが困難になり、多量の水で洗うことが必要になる。また、無機系親水材料以外にも、防汚や防曇機能を主目的とした有機系親水材料として、アクリルポリオール中に親水基を導入したものや、無機系をハイブリッド化させたものがあるが、油の拭き取り除去性と実使用に耐えうる耐薬品性を両立させることは困難であった。
【0005】
一方、撥水塗装には、フッ素系やシリコーン系の材料があり、一般的に滑り性が良い塗膜を形成することができるので、固形物系の汚れの拭き取り作業性には優れている。しかし、油のような流動性の汚れは伸び広がるために完全には除去しづらいという問題がある。さらに撥水塗膜には、油が付着しているところに水が掛かると、油が水の下に潜り込んでしまう特性があり、水拭きしようとすると油が薄く押し広がって油膜が残ってしまい、完全に油を除去することが難しいという問題もある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、油を簡単に拭き取ることができると共に、高い耐薬品性を有する塗膜を形成することができる樹脂組成物を提供することを目的とするものであり、また油易除去性に優れた機能性内装部材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る油易除去性樹脂組成物は、(1−A)親水性基を付与したアクリルポリオールと、(1−B)Mw50000以下のアクリルポリオールと、(1−C)有機金属化合物、塩基性有機シラン化合物から選ばれる少なくとも一種と、(1−D)ポリイソシアネート、アミノ樹脂から選ばれる少なくとも一種の硬化剤とを、少なくとも構成成分として含有する樹脂組成物であって、樹脂組成物中、(1−A)成分を10〜60質量%の範囲で、(1−B)成分を10〜60質量%の範囲で含有すると共に、(1−A)成分は、(A)アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを30〜70質量%、(B)アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを5〜40質量%、(C)アミド基を有するモノマーを10〜40質量%、(D)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマーを10〜30質量%の割合で、(A)〜(D)を共重合した重合組成物(α)と、(E)活性水素基を有する界面活性剤とを含有することを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、親水性を有する(1−A)の樹脂成分によって拭き取り性能を向上させることができ、また架橋密度を向上する(1−B)成分によって耐薬品性を向上することができるものであり、多量の水を必要とすることなく水拭きだけで簡単に油を拭き取ることができると共に、高い耐薬品性を有する被膜を形成することができるものである。
【0009】
尚、本発明においてMw(重量平均分子量)の測定は、東ソー(株)製の高速GPC装置「HLC−8220GPC」を用いて示差屈折計で行なった。また「(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー」は、アクリル酸アルキルエステルモノマーとメタクリル酸アルキルエステルモノマーのいずれでもよいことを意味する。
【0010】
また本発明において、(1−C)成分の塩基性有機シラン化合物は、含窒素複素環基を構造中に有するシラン化合物であることを特徴とするものである。
【0011】
このように含窒素複素環基を構造中に有するシラン化合物を用いることによって、表面硬度が高い被膜を得ることができるものである。
【0012】
また本発明に係る機能性内装部材は、上記の樹脂組成物が、表面に形成されていることを特徴とするものであり、油易除去性と耐薬品性に優れた被膜を表面に形成した機能性内装部材を得ることができるものである。
【0013】
そしてこの機能性内装部材がキッチン部材である場合、キッチン部材には油汚れが付着し易いが、キッチン部材の表面には油易除去性と耐薬品性に優れた被膜が形成されているため、アルカリ性や酸性を呈する洗浄剤を用いて油を容易に除去することができるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多量の水を必要とすることなく水拭きだけで簡単に油を拭き取ることができると共に、高い耐薬品性を有する被膜を形成することができるものであり、また油易除去性と耐薬品性に優れた表面を有する機能性内装部材を形成することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0016】
本発明に係る油易洗浄性樹脂組成物は、親水性を付与して油の拭き取り性を高める樹脂成分である、親水性基を付与したアクリルポリオール(1−A)と、架橋密度を向上して耐薬品性を高める樹脂成分である、Mw50000以下のアクリルポリオール(1−B)と、樹脂組成物の硬化反応性を向上させるための、有機金属化合物、塩基性有機シラン化合物から選ばれる少なくとも一種(1−C)と、樹脂組成物の硬化剤であるポリイソシアネート、アミノ樹脂の少なくとも一種(1−D)を必須の成分とするものである。
【0017】
本発明において上記の(1−A)成分は、(A)アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(B)アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(C)アミド基を有するモノマー、(D)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマーを共重合したアクリル重合組成物(α)と、(E)活性水素基を有する界面活性剤とを含有して調製されるものである。
【0018】
(1−A)成分において、アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等を具体例として挙げることができる。
【0019】
またアルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(B)としては、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等を具体例として挙げるがことができる。
【0020】
(1−A)成分において、アミド基を有するモノマー(C)は硬化被膜の親水性を向上するためのものであり、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等を具体例として挙げることができる。
【0021】
(1−A)成分において、(1−D)成分のポリイソシアネートやアミノ樹脂と反応性を持つ(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマー(D)としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸エステルのグリコール系付加物、或いは水酸基を有するビニルエーテルなどを挙げることができる。
【0022】
この水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等を挙げることができる。
【0023】
また上記の(メタ)アクリル酸エステルのグリコール系付加物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール等の少なくとも1種以上からなるモノ(メタ)アクリレート類、或いは、これらとε−カプロラクトンとの付加物などを挙げることができる。このグリコール系付加物の市販品としては、日本油脂(株)製の「ブレンマーAETシリーズ」、「APTシリーズ」、「AEシリーズ」、「AEPシリーズ」、「ブレンマーAP−400」、「AP−550」、「AP−800」、「ブレンマーPEPシリーズ」、「PETシリーズ」、「PPTシリーズ」、「PPシリーズ」、日本乳化剤(株)製の「MAシリーズ」、第一工業製薬(株)製の「ニューフロンティアNFシリーズ」、ダイセル化学(株)製の「プラクセルFMシリーズ」、「FAシリーズ」等を挙げることができる。
【0024】
また上記の水酸基を有するビニルエーテルとしては、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテルを挙げることができる。
【0025】
(1−A)成分において、活性水素基を有する界面活性剤(E)は、(1−D)成分のポリイソシアネートやアミノ樹脂と反応性があって硬化被膜の親水性を向上するものであり、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性の各種界面活性剤である。また、活性水素基の具体例としては水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ホスフェート基、スルホニル基などを挙げることができる。
【0026】
さらにこの活性水素基を有する界面活性剤(E)としては、Mw2000以上のものが好ましい。Mw2000未満であると、十分な油拭き取り性を得ることが難しくなることがある。重量平均分子量(Mw)の上限は特に限定されるものではないが、実用的にはMw20000以下であることが望ましい。
【0027】
活性水素基含有のアニオン系界面活性剤の具体例としては、ヒマシ油モノサルフェート、ヒマシ油モノホスフェート、ソルビタン脂肪酸エステルサルフェート、ソルビタン脂肪酸エステルホスフェート、ポリオキシアルキレングリセリンエーテルモノサルフェート、ポリオキシアルキレングリセリンエーテルモノホスフェート、パーフルオロアルキルエステルホスフェートなどを挙げることができる。
【0028】
活性水素基含有のカチオン系界面活性剤の具体例としては、ジアルカノールアミン塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミンエーテル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンジアルカノールアミンエーテル塩などを挙げることができる。
【0029】
活性水素基含有の両性界面活性剤の具体例としては、N,N−ジ(β−ヒドロキシアルキル)N−ヒドロキシエチル−N−カルボキシアルキルアンモニウムベタイン、N,N−ジ(ポリオキシエチレン)−N−アルキル−N−スルホアルキルアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルベタインなどを挙げることができる。
【0030】
活性水素基含有のノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0031】
(1−A)成分において、アクリル重合組成物(α)は(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分を共重合して得られるものである。重合法としては、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの任意の重合方法を用いることができるが、中でも(A)〜(D)成分のモノマー及び(E)成分の界面活性剤を溶媒に溶解し、必要に応じて重合開始剤の存在下に重合させる溶液重合法が好ましい。
【0032】
この重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシビバレート等の有機過酸化物、2,2−アゾビス−iso−ブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物を挙げることができる。
【0033】
この重合開始剤は一種を単独で使用する他、二種以上を併用することもできるものであり、その使用量は特に限定されるものではないが、(A)〜(B)成分の各モノマーの合計100質量部に対して約0.01〜5.0質量部の範囲が一般的に好ましい。
【0034】
また上記の溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系有機溶剤、トルエン、キシレン、「ソルベッソ100」(エクソンケミカル社製)等の芳香族炭化水素系有機溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、「ロウス」、「ミネラルスピリットEC」(共にシェル社製)等の脂肪族炭化水素系/脂環族炭化水素系有機溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系有機溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤、n−ブチルカルビトール、iso−アミルカルビトール等のカルビトール系有機溶剤を挙げることができる。これらの溶剤は一種を単独で使用する他、二種以上を併用することもできるのは勿論である。
【0035】
(A)〜(D)成分の配合割合は、(A)成分30〜70質量%、(B)成分5〜40質量%、(C)成分10〜40質量%、(D)成分10〜30質量%の範囲が好ましい(合計100質量%)。(A)成分や(B)成分がこの範囲を超えて多い場合も、少ない場合も、被膜の耐薬品性が低下するおそれがある。また(C)成分がこの範囲を超えて多い場合は、油の拭き取り性は向上するものの耐薬品性が低下するおそれがあり、少ない場合は油の拭き取り性が低下するおそれがある。また(D)成分がこの範囲を超えて多い場合は、安定して重合を行なうことができず樹脂を安定的に合成が困難になるものであり、少ない場合は、油の拭き取り性が低下するとともに、架橋密度が低下するために耐薬品性も低下するおそれがある。
【0036】
また(E)成分の配合量は、特に限定されるものではないが、(1−A)成分中(溶剤を除く)、5〜20質量%の範囲が好ましい。(E)成分の配合量がこの範囲より少ない場合は、油の拭き取り性が低下する傾向があり、逆に多い場合は、被膜の硬度や、耐アルカリ性等の耐薬品性が低下する傾向がある。
【0037】
本発明において上記の(1−B)成分は、架橋密度を向上して被膜の耐薬品性を向上する役割を持つ成分であり、Mw50000以下のアクリルポリオールである。Mw50000以下のアクリルポリオールであれば特に制限なく使用することができ、例えば市販品では、Mw16000の三菱レーヨン(株)製「LR2629」、Mw30000の大日本インキ工業(株)製「A814」、Mw24000の大日本インキ工業(株)製「A817」等を使用することができる。相溶性や硬化性の観点から、Mw10000〜30000の範囲が特に好適である。
【0038】
また、水酸基含有不飽和モノマー、酸基含有不飽和モノマー及びその他の不飽和モノマーから選択される不飽和モノマー混合物を重合させることにより得られるアクリルポリオールを用いることもできる。この水酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されないものであり、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ダイセル化学社製「プラクセルFM1」(ε−カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエチレングリコールモノアクリレートまたはモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートまたはモノメタクリレートなどを挙げることができる。
【0039】
上記酸基含有不飽和モノマーとしては、特に限定されないものであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸などのカルボン酸類などを挙げることができる。
【0040】
上記のその他の不飽和モノマーとしては、特に限定されないものであり、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、エチルヘキシル、ラウリルなどのエステル基含有アクリル系単量体;ビニルアルコールと酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸とのビニルアルコールエステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ブタジエン、イソプレンなどの不飽和炭化水素系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体などを挙げることができる。
【0041】
本発明の油易洗浄性樹脂組成物は、(1−A)成分と(1−B)成分を被膜のマトリクスを形成する樹脂成分とするものであり、(1−A)成分と(1−B)成分の配合比率は、樹脂組成物中(溶剤を除く)、(1−A)成分を10〜60質量%の範囲で、(1−B)成分を10〜60質量%の範囲で含有するように設定されるものである。(1−A)成分がこの範囲より少ない場合は、油の拭き取り性が低下し、逆に多い場合は、耐アルカリ性等の耐薬品性が低下する。また(1−B)成分がこの範囲より少ない場合は、耐アルカリ性等の耐薬品性が低下し、逆に多い場合は、油の拭き取り性が低下する。
【0042】
本発明において上記の(1−C)成分は、ウレタン硬化触媒として作用し、反応性を高める成分であり、有機金属化合物、塩基性有機シラン化合物のうち少なくとも一種から選択されるものである。
【0043】
この有機金属化合物としては、例えば、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイドまたはジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−N−ブチル錫ラルレ−トオキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネートなどを挙げることができ、これらは1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
また上記の塩基性有機シラン化合物は、アミノ基(NH−)、モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、および含窒素複素環基のうちから選ばれる少なくとも1つの基を有する有機基シラン化合物である。例えばモノ置換アミノ基としては、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N-ブチルアミノ基、N-ペンチルアミノ基、N-ヘキシルアミノ基、N-シクロヘキシルアミノ基、N-フェニルアミノ基等を挙げることができ、ジ置換アミノ基としては、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジプロピルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、N,N-ジペンチルアミノ基、N,N-ジヘキシルアミノ基、N,N-ジシクロヘキシルアミノ基、N,N-ジフェニルアミノ基等を挙げることができる。また窒素複素環基とは複素環式化合物のなかで、窒素原子が環の構成元素として含むものをさし、通常は三員環から十員環までが一般的である。本発明において(1−C)成分の触媒として含窒素複素環基を有する有機シラン化合物を用いた場合、被膜の表面硬度が高くなる効果が得られる。この含窒素複素環基としては、ピリジン、イミダゾール、ピロール、トリアジン、トリアゾール、インドール、テトラゾール等を挙げることができるが、なかでも、イミダゾールが相溶性や安定性の観点で好適である。
【0045】
尚、(1−C)成分の触媒として用いる塩基性有機シラン化合物には、反応速度を若干抑制するためにカルボン酸が含有されていても良い。反応を抑制するためのカルボン酸としては、安息香酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸を例示することができる。
【0046】
この(1−C)成分の配合量は、特に限定されるものではないが、(1−C)成分が有機金属化合物の場合は樹脂組成物中(溶剤を除く)、0.001〜0.1質量%の範囲で含有するように設定するのが望ましく、塩基性有機シラン化合物の場合には樹脂組成物中(溶剤を除く)、0.05〜10質量%の範囲で含有するように設定するのが望ましい。いずれの場合も、(1−C)成分がこれらの範囲より少ない場合は、油の拭き取り性が低下するおそれがあり、逆に多い場合は、塗料としてのポットライフ(可使時間)が著しく短くなるおそれがある。
【0047】
本発明において上記の(1−D)成分は、硬化剤成分として使用されるポリイソシアネート、アミノ樹脂の少なくとも一種であり、いずれも上記樹脂中の水酸基と反応して硬化被膜を形成することができるものである。
【0048】
このポリイソシアネートとしては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)−ジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネ−ト等の3価以上のポリイソシアネートなどの如き有機ポリイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した各有機ジイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物などを挙げることができる。これらのなかでもヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートが特に好適である。またこれらは、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
(1−D)の硬化剤成分としてポリイソシアネートを用いる場合、ポリイソシアネートの配合量は、特に限定されるものではないが、ポリイソシアネートの中に含まれるイソシアネート基(NCO)が、上記の(1−A)成分や(1−B)成分の樹脂中の水酸基(OH)に対して、NCO/OHの当量比で、0.2〜2.0の範囲内になるように、より好ましくは0.5〜1.5の範囲内になるように選択されることが、通常適当である。
【0050】
また上記のアミノ樹脂は、ポリイソシアネートと同様に硬化剤成分として使用できるものであり、アミノ樹脂には、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、尿素樹脂などが含まれる。このうちメラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂が一般的である。
【0051】
このメラミン樹脂及びベンゾグアナミン樹脂のうち、アルキルエーテル化したものが好ましい。他の型のもの、例えばイミノ型やメチロール型は、アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物をシランカップリング剤で処理したとしても、イミノ型メラミン樹脂や、メチロール型メラミン樹脂と反応し易く、塗料貯蔵安定性が低下するので好ましくない。アルキルエーテル化メラミン樹脂のうちメトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂が好ましい。このものは塗料貯蔵安定性の効果に加えて、メラミン樹脂が疎水性となるため、被膜を形成した時にメラミン樹脂が被膜の上層部に偏在し、表層の架橋密度が上昇することによって、汚染物質が被膜の内部へ浸透することを抑制することができ、耐汚染性が良好になるという効果を有するものである。メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂とは、i−ブチル基またはN−ブチル基単独で、あるいはブチル基とメチル基で、エーテル化したメラミン樹脂をいう。
【0052】
(1−D)の硬化剤成分としてアミノ樹脂を用いる場合、アミノ樹脂の配合量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物中(溶剤を除く)、10〜50質量%の範囲で含有するように設定するのが望ましい。(1−D)成分としてのアミノ樹脂がこの範囲より少ない場合は、硬化が不十分になって耐アルカリ性等の耐薬品性が低下するおそれがある。一方、(1−D)成分としてのアミノ樹脂がこの範囲より多い場合は、油の拭き取り性が低下するおそれがある。
【0053】
上記の(1−A)〜(1−D)の各成分を配合することによって本発明の樹脂組成物を得ることができるものであり、そしてこの樹脂組成物を基材の表面に塗布して硬化させることによって、基材の表面に油易洗浄性の被膜を形成した機能性内装部材などを得ることができるものである。
【0054】
樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されるものではなく任意の方法を採用することができるが、スプレーコ−ティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法を好適に利用することができる。また、塗布することだけに限定されるものではなく、例えば、樹脂組成物をシート状に成形して、これを基材の表面に積層したり、あるいは樹脂組成物を金型の内面に吹き付けて被膜を形成しておき、この金型で基材を成形する際に樹脂組成物の被膜を基材に積層するようにしたり、あるいは不織布等に樹脂組成物を含浸し、プレス等で成形して基材の表面に積層する方法などもある。
【0055】
また硬化方法についても、特に限定されるものではなく、所望される硬化被膜の性能や、基材の耐熱温度や、生産性等に応じて、常温(室温放置)から高温焼付けまで、任意に選ぶことができるものである。
【0056】
また、被膜の膜厚についても特に制限はないものであり、通常は1〜100μm程度の厚みであればよいが、基材の表面凹凸によって油の易除去性が低下するので、被膜はできるだけ平滑に仕上げることが望ましく、このために一般の塗装法では10〜50μmの膜厚で形成するのが好ましい。
【0057】
基材についても、特に制限されるものではなく、無機質基材、有機質基材等を用いることができる。無機質基材としてはアルミニウム、鉄、ステンレス、亜鉛メッキ鋼板、ガラス、ホーロー、陶器、スレート、アルミナ等のセラミックなどを挙げることができる。有機質基材としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、FRP等のプラスチック材料やシートなどを挙げることができる。またこれらに有機被膜が被覆されたものを基材として用いてもよく、例えば有機被膜としてはアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、シリコン系、フッ素系等の被膜を挙げることができ、これらの被膜を塗料の塗布で形成する場合、塗料系としては溶剤系、水系、無溶剤系など特に限定されるものではない。これらの被膜と基材との密着性を向上させるため、溶剤脱脂、アルカリ脱脂、研磨等の表面処理を基材に行なうようにしてもよく、アクリル系、エポキシ系、シリコン系のプライマーを下地層として基材に塗布するようにしてもよい。
【0058】
本発明において機能性内装部材とは、内装部材として厳密な定義をして限定するものではないが、拭いたり触れたりすることはできるものの、大量の水を用いて洗浄することができない場所に設置されているもの、例えば、取っ手、鏡面性扉、スイッチ類、テーブル、イス、照明器具などを例示することができる。これらのなかでも最も油が付着しやすい内装部材としてキッチン部材が挙げられる。キッチン部材としては、例えばレンジフード、キッチン収納扉、キッチンカウンタ、シンク、コンロ廻り、キッチンボード、キッチン周辺の床材、冷蔵庫などを例示することができる。
【0059】
ここで、油汚れは、付着した油が過酸化反応し、油分子内で極性成分が多くなって凝集力・粘度が増加して固化することにより生じるものであり、不飽和二重結合の付加重合に起因する分子量増加も一因である。具体的には、例えばキッチン部材においては、食用油に含まれるリノール酸等の不飽和脂肪酸は、次の反応に従って酸化され、過酸化脂質(脂質ヒドロペルオキシド)となる。
−CH-CH=CH−+O→−CH=CH(OOH)−
ROOH(ハイドロパーオキサイド)→H・ + ROO・(パーオキサイドラジカル)
ROO・ RH→ROOH + R・
そして過酸化脂質は、臭いの原因であるアルデヒド、ケトン、アルコール等に分解され、更に酸化、分解、分子切断が繰り返されると酸腐食の原因物質になり易い。また重合による粘度上昇によって、一層複雑な反応生成物に変わることもある。
【0060】
このようにキッチン部材などの表面には過酸化脂質などの油汚れが付着し易いが、上記のように基材の表面に本発明の樹脂組成物の被膜を形成しておくことによって、付着してすぐの初期的な油汚れも、粘性化した油も、多量の水を用いて洗うような必要なく、布などを用いて拭くことによって、容易に油汚れを除去することができるものである。本発明の樹脂組成物の被膜を形成することによって容易に除去することができる油汚れとしては、上記のようなキッチンで用いる食用油が代表として挙げられるが、これに限られず、手垢、指紋、皮脂、汗などに起因する油脂類も除去可能である。
【0061】
またキッチン部材など機能性内装部材の表面に形成される被膜には洗剤に対する耐久性が必要であり、一般的に耐薬品性試験で用いられるアルカリ性薬品(例えば炭酸ナトリウム水溶液)に対する耐アルカリ性や、酸性薬品(例えばオレイン酸)に対する耐酸性に加えて、近年広く流通している油汚れを除去することに特化した柑橘系の香料成分を含有するアルカリ性洗剤に対する耐久性も必要である。柑橘系の香料成分には例えばD−リモネン(オレンジピール成分)が使用されており、これはスチレンに類似した構造を持ち、界面活性剤やアルカリ剤や溶剤と合わさると一般的なアルカリ性薬品よりも被膜を破壊する力が極めて強く、架橋性が弱い一般的な被膜では耐えることができない。このようなオレンジピール成分を含むような洗剤には、「キッチンマジックリン消臭プラス」(花王社製)、「レンジまわりのルック」(ライオン社製)、「オレンジジョイ」(P&G社製)などがある。これに対して、本発明の樹脂組成物で形成される被膜は耐薬品性が高く、一般的な耐アルカリ性や耐酸性を有するのは勿論、D−リモネンなどが配合された洗剤に対する耐久性も有するものであり、被膜がこのような洗剤によって破壊されるようなことはないものである。
【実施例】
【0062】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0063】
<(1−A)成分の合成実施例1>
反応容器中に、(E)成分の界面活性剤として「エパンU105」を10質量部、溶剤としてMEKを211質量部とNMPを46質量部仕込み、60℃まで昇温した。
【0064】
一方、(A)成分のアルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしてMMAを45質量部、(B)成分のアルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしてIBMAを10質量部、(C)成分のアミド基を有するモノマーとしてDMAAを25質量部、(D)成分の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマーとして2−HEAを20質量部混合し、さらに重合触媒としてABN−Eを4.0質量部混合することによって、混合モノマーを調製した。
【0065】
そして、上記の界面活性剤を含有する溶剤中にこの混合モノマーを60℃で3時間かけて滴下し、3時間後に反応を終了してアクリル重合組成物(α)を合成することによって、アクリルポリオール(1−A−1)成分を得た。
【0066】
尚、上記の各成分の略称、商品名は次に示す通りである。
【0067】
MMA:メチルメタクリレート
IBMA:イソブチルメタクリレート
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
2−HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
MEK:メチルエチルケトン
NMP:N−メチルー2−ピロリドン
ABN−E:アゾビス−2−メチルブチロニトリル(日本ヒドラジン工業(株)製)
