説明

治療剤

GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる精製された抗癌ペプチド、ならびにこのペプチドの改変および相同形態が記載されている。このペプチドの改変および/または相同形態は、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸を含む。この(これらの)ペプチドは、B.リネンス(B.linens)(チーズの生産で一般に用いられるブレビバクテリウム(Brevibacterium))によって産生することができる。哺乳動物における癌の予防または治療方法であって、哺乳動物を有効量のペプチド、またはペプシン切断によってそのペプチドを生じさせる有効量のタンパク質で処置することを含む方法も提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌細胞に対する抗増殖活性を有するペプチドに関する。本発明はまた、癌の予防または治療のための組成物または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン性抗微生物ペプチドは、病原体に対するその非特異的防御の構成要素としてほとんどの生きた生物に見られる。それらは、細菌、真菌、植物、昆虫、両生類、甲殻類、魚類、鳥類および哺乳動物(人間を含む)で同定されており、構成的に発現されるかまたは微生物の存在に応答して誘導されることができる。カチオン性ペプチドの作用様式は十分には理解されていないものの、これらのペプチドは、微生物に対するその作用の一部として細胞膜と相互作用すると考えられている。線状カチオン性配列RGRAK(配列番号1)は、哺乳動物細胞よりも細菌細胞を標的とするのに選択的であり得る両親媒性β−シート構造を形成するカチオン性抗微生物ペプチド群の特徴である。
【0003】
NPXYコンセンサスモチーフ(配列番号2)は、タンパク質の細胞質ドメイン内部に存在する選別シグナルであり、エンドソーム−リソソーム系の様々なコンパートメントへの膜貫通タンパク質の選別に重要である。NPXYモチーフは、チロシンに基づく選別シグナルであり、膜の細胞質表面と周辺で会合するタンパク質外被の構成要素によって認識される。NPXYシグナルの想定される認識タンパク質は、クラスリン、AP−2およびDab2である。
【0004】
細胞膜を透過し、様々なカーゴを細胞内に移行させることができるますます多くの細胞透過ペプチドの中には、HIV−1のTatタンパク質に由来する、TAT(48−60)(GRKKRRQRRRPPQ)(配列番号3)として知られるウイルスペプチドを構成する原型配列がある。Tatタンパク質全体は長さが86アミノ酸であり、移行活性に必要な高度に塩基性の領域を含有するが、Tat(48−60)ペプチドは、膜溶解活性に必要な9アミノ酸ストレッチの塩基性残基を含有する最小活性配列である。Tat 48−60は、細胞膜を超えてDNAを移行させ、対照ペプチドに対するトランスフェクション効率の増加をもたらすのに有用であることが示されている。
【0005】
ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)は、種々のチーズ(例えば、ランブール、マンステール、ブリック、ティルジッター(Tilster)、アッペンツェラーおよびカマンベール)の表面にそれを塗布すると、風味、色を生じ、他の細菌の増殖を抑制するので、長い間、重要な酪農用微生物として認識されてきた(例えば、Onraedtら、2005を参照されたい)。B.リネンス(B.linens)は、桿球菌の増殖周期を有する好気性微生物であり、20℃〜30℃の至適増殖温度を有する。これは、pH6.5〜8.5で至適増殖する耐塩性微生物である。B.リネンス(B.linens)の増殖は、スメア表面熟成チーズの匂いにとって欠かせない前提条件であると考えられている。
トランスポザーゼは、一連の金属依存的ホスホリル転移反応によってゲノム内およびゲノム間の遺伝子再配置を触媒する、遍在性で非分泌型の細胞内酵素である。推定上のDNAトランスポザーゼは、コードされたトランスポザーゼにおける配列類似性および/または特異的シグネチャーによって同定し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5470732号明細書
【特許文献2】欧州特許第19880870152号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)の推定上のDNAトランスポザーゼ(GenBank寄託番号(GenBank Accession No.)O68604)によってコードされるペプチド断片が癌細胞に対する抗増殖活性を示すという驚くべき発見に端を発する。このペプチドは、機能的に定義されたモチーフに類似する部分アミノ酸配列を含有する。さらに、このペプチドにはペプシン消化に対する耐性があるので、ペプチドの完全性およびこれらのアミノ酸配列間の空間的関係は、ペプチドを経口摂取したときに維持され得る。このペプチドの抗癌活性の機構は不明であるが、この思いがけない発見は、癌の予防または治療において、このペプチドに基づくペプチドおよびペプチド剤を使用することに役立つ。さらに、ソフトチーズの生産においてB.リネンス(B.linens)の使用が確立されていることから、そのような薬剤が、ヒトで、特に、消化管上皮の正常細胞で、わずかにしかまたは全く毒性を示さないことが示唆される。
【0008】
本発明の一態様では、GenBank寄託番号O68604のアミノ酸266〜287(すなわち、DDVRRRVQQETTGHRGRAKDPL(配列番号4))からなる精製された抗癌ペプチド、またはこのペプチドの改変もしくは相同形態であって、このペプチドの改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、このモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、精製された抗癌ペプチド、またはペプチドの改変もしくは相同形態が提供される。
【0009】
本発明の別の態様では、哺乳動物における癌の予防または治療方法であって、哺乳動物をGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる有効量の抗癌ペプチド、またはこのペプチドの有効量の改変もしくは相同形態で処置することを含み、このペプチドの改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、このモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様では、癌細胞の増殖を阻害するための方法であって、細胞をGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる有効量の抗癌ペプチド、またはこのペプチドの有効量の改変もしくは相同形態と接触させることを含み、このペプチドの改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、このモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の別の態様では、GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる抗癌ペプチド、またはペプチドの改変もしくは相同形態を含む医薬組成物であって、このペプチドの改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、このモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを、医薬として許容される担体および/または賦形剤とともに含む医薬組成物が提供される。
【0012】
本発明の1つ以上の形態によって具現化されるペプチドは、チーズの生産に一般に用いられるブレビバクテリウム(Brevibacterium)によって産生することができるので、この細菌を含むチーズの定期的な摂取(intake)は、癌の予防または治療を提供し得る。したがって、哺乳動物における癌の予防または治療方法であって、哺乳動物をB.リネンス(B.linens)またはペプシン切断によって本発明によって具現化されるペプチドが生じるタンパク質を産生する他のブレビバクテリウム(Brevibacterium)を含む有効量のチーズで処置することを含み、処置がチーズの摂取(consumption)を含む方法も提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様では、哺乳動物による摂取用の栄養サプリメントであって、GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる精製された抗癌ペプチド、またはこのペプチドの改変もしくは相同形態を含み、このペプチドの改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、このモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを、食用の担体および/または賦形剤とともに含む栄養サプリメントが提供される。
【0014】
さらなる態様では、哺乳動物における癌の予防または治療方法であって、哺乳動物を本発明によって具現化されるペプチドもしくはペプシンによって切断されたときに本発明のペプチドを放出するタンパク質を発現する有効量の細菌生物、または有効量の細菌生物抽出物で処置することを含み、この抽出物がペプチドまたはタンパク質を含有し、処置が細菌抽出物または抽出物の摂取を含む、方法が提供される。
【0015】
細菌生物は、タンパク質またはペプチドを発現するように操作することができ、かつブレビバクテリウム(Brevibacterium)であることができる。
【0016】
別の態様では、哺乳動物の癌の予防または治療における本発明によって具現化されるペプチドの使用が提供される。
【0017】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物または栄養サプリメントは、本発明によるタンパク質または抗癌ペプチドを発現する生物の細胞調製物またはその抽出物を含む。
【0018】
さらに、少なくともいくつかの形態では、本発明によって具現化されるペプチドの改変または相同形態は、DPLモチーフ(配列番号6)の完全、部分または相同形態を含むことができる。
【0019】
