説明

治療薬としてのシクロアルキル及びヘテロシクロアルキル置換されるベンゾチオフェン

本発明は、炎症性疾患、心臓血管疾患及び癌を含む疾病及び身体条件の治療において作用物質として有用である、R1、R2、R3及びLが、明細書中でそれについて規定されている値のうちのいずれかを有する構造式(I)ベンゾ[b]チオフェン及びその薬学的に許容可能な塩を提供している。同様に提供されているのは、構造式Iの単数又は複数の化合物を含む医薬組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、その教示が本書に参考として内含されている2003年6月5日付け米国仮特許出願第60/476,073号の利益を請求するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ホスホイノシチド−3−キナーゼ(PI3K)は、PI−3−P(ホスファチジルイノシトール3−ホスフェート)、PI−3,4−P2及びPI−3,4,5−P3を生成するために3’−OH上のホスホイノシトールをリン酸化する脂質キナーゼのファミリーである。成長因子によって刺激されている1つの種類のPI3Kとしては、PI3Kα、PI3Kβ及びPI3Kδが含まれる。G−タンパク質でカップリングされたレセプタによって活性化される別の種類のPI3Kには、PI3Kγが含まれる。成長因子で刺激されたPI3K(例えばPI3Kα)は、細胞増殖及び癌に関与してきた。PI3Kγは、シグナリングカスケードに関与していることが実証されてきた。例えばPI3Kγは、C5a、fMLP、ADP及びIL−8といったようなリガンドに応答して活性化される。さらに、PI3Kγは免疫疾患にも関与してきた(Hirsch et al., Science. 2000;287;1049−1053)。PI3Kγヌルマクロファージは、走化性応答の低下及び炎症を抑える能力の低下を示している(Hirsch et al., 2000、前掲書)。さらに、PI3Kγは同様に、血栓溶解疾患(例えば血栓塞栓症、虚血性疾患、心臓麻痺及び卒中)にも関与してきた(Hirsch et al.,FASEB J.2000;15(11);2019−2021;及びHirsch et al.,FASEB J.,July 9 2001;10.1096/fj.00−0810fje(本書ではHirsch et al.,2001として引用))。
【0003】
PI3Kの成員の阻害物質がヒトの疾患を治療する目的で開発されつつある(例えばWO01/81346号;WO01/53266号;及びWO01/83456号参照)。薬学的作用物質として使用するためのPI3KSを阻害できるさらなる化合物に対するニーズが存在している。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
1つの態様において、該発明は、
【化1】

〔式中、
− R2及びR3は、
(i)R2がメトキシでありR3がメチル又はメトキシであり、
(ii)R2がメチルでありR3がメトキシであり、
− Lが不在であるか又はC1−C4−アルキレンであり;
− R1は、C3−C8シクロアルキル、C5−C8シクロアルケニル、4〜6員のヘテロシクロアルキル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、オキセタニル、テトラヒトロフラニル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル又はデカヒドロナフタレニルであり、
− R1は、4つのメチル、C1−C2アルキレン−6員ヘテロシクロアルキル又は
1−C4−アルキル、メチル、tert−ブチル、C(O)CH3、C(O)O−C1−C4アルキル、CH2−フェニル、C5−C6シクロアルキル、Cl、Br、F、−CF3、−OH、−OCF3及びO−C1−C6アルキル、から成るグループの中から独立して選択された1〜3個の置換基で任意に選択され得る〕という構造式Iのベンゾ[b]チオフェンを提供している。
【0005】
構造式Iのいくつかの実施形態においては、R2はメトキシでありR3はメチルである−構造式IIの化合物。
【化2】

【0006】
構造式IIのいくつかの実施形態においては、R1は、テトラヒドロピラニル、C6−シクロアルキル、C7−シクロアルキル及びピペリジニルから成るグループの中から選択される任意に置換される基である。構造式IIの化合物の例としては、
5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(3,3−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
【0007】
3−シクロヘキシルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3−メチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘプチルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2Hテトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ−ピペルジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル;
3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b}チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(1−アセチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
4−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2H−テトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ]−ピペリジン−l−カルボン酸tert−ブチルエステル;及び
5−メトキシ−6−メチル−3−(1−メチル−シクロプロピルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド、
が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0008】
構造式Iのいくつかの実施形態においては、R2はメトキシであり、R3はメトキシである−構造式IIIの化合物。
【化3】

【0009】
構造式IIIのいくつかの実施形態においては、R1は、C3−シクロアルキル、C6−シクロアルキル、C6−シクロアルケニル及びビシクロ[2.2.1]ヘプチルから成るグループの中から選択される任意に置換される基である。構造式IIの化合物の例としては、
3−(2,2−ジクロロ−シクロプロピルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(4−tert−ブチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5,6ジメトキシ−3−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(シクロヘキシ3−エニルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(3,5−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;及び
3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド、
が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0010】
構造式Iのいくつかの実施形態においては、R2はメチルでありR3はメトキシである−構造式IVの化合物。
【化4】

【0011】
構造式IVのいくつかの実施形態においては、R1は、任意に置換されるC6−シクロアルキルである。構造式IVの化合物の一例としては、前記化合物が3−シクロヘキシルオキシ−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミドがある。
【0012】
構造式Iのいくつかの実施形態においては、R1は任意に置換されるC3−C8シクロアルキル、シクロヘキシル、シクロペンチル又はC5−C8シクロアルケニルである−構造式Vの化合物。
【化5】

【0013】
構造式Vのいくつかの実施形態においては、Lは不在である。構造式Vのその他の実施形態においては、LはC1−C4−アルキレンである。構造式Vの化合物の一例としては、5,6−ジメトキシ−3−(3,3,5−トリメチル−シクロヘキシオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドがある。
【0014】
いくつかの実施形態においては、R1は、任意に置換される4〜6員のヘテロシクロアルキル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル又はデカヒドロ−ナフタレニルである−構造式VIの化合物。
【化6】

【0015】
構造式VIのいくつかの実施形態においては、Lは不在である。構造式VIのその他の実施形態においては、LはC1−C4−アルキレンである。構造式VIの化合物の例としては、5,6−ジメトキシ−3−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミドである。
【0016】
もう1つの実施形態においては、該発明は、治療上有効な量の構造式I−VIの化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態においては、これらの組成物はPI3K媒介型身体条件又は障害の治療において有用である。該発明の化合物は同様に、癌、血栓溶解疾患、心臓疾患、卒中、関節リウマチといったような炎症性疾感又はその他のPI3K媒介型障害の治療のために有用である化合物を同じく含む医薬組成物の形で組合わせることもできる。
【0017】
もう1つの態様においては、本発明は、治療上有効な量の構造式I−VIの化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物をPI3K媒介型身体条件又は障害を患う対象に対し投与する段階を含んで成る、PI3K媒介型傷害又は身体条件を患う対象の治療方法を提供している。いくつかの実施形態においては、PI3K媒介型身体条件又は障害は、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患及び自己免疫疾患から成るグループの中から選択されている。その他の実施形態においては、PI3K媒介型身体条件又は障害は、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深部静脈血栓症、卒中、心筋梗塞症、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解疾患、急性動脈虚血、末梢血栓性閉塞、及び冠状動脈疾患から成るグループの中から選択される。さらにその他の実施形態では、PI3K媒介型身体条件又は障害は、癌、結腸癌、グリア芽腫、子宮内膜癌、肝細胞癌腫、肺癌、黒色腫、腎臓細胞癌腫、甲状腺癌、細胞リンパ腫、リンパ増殖性障害、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌及び白血病から成るグループの中から選択される。さらにもう1つの実施形態では、PI3K媒介型身体条件又は障害は、インシュリン非依存性糖尿病から成るグループの中から選択される。さらにその他の実施形態では、PI3K媒介型身体条件又は障害は、呼吸器疾患、気管支炎、ぜんそく、及び慢性閉塞性肺疾患から成るグループの中から選択されている。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0018】
定義
本書で使用される以下の用語は、相反する規定のないかぎり、それらに割当てられた意味を有する。
【0019】
「PI3K媒介型障害又は、身体条件」は、1つの障害又は身体条件の開始、単数又は複数の症候又は疾病マーカーの徴候、重症度又は進行における単数又は複数のPI3K又はPI3Pホスファターゼ(例えばPTENなど)の参与によって特徴づけられる。PI3媒介型障害及び身体条件には、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患、肺線維症、自己免疫疾患、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深部静脈血栓症、卒中、心筋梗塞症、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解疾患、急性動脈虚血、末梢血栓性閉塞、冠状動脈疾患、癌、乳癌、グリア芽腫、子宮内膜癌、肝細胞癌腫、結腸癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、前立腺癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、卵巣癌、子宮頸癌、白血病、細胞リンパ腫、リンパ増殖性障害、インシュリン非依存性糖尿病、呼吸器疾患、気管支炎、ぜんそく、及び慢性閉塞性肺疾患が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0020】
PI3Kは、PI3Pを生成するためにホスホイノイシトールの3’−OHをリン酸化することのできる酵素である。PI3Kには、PI3Kα、PI3Kβ、PI3Kγ及びPI3Kδが含まれるが、これらに制限されるわけではない。PI3Kは、標準的には、少なくとも1つの触媒サブユニット(例えばp110γ)を含み、さらに調節サブユニット(例えばp101、など)を含んでいてもよい。
【0021】
「アルキル基」又は「アルキル」という用語には、直鎖及び有枝炭素鎖ラジカルが含まれる。「アルキレン」という用語は、未置換又は置換アルカンのジラジカルを意味する。例えば「C1-6アルキル」は、1〜6個の炭素原子をもつアルキル基である。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが含まれるが、これらに制限されるわけではない。有枝鎖アルキル基の例としては、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチルなどが含まれるが、これらに制限されるわけではない。アルキレン基の例としては、−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH(CH3)−CH2及び(CH21-6が含まれるが、これらに制限されるわけではない。アルキレン基は、以下でアルキルについて記されているような基で置換され得る。
【0022】
その上、アルキルという用語は、「未置換アルキル」と「置換アルキル」の両方を含み、そのうち後者は、炭化水素、主鎖の単数又は複数の炭素上に水素と交換する(例えば1、2、3、4、5又は6個の炭素上で水素と交換する)置換基をもつアルキル部分を意味する。かかる置換基には、C2−C6アルケニル、C2−C6アルキニル、ハロ、I、Br、Cl、F、−OH、−COOH、スルフヒドリル、(C1−C6アルキル)S−、C1−C6−アルキルスルフィニル、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、−NH2、=O、=S、=N−CN、=N−OH、−OCH2F、−OCHF2、−OCF3、SCF3、−SO2−NH2、C1−C6−アルコキシ、−C(O)O−(C1−C6アルキル)、−O−C(O)−(C1−C6アルキル)、−C(O)−NH2、−C(O)−N(H)−C1−C6アルキル、−C(O)−N(C1−C6アルキル)2、−OC(O)−NH2、−C(O)−H、−C(O)−(C1−C6アルキル)、−C(S)−(C1−C6アルキル)、−NR7072(R70及びR72は各々独立してH、C1−C6−アルキル、C2−C6−アルケニル、C2−C6−アルキニル及びC(O)−C1−C6−アルキルの中から選択される)が含まれ得るがこれらに制限されるわけではない。
【0023】
かくして、標準的なアルキル基は、アミノメチル、2−ニトロエチル、4−シアノブチル、2,3−ジクロロペンチル、及び3−ヒドロキシ−5−カルボキシヘキシル、2−アミノエチル、ペンタクロロエチル、トリフルオロメチル、2−ジエチルアミノエチル、2−ジメチルアミノプロピル、エトキシカルボニルメチル、メタニルスルファニルメチル、メトキシメチル、3−ヒドロキシペンチル、2−カルボキシブチル、4−クロロブチル、及びペンタフルオロエチルである。
【0024】
「ハロ」には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0025】
「アルケニル」というのは、2つ以上の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素2重結合を含む直鎖及び有枝炭化水素ラジカルを意味し、エテニル、3−ブテン−1−イル、2−エテニルブチル、3−ヘキセン−1−イルなどを内含する。「アルケニル」という用語は、置換及び未置換の両方のアルケニル基を内含するように意図されている。「C2−C6−アルケニル」は、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基である。アルケニル基は、アルキルについて以上で記されたもののような基置換され得る。「アルケニレン」という用語は、置換又は未置換アルケンのジラジカルを意味する。アルケニレン基の例としては、−CH=CH−、−CH=CH−CH2−、及び−(CH21-6−CH=CH−CH2−が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0026】
「アルキニル」というのは、2つ以上の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素−炭素3重結合を含む直鎖及び有枝炭化水素ラジカルを意味し、エチニル、3−ブチン−1−イル、プロピニル、2−ブチン−1−イル、3−ペンチン−1−イルなどを内含する。「アルキニル」という用語は、置換及び未置換の両方のアルキニル基を内含するように意図されている。アルキニル基は、アルキルについて以上に記されたもののような基で置換され得る。いくつかの実施形態においては、直鎖又は有枝鎖アルキニル基は、その主鎖内に6個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖についてはC2−C6、有枝鎖についてはC3−C6)。C2−C6という用語には、2〜6個の炭素原子を含有するアルキニル基が含まれている。「アルキニレン」という用語は、置換又は未置換アルキンのジラジカルを意味する。アルキニレン基の例としては、−CH≡CH−、−C≡C−CH2−、及び−(CH21-6−C≡C−CH2−が含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0027】
「炭素環」又は「シクロアルキル」という用語は、シクロアルキル基が任意にはシクロペンテニル、シクロヘキシニル及びシクロヘプテニルを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)1又は2個の2重結合(すなわちシクロアルキレニル)を含有し得るシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、ビシクロ[3.2.1]オクタニル、及びビシクロ[5.2.0]ノナニルを含む(ただし、これらに制限されるわけではない)単環又は2環の炭素環官能基を意味する。「シクロアルキル」という用語は、置換及び未置換の両方のシクロアルキル基を内含するように意図されている。シクロアルキル基及びシクロヘキシル基は、アルキルについて以上で記したもののような基で置換され得る。相反する指示のないかぎり、「(C3−C8)シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素を含有するシクロアルキル基を意味する。かくして、「(C3−C8)シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素を含有するシクロアルキル基を意味する。かくして、「(C3−C8)シクロアルキル」という用語は、3〜8個の炭素を含有する単環式シクロアルキル基及び6〜8個の炭素を含有する2環式シクロアルキル基を包含する。置換シクロアルキル基の例としては、2−メチル−シクロヘキシル、3−メチル−シクロヘキシル及び4−メチル−シクロヘキシルが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0028】
「4〜6員のヘテロシクロアルキル」という語句は、S、N又はOから独立して選択された1〜3個のヘテロ原子と炭素をもつ安定した環式基を意味し、ここで2個のO原子又は1個のO原子と1個のS原子が存在する場合、2個のO原子又は1個のO原子及び1個のS原子はそれぞれ互いに結合されていない。任意には、4〜6員のヘテロシクロアルキルは、1個又は2個の炭素−炭素又は炭素−窒素2重結合を含有し得る。4〜6員のヘテロシクロアルキルの例としては、1−オキサ−シクロブタン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、モルホリン−4−イル、2−チアシクロヘキシ−1−イル、2−オキソ−2−チアシクロヘキシ−1−イル、2,2−ジオキソ−2−チアシクロヘキシ−1−イル、及び4−メチル−ピペラジン−2−イルが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0029】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、置換及び未置換の両方のヘテロシクロアルキル基を含むように意図されている。ヘテロシクロアルキル基は、アルキルについて以上で記したもののような1〜4個の基で置換され得る。置換3〜8員ヘテロシクロアルキルの例としては、2−ヒドロキシ−アジリジン−1−イル、3−オキソ−1−オキサシクロブタン−2−イル、2,2−ジメチル−テトラヒドロフラン−3−イル、3−カルボキシ−モルホリン−4−イル、及び1−シクロプロピル−4−メチル−ピペラジン−2−イルが含まれる。
【0030】
相反する指示のないかぎり、前述のヘテロシクロアルキルは、それが可能である場合、C結合又はN結合され得、その結果安定した構造が作り出されることになる。例えば、ピペリジニルは、ピペリジン−1−イル(N結合)又はピペリジン−4−イル(C結合)であり得る。
【0031】
「ヘテロシクロアルキル」という用語の中に包含されているのは、環内に1つの炭素−炭素又は炭素−窒素2重結合を有する5員環(例えば2−ピロリニル、3−ピロリニルなど)及び環内に1個の炭素−炭素又は1個の炭素−窒素2重結合を有する6員環(例えばジヒドロ−2H−ピラニル、1,2,3,4−テトラヒドロピリジン、3,4−ジヒドロ−2H−[1,4]オキサジンなど)である。
【0032】
「4員のヘテロシクロアルキル」というのは、1O、1S及び1Nから成るグループの中から選択された1個のヘテロ原子と3個の炭素原子をもつ安定した4員の単環シクロアルキル環である。安定した4員のヘテロシクロアルキルの例としては、オキセタニル、アゼチジニル及びチエタニルが含まれる。
【0033】
「5員のヘテロシクロアルキル」というのは、1O、1S、1N、2N、3N、1S及び1N、1S及び2N、1O及び1N、及び1O及び2Nから成るグループの中から選択されている1〜3個のヘテロ原子及び2〜4個の炭素原子をもつ安定した5員の単環シクロアルキル環である。安定した5員ヘテロシクロアルキルの例としては、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロチエニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル、イソキサゾリジニル、ピロリジニル、2−ピロリニル、及び3−ピロリニルが含まれる。
【0034】
「6員のヘテロシクロアルキル」というのは、1O、2O、1S、2S、1N、2N、3N、1S、1O及び1N、1S及び1N、1S及び2N、1S及び1O、1S及び2O、及び1O及び1N及び1O及び2Nから成るグループの中から選択されている1〜3個のヘテロ原子及び3〜5個の炭素原子をもつ安定した6員の単環シクロアルキル環である。安定した6員ヘテロシクロアルキルの例としては、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、1,4−ジチアニル、ヘキサヒドロピリミジン、モルホリニル、ピペラジニル、ピペリジニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチオピラニル、1,1−ジオキソヘキサヒドロ−lλ6−チオピラニル、1,l−ジオキソ−1λ6−チオモルホリニル、チオモルホリニル、チオキサニル及びトリチアニルが含まれる。
【0035】
「4〜6員のヘテロシクロアルキル」という用語には、飽和及び不飽和「4〜6員のヘテロシクロアルキル」が含まれる。「4〜6員のヘテロシクロアルキル」は、アルキルについて以上で記されている通りに置換され得る。
【0036】
アリール基は芳香族炭化水素ラジカルである。さらに、「アリール」という用語には、例えばナフチルといったような2環式アリール基といった多環式アリール基が含まれる。標準的アリール基にはフェニル及びナフチルが含まれる。フェニルは、以上でアルキルについて記述された置換基といったような(ただし、これらに制限されるわけではない)置換基により単数又は複数の位置で置換されていてもよいし、又未置換であってもよい。標準的な置換フェニル基には、3−クロロフェニル、2,6−ジブロモフェニル、2,4,6−トリブロモフェニル、2,6−ジクロロフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3−アミノ−4−ニトロフェニル、3,5−ジヒドロキシフェニル、3−メチル−フェニル、4−メチル−フェニル、3,5−ジメチル−フェニル、3,4,5−トリメトキシ−フェニル、3,5−ジメトキシ−フェニル、3,4−ジメトキシ−フェニル、3−メトキシ−フェニル、4−メトキシ−フェニル、4−tert−ブチル−フェニル、4−ヘキシル−フェニル、4−シアノ−フェニル、3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル、3,5−ジフルオロ−フェニル、4−クロロ−フェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、4−メトキシカルボニル−フェニル、2−フルオロメトキシ−フェニル、3,5−ジクロロ−フェニル、2−メトキシ−5−メチル−フェニル、2−フルオロ−5−メチル−フェニル、4−フェノキシ−フェニル、4−クロロ−2−フルオロメチル−フェニルなどが含まれるが、これらに制限されるわけではない。ナフタレニルといったような多環式アリール基は、アルキルについて上述した置換基といったような(ただし、これらに制限されるわけではない)置換基で単数又は複数の位置で置換されていてもよいし又未置換であってもよい。「アリール」という用語は、置換及び未置換の両方のフェニル基を内含するように意図されている。
【0037】
本発明中の化合物のいくつかは、鏡像異性体、ジアステレオマー、及び幾何異性体を含む立体異性体として存在し得る。幾何異性体には、entregen又はzusammen立体配座として存在し得るアルケニル基をもつ本発明の化合物が内含され、その場合、entgegen及びzusammen、シス及びトランスの両方及びそれらの混合物のその幾何形態全てが本発明の範囲内に入る。本発明の一部の化合物は、複数の炭素原子において置換され得るシクロアルキル基を有し、その場合、シス及びトランスの両方及びそれらの混合物のその幾何形態全てが本発明の範囲内に入る。(R)、(S)、エピマー、ジアステレオマー、シス、トランス、シン、アンチ、(E)、(Z)、互変異性体及びそれらの混合物を含むこれらの形態の全てが、本発明の化合物の中で考慮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
発明の詳細な説明
I.序
本発明は、炎症性疾患、心臓血管疾患及び癌を含む疾病及び身体条件の治療における作用物質として有用である、R1、R2、R3及びLが該明細書内でそれについて規定されている値のいずれかを有している、構造式I−VIのベンゾ[b]チオフェン、及びその薬学的に許容可能な塩に関する。同様に提供されているのは、構造式I−VIの単数又は複数の化合物を含む医薬組成物である。
【0039】
II.化合物の調製
本発明の化合物(例えば構造式I−VIの化合物)は、当該技術分野において既知の合成方法及び以下で記述されるスキーム内で概略が示されている合成方法を適用することによって調製可能である。
【0040】
【化7】

