説明

泡処理装置

【課題】第1に、発生した泡を、連続的かつ確実に消泡でき、第2に、消泡剤は使用せず物理的に消泡し、第3に、しかも再使用面,構成面,後付け面,コスト負担増回避面、等々のコスト面にも優れた、泡処理装置を提案する。
【解決手段】この泡処理装置Eは、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材Aに対しアルカリ処理液Bを噴射して表面処理する表面処理装置1に、付設される。そして、泡Dを連続的な処理し、吸引部11と処理部12とを有している。吸引部11は、表面処理装置1から、アルカリ処理液Bに感光性レジストCが溶解する際に発生した泡Dを、吸引する。処理部12は、表面処理装置1と吸引部12との間に介装され、吸引により回収された泡Dを、液とガスとに分離する。処理部12で泡Dを液化,分離して得られたアルカリ処理液Bは、表面処理装置1の液槽3へと戻されて、再使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡処理装置に関する。すなわち、プリント配線基板,その他の電子回路基板の製造工程で使用され、現像液や剥離液にレジストが溶解する際に発生する泡を処理する、泡処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
代表的な電子回路基板の製造工程では、まず、銅張り積層板よりなる基板材の外表面に、→感光性のレジスト(液状フォトレジストやドライフィルムレジスト)が、塗布又は張り付けられる。
→それから、回路のネガフィルムを当てて露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥離により溶解除去する。→このようなプロセスを辿ることにより、基板材の外表面に残った銅箔にて、電子回路が形成され、電子回路基板が製造される。
【0003】
《従来技術》
さて、図1の右半分に示したように、上述した現像工程の現像装置や、剥離工程の剥離装置等の表面処理装置1では、搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル2から現像液や剥離液等のアルカリ処理液Bが、噴射される。
そして、現像や剥離等の表面処理後、アルカリ処理液BとレジストCは、液槽3へと流下,回収されて、一旦貯留される。それからフィルター4を経由することにより、レジストCが分離,除去されたアルカリ処理液Bが、再びスプレーノズル2へと循環供給されて、再使用される。図1中、5はスプレー用のポンプ、6はシャワー管、7はコンベア、8は循環用のポンプ、9は配管である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
この種の表面処理装置としては、例えば次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
【特許文献1】特開2004−325502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種従来例については、次の課題が指摘されていた。
《第1の問題点》
第1に、現像装置や剥離装置等の表面処理装置1では、基板材Aに対し現像液や剥離液等のアルカリ処理液Bが噴射されるが、アルカリ処理液BにレジストCが溶解する際に、泡Dが発生する(図1を参照)。
そして、この泡Dが液槽3経由でフィルター4に供給されてしまうと、泡DにてレジストCが浮いてしまい、フィルター4によるレジストCの分離,除去が不確実化し、アルカリ処理液Bの性能が低下する、という問題が指摘されていた。
【0006】
《第2の問題点》
第2に、そこでこのような泡D対策として、表面処理装置1の液槽3に、消泡剤を添加することが行われていた。
しかしながら、この種の消泡剤(破泡剤,抑泡剤)は、例えばエマルジョンタイプのエーテル型油質、特殊な界面活性剤,その他のシリコーン油系等の薬品よりなるが、アルカリ処理液B中に混入して基板材Aに噴射され,付着すると、現像不良,剥離不良の原因となる。特に、現像工程における基板材Aの仕上がりへの悪影響が、問題となっていた。
又、消泡剤が液槽3壁に付着した場合の処理の煩雑性や、廃液中に混入した場合の処理の困難性や、消泡剤やその処理用の洗浄剤が高価である点も、問題視されていた。
【0007】
《第3の問題点》
第3に、そこで泡D対策として、消泡剤を使用することなく、アルカリ処理液Bの新液供給量を増加させる対策や、廃液口を大きくして泡Dを廃液と共に排出してしまう対策も、試みられていた。
しかしながら、これらの対策については、新液供給量の増加、これに伴う廃液量の増加、泡Dを含む廃液処理量の増加、環境問題への対応等々、コスト負担増が問題となっていた。
【0008】
《本発明について》
本発明の泡処理装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、泡を連続的かつ確実に消泡でき、第2に、消泡剤は使用せず、第3に、諸コスト面にも優れた、泡処理装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。請求項1については次のとおり。
請求項1の泡処理装置は、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材に対しアルカリ処理液を噴射して表面処理する表面処理装置に、付設される。そして、泡を連続的に処理し、吸引部と処理部とを有している。
該吸引部は、該表面処理装置から、該アルカリ処理液に感光性レジストが溶解する際に発生した該泡を、吸引する。該処理部は、該表面処理装置と該吸引部との間に介装され、吸引により回収された該泡を、液とガスとに分離すること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。請求項2の泡処理装置では、請求項1において、該処理部は、全体がボックス状をなし、内部が該吸引部にて吸引され負圧状態となっていると共に、内部に分離板が上下多段に配設されている。該処理部の内部を下方から上方へと吸引されて通過する該泡は、各該分離板に衝突することにより、潰され破壊されて液とガスとに分離される。
もって、液化,分離して得られた該アルカリ処理液は、該処理部の下部に流下,貯留された後、該表面処理装置へと戻されて再使用される。該処理部で該泡を分離して得られたアルカリガスは、該吸引部に吸引された後、排気されること、を特徴とする。
【0010】
請求項3については、次のとおり。請求項3の泡処理装置では、請求項2において、該処理部は、下部に、レベルセンサが付設されると共に、底部が、弁を介して該表面処理装置に接続されている。該レベルセンサは、該処理部下部に所定高さレベルまで該アルカリ処理液が貯留されたことを、検出可能である。該弁は、該レベルセンサの所定高さレベル検出に基づき、常時の閉から開に切換わる。
もって、貯留されていた該アルカリ処理液を、該処理部内の吸引,負圧状態に拘らず該処理部から流下,排液して、該表面処理装置へと戻すことが可能となっていること、を特徴とする。
請求項4については、次のとおり。請求項4の泡処理装置では、請求項2において、該処理部は、下部に、レベルセンサが付設されると共に、底部が、弁とポンプを順に介して該表面処理装置に接続されている。該レベルセンサは、該処理部下部に所定高さレベルまで該アルカリ処理液が貯留されたことを、検出可能である。該ポンプは、該レベルセンサの所定高さレベル検出に基づき、駆動オンする。該弁は、該ポンプの駆動オン時の吸引力に基づき、常時の閉から開に切換わる。
もって、貯留されていた該アルