説明

油水可溶化剤及びその製造方法、並びに混合燃料

【課題】炭化水素を含む油中に水を微分散した混合燃料の分散状態を長期にわたり維持でき、混合燃料の保存性及び燃焼効率を向上可能な可溶化剤を提供する。
【解決手段】可溶化剤は、炭素数5〜50の炭化水素を含む油に水を均一に分散するために使用され、脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含む。脂肪酸アルカノールアミドの含有量は7〜15重量%、C3-4アルカノールの含有量は15〜27重量%、アンモニアの含有量は0.01〜2重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素を含む油(特に、A重油、軽油、鉱物油等の石油に由来する液体油など)と水とを均一に混合可能な可溶化剤及びその製造方法、並びに、可溶化剤により油に水が均一に分散された混合燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
重油や軽油などの石油由来の油に水を混合したいわゆるエマルジョン燃料が、一部の用途で実用化されている。エマルジョン燃料では、界面活性剤等の添加剤を用いて水滴を油中に分散させている。このような燃料では、水の混合により燃焼温度が下がり、窒素酸化物の生成が抑制される。水分の急激な気化に伴い、油粒子が微細化し、黒煙などの粒子状物質(いわゆる、すす)の発生を抑制できる。
【0003】
しかし、従来のエマルジョン燃料では、水粒子を十分に微細化することが困難であり、燃焼効率の改善が不十分である。また、数週間で水と油が分離するため、燃料を長期間保管することができない。
特許文献1では、脂肪酸ジエタノールアミド、オレイン酸、メタノール、アミン、アンモニアなどの複数の成分を含む可溶化剤を用いることにより、油に対する水の分散性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−255208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の可溶化剤では、分散状態をある程度の期間維持できるものの、プロトン酸性が大きいメタノールを用いるため、メタノールとアミンやアンモニアなどとの相互作用が大きくなる。よって、アンモニアやアミンを有効利用できず、オレイン酸の親水性を調節するために、多量のアンモニア及びアミンが必要となる。このように、特許文献1の可溶化剤は、毒性の強いメタノールを用いたり、刺激性及び毒性の強いアンモニアを大量に使用するという欠点があり、実用化はされていない。
本発明は、炭化水素を含む油中に水を微分散した混合燃料の分散状態を長期にわたり維持することができるとともに、原料の利用効率が高い可溶化剤、並びに保存性及び燃焼効率に優れる混合燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、炭素数5〜50の炭化水素を含む油に水を均一に分散するために使用される可溶化剤であって、脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含み、前記脂肪酸アルカノールアミドの含有量が7〜15重量%、前記C3-4アルカノールの含有量が15〜27重量%、前記アンモニアの含有量が0.01〜2重量%である可溶化剤に関する。
【0007】
本発明の他の一局面は、炭素数5〜50の炭化水素を含む油と、水と、前記可溶化剤とを含有し、前記油と水との重量比が60/40〜95/5、前記油及び水の総量100重量部に対する前記可溶化剤の割合が3〜20重量部であり、前記油に水が均一に分散している、混合燃料に関する。
【0008】
本発明の他の一局面は、前記可溶化剤を製造する方法であって、前記脂肪酸アルカノールアミドと、前記C3-4アルカノールと、前記炭素数10〜26の脂肪酸と、前記アミンと、前記アンモニアとを含む第1混合物を調製する第1工程と、前記第1混合物に、さらに前記炭素数10〜26の脂肪酸及び前記C3-4アルカノールを添加して、第2混合物を調製する第2工程と、前記第2混合物に、さらに前記脂肪酸アルカノールアミド及び前記C3-4アルカノールを添加して混合して前記可溶化剤を得る第3工程とを含む可溶化剤の製造方法に関する。前記第1工程及び前記第2工程で使用する前記炭素数10〜26の脂肪酸の重量比は、前記第1工程/前記第2工程=85/15〜95/5であり、前記第1工程及び前記第3工程で使用する前記脂肪酸アルカノールアミドの重量比は前記第1工程/前記第3工程=90/10〜99/1であり、前記第1工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量を100としたとき、前記第2工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量は60〜70であり、前記第3工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量は80〜90である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可溶化剤が所定の成分を所定の組成で含有するため、アンモニア及びアミンの使用量が少ないにもかかわらず、ミセル化により、炭化水素を含む油中に、水粒子を微分散させることができる。