【0041】
スキーム1においては、酸塩化物4(例えば3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド)をCH2Cl2中でRa−OH(例えばフェノール、イソプロピルアルコール、メタノールなど)、ピリジン又はトリエチルアミン(TEA)及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)と反応させ、エステル6(例えば3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸フェニルエステル)を生成する。Ra−OHは、適切なあらゆるアルコールであり得、ここでRaは、カルボキシル基を防護し塩基加水分解によってその後除去され得るC1−C4アルキル、フェニル、ベンジル、イソプロピル、メチルなどである。構造式4の酸塩化物は、当該技術分野において周知である方法を用いて合成され得る(例えば、Pakray 及びCastle(1986)J. Heterocyclic Chem. 23:1571−1577;Boschelli et al.(1995)J. Med, Chem. 38:4597−4614;Cormor et al. (1992)J. Med. Chem. 35:958−965を参照のこと)。
【0042】
エステル6を次に、トリフルオロ酢酸(TFA)、CH2Cl2及び過酸化水素(H22)を用いて1−オキソ−ベンゾ[b]チオフェン化合物8(例えば3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−1−オキソ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル)に酸化させる。THF中のアルキルリチウム(例えばn−ブチルリチウム)で処理した10(R1−L−OH)の溶液を次にTHF中の8の溶液に添加して3−置換−ベンゾ[b]チオフェン12(5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−1−オキソ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル)を生成する。R1及びLは本書で定義される通りである。テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オル、シクロペンタノール、シクロヘキシル−メタノール及び(3,5−ジメチル−シクロヘキシル)−メタノールを含む(ただし、これらに制限されるわけではない)さまざまなR1−L−OH化合物を使用することができる。
【0043】
アセトニトリル中の12をヨウ化ナトリウム(NaI)とそれに続くクロロトリメチルシラン(TMSCI)で処理して、14(例えば5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル))を得る。その後、14をMeOHとTHF、ジオキサンと水又はメタノールと水の溶液中でLiOH又はNaOHといった無機塩基でケン化して16(例えば5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸)を得る。カルボン酸16を次に、THF(テトラヒドロフラン)といった非プロトン性溶媒中のカルボニルジイミダゾール(CDI)で処理し、続いて5−アミノテトラゾールを添加してカルボキサミト18(例えば5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド))を得る。
【0044】
代替的には、無水CH2Cl2中の16は、触媒量のDMFとそれに続く塩化オキサリルで処理できる。その後アセトニトリルをこの混合物に添加し、5−アミノテトラゾール及びトリエチルアミンを添加して18を得る。
【0045】
【化8】

【0046】
スキーム2においては、PS−トリフェニルホスフィン(ポリスチレン−トリフェニルホスフィン)を窒素ガス下でTHF中の20(例えば3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル)の溶液に添加する。ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)を添加し、次にRb−OHを添加して22(例えば3−シクロプロピルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル)を得る。3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルといったような化合物は、米国特許第3,954,748号明細書中に記述された方法によって調製可能である。Rb−OHは、LがC1−C4アルキレン又はC1−C4−アルキレン−C(O)−でありR1が本書で定義した値のうちのいずれか1つを有する、構造式R1−L−OHの化合物である。Rb−OHの例には、2−シクロプロピル−エタノール、(2,2−ジクロロ−シクロプロピル)−メタノール、シクロヘキシル−メタノール、及びテトラヒドロ−フラン−3−オールが含まれるが、これらに制限されるわけではない。
【0047】
メタノール中のエステル22を水酸化カリウムといったような無機塩基を用いて加水分解して対応するカルボン酸24(例えば、3−シクロプロピルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸)を得る。スキーム1中の16から18への変換と類似の要領で、24をカルボキサミド26(例えば3−(2−シクロプロピル−エトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド)へと転換させる。
【0048】
【化9】

【0049】
スキーム3では、構造式39の固相合成が描写されている。DMFといった溶媒中での20(例えば、3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−3−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル;Connor et al. (1992) J. Med. Chem. 35:958−965))の溶液を、水素化カリウムは水素化ナトリウムといった水素化物で処理し、その後MEM−Cl(2−メトキシエトキシメチルクロリド;CH3OCH2CH2OCH2−Cl)といった適切なヒドロキシル保護基試薬を添加して化合物31(例えば、5,6−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−エトキシメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル)を得る。当業者であれば、2−メトキシエトキシメチル基に加えたその他のヒドロキシル保護基がスキーム3内で使用可能であることを認識するだろう(例えばGreene及びWuts,.有機合成における保護基、第2版、第2章(John Wiley&Sons, Inc,.1991)を参照のこと)。THF及び水中のエステル31を次にNaOHといった塩基で加水分解して、カルボン酸32(例えば、5,6−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−エトキシメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸)を得る。
【0050】
このときジクロロメタン中の32を、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)又はシンクロヘキシルカルボジイミド、及びMarshall樹脂(フェノールスルフィドポリスチレン(PS)樹脂;Marshall及びLiener(1970)J. Org. Chem. 35:867−868)との反応によって、Marshall樹脂といったような固相樹脂に接合させて、34を生成する。その後2−メトキシ−エトキシメトキシ基を、トリフルオロ酢酸といったような適切な酸を用いてジクロロメタン中の34から加水分解して重合体で担持されたアルコール35(例えば、重合体担持3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸)を生成する。
【0051】
トリフェニルホスフィン及びジエチルアジドジカルボキシレートで処理されたR1−L−OHの溶液とジクロロメタン中の35を組合わせてR1−L−置換された化合物37を生成させる。37をその後スキーム1に記述されている通りにトリエチルアミンを用いて5−アミノ−テトラゾールにカップリングさせて、39を生成させる。
【0052】
III.化合物の評価
本発明の化合物(構造式I−VIの化合物及びその薬学的に許容可能な塩)をPI3Kを阻害するその能力について検定することができる。これらの検定の例は、以下で記されており、PI3K活性のインビトロ及びインビボ検定を内含する。
【0053】
いくつかの実施形態においては、本発明の化合物は、環式ヌクレオチド依存性タンパク質キナーゼ、PDGF、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、MEKK、サイクリン依存性タンパク質キナーゼを含む(ただし、これらに制限されるわけではない)単数又は複数の酵素に比較して単数又は複数のPI13Kを選択的に阻害する。その他の実施形態においては、該発明の化合物は、もう1つのPI3Kに比べて1つのPI3Kを選択的に阻害する化合物である。例えば、いくつかの実施形態においては、本発明の化合物は、PI3Kα又はPI3Kβに比べてPI3Kγを選択的に阻害する能力を示す。1つの化合物は、第1の酵素に対する化合物のIC50が第2の化合物に対する該化合物のIC50よりも低い場合、第2の酵素に比べて第1の酵素を選択的に阻害する。IC50は例えばインビトロPI3K検定内で測定可能である。
【0054】
現在好まれている実施形態においては、本発明の化合物を、インビトロ又はインビボ検定においてPI3K活性を阻害するその能力について検定することができる(以下参照)。
【0055】
PI3K検定は、PI3K阻害化合物の存在下又は不在下で実施され、酵素活性の量は、PI3K阻害化合物の阻害活性を決定するために比較される。
【0056】
PI3K阻害化合物を含有しない試料には、100という相対的PI3K活性値が割当てられる。PI3K活性の阻害は、PI3K阻害化合物の存在下でPI3K活性が対照試料(すなわち阻害化合物無し)よりも低い場合に達成される。1つの化合物のIC50は、対照試料活性の50%を示す化合物の濃度である。いくつかの実施形態においては、本発明の化合物は約100μMより低いIC50を有する。その他の実施形態においては、本発明の化合物は約1μM以下のIC50を有する。さらにその他の実施形態においては、本発明の化合物は、約200nM以下のIC50を有する。
【0057】
PI3Kγ検定は、当該技術分野において記述されてきた(例えばLeopoldt et al. L. Biol. Chem. 1998;273:7024−7029を参照のこと)。標準的には、p101及びp110γタンパク質の複合体を含有する試料がGβ及びGγタンパク質(例えばGタンパク質β1/γ2サブユニット)と組合わされる。このとき、放射性標識されたATP(例えばγ−32P−ATP)がこの混合物に対し添加される。脂質基質は、脂質ミセルを含有するPIP2を作り上げることによって形成される。反応は次に、脂質及び酵素混合物を添加することによって開始され、H3PO4の添加により停止させられる。脂質産物はこのときガラス繊維フィルタ平板移され、H3PO4で何度か洗浄される。放射性脂質産物(PIP3)の存在は、当該技術分野において周知の放射測定方法を用いて測定可能である。
【0058】
成長因子調節済みPI3Kの活性も同様に脂質キナーゼ検定を用いて測定可能である。例えば、PI3Kαを、調節及び触媒サブユニットを含有する試料を用いて検定することができる。活性化ペプチド(例えばpYペプチド、SynPep Corp.)が放射性標識されたATPを伴う試料に対し添加される。その後、反応を開始させるため試料に対しPIP2含有脂質ミセルを添加する。反応を仕上げ、上述のPI3Kγ検定について説明した通りに分析する。細胞抽出物を使用して検定を実施することも可能である(Susa et al. J. Biol. Chem., 1992;267:22951−22956)。
【0059】
IV.薬学的に許容可能な塩及び溶媒和物
本発明において使用されるべき化合物は、水和された形態を含めた溶媒和された形態ならびに溶媒和されていない形態で存在し得る。一般に、水和された形態を含めた溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に包含される。
【0060】
本発明の化合物(例えば構造式I−VIの化合物)は、酸性付加塩及び/又は塩基性塩を含めた(ただし、これらに制限されるわけではない)両方の薬学的に許容可能な塩をさらに形成する能力をもつ。構造式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩にはその酸性付加塩及び塩基性塩(二塩を含む)が含まれる。適切な塩の例は、例えばStahi及びWermuth,.「薬用塩便覧:その特性、選択及び用途」、Wiley-VCH, Weinheim, Germany(2002);及びBerge et al.,「薬用塩」J. of Pharmaceutical Science, 1977;66:1−19の中に見られる。
【0061】
構造式I−VIの化合物の薬学的に許容可能な酸性付加塩としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸などの無機酸由来の非毒性塩、ならびに脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などといった有機酸由来の塩が含まれる。かくして、かかる塩には、構造式I−VIの化合物の酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩(ベンゼンスルホン酸塩)、重炭酸線塩/炭酸塩、重硫酸塩、カプリル酸塩、カンシル酸塩(カンファスルホン酸塩)、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩(1,2−エタンニスルホン塩)、リン酸ニ水素塩、ジニトロ安息香酸塩、エシル酸塩(エタンスルホン酸塩)、フマル酸塩、グルセプタート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩化水素酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ホウ化水素酸/ホウ化物、イソ酪酸塩、リン酸一水素塩、イセチオン酸塩、D−乳酸塩、L−乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩(メタンスルホン酸塩)、メタリン酸塩、メチル安息香酸塩、メチル硫酸塩、2−ナプシル酸塩(2−ナフタレン硫酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、オキサル酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、ピロリン酸塩、ピロ硫酸塩、サッカリン酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、D−酒石酸塩、L−酒石酸塩、トシル酸塩(トルエンスルホン酸塩)、及びキシナホ酸塩が含まれる。同様に考慮されているのは、アルギン酸塩、グルコン酸塩、ガラクツロン酸塩などといったようなアミノ酸の塩である。
【0062】
塩基性化合物の酸性付加塩は、遊離塩基形態を、従来の要領で塩を産生するのに充分な量の所望の酸と接触させることによって調製される。遊離塩基形態は、塩基と塩形態を接触させ、遊離塩基を従来の要領で単離することによって再生できる。遊離塩基形態は、極性溶媒中の可溶性といったような或る種の物理的特性において、幾分かそのそれぞれの塩形態と異なっているが、その他の点では塩は、本発明の目的のためそのそれぞれの遊離塩基と等価である。
【0063】
薬学的に許容可能な塩基付加塩は、アルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物又は有機アミンのものといったように、金属又はアミンと共に形成される。カチオンとして使用される金属の例としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなどがある。適切なアミンの例としては、アルギニン、コリン、クロロプロカイン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジオールアミン、エチレンジアミン(エタン−1,2−ジアミン)グリシン、リジン、メグルミンン、N−メチルグルカミン、オラミン、プロカイン(ベンザチン)、及びトロメタミンが含まれる。
【0064】
酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸形態を、従来の要領で塩を産生するのに充分な量の所望の塩基と接触させることによって調製される。遊離酸形態は、酸と塩形態と接触させ、遊離酸を従来の要領で単離することによって再生できる。遊離酸形態は、極性溶媒中の可溶性といったような或る種の物理的特性において、幾分かそのそれぞれの塩形態と異なっているが、その他の点では塩は、本発明の目的のためそのそれぞれの遊離酸と等価である。
【0065】
V.医薬組成物及び投与方法
本発明は、同様に、治療上有効な量の構造式I−VIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩とそのための薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物をも提供する。「医薬組成物」という語句は、医療又は獣医学的用途において投与するのに適した組成物に関する。「治療上有効な量」という語句は、単独で投与したとき又はもう1つの薬学的作用物質又は治療と併用して特定の対象又は対象集団に投与された場合に治療される障害又は身体条件を阻害、停止するか又はその改善を可能にするのに充分な量を意味する。例えば、ヒト又はその他の哺乳動物においては、実験室又は臨床的環境内で実験的に治療上有効な量を決定することができる。そうでなければ治療されつつある特定の疾病及び対象について米国食品医薬品局又はそれと同等の外国の政府機関の指針により要求されている量であり得る。
【0066】
適切な剤形、投薬量及び投与経路の決定が薬学及び医学の当業者のレベル範囲内に入ることを認識すべきであり、これについて以下で記述する。
【0067】
本発明の化合物は、シロップ、エリキシル剤、懸濁液、粉末、グラニュール、錠剤、カプセル、薬用キャンデー、トローチ、水溶液、クリーム、軟こう、ローション、ジェル、エマルジョンなどの形をした医薬組成物として処方可能である。好ましくは、本発明の化合物は、定量的又は定性的に測定されるようなPI3K媒介型障害に付随する症候又は疾病のしるしの低減をひき起こすことになる。
【0068】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するためには、薬学的に許容可能な担体は固体又は液体のいずれかであり得る。固体形態の調製物としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ剤、座薬及び分散顆粒が含まれる。固体担体は、希釈剤、着香剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤又はカプセル化材料としても作用し得る単数又は複数の物質であり得る。
【0069】
粉末中では、担体は細かく分割された活性成物との混合物内にある細かく分割された固体である。錠剤中では、活性成分は、適切な割合で必要な結合特性をもつ担体と混合されており、又所望の形状及びサイズで圧密されている。
【0070】
粉末及び錠剤は、1%〜95%(w/w)の活性化合物を含有している。いくつかの実施形態においては、活性化合物は5%〜70%(w/w)の範囲内にある。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、でんぷん、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ろう、カカオバター、などである。「調製物」という用語は、その他の担体を伴うか又は伴わない活性成分が担体によってとり囲まれかくしてそれと会合した状態となっているカプセルを提供する、担体としてのカプセル化材料を伴う活性化合物の処方を含むように意図されている。同様にしてカシェ剤及び薬用キャンデーも含まれる。錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤及び薬用キャンデーは、経口投与に適した固体剤形として使用可能である。
【0071】
座薬を調製するためには、脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物といったような低融点ろうがまず第1に融解させられ、活性成分は攪拌などによってその中で均質に分散させられる。融解した均質な混合物は次に適切な標準サイズの金型内に注ぎ込まれ、冷却させられ、かくして凝固させられる。
【0072】
液体形態の調製物は、溶液、懸濁液及びエマルジョン、例えば水又は水/プロピレングリコール溶液を含む。非経口注射のためには、液体調製物を、水性ポリエチレングリコール溶液中に溶解した状態で処方することができる。
【0073】
経口用途に適した水溶液は、水中に活性成分を溶解させ望まれる通り適切な着色剤、着香剤、安定化剤及び増粘剤を添加することによって調製可能である。経口用途に適した水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその他の周知の懸濁剤といった粘性材料と共に水中で細かく分割して活性成分を分散させることによって作ることができる。
【0074】
同じく内含されているのは、経口投与のための液体形態の調製物へと使用の直前に転換されるように意図されている固体形態である。かかる液体形態には、溶液、懸濁液及びエマルジョンが含まれる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色料、着香剤、安定化剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有し得る。
【0075】
医薬調製物は好ましくは単位剤形の形をしている。このような形態では、調製物は、適切な数量の活性成分を含有する単位用量へと細分される。単位剤形は、包装された調製物であり得、該包装には、パック入り錠剤、カプセル及び小びん又はアンプル入りの粉末といったように個別的数量の調製物が入っている。同様に、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ剤又は薬用キャンデーそのものであり得、そうでなければ、それは、適切な個数の包装された形態をしたこれらのいずれかであり得る。
【0076】
単位用量調製物中の活性成分の数量は、該活性成分の特定の利用分野及び効力に従って、0.1mg〜1000mg、好ましくは1.0mg〜100mg又は1%〜95%(w/w)の単位用量で変動され得又は調整され得る。組成物は、望ましい場合、その他の相容性ある治療剤をも含有し得る。
【0077】
薬学的に許容可能な担体は一部には、投与されている特定の組成物ならびに該組成物を投与するのに用いられる特定の方法によって決定される。従って、本発明の医薬組成物の適切な処方は多種多様に存在する。(例えばRemington:薬学の科学と実践、第20版、Gennaro et al. Eds. Lippincott Williams及びWilkins,2000を参照のこと)。
【0078】
その他の適切な成分と組合せた形又は単独で、本発明の化合物を、吸入を介して投与すべきエアゾル処方(すなわち「噴霧」可能)の形で作ることができる。エアゾル処方は、ジクロロジフルオロメタンプロパン窒素などといった加圧された許容可能な高圧ガス中に収容することができる。
【0079】
例えば静脈内、筋内、皮内及び皮下経路などによる非経口投与に適した処方には、該処方を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質及び酸化防止剤、緩衝液静菌剤を含有しうる水性及び非水性の等張無菌注射溶液、及び懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び防腐剤を内含し得る水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。本発明の実施形態においては、組成物は、例えば静脈内輸液によってか経口、局所、腹腔内、膀胱腔内又は髄腔内で投与可能である。化合物の処方は、アンプル及び小びんといったような単位用量又は多重用量密封容器内に入った体裁をとることができる。注射溶液及び懸濁液は、前述した種類の無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製可能である。
【0080】
本発明の状況下で対象に対し投与される用量は、経時的に対象の体内での有利な治療的応答に影響を及ぼすのに充分なものであるべきである。「対象」という用語は、哺乳動物類の成員を意味する。哺乳動物の例としては、制限的意味なく、ヒト、霊長類、チンパンジー、ゲッ歯類、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、家畜、イヌ、ネコ、ヒツジ及び乳牛が含まれる。
【0081】
用量は、利用される特定の化合物の効能及び対象の身体条件、ならびに治療されるべき対象の体重又は表面積によって決定されることになる。用量の規模は、特定の対象における特定の化合物の投与に随伴する何らかの不利な副作用の存在、内容及び範囲によっても決定されることになる。治療されている障害の処置又は予防において投与されるべき化合物の有効量を決定する上で、医師は、化合物の循環血漿レベル、化合物毒性及び/又は疾病の進行などといったような要因を評価することができる。一般に、化合物の用量当量は、標準的対象について約1μg/kg〜100mg/kgである。数多くの異なる投与方法が当業者にとって既知である。
【0082】
投与については、本発明の化合物を、そのLD50、該化合物の薬物動態プロフィール、禁忌薬物及び対象の質量及び全身的健康に適用されるようなさまざまな濃度での化合物の副作用を含みうる(ただし、これらに制限されるわけではない)要因によって決定される割合で投与することができる。投与は、単回用量又は分割用量で達成可能である。
標準的錠剤、非経口及びパッチ処方の例としては、以下のものが含まれる:
【0083】
【表1】

