説明

治療用化合物

本発明は、2’,3’−メチリデンアセタールプロドラッグの使用によってアデノシン類似体の経口薬物吸収を改善する方法、およびこれらのプロドラッグの医薬品としての使用に関する。本発明は、アデノシン受容体アゴニストプロドラッグである化合物、および治療薬として、特に鎮痛もしくは抗炎症性化合物としてかまたは疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)としてのこれらの使用、およびこれらの化合物を使用する疼痛または炎症を予防、処置または寛解させるための方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、2’,3’−メチリデンアセタールプロドラッグの使用によってアデノシン類似体の経口薬物吸収を改善する方法、およびこれらのプロドラッグの医薬品としての使用に関する。本発明は、アデノシン受容体アゴニストプロドラッグである化合物、および治療薬として、特に鎮痛もしくは抗炎症性化合物としてかまたは疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)としてのこれらの使用、およびこれらの化合物を使用する疼痛または炎症を予防、処置または寛解させるための方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
アデノシンは、4つの既知の受容体、アデノシンA1、A2A、A2BおよびA3受容体に対して作用する遍在性の局在ホルモン/神経伝達物質である。アデノシンは一般に、組織においてエネルギーの供給および需要の平衡を保つために役立つ。例えば、心臓において放出されたアデノシンは、結節および心房におけるA1受容体媒介性作用によって心拍数を下げる(Belardinelli, L & Isenberg, G Am. J. Physiol. 224, H734-H737)一方、冠動脈を同時に拡張させてエネルギー(すなわち、グルコース、脂質および酸素)供給を増加させる(Knabb et al, Circ. Res. (1983) 53, 33-41)。同様に、炎症の間、アデノシンは炎症活動を抑制するために役立つ一方で、過剰な神経活動状態(例えば、てんかん)において、アデノシンは神経の興奮を抑制する(Klitgaard et al, Eur J. Pharmacol. (1993) 242, 221-228)。このシステム、またはそのバリアントは、全ての組織に存在する。
【0003】
アデノシン自体は、上室性頻拍を診断および処置するために使用され得る。アデノシンA1受容体アゴニストは、強力な鎮痛薬として作用することが知られている(Sawynok, J. Eur J Pharmacol. (1998) 347, 1-11; Giffin et al, (2003) 23, 4, 287-292)。A2aアゴニストは、近年、疼痛が増加した状態(神経障害性および炎症性痛覚過敏)において有意な疼痛軽減を与えることが示されており(国際公開第2004/052377号;国際公開第2004/078183号;国際公開第2004/078184号;国際公開第2005/084653号)、抗炎症性活性を有することが知られている(例えば、US5,877,180;国際公開第99/34804号;Linden et al, Expert Opin. Investig. Drugs (2005) 14, 7, 797-806;Sitkovsky et al, TRENDS in Immunology (2005) 26, 6, 299-304; Linden et al, Journal of Immunology (2006) 117, 2765-2769;Cronstein et al (2004) 25, 1, 33-39)を参照のこと)。実験動物において、A2A受容体アゴニストは、敗血症(Linden et al, The Journal of Infectious Diseases (2004) 189, 1897-1904)、関節炎(Cohen et al, J. Orthop. Res. (2005) 23, 5, 1172-1178;Cohen et al, J. Orthop. Res. (2004) 22, 2, 427-435)、および腎臓、冠血管または大脳動脈閉塞により生じる虚血/再灌流傷害を含む広範な状態に対して有効であることが知られている(例えば、Day et al, J. Clin. Invest, (2003) 112, 883-891;Linden et al, Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. (2004) 286, G285-G293;Linden et al, Am J. Physiol. (1999) 277, F404-F412; Schlack et al, J. Cardiovasc. Pharmacol. (1993) 22, 89-96;Zu et al, J. Cardiovasc. Pharmacol. (2005) 46, 6, 794-802;Linden et al, Am J. Physiol. Heart Circ. Physiol. (2005) 288, 1851-1858;Kennedy et al, Current Opinion in Investigational Drugs (2006) 7, 3, 229-242を参照のこと)。これらの状態に共通の因子は、全てではないが、炎症性細胞の大部分に対するこの受容体の抑制性効果によって引き起こされる炎症性応答の減少である。A2aアゴニストはまた、創傷治癒を促進することが知られている(Montesinos, Am. J. Pathol. (2002) 160, 2009-2018)。
【0004】
しかし、アデノシン受容体の遍在的な分布は、アデノシン受容体アゴニストの投与が有害な副作用を引き起こすことを意味している。これは一般に、アデノシンベースの治療の開発を妨げている。選択的A1受容体アゴニストは、徐脈を引き起こす。A2A受容体アゴニストは、広範な血管拡張を引き起こし、低血圧および頻拍症が結果として起こる。第1の選択的A2A受容体アゴニスト(2−[4−(2−カルボキシエチル)フェニルエチルアミノ]−5’−N−エチルカルボキサミドアデノシンまたはCGS21680)は、可能性のある降圧薬として臨床試験フェーズ2Aにて試験された。しかし、この化合物の投与は、血圧の大幅な低下およびその結果として心拍出量の増加を引き起こした。これは、医薬品としてのCGS21680の使用を阻害している。Webb et al. (J. Pharmacol Exp Ther (1991) 259, 1203-1212)、Casati et al, (J Pharmacol Exp Ther (1995) 275(2):914-919)およびBonnizone et al, (Hypertension. (1995) 25, 564-9)は、選択的A2Aアデノシン受容体アゴニストが、低血圧および頻拍症を引き起こすことを示している。誘発される頻拍症の程度は、医薬品としてのCGS21680の使用を妨げることに充分であった。Alberti et al, (J Cardiovasc Pharmacol. (1997) Sep;30(3):320-4)にて、選択的A2Aアデノシン受容体アゴニストが、血圧を低下させ、心拍および血漿レニン活性の顕著な増加を誘導する強力な血管拡張剤であることが開示されている。これらの副作用が、医薬品としてのCGS21680の使用を妨げている。
【0005】
US5,877,180は、炎症性疾患の処置に有効であるとされるA2Aアデノシン受容体のアゴニストに関するものである。好ましいアゴニスト、WRC0090およびSHA 211(WRC0474)は、CGS21680およびCV1808などの以前報告されているアデノシン類似体より強力で選択的であると開示されている。SHA211またはWRC0090の投与は、類似体の他のアデノシン受容体への結合によって媒介される副作用の可能性を低下させると考えられている。しかし、SHA211の活性に関するインビトロのデータのみが含まれている。記載されている化合物のいずれかが重篤な副作用を引き起こすことなく、インビボにて治療上有効であり得ることを示すものはない。強力でかつ選択的なアデノシンA2A受容体アゴニストの他のアデノシン受容体への結合によって媒介される副作用がそのようなアゴニストの使用によって低減されることが期待されるものの、アデノシン受容体の広範な分布は、これらの化合物が正常な組織においてアデノシンA2A受容体を活性化し、したがって、重篤な副作用(低血圧および反射性頻脈など)を引き起こすと今なお予期されていることを意味している。
【0006】
US3,936,439は、哺乳動物のための、冠血管拡張および/または血小板凝集抑制剤としての2,6−ジアミノネブラリン誘導体の使用を開示している。イヌにおけるインビボデータが含まれており、N−フェニル−2,6−ジアミノネブラリン、N−シクロヘキシル−2,6−ジアミノネブラリン、N−(p−メトキシフェニル)−2,6−ジアミノネブラリンおよびN−エチル−2,6−ジアミノネブラリンの冠血管拡張作用を支持しており、インビトロデータは、N−フェニル−2,6−ジアミノネブラリン、N−シクロヘキシル−2,6−ジアミノネブラリン、2,6−ジアミノネブラリンおよびN−エチル−2,6−ジアミノネブラリンの血小板凝集抑制作用を支持している。FR2162128(Takeda Chemical Industries, Ltd)は、アデノシン誘導体(2つ以上の炭素原子の低級アルキル基を含む2−アルコキシアデノシン誘導体を含む)が低血圧および冠血管拡張活性を有することを開示している。イヌにおけるインビボデータは、2-n-ペンチルオキシアデノシン、2-(β-ヒドロキシエトキシ)-アデノシンおよび2-フェノキシアデノシンの冠血管拡張活性を支持している。しかし、US3,936,439またはFR2162128において、記載されている化合物のいずれもが重篤な副作用を引き起こさずに投与され得ることを示していない。
【0007】
Ribeiro et al, (Progress in Neurobiology 68 (2003) 377-392)は、神経系におけるアデノシン受容体の概説である。この論文の結び(頁387、右欄、セクション8の4〜10行)において、「かつて述べられたように、末梢でのアデノシン受容体の活性化には、低血圧、徐脈および低体温が付随する[...]これらの副作用は、今までのところ、アデノシン受容体アゴニストの臨床上の有効性を有意に制限している」ことが述べられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、最小の副作用をともなって投与され得るアデノシン受容体アゴニストを提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特定の態様は、疼痛の処置に関する。疼痛は2つの成分を有しており、それぞれ感覚ニューロンの活性化に関与している。第1の成分は、例えば、皮膚上の熱および圧力の結果として感覚ニューロンが刺激された場合の早期または即時フェーズである。第2の成分は、以前損傷を受けている組織を神経支配する感覚メカニズムの感度の増加である。この第2の成分は、痛覚過敏といわれ、組織損傷から生じる慢性的な疼痛の全ての形態に関与しているが、疼痛知覚の早期または即時フェーズに関与はしていない。
【0010】
したがって、痛覚過敏は、組織損傷によって引き起こされる高まった疼痛知覚の状態である。この状態は、傷害された個体による損傷を受けた組織の保護をはたらきかけ、組織の修復が生じる時間を与えるために明らかに設計された神経系の天然の応答である。この状態の根本的な原因が2つ知られており、感覚ニューロン活動の増加および脊髄にて生じる侵害受容性情報の神経細胞プロセッシングでの変化である。痛覚過敏は慢性炎症(例えば、関節リウマチ)の状態、感覚神経の損傷が生じた場合(すなわち、神経因性疼痛)に減弱され得る。
【0011】
2つの主要なクラスの鎮痛薬が知られている:(i)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)および関連COX−2抑制剤;ならびに、(ii)モルヒネベースのオピエート。両方のクラスの鎮痛薬が、正常、即時または侵害受容性疼痛に有効である。しかし、両方のクラスの鎮痛薬は、神経因性疼痛などのいくつかの型の痛覚過敏に対して有効性が低い。多くの開業医が、これらの化合物の投与によって引き起こされる副作用(不穏状態、悪心および嘔吐など)および患者がそれらの化合物に中毒になり得る可能性が原因で、神経因性疼痛に影響を及ぼすために必要とされる高い用量のオピエートを処方することに躊躇している。NSAIDは、オピエートと比べて強力ではなく、さらに高い用量のこれらの化合物が必要とされる。しかし、これらの化合物が消化管の刺激作用を引き起こすので、高い用量のこれらの化合物は望ましくない。
【0012】
神経障害性および他の痛覚過敏症候群において疼痛知覚をコントロールするために充分に強力で、かつ、重篤な副作用を引き起こさないかまたはそれらの化合物に中毒にならない鎮痛薬、特に、抗知覚過敏薬を提供することが必要とされている。
【0013】
近年、いくつかのアデノシンアゴニスト(例えば、スポンゴシン(spongosine))が、アデノシン受容体に対するこの化合物の既知の親和性に基づき必要とされることが期待される用量より100倍少ない用量で、有効な鎮痛薬であることが明らかになっている(国際公開第2004/052377号;国際公開第2004/078183号;国際公開第2004/078184号;国際公開第2005/084653号)。そのような用量において、スポンゴシンおよび関連化合物は、アデノシン受容体の活性化に付随する有意な副作用を引き起こしていない。これらの観察の基礎となるメカニズムは、pH7.4より低いpHにおいて、アデノシン受容体に対するこれらの化合物の親和性が増加することにあるようである。この特性は、低い用量でのこれらの化合物の驚くべき活性を説明していると考えられている。出願人らは、低下したpHでアデノシン受容体に対して親和性もまた増加した特定の他の化合物を同定できた。これらの化合物は、重篤な副作用を引き起こさずに医薬品として使用され得る。しかし、これらの化合物の有意な割合が、乏しい経口での生物学的利用率および短い血漿半減期を有しており、したがって、治療薬としてのこれらの化合物の有用性を制限している。
【0014】
スポンゴシンは1945年に熱帯性の海綿、Cryptotethia cryptaから最初に単離された(Bergmann and Feeney, J. Org. Chem. (1951) 16, 981, Ibid (1956) 21, 226)、天然で最初に発見されたメトキシプリンである。スポンゴシンは、2−メトキシアデノシン、または9H−プリン−6−アミン、9−α−D−アラビノフラノシル−2−メトキシとしても知られている。スポンゴシンの最初の生物学的活性は、Bartlettらによって記載されている(J. Med. Chem. (1981) 24, 947-954)。スポンゴシン(および他の化合物)は、経口投与後の齧歯動物において、骨格筋弛緩、体温下降、心血管および抗炎症効果について試験されている(抗炎症活性は、ラットの足にてカラゲナン誘導性浮腫の抑制によって評価されている)。スポンゴシンは、ラットにおいて、20mg/kg poでカラゲナン誘導性浮腫の25%の抑制を引き起こした。しかし、同じ用量でスポンゴシンを投与した後で、平均血圧(41%)および心拍数(25%)の減少もまた観察された。
【0015】
ラットアデノシンA1およびA2A受容体に対するスポンゴシンの親和性が決定されている。得られたK値(ラットにおいて)は、A1受容体について340nM、およびA2A受容体について1.4μMである一方、ラットA2A受容体の刺激について、EC50値が3μMであることが示された(Daly et al, Pharmacol. (1993) 46, 91-100)。モルモットにおいて、スポンゴシンの有効性が単離した心臓調製物において試験され、得られたEC50値がアデノシンA1およびA2A受容体についてそれぞれ10μMおよび0.7μMであった(Ueeda et al, J Med Chem (1991) 34, 1334-1339)。スポンゴシンの低い作用強度および乏しい受容体選択性が原因で、より強力で受容体選択的なアデノシン受容体アゴニストを好んで、スポンゴシンは大いに無視された。
【0016】
疾患の処置においてヌクレオシド類似体の使用は、経口吸収の乏しさによってしばしば制限されている(Han et al, Pharm. Res. (1998) 15(8), 1154-9)。ヌクレオシドは、可溶性が乏しい極性分子であって、これらの特性は、薬物標的へのアクセスを与える血液脳関門および細胞膜などの全身の膜へのヌクレオシドの透過性を乏しくしている(Kling, Modern Drug Discovery (1999) 2(3), 26-36)。したがって、ヌクレオシド薬物の経口投与はしばしば、作用部位での薬物の制限されるかまたは可変性の濃度の結果として、乏しいかまたは再現不可能なインビボでの有効性をもたらす。そのため、新たなヌクレオシド類似体の設計および合成が、至適な経口での生物学的利用率を有する薬物の発見という目標を有する活発な研究分野として残されている(Dresser et al, Drug Metabolism and Disposition (2000) 28, 9, 1135-40)。
【0017】
多くの研究グループが、選択した生理活性種のプロドラッグを用いることによって、ヌクレオシド薬物の乏しい経口での生物学的利用率の問題を解決しようとしている。プロドラッグは化学的に修飾されている薬物であって、作用部位において生物学的に不活であり得るが、1つ以上の酵素またはインビボプロセスによって、生理活性形態へと分解または修飾される。
【0018】
ヌクレオシドプロドラッグの設計は、アデノシンデアミナーゼ活性化などの酵素プロセスの利用を介するヌクレオシドまたはペプチド輸送体の標的化、または特定の置換基のヌクレオシド糖部分への付加によって経口での生物学的利用率を改善することに焦点が置かれて、それらは膜透過を促進し、次いでインビボにて切断され、活性種が放出される。
【0019】
種々の抗ウイルス薬のプロドラッグが試みられている。最も注目すべくことに、US4,957,924は、抗ヘルペス剤の種々の治療エステル、アシクロビルを開示している。バラシクロビル、アシクロビルのL−バリルエステルは、急速で広範な初回通過代謝を経て、アシクロビルおよびアミノ酸L−バリンを生じる経口プロドラッグである。経口でmpバラシクロビルからのアシクロビルの生物学的利用率は、経口でのアシクロビルの投与後に達成されるものよりかなり高い。バラシクロビルの経口投与は、アシクロビル自体の経口投与(19%)と比較して、アシクロビルの尿中排泄の大きな増加(63%)を生じた(Perry and Faulds Drugs (1996) 52, 754-72)。経口での生物学的利用率の増加は、バラシクロビルのL−バリルエステル部分のペプチド輸送体hPEPT1との相互作用に起因していると考えられている(Sawada et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. (1999) 291, 2, 705-9;Anand et al, J. Pharmacol. Exp. Ther. (2003) 304, 781)。類似のストラテジーがジドブジン(AZT)の経口での生物学的利用率を増加させるために使用されている(Han et al, Pharm. Res. (1998) 15(8), 1154-9)。
【0020】
同様に、国際公開第01/96353号は、B型肝炎ウイルスの処置のための2’−デオキシ−β−L−ヌクレオシドの3’プロドラッグ(バリルおよびアルキルエステルを含むアミノ酸エステル、特に、3’−L−アミノ酸エステルである)に関する。例えば、シナマロガス(cynamalogous)サルにおいて、2’−デオキシ−β−L−シチジンの3’,5’−ジバリンエステルプロドラッグは、2’−デオキシ−β−L−シチジン自体の投与後の18%の生物学的利用率および2.95h(po)の半減期と比較して、73%の経口での生物学的利用率および2.28h(po)の半減期で、2’−デオキシ−β−L−シチジンをインビボにて放出する。
【0021】
別のアプローチにおいて、プロドラッグの活性種へのアデノシンデアミナーゼ活性化が利用されている。例えば、ビラミジン(Viramidine)がC型慢性肝炎薬、リババリンへのプロドラッグとして作用することが示されている。ビラミジンは、主にアデノシンデアミナーゼによって肝臓にてリババリンへと変換され、この肝臓標的化特性がリババリン自体によって引き起こされる溶血性貧血副作用を回避するために利用されている。したがって、[14C]リババリンまたは[14C]ビラミジンのサルへの複数回経口投与後では、ビラミジンは、リババリンと比較して、肝臓で3倍の薬物レベルを生じたが、赤血球では半分の薬物レベルであった(Lin et al, Antiviral chemistry & chemotherapy (2003) 14, 145-152;Wu et al, Journal of Antimicrobial Chemotherapy (2003) 52, 543-6)。
【0022】
国際公開第00/71558号は、選択的アデノシンA1受容体アゴニストであるN6−オキサ、チア、チオキサおよびアザシクロアルキル置換アデノシン誘導体のエステルであるプロドラッグの使用が開示されている。このストラテジーを使用してインビボでの有効性の増加(心拍数の低下)が確認されたものの、経口での生物学的利用率または有効な半減期の増加を示すデータは存在していない。Sommadossiら(国際公開第2004/003000号)は、フラビウイルス感染症を処置するための1’、2’、3’または4’、SS−DまたはSS−L分枝ヌクレオシドの2’および3’プロドラッグを開示しているが、同様に、これらのプロドラッグが経口での生物学的利用率または半減期を改善することは示していない。Dalpiazら(Acta Technologiae et Legis Medicamenti (2002) 13, 49およびPharm. Res. (2001) 18, 531)は、全血および血漿での6-シクロペンチルアミノアデノシン(CPA)の5’−エステルプロドラッグの安定性のデータを報告している。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、静的異痛症によって測定された、ストレプトゾシン(STZ)−誘導性糖尿病性神経障害の維持に対するスポンゴシンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(発明の開示)
本発明は、哺乳動物の体内で治療上有用なアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニストに変換されるアデノシン誘導体の新たな2’,3’−メチリデンアセタールプロドラッグの治療における使用を提供する。ヌクレオシド鋳型の小さな構造上の修飾にもかかわらず、2’,3’−メチリデンアセタールの機能性は、驚くべきことに、代謝物自体の経口投与(すなわち、このプロドラッグストラテジーが用いられない場合)後に観察される経口での生物学的利用率および経口半減期と比較して、受容体標的に到達するプロドラッグ化されたアデノシン誘導体(活性代謝物)の経口での生物学的利用率および経口半減期の有意な増加を引き起こし得る。
【0025】
第1の好ましい態様において、本発明は、アデノシン受容体のアゴニズムまたはアンタゴニズムによって改善または予防され得る医学的状態に対する使用のための医薬品の製造における、式(I):
【化1】

[式中、
R1は、置換されていないか、またはハロゲン、OH、OR2、NR2R3、CN、SR2またはR2から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているアデニンであり;
R2はおよびR3は、H、C1−6−アルキル、C3−8−シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルから独立して選択され、それぞれハロゲン、OH、NH、CNまたはCFから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよい]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩の使用を提供する。
【0026】
好ましくは、式(I)で表される化合物は、式(II):
【化2】

[式中、
R1は、(式)1について記載するものである]
を有するか、または医薬上許容されるその塩である。
【0027】
本発明の好ましい態様において、医学的状態は、アデノシン受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る。特に、医学的状態は、疼痛、炎症および/または関節症に付随するものであってもよい。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、第2の医薬品と比較して生物学的利用率が増加し、改善されている医薬品の製造方法における、式(I)または式(II)で表される化合物の使用を提供し、当該第2の医薬品は式(IV):
【化3】

[式中、
R1は、式(1)について記載するものであり、かつ、第2の医薬品のR1は、改善されている医薬品のR1と同じものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩を有効成分として有する。
【0029】
別の態様において、本発明は、アデノシン受容体のアゴニズムまたはアンタゴニズムによって改善または予防され得る医学的状態を予防、処置または寛解するための方法を提供し、当該方法は、そのような予防、処理または寛解を必要とする対象に、式(I)または式(II)で表される化合物を投与する工程を包含し、ここで、R1、R2およびR3は上記のものである。本発明の好ましい態様において、医学的状態は、アデノシン受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る。特に、医学的状態は、疼痛、炎症および/または関節症に付随するものであってもよい。
【0030】
本明細書に記載の方法は、対象が特に記載する処置を必要とすると確認されているものを含む。そのような処置を対象が必要としていることの確認は、対象または医療専門家の判断であってもよく、主観的(例えば、所見)または客観的(例えば、試験もしくは診断方法によって測定可能)であってもよい。
【0031】
さらに別の態様において、本発明は、式(IV):
【化4】

[式中、
R1は、式(I)について記載するものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩の生物学的利用率および/または半減期を増加させる方法を提供し、当該方法は、リボース部分中の2’−OHおよび3’−OHを置換して、2’3’−O−メチリデンアセタール環を形成する工程を包含する。
【0032】
別の態様において、本発明は、式(III):
【化5】

[式中、
R4は、OR2、NR2R3、CN、SR2またはR2から選択され;R2およびR3は、式(1)について記載するものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩を提供する。R4は、好ましくは、OMe、OCHCHF、(2,5−ジフルオロフェノキシ)、(3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)フェノキシまたは3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルであってもよい。
【0033】
R6は、好ましくは、OMe、OCHCHF、OCHシクロペンチル、O(2,2,3,3−テトラフルオロシクロブチル)、(2,5−ジフルオロフェノキシ)、(3,4−ジフルオロフェノキシ)、(3−トリフルオロメチル,4−クロロフェノキシ)、(S)−sec−ブチルアミノまたはシクロヘキシルアミノであってもよい。
【0034】
式(III)で表される好ましい化合物としては、以下が挙げられる:
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−メトキシ−9H−プリン−9イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−イル]オキシ}−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール; and
・((3aR,4R,6R,6aR)−6−{6−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−9H−プリン−9−イル}テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル)メタノール。
【0035】
本発明によれば、実施例に記載する化合物番号1〜5の合成方法が提供される。いくつかの場合において、これらの化合物は、1つ以上の保護基を含む。所望により、特定のものの代わりに、他のカルボキシベースのヒドロキシル保護基を使用してもよいことが理解されるだろう。
【0036】
本発明のプロドラッグは全て、インビボにて、pH7.4より低いpHでアデノシン受容体に対して親和性が増加した活性代謝物を生じると考えられている。正常な哺乳動物組織において、細胞外のpHは、pH7.35と7.45との間にしっかりと調節されている。いくつかの組織は、低いpH値、特に、胃の内腔(2と3との間のpH)およびいくつかの上皮表面(例えば、肺表面のpHは約6.8である)を経験している。病的組織では、例えば、炎症、虚血および他の型の損傷の間、pHの低下が生じる。
【0037】
低下したpHでのアデノシン受容体に対する活性代謝物(インビボにおいて、本発明のプロドラッグから生じる)の親和性の増加が原因で、これらの活性代謝物の作用は、病的組織などの低いpH領域に標的化されている。そのため、治療効果を与えるために必要とされるこれらの活性代謝物の用量は、正常な細胞外の生理的pHでのアデノシン受容体に対する活性代謝物の親和性に基づいて期待される用量よりかなり低い。低い用量の活性代謝物が必要とされるので、治療薬としてのアデノシン受容体アゴニストを使用不可能にしている、アデノシン受容体アゴニストの投与に付随する重篤な副作用が回避または最小化される。
【0038】
上記のように、開示するプロドラッグ化合物は、アデノシンA2A受容体などのアデノシン受容体の調節(アゴニズムまたはアンタゴニズム)によって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処理または寛解のために使用され得る。そのような病理学状態の例としては、疼痛、炎症および/または関節症が挙げられる。
【0039】
本発明によれば、疼痛、特に痛覚過敏の予防、処置または寛解のための医薬品の製造における本発明のプロドラッグの使用が提供される。本発明によれば、そのような予防、処置または寛解を必要とする対象に本発明のプロドラッグを投与する工程を包含する、疼痛(特に、痛覚過敏)を予防、処置または寛解する方法が提供される。
【0040】
本発明のプロドラッグは、アデノシン受容体を活性化するための活性代謝物の既知の血漿濃度より低い活性代謝物の血漿濃度を与えると期待される用量でプロドラッグを投与した場合でさえ、疼痛、特に神経障害性または炎症性疼痛を患っている哺乳動物において疼痛知覚を抑制することに有効である活性代謝物を、インビボにて生じると考えられている。したがって、本発明のプロドラッグは、他のアデノシン受容体アゴニストの投与に付随する有意な副作用を引き起こすことなく、疼痛(特に、神経障害性および炎症性疼痛)を処置し得ると考えられている。
【0041】
上記のように、痛覚過敏は、組織の損傷の大部分の例(感覚神経への直接的な損傷または所定の感覚神経によって刺激される組織の損傷のいずれか)における結果である。したがって、疼痛知覚が痛覚過敏の成分を含む多くの状態が存在する。
【0042】
本発明によれば、糖尿病性神経障害、多発神経障害、ガン性疼痛、線維筋痛症、筋筋膜痛、変形性関節症、膵臓痛、ヘルペス後神経痛、関節リウマチ、坐骨神経痛/腰部神経根障害、脊柱管狭窄、顎関節疾患、HIV疼痛、三叉神経痛、慢性神経因性疼痛、腰痛、腰椎術後疼痛、背部痛、術後疼痛、身体外傷後疼痛(発砲、道路交通事故、熱傷を含む)、心臓痛、胸痛、骨盤痛/PID、頸部痛、腸痛(Bowel Pain)、幻肢痛、分娩痛(分娩/帝王切開)、腎疝痛、急性帯状疱疹疼痛、急性膵炎突出痛(ガン)、ジスムノルホエア(Dysmenorhoea)/子宮内膜症を含む神経障害の結果として引き起こされるか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態のいずれかにおける疼痛(特に、痛覚過敏の予防、処置または寛解のための鎮痛薬として(特に、抗痛覚過敏薬)としての本発明のプロドラッグの使用が提供される。
【0043】
本発明によれば、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風関節炎および他の関節炎状態、HIV、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、肺炎、胸膜炎、急性喘息、慢性喘息、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(IRDS)急性肺傷害(ALI)、喉頭炎(laryngitis)、咽頭炎(pharangitis)、持続型喘息、慢性喘息様気管支炎、間質性肺疾患、肺悪性腫瘍、アルファアンチトリプシン欠損症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症、コラーゲン血管障害、アレルギー性鼻炎、鼻閉、喘息発作重積状態、喫煙付随肺疾患、肺高血圧症、肺水腫、肺塞栓症、肺塞栓症、気胸、血胸、肺ガン、アレルギー、花粉症花粉症)、くしゃみ、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、外因刺激誘導性疾病、(SO、スモッグ、汚染)、気道過敏症、乳製品不耐性、ラファー肺炎(Luffer’s pneumonia)、じん肺症、コラーゲン誘導性血管疾患、肉芽腫症、気管支炎症、慢性炎症性肺疾患、骨再吸収疾患、再灌流傷害(心筋梗塞および脳卒中などの虚血性エピソード後の再灌流の結果としての器官に引き起こされる損傷を含む)、自己免疫傷害(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、感染症に起因する発熱および筋肉痛、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびピレシス(pyresis)、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリアおよび細菌性髄膜炎、腸痛、ガン性疼痛、背部痛、線維筋痛症、術後疼痛を含む炎症性疾患または炎症性、自己免疫性および神経障害性の組織損傷を組み合わせたものの結果として引き起こされるか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態における疼痛(特に、痛覚過敏)の予防、処置または寛解のために鎮痛薬(特に、抗痛覚過敏薬)としての本発明のプロドラッグの使用が提供される。
【0044】
本発明のプロドラッグは、虚血性疼痛の予防、処置または寛解に有効な活性代謝物をインビボにて生じ得ると考えられている。本明細書で使用する用語「虚血性疼痛」は、体の部分への血液の供給の減少に付随する疼痛を意味する。血液供給の低下は、体の部分への酸素(低酸素)およびエネルギーの供給を制限する。虚血は、組織の乏しい血液灌流により生じ、虚血性疼痛は、冠動脈疾患、末梢血管疾患、および粥状動脈硬化に通常続発する不十分な血流によって特徴付けられる状態にて生じる。他の血管障害もまた、虚血性疼痛を生じ得る。これらは、左室肥大、冠動脈疾患、本態性高血圧、急性高血圧緊急症、心筋症、心不全、運動負荷、慢性心不全、不整脈(arrhythmia)、不整脈(cardiac dysrhythmia)、シンコピー(syncopy)、動脈硬化症、軽度慢性心不全、狭心症、プリンツメタル(バリアント)狭心症、安定狭心症、および労作性狭心症、心臓バイパス再閉塞、間欠性跛行、動脈硬化症オブリテレン(oblitteren)、動脈炎、拡張機能障害および収縮不全、粥状動脈硬化、後壁虚血/再灌流傷害、糖尿病(I型およびII型の両方)、血栓塞栓症を含む。出血性アクシデントもまた、虚血性疼痛を生じ得る。さらに、乏しい灌流は、低酸素誘導性神経細胞損傷(例えば、心停止またはバイパス手術、糖尿病または新生児逼迫)より生じるか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるか状態を増悪する上記の病理学的状態のいずれかにおける神経障害性および炎症性疼痛を生じ得る。
【0045】
本発明のプロドラッグは、アデノシン受容体を活性化するための活性代謝物の血漿濃度より低い活性代謝物の既知の血漿濃度を与えると期待される用量でプロドラッグを投与した場合でさえ、虚血性疼痛の予防、処置または寛解に有効である活性代謝物を、インビボにて生じると考えられている。これらの用量において、活性代謝物は、高い用量のアデノシン受容体アゴニストの投与に付随する有意な副作用を引き起こさないと考えられている。
【0046】
本発明によれば、炎症の予防、処置または寛解のための医薬品の製造のための本発明のプロドラッグ(すなわち、本発明の化合物)の使用が、さらに提供される。本発明によれば、炎症の予防、処置または寛解を必要とする対象に本発明のプロドラッグを投与する工程を包含する、そのような予防、処置または寛解の方法が提供される。
【0047】
特に、本発明のプロドラッグ(すなわち、本発明の化合物)は、ガン(例えば、白血病、リンパ腫、細胞腫、大腸ガン、乳ガン、肺ガン、膵臓ガン、肝細胞ガン、腎臓ガン、メラノーマ、肝臓、肺、乳房および前立腺転移など);自己免疫疾患(臓器移植拒絶反応、エリテマトーデス、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、多発性硬化症、関節リウマチ、糖尿病および糖尿病の炎症性結果を導く膵島の破壊を含むI型糖尿病);自己免疫損傷(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む);肥満;組織灌流不良および炎症に付随する心血管状態(例えば、アテローム、粥状動脈硬化、脳卒中、虚血再灌流傷害、跛行、脊髄傷害、うっ血性心不全、血管炎、出血性ショック、くも膜下出血後の血管攣縮、脳血管発作後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、糖尿病の心血管合併症);虚血再灌流傷害、虚血および付随炎症、血管形成術および炎症性動脈瘤後の再狭窄;てんかん、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋疲労または筋痙攣(特に、運動選手の筋痙攣)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風関節炎)、線維症(例えば、肺、皮膚および肝臓)、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応、帯状疱疹、毒素ショック、脳性マラリア、ライム病、エンドトキシンショック、グラム陰性ショック、出血性ショック(組織損傷またはウイルス感染の両方に起因する)、深部静脈血栓症、痛風;呼吸困難に付随する状態(例えば、気道の阻止および妨害、気管支収縮、肺血管収縮、呼吸の阻止、珪肺症、肺ナルコーシス、肺高血圧症、気管支アレルギーおよび春季カタル);皮膚の炎症に付随する状態(乾癬、湿疹、潰瘍、接触性皮膚炎);腸の炎症に付随する状態(クローン病、潰瘍性大腸炎および不全麻痺、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患);HIV(特に、HIV感染症)、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、TNF増強性HIV複製、AZTおよびDDI活性のINF抑制、骨粗鬆症および他の骨再吸収疾患、変形性関節症、関節リウマチ、子宮内膜症由来の不妊症、感染症に由来する発熱および筋肉痛、ガンに続発する悪液質、感染症または悪性腫瘍に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、アムホテリシンB処置由来の有害な効果、インターロイキン−2処置に起因する有害な効果、OKT3処置に起因する有害な効果、またはGM−CSF処置に起因する有害な効果、および過度の抗炎症性細胞(好中球、好酸球、マクロファージおよびT細胞を含む)活性によって媒介される他の状態によって引き起こされるかまたは付随するか;あるいは、細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる病理学的状態のいずれかにおける炎症を予防、処置または寛解するために使用され得る。
【0048】
連続的な低いグレードの炎症が、肥満(インスリン耐性およびII型糖尿病の存在下または非存在下)に不随していることが知られている(Browning et al Metabolism (2004) 53, 899-903、肥満女性の血中での炎症マーカーの増加;Mangge et al, Exp Clin Endocrinol Diabetes (2004) 112, 378-382、若年性肥満は血清炎症マーカーC反応性タンパク質と相関する;Maachi et al Int J Obes Relat Metab Disord. (2004) 28, 993-997;肥満の人々における全身性で低いグレードの炎症)。この考え得る理由は、脂肪細胞は、炎症促進性であるTNFアルファおよびインターロイキン1および6を分泌することである。
【0049】
アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体の選択的アゴニストである活性代謝物をインビボにて生じる本発明のプロドラッグは、強力な抗炎症活性を有すると考えられているので、特に好ましい。アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体の選択的アゴニストは、アデノシンA1受容体を活性化するために必要とされるものより低い濃度(好ましくは、1/1000〜1/5)でアデノシンA2Aおよび/またはA3受容体を活性化するアゴニストを意味する。さらに、A1受容体は、炎症促進性活性を有しているので、そのような効果は、A2Aおよび/またはA3受容体に対して選択的である化合物について最小化されることが期待される。
【0050】
アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体のアゴニズムによって予防または改善され得る病理学的状態のいずれも、本発明のプロドラッグによって予防、処置または寛解され得ると考えられる。
【0051】
本発明によれば、アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処置または寛解のための医薬品の製造における、本発明のプロドラッグの使用が提供される。本発明によれば、アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処置または寛解を必要とする対象に本発明のプロドラッグを投与する工程を包含する、そのような状態を予防、処置または寛解する方法が提供される。
【0052】
当業者は、本発明の化合物によって予防、処置または寛解される病理学的状態がアデノシンA2Aおよび/またはA3受容体を介して作用しているかどうか容易に試験することができる。例えば、アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体の選択的アンタゴニストの存在および非存在下で病理学的状態の動物モデルにて化合物の効果を比較することによって、試験できる。アンタゴニスト存在下での化合物の効果がアンタゴニスト非存在下での化合物の効果と比較して減少しているかまたは存在しない場合、化合物はアデノシンA2Aおよび/またはA3受容体を介してその効果を発揮する。アデノシンA2Aおよび/またはA3受容体のアンタゴニストは、当業者に知られている(例えば、Ongini et al., Farmaco. (2001) Jan-Feb, 56(1-2), 87-90;Muller, Curr Top Med Chem. (2003) 3(4), 445-62を参照のこと)。
【0053】
あるいは、アデノシンA2A受容体ノックアウトマウスを使用してもよい(Ohta A and Sitkovsky M, Nature (2001) 414, 916-20)。例えば、病理学的状態の症状を有するマウスに対する化合物の効果を、対応する症状を有するアデノシンA2Aノックアウトマウスに対する効果と比較する。化合物がアデノシンA2A受容体を有するマウスに対してのみ有効である場合、化合物はアデノシンA2A受容体を介してはたらいたと結論付けられる。
【0054】
本発明のプロドラッグは、他のアデノシン受容体アゴニストより少ない用量で非常に有効である活性代謝物をインビボにて生じると考えられている。したがって、本発明のプロドラッグは、プロドラッグの副作用の可能性および重症度が低下しているかまたは観察されない用量で、有効に投与され得る。そのような化合物は、重篤な副作用が観察されるのと同じ濃度でのみ抗炎症効果を有する大部分の他のアデノシン受容体アゴニストに対する有意な利点を与える。
【0055】
あるいは/さらに、本発明の化合物では、他のアデノシン受容体アゴニストと比較して、副作用の可能性および重症度が低下している。
【0056】
本発明のプロドラッグは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)として、特に関節リウマチおよび変形性関節症などの考え得る他の関節症の予防、処置または寛解のために有効であり得ると考えられている。
【0057】
関節リウマチ(RA)を処置するために使用する医薬品は、2つのグループに分けることができる:RA症状を軽減することに役立つグループ;および疾患を修飾することに役立つグループ。RAの症状を軽減することに役立つ薬物としては、発症した関節において疼痛を軽減し、炎症を低減する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、疼痛を軽減するが関節損傷を遅くせず、炎症を低減しない鎮痛薬(アセトアミノフェンおよび麻薬性疼痛医薬品など)、および抗炎症薬である副腎皮質ステロイドが挙げられる。
【0058】
DMARDは、RAの症状(関節腫脹および圧痛)を改善することに役立つが、RAによって引き起こされる関節損傷の進行も遅くする。したがって、RAの治療法は存在しない一方、DMARDはRAの進行を遅くすることに役立つ。かつて、DMARDは通常、NSAID治療が失敗した後でRAを処置するために使用されていた。しかし、研究がDMARDを用いた早期の治療介入が重要な利益をもたらすことを示唆しているので、現在では、DMARDはRAの経過の早期で使用され始めている。DMARDおよびNSAIDはしばしば、互いに組み合わせて使用されている。
【0059】
臨床研究由来の結果は、既知のDMARDがRAの進行を遅くすることを示している。処置の6か月後に、骨および軟骨の損傷速度が患者の関節にて低下し始めている。1年後に、患者は関節損傷の進行がほぼなくなり、2年後には、調査中、処置の2年目で新たに損傷した関節を有する患者はいないことがX線によって示された。
【0060】
既知のDMARDの例としては、スルファサラジン、ペニシラミン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、金(オーラノフィンとしてイントラナスキュラ(intranuscular)注入または経口によって)、メトトレキサート、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、レフルノミドが挙げられる。近年、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)を抑制する生物学的DMARDが開発されている。その1例として、1つ以上のDMARDに対する非適切な応答を有する重篤な活動性RAの中程度を有する成人における構造的損傷の徴候および症状を減少させ、その進行を抑制することを示すHumira(登録商標)が挙げられる。Humira(登録商標)は、抗TNFアルファ抗体である。
【0061】
既知のDMARDの多くは、重篤な副作用を引き起こす。そのため、最小の副作用と一緒に投与され得る新たなDMARDを提供することが望まれている。
【0062】
国際公開第2005/084653号は、U937ヒトマクロファージ細胞におけるホルボールエステル誘導性のTNFアルファ放出を減少させるスポンゴシンの能力を示している。これに基づいて、本発明のスポンゴシンおよび関連化合物もまた、DMARD活性を有していると考えられている。
【0063】
本発明によれば、関節症の進行を遅らせるための医薬品の製造における本発明のプロドラッグの使用が提供される。本発明によれば、本発明のプロドラッグを、それを必要とする対象に投与する工程を包含する、関節症の進行を遅らせる方法が提供される。
【0064】
好ましくは、RAの進行、特に、RAによって引き起こされる関節損傷の進行が遅くなる。本発明の化合物は、RAの経過の各ステージで対象に投与され得る。本発明の化合物は、1つ以上のNSAIDまたは他のDMARDと組み合わせて投与され得る。
【0065】
本発明のプロドラッグは、アデノシン受容体を活性化するための活性代謝物の既知の血漿濃度より低い活性代謝物の血漿濃度を与えると期待される用量でプロドラッグを投与した場合でさえ、DMARDとして有効である活性代謝物を、インビボにて生じると考えられている。これらの用量において、活性代謝物は、より高い用量のスポンゴシンまたは他のアデノシン受容体アゴニストに付随する有意な副作用を引き起こさないと考えられている。
【0066】
DMARDとしての本発明のプロドラッグの特定の利点は、注入されるべきである抗TNFアルファ抗体とは対照的に、本発明のプロドラッグが経口で活性であると考えられていることである。
【0067】
本発明のプロドラッグは、I型またはII型糖尿病のマクロおよびミクロ血管合併症(網膜症、腎症、自律神経障害を含む)、または虚血(糖尿病性であるか他のいずれかである)または粥状動脈硬化(糖尿病性であるか他のいずれかである)によって引き起こされる血管損傷を予防、処置または寛解することに有効である活性代謝物を、インビボにて生じると考えられている。
【0068】
本発明によれば、I型またはII型糖尿病のマクロおよびミクロ血管合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または虚血(糖尿病性であるか他のいずれかである)または粥状動脈硬化(糖尿病性であるか他のいずれかである)によって引き起こされる血管損傷を予防、処置または寛解することに有効である医薬品の製造における本発明のプロドラッグの使用が提供される。本発明によれば、I型またはII型糖尿病のマクロおよびミクロ血管合併症、網膜症、腎症、自律神経障害、または虚血(糖尿病性であるか他のいずれかである)または粥状動脈硬化(糖尿病性であるか他のいずれかである)によって引き起こされる血管損傷を予防、処置または寛解することを必要とする対象にてそのように予防、処置または寛解する方法も提供され、当該方法は、本発明のプロドラッグを対象に投与する工程を包含する。
【0069】
本発明のプロドラッグは、アデノシン受容体を活性化するためのインビボで生じる活性代謝物の既知の血漿濃度より低い活性代謝物の血漿濃度を与えると期待される用量でプロドラッグを投与した場合でさえ、I型またはII型糖尿病のマクロおよびミクロ血管合併症(網膜症、腎症、自律神経障害を含む)または虚血(糖尿病性であるか他のいずれかである)または粥状動脈硬化(糖尿病性であるか他のいずれかである)によって引き起こされる血管損傷を予防、処置または寛解することに有効であると考えられている。これらの用量において、化合物は、より高い用量のアデノシン受容体アゴニストの投与に付随する有意な副作用を引き起こさないと考えられている。
【0070】
本発明のプロドラッグはまた、創傷治癒の促進に有効であると考えられている。本発明によれば、創傷治癒を促進するための医薬品の製造における本発明のプロドラッグの使用が提供される。本発明によれば、対象において創傷治癒を促進する方法も提供され、当該方法は、本発明のプロドラッグを対象に投与する工程を包含する。
【0071】
対象に投与される本発明のプロドラッグの量は、好ましくは、アデノシン受容体での(好ましくは、pH7.4にて)化合物のEC50値より低い、インビボで生じる活性代謝物のピーク血漿濃度を生じる量である。
【0072】
活性代謝物のEC50値は、異なるアデノシン受容体(すなわち、A1、A2A、A2B、A3アデノシン受容体)よって異なるであろうと考えられている。投与されるべきプロドラッグの量は、異なるアデノシン受容体での活性代謝物の最も低いEC50と比較して計算される。
【0073】
したがって、好ましくは、対象に投与される本発明のプロドラッグの量は、アデノシン受容体での活性代謝物の最低EC50値より低い、インビボで生じる活性代謝物のピーク血漿濃度を生じる量である。
【0074】
好ましくは、プロドラッグの投与後にインビボにて生じる活性代謝物のピーク血漿濃度は、最も低いEC50値の1万分の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)である。
【0075】
好ましくは、投与される本発明のプロドラッグの量は、アデノシン受容体での活性代謝物の最も低いEC50の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0076】
好ましくは、投与される本発明のプロドラッグの量は、pH7.4でのアデノシン受容体にて活性代謝物のEC50の千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1の間で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0077】
誤解を避けるために、ベースライン受容体応答と最大受容体応答との間の受容体応答中間を誘発する化合物の濃度として化合物のEC50値を本明細書にて定義する(例えば、用量反応曲線を使用して決定される)。
【0078】
EC50値は、標準的な条件(pH7.4に緩衝化されている平衡塩類溶液)下で決定される。単離された膜、細胞および組織を使用するEC50の決定のために、例えば、Daly et al., Pharmacol. (1993) 46, 91-100)、または、好ましくは、Tilburg et al (J. Med. Chem. (2002) 45, 91-100)に記載のように、pH7.4の緩衝化塩溶液(例えば、細胞培養液)中で決定される。正常で健康な動物、または正常で健康な動物において正常な条件(すなわち、pH7.4で緩衝化され、酸素負荷されている血液または酸素負荷されている等張溶媒)下で還流されている組織において応答が媒介されているアデノシン受容体を測定することによってEC50を決定してもよい。
【0079】
あるいは、投与される本発明のプロドラッグの量は、アデノシン受容体での化合物の最も低いかまたは最も高いK値より低い(すなわち、A1、A2A、A2BおよびA3アデノシン受容体での化合物の最も低いかまたは最も高いK値より低い)、インビボにて生じる活性代謝物のピーク血漿濃度をもたらす量であってもよい。好ましくは、活性代謝物のピーク血漿濃度は、最も低いかまたは最も高いK値の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜3分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)である。
【0080】
好ましくは、好ましくは、投与される本発明のプロドラッグの量は、アデノシン受容体での活性代謝物のK値の千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、好ましくは、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1の間で少なくとも1時間維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度をもたらす量である。
【0081】
好ましくは、投与される本発明のプロドラッグの量は、アデノシン受容体での活性代謝物の最も低いかまたは最も高いK値の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる量である。
【0082】
各受容体にてプロドラッグの投与後にインビボにて生じる活性代謝物のK値は、これらの受容体を内在的に発現する組織または細胞またはアデノシン受容体遺伝子をコードするDNAベクターで形質移入した細胞のいずれか由来のアデノシン受容体ソースとして細胞膜を使用する標準的な条件下で決定される。あるいは、アデノシン受容体を発現する細胞を使用する全細胞調製物を使用してもよい。および各受容体に対する活性代謝物の結合親和性Kを決定するために、緩衝化塩類溶液(pH7.4)にて異なる受容体に選択的な標識化(例えば、放射標識)リガンドを使用してもよい(例えば、Tilburg et al, J. Med. Chem. (2002) 45, 420-429を参照のこと)。
【0083】
あるいは、投与される本発明のプロドラッグの量は、化合物が投与されるべき対象と同じ種の動物にて、徐脈、低血圧または頻拍の副作用を生じるプロドラッグの最小量(または用量)の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)である量であってもよい。好ましくは、投与される本発明のプロドラッグの量は、副作用を生じる活性代謝物の最小量の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0084】
好ましくは、投与されるプロドラッグの量は、副作用を生じるプロドラッグの最小量の千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは百分の1〜50分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは百分の1もしくは50分の1〜5分の1の間で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0085】
投与される本発明のプロドラッグの量は、化合物が投与されるべき対象と同じ種の動物にて、徐脈、低血圧または頻拍の副作用を引き起こす活性代謝物の最小血漿濃度の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)である、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる量であってもよい。好ましくは、投与されるプロドラッグの量は、副作用を引き起こす活性代謝物の最小血漿濃度の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜2分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)で1時間以上維持される活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0086】
好ましくは、投与されるプロドラッグの量は、副作用を引き起こす最小血漿濃度の千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、百分の1もしくは50分の1の間で1時間以上維持される、インビボにて生じる活性代謝物の血漿濃度を生じる。
【0087】
本発明のプロドラッグの適切な投与量は、投与される対象の年齢、性別、体重および状態、プロドラッグおよび/またはプロドラッグの投与後にインビボにて生じる活性代謝物の作用強度(例えば、アデノシン受容体についてのそれらのEC50値)、プロドラッグおよび/または活性代謝物の半減期、身体による吸収、ならびに投与経路などによって変動する。しかし、適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0088】
適切な投与量を決定するための適切な方法は、アデノシン受容体(好ましくは、最も高い親和性を有する受容体)についてのプロドラッグおよび/または活性代謝物(プロドラッグの投与後にインビボにて生じる)のEC50値またはその周辺での心血管の変化(例えば、ECGおよび血圧モニタリングによって)を評価して、最大耐量を決定することである。治療上有効な用量は、最大耐量の1万分の1〜2分の1(または1万分の1〜5分の1、もしくは1万分の1〜20分の1、もしくは1万分の1〜百分の1、もしくは1万分の1〜千分の1、もしくは千分の1〜2分の1、もしくは千分の1〜5分の1、もしくは千分の1〜20分の1、もしくは50分の1〜10分の1、もしくは百分の1〜2分の1、もしくは百分の1〜5分の1、もしくは50分の1〜3分の1、もしくは50分の1〜5分の1、10分の1〜2分の1、もしくは10分の1〜5分の1)であることが期待される。
【0089】
国際公開第2005/084653号は、スポンゴシンの用量がヒトにて28mg未満であることを示している。この用量は、0.5〜0.9μMの間の血漿濃度を生じる(pH7.4のアデノシンA2A受容体でのKに近い、下記を参照のこと)。この結果に基づいて、スポンゴシンの好ましい投与量の範囲は、0.03〜0.3mg/kgである。本発明のプロドラッグの好ましい投与量の範囲は、0.03〜8mg/kgである。
【0090】
関節炎のラットアジュバントモデルにて最大の鎮痛軽減を与えるスポンゴシンの最小血漿濃度は、0.06μMであって、約1μMであるアデノシンA2A受容体に対するスポンゴシンEC50よりかなり少ない。ヒトにおける好ましい投与レベルは、この受容体に対する作用による鎮痛または抗炎症作用を与えることが期待される血漿の濃度より有意に低い最大血漿濃度(0.005〜0.5μMの間)を与える。
【0091】
あるいは、活性代謝物(本発明のプロドラッグの投与後にインビボにて生じる)の適切な治療濃度は、pH5.5のアデノシン受容体(活性代謝物が最も高い親和性を有する受容体)についてのKの約10〜20倍であることが期待される。したがって、pH7.4にてKを使用して必要とされることが期待される濃度が20〜30μMである一方、スポンゴシンについて15〜30nMが必要とされる。
【0092】
投与される本発明のプロドラッグの量は0.001〜15mg/kgであると期待される。量は、6mg/kg未満であってもよい。量は、少なくとも0.001、0.01、0.1または0.2mg/kgであってもよい。量は、0.1未満または0.01mg/kgであってもよい。好ましい範囲は、0.001〜10、0.001〜5、0.001〜2、0.001〜1、0.001〜0.1、0.001〜0.01、0.01〜15、0.01〜10、0.01〜5、0.01〜2、0.01〜1、0.1〜10、0.1〜5、0.1〜2、0.1〜1、0.1〜0.5、0.1〜0.4、0.2〜15、0.2〜10、0.2〜5、0.2〜2、0.2〜1.2、0.2〜1、0.6〜1.2mg/kgである。
【0093】
ヒト対象(例えば、70kgの対象)について好ましい用量は、420mg未満、好ましくは28mg未満、より好ましくは21mg未満、および好ましくは少なくとも0.07、0.1、0.7または0.8mg、より好ましくは少なくとも3.5または7mgである。より好ましくは、7〜70mg、14〜70mgまたは3.5〜21mg。
【0094】
上で特定する投与量は、アデノシンA2A受容体での化合物のEC50値に基づく鎮痛または抗炎症効果に必要とされることが期待されるものより有意に低い(約5000倍まで低い)。
【0095】
上で特定する好ましい投与量は、活性代謝物が最も高い親和性を有するアデノシン受容体での活性代謝物のEC50値の約百分の1〜2分の1である活性代謝物(本発明のプロドラッグの投与後にインビボにて生じる)の血漿濃度を生じることを目的としている。
【0096】
本発明のプロドラッグは、単独、あるいは鎮痛薬または抗炎症薬(オピエート、ステロイド、NSAID、カンナビノイド、タキキニン修飾因子もしくはブラジキニン修飾因子)または抗痛覚過敏薬(ガバペンチン、プレガバリン、カンナビノイド、ナトリウムもしくはカルシウムチャンネル修飾因子、抗てんかん薬もしくは抗うつ薬)、またはDMARDなどの他の治療薬と一緒に投与してもよい。
【0097】
一般に、本発明のプロドラッグは既知の手段によって、任意の適切な処方物中、適切な経路によって投与され得る。本発明のプロドラッグは、好ましくは、経口、非経口、舌下、経皮、くも膜下腔内、経粘膜投与される。他の適切な経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、吸入または局所経路が挙げられる。投与される薬物の量は、一般的に、非経口で投与した場合より経口で投与した場合がより多い。
【0098】
本発明のプロドラッグは、医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤と一緒に投与され得る。
【0099】
期待される時間内に治療上有効な血漿濃度を維持するために、本発明のプロドラッグを徐放処方物中に組込んでもよい。
【0100】
経口投与などのために適切な組成物は単位用量形態を包含し、公知の手段によって有効成分が生理学的に許容される賦形剤、希釈剤または担体と一緒に処方されている、例えば、注射用液体を含む形態、錠剤、カプセル、バイアルおよびアンプルなどが挙げられる。適切な希釈剤が知られており、適切な結合剤などと一緒にラクトースおよびタルクなどを含む。
【0101】
本発明のプロドラッグの単位用量は、代表的に、有効成分(プロドラッグ)500mgまで(例えば、1〜500mg、または(好ましくは)5〜500mg)を含む。好ましくは、有効成分は、有効成分および生理学上許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む医薬組成物の形態である。好ましくは、投与量の範囲(すなわち、単位用量における有効成分の好ましい量)は、(ヒト)対象の体重1kgあたり有効成分0.001〜10、0.001〜5、0.001〜2、0.001〜1、0.001〜0.1、0.001〜0.01、0.01〜15、0.01〜10、0.01〜5、0.01〜2、0.01〜1、0.1〜10、0.1〜5、0.1〜2、0.1〜1、0.1〜0.5、0.1〜0.4、0.2〜15、0.2〜10、0.2〜5、0.2〜2、0.2〜1.2、0.2〜1、0.5〜1、0.6〜1.2、代表的には、約0.2または0.6mgである。好ましい有効成分の量は、420mg未満であって、好ましくは28mg未満であって、より好ましくは21mg未満であって、および好ましくは少なくとも0.07、0.1、0.7または0.8mgであって、より好ましくは3.5または7mgである。より好ましくは、7〜70mg、または14〜70mg3.5〜21mg、0.07〜0.7mg、または0.7〜7mg。これらのレベルにおいて、実質的に血圧の随伴性の低下(例えば、10%未満)および/または代償的な心拍数の増加なしに、有効な処置は達成される。
【0102】
本発明のプロドラッグの単位投与量は、鎮痛薬、抗炎症薬、抗痛覚過敏薬またはDMARDなどの他の医療薬1つ以上をさらに含んでもよい。
【0103】
好ましくは、本発明のプロドラッグは、1日に2または3回の頻度で投与される。
【0104】
本発明のプロドラッグはまた、より有効な薬物またはさらに低い副作用を有する薬物を同定するための基礎としてはたらき得る。
【0105】
以下の定義は、本明細書および添付の請求の範囲に適用するものである。
【0106】
用語「C1−6−アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基を意味する。低級アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ならびに直鎖および分枝鎖ペンチルおよびヘキシルが挙げられる。範囲「C1−6−アルキル」の部分について、C1−5−アルキル、C1−4−アルキル、C1−3−アルキル、C1−2−アルキル、C2−6−アルキル、C2−5−アルキル、C2−4−アルキル、C2−3−アルキル、C3−6−アルキル、C4−5−アルキルなどのその全てのサブグループが意図されている。
【0107】
用語「C3−8−シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子の環サイズを有する環状アルキル基を意味する。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。範囲「C3−8−シクロアルキル」の部分について、C3−7−シクロアルキル、C3−6−シクロアルキル、C3−5−シクロアルキル、C3−4−シクロアルキル、C4−8−シクロアルキル、C4−7−シクロアルキル、C4−6−シクロアルキル、C4−5−シクロアルキル、C5−7−シクロアルキル、C6−7−シクロアルキルなどのその全てのサブグループが意図されている。
【0108】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味している。
【0109】
用語「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を有する炭化水素環系を意味する。アリールの例としては、フェニル、ペンタレニル、インデニル、インダニル、イソインドリニル、クロマニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、フェナントリルおよびピレニルが挙げられる。アリール環は、所望により、C1−6−アルキルで置換してもよい。置換アリール基の例は、2−メチルフェニルおよび3−メチルフェニルである。
【0110】
用語「ヘテロアリール」は、本願明細書にて5〜14個、好ましくは5〜10個の環原子(例えば、5,6、7、8、9または10個の環原子)(単環または二環性)を有する単環、二環または三環性芳香環系(1つの環のみ芳香族である必要がある)を意味し、ここで、1つ以上の環原子が、環系の部分として、窒素、硫黄、酸素およびセレンなどの炭素以外のものである。そのようなヘテロアリール環の例としては、ピロール、イミダゾール、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、クロマン、イソクロマン、キノリン、キノキサリン、イソキノリン、フタラジン、シンノリン、キナゾリン、インドール、イソインドール、インドリン(すなわち、2,3−ジヒドロインドール)、イソインドリン(すなわち、1,3−ジヒドロイソインドール)、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾジオキソール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール、ベンゾピラゾール、2,1,3−ベンゾチアゾール、2,1,3−ベンゾセレナジアゾール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、ベンゾジオキサン、2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン、インダン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾオキサジン、1,5−ナフチリジン、1,8−ナフチリジン、ピリド[3,2−b]チオフェン、アクリジン、フェナジンおよびキサンテンが挙げられる。
【0111】
用語「複素環」および「ヘテロシクリル」は、本明細書にて、1つ以上の原子(例えば、酸素、硫黄または窒素)を環系の部分として有し、かつ残りは上記ヘテロアリール基および対応する部分的に飽和であるかまたは完全に飽和の複素環などの炭素を有する4〜14個、好ましくは、4〜10個の環原子を有する、不飽和ならびに部分的に飽和および完全に飽和の単環、二環または三環を含むことが意図される。例示的な飽和複素環としては、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、1,4−オキサゼパン、アゼパン、フタルイミド、インドリン、イソインドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、ヘキサヒドロアゼピン、3,4−ジヒドロ−2(1H)イソキノリン、2,3−ジヒドロ−1H−インドール、1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール、アゾカン、1−オキサ−4−アザスピロ[4.5]デカ−4−エン、デカヒドロイソキノリン、1,2−ジヒドロキノリンおよび1,4−ジアゼパンが挙げられる。
【0112】
用語「メチリデンアセタール」は、本明細書にて、構造ROCHOR’のアセタールを示すことが意図されている。
【0113】
「医薬上許容される」は、一般に安全で、無毒であり、生物学かつ他においても望ましい医薬組成物の調製において有用であることを意味し、獣医学的使用およびヒトでの医薬使用に有用であることを含む。
【0114】
本明細書にて使用する「処置」は、名付けられている障害もしくは状態の予防、一旦確立されている障害の寛解または消失を含む。
【0115】
「有効量」は、処置される対象に対する治療効果を与える化合物の量をいう。治療有効は、客観的(すなわち、いくつかの試験またはマーカーによって測定可能である)または主観的(すなわち、対象が効果の徴候を与えるかまたは効果を感じる)であってもよい。
【0116】
用語「プロドラッグ形態」は、エステルまたはアミドなどの医薬上許容される誘導体を意味し、誘導体は、体内で生体内変換されて、有効な薬物を形成する。以下を参照のこと:Goodman and Gilman´s, The Pharmacological basis of Therapeutics, 8th ed., Mc-Graw-Hill, Int. Ed. 1992,”Biotransformation of Drugs”, p. 13-15。
【0117】
用語「活性代謝物」は、インビボでのプロドラッグの代謝後に放出される医薬上有効な化合物を意味する。
【0118】
以下の略語を使用している:
【表1】

化合物について可能な異性体の全て(純粋な鏡像異性体、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ混合物および2つの鏡像異性体の不均等な混合物)が、本発明の範囲内である。そのような化合物はまた、シス−またはトランス、E−またはZ−二重結合異性体形態として生じ得る。全ての異性体形態が意図される。
【0119】
式(I)で表される化合物は、それ自体、または、必要に応じて、医薬上許容されるその塩(酸または塩基付加塩)として使用してもよい。上記の医薬上許容される付加塩は、化合物が形成可能である治療上有効で無毒な酸および塩基付加塩形態を含むことを意味する。塩基性特性を有する化合物は、塩基形態を適切な酸で処理することによって、医薬上許容される酸付加塩に変換してもよい。例示的な酸としては、水素、塩化、臭化水素酸、ヨウ化水素、硫酸、リン酸などの無機酸;およびギ酸、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸、安息香酸、アスコルビン酸などの有機酸が挙げられる。例示的な塩基付加塩形態は、ナトリウム、カリウム、カルシウム塩、ならびにアンモニア、アルキルアミン、ベンザチンなどの医薬上許容されるアミン、およびアルギニンおよびリジンなどのアミノ酸との塩である。本明細書で使用する用語付加塩はまた、化合物およびその塩が形成できる、水和物、アルコラートなどの溶媒和物を含む。
【0120】
臨床での使用について、本発明の化合物は、経口、直腸、非経口または他の投与形態のために医薬処方物へと処方される。医薬処方物は通常、従来の医薬賦形剤と有効物質または医薬上許容されるその塩を混合することによって調製される。賦形剤の例としては、水、ゼラチン、ゴムアラビクム(arabicum)、ラクトース、結晶セルロース、デンプン、ナトリウムデンプングリコール酸(sodium starch glycolate)、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、コロイド状二酸化ケイ素などが挙げられる。そのような処方物はまた、他の医薬上有効な薬剤、および安定化剤、湿潤剤、乳化剤、香味料、緩衝液などの従来の添加物を含んでもよい。
【0121】
処方物は、顆粒化、圧縮、マイクロカプセル化、スプレーコーティングなどの公知の方法によってさらに調製され得る。処方物は、従来の方法によって、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、シロップ、懸濁物または注射の形態に調製され得る。液体処方物は、水または他の適切なビヒクル中に有効物質を溶解または懸濁することによって調製してもよい。錠剤および顆粒は、従来のやり方でコーティングされる。
【0122】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載する式で表される化合物のいずれか1つ以上を反応させる工程を包含する、いずれかの式で表される化合物の製造方法に関し、本明細書に記載する任意のプロセスを含む。上記の式(I)で表される化合物は、従来の方法またはその類似方法によって調製してもよい。上記のプロセスは、遊離塩基の形態または酸付加塩とて本発明の化合物を与えるために実施され得る。適切な有機溶剤中に遊離塩基を溶解させ、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、酸で溶液を処理することによって、医薬上許容される酸付加塩を入手してもよい。付加塩を形成するための酸の例は、上記の通りである。
【0123】
式(I)で表される化合物は、1つ以上のキラル炭素原子を有してもよく、したがって、純粋な鏡像異性体、または鏡像異性体(ラセミ化合物)の混合物またはジアステレオマーを含む混合物としてなど、光学異性体の形態で入手してもよい。純粋な鏡像異性体を入手するための至適な異性体混合物の分離は、当該分野において周知であり、例えば、所望の活性(キラル)酸との塩の分別再結晶、またはキラルカラムのクロマトグラフィによる分離によって達成してもよい。本明細書に記載の合成経路にて使用する化学薬品としては、例えば、溶媒、試薬、触媒、ならびに保護基および脱保護試薬が挙げられる。上記の方法はまた、本明細書の前後のいずれか工程をさらに含んで、化合物の合成を最終的に可能にするために適切な保護基を付加または除去してもよい。さらに、代替順序でまたは所望の化合物を与えるために、種々の合成工程を実施してもよい。適用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基方法論(保護および脱保護)が当該分野にて知られており、例えば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989);T.W. Greene and P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999);L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser´s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)、ならびにその後の版に記載のものが含まれる。
【0124】
式(I)で表される化合物を調製するために必要な出発材料は知られているか、または既知の化合物の調製に類似の方法で調製してもよい。
【0125】
添付の図面を参照して、本発明の実施態様を以下の実施例に記載する。
【0126】
本明細書での変数の任意の定義における化学基の列挙は、その変数の定義を列挙する基の任意の1つの基または組合せを含む。本明細書での変数についての実施態様の列挙は、その実施態様を任意の1つの実施態様または任意の他の実施態様もしくはその部分との組合せとして含む。
【0127】
下記の特定の実施例は、単に例示として構成されており、どんなものであれ、開示の残された部分を制限するものではない。さらに詳述することがない場合、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明を最大の程度まで利用できる。全ての刊行物が、その全体を出典明示することによって本明細書に組込まれる。
【0128】
(実験方法)
全ての試薬が商用グレードであって、ほかに特定しない限り、さらなる精製なしに受け取ったまま使用した。試薬グレードの溶媒を全ての場合で使用した。2−ヨウ化アデノシンは、General Intermediates of Canada, Incから入手した。ウォーターズZQ質量分析計を使用して、エレクトロスプレー質量分析(MS)を入手した。溶出剤系を使用するPhenomenex Synergi Hydro RP(C18,150×4.6mm)を装備したAgilent1100システムにて分析HPLCを実施した:HPLCおよびLC−MSの両方について、水/0.1%TFAおよびCHCN、1.5ml/分、勾配時間7分。
【実施例1】
【0129】
[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−メトキシ−9H−プリン−9yl)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 10の調製
【化6】

【0130】
DMF中のアデノシン(20g,74.9mmol)の懸濁液(100mL)に、イミダゾール(5.08g,74.9mmol)およびTBDMSCl(11.3g,74.9mmol)を添加し、生じた懸濁液を2時間撹拌し、次いで飽和NaHCO水溶液で急冷した。その後、反応粗生成物を酢酸エチルで抽出し、有機画分を塩水および水(×3)で洗浄し、MgSOで乾燥した。その後、溶液をおよそ500mLに濃縮し、1時間静置した。生じた白色沈殿物を濾取し、酢酸エチルで洗浄して28を2バッチで白色固体(14.07g,49%)として得た。
【0131】
水中のNaOH(50g,1.25mol)の溶液(100mL)をDCM中ジブロモメタン(30mL,0.43mol)、28(11.8g,30.9mmol)および臭化テトラブチルアンモニウム(200mg,cat.)の溶液(300mL)に滴下して加え、生じた溶液を40℃で72時間加熱した。その後、有機層を分離し、水(×5)で洗浄し、MgSOで乾燥して29を得て、さらなる精製をせずにこれを用いた。
【0132】
THF中の29(推定30.9mmol)の溶液(300mL)に、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(30.9mL,THF中1M溶液,30.9mmol)を加え、1時間撹拌し続け、NHCl水溶液(10mL)を加え、減圧濃縮し、粗生成物30を得て、精製せずにこれを用いた。
【0133】
ピリジン中の30(推定30.9mmol)の溶液(75mL)に、塩化ベンゾイル(13.9mL,120mmol)を加え、生じた溶液を80℃で4時間還流した。さらに4時間後、8時間後および16時間後に塩化ベンゾイル(5mL,10mLおよび10mL)をそれぞれ加え、24時間加熱し続けた。溶媒を減圧除去し、その残留物をEtOAc中に溶解して、NHCl水溶液、NaHCO水溶液および塩水で洗浄して、その有機層をMgSOで乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,18−32μ,ヘプタン中EtOAc10−67%勾配,残留物を乾燥した)による精製を行って白色個体(12.1g,3工程後66%)の31を得た。
【0134】
DCM中のTMAN(3.70g,30.7mmol)の懸濁液(150mL)に、TFAA(4.40mL,30.7mmol)を加え、生じた懸濁液を0℃まで冷却した後、DCM中の31(12.1g,20.5mmol)の溶液(150mL)を滴下して加えた。反応混合物を0℃で6時間撹拌し、次いで16時間にわたって室温まで温めた。溶媒を減圧除去し、その残留物をEtOAc(150mL)中に溶解して、水(100mL×3)および塩水(100mL)で洗浄して、有機層をMgSOで乾燥した。DCM/メタノールからのトリチュレーション(trituration)により32を黄色気泡体(9.8g,75%)として得て、さらなる精製なしにこれを用いた。
【0135】
メタノール中の32(2g,3.14mmol)の溶液(50mL)に、NaOMe(1.04g,19.3mmol)を加え、生じた溶液を16時間室温で撹拌した。次いでシリカゲル(10g)を加え、溶媒を減圧除去した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,18−32μ,DCM中エタノール5−20%勾配,残留物を乾燥した)により精製し、温水で再結晶化して、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−メトキシ−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 10を無色針状晶(209mg,22%)として得た。
【0136】
HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間3.13分,100%。
【0137】
LCMS(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間3.60分,98.8%,ES:310.048[MH]
【実施例2】
【0138】
[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 11の調製
【化7】

【0139】
THF中のCHFCHOH(0.190mL,2.00mmol)の溶液(25mL)にNaH(80mg,ミネラルオイル中60%分散,2.00mmol)を加え、生じた懸濁液を1時間撹拌した。次いで、THF中の32(636mg,1.00mmol)の溶液(25mL)を加え、生じた溶液を室温で16時間撹拌した。その後、溶媒を減圧除去し、その残留物をメタノール(25mL)中に溶解し、NaOMe(cat)を加えて、生じた懸濁液を16時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、その残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,50g,18−32μ,DCM中エタノール2.5−15%勾配,乾燥した残留物を負荷した,7.5−10%エタノール中に生成物を溶出)により精製し、そして逆相調製用HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro 150×10cm,10μ,毎分20mL,10分間にわたって水中アセトニトリル5−40%勾配,35%アセトニトリル中生成物を溶解した)および(Phenomenex Synergi,RP−Hydro 150×10cm3,10μ,毎分20mL,10分間にわたって水中アセトニトリル20−40%勾配)で2度精製して、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 11を白色固体(14mg,4%)として得た。
【0140】
HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間3.88分,100%。
【0141】
LCMS(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1% TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間4.44分,100%,ES:360.389[MH]
【実施例3】
【0142】
[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 12の調製
【化8】

【0143】
THF中の2,5−ジフルオロフェノール(182mg,1.40mmol)の溶液(5mL)に、KOBu(157mg,1.40mmol)を加え、生じた懸濁液を30分間撹拌した後、THF(10mL)中の32(445mg,0.70mmol)の溶液に加えた。撹拌を3度繰り返し、溶媒を減圧除去した。その残留物をメタノール(15mL)中に溶解し、NaOMe(cat.)を加えて、生じた混合物を16時間撹拌し、その後減圧濃縮して、フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,50g,18−32μ,DCM中エタノール2−10%勾配,乾燥した残留物を負荷した)および逆相カラムクロマトグラフィ(LiChroprep RP−18,40−63μm,230×26(50g),毎分30mL,45分間にわたって水中メタノール0−100%勾配,66%メタノール中に生成物を溶出した)および逆相調製用HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro 150×10cm,10μ,毎分20mL,10分間にわたって水中アセトニトリル10−100%勾配,40%アセトニトリル中に生成物を溶出する)により精製して、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 12を白色固体(25mg,9%)として得た。
【0144】
HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間4.72分,98.86%。
【0145】
LCMS(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間5.13分,100%,ES:408.418[MH]
【実施例4】
【0146】
[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−イル]オキシ}−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 13の調製
【化9】

【0147】
10%Pd/C(cat),3−ヨードフェノール(220mg,1.00mmol)および4−(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(284mg,1.49mmol)の混合物に水(10mL)中KCO(415mg,3.01mmol)の溶液を加え、反応混合物をBiotageマイクロ波(170℃,吸収高,10秒の事前撹拌)により20分間加熱した。その後、粗反応混合物をEtOAc(40mL×3)中に抽出し、MgSOで乾燥して、3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)フェノールを黄色固体(212mg,HPLCによる純度89%,99%)として得て、さらなる精製をせずにこれを試用した。
【0148】
THF中の3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)フェノール(119mg,0.50mmol)の溶液(5mL)にKOBu(56mg,0.50mmol)を加えて、生じた懸濁液を30分間撹拌した後、THF中の32(212mg,0.33mmol)の溶液(15mL)に加えた。撹拌を2度続けて、次いで溶媒を減圧除去した。その残留物をメタノール(30mL)中に溶解し、NaOMe(cat.)を加えて、生じた混合物を16時間撹拌した後、減圧濃縮して、フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,50g,18−32μ、DCM中エタノール0−10%勾配,乾燥した残留物を負荷した)および逆相調製用HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro 150×10cm,10μ,毎分20mL,10分間にわたって水中アセトニトリル5−100%勾配,100%アセトニトリル中に生成物を溶出した)により精製して[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−イル]オキシ}−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール 13を白色固体(45mg,26%)として得た。
【0149】
HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間6.14min,99.39%。
【0150】
LCMS(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1% TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間6.41分,100%,ES:515.943[MH]
【実施例5】
【0151】
((3aR,4R,6R,6aR)−6−{6−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−9H−プリン−9−イル}テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル)メタノール 14の調製
【化10】

【0152】
DMF中の2−ヨードアデノシン(10.0g,25.4mmol)の溶液(60mL)にイミダゾール(1.73g,25.4mmol)およびTBDMSCl(3.83g,25.4mmol)を加えて、3時間撹拌し続けた。生じた溶液をNaHCO(30mL)水溶液で急冷し、酢酸エチル(250mL)中に抽出し、有機層を塩水(100mL)および水(60mL×3)で洗浄してMgSOで乾燥した。その後、DCM(40mL)を加えて、生じた懸濁液を濾取して白色固体を得て、DCM(80mL)で洗浄して33(5.20g,40%)を得た。
【0153】
水中NaOH(30.9g,過剰)の溶液(60mL)を、DCM(150mL)中ジブロモメタン(21.4mL,308mmol)、33(5.20g,10.3mmol)およびテトラブチル臭化アンモニウム(70mg,cat.)の溶液に滴下して加え、生じた溶液を40℃にて48時間加熱した。その後、有機層を分離し、水(×5)で洗浄して、MgSOで乾燥して34を得て、更なる精製をせずにこれを用いた。
【0154】
THF中、34(推定10.0mmol)の溶液(50mL)に、TBAF(10.0mL,THF中1M溶液,10.0mmol)を加えて、2時間撹拌した後、減圧濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,50g,18−32μ,DCM中エタノール0−15%勾配,乾燥した残留物を負荷した,5−10%エタノール中に生成物を溶出した)によって精製し、テトラブチルアンモニウム塩のない35を白色固体(750mg,19%)として得た。
【0155】
エタノール中の35(750mg,1.85mmol),3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(573mg,2.22mmol),炭酸セシウム(1.32g,4.44mmol)およびPd(PPh3)4(214mg,0.18mmol)の懸濁液(4mL)とトルエン(2mL)とをBiotageマイクロ波(130℃,吸収高,予め30秒の撹拌)を用いて40分間2バッチにて加熱し、その後組み合わせた。溶媒を減圧除去し、その残留物をEtOAc(160mL)に溶解して、NaHCO飽和水溶液(50mL×2)および塩水(50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥した。フラッシュカラムクロマトグラフィ(順相,ICNシリカ,50g,18−32μ,DCM中エタノール5−10%勾配、10%エタノール中に生成物を溶出した)による精製と温めたエタノール(×2)からの再結晶化により((3aR,4R,6R,6aR)−6−{6−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−9H−プリン−9−イル}テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル)メタノール 14を白色結晶性固体として2バッチ(158mgおよび85mg,全収率27%)で得た。
【0156】
HPLC(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150×4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間6.55分,99.37%。
【0157】
LCMS(Phenomenex Synergi,RP−Hydro,150x4.6mm,4u,毎分1.5mL,30℃,7分間にわたって水(+0.1%TFA)中アセトニトリル(+0.085%TFA)5−100%勾配−30秒維持,200−300nm):保持時間6.80分,100%,ES:492.37[MH]
【0158】
活性代謝産物
実施例1から5に記載されたプロドラッグに対応する、予想されるインビボでの活性代謝産物の構造を以下の表2に示す。
【表2】

【0159】
生物学的方法
アデノシン誘導体に関する薬物動態を、JV−カニューレ処置したSDラットを用いてインビボにて研究した。投与量サンプルは、適当な処方における単一化合物か、または5−7個のさまざまな化合物の混合のいずれかであった。動物にIV(n=4)およびPOを経管栄養チューブ(n=4)を経由して投与し、血液サンプル(200μl)を投与前,5,10,20,30,45,60,120,240,360分(IV)または投与前,5,10,20,45,60,120,240,360,1440分(PO)で採取した。サンプルをEDTA抗凝血剤に入れ、遠心分離を行なった。得られた血漿を分析する直前まで−80℃で保管した。
【0160】
血漿を固相抽出またはタンパク質沈殿のいずれかによって抽出した。サンプルを乾燥させ、適当な溶媒中にて再構築し、遠心分離をして上清を単離した後、最適感度および選択性を調べるために、MS/MS選択的反応モニタリングを用いて、高速液体クロマトグラフィ−質量分析により分析を行なった。リニア台形法(linear trapezoidal method)によって得られたAUCを用い、非コンパートメントPK計算(non-compartmental PK calculation)を使用して、血漿薬物レベルを数学的に分析した。使用者によって調節された最終期に対するベストフィットによって半減期を計算した。
【0161】
結果:5個の2−置換アデノシンの範囲に関して、2’,3’−メチリデンアセタールプロドラッグ戦略(実施例10−14に示すプロドラッグ)を用いることによって、経口での生物学的利用率が平均19%から53%まで上昇し、そして経口半減期が1.3時間から3.2時間まで延びていることがわかった。
【0162】
したがって、本明細書に記載された新規のプロドラッグ戦略を用いることによって、これらのアデノシン誘導体の経口での生物学的利用率および経口半減期が有意に上昇することができると確信する。これは、ヌクレオシド誘導体が高い極性表面領域(PSAs)(たとえば、アデノシン140Å,グアノシン160Å,シチジン131Å,ウリジン125Å)を有する極性分子となる傾向があるので、特に驚くべきことである。PSAが、腸内吸収、生物学的利用可能性、Caco−2浸透性および血液−脳関門透過性を含む、薬物吸収を特徴とする非常に良好な因子であることが示される。PSAsは、極性フラグメントの表にされた表面寄与の合計に基づいて、分子トポロジーを用いてコンピュータ計算される(Ertl,RohdeおよびSelzer,J.Med.Chem.(2000)43,3714)。
【0163】
Palmら(Pharm.Res.(1997)14,568)は、広範囲の構造にわたるヒトF%に対するPSA値のボルツマンシグモイド(Boltzmann sigmoidal)適合を実証し、特に、少なくとも20%生物学的に利用可能となる化合物のためには、PSAは<120Åであり、そして少なくとも50%経口での生物学的利用率のためには、PSA<95Åとなるべきことを実証した。
【0164】
本明細書に記載された2’,3’−メチリデンアセタールプロドラッグのPSAの平均計算値は125Åであり、これより経口での生物学的利用率は〜15−20%と推定される。観測された平均の経口での生物学的利用率は驚くことに53%である。
【実施例6】
【0165】
ストレプトゾシン誘導性糖尿病性神経障害を経験しているラットを使用して、経口投与したスポンゴシンの抗アロディニア能を決定した。50mg/kgのストレプトゾシンをi.p,で1回注射することによって糖尿病を誘導した(Sigma、33mM、pH4.5のクエン酸緩衝化生理食塩水中(50mg/ml/kg))。コントロール動物は、クエン酸緩衝化生理食塩水のi.p.での注射1回を受けた。STZの注射後7日目から、静的異痛症および糖尿病が検出され、それらは14日目までに大部分の動物において存在し、動物は、以前は無害であった3.63gまたはそれ以下のポーウィズドローアルスレッシュルド(paw withdrawal threshold)(PWT)を一貫して示した。力を上昇させながら(0.7、1.2、1.5、2、3.6、5.5、8.5、11.8、15.1および29g)、6sまでボンフレイヘア(Von Frey hair)(Semmes Weinstein series)を用いて後ろ足の足裏表面に触れることによって、静的異痛症を試験した。一度静的異痛症を患った(ストレプトゾシンの注射後20〜35日目の間)STZ糖尿病動物において、経口投与したスポンゴシン(0.6〜2.08mg/kg po)の抗アロディニア能を試験した。
【0166】
図1は、スポンゴシンが、ストレプトゾシン誘導性の静的異痛症の回復に対して用量依存的な効果(0.6〜2.1mg/kg、po)を示したことを示している。全ての用量が異痛症を回復させることに有効であった一方、最大用量では、未処理でストレプトゾシンを注射していないコントロール動物によって示されたレベルまで、完全に異痛症から回復した。ボンフレイヘアを使用して、静的異痛症を評価し、ポーウィズドローアルスレッシュルド(PWT)をグラムで示している(記号は中央値を表し、縦棒は4分の1および4分の3を表す)。試験した全ての用量のスポンゴシンが異痛症を軽減し、PWTすなわち、ボンフレイヘアによって与えられた圧力の増加に耐える動物の能力を増加させた。各時点でのビヒクル処理したSTZ群とSTZで薬物処理した群とを比較して、**p<0.01、*p<0.05有意に異なる(マンホイットニーのU検定)。異痛症からの有意な回復は、2、3および4時間での2.1mg/kgの用量のコホートにおいても明らかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノシン受容体のアゴニズムまたはアンタゴニズムによって改善または予防され得る医学的状態に対する使用のための医薬品の製造における、式(I):
【化1】

[式中、
R1は、置換されていないか、またはハロゲン、OH、OR2、NR2R3、CN、SR2またはR2から独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているアデニンであり;
R2およびR3は、H、C1−6−アルキル、C3−8−シクロアルキル、アリールまたはヘテロシクリルから独立して選択され、それぞれハロゲン、OH、NH、CNまたはCFから独立して選択される1〜3個の置換基でそれぞれ置換されていてもよい]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩の使用。
【請求項2】
化合物が、式(II):
【化2】

[式中、
R1は、請求項1に記載するものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
医学的状態が、アデノシン受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
医学的状態が疼痛に付随するものである、請求項3記載の使用。
【請求項5】
疼痛が痛覚過敏である、請求項4記載の使用。
【請求項6】
疼痛が神経障害によって引き起こされている、請求項4または5記載の使用。
【請求項7】
疼痛が、糖尿病性神経障害、多発神経障害、坐骨神経痛/腰部神経根障害、ガン性疼痛、ヘルペス後神経痛、筋膜性疼痛症候群、関節リウマチ、線維筋痛症、変形性関節症、膵臓痛、骨盤/会陰痛、脊柱管狭窄、顎関節疾患、HIV疼痛、三叉神経痛、慢性神経因性疼痛、腰痛、腰椎術後疼痛、背部痛、術後疼痛、身体外傷後疼痛(発砲、道路交通事故、熱傷を含む)、心臓痛、胸痛、骨盤痛/PID、頸部痛、腸痛(Bowel Pain)、幻肢痛、分娩痛(分娩/帝王切開)、腎疝痛、急性帯状疱疹疼痛、急性膵炎突出痛(ガン)、ジスムノルホエア/子宮内膜症に付随するか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態のいずれかにある、請求項4〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
疼痛が炎症性疾患、または炎症性、自己免疫性および神経障害性の組織損傷を組み合わせたものによって引き起こされる、請求項4または5記載の使用。
【請求項9】
疼痛が、関節リウマチ、変形性関節症、関節痛(腱炎、滑液包炎、急性関節炎)、腰痛、腰椎術後疼痛、背部痛、術後疼痛、身体外傷後疼痛(発砲、道路交通事故、熱傷を含む)、線維筋痛症、関節リュウマチ、脊椎炎、痛風関節炎および他の関節炎状態、ガン、HIV、糖尿病性神経障害、多発神経障害、坐骨神経痛/腰部神経根障害、自己免疫傷害(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、感染症に起因する発熱および筋肉痛、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびピレシス(pyresis)、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリアおよび細菌性髄膜炎、腸痛、ガン性疼痛、背部痛、線維筋痛症、術後疼痛に付随するか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態のいずれかにある、請求項4、5または8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
疼痛が虚血性疼痛である、請求項4記載の使用。
【請求項11】
疼痛が、冠動脈疾患、末梢血管疾患、ならびに粥状動脈硬化に通常続発する不十分な血流、左室肥大、本態性高血圧、急性高血圧緊急症、心筋症、心不全、運動負荷、慢性心不全、不整脈(arrhythmia)、不整脈(cardiac dysrhythmia)、シンコピー(syncopy)、動脈硬化症、軽度慢性心不全、狭心症、プリンツメタル(バリアント)狭心症、安定狭心症、および労作性狭心症、心臓バイパス再閉塞、間欠性跛行(動脈硬化症オブリテレン(oblitteren))、動脈炎、拡張機能障害および収縮不全、粥状動脈硬化、後壁虚血/再灌流傷害、糖尿病(I型およびII型の両方)、血栓塞栓症、ならびに虚血性疼痛をももたらす出血性アクシデントによって特徴付けられる状態に付随する、請求項4または10記載の使用。
【請求項12】
医学的状態が炎症に付随する、請求項3記載の使用。
【請求項13】
炎症が、ガン(例えば、白血病、リンパ腫、細胞腫、大腸ガン、乳ガン、肺ガン、膵臓ガン、肝細胞ガン、腎臓ガン、メラノーマ、肝臓、肺、乳房および前立腺転移など);慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、肺炎、胸膜炎、急性喘息、慢性喘息、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(IRDS)急性肺傷害(ALI)、喉頭炎(laryngitis)、咽頭炎(pharangitis)、持続型喘息、慢性喘息様気管支炎、間質性肺疾患、肺悪性腫瘍、アルファアンチトリプシン欠損症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス、肺線維症、コラーゲン血管障害、アレルギー性鼻炎、鼻閉、喘息発作重積状態、喫煙付随肺疾患、肺高血圧症、肺水腫、肺塞栓症、肺塞栓症、気胸、血胸、肺ガン、アレルギー、花粉症花粉症)、くしゃみ、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、外因刺激誘導性疾病、(SO、スモッグ、汚染)、気道過敏症、乳製品不耐性、ラファー肺炎、じん肺症、コラーゲン誘導性血管疾患、肉芽腫症、気管支炎症、慢性炎症性肺疾患、骨吸収疾患、再灌流傷害(心筋梗塞および脳卒中などの虚血性エピソード後の再灌流の結果としての器官に引き起こされる損傷を含む)、自己免疫疾患(臓器移植拒絶反応、エリテマトーデス、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病、糖尿病および糖尿病の炎症性結果を導く膵島の破壊を含む);自己免疫損傷(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む);肥満;組織灌流不良および炎症に付随する心血管状態(例えば、アテローム、粥状動脈硬化、脳卒中、虚血再灌流傷害、跛行、脊髄傷害、うっ血性心不全、血管炎、出血性ショック、くも膜下出血後の血管攣縮、脳血管発作後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、糖尿病の心血管合併症);虚血再灌流傷害、虚血および付随炎症、血管形成術および炎症性動脈瘤後の再狭窄;てんかん、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋疲労または筋痙攣(特に、運動選手の筋痙攣)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風関節炎)、線維症(例えば、肺、皮膚および肝臓)、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応、帯状疱疹、毒素ショック、脳性マラリア、ライム病、エンドトキシンショック、グラム陰性ショック、出血性ショック(組織損傷またはウイルス感染の両方に起因する)、深部静脈血栓症、痛風;呼吸困難(例えば、気道の阻止および妨害、気管支収縮、肺血管収縮、呼吸の阻止、珪肺症、肺サルコーシス(sarcosis)、肺高血圧症、肺血管収縮、気管支アレルギーおよび春季カタル);皮膚の炎症に付随する状態(乾癬、湿疹、潰瘍、接触性皮膚炎を含む);腸の炎症に付随する状態(クローン病、潰瘍性大腸炎および不全麻痺、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患);HIV(特に、HIV感染症)、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、TNF増強性HIV複製、AZTおよびDDI活性のINF抑制、骨粗鬆症および他の骨再吸収疾患、変形性関節症、関節リウマチ、子宮内膜症由来の不妊症、感染症に由来する発熱および筋肉痛、ガンに続発する悪液質、感染症または悪性腫瘍に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、アムホテリシンB処置由来の有害な効果、インターロイキン−2処置に起因する有害な効果、OKT3処置に起因する有害な効果、またはGM−CSF処置に起因する有害な効果、および過度の抗炎症性細胞(好中球、好酸球、マクロファージおよびT細胞を含む)の活動によって媒介される他の状態によって引き起こされるかまたは付随するか;あるいは、細菌またはウイルス感染症が原因であるか、状態、I型またはII型糖尿病のマクロまたはミクロの血管性合併症、網膜症、腎症、自律神経神経障害、または虚血または粥状動脈硬化によって引き起こされる血管損傷を増悪させる病理学的状態のいずれかにある、請求項12記載の使用。
【請求項14】
医学的状態が関節症に付随する、請求項3記載の使用。
【請求項15】
関節症が関節リウマチ、脊椎炎、痛風関節炎、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、急性関節炎、非リウマチ性関節炎または痛風によって引き起こされるか、または付随する、請求項14記載の使用。
【請求項16】
関節症の進行を遅くするための疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の製造における請求項1記載の式(I)で表される化合物または医薬上許容されるその塩の使用。
【請求項17】
関節リウマチの進行を遅くするためのDMARDの製造における請求項16記載の使用。
【請求項18】
創傷治癒の促進のための医薬品の製造における請求項1記載の式(I)で表される化合物または医薬上許容されるその塩の使用。
【請求項19】
第2の医薬品と比較して生物学的利用率が増加し、改善されている医薬品の製造方法における請求項1〜18のいずれか1項記載の使用であって、当該第2の医薬品は式(IV):
【化3】

[式中、
R1は、請求項1に記載するものであり、かつ、第2の医薬品のR1は、改善されている医薬品のR1と同じものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩を有効成分として有する、使用。
【請求項20】
第2の医薬品と比較して半減期が増加し、改善されている医薬品の製造方法における請求項1〜18のいずれか1項記載の使用であって、当該第2の医薬品は式(IV):
【化4】

[式中、
R1は、請求項1に記載するものであり、かつ、第2の医薬品のR1は、改善されている医薬品のR1と同じものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩を有効成分として有する、使用。
【請求項21】
式(III):
【化5】

[式中、
R4は、OR2、NR2R3、CN、SR2 またはR2から選択され;R2およびR3は、請求項1に記載するものである]
で表される化合物または医薬上許容されるその塩。
【請求項22】
以下から選択される請求項21記載の化合物:
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−メトキシ−9H−プリン−9イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール;
・[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−イル]オキシ}−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール; and
・((3aR,4R,6R,6aR)−6−{6−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−9H−プリン−9−イル}テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル)メタノール。
【請求項23】
治療での使用のための請求項21または21記載の化合物。
【請求項24】
アデノシンA2A受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処置または寛解での使用のための請求項21または22記載の化合物。
【請求項25】
アデノシンA2A受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処置または寛解ための医薬品の製造における請求項21または22記載の化合物の使用。
【請求項26】
病理学的状態が疼痛に付随する、請求項25記載の使用。
【請求項27】
疼痛が痛覚過敏である、請求項26記載の使用。
【請求項28】
疼痛が神経障害によって引き起こされる、請求項26または27記載の使用。
【請求項29】
疼痛が、糖尿病性神経障害、多発神経障害、坐骨神経痛/腰部神経根障害、ガン性疼痛、ヘルペス後神経痛、筋膜性疼痛症候群、関節リウマチ、線維筋痛症、変形性関節症、膵臓痛、骨盤/会陰痛、脊柱管狭窄、顎関節疾患、HIV疼痛、三叉神経痛、慢性神経因性疼痛、腰痛、腰椎術後疼痛、背部痛、術後疼痛、身体外傷後疼痛(発砲、道路交通事故、熱傷を含む)、心臓痛、胸痛、骨盤痛/PID、頸部痛、腸痛(Bowel Pain)、幻肢痛、分娩痛(分娩/帝王切開)、腎疝痛、急性帯状疱疹疼痛、急性膵炎突出痛(ガン)、ジスムノルホエア/子宮内膜症に付随するか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態のいずれかにある、請求項26〜28のいずれか1項記載の使用。
【請求項30】
疼痛が炎症性疾患、または炎症性、自己免疫性および神経障害性の組織損傷を組み合わせたものによって引き起こされる、請求項26または27記載の使用。
【請求項31】
疼痛が、関節リウマチ、変形性関節症、関節痛(腱炎、滑液包炎、急性関節炎)、腰痛、腰椎術後疼痛、背部痛、術後疼痛、身体外傷後疼痛(発砲、道路交通事故、熱傷を含む)、線維筋痛症、関節リュウマチ、脊椎炎、痛風関節炎および他の関節炎状態、ガン、HIV、糖尿病性神経障害、多発神経障害、坐骨神経痛/腰部神経根障害、自己免疫損傷(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む)、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、感染症に起因する発熱および筋肉痛、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、クローン病、潰瘍性大腸炎およびピレシス(pyresis)、過敏性腸症候群、骨粗鬆症、脳性マラリアおよび細菌性髄膜炎、腸痛、ガン性疼痛、背部痛、線維筋痛症、術後疼痛に付随するか;または細菌またはウイルス感染症が原因であるかまたは状態を増悪させる当該病理学的状態のいずれかにある、請求項26、27または30のいずれか1項記載の使用。
【請求項32】
疼痛が虚血性疼痛である、請求項26記載の使用。
【請求項33】
疼痛が、冠動脈疾患、末梢血管疾患、および粥状動脈硬化に通常続発する不十分な血流、左室肥大、本態性高血圧、急性高血圧緊急症、心筋症、心不全、運動負荷、慢性心不全、不整脈(arrhythmia)、不整脈(cardiac dysrhythmia)、シンコピー(syncopy)、動脈硬化症、軽度慢性心不全、狭心症、プリンツメタル(バリアント)狭心症、安定狭心症、および労作性狭心症、心臓バイパス再閉塞、間欠性跛行、動脈硬化症オブリテレン(oblitteren)、動脈炎、拡張機能障害および収縮不全、粥状動脈硬化、後壁虚血/再灌流傷害、糖尿病(I型およびII型の両方)、血栓塞栓症、ならびに虚血性疼痛をももたらす出血性アクシデントによって特徴付けられる状態に付随する、請求項26または32記載の使用。
【請求項34】
病理学的状態が炎症に付随する、請求項25記載の使用。
【請求項35】
炎症が、ガン(例えば、白血病、リンパ腫、細胞腫、大腸ガン、乳ガン、肺ガン、膵臓ガン、肝細胞ガン、腎臓ガン、メラノーマ、肝臓ガン、肺、乳房および前立腺転移など);慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性気管支炎、慢性気管支炎、肺気腫、気管支拡張症、嚢胞性線維症、肺炎、胸膜炎、急性喘息、慢性喘息、急性呼吸促迫症候群、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、乳児呼吸促迫症候群(IRDS)急性肺傷害(ALI)、喉頭炎(laryngitis)、咽頭炎(pharangitis)、持続型喘息、慢性喘息様気管支炎、間質性肺疾患、肺悪性腫瘍、アルファアンチトリプシン欠損症、閉塞性細気管支炎、サルコイドーシス(sarcoidosis)、肺線維症、コラーゲン血管障害、アレルギー性鼻炎、鼻閉、喘息発作重積状態、喫煙付随肺疾患、肺高血圧症、肺水腫、肺塞栓症、肺塞栓症、気胸、血胸、肺ガン、アレルギー、花粉症花粉症)、くしゃみ、血管運動性鼻炎、粘膜炎、副鼻腔炎、外因刺激誘導性疾病(SO、スモッグ、汚染)、気道過敏症、乳製品不耐性、ラファー肺炎、じん肺症、コラーゲン誘導性血管疾患、肉芽腫症、気管支炎症、慢性炎症性肺疾患、骨吸収疾患、再灌流傷害(心筋梗塞および脳卒中などの虚血性エピソード後の再灌流の結果としての器官に引き起こされる損傷を含む)、自己免疫疾患(臓器移植拒絶反応、エリテマトーデス、移植片対宿主拒絶反応、同種移植片拒絶、多発性硬化症、関節リウマチ、I型糖尿病、糖尿病および糖尿病の炎症性結果を導く膵島の破壊を含む);自己免疫損傷(多発性硬化症、ギラム・バレ症候群、重症筋無力症を含む);肥満;組織灌流不良および炎症に付随する心血管状態(例えば、アテローム、粥状動脈硬化、脳卒中、虚血再灌流傷害、跛行、脊髄傷害、うっ血性心不全、血管炎、出血性ショック、くも膜下出血後の血管攣縮、脳血管発作後の血管攣縮、胸膜炎、心膜炎、糖尿病の心血管合併症);虚血再灌流傷害、虚血および付随炎症、血管形成術および炎症性動脈瘤後の再狭窄;てんかん、神経変性(アルツハイマー病を含む)、筋疲労または筋痙攣(特に、運動選手の筋痙攣)、関節炎(関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、痛風関節炎)、線維症(例えば、肺、皮膚および肝臓)、多発性硬化症、敗血症、敗血症性ショック、脳炎、感染性関節炎、ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応、帯状疱疹、毒素ショック、脳性マラリア、ライム病、エンドトキシンショック、グラム陰性ショック、出血性ショック(組織損傷またはウイルス感染の両方に起因する)、深部静脈血栓症、痛風;呼吸困難(例えば、気道の阻止および妨害、気管支収縮、肺血管収縮、呼吸の阻止、珪肺症、肺ナルコーシス、肺高血圧症、気管支アレルギーおよび春季カタル)に付随する状態;皮膚の炎症に付随する状態(乾癬、湿疹、潰瘍、接触性皮膚炎);腸の炎症に付随する状態(クローン病、潰瘍性大腸炎および不全麻痺、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患);HIV(特に、HIV感染症)、脳性マラリア、細菌性髄膜炎、TNF増強性HIV複製、AZTおよびDDI活性のINF抑制、骨粗鬆症および他の骨再吸収疾患、変形性関節症、関節リウマチ、子宮内膜症由来の不妊症、感染症に由来する発熱および筋肉痛、ガンに続発する悪液質、感染症または悪性腫瘍に続発する悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発する悪液質、AIDS関連複合体(ARC)、ケロイド形成、瘢痕組織形成、アムホテリシンB処置由来の有害な効果、インターロイキン−2処置に起因する有害な効果、OKT3処置に起因する有害な効果、またはGM−CSF処置に起因する有害な効果、および過度の抗炎症性細胞(好中球、好酸球、マクロファージおよびT細胞を含む)の活動によって媒介される他の状態に付随する状態によって引き起こされるかまたは付随するか;あるいは、細菌またはウイルス感染症が原因であるか、状態、I型またはII型糖尿病のマクロまたはミクロの血管性合併症、網膜症、腎症、自律神経ニューロパチー、または虚血または粥状動脈硬化によって引き起こされる血管損傷を増悪させる病理学的状態のいずれかにある、請求項34記載の使用。
【請求項36】
病理学的状態が関節症に付随する、請求項25記載の使用。
【請求項37】
関節症が、関節リウマチ、脊椎炎、痛風関節炎、変形性関節症、腱炎、滑液包炎、急性関節炎、非リウマチ性関節炎または痛風によって引き起こされるか、または付随する、請求項36記載の使用。
【請求項38】
関節症の進行を遅くするための疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の製造における請求項21または22記載の式(III)で表される化合物の使用。
【請求項39】
関節リウマチの進行を遅くするためのDMARDの製造における請求項38記載の使用。
【請求項40】
創傷治癒の促進のための医薬品の製造における請求項21または22記載の式(III)で表される化合物の使用。
【請求項41】
医薬上許容される担体、賦形剤または希釈剤と組み合わせて、請求項21または22記載の化合物を有効成分として含む医薬処方物。
【請求項42】
アデノシンA2A受容体のアゴニズムによって改善または予防され得る病理学的状態の予防、処置または寛解での使用のためのさらなる治療薬をさらに含む、請求項41記載の医薬処方物。
【請求項43】
さらなる治療薬が疼痛、炎症および/または関節症を処置するために有用である、請求項42記載の医薬処方物。
【請求項44】
トリベンゾイル−2’,3’−メチリデン−2−ニトロ−アデノシンをNaOMeおよびMeOHと反応させる工程を包含する、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−メトキシ−9H−プリン−9イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノールの製造方法。
【請求項45】
トリベンゾイル−2’,3’−メチリデン−2−ニトロ−アデノシンをHOCHCHFと反応させる工程、および反応産物を脱保護する工程を包含する、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,2−ジフルオロエトキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノールの製造方法であって、ここで、RはCHCHFである、方法。
【請求項46】
トリベンゾイル−2’,3’−メチリデン−2−ニトロ−アデノシンをArOHと反応させる工程、および反応産物を脱保護する工程を包含する、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−(2,5−ジフルオロフェノキシ)−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノールの製造方法であって、ここで、Arは2,5−ジフルオロフェニルである、方法。
【請求項47】
トリベンゾイル−2’,3’−メチリデン−2−ニトロ−アデノシンをArOHと反応させる工程、および反応産物を脱保護する工程を包含する、[(3aR,4R,6R,6aR)−6−(6−アミノ−2−{[4’−(トリフルオロメチル)ビフェニル−3−イル]オキシ}−9H−プリン−9−イル)テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル]メタノール,コンプリシングレアクチングトリベンゾイル−2’,3’−メチリデン−2−ニトロ−アデノシンの製造方法であって、ここで、Arは3−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)フェニルである、方法。
【請求項48】
2’,3’−メチリデン−2−ヨード−アデノシンを3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸と反応させる工程を包含する、((3aR,4R,6R,6aR)−6−{6−アミノ−2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]−9H−プリン−9−イル}テトラヒドロフロ[3,4−d][1,3]ジオキソール−4−イル)メタノールの製造方法であって、ここで、Arは2,5−ジフルオロフェニルである、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−541436(P2009−541436A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517173(P2009−517173)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056375
【国際公開番号】WO2008/000743
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(501354233)ビオヴィトルム・アクチボラゲット(プブリクト) (25)
【氏名又は名称原語表記】Biovitrum AB(publ)
【Fターム(参考)】