通常、本発明によって具現化されるペプチドの改変または相同形態は、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と、少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0020】
本発明によって具現化されるペプチドの少なくともいくつかの改変形態では、ペプチドのぞれぞれのモチーフは、配列番号4の対応するモチーフに対して相対的な位置にある。通常、改変ペプチドのモチーフ(またはその部分配列)は、配列番号4の対応するモチーフに対して相同な位置にある。ペプチドの改変または相同形態は、例えば、GenBank寄託番号O68604(配列番号7)のアミノ酸266〜289(本明細書ではペプチド24−NH2とも称する)からなるペプチドを含むことができる。
【0021】
ペプチドの改変または相同形態のそれぞれのモチーフは、通常、GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなるペプチドの対応するモチーフのアミノ酸の少なくとも大部分を含む。
【0022】
本発明によって具現化されるペプチドは、RRRVQQ(配列番号5)モチーフとRGRAK(配列番号1)モチーフの両方のそれぞれの完全または部分形態を有することができる。
【0023】
通常、RRRVQQ(配列番号5)モチーフとRGRAK(配列番号1)モチーフの両方のそれぞれの完全または部分形態を有する本発明によって具現化されるペプチドには、これらのモチーフ間にペプシン切断部位がない。
【0024】
少なくともいくつかの形態では、ペプチドの相同形態は、DNAトランスポザーゼのペプチド断片であることができる。
【0025】
本発明によって具現化されるペプチドは、任意の好適な従来公知の手段によって調製された、天然、組換え、または人工的に合成もしくは誘導されたペプチドであることができることも理解されるであろう。
【0026】
さらなる態様では、本発明によって具現化されるペプチドをコードする核酸配列、およびこの核酸を組み入れた組換えベクターが提供される。一般に、組換えベクターは、宿主細胞でペプチドを発現させるための発現ベクターである。
【0027】
別の態様では、本発明による抗癌ペプチドをコードする核酸配列を組み入れた組換えベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。
【0028】
別の態様では、本発明による抗癌ペプチドをコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞が提供され、ここで、この核酸配列は、宿主細胞のゲノムに組み込まれる。
【0029】
さらに、本発明は、癌の予防または治療のための医薬品の製造における本発明によって具現化されるペプチドの使用にまで及ぶ。
【0030】
本発明との関連で使用するとき、「癌」という用語は、任意のタイプの無秩序な細胞増殖を包含する。癌は、任意の組織起源の癌であってもよい。
【0031】
さらに、本発明によるペプチドとの関連での「精製された」という用語は、少なくとも部分的に精製されたペプチド、および1つ以上の他の成分と混合されたペプチドを含む調製物を包含する。例えば、本発明によって具現化される栄養サプリメントまたは組成物は、そのような調製物の例である。
【0032】
哺乳動物は、本発明の方法で治療可能な任意の哺乳動物であることができ、かつウシ科、ブタ科、ヒツジ科またはウマ科のメンバー、マウス、ウサギ、モルモット、ネコまたはイヌなどの実験用試験動物、霊長類または人間であることができる。
【0033】
本明細書の全体を通じて、「含む(comprise)」という単語、または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変化形は、記述された要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群の包含を意味するのであって、任意の他の要素、整数もしくは工程、または要素、整数もしくは工程の群の排除を意味するのではないことが理解される。
【0034】
本発明の特徴および利点は、添付の図面とともに以下の非限定的な実施形態の説明からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本明細書に記載したような方法の1つ以上の実施形態で使用し得る種類のペプチドデンドリマーの概略図である。
【図2】(A)8つのペプチドモノマーを組み入れた、多重抗原ペプチドデンドリマー(MAP)の概略図である。(B)Lys分岐ユニットの数の増加は、表面アミン基の数を増加させる。
【図3】B.リネンス(B.linens)の推定上のDNAトランスポザーゼ(GenBank寄託番号O68604)の部分アミノ酸配列(配列番号8)を示す。これから、ペプシン形態Pn2(pH>2で活性がある)およびPn1.3(pH1.3で活性がある)による理論的な消化によって、本明細書で「22C」と呼ばれるペプチド(配列番号4)が得られる(太字で示す)。
【図4】6つの24−NH2様配列(配列番号9〜14)を同定する、B.リネンス(B.linens)のペプチド24−NH2のBLAST−P解析を示す。これらの配列は各々、推定上のトランスポザーゼタンパク質中にある。保存されたアミノ酸は太字で示され、理論的なペプシン消化の後に生じるペプチド断片は下線で示されている(Expasy Peptide Cutterプログラム)。(i)24−NH2;(ii)アルスロバクター属の種(Arthrobacter sp.)TM1.(Acc.AAC28267);(iii)Orf2マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)(Acc.AAA98489);(iv)プラスミドpEST1226(Acc.AAC64902);(v)プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)KPA171202(Acc.YP_055571);(vi)ロドコッカス・エリスポリス(Rhodococcus erythropolis)PR4(Acc.YP_345706);(vii)本発明によって具現化されるペプチドのコンセンサス配列、ここで、Xは、完全または部分的なRRRVQQ(配列番号5)、RGRAK(配列番号1)、およびDPL(配列番号6)モチーフの間にペプシン切断部位を生じさせないアミノ酸を示す。
【図5a】血清含有MTT細胞増殖アッセイにおけるHT29結腸直腸腺癌細胞の増殖に対するB.リネンス(B.linens)のペプチド24−NH2(配列番号7)の効果を示すグラフである。
【図5b】B.リネンス(B.linens)のペプチド22C(配列番号4)に由来する2種のペプチド14C(配列番号15)および8C(配列番号16)のアミノ酸配列を示す。
【図5c】無血清MTT細胞増殖アッセイにおけるHT29結腸直腸腺癌細胞の増殖に対するB.リネンス(B.linens)のペプチド22C、14Cおよび8Cの効果を示すグラフである。
【図5d】血清含有MTT細胞増殖アッセイにおけるHT29結腸直腸腺癌細胞の増殖に対するB.リネンス(B.linens)のペプチド22C、14Cおよび8Cの効果を示すグラフである。
【図6】血清含有MTT細胞増殖アッセイにおけるHT20結腸直腸腺癌細胞、SW480結腸癌細胞およびMKN45胃癌細胞の増殖に対するB.リネンス(B.linens)のペプチド22C(配列番号4)の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、癌細胞の増殖を阻害する能力を有する、B.リネンス(B.linens)の推定上のDNAトランスポザーゼに含まれるペプチド配列(GenBank寄託番号O68604、National Centre for Biotechnology Information,U.S National Library of Medicine,(8600 Rockville Pike,Bethesda,MD,United States))を同定した。このペプチドは、機能的に定義された線状ペプチド配列に類似するいくつかのペプチドモチーフを含有しており、ペプチドの抗増殖活性の機構は不明であるものの、本発明者らによって実施された研究によって、モチーフまたは少なくともその部分配列は、ペプチドの抗増殖活性に関係があることが示唆されている。抗癌特性を有するB.リネンス(B.linens)由来ペプチドの派生は、スメア表面熟成チーズの摂取が、この生物、またはペプシン切断によって本発明によって具現化されるペプチドを生じさせるタンパク質を産生することができる他のブレビバクテリウム(Brevibacterium)を発酵させ、癌(特に、消化管起源の癌)の予防における相当な健康上の利益があり得ることを示している。
【0037】
GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287によって定義されるペプチドの改変および相同形態は、ペプチドの活性断片を含み、癌細胞に対する抗増殖活性を保持する。例えば、配列番号4の活性断片は、配列番号4によって定義されるペプチドの少なくとも一部の抗癌活性を保持する断片である。
【0038】
本発明によって具現化されるペプチドの改変または相同形態のアミノ酸配列は、配列番号4またはその活性ペプチド断片と比較して1つ以上のアミノ酸変化を有することができる。ペプチドの抗癌活性はまた、通常、改変または相同ペプチドによって本質的に保持されるかまたは提供される。
【0039】
本発明によって具現化される改変ペプチドは、例えば、配列番号4と比較した1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、および/または置換によって提供することができる。アミノ酸配列の改変をもたらすアミノ酸の反転および他の突然変異変化も包含される。改変ペプチドは、突然変異を導入した核酸の発現によって所望のアミノ酸変化が達成されるように、配列番号4のアミノ酸配列をコードする核酸配列にヌクレオチド変化を導入することによって、または例えば、所望のアミノ酸変化を組み入れたアミノ酸配列を合成することによって調製することができる。
【0040】
アミノ酸の置換は、保存的または非保存的アミノ酸置換を含むことができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基をペプチドの抗癌活性に実質的に影響を及ぼさない類似の電荷および立体化学特性を有する別のアミノ酸と置き換えることを意味する。好ましい改変ペプチドは、1つ以上のアミノ酸がアラニンもしくは他の中性の電荷を有するアミノ酸残基と置換されているか、または1つ以上のそのようなアミノ酸残基が付加されているアミノ酸配列を有するペプチドを含む。改変ペプチドは、遺伝暗号によってコードされていないアミノ酸、またはアミノ酸類似体を組み入れることもできる。例えば、L−アミノ酸ではなくD−アミノ酸を利用することができる。実際、本明細書に記載したようなペプチドは、部分的にまたは完全にDアミノ酸からなってもよい。D−ペプチドは、当技術分野で周知の技術を用いて化学合成によって産生されてもよい。したがって、ペプチドのいくつかの実施形態は、L−アミノ酸、D−アミノ酸またはL−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含んでもよい。当技術分野で知られているように、D−アミノ酸を含むペプチドの合成は、ペプチダーゼ活性(例えば、エンドペプチダーゼ)を阻害し、それによって、対応するL−ペプチドと比較してインビボでペプチドの安定性を増強し、その半減期を延長することができる。
【0041】
さらに、本明細書に記載したようなペプチドは、例えば、インビボでのプロテアーゼによる分解に対する耐性を乏しくさせるか、または腎臓を経由した循環からのその除去を阻害するために、N−および/またはC−保護することができる。ペプチドのペグ化などの方法は当技術分野で周知であり、そのような方法は全て明示的に包含される。通常、本発明によって具現化される方法で用いられるペグ化ペプチド/タンパク質は、ポリエチレングリコール(PEG)の2つ以上のモノマー(例えば、(PEG)n)(ここで、nは、通常、約2〜約11の範囲である)に連結されている。
【0042】
配列番号4(または配列番号4の活性断片)を有する本明細書に記載したような改変または相同ペプチド間の相同性は、比較目的で最適に配置されたときの配列中の各位置のアミノ酸を比較することによって決定される。ある位置のアミノ酸が同じならば、配列は、その位置で相同であるとみなされる。配列のアラインメントは、任意の好適なプログラムまたはアルゴリズムを用いて、例えば、NeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(NeedlemanおよびWunsch,1970)などによって実施することができる。コンピュータ支援配列アラインメントは、標準的なソフトウェアプログラム(例えば、Wisconsin Package Version 10.1(Genetics Computer Group,Madison,Wisconsin,United States)の一部であるGAP)を用いて、ギャップ生成ペナルティ50およびギャップ伸長ペナルティ3のデフォルトのスコアリングマトリックスを用いて有利に実施することができる。
【0043】
本発明によって具現化される活性断片、改変または相同ペプチドは、6アミノ酸以上、約35アミノ酸までまたはそれを上回る配列長を有することができる。1つ以上の形態では、改変または相同ペプチドは、長さが約20〜30アミノ酸であり、例えば、20、21、22、23、24、25、26、26、27、28、29または30個のアミノ酸を有することができる。通常、活性断片、改変または相同ペプチドは、長さが6アミノ酸以上、通常、約22アミノ酸までであり、例えば、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19個のアミノ酸などを有する。とはいえ、ペプチドが上に示した長さ範囲に収まる範囲内にあるとき、長さが31、32、33、および34アミノ酸のペプチドも明示的に包含されることが理解されるであろう。例えば、8〜35アミノ酸、14〜25アミノ酸または例えば、17〜26アミノ酸などの範囲の長さを有する活性断片、改変または相同ペプチドは全て、本発明によって特に包含される。
【0044】
通常、完全または部分的なRGRAKモチーフ(配列番号1)を含むペプチドは、長さが少なくとも8アミノ酸である。完全または部分的なRRRVQQモチーフ(配列番号5)を含むペプチドは、通常、長さが少なくとも14アミノ酸である。
【0045】
本発明によって具現化されるさらなる改変ペプチドは、アミノ酸配列DXRRRVQQXTXGHRGRXKDPL(配列番号14)を含み、ここで、Xは、完全または部分的なRRRVQQ(配列番号5)モチーフとRGRAK(配列番号1)モチーフとDPL(配列番号6)モチーフの間にペプシン切断部位を生じさせないアミノ酸またはアミノ酸類似体(例えば、遺伝暗号によって包含されない合成アミノ酸、または天然/野生型アミノ酸の代用物として働く分子)を示す。5つのX位置のいずれか1つのアミノ酸は、例えば、20個の既知のアミノ酸のいずれか1つからまたは既知のアミノ酸類似体から独立に選択することができ、ここで、選択されたアミノ酸は、本質的に、天然ペプチドの抗増殖活性を軽減しない。いくつかの実施形態では、Xのアミノ酸またはアミノ酸類似体は負電荷を有することができ、Xのアミノ酸またはアミノ酸類似体は極性を有することができ、Xのアミノ酸またはアミノ酸類似体は疎水性であることができ、XおよびXのアミノ酸またはアミノ酸類似体は極性を有することができる。
【0046】
本明細書に記載したような改変ペプチドはまた、アミノ酸配列DRRRVQQTGHRGRKDPL(配列番号17)を含むかまたはこのアミノ酸配列からなってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、改変ペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列(ペプチド24−NH2)を含んでもよい。
【0048】
さらに、本発明によって包含される活性断片は、14merのペプチドDDVRRRVQQETTGH(配列番号15)および8merのペプチドRGRAKDPL(配列番号16)を含む。また、これらの配列の両方を、それらの間に提供されるペプシン切断部位とともに、またはそのような部位なしで含み、活性断片、または改変および/もしくは相同ペプチドが提供されてもよい。改変および/または相同ペプチドはさらに、例えば、それらの配列の間のペプシン切断部位を含むかまたは含まない、配列番号15または配列番号16のうちの1つと、配列番号15または配列番号16のうちのもう1つの改変または相同形態とを含んでもよい。
【0049】
RGRAK(配列番号1)によって規定されるモチーフの部分形態は、RSRAK(配列番号18)、RGRSK(配列番号19)およびRSRSK(配列番号20)を含む。モチーフDPL(配列番号6)は、機能的モチーフNPXY(配列番号2)に類似しており、配列番号6の部分形態は、NPL(配列番号21)を含む。したがって、本明細書に記載したようなペプチドの改変および相同形態は、これらの部分モチーフのうちの1つまたは複数を有するペプチドを含む。通常、RGRAKモチーフ(配列番号1)の部分または完全形態を含むペプチドは、完全または部分的なRGRAKモチーフ(配列番号1)に対してC末端にあるDPLモチーフ(配列番号6)(または本明細書に記載したようなその部分形態)を含む。
【0050】
通常、本発明によって具現化される改変または相同ペプチドのモチーフは、それぞれ、配列番号4の対応するモチーフとの少なくとも約80%の配列同一性、より一般的には、配列番号4の対応するモチーフとの約85%、90%、または95%の配列同一性またはそれを上回る同一性を有する。改変または相同ペプチドはまた、通常、少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%のまたはそれを上回る、および最も好ましくは、約80%、90%、95%または98%のまたはそれを上回る、配列番号4、配列番号15または配列番号16との全体的なアミノ酸配列同一性を有する。上で特定した範囲内の全てのあり得る特定の配列同一性パーセンテージもまた、本発明によって明示的に包含されることも理解されるであろう。
【0051】
本発明によって具現化されるペプチドは、抗増殖活性のために三次元構造に拘束されていてもよい。例えば、それは、側鎖構造を伴ってもしくはジスルフィド架橋を形成するシステイン残基を伴って合成されてもよく、またはさもなければインビボで既知の安定した構造を有する分子に組み入れられてもよい。例えば、ペプチドは、その少なくとも一部が折り畳まれて、β−プリーツシートまたはらせん構造(例えば、α−ヘリックス)になるアミノ酸配列に組み入れられてもよい。
【0052】
ペプチドを環化して、増強された剛性を提供し、それによって、インビボでの安定性を提供することもできる。ペプチドおよび融合タンパク質を環化するための様々な方法が知られている。例えば、ペプチドに沿って互いに引き離された2つのシステイン残基を組み入れた合成ペプチドを、これらの残基のチオール基の酸化によって環化し、それらの間にジスルフィド架橋を形成させてもよい。環化はまた、合成ペプチドのN末端アミノ酸とC末端アミノ酸の間のペプチド結合の形成によるか、または例えば、リジン残基の側鎖上の正電荷を有するアミノ基とグルタミン酸残基の側鎖上の負電荷を有するカルボキシル基の間の結合の形成によって達成してもよい。理解されるように、その間でそのような結合が形成される様々なアミノ酸残基の位置は、環(cycle)のサイズを決定する。結合親和性の最適化のための環サイズのバリエーションは、環化を達成するためのアミノ酸の位置が改変されたペプチドを合成することによって得ることができる。所望の三次元構造を達成するためのアミノ酸とアミノ酸の間の直接的な化学結合の形成または任意の好適なリンカーの使用も当業者の能力の範囲内である。
【0053】
通常、抗増殖活性を有する本発明によって具現化されるペプチドのN末端および/またはC末端を改変して、エンドペプチダーゼによるインビボでの分解を防ぐかまたはそれを阻害する。例えば、ペプチドのC末端をアミド化して、エンドペプチダーゼ分解を防いでもよく、C末端アミド基を有するペプチドは、本発明の方法での使用に好ましい。
【0054】
本発明の方法での使用に好適なペプチドを同定するための戦略は、大規模なスクリーニング技術を含む。例えば、ペプチドライブラリープロトコルおよび特にファージペプチドディスプレイライブラリーは、膨大な数の薬剤候補を試験する効率的な方法を提供する。そのようなライブラリーおよびその使用は周知である。その後、同定される薬剤候補を、好適な活性アッセイ、競合アッセイおよび他のアッセイでさらに評価してもよい。ペプチドをスクリーニングする方法またはペプチドが癌細胞増殖を阻害することができるかどうかを評価する方法は、通常、癌細胞をペプチドで処理する条件を用いるアッセイでペプチドを利用すること、および対照ペプチドと比較して、細胞増殖の阻害が起こるかどうかを決定することを含む。
【0055】
哺乳動物への本発明のペプチドの投与に代わるものとして、癌細胞内でペプチドまたは融合タンパク質を発現させるために、ペプチドまたは融合タンパク質をコードする核酸分子を哺乳動物に投与して、癌細胞の増殖の阻害をもたらしてもよい。核酸配列を、染色体外で核酸配列を発現させるためのまたはペプチドもしくは融合タンパク質の発現の前に組換え事象によって核酸配列をゲノムDNAに組み込むための適当な発現ベクター中で細胞に導入することができる。あるいは、細胞に、トランスフェクトされた細胞自体の転写調節配列の制御下でコードされた作用物質を発現させるための、ゲノムDNAとの組換えを促進するペプチドまたは融合タンパク質をコードする配列の両側にあるヌクレオチド配列を組み入れた核酸分子をトランスフェクトすることができる。
【0056】
ペプチド、核酸および他の作用物質の細胞内送達を達成する特に好ましい方法は、エネルギーに依存しない形でカーゴ巨大分子を細胞膜を横断して送達する能力を有する「ファシリテーター部分」(例えば、キャリアペプチド)を用いることである。そのようなキャリアペプチドは、細胞膜完全性を大幅には変化させることなく細胞培養物で作用物質候補を試験する可能性とインビボで作用物質を送達する可能性の両方を提供する。当技術分野で公知のキャリアペプチドとしては、ペネトラチンおよびその変異体(例えば、Derossi Dら、1994、1996)、ヒト免疫不全ウイルスTat由来ペプチド(例えば、Prochiantz A、1996)、トランスポータン由来ペプチド(例えば、Pooga Mら、1998)、ならびにシグナルペプチド(改変形態およびその部分配列を含む)が挙げられ、全てのそのような分子を本発明によって具現化される方法で利用することができる。
【0057】
キャリアペプチドというよりも、ファシリテーター部分は、細胞膜を横断する作用物質の通過が促進されるように、作用物質の細胞膜溶解性を増強する脂質部分または他の非ペプチド部分であることができる。脂質部分は、例えば、トリグリセリド(混合トリグリセリドを含む)から選択されてもよい。脂肪酸が好ましく、特にC16〜C20脂肪酸が好ましい。通常、脂肪酸は、飽和脂肪酸および最も好ましくは、ステアリン酸である。本発明は、任意のそのような非ペプチドファシリテーター部分の使用に限定されず、生理学的に許容される所望の細胞膜溶解性を提供する任意の分子を用いてもよい。
【0058】
作用物質が本発明のペプチドをコードする核酸である場合、ファシリテーター部分は、通常、真核細胞の核膜を通過し、それによって、付着した核酸の核への移行をもたらすこともできる。
【0059】
本発明によって具現化されるペプチドを任意の従来公知の方法でファシリテーター部分に連結させることができる。例えば、ペプチドを、ペプチド結合または架橋試薬を用いる非ペプチド共有結合によってアミノ酸リンカー配列を介してキャリアペプチドに直接的に連結させてもよい。負電荷を有する作用物質(例えば、核酸)については、キャリアペプチドまたはリンカー配列中の負電荷を有する作用物質と正電荷を有するアミノ酸の間の電荷結合によって作用物質をキャリアペプチドに連結させてもよい。また、化学的ライゲーション法を用いて、キャリアペプチドまたはリンカー配列のカルボキシ末端アミノ酸と本発明によって具現化されるペプチドとの間に共有結合を作り出してもよい。
【0060】
様々なさらなる方法を用いて、本発明によって具現化されるペプチドの半減期を延長するか、または標的癌細胞へのペプチドの通過を促進することもできる。そのような方法は、ペプチドをデンドリマーに組み入れることを含む。
【0061】
デンドリマー形態でのペプチドの提供は、標的細胞へのペプチドの送達を促進するのに特に好適である。デンドリマーは、複数コピーのペプチドが結合している比較的大きい分岐状のフレームワーク/スキャフォールドを含む。デンドリマーは、本発明によって具現化される方法での使用に好適であるとみなされる任意のデンドリマーであることができる。例えば、デンドリマーは、ペプチドが結合している分岐状の有機フレームワーク(例えば、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、トリス(エチレンアミン)アンモニアまたはポリ(プロピレンイミン)(Astramol(商標))によって形成されるフレームワーク)を有することができる。他の形態では、デンドリマーは、ペプチドが結合している分岐ユニットを形成するポリアミノ酸を組み入れたフレームワークを有することができる。アミノ酸は、遺伝暗号によってコードされることができ、かつ/または他のアミノ酸であることができる。少なくともいくつかの実施形態では、デンドリマーは、リジンアミノ酸残基によって形成される分岐ユニットのフレームワークを有し、本発明のペプチドは、リジン残基に結合している。
【0062】
ペプチドデンドリマーは、本発明の方法での使用に特に好適であり、本発明の少なくともいくつかの実施形態では、ポリアミノ酸(通常、リジン分岐ユニット)の分岐状フレームワークに結合したポリペプチドを含む。デンドリマーは、通常、少なくとも3層の/3回発生するアミノ酸分岐ユニットを有し、ポリペプチドは、デンドリマーが、以下でさらに記載するような複数のユニットのポリペプチドを提示するように、最も外側の層の/最も外側に発生するアミノ酸分岐ユニットに結合している。ポリペプチドのモノマーユニットが好ましいが、他の実施形態では、デンドリマーのポリアミノ酸分岐ユニットに結合した複数ユニットのポリペプチド(例えば、DDVRRRVQQETTGH)n(すなわち、(配列番号15)n)を組み入れたデンドリマー、ここで、nは、ポリペプチドのユニットの数(通常、1〜3個)である)を利用してもよい。
【0063】
ポリペプチドを、デンドリマーのフレームワークを形成する最も外側の層の/最も外側に発生するポリアミノ酸分岐ユニットの表面に移植するか、またはデンドリマーのポリアミノ酸分岐ユニット表面に合成によってアセンブルすることができる。特に、本発明によって具現化される1つ以上の方法で有用なデンドリマーの合成は、分岐的または収束的合成戦略によって達成することができる。
【0064】
分岐的戦略は、デンドリマーが、固相合成による固体支持体上での連続操作で段階的に構築される直接的なアプローチである。段階的合成は、デンドリマーの分岐コアの合成、それに次ぐ、連続的な様式でのポリペプチド阻害因子の合成を含む。分岐的戦略は、三官能性酸(例えば、ポリアミノ酸)のフレームワークを有するデンドリマーの合成に特に好適である。そのような固相合成スキームは、リジン分岐ユニットの合成に選択される方法であり、この方法では、ジ保護されたリジンを用いて、複数レベルのリジンの分岐フレームワークを生成させる。リジンのジアミノ性によって、その上でポリペプチド阻害因子を直接合成し得る部位の数を効果的に倍増させる各々のさらなるレベルのリジンが生じる。
【0065】
収束的戦略は、ポリペプチドおよび分岐コアユニットが別々に調製され、その後、1つに結合される間接的な、モジュール的アプローチである。デンドリマーの収束的合成で用いられる分岐フレームワークを有するコアユニットは市販されており、一般的には、別々に調製された阻害因子が通常共有結合されている有機アミノ化合物(例えば、ポリ(アミドアミン)(PAMAM)、トリス(エチレンアミン)アンモニアまたはポリ(プロピレンイミン)(Astramol(商標)))から形成される。
【0066】
本明細書に記載したようなペプチドを結合させることができる好適なペプチドデンドリマーフレームワーク、およびペプチドデンドリマーの提供の方法は、例えば、Leeら、2005;SadlerおよびTam,2002;ならびにCloninger,2002に記載されており、その内容全体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明の実施形態での使用に好適なペプチドデンドリマーの例は、図1および図2で模式的に示されている(Mol.Biotechnology,第90巻,第3〜4号,2002年5月,195−229頁のSadler,K.,およびTam,J.P.,Rev.)。
【0067】
通常、デンドリマーは、本発明によって具現化される4、6、8個またはそれより多くのペプチドユニット、通常、少なくとも8個のペプチドモノマーユニットおよびより一般的には、少なくとも10個のペプチドユニットを提示する。さらに、デンドリマーによって提示されるペプチドは、上記のようにペグ化されてもよい。
【0068】
本発明によって具現化されるペプチドを癌細胞に直接標的化する別のアプローチは、高濃度のペプチドを封入し、かつミニ細胞を被覆する二重特異性抗体によって腫瘍細胞表面受容体に標的化される、ナノサイズの粒子(別名、ミニ細胞)の使用を含む(例えば、MacDiarmid,J.A.2007を参照されたく、その内容全体は、相互参照により本明細書に明示的に組み入れられる)。特に、細菌ミニ細胞を利用することができる。これらは、正常な細菌細胞分裂を制御する遺伝子の不活化の結果として産生される無核ナノ粒子である(De Boer P.A.,1989)。受容体の関与によって、癌細胞内での活性ペプチドのミニ細胞エンドサイトーシス、細胞内分解、および放出が生じ、全てのそのようなミニ細胞を用いて本発明のペプチドを封入し、それを標的癌細胞に送達することは、本発明によって明示的に包含される。そのようなミニ細胞を注射用に、または経口摂取用に処方してもよい。経口摂取の後、ペプチドは、ミニ細胞から放出され、小腸を経由して取り込まれる。ミニ細胞を用いて、本明細書に記載したようなデンドリマーを標的癌細胞に送達し得ることも理解されるであろう。
【0069】
本発明によって具現化されるペプチドは、確立された合成プロセスによって直接合成することができる。あるいは、ペプチドは、細菌の大規模発酵によって、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)の天然の種から調達することができる。この方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第5470732号明細書に記載されている。したがって、本発明によって具現化されるペプチドは、天然の細菌から直接精製することができる。
【0070】
あるいは、ペプチドは、組換え供給源、例えば、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)またはペプチドをコードする核酸配列を含有する発現ベクターでトランスフェクトされた他の宿主細菌から得ることができる。組換えDNA技術によって得ることができるペプチドの他の形態は、ペプチドを組み入れた組換え融合タンパク質を含む。したがって、融合タンパク質の提供および本発明によって具現化されるペプチドを組み入れた融合タンパク質の使用は、本発明によって明示的に提供される。本明細書に記載したようなペプチドおよび融合タンパク質などを、従来のペプチド合成または組換え技術を用いて合成または産生することができる。融合タンパク質をコードする核酸は、例えば、平滑末端およびオリゴヌクレオチドリンカー、必要に応じて互い違い末端を提供する消化、および付着末端のライゲーションを用いて、所望の三次元構造および/またはアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドをコードする別々のDNA断片を接続させることによって提供することができる。あるいは、後から1つに連結することができる相補的末端を有するアンプリコンを生じさせるプライマーを用いて、DNA断片のPCR増幅を利用することができる(例えば、Ausubelら(1994) Current Protocols in Molecular Biology,USA,第1巻および第2巻,John Wiley & Sons,1992;Sambrookら(1998) Molecular cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbour Laboratory Press,New Yorkを参照されたい)。
【0071】
哺乳動物対象への投与のためにペプチドおよび融合タンパク質をインビトロで発現させ、細胞培養物から精製してもよく、またはインビトロもしくはインビボでのその発現のために細胞にペプチドもしくは融合タンパク質をコードする核酸をトランスフェクトしてもよい。通常、核酸をまずクローニングベクターに導入し、宿主細胞で増幅させた後、核酸を切り出し、細胞のトランスフェクション用の好適な発現ベクターに組み入れる。
【0072】
典型的なクローニングベクターは、ベクターの効率的な複製を可能にするための複製起点(ori)、ベクターで形質転換された宿主細胞の選択を可能にするためのレポーターまたはマーカー遺伝子、ならびに目的の核酸配列の挿入およびその後の切出しを容易にするための制限酵素切断部位を組み入れている。好ましくは、クローニングベクターは、多くの制限部位を組み入れたポリリンカー配列を有する。マーカー遺伝子は、薬剤耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性を表すAmp)、酵素(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β−ラクタマーゼ、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン−B−ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、または例えば、大腸菌(E.coli)lacZ遺伝子(LacZ’)によってコードされるβ−ガラクトシダーゼ)をコードする遺伝子であってもよい。酵母レポーター遺伝子としては、イミダゾールグリセロホスフェートデヒドラターゼ(HIS3)、N−(5’−ホスホリボシル)−アントラニレートイソメラーゼ(TRP1)およびβ−イソプロピルマレートデヒドロゲナーゼ(LEU2)が挙げられる。理解されるように、本発明の発現ベクターはまた、そのようなマーカー遺伝子を組み入れてもよい。
【0073】
クローニングベクターとしては、哺乳動物、酵母および昆虫細胞用のクローニングベクターが挙げられる。用途を見出し得る特定のベクターとしては、pBR322系ベクターならびにpUCベクター(pUC118およびpUC119)が挙げられる。好適な発現およびクローニングベクターは、例えば、Sambrookら(1998) Molecular Cloning.A Laboratory Manual.,Sambrookら、第2版.Cold Spring Harbour Laboratory,1989にも記載されている。
【0074】
好適な発現ベクターとしては、DNA(例えば、ゲノムDNAまたはcDNA)挿入物の発現が可能なプラスミドおよびコスミドが挙げられる。発現ベクターは、通常、挿入された核酸配列が機能的に連結される転写調節制御配列を含む。「機能的に連結される」とは、核酸挿入物が、挿入物のリーディングフレームを変化させることなく、挿入された配列の転写を可能にするよう転写調節制御配列に連結されることを意味する。そのような転写調節制御配列としては、転写を開始させるためにRNAポリメラーゼの結合を促進するためのプロモーター、転写されたmRNAへのリボソームの結合を可能にするための発現制御エレメント、およびプロモーター活性を調節するためのエンハンサーが挙げられる。プロモーターは、核酸挿入物の転写を特定の細胞系譜でのみ促進し、他の細胞型では促進しないかまたはそのような他の細胞型では比較的低レベルにしか促進しない組織特異的プロモーターであってもよい。発現ベクターの設計は、トランスフェクトされるべき宿主細胞、トランスフェクションの様式および核酸挿入物の所望の転写レベルによって決まる。
【0075】
原核生物(例えば、細菌)または真核生物(例えば、酵母、昆虫もしくは哺乳動物細胞)のトランスフェクションに好適な数多くの発現ベクターが当技術分野で公知である。真核細胞のトランスフェクションに好適な発現ベクターとしては、pSV2neo、pEF.PGK.puro、pTk2、pRc/CNV、pcDNAI/neo、ポリアデニル化部位および伸長因子1−αプロモーターを組み入れた複製しないアデノウイルスシャトルベクターならびに最も好ましくはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを組み入れたpAdEasy系発現ベクターが挙げられる。昆虫細胞での発現のために、バキュロウイルス発現ベクターを利用してもよく、その例として、pVL系ベクター(例えば、pVL1392、およびpVL941)、ならびにpAcUW系ベクター(例えば、pAcUW1)が挙げられる。
【0076】
標的細胞への核酸の導入を達成するための任意の手段を用いることができる。当技術分野で公知の導入方法としては、ウイルスおよび非ウイルス導入法が挙げられる。標的細胞への送達のために適切なウイルス発現ベクターをパッケージングし得る好適なウイルスとしては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、鳥類、マウスおよびヒト起源のレトロウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス(HSV)およびEBVを含む)、パポバウイルス(例えば、SV40)、ならびにアデノ随伴ウイルスが挙げられる。特に好ましいウイルスは、複製欠損組換えアデノウイルスである。標的細胞への核酸配列の送達を達成するために、操作したウイルスを局所または全身に投与してもよい。
【0077】
ウイルスを介する細胞のトランスフェクションを利用するのではなく、核酸配列および他の作用物質をリポソームを介するトランスフェクションによってインビトロまたはインビボで細胞に導入してもよい。リポソームは、その中に含まれる核酸を目的の特定の細胞型に送達するのを最大化するための標的化分子を担持してもよい。そのような標的化分子としては、リポソームと目的の特定の細胞との融合を促進するための、上記のような抗体またはその結合断片、リガンドまたは細胞表面受容体が挙げられる。核酸はまた、従来の低温もしくは熱ショック法、または例えば、当技術分野で知られているようなリン酸カルシウム共沈殿もしくはエレクトロポレーションプロトコルを用いてインビトロで細胞内に送達してもよい。また別の戦略は、細胞の脂質二重層を通過する固有の能力を有する作用物質を設計することである。
【0078】
本発明のタンパク質またはペプチドの発現を、好適な宿主細胞を上記のような発現ベクターで形質転換することによって得てもよいが、その代わりに、本発明のタンパク質またはペプチドをコードする核酸を、通常、宿主細胞内でのタンパク質またはペプチドの発現を駆動する好適なプロモーター配列とともに、宿主細胞のゲノムに直接組み入れてもよい。宿主細胞に核酸を挿入した後、細胞をスクリーニングし、安定し、再現性のある核酸発現および所望のタンパク質、融合タンパク質またはペプチドの付随的産生を示す培養物または細胞株を同定してもよい。種々の宿主細胞内での安定した核酸の組込みおよび発現は当技術分野で周知であり、それには、例えば、酵母(欧州特許第19880870152号明細書)および細菌発現系の使用が含まれる。
【0079】
ポリペプチドまたは融合タンパク質の発現に用いることができる宿主細胞としては、細菌および共生細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(B.subtilis)、乳酸連鎖球菌(Lactococcus lactis)、ストレプトミセス(Streptomyces)およびシュードモナス(Pseudomonas))、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)および特にB.リネンス(B.linens)細菌株、酵母(例えば、サッカロミセス(Sacchromyces)およびピキア(Pichia))、昆虫細胞、鳥類細胞ならびに哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)、COS、HeLa、HaRas、WI38、SW480、およびNIH3T3細胞)が挙げられる。宿主細胞から、および/または場合によっては標準的な精製技術を用いて上清から、発現産物を精製する前に、宿主細胞は、導入された核酸の発現を促進する条件の下、好適な培養培地中で培養される。
【0080】
ペプチドの毒性プロファイルは、細胞形態の評価、トリパンブルー排出、アポトーシスの評価および細胞増殖試験(例えば、細胞数、H−チミジン取込みおよびMTTアッセイ)によって、正常細胞および癌細胞に対して試験することができる。
【0081】
本明細書に記載したような癌細胞に対する抗増殖活性を有するペプチドは、1つ以上の他の化合物または薬物と共投与することもできる。例えば、薬剤は、アンチセンス療法または1つ以上の化学療法薬と組み合わせてまたはそれらと同時に共投与してもよい。特に、薬物耐性癌を治療している場合、薬剤は、癌細胞が耐性を有する化学療法薬と組み合わせてまたはそれと同時に哺乳動物に共投与することができる。「共投与される」とは、ペプチドおよび薬物/薬剤が重複する治療域でその効果を発揮するような、同じもしくは異なる経路による同じ製剤中もしくは2つの異なる製剤中での同時投与、または同じもしくは異なる経路による連続投与を意味する。「連続」投与とは、必ずしもそうではないが、通常、1分または数分から最大で数時間の非常に短い時間の時間遅延で、一方をもう一方の後に投与することを意味する。
【0082】
ペプチドは、通常、意図される対象に投与するための医薬として許容される担体および/または賦形剤を組み入れた医薬組成物中に処方される。医薬組成物としては、注射に好適な滅菌水溶液(薬剤が水溶性の場合)および滅菌注射溶液の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。担体は、生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油およびこれらの混合物のうちの1つまたは複数を含有する溶媒または分散媒体であってもよい。流動性は、コーティング(例えば、レシチン)の使用によっておよび界面活性剤の使用によって維持してもよい。
【0083】
注射溶液は、通常、溶液を濾過して滅菌する前に、上で列挙した様々な他の成分とともに選択された溶媒中に所望の量でペプチドを組み入れることによって調製される。一般に、分散液は、ペプチドを分散媒体および他の成分を含有するビヒクル中に組み入れることによって調製される。
【0084】
経口投与のために、ペプチドを、好適であるとみなされる任意の経口的に許容される担体中に処方してもよい。特に、ペプチドを、不活性希釈剤、吸収可能な食用担体とともに処方してもよく、またはそれを殻の硬いもしくは軟らかいゼラチンカプセルに封入してもよい。さらに、本明細書に記載したようなペプチドを、賦形剤とともに組み込み、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液またはシロップの形態で用いてもよい。取込みのための胃への通過/小腸からの取込みの遅延を促進する腸溶性製剤も当業者には周知であり、本発明によって明示的に包含される。
【0085】
本発明によって具現化されるペプチドを、内用または外用のクリーム、ローションまたは軟膏を形成させるために従来用いられている局所で許容される担体中に処方することもできる。局所製剤は、製剤が染み込んだ包帯などによって、処置すべき部位に適用してもよい。
【0086】
通常、本発明の組成物は、1つ以上の防腐剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサール)を組み入れている。多くの場合、組成物は、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)をさらに含んでもよい。ペプチドの持続的吸収/取込みは、吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物中で使用することによってもたらしてもよい。
【0087】
錠剤、トローチ、坐剤、丸薬、カプセルはまた、結合剤(例えば、トラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン);崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸);および潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)のうちの1つまたは複数を含有してもよい。薬剤を経口投与することになっている場合、組成物はまた、甘味剤(例えば、スクロース、ラクトースまたはサッカリン);および香味剤を含んでもよい。
【0088】
医薬として許容される担体としては、任意の好適な従来公知の溶媒、分散媒体および等張調製物または溶液が挙げられる。医薬活性物質のためのそのような成分および媒体の使用は周知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性剤と適合しない場合を除いて、治療的および予防的組成物におけるその使用が含まれる。望ましい場合、補助的な活性成分を組成物に組み入れることもできる。
【0089】
投与のしやすさおよび投薬の均一性のために、経口組成物を投薬単位形態で処方することが特に好ましい。本明細書で使用するような投薬単位形態は、治療すべき哺乳動物対象に対する単一投薬量として適している物理的に個別の単位を意味すると解釈されるべきであり、各単位は、使用される担体と関連して所望の治療的または予防的効果をもたらすように計算された所定量の本発明によって具現化されるペプチドを含む。
【0090】
投薬単位形態がカプセルである場合、それは、1つ以上の上記成分の他に、液体担体を含有してもよい。様々な他の成分は、コーティングとしてまたは別の形で投薬単位の物理的形態を修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤、丸薬またはカプセルは、シェラック、糖または両方でコーティングされてもよい。
【0091】
さらに、医薬組成物は、標的細胞をトランスフェクトすることができる本発明のベクターを含有してもよい。ベクターは、例えば、上記のような標的細胞にベクターを送達するための好適なウイルスにパッケージングされてもよい。
【0092】
医薬組成物は、通常、少なくとも約1重量%のペプチドまたはデンドリマーを含有する。パーセンテージは、当然、様々に異なっていてもよく、有利には、組成物または調製物の約5%w/w〜約80%w/wであってもよい。理解されるように、そのような組成物中のペプチドの量は、提案される投与様式を考慮して好適な有効投薬量が対象に送達される程度のものである。本発明による好ましい経口組成物は、約0.1μg〜4000mgのペプチドを含有する。
【0093】
通常、ペプチドは、経口投与される場合、最大約200mg/kg個体の体重のペプチドの投薬量、および好ましくは約20mg/kg〜40mg/kg体重の範囲で投与される。少なくともいくつかの実施形態では、ペプチドは、約5〜25mg/kg体重の範囲、一般的には、約5mg/kg〜約20mg/kgの範囲およびより一般的には、10mg/kg〜約20mg/kgの範囲のペプチドの経口投薬量を提供するように投与される。ペプチドデンドリマーとして投与される場合、1日に最大約20gのデンドリマーを投与してもよい(例えば、各々5gのデンドリマーを含む4回の経口投与)。
【0094】
ペプチドの投薬量は、ペプチドを予防のために投与すべきなのかまたは治療のために投与すべきなのかということ、薬剤を投与することを目的としている状態、状態の重症度、対象の年齢、ならびに一般に認められた原則に従って内科医または主治医によって決定され得るような関連因子(対象の体重および全般的健康を含む)を含む、いくつかの因子によって決まる。例えば、最初は低投薬量を投与し、その後、対象の応答の評価を受けて各投与時に増量してもよい。同様に、投与の頻度を、同じ方法で、すなわち、各投薬間の対象の応答を連続的にモニタリングすることによって決定し、必要に応じて、投与の頻度を増やすか、またはそうでなく、投与の頻度を減らしてもよい。
【0095】
医薬組成物の投与の経路もやはり、組成物を投与することになっている癌の性質によって決まる。好適な投与の経路としては、経口、静脈内、皮下、直腸内、および局所が挙げられるが、これらに限定されない。静脈内経路に関して、特に好適な経路は、治療すべき腫瘍または特定の器官に供給する血管への注射によるものである。ペプチドを、空洞(例えば、胸腔もしくは腹腔など)に送達することができ、または腫瘍組織に直接注射することもできる。
【0096】
実際、1つ以上の実施形態では、ペプチドは、ペプチドのまたは細菌もしくは他の生物(例えば、ペプチドを発現するかもしくはペプシン消化時に本発明によって具現化されるペプチドを放出するタンパク質を発現する酵母)の経口摂取(ingestion)または摂取(consumption)によって哺乳動物に送達される。これは、例えば、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)またはペプチド、もしくはペプシン切断によって本発明によって具現化されるペプチドを放出するかもしくは別の形で本発明によって具現化される予防的または治療的処置をもたらすタンパク質を産生する他の細菌を含有するチーズを摂取することによって達成することができる。ペプチド剤の送達は、ペプチドまたはタンパク質を発現する細菌生物を哺乳動物に直接投与することによって達成することもできる。
【0097】
ブレビバクテリウム(Brevibacterium)(例えば、B.リネンス(B.linens))または他の生物は、カプセルもしくは錠剤の形態で、またはルースパウダーの形態で投与することができる。あるいは、B.リネンス(B.linens)または他の生物は、哺乳動物による摂取に好適な食品または栄養サプリメントの形態で、哺乳動物による摂取によって投与することができる。これは、精製形態のペプチドまたはタンパク質にも当てはまる。当業者に公知の任意の好適な食品またはサプリメントを担体として利用することができる。例えば、細菌、ペプチドまたはタンパク質を、チーズ、または発酵もしくは無発酵飲料(例えば、乳製品ベースの飲料(発酵もしくは無発酵)、もしくは果汁)の摂取によって投与することができる。
【0098】
さらに、B.リネンス(B.linens)または他の生物を、生きた形態または死んだ形態で投与することができる。生物の死滅は、超音波処理または本発明の目的で当業者に公知の任意の他の好適な方法によって達成することができる。B.リネンス(B.linens)または他の生物の投与量は、単回用量または複数回用量で投与される10〜1012の生物の範囲であることができる。約10、1010または1011の投与量も明示的に包含されることが理解されるであろう。生物の抽出物は、例えば、超音波分解画分または生物の溶解もしくは破壊された調製物の他の画分であることができる。例えば、生物が好適な細菌である場合、それは、生きた形態でまたは好適な担体中の細菌細胞調製物として投与することができる。いくつかの実施形態では、細菌調製物の溶解もしくは超音波分解されたおよび/または分画化された抽出物は、医薬組成物としてまたは栄養サプリメントとしての使用のための好適な担体中で提供してもよい。本発明のタンパク質およびペプチドを産生するための細菌生物の使用が記載されているが、他の生物を用いて、本発明のタンパク質またはペプチドを発現/産生させてもよい。例えば、対象に投与するかまたは栄養サプリメントに含める前に、タンパク質またはペプチドを酵母で発現させて、超音波処理、溶解および/または分画によって細胞調製物またはその抽出物を提供することができる。
【0099】
本発明の組成物で有用な好適な医薬として許容される担体および製剤は、例えば、当業者に周知の手引書および教科書、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Mack Publishing Co.,1995)”に見出すことができ、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0100】