エパンU105:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル Mw:6400(第一工業製薬(株)製)
<(1−A)成分の合成実施例2>
(A)成分のMMAの配合量を35質量部、(B)成分のIBMAの配合量を10質量部、(C)成分のDMAAの配合量を35質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を20質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−2)成分を得た。
【0068】
<(1−A)成分の合成比較例1>
(A)成分のMMAの配合量を60質量部、(B)成分のIBMAの配合量を15質量部、(C)成分のDMAAの配合量を5質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を20質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−3)成分を得た。
【0069】
<(1−A)成分の合成比較例2>
(A)成分のMMAの配合量を30質量部、(B)成分のIBMAの配合量を5質量部、(C)成分のDMAAの配合量を45質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を20質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−4)成分を得た。
【0070】
<(1−A)成分の合成比較例3>
(A)成分のMMAの配合量を50質量部、(B)成分のIBMAの配合量を20質量部、(C)成分のDMAAの配合量を25質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を5質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−5)成分を得た。
【0071】
<(1−A)成分の合成比較例4>
(A)成分のMMAの配合量を35質量部、(B)成分のIBMAの配合量を10質量部、(C)成分のDMAAの配合量を15質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を40質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、(1−A−6)成分を得た。
【0072】
<(1−A)成分の合成比較例5>
(A)成分のMMAの配合量を75質量部、(B)成分のIBMAの配合量を5質量部、(C)成分のDMAAの配合量を10質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を10質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−7)成分を得た。
【0073】
<(1−A)成分の合成比較例6>
(A)成分のMMAの配合量を35質量部、(B)成分のIBMAの配合量を45質量部、(C)成分のDMAAの配合量を10質量部、(D)成分の2−HEAの配合量を10質量部に変更するようにした他は、上記合成実施例1と同様にして、アクリルポリオール(1−A−8)成分を得た。
【0074】
<(1−A)成分の合成比較例7>
反応容器中に、溶剤としてMEKを211質量部とNMPを46質量部仕込み、60℃まで昇温した((E)成分は配合せず)。
【0075】
一方、(A)成分のMMAを45質量部、(B)成分のIBMAを10質量部、(C)成分のDMAAを25質量部、(D)成分の2−HEAを20質量部、重合触媒としてABN−Eを4.0質量部混合することによって、混合モノマーを調製した。
【0076】
そして、上記の界面活性剤を含有する溶剤中にこの混合モノマーを60℃で3時間かけて滴下し、3時間後に反応を終了してアクリル重合組成物(α)を合成することによって、アクリルポリオール(1−A−9)成分を得た。
【0077】
上記のようにして得た(1−A−1)〜(1−A−9)のアクリルポリオールの配合組成を表1に示す。またその重量平均分子量(Mw)、粘度、不揮発分、水酸基価を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
上記の(1−A−1)〜(1−A−9)のアクリルポリオールを用い、以下の実施例及び比較例のようにして樹脂組成物を調製した。
【0080】
(実施例1)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記の合成実施例1で合成した親水性アクリルポリオール(1−A−1)を27質量部、(1−B)成分のアクリルポリオールとして、Mw16000のアクリルポリオール(三菱レイヨン(株)製「LR2629」:固形分55%)を24質量部、(1−C)成分の有機金属化合物として、メチルエチルケトンで予め1000倍に希釈した有機スズ触媒(三井化学ポリウレタン(株)製「フォーメートTK−1」)を4質量部、(1−D)成分としてポリイソシアネート硬化剤(三井化学ポリウレタン(株)製「D−165N」:固形分100%)を5質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、樹脂組成物を調製した。
【0081】
そして基材としてSUS304の試験板(日本テストパネル社製)を用い、このステンレス基材に上記の親水性樹脂組成物をエアースプレーにて乾燥膜厚が5μmになるように塗布し、120℃の温度で30分焼付け乾燥することによって、塗装板を作製した。
【0082】
(実施例2)
(1−A)成分として、実施例1と同じ親水性アクリルポリオール(1−A−1)を64質量部、(1−B)成分として、実施例1と同じアクリルポリオール「LR2629」を24質量部、(1−C)成分として、実施例1と同じ有機スズ触媒「フォーメートTK−1」を4質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を7質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、樹脂組成物を調製した。そして実施例1と同様にこの樹脂組成物を基材に塗装することによって、塗装板を作製した。
【0083】
(実施例3)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成実施例2で合成した親水性アクリルポリオール(1−A−2)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0084】