【0084】
本発明の化合物(例えば構造式I−VIの化合物又はその薬学的に許容可能な塩)は、ラクトース及びコーンスターチ(混合物用)と混合され、均質な粉末になるまで混和され得る。コーンスターチ(ペースト用)を6mLの水中に懸濁させ、攪拌しながら加熱してペーストを形成する。混合した粉末に該ペーストを加え、混合物を造粒する。湿潤顆粒を8番の硬質スクリーンに適し、50℃で乾燥させる。1%のステアリン酸マグネシウムで混合物を潤滑化し、錠剤圧へと圧密する。錠剤を、PI3K媒介型障害又は身体条件の治療のために毎日1〜4回の割合で患者に投与する。
【0085】
非経口溶液処方例1
700mLのプロピレングリコール及び200mLの注射用水の溶液中に、20.0gの本発明の化合物を添加することができる。混合物を攪拌し、pHを塩酸で5.5まで調整する。注射用水で1000mLに体積を調整する。溶液を滅菌し、各々2.0mL(40mgの発明化合物)を収容する5.0mL入りアンプル内に充てんする。PI3媒介型障害又は身体条件を患い治療を必要とする対象に対して、注射により溶液を投与する。
【0086】
パッチ処方例1
本発明の化合物10ミリグラムを、1mLのプロピレングリコール及び樹脂架橋剤を含有する2mgのアクリルベースの重合体接着剤と混合することができる。該混合物を、不浸透性裏張り(30cm2)に塗布し、PI3媒介型障害又は身体条件の持続放出治療のために患者の上背部に適用する。
【0087】
VI.PI3媒介型障害又は身体条件の治療方法
本発明の化合物及びそれを含む医薬組成物をPI3媒介型障害又は身体条件を患う対象に投与することができる。PI3媒介型障害及び身体条件は、該障害又は身体条件の性質によって、本発明の化合物を用いて予防的に、急性的に及び慢性的に治療できる。標準的には、これらの方法の各々における宿主又は対象はヒトであるが、その他の哺乳動物も本発明の化合物の投与の利益を享受することができる。
【0088】
本発明の化合物は、多種多様な経口及び非経口剤形で調製し投与することができる。「投与」という用語は、1個の対象と化合物を接触させる方法を意味する。かくして、本発明は、注射、すなわち静脈内、筋内、皮内、皮下、十二指腸内、腸管外、及び腹腔内注入により投与できる。同様に、本書に記述された化合物を、例えば鼻腔内で吸入により投与することが可能である。さらに、本発明の化合物は、経皮的に、局所的に、移植を介して、経皮的に、局所的に及び移植を介して投与することもできる。いくつかの実施形態においては、本発明の化合物は、経口的に送達される。化合物は同様に、直腸内、口腔内、膣内、眼内、andially又は吸気で送達することもできる。
【0089】
該発明の薬学的方法において利用される化合物は、毎日約0.001mg/kg〜約100mg/kgの初期投薬量で投与され得る。いくつかの実施形態においては、日用量は約0.1mg/kg〜約10mg/kgである。しかしながら投薬量は、対象の必要条件、治療される身体条件の重度及び利用されている化合物に応じて変動し得る。特定の状況のための適切な投薬量の決定は、施術者の技量の範囲内である。一般に治療は、該化合物の最適用量よりも少ない比較的少ない投薬量で開始される。その後、周囲の状況下で最適な効果が達成されるまで少増分だけ増加させられる。便宜上、望ましい場合には、合計一日投薬量を分割して、一日の間に分量の形で投与することもできる。「治療(処置)」という用語は、治療されている障害に付随するか又はそれによってひき起こされる少なくとも1つの症候又は特徴の急性、慢性又は予防的減少又は緩和を含んでいる。例えば、治療には、1つの障害の複数の症候の減少、障害の病的進行の阻害又は障害の根絶が含まれ得る。本発明の化合物は、対象に同時投与することができる。「同時投与される」という用語は、同じ医薬組成物又は別々の医薬組成物の中に組合せることにより対象に投与される2つ以上の異なる薬学作用物質又は治療(例えば放射線治療)の投与を意味する。かくして、同時投与には、2つ以上の薬学的作用物質を含む単一の医薬組成物の同時投与又は同じ又は異なる時点での同じ対象に対する2つ以上の異なる組成物の投与が関与している。例えば、午前8時に本発明の化合物を含む第1の投薬量の投与を受け同じ日の1〜12時間後、例えば午後6時にCELEBREX(登録商標)の投与を受ける対象は、本発明の化合物及びCELEBREX(登録商標)の同時投与を受けたことになる。代替的には、例えば、対象に本発明の化合物及びCELEBREX(登録商標)を含む単一投薬量を午前8時に投与することもでき、該対象は本発明の化合物とCELEBREX(登録商標)の同時投与を受けたことになる。
【0090】
かくして、本発明の化合物は同様に、癌の治療に有用である化合物の同時投与を受けることもできる(例えば細胞毒性薬物例えばTAXOL(登録商標)、タキソテール、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ)、アドリアマイシン、ダウノマイシン、シスプラチン、エトポシド、ビンカアルカロイド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、メトトレキセート、又はアドリアマイシン、ダウノマイシン、シス−プラチナム、エトプシド及びアルカロイド、例えばビンクリスチン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質、エンドスタチン及びアンギオスタチン、VEGF阻害物質及びメトトレキセートTといった代謝拮抗物質)。本発明の化合物は同様にタキサン誘導体、白金配位複合体、ヌクレオシド類似体、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害物質、又はアロマターゼ阻害物質との組合せの形で使用することもできる。)癌治療のためには本発明の化合物と放射線治療を同時投与することもできる。
【0091】
該発明の化合物は、血栓溶解性疾患、心臓疾患、卒中などの治療に有用である化合物(例えばアスピリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化剤、ウロキナーゼ、抗凝血剤、抗血小板薬(例えばPLAVLX(登録商標);硫酸クロピドグレル)、スタチン(例えばLIPITOR(アトルパスタチンカルシウム)、ZOCOR(登録商標)(シンパスタチン)、CRESTOR)(登録商標)(ロスバスタチン)など)、ベータ遮断薬(例えばアテノロール)、NORVASC(登録商標)(ベシル酸アムロジピン)及びACE阻害物質(例えばAccupril(登録商標)(キナプリルヒドロクロリド)、リシノプリルなど)と同時投与することもできる。
【0092】
本発明の化合物は同様に、高血圧の治療のための、ACE阻害物質、スタチン、LIPITOR(登録商標)(アトルバスタチンカルシウム)などの高脂血症治療薬、NORVASC(登録商標)(ベシル酸アムロジピン)などのカルシウムチャネル遮断薬といった化合物と同時投与することもできる。本発明の化合物は、フィブラート、ベータ遮断薬、NEPI阻害物質、アンギオテンシン−2−レセプタアンタゴニスト及び血小板凝集阻害物質と組合せて使用することもできる。
【0093】
関節リウマチを含む炎症性疾患の治療のためには、該発明の化合物を、TNF−α 阻害物質例えば抗−TNFαモノクローナル抗体(例えばREMICADE(登録商標)、CDP−870及びHUMIRATM(アダリムマブ)及びTNFレセプタ−免疫グロブリン融合分子(例えばENBREL(登録商標))、IL−1阻害物質、レセプタアンタゴニスト又は可溶性IL−1Rα(例えばKINERETTM又はICE阻害物質)、非ステロイド系抗炎症性作用物質(NSAIDS)、ピロキシカム、ジクロフェナク、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、 イブプロフェン、フェナマート、メフェナム酸、インドメタシン、スリンダック、アパゾン、ピラゾロン、フェニルブタゾン、アスピリン、COX−2阻害物質(例えばCELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)、VIOXXO(登録商標)(ロフェコキシブ)、BEXTRA(登録商標)(バルデコキシブ)及びエトリコキシブ、金属プロテアーゼ阻害物質(好ましくはMMP−13選択的阻害物質)、NEUROTIN(登録商標)、プレガバリン、低用量メトトレキセート、レフルノミド、ヒドロキシクロロキン、d−ペニシラミン、オーラノフィン或は非経口又は経口金といった作用物質と同時投与することができる。
【0094】
該発明の化合物は、骨関節炎の治療のための既存の治療薬と同時投与され得る。組合せた形で使用されるべき適切な作用物質には、標準的非ステロイド系抗炎症剤(以下NSAIDと呼ぶ)例えばピロキシカム、ジクロフェナク、例えばナプロキセン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン及びイブプロフェンなどのプロピオン酸、フェナマート例えばメフェナム酸、インドメタシン、スリンダック、アパゾン、フェニルブタゾンなどのピラゾロン、アスピリンなどのサリチル酸塩、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ及びエトリコキシブなどのCOX−2阻害物質、鎮痛薬及び関節内療法例えばコルチコステロイド、及びヒアルガン及びシンビスクといったヒアルロン酸が含まれる。
【0095】
該発明の化合物は同様に、ヴィラセプト、AZT、アシクロビル及びファムシクロビルといった抗ウイルス剤及びヴァラントといった防腐処理化合物と共に同時投与することもできる。
【0096】
本発明の化合物はさらに、CNS作用物質例えば抗うつ剤(例えばセルトラリン)、パーキンソン病治療薬(例えばデプレニル、L−ドーパ、Requip、Mirapex、セレギン及びラサギリンなどのMAOB阻害物質、TasmarなどのcomP阻害物質、A−2阻害物質、ドーパミン再摂取阻害物質、NMDAアンタゴニスト、ニコチンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト及び神経型一酸化窒素シンターゼの阻害物質)、及びアルツハイマー病治療薬例えばドネペジル、タクリン、NEUROTIN(登録商標)、プレガバリン、COX−2阻害物質、プロペントフィリン又はメトリフォナートと共に同時投与可能である。
【0097】
本発明の化合物は、さらに、骨粗鬆症剤例えばEVISTA(登録商標)(塩酸ラロキシフェン)ドロロキシフェン、ラソフォキシフェン又はフォソマックス及びFK−506及びラパマイシンなどの免疫用抑制剤と共に同時投与できる。
【実施例】
【0098】
実施例
【表2】