本発明の実施形態によるペプチドによって処置される癌は、癌腫、肉腫、リンパ腫、頭頸部癌、白血病、ならびに肝癌、舌癌、唾液腺癌、口の歯茎、口底および他の部分の癌、中咽頭、鼻咽頭、下咽頭および他の口腔の癌、食道癌、膵癌、消化管癌、胃癌、小腸癌、十二指腸癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、胆嚢癌、膵癌、喉頭癌、気管癌、気管支癌、肺癌(非小細胞肺癌を含む)、乳癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、膣癌、外陰癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、膀胱癌、腎癌、甲状腺癌、骨癌、骨髄癌、および皮膚癌(メラノーマを含む)からなる群から選択することができる。通常、癌は、上皮起源である。より一般的には、癌は、胃癌、結腸癌および大腸癌を含む消化管癌からなる群から選択される。
【0101】
本明細書に記載したようなペプチドまたはデンドリマーは、癌の治療に従来使用されている1つ以上の他の化合物または薬物と共投与することができる。例えば、ペプチドまたはデンドリマーは、従来の金属および非金属ベースの抗癌薬、ならびに他の抗癌薬からなる群から選択される1つ以上の化学療法薬と組み合わせてまたはそれらと同時に共投与してもよい。金属ベースの薬物は、有機、無機、混合配位子配位化合物またはキレート(白金およびパラジウムの錯体を含む)であることができる。白金ベースの化学療法薬の例としては、シスプラチン(cis−ジアミンジクロロ白金(II)、オキサリプラチン([Pt((1R),(2R)−シクロヘキサン−1,2−ジアミン)(オキサラート)]錯体、およびカルボプラチン(cis−ジアミン(シクロブタン−1,1−ジカルボキシラート)白金(II)が挙げられる。非金属の化学療法薬の例としては、パクリタキセル、グリーベック、ドセタキセル、タキソール、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン(Oncovin)、ビンブラスチン、ビンデシン、カンプロテシン、ゲムシタビン、アドリアマイシン、およびトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン(CPT−11))が挙げられる。ペプチド/デンドリマーと共投与し得る他の抗癌薬としては、srcキナーゼ阻害剤、および抗癌ポリペプチド(例えば、抗srcキナーゼ活性を有するものまたは非デンドリマー形態でβインテグリンサブユニット(もしくはその改変形態)の結合ドメインを組み入れているもの)が挙げられる。
【0102】
いくつかの非限定的な実施例を参照しながら、本発明をさらに以下で例示する。
【実施例】
【0103】
実施例1:ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)の推定上のDNAトランスポザーゼの理論的ペプシン消化
細菌ブレビバクテリウム・リネンス(Brevibacterium linens)に由来する推定上のDNAトランスポザーゼ(アクセッション番号O68604)の理論的ペプシン消化(Expasy Peptide Cutter:http://au.expasy.org/tools/peptide cutter)によって、機能的に定義された線状ペプチド配列と類似するいくつかのモチーフを含有するペプチド(以下、22C(配列番号4)(図3)と称する)が明らかになった。22Cペプチドは、カチオン性抗微生物ペプチド(Jinら、2005)の部類の特徴である線状カチオン性配列RGRAK(配列番号1)(図3;点線の下線)と、部分的NPXYモチーフ(配列番号2)と、特に、細胞内アダプターおよびスキャフォールドタンパク質の既知のドッキング部位であり、かつシグナル伝達経路の調節において役割を果たし得る(Trommsdorffら、1998)、カルボキシル末端のDPL(配列番号15)(図3;二重下線)と、塩基性ペプチド配列RRRVQQ(配列番号5)(これは、TAT 48−60ペプチドGRKKRRQRRRPPQ(配列番号3)の一部と類似しており、類似の部分には下線が引かれている)(図3;実線の下線)とを含有している。TAT 48−60ペプチドは、細胞膜を横断して小分子または巨大分子を輸送する能力を示すいくつかのペプチドのうちの1つである。
【0104】
NPLYR(配列番号22)相同モチーフ全体を含むペプチド22Cの伸長バージョン(以下、ペプチド24−NH2(配列番号7)(図3)と称する)を用いたBLAST−P解析を、デフォルトパラメータで設定されたwww.Ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/を用いて実施した。この検索により、推定上のトランスポザーゼタンパク質中に全て存在する、6つの24−NH2様配列(配列番号9〜14)が得られた(図4)。これら6つの配列間で保存されたアミノ酸は、TAT様モチーフ中、カチオン性抗微生物ペプチドに見られる線状カチオン性配列中、および部分的NPXYモチーフ(配列番号2)中に存在した(図4;太字の残基)。しかしながら、これらの配列は、理論的ペプシン消化(Expasy Peptide Cutterプログラム)の後に生じるペプチドのプロファイルが異なり(図4;下線のある消化断片)、ペプシン消化は、通常、22C(配列番号4)中に同定される3つの規定モチーフの完全性を失わせた。ペプチドが細胞膜を横断し、細胞増殖に関与する細胞内シグナル伝達経路を有効にすることができることを示唆するのは、22C内のこれらのモチーフの組合せである。
【0105】
実施例2:ペプチド24−NH2(配列番号7)、22C(配列番号4)およびペプチド22Cの改変形態(配列番号4)の抗増殖活性の評価
2.1 HT29ヒト結腸直腸腺癌細胞、SW480結腸癌細胞およびMKN45胃癌細胞の培養
HT29(結腸直腸腺癌)(ATCC HTB−38;Manassas,VA)、SW480結腸癌細胞(ATCC)およびMKN45胃癌細胞(Cancer Research Laboratory,University of New South Wales,(Sydney,Australia))を、熱非働化し、濾過した10%の胎仔ウシ血清(FBS;Invitrogen)と20mMのHEPES緩衝液とを含むDMEM(Invitrogen,(Carlsbad,CA))中で維持した。細胞培養は、37℃、大気中5%COに設定したインキュベーター内で実施した。細胞を組織培養フラスコ中で約80%コンフルエンスまで増殖させた後、トリプシン処理によって基板から回収した。簡潔に述べると、存在する培養培地を除去し、細胞を滅菌リン酸緩衝生理食塩水溶液で2回洗浄した。(0.5%w/wトリプシンを提供する)量のEDTA中の10×トリプシンを十分な量で添加して、細胞を回収した。細胞が基板から十分に剥がれてしまったら、10%FBSを含むDMEMを添加して、トリプシン活性を停止させた。剥がれた細胞を円錐状の滅菌チューブに移し、懸濁した細胞を10mlピペットの中を上下に10回通過させて、計数に好適な単細胞懸濁液を生じさせた。生死判別用染料(トリパンブルー)を用い、血球計算盤を用いて計数して、生きた細胞の数を決定した。
【0106】
2.2 MTT細胞増殖アッセイ
MTT細胞増殖アッセイは細胞増殖率を測定し、細胞生存が危険に晒されている場合、このアッセイは、細胞生存の相対的低下を示す。
【0107】
生きたトリプシン処理細胞の1細胞懸濁液を、100μlの容量の血清含有または血清不含培養培地中に1ウェル当たり2×10細胞の密度で96ウェル組織培養プレートに播種した。試験されている化合物の各濃度について、3つ1組のウェルを用意した。未処理細胞または培地のみを含むさらなるサンプルウェルを各処理プレートで準備し、参照対照として並行して処理した。未処理細胞および培地のみのウェルのゼロ時間のプレートを同時に用意し、処理プレートに化合物を添加する時に、このプレートに対してMTTアッセイを実施した(下記の手順参照)。化合物を添加する前に、全てのプレートを24時間培養した。
【0108】
生理食塩水中の新鮮に調製した滅菌1mMストック溶液を細胞培養培地に希釈して、適切な濃度の化合物を調製し、最終的な200μlの培養ウェル容量を生じさせた。この時点で、MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾリル−2)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド;Sigma,St Louis MO)を添加することによって、ゼロ−プレートを処理した。細胞培養をさらに48時間継続した後、PBS(5mg/ml、0.2μmフィルターで滅菌)中のMTTを20μl添加した。MTTの存在下で3時間インキュベートした後、プレートを450gで5分間スピンし、穏やかな吸引によって上清を除去し、沈殿したテトラゾリウム塩を150μlのDMSO:グリシン(0.1Mグリシン、0.1M NaCl pH10.5)(6:1 v/v)溶液に再懸濁した。プレートを穏やかにボルテックス処理して、結晶物質の可溶化を達成し、マイクロプレートリーダーを用いて540nmで吸光度を読み取った。サンプルデータを処理して、未処理対照と比べた処理サンプルの相対的増殖を決定した。全ての実験を少なくとも3回実施した。
【0109】
2.3 結果
目的のペプチドの抗増殖活性を上記のようなMTT細胞増殖アッセイで測定した。ペプチド24−NH2(配列番号7)を合成し、アミド化して、血清を補充した細胞培養培地中に含まれる血清由来エキソペプチダーゼによる分解の可能性から保護した。多くの天然に存在する哺乳動物ペプチドは、血清または血漿半減期を延長する手段としてこのように修飾される(AdessiおよびSoto,2002)。
【0110】
特に、HT29ヒト結腸直腸腺癌細胞に、MTTアッセイ(72時間)を通じてペプチド24−NH2(配列番号7)を投与した。結果を図5aに示す。図に示すように、これらの結果から、ペプチド24−NH2が、結腸癌細胞のインビトロでの細胞増殖を50μMの濃度で最大36%抑制することが示されている。
【0111】
次に、MTTアッセイを通じて、しかし、無血清培養条件下で、ペプチド22C(配列番号4)の抗増殖活性を試験した。細菌トランスポザーゼタンパク質の胃ペプシン消化の後に生じるペプチド形式を模倣するために、遊離の−COOH基をペプチド22Cのカルボキシル末端に含めた。22C由来の2種のペプチド誘導体(一方を、TAT様モチーフを含有する14C(H−DDVRRRVQQETTGH−COOH)(配列番号15)(図5b)と称し、もう一方を、線状カチオン性配列と部分的なNPXYモチーフ(配列番号2)とを含有する8C(図5b;配列番号16)と称する)を並行して試験した(図5c)。全てのペプチドが血清の非存在下でHT29結腸癌細胞の増殖を阻害した(72時間のアッセイ)。
【0112】
次に、同じペプチドを、血清を含むMTTアッセイ(24時間のアッセイ)を通じて試験した(図5d)。これらの結果から、ペプチド22Cが、結腸癌細胞のインビトロでの細胞増殖を35μMの濃度で最大54%抑制し、血清を補充した培養培地中のペプチド14Cおよびペプチド8Cよりも効果的であり(図5d)、さらに、24−NH2ペプチドよりも効果的である(図5a)ことが示されている。
【0113】
その後、48時間のMTTアッセイを通じて、血清の存在下でのHT20結腸直腸腺癌細胞に対するペプチド22Cの増殖阻害効果をSW480ヒト結腸癌細胞およびMKN45ヒト胃癌細胞に対するその効果と比較した。22Cペプチドは、48時間のアッセイでのHT29細胞と同様の程度までSW480およびMKN45細胞の増殖を阻害することが分かった(図6)。
【0114】
広範に記載されたような本発明の範囲を逸脱することなく、数々の変更および/または修正を行ない得ることが当業者に理解されるであろう。それゆえ、本実施形態は、全ての点で、例示とみなされるべきであって、限定的とみなされるべきではない。[参考文献]
【0115】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる精製された抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態であって、前記ペプチドの前記改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、前記モチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、精製された抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態。
【請求項2】
GenBank寄託番号O68604のアミノ酸266〜287からなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる前記ペプチドの改変または相同形態である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドの前記改変または相同形態が、前記モチーフを規定する前記アミノ酸を有する少なくとも75%のアミノ酸同一性を有する少なくとも8個の連続するアミノ酸を有する、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
前記モチーフが、配列番号4と相同な位置にある、請求項3または4に記載のペプチド。
【請求項6】
それぞれの前記完全または部分的なRRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)モチーフを含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
DPLモチーフ(配列番号6)の完全または部分形態を含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
DDVRRRVQQETTGH(配列番号15)またはその改変もしくは相同形態を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
RGRAKDPL(配列番号16)またはその改変もしくは相同形態を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項10】
前記モチーフのいずれの間にも内部ペプシン切断部位を含まない、請求項1〜9のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項11】
GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の活性断片である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項12】
DDVRRRVQQETTGH(配列番号15)およびRGRAKDPL(配列番号16)からなる群から選択される、請求項11に記載のペプチド。
【請求項13】
癌細胞内への前記ペプチドの通過を促進するファシリテーター部分に接続されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に定義されているようなペプチドの複数のコピーを提示するデンドリマー。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に定義されているような、ペプチドを組み入れたミニ細胞。
【請求項16】
哺乳動物における癌の予防または治療方法であって、前記哺乳動物をGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287によってコードされる抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態を含む有効量のタンパク質で処置することを含み、前記ペプチドの前記改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフの少なくとも1つの完全または部分形態と、前記モチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、方法。
【請求項17】
前記ペプチド、もしくはペプシンによって切断されたときに前記ペプチドを放出するタンパク質を発現する細菌生物の有効量、または前記細菌生物の抽出物の有効量の前記哺乳動物による摂取、または前記哺乳動物への投与を含み、前記抽出物が前記ペプチドまたはタンパク質を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌生物がB.リネンス(B.linens)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドまたはタンパク質を含有する食品または栄養サプリメントの前記哺乳動物への投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
癌細胞の増殖を阻害するための方法であって、前記細胞をGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる有効量の抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態と接触させることを含み、前記ペプチドの前記改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、前記モチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを含む、方法。
【請求項21】
GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態を含む医薬組成物であって、前記ペプチドの前記改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、前記モチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを、医薬として許容される担体および/または賦形剤とともに含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか一項に定義されているようなペプチドを発現する生物の細胞調製物またはその抽出物を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
哺乳動物による摂取用の栄養サプリメントであって、GenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287からなる精製された抗癌ペプチド、または前記ペプチドの改変もしくは相同形態を含み、前記ペプチドの前記改変または相同形態が、RRRVQQ(配列番号5)およびRGRAK(配列番号1)からなる群から選択されるモチーフのうちの少なくとも1つの完全または部分形態と、前記モチーフを規定するGenBank寄託番号O68604(配列番号4)のアミノ酸266〜287の少なくとも8個の連続するアミノ酸と少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する6個以上の連続するアミノ酸とを、食用の担体および/または賦形剤とともに含む、栄養サプリメント。
【請求項24】
前記ペプチドを発現する生物の細胞調製物またはその抽出物を含む、請求項23に記載の栄養サプリメント。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか一項に定義されているような抗癌ペプチドの発現のための、核酸配列で形質転換された宿主細胞。

【図3】
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【図4】
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【図5b】
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【図1】
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【図2】
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【図5a】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−533521(P2012−533521A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519846(P2012−519846)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000915
【国際公開番号】WO2010/006377
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(512012447)ニュートリペップ・ピーティーワイ・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】