(実施例4)
(1−C)成分の塩基性有機シラン化合物として、メチルエチルケトンで予め100倍に希釈したアミノシラン(信越シリコーン(株)製「KBM903」:固形分100%)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0085】
(実施例5)
(1−C)成分の塩基性有機シラン化合物として、イミダゾールシラン(日鉱金属(株)製「IM−1000」:固形分100%)を用い、配合量を1質量部に変更するようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0086】
(実施例6)
(1−C)成分として、メチルエチルケトンで予め1000倍に希釈した有機スズ触媒(三井化学ポリウレタン(株)製「フォーメートTK−1」)を4質量部、イミダゾールシラン(日鉱金属(株)製「IM−1000」:固形分100%)を1質量部、併用するようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0087】
(比較例1)
シリコーン系の無機親水性塗料である松下電工(株)製「フレッセラR」を用い、実施例1と同じステンレス基材にエアースプレーにて乾燥膜厚が0.5μmになるように塗装し、150℃の温度で10分焼付け乾燥することによって、塗装板を作製した。
【0088】
(比較例2)
シリコーン系の無機撥水性塗料である松下電工(株)製「フレッセラD」を用い、実施例1と同じステンレス基材にエアースプレーにて乾燥膜厚が1μmになるように塗装し、150℃の温度で10分焼付け乾燥することによって、塗装板を作製した。
【0089】
(比較例3)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例1で合成した、(C)成分の量が請求項1の範囲より少ない(1−A−3)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0090】
(比較例4)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例2で合成した、(C)成分の量が請求項1の範囲より多い(1−A−4)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0091】
(比較例5)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例3で合成した、(D)成分の量が請求項1の範囲より少ない(1−A−5)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0092】
(比較例6)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例4で合成した、(D)成分の量が請求項1の範囲より多い(1−A−6)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0093】
この比較例6において、(1−A−6)を用いて基材表面に形成した樹脂被膜は、被膜自体が白濁して外観が悪いため、特性評価は行なわなかった。
【0094】
(比較例7)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例5で合成した、(A)成分の量が請求項1の範囲より多い(1−A−7)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0095】
(比較例8)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例6で合成した、(B)成分の量が請求項1の範囲より多い(1−A−8)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0096】
(比較例9)
(1−A)成分のアクリルポリオールとして、上記合成比較例7で合成した、(E)成分が使用されていない(1−A−9)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0097】
(比較例10)
(1−B)成分のアクリルポリオールとして、重量平均分子量が請求項1の範囲より大きい、Mw54000のアクリルポリオール(三菱レイヨン(株)製「AR3329」:固形分50%)を用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0098】
(比較例11)
(1−C)成分として、塩基性有機シラン化合物ではないエポキシシラン(信越シリコーン(株)製「KBM403」:固形分100%)をメチルエチルケトンで予め100倍に希釈して用いるようにした他は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0099】
(比較例12)
(1−A)成分として、実施例1と同じ親水性アクリルポリオール(1−A−1)を72質量部、(1−B)成分として、実施例1と同じアクリルポリオール「LR2629」を16質量部、(1−C)成分として、実施例1と同じ有機スズ触媒「フォーメートTK−1」を4質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を5質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、(1−A)成分の配合量が請求項1の範囲より多い樹脂組成物を調製した。後は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0100】
(比較例13)
(1−A)成分として、実施例1と同じ親水性アクリルポリオール(1−A−1)を27質量部、(1−B)成分として、実施例1と同じアクリルポリオール「LR2629」を45質量部、(1−C)成分として、実施例1と同じ有機スズ触媒「フォーメートTK−1」を4質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を7質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、(1−B)成分の配合量が請求項1の範囲より多い樹脂組成物を調製した。後は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0101】