得られる油水混合燃料では、水粒子が視認できないほど微細化され、油と水とが均一に混合しており、透明性を有する。微細化された水粒子は、油中で非常に安定であり、長期間経過後も油と相分離することがない。そのため、混合燃料は、優れた保存性及び燃焼効率を有する。また、構成成分の毒性に起因して、製造から消費に至るまでの作業環境を損なうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(可溶化剤)
本発明の可溶化剤は、脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含む。可溶化剤は、炭素数5〜50の炭化水素を含む油に水を均一に分散するために使用される。
【0011】
脂肪酸アルカノールアミドとしては、界面活性作用を有する限り特に制限されず、炭素数が8〜20の脂肪酸のモノC1-4アルカノールアミド又はジC1-4アルカノールアミドなどが例示できる。脂肪酸アルカノールアミドに対応する脂肪酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが挙げられる。これらの脂肪酸のうち、C10-16脂肪酸(特に、飽和脂肪酸)、又はこれを含む脂肪酸混合物(例えば、ヤシ油脂肪酸など)などが好ましい。
【0012】
脂肪酸アルカノールアミドに対応するアルカノールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールなどの直鎖状又は分岐鎖状アルカノールが例示できる。これらのアルカノールのうち、メタノール、エタノールなどのC1-3アルカノールが好ましい。脂肪酸アルカノールアミドが、脂肪酸ジアルカノールアミドである場合、アミノ基に結合した2つのアルカノール残基に対応するアルカノールは、同種であってもよく、異種であってもよい。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、具体的に、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸ジエタノールアミド(C10-16脂肪酸のジエタノールアミドなど)が好ましい。
脂肪酸アルカノールアミドは、一種を単独で使用してもよく、二種以上の混合物として使用してもよい。
【0013】
可溶化剤に含まれるC3-4アルカノールとしては、n−プロパノール、n−ブタノールなどの直鎖アルカノール;イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどの分岐アルカノールが挙げられる。これらのうち、水との相溶性の点から、分岐C3-4アルカノール、特に、イソプロパノール、tert−ブタノールなどが好ましい。C3-4アルカノールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
炭素数10〜26の脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸(炭素数12〜20の飽和脂肪酸など)の他、不飽和脂肪酸が例示できる。不飽和脂肪酸は、炭素−炭素不飽和結合を1つ有していてもよく、複数(例えば、2〜4個)有していてもよい。
脂肪酸としては、炭素数12〜20の不飽和脂肪酸が好ましい。このような不飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸;リノール酸、エイコサジエン酸;リノレン酸などの室温で液状の不飽和脂肪酸が例示できる。
炭素数10〜26の脂肪酸は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記脂肪酸を主として含む脂肪酸混合物であってもよい。脂肪酸混合物において、炭素数10〜26の脂肪酸の含有量は、例えば、50〜99.9重量%、好ましくは55〜99重量%、さらに好ましくは60〜94重量%である。
炭素数10〜26の脂肪酸のうち、特に、リノール酸、リノレン酸などの植物由来の不飽和脂肪酸、又はこれらの脂肪酸を主として含む脂肪酸混合物(植物性脂肪酸、例えば、大豆などの植物から抽出した脂肪酸など)などが好ましい。
【0015】
可溶化剤に含まれるアミンは、第3級アミンであってもよいが、通常、第1級アミン、第2級アミンが使用される。特に、第1級アミンが好ましい。