【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
中間体1. 3−メトキン−4−メチル桂皮酸。3−(3−メトキン−4−メチル−フェニル)アクリル酸出発材料を、以下の反応に従って調製した。すなわち、ピペリジン(6mL)及びピリジン(200mL)の混合物中のマロン酸(27.2g、206mmol)と共に2.5時間、3−メトキン−4−メチルベンズアルデヒド(20.0mL、137mmol)を還流させた。混合物を2分の1体積まで濃縮させた。H2O(約20mL)及び1NのHCl(約6mL)を添加して固体沈殿物を得た。固体をろ過し、1NのHCl次にH2Oで洗い流し、その後、真空内で乾燥させて表題生成物を定量的収量で得た。
【化10】

【0102】
中間体2. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボニルクロリド。還流凝縮器を備えたアルゴンでパージ済みの丸底フラスコの中で、ピリジン(0.39mL)、DMF(3.51mL)及びクロロベンゼン(60mL)の混合物中で3−メトキン−4−メチル桂皮酸(9.18g、47.8mmol)を溶解させた。注射器を介して混合物に対し、塩化チオニル(17.8mL、244mmol)を添加した。反応を攪拌し、18時間勢いの良い還流に至るまで加熱した。反応を室温まで冷却させ、次に真空下で濃縮した。CH2Cl2(約40mL)中で残渣を溶解させ、次に余剰のヘキサンで希釈した。希釈物を約2分の1体積まで濃縮して沈殿物を得た。固体沈殿物をろ過し、収集し、真空下で乾燥させて表題生成物(8.49g、32.9mmol、69%)を灰褐色のフワフワの固体として得た。
【0103】
中間体3. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル。1時間80℃で中間体2(15.0g、54.7mmol)をイソプロパノール(70mL)中のトリエチルアミン(15.2mL)及び触媒4−ジメチルアミノピリジンと共に攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、水で希釈した。希釈物を、酢酸エチルで数回抽出した。有機抽出物を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、セライトを通してろ過し、真空下で濃縮して褐色のろう状固体を得、これを直ちにさらなる精製無く維持した。
【0104】
中間体4. 3−クロロ−5−メトキシ−6−メチル−1−オキソ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル。CH2Cl2(55mL)及びトリフルオロ酢酸(55mL)中の中間体3(16.3g、54.7mmol)の0℃の攪拌溶液に対して、注射器を介して30%のH22水(7.43mL、65.6mmol)を滴下にて添加した。反応を15分間0℃で攪拌し、その後2時間、室温で攪拌した。混合物を0℃まで再び冷やし、その後0℃の飽和した重亜硫酸ナトリウム水溶液に滴下により添加した。急冷した混合物をEtOAcで数回抽出した。抽出物を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、濃縮させた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(EtOAc/ヘキサン(1:4、次に2:3))により精製して、表題生成物(16.753g、53.4mmol、97%)を固体として得た。MS:M+1=315.0(APCI)。
【0105】
中間体5. 5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸イソプロピルエステル。無水THF(4.5mL)中のテトラヒドロ−4H−ピラン−4−オール(0.167mL、1.75mmol)の−78℃溶液に対して、n−ブチルリチウム(ヘキサン中1.6N、1.31mL、2.1mmol)を添加した。2分間−78℃で反応を攪拌し、次に、室温に暖まるまで放置した。該溶液を無水THF(4.5mL)中の中間体4(0.500g、1.59mmol)の攪拌溶液に滴下によって加えた。反応を5分間、室温で攪拌し、その後、クロロトリメチルシラン(0.563mL、4.77mL)及びヨウ化ナトリウム(0.715g、4.77mmol)を添加した。該反応を室温で10分間攪拌し、その後、飽和チオ硫酸ナトリウム水で急冷させた。急冷した混合物をH2Oで希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。有機抽出物を塩水で洗浄し、セライトを通してろ過し、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(0から20%のEtOAc−ヘキサン勾配溶出)により生成物を精製して表題生成物(0.314g、54%の収量)を固体として得た。MS:M+1=365.3(APCI)。
【0106】
中間体6. 5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸。1時間70℃で、中間体5(0.310g、0.852mmol)を10%の水性LiOH(1.6mL)及びジオキサン(2.4mL)と共に攪拌した。混合物を飽和重炭酸ナトリウム水で希釈し、ジエチルエーテルで2回洗浄した。水性分量を1NのHClで酸性化した。酸性化した水性分量を次にEtOAcで数回抽出した。有機抽出物を塩水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、セライトを通してろ過し、濃縮して表題生成物を得た。
【0107】
実施例1. 5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド。以下の条件下で最終段階のアミノテトラゾルカップリングを実施した。中間体6(0.183g、0.568mmol)を、アルゴンパージ済みフラスコ内で無水CH2Cl2(2.8mL)の中に溶解させた。DMFとそれに続く塩化オキサリル(0.054mL、0.625mmol)の触媒液滴を注射器を介して添加した。5分間室温で反応を攪拌した。アセトニトリル(2.8mL)と次に5−アミノテトラゾル(0.097g、1.14mmol)及びトリエチルアミン(0.159mL、1.14mmol)を添加した。反応を20分間還流で攪拌し、次に室温で冷却させた。反応を、固体が沈殿するまで、H2Oで希釈し1NのHClで酸性化した。固体をろ過し、H2Oで洗い流した。ろ過ケーキを最小MeOH中でスラリー化させ、再度ろ過し、真空下で乾燥させて表題生成物(0.192g、0.494mmol、87%の収量)を得た。MS:M+1=390.1(APCI)。計算上の微量分析(C171954S):C−52.43、H−4.92、N−17.98、実際値C−52.53、H−4.72、N−17.92。
【0108】
実施例2〜18は、テトラヒドロ−4H−ピラン−4−オールの代りに適切に置換したアルコールを用いることによって、例1と類似の要領で合成された。
【0109】
実施例2. 5−メトキシ−6−メチル−3−(3−メチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0110】
実施例3. 5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0111】
実施例4. 5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0112】
実施例5. 3−(3,3−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0113】
実施例6. 3−シクロヘキシルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0114】
実施例7. 5−メトキシ−6−メチル−3−(3−メチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0115】
実施例8. 3−シクロヘプチルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0116】
実施例9. 3−(1−ベンジル−ピペラジン−4−イルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0117】
実施例10. 5−メトキシ−6−メチル−3−(ピペリジン−3−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル−アミド
【0118】
実施例11. 3−(1−シクロヘキシル−ピペルジン−4−イルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル−アミド)
【0119】
実施例12. 5−メトキシ−6−メチル−3−(ピペラジニル−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0120】
実施例13. 3−(1−アセチル−ピペラジン−3−イルオキシ)−5−メチオキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0121】
実施例14. 3−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2Hテトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ−ピペルジン−1−カルボン酸−tert−ブチルエステル
【0122】
実施例15. 3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b}チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)アミド
【0123】
実施例16. 3−(1−アセチル−ピペラジン−4−イルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0124】
実施例17. 4−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2H−テトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル.
【0125】
実施例18. 5−メトキシ−6−メチル−3−(1−メチル−シクロプロピルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0126】
【表5】

【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
中間体7. 3−(2−シクロプロピル−エチル)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル。2下でTHF(25mL)中の3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(1.53g、5.70mmol)(米国特許第3,954,748号に記述されているように調製されたもの)の0℃溶液に対して、トリフェニルホスフィン(1.53g、5.83mmol)及びジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)(0.90mL、5.72mmol)を添加した。該溶液を40分間0℃で攪拌し、次に2−シクロプロピル−エタノール(0.51g、5.92mmol)を添加した。反応を10分間0℃でそして次に18時間室温で攪拌した。反応混合物を真空下で濃縮した。結果として得た油を1時間室温で最小限のジエチルエーテル中でスラリー化して白色個体沈殿物を得た。混合物をろ過させた。母液を濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィ(酢酸エチル−ヘキサン(10%−15%−20%))により精製して薄紫色固体として表題生成物(1.17g、3.48mmol、61%)を得た。
【0130】
中間体8. 3−(2−シクロプロピル−エチル)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸。THF(5ml)中の中間体7(1.16g、3.45mmol)の溶液に対して、1MのNaOH(5mL)を添加した。反応混合物を還流まで加熱し一晩攪拌した。室温まで冷却した後、溶液を、1NのHClで酸性化し、次に余剰水で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル抽出物をMgSO4上で乾燥させ、ろ過し、白色固体として表題化合物(1.00g、3.11mmol、90%)になるまで真空下で濃縮させた。
【0131】
実施例19. 3−(2−シクロプロピル−エトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド。THF(5mL)中の中間体8の攪拌溶液に対して、第1のDMF(1滴)を、そして次に塩化オキサリル(0.18mL、2.06mmol)を添加した。室温で2.3時間、反応を攪拌し、次に真空下で濃縮させて黄色固体を得た。THF(5mL)中で固体を再度溶解させ、これに対し次に5−アミノテトラゾール(0.107g、1.25mmol)及びトリエチルアミン(0.351mL、2.53mmol)を添加した。20時間室温で、そして次に50℃で23時間、反応を攪拌した。混合物を水で希釈し、結果として得られる固体をろ過し、エタノールで洗い流して固体として表題化合物(0.174g、0.447mmol、44%)を得た。
【0132】
2−シクロプロピル−エタノールに代って適切に置換されたアルコールを用いることにより、実施例19と類似の要領で実施例20〜36の表題化合物を合成した。
【0133】
実施例20. 3−(2,2−ジクロロ−シクロプロピルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0134】
実施例21. 3−シクロヘキシルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0135】
実施例22. 3−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0136】
実施例23. 3−(4−tert−ブチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0137】
実施例24. 3−(3,5−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0138】
実施例25. 5,6−ジメトキシ−3−(3−メチル−オキセタン−3−イルメチルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0139】
実施例26. 5,6−ジメトキシ−3−(2−メチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0140】
実施例27. 5,6−ジメトキシ−3−(テトラヒドロ−フラン−3−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0141】
実施例28. 3−(3−エチル−オキセタン−3−イルメトキシ)−5,6ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0142】
実施例29. 5,6ジメトキシ−3−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0143】
実施例30. 3−(ビシクロヘキシル−4−イルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0144】
実施例31. 5,6−ジメトキシ−3−(3−メチル−シクロペンチルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0145】
実施例32. 3−(シクロヘキシ3−エニルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0146】
実施例33. 3−シクロオクチルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0147】
実施例34. 3−(3,5−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0148】
実施例35. 3−シクロプロピルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0149】
実施例36. 3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0150】
実施例37〜50
【化11】

【0151】
【表8】

【0152】
【表9】

【0153】
中間体9. 5,6−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−エトキシメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル。THF(300mL)中の3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−3−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル(10g、37.3mmol、Conner et al. (1992)J. Med. Chem. 35:958−965)の溶液をNaH(60%の油分散、1.56g、39.1mmol)で分量毎に処理し、30分間攪拌した。MEM−Cl(4.6mL、41.0mmol)を添加し、混合物を18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル中で溶解させた。溶液をNaOH(1N)、塩水で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で溶媒をろ過した。高温酢酸エチルからの再結晶化により、表題生成物が得られた(8.8g、66%)。
【化12】

【0154】
中間体10. 5,6−ジメトキシ−3−(2−メトキシ−エトキシメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸。中間体9(8.8g、24.7mmol)、THF(100mL)、水(90mL)及びNaOH(1N、61mL、60.1mmol)の溶液を3時間50℃まで加熱した。THFを減圧下で除去し、HClを最終pH=3.5となるまで添加した。化合物をろ過により回収して表題生成物(6.5g、76%)を得た。
【化13】

【0155】
中間体11. 重合体担持3−ヒドロキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸。中間体10(6.5g、19mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド(3.12mL、19.9mmol)及びジクロロメタン(70mL)を30分間攪拌した。溶液をMarshall樹脂(5.4g、1.4mmol/g;Marshall 及びLiener(1970)J. Org. Chem.35:867−868)、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)(0.92g、7.0mmol)及びジクロロメタンの入った振とうフラスコに添加した。反応を18時間穏やかに振とうした。樹脂をろ過により除去し、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド(DMF)及びヘキサンで洗浄し、減圧下で乾燥させて8.8gを得た。樹脂をジクロロメタン(90mL)及びトリフルオロ酢酸(30mL)で3時間処理した。ろ過により樹脂を除去し、ジクロロメタン、DMF、メタノール、ジクロロメタン及びヘキサンで洗浄した。樹脂を7.1g(100%)(理論値7.1g)という恒常の重量まで乾燥させて、表題化合物を得た。
【0156】
実施例37〜50を以下の要領で合成した。中間体11をIrori Maxi缶(1缶あたり約250mgの樹脂)内に入れ、20mL入りのガラス広口びん内に置き、ジクロロメタン(4mL)で処理した。缶を10分間振とうし、溶媒をドレンし、再度ジクロロメタン(3ml)で処理した。ジクロロメタン中の所望のアルコールR1−L−OH(4.2ml、0.71M)溶液を、トリフェニルホスフィン/ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)溶液(5.0mL、0.599Mのトリフェニルホスフィン/DEAD)で処理し、20分間攪拌した。所望の広口びんに対してそれぞれのR1−L−OH/トリフェニルホスフィン/DEAD溶液(5mL)を加えた。缶をそのふた付き広口びんの中で4時間振とうし、試薬を吸引により除去した。缶をジクロロメタン(4ml)で2回、DMF(4ml)で2回、ジクロロメタン(4ml)で2回そして次にヘキサン(4mL)で2回洗浄した。缶を真空オーブン内で0.5時間減圧下で乾燥させた。上述の反応及びその後の洗浄を、それぞれの樹脂結合済み基質及びR1−L−OHの各々についてさらに2回実施した。各反応に対し、THF(1.5ml)、アセトニトリル(3ml)、5−アミノ−テトラゾール(0.089g、1.05mmol)、及びトリエチルアミン(TEA)(0.097mL、0.7mmol)を添加した。広口びんにフタをし、20時間70℃まで加熱した。溶液を個々の容器に移し、樹脂をTHF(2ml)で1回、DME(1ml)で2回そして次にTHF(1ml)で一回洗浄した。洗浄液を母液と組合せ、減圧下で溶媒を除去した。逆相クロマトグラフィで表題化合物を精製するか又は、メタノール/水/トリエチルアミン/HClから再結晶化させることができる。
【0157】
実施例37. 5,6−ジメトキシ−3−(1−メチル−シクロプロピルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0158】
実施例38. 3−シクロブチルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0159】
実施例39. 3−シクロヘプチルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0160】
実施例40. 3−シクロブトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0161】
実施例41. 5,6−ジメトキシ−3−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0162】
実施例42. 3−シクロヘプチルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0163】
実施例43. 3−シクロペンチルメトキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0164】
実施例44. 3−(l−シクロヘキシル−プロポキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0165】
実施例45. 3−(3,4−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0166】
実施例46. 3−(3,5−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(1H−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0167】
実施例47. 3−(デカヒドロ−ナフタレン−2−イルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0168】
実施例48. 5,6−ジメトキシ−3−(3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0169】
実施例49. 3−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0170】
実施例50. 3−シクロペンチルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド
【0171】
実施例51
【表10】

【0172】
中間体12. 3−(3−メチル−4−メトキシ−フェニル)−アクリル酸。3−メチル−4−メチルオキシベンズアルデヒド。ピペリジン(15mL)とピリジン(400mL)の混合物中で3−メチル−4−メチルオキシベンズアルデヒド(50.0g、333mmol)をマロン酸(52.0g、500mmol)と還流させた。混合物を2分の1体積まで濃縮させた。H2O(約20mL)及び1NのHCl(約6mL)を添加して、固体沈殿物を得た。固体をろ過し、1NのHCl、次にH2Oで洗浄し、その後真空下で乾燥させて表題生成物を定量的収量で得た。
【0173】
実施例51. テトラヒドロ4H−ピラン−4−オールの代りにシクロヘキサノールを用いることによって、実施例1と類似の要領で中間体12から3−シクロヘキシルオキシ−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミドを合成した。
【0174】
生物学的実施例1
PI3Kγタンパク質発現及び精製プロトコル
ESF921培地中で成長したSpodtera frugiperda細胞をglu−タグ付けされたp101を発現するバキュロウイルス及びHA−タグ付けされたp110γを発現するバキュロウイルスを用いて、3:1のp101バキュロウイルス対p110γバキュロウイルス比率で同時感染させた。Sf9細胞を、10Lの生物反応器内で1×107の合計細胞/mLになるまで成長させ、感染から48〜72時間後に収穫した。感染した細胞の試料を次に、免疫沈降及びウェスタンブロット分析方法によりp101/p110γPI3キナーゼの発現についてテストした(以下参照)。
【0175】
PI3Kγを精製するためには、細胞ペースト1グラムにつき室温の低張溶液緩衝液(1mMのMgCl2、1mMのDTT、5mMのEGTA、1mMのPefabloc、0.5μMのアプロチニン、5μMのロイペプチン、2μMのペプスタチン、5μMのE64、pH8)4体積、を攪拌しながら凍結細胞ペレット上に注ぎ込み、その後400psiで窒素「爆弾」中で溶解させた(599HC T316,Parr Instrument Co, Moline, IL)。150mMに対してNaClを添加し、コール酸ナトリウムを1%まで付加し、さらに45分間混合した。14,000rpmで25分間、遠心分離により溶解物を清澄させた。その後、抗−glu−連結されたタンパク質Gセパファロースビーズ(Corance Research Products, Richmond, CA)全体にわたり、50gの細胞ペーストあたり20mLの樹脂を用いて、溶解物を投入した。洗浄緩衝液15体積(1mMのDTT、0.2mMのEGTA、1mMのPefabloc、0.5μMのアプロチニン、5μMのロイペプチン、2μMのペプスタチン、5μMのE64、150mMのNaCl、1%のコール酸ナトリウム、pH8)でカラムを洗浄した。PI3Kγを、gluタグの結合について競合するペプチド100μg/mLを含む洗浄緩衝液6カラム体積で溶出させた。溶出したタンパク質(OD280読取り値をとることで決定されるもの)を伴うカラム画分を収集し、0.2mMのEGTA、1mMのDTT、1mMのPefabloc、5μMのロイペプチン、0.5%のコール酸ナトリウム、150mMのNaCl及び50%のグリセロールpH8中で透析した。さらに使用するまで画分を−80℃で保管した。
【0176】
生物学的実施例2
Gタンパク質サブユニットの発現
Spodtera frugiperda細胞をglu−タグ付けされたGタンパク質β1を発現するバキュロウイルス及びGタンパク質β2を発現するバキュロウイルスを用いて、1:1のgluタグ付けGタンパク質β1バキュロウイルス対Gタンパク質β2バキュロウイルス比率で同時感染させた。Sf9細胞を、10Lの生物反応器内で成長させ、感染から48〜72時間後に収穫した。感染した細胞の試料を、以下で記述する通りに、ウェスタンブロット分析方法によりGタンパク質β1/β2発現についてテストした。細胞溶解物を均質化し、生物学的例1の場合と同様にgluタグ付けされたビーズのカラム上に投入し、gluペプチドとカラムを離れて競合させ、生物学的例1に記述された通りにプロセッシングした。
【0177】
生物学的実施例3
ウェスタンブロット分析
8%のトリス−グリシンゲル上でタンパク質試料を走らせ、45μMのニトロセルロース膜に移した。その後、ブロットをTBST(50mMのトリス、200mMのNaCl、0.1%のTween20、pH7.4)中の5%のウシ血清アルブミン(BSA)及び5%のオバルブミンで、1時間室温で遮断し、0.5%のBSAを伴うTBST中で1:1000に希釈した一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。p110γ、p110α、p110β、p85α、Gタンパク質β1及びGタンパク質γ2サブユニットのための一次抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CAから購入した。p101サブユニット抗体は、p101ペプチド抗原に基づいてResearch Genetics, Inc., Huntsville, ALで開発された。
【0178】
一次抗体とのインキュベーションの後、ブロットをTBST内で洗浄し、0.5%のBSAを伴うTBST中で1:10,000に希釈されたヤギ抗ウサギHRP接合体(Bio-Rad Laboratories, Inc., Hercuies, CA製品番号170−6515)と共に室温で2時間インキュベートした。抗体をECLTM検出試薬(Amersharm Biosciences Corp., Piscataway, New Jersey)で検出し、Kodak ISO400Fスキャナ上で定量化した。
【0179】
生物学的実施例4
免疫沈降法
生物学的例1又は2からの100μLの細胞ペーストを解凍し、400μLの低張性溶解緩衝液(25mMのトリス、1mMのDTT、1mMのEDTA、1mMのPefabloc、5μMのロイペプチン、5μMのE−64(Roche)、1%のNonidet P40、pH7.5−8)400μLを用いて氷上で溶解させた。リゼイトを、gluタグ付けされたビーズ(Covance Research Products, Cambridge, England, 製品番号AFC−115P)と共に室温で2時間インキュベートした。ビーズを洗浄緩衝液(20mMのトリス、pH7.8−8、150mMのNaCl2、0.5%のNP40)中で3回洗浄し、タンパク質を2倍のサンプル緩衝液(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA, 製品番号LC1676)中での加熱によりビーズから溶出させた。
【0180】
生物学的実施例5
PI3Kγインビトロキナーゼ検定
表1中の化合物の阻害特性を、インビトロPI3K検定中で検定した。96ウェルのポリプロピレン平板内で、各ウェルを、DMSO中の所望の最終濃度の50倍の化合物の2μLでスポット処理した。各反応について精製済みの組換え型p101/p110γタンパク質(0.03μg;約2.7nM)及びGタンパク質β1/γ2サブユニット(0.09μg;最高57.7nM)を、検定緩衝液(30mMのHEPES、100mMのNaCl、1mMのEGTA、及び1mMのDTT)内で組合わせた。反応中の最終ATP濃度が20μMとなるように、この混合物に対しATP及び[γ−32P−ATP](0.09μCi)を添加した。反応中25μMのPIP2、300μMのPE、0.02%のNaコラート及び10mMのMgCl2という最終濃度を得るため、検定緩衝液中で10分間、ホスファチジルイノシトール−4.5−ジホスファート(PIP2)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びNa−コラートを音波処理し、MgCl2を加え、20分間氷上でインキュベートすることにより、脂質ミセルで形成させた。50μLの合計体積中で等しい体積の脂質及び酵素混合物を添加することによって反応を開始させ、室温で20分間実行し、100μLの75mMのH3PO4で停止させた。脂質生成物をガラス繊維のフィルタ平板に移し、75mMのH3PO4で数回洗浄した。各ウェルに対しWallac Optiphase混合物を添加し、Wallac1450Trilux平板読取り装置(PerkinElmer Life Sciences Inc., Boston, MA02118)内で計数することにより放射性脂質生成物(PIP3)の存在を測定した。テストした各化合物についてのIC50は、表1にμM単位で報告されている:
【0181】
【表11】

【0182】
【表12】

【0183】
本書で記述した例及び実施形態が、単に例示を目的としたものであることそしてそれに照らしたさまざまな修正又は変更が当業者に示唆されることになり、本出願の本質及び範囲内及び添付のクレームの範囲内に含まれるということは言うまでもない。本書に引用されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、本書にその全体が全ての目的のために参考として内含されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1):
【化1】

{式中、
− R2及びR3は、
(i)R2がメトキシでありR3がメチル又はメトキシであり、
(ii)R2がメチルでありR3がメトキシであり、
− Lが不在であるか又はC1−C4−アルキレンであり;
− R1は、C3−C8シクロアルキル、C5−C8シクロアルケニル、4〜6員のヘテロシクロアルキル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、オキセタニル、テトラヒトロフラニル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチル又はデカヒドロナフタレニルであり、
− R1は、4つのメチル、C1−C2アルキレン−6員ヘテロシクロアルキル又は
1−C4−アルキル、メチル、tert−ブチル、C(O)CH3、C(O)O−C1−C4アルキル、CH2−フェニル、C5−C6シクロアルキル、Cl、Br、F、−CF3、−OH、−OCF3及びO−C1−C6アルキル、から成るグループの中から独立して選択される1〜3個の置換基で任意に選択され得る。}で表される化合物又は薬学的に許容可能な塩。
【請求項2】
2がメトキシでありR3がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1が、テトラヒドロピラニル、C6−シクロアルキル、C7−シクロアルキル及びピペリジニルから成るグループの中から選択される任意に置換される基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
5−メトキシ−6−メチル−3−(テトラヒドロ−ピラン−4−イルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(3,3−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘキシルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5−メトキシ−6−メチル−3−(3−メチル−シクロヘキシルオキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘプチルオキシ−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2Hテトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ−ピペルジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル;
3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b}チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(1−アセチル−ピペリジン−4−イルオキシ)−5−メトキシ−6−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
4−[5−メトキシ−6−メチル−2−(2H−テトラゾル−5−イルカルバモイル)−ベンゾ[b]チオフェン−3−イルオキシ]−ピペリジン−l−カルボン酸tert−ブチルエステル;及び
5−メトキシ−6−メチル−3−(1−メチル−シクロプロピルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド、
から成るグループの中から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
2がメトキシであり、R3がメトキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1が、C3−シクロアルキル、C6−シクロアルキル、C6−シクロアルケニル及びビシクロ[2.2.1]ヘプチルから成るグループの中から選択される任意に置換される基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
3−(2,2−ジクロロ−シクロプロピルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−シクロヘキシルオキシ−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(4−tert−ブチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミド;
5,6ジメトキシ−3−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イルメトキシ)−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(シクロヘキシ3−エニルメトキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;
3−(3,5−ジメチル−シクロヘキシルオキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド;及び
3−(3−シクロヘキシル−プロポキシ)−5,6−ジメトキシ−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(lH−テトラゾル−5−イル)−アミド、
から成るグループの中から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
2がメチルでありR3がメトキシである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
1が、任意には置換されるC6−シクロアルキルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物が3−シクロヘキシルオキシ−6−メトキシ−5−メチル−ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸(2H−テトラゾル−5−イル)−アミドである、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
治療上有効な量の請求項1に記載の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む薬学組成物をPI3K媒介型身体条件又は障害を患う対象に対し投与することを含む、PI3K媒介型傷害又は身体条件を患う対象の治療方法。
【請求項12】
前記PI3K媒介型身体条件又は障害が、関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患及び自己免疫疾患から成るグループの中から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記PI3K媒介型身体条件又は障害が、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深部静脈血栓症、卒中、心筋梗塞症、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓溶解疾患、急性動脈虚血、末梢血栓性閉塞、冠状動脈疾患、癌、乳癌、グリア芽腫、子宮内膜癌、肝細胞癌腫、結腸癌、甲状腺癌、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌腫、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、卵巣癌、子宮頸癌、白血病、細胞リンパ腫、リンパ増殖性障害、インシュリン非依存性糖尿病、呼吸器疾患、気管支炎、ぜんそく、及び慢性閉塞性肺疾患から成るグループの中から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
治療上有効な量の請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物及び薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2006−526606(P2006−526606A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508419(P2006−508419)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001783
【国際公開番号】WO2004/108713
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミティド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】