(比較例14)
(1−B)成分として、実施例1と同じアクリルポリオール「LR2629」を24質量部、(1−C)成分として、実施例1と同じ有機スズ触媒「フォーメートTK−1」を4質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を4質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、(1−A)成分を配合しない樹脂組成物を調製した。後は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0102】
(比較例15)
(1−A)成分として、実施例1と同じ親水性アクリルポリオール(1−A−1)を27質量部、(1−C)成分として、実施例1と同じ有機スズ触媒「フォーメートTK−1」を4質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を3質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、(1−B)成分を配しない樹脂組成物を調製した。後は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0103】
(比較例16)
(1−A)成分として、実施例1と同じ親水性アクリルポリオール(1−A−1)を27質量部、(1−B)成分として、実施例1と同じアクリルポリオール「LR2629」を24質量部、(1−D)成分として、実施例1と同じポリイソシアネート硬化剤「D−165N」を5質量部、溶剤としてメチルエチルケトンを40質量部、それぞれ混合し、5分間撹拌することによって、(1−C)成分を配合しない樹脂組成物を調製した。後は、実施例1と同様にして塗装板を作製した。
【0104】
(比較例17)
基材としてSPCCの試験板(日本テストパネル社製)を用い、このSPCC基材にメタリックの粉体塗料(久保孝ペイント(株)製「788ラインニッシンパウダーコートS 788−605 メタリックシルバー中目」)を静電スプレーして膜厚が60μmになるように塗布し、180℃の温度で15分焼付けすることによって、粉体塗装した塗装板を作製した。
【0105】
上記のようにして実施例1〜6及び比較例1〜17で作製した塗装板について、油の拭取り除去性、塗膜硬度、塗膜の耐薬品性の試験を行なって評価した。評価方法は次の通りであり、その結果を表2及び表3に示す。
【0106】
(評価方法)
(1)油の拭取り除去性、粘性油の拭取り除去性
油の拭取り除去性評価方法
塗装板の表面に、日清サラダ油(日清オイリオ(株)製)を0.1g塗布し、50mm×80mmの大きさにたたんだふきん(綿100%)を用いて、500g荷重で3往復拭取りを行なった後、色差計にて油付着前との色差(ΔEab)を計測し、以下の判定基準で評価した。
【0107】
粘性油の拭取り除去性評価方法
塗装板の表面に、サンシックンドポピーオイル(ホルベイン工業(株)製)を0.1g塗布し、塗布後24時間放置した後、50mm×80mmの大きさにたたんだふきん(綿100%)を用いて、500g荷重で3往復拭取りを行なった。この後、上記同様に色差計にて油付着前との色差(ΔEab)を計測し、以下の判定基準で評価した。
(判定基準)
ΔEab 1より小さい:○
ΔEab 1を超え、3未満:△
ΔEab 3より大きい:×
(2)塗膜硬度試験
JISK5600−5−4に従う鉛筆法により、塗膜の硬度を測定した。
(3)耐薬品性試験
試験液として、5%炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製)水溶液、オレイン酸(和光純薬工業(株)製)、「キッチンマジックリン 消臭プラス」(花王(株)製)を用いた。そして、塗装板の表面に1cm□に切断したキッチンペーパーを重ね、試験液をキッチンペーパー上に1日1回滴下し、時計皿を被せて静置して、7日後の塗膜の外観を次の判断基準で評価した。
(判定基準)
外観の変化が全くない:○
滴下していたところが枠として跡がある:△
塗膜が剥離に至る:×
【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
表2及び表3にみられるように、各実施例のものは、油の拭き取り性に優れ、また耐薬品性にも優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1−A)親水性基を付与したアクリルポリオールと、
(1−B)Mw50000以下のアクリルポリオールと、
(1−C)有機金属化合物、塩基性有機シラン化合物から選ばれる少なくとも一種と、
(1−D)ポリイソシアネート、アミノ樹脂から選ばれる少なくとも一種の硬化剤と、
を少なくとも構成成分として含有する樹脂組成物であって、
(1−A)成分を10〜60質量%の範囲で、(1−B)成分を10〜60質量%の範囲で含有すると共に、
(1−A)成分は、
(A)アルキル基の炭素数が3以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを30〜70質量%、
(B)アルキル基の炭素数が4以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを5〜40質量%、
(C)アミド基を有するモノマーを10〜40質量%、
(D)(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルモノマーを10〜30質量%、
の割合で、(A)〜(D)を共重合した重合組成物(α)と、
(E)活性水素基を有する界面活性剤とを含有する、
ことを特徴とする油易洗浄性樹脂組成物。
【請求項2】
(1−C)成分の塩基性有機シラン化合物は、含窒素複素環基を構造中に有するシラン化合物であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物が、表面に形成されていることを特徴とする機能性内装部材。
【請求項4】
キッチン部材であることを特徴とする請求項3に記載の機能性内装部材。

【公開番号】特開2010−53286(P2010−53286A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221345(P2008−221345)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】