第1級アミンには、脂肪族アミン、脂環族アミン、及び芳香族アミン(アニリンなどのアリールアミン;フェネチルアミンなどのアラルキルアミンなど)が含まれる。脂肪族第1級アミン及び脂環族第1級アミンが好ましい。アミンは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましい態様では、脂肪族第1級アミンと、脂環族第1級アミンとを併用する。
【0016】
脂肪族第1級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミンなどのアルキルアミン(C1-4アルキルアミンなど);メタノールアミン、エタノールアミンなどのアルカノールアミン(C1-4アルカノールアミンなど)などが例示できる。アルカノールアミン、特にC1-2アルカノールアミンなどが好ましい。
脂環族第1級アミンとしては、例えば、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミンなどのC5-8シクロアルキルアミンなどが例示できる。
【0017】
可溶化剤において、脂肪酸アルカノールアミドの含有量は、7〜15重量%、好ましくは9〜12重量%、又は9.3〜11.5重量%である。
3-4アルカノールの含有量は、15〜27重量%、好ましくは19〜25重量%、又は19.9〜24.3重量%である。
【0018】
本発明では、メタノールは用いず、イソプロパノールなどのC3-4アルカノールを用いる。イソプロパノールなどのC3-4アルカノールは、メタノールと同様に水に対して高い相溶性を有するにもかかわらず、メタノールに比較すると、脂肪酸、油に対する親和性が高い。そのため、油相と水相との表面張力の差を低減でき、油中への水の微分散をより効果的に行うことができる。従って、アミン及びアンモニア(特にアンモニア)の使用量が少なくても、油中へ水を分散できる。
【0019】
可溶化剤におけるアンモニアの含有量は、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.6重量%である。本発明では、毒性及び刺激臭の強いアンモニアの使用を大幅に抑制でき、毒性の強いメタノールを使用しないため、水可溶化剤の製造から混合燃料の使用に至るまでの全ての工程において作業環境を大幅に改善できる。
【0020】
なお、アンモニアは、アンモニア水として使用できる。アンモニア水の濃度は、特に制限されないが、例えば、20〜30重量%又は25〜28重量%程度である。可溶化剤に含まれる水分量は、特に制限されず、混合燃料における油と水との重量比が60/40〜95/5となるような範囲で適宜調整できる。可溶化剤の水分量は、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
【0021】
可溶化剤中のアミンの含有量は、例えば、5〜10重量%、好ましくは6〜9重量%、又は6.6〜8重量%である。脂肪族アミンと脂環族アミンとを併用する場合、脂肪族アミン100重量部に対して、脂環族アミンは、例えば、200〜1000重量部、好ましくは400〜900重量部、さらに好ましくは500〜800重量部である。
炭素数10〜26の脂肪酸の含有量は、例えば、47〜67重量%、好ましくは50〜65重量%、又は54.8〜63重量%である。
【0022】
可溶化剤中、各成分は、遊離又は解離状態で含まれていてもよく、他の成分と相互作用した状態、例えば、塩の状態で含まれていてもよい。例えば、炭素数10〜26の脂肪酸は、アンモニア又はアミンとの塩の状態で、可溶化剤に含有されていてもよい。
【0023】
本発明では、所定の成分及び所定の含有量の組み合わせにより、炭素数5〜50の炭化水素を含む油と水とを効率よく均一に混合することができ、原料の油と同様の外観を有する透明な混合燃料が得られる。界面活性作用と、親油性と、親水性とのバランスを最適化できるためか、可溶化剤と油と水とを混合した際に、水相と油相との表面張力の差を顕著に軽減することができる。得られる混合燃料中、水粒子は、100nm程度の粒径にまで微細化される。そのため、油中に安定に保持され、一年以上の長期間保管した場合でも、混合燃料の油水相分離及び変質を抑制できる。
【0024】
可溶化剤は、各成分を混合することにより調製できる。一部の成分を予め混合した後、得られた混合物に残りの成分を一度に又は複数回に分けて添加することにより可溶化剤を調製してもよい。例えば、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミン及びアンモニアのC3-4アルカノール溶液とを混合し、得られた混合物と、脂肪酸アルカノールアミド又はこのC3-4アルカノール溶液とを混合することにより可溶化剤を調製してもよい。
【0025】
好ましい態様では、炭素数10〜26の脂肪酸及び/又は脂肪酸アルカノールアミドを2〜3段階に分けて混合する。具体的には、脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含む第1混合物を調製する第1工程と、第1混合物に、さらに前記炭素数10〜26の脂肪酸及び前記C3-4アルカノールを添加して、第2混合物を調製する第2工程と、前記第2混合物に、さらに前記脂肪酸アルカノールアミド及び前記C3-4アルカノールを添加して混合する第3工程とを経ることにより、可溶化剤を調製することができる。各工程における成分の使用量は、得られる可溶化剤中の構成成分の含有量が前述の範囲となるように適宜調節することができる。
【0026】
第1工程及び第2工程で使用する炭素数10〜26の脂肪酸の重量比は、第1工程/第2工程=85/15〜95/5、好ましくは87/13〜92/8である。第1工程及び第3工程で使用する脂肪酸アルカノールアミドの重量比は、第1工程/第3工程=90/10〜99/1、好ましくは92/8〜97/3である。
第1工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量を100としたとき、前記第2工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量は60〜70、好ましくは62〜68であり、第3工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量は80〜90、好ましくは82〜88である。
【0027】
第1工程において、各成分は、一度に混合してもよいが、アミン及びアンモニア以外の成分を混合した後、得られる混合物に、アミン及びアンモニアを添加してもよい。アミン及びアンモニアの添加により、発熱する場合があるため、必要により、混合は、冷却下(例えば、混合物の温度45℃以下又は40℃以下)で行ってもよい。
【0028】
具体的には、脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸とを混合し、得られた混合物に、混合物の温度を40℃以下に維持しながら、アミンを添加する。脂肪族アミンと脂環族アミンとを併用する場合、両者の混合物を添加してもよく、一方(例えば、脂肪族アミン)を添加した後、他方(例えば、脂環族アミン)を添加してもよい。そして、アミン添加後の混合物に、混合物の温度を45℃以下に保ちながら、アンモニア水を添加する。
【0029】
このようにして得られる可溶化剤は、炭化水素を含む油に水を均一に混合するのに有用である。このような油としては、石油に由来する油が例示でき、炭素数5〜50の炭化水素(パラフィン、オレフィン、ナフテンなど)を含んでいる。炭化水素を含む油としては、通常、液体油(室温で液状の油など)が使用できる。
具体例としては、重油(A重油、B重油、C重油など)、軽油、灯油、鉱物油などが例示でき、精製した炭化水素の混合物などであってもよい。本発明の可溶化剤は、水の微分散により、燃焼効率を向上できるため、特に、重油、軽油などの重質成分を比較的多く含む石油由来の粗製液体燃料に使用するのに適している。
【0030】
(混合燃料)
混合燃料は、前記炭化水素を含む油と、水と、可溶化剤とを含有し、油に水が均一に分散している。混合燃料は、可溶化剤を含むため、油と水とが乳化した状態の不透明又は半透明な液体ではなく、両者が均一に混合した透明な液体である。
油と水との重量比は、燃焼効率及び水の分散性の観点から、60/40〜95/5、好ましくは65/35〜93/7である。油がA重油である場合、油と水との重量比は、70/30〜90/10、好ましくは73/27〜87/13である。
【0031】
可溶化剤の割合は、油及び水の総量100重量部に対して、3〜20重量部、好ましくは5〜18重量部、又は8.7〜16.3重量部である。可溶化剤の割合が多すぎると、燃焼熱量が抑制され、少なすぎると、分散性を損ない、透明な混合燃料が得られない場合がある。
混合燃料は、油と、水と、可溶化剤とを混合することにより得ることができる。各成分の混合順序は適宜選択できるが、好ましい方法では、油と可溶化剤とを予め混合した後、水を混合する。分散性の観点からは、水は、油と可溶化剤との混合物に徐々に添加するのが好ましい。例えば、油と可溶化剤との混合物に、撹拌下、水を滴下又は噴霧することにより添加してもよい。
混合には、慣用の混合装置(ミキサ、撹拌機など)が使用でき、撹拌翼を有する撹拌機を用いる場合が多い。撹拌速度は、例えば、800〜6,000rpm、好ましくは1,000〜3,500rpm、さらに好ましくは1,200〜2,500rpmである。撹拌速度を変えて、多段階で撹拌してもよい。例えば、高速(例えば、3,000〜6,000rpm)で撹拌することにより水を分散させた後、水粒子を均一化及び微細化するため、低速(例えば、800〜2,500rpm)で仕上げ撹拌を行ってもよい。撹拌時間は、撹拌速度にもよるが、例えば、5〜60分程度の範囲から適宜選択できる。
【0032】
このような混合燃料は、燃焼に際して、窒素酸化物、粒子状物質を含む黒煙の発生が抑制され、燃焼効率を大きく向上することができる。従来の混合燃料に比較して、少量で高い熱量が得られ、燃費を向上させることができ、二酸化炭素の排出量を低減できる。混合燃料では、水が油に均一に微分散しており、分散状態が安定しているため、長期間保管しても、相分離又は変質することがない。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
下記の手順で、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド10.4重量%、イソプロパノール22.1重量%、リノール酸を主成分とする大豆抽出脂肪酸59重量%、モノエタノールアミン1.0重量%、シクロヘキシルアミン6.3重量%、及びアンモニア0.364重量%(濃度28重量%のアンモニア水1.3重量%)を含む可溶化剤を調製した。なお、各成分は、可溶化剤中の含有量が上記の値となるような量で使用した。
【0035】
(1)第1工程
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを、可溶化剤中の全配合割合10.4重量%のうち9.5重量%と、イソプロパノールを、全配合割合22.1重量%のうち8.9重量%とを混合容器に入れて、気泡がなくなり、透明な均一相となるまで10分間撹拌混合した。
次いで、植物性脂肪酸としてリノール酸を主成分とする大豆抽出脂肪酸を、可溶化剤中の全配合割合59重量%のうち57重量%を、混合容器に添加して、20分間撹拌した。
【0036】
次に、モノエタノールアミンを加えて撹拌混合した。発熱を抑制するため、モノエタノールアミンは、混合物の温度を40℃以下に制御しながら、徐々に添加した。添加終了後、12分間撹拌した。
シクロヘキシルアミンを加えて撹拌混合した。発熱を抑制するため、シクロヘキシルアミンは、混合物の温度を40℃以下に制御しながら、徐々に添加した。添加終了後、15分間撹拌した。
【0037】
さらに、アンモニア水を加えて撹拌混合した、発熱を抑制するため、アンモニア水は、混合物の温度が45℃を超えないように制御しながら、徐々に添加した。撹拌中に、泡立てた卵白のような気泡が発生した。この気泡の消滅を反応終了の目安とした。気泡が消滅した後、45分間撹拌し、混合物の温度が35℃になった時点で第1工程の終了とした。
【0038】
(2)第2工程
リノール酸を主成分とする大豆抽出脂肪酸を、可溶化剤中の全配合割合59重量%のうち残る2重量%と、イソプロパノールの全配合割合22.1重量%のうち5.7重量%とを10分間撹拌混合した。得られた混合物を、第1工程で得られた混合物に加えて、10分間撹拌混合し、全体が均一な液体を得た。
【0039】
(3)第3工程
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを、可溶化剤中の全配合割合10.4重量%のうち残る0.9重量%と、イソプロパノールの全配合割合22.1重量%のうち残る7.5重量%を10分間撹拌混合した。得られた混合物を、第2工程で得られた混合物に添加して、10分間撹拌混合し、全体が均一な液体状の可溶化剤を得た。
【0040】
実施例2
実施例1で得られた可溶化剤を用いて、下記の手順で、A重油70重量%、水20重量%及び可溶化剤10重量%を含む混合燃料を調製した。各成分は、混合燃料中の含有量がこのような値となるような割合で使用した。
実施例1と同様の混合容器に、A重油及び可溶化剤を入れ、プライミクス社製「T.K.ホモミクサー」を用いて、撹拌速度1,500〜2,000rpmで、10分間撹拌し、A重油中に可溶化剤を均一に混合した。
次に、水を少量ずつ添加して20分間撹拌した。水の添加により一時的又は局所的に乳化現象が見られたが、撹拌により、水と油とが完全に相溶し、褐色透明の液体が得られた。水の添加が終了し、褐色透明な液体が得られた後、さらに、高速回転(4,500〜5,000 rpm)で7分間撹拌し、さらに低速回転(1,000〜1,500rpm)で8分間仕上げの撹拌を行った。得られた混合燃料は、褐色透明であり、水粒子が視認できなかった。これは、油と水とが完全に馴染み、安定なミセルが形成されたものと考えられる。
得られた混合燃料を、1年間室温で保管したところ、水と油との分離は認められず、調製直後と同様に褐色透明な外観が維持されていた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の可溶化剤は、炭化水素を含む油(重油、軽油、灯油、鉱物油などの石油由来の液体燃料など)に水を均一に微分散でき、石油由来の液体燃料の燃焼効率を向上することができる。そのため、石油由来の液体燃料の改質剤として有用である。
得られる混合燃料は、従来の石油由来の液体燃料と同様の用途に利用できる。このような混合燃料では、燃焼の際の窒素酸化物、粒子状物質を含む黒煙などの発生を顕著に抑制できる。混合燃料は、燃焼効率が高いため、少ない使用量で、従来の石油由来の液体燃料と同程度の熱量を得ることができる。これにより、二酸化炭素の排出量を削減できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数5〜50の炭化水素を含む油に水を均一に分散するために使用される可溶化剤であって、
脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含み、
前記脂肪酸アルカノールアミドの含有量が7〜15重量%、前記C3-4アルカノールの含有量が15〜27重量%、前記アンモニアの含有量が0.01〜2重量%である可溶化剤。
【請求項2】
前記脂肪酸アルカノールアミドがC10-16脂肪酸のジエタノールアミド、前記C3-4アルカノールが分岐C3-4アルカノール、前記炭素数10〜26の脂肪酸が炭素数12〜20の不飽和脂肪酸、前記アミンが、C1-4アルカノールアミン及びC5-8シクロアルキルアミンである、請求項1に記載の可溶化剤。
【請求項3】
前記炭素数10〜26の脂肪酸が、前記炭素数10〜26の脂肪酸を主として含む脂肪酸混合物であり、前記脂肪酸アルカノールアミドの含有量が9〜12重量%、前記C3-4アルカノールの含有量が19〜25重量%、前記脂肪酸混合物の含有量が50〜65重量%、前記アンモニアの含有量が0.1〜0.6重量%である、請求項1又は2に記載の可溶化剤。
【請求項4】
前記脂肪酸アルカノールアミドが脂肪酸ジエタノールアミド、C3-4アルカノールがイソプロパノール、前記炭素数10〜26の脂肪酸が前記炭素数10〜26の脂肪酸を主として含む植物性脂肪酸、前記アミンがエタノールアミン及びシクロヘキシルアミンであり、
前記脂肪酸ジエタノールアミドの含有量が9.3〜11.5重量%、前記イソプロパノールの含有量が19.9〜24.3重量%、前記植物性脂肪酸の含有量が54.8〜63重量%、前記エタノールアミン及び前記シクロヘキシルアミンの含有量が合計で6.9〜8重量%、前記エタノールアミン100重量部に対する前記シクロヘキシルアミンの割合が500〜800重量部、前記アンモニアの含有量が0.1〜0.6重量%である請求項1〜3のいずれかの項に記載の可溶化剤。
【請求項5】
炭素数5〜50の炭化水素を含む油と、水と、請求項1〜3の何れかの項に記載の可溶化剤とを含有し、
前記油と水との重量比が60/40〜95/5、前記油及び水の総量100重量部に対する前記可溶化剤の割合が3〜20重量部であり、
前記油に水が均一に分散している、混合燃料。
【請求項6】
前記油が、重油又は軽油である請求項5に記載の混合燃料。
【請求項7】
脂肪酸アルカノールアミドと、C3-4アルカノールと、炭素数10〜26の脂肪酸と、アミンと、アンモニアとを含み、前記脂肪酸アルカノールアミドの含有量が7〜15重量%、前記C3-4アルカノールの含有量が15〜27重量%、前記アンモニアの含有量が0.01〜2重量%であり、炭素数5〜50の炭化水素を含む油に水を均一に分散するために使用される可溶化剤を製造する方法であって、
前記脂肪酸アルカノールアミドと、前記C3-4アルカノールと、前記炭素数10〜26の脂肪酸と、前記アミンと、前記アンモニアとを含む第1混合物を調製する第1工程と、
前記第1混合物に、さらに前記炭素数10〜26の脂肪酸及び前記C3-4アルカノールを添加して、第2混合物を調製する第2工程と、
前記第2混合物に、さらに前記脂肪酸アルカノールアミド及び前記C3-4アルカノールを添加して混合して前記可溶化剤を得る第3工程とを含み、
前記第1工程及び前記第2工程で使用する前記炭素数10〜26の脂肪酸の重量比が、前記第1工程/前記第2工程=85/15〜95/5であり、前記第1工程及び前記第3工程で使用する前記脂肪酸アルカノールアミドの重量比が前記第1工程/前記第3工程=90/10〜99/1であり、前記第1工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量を100としたとき、前記第2工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量が60〜70であり、前記第3工程で使用する前記C3-4アルカノールの重量が80〜90である、可溶化剤の製造方法。

【公開番号】特開2011−245470(P2011−245470A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206581(P2010−206581)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(593015850)
【出願人】(510141187)
【出願人】(510141198)株式会社バリュースプランニング (1)
【Fターム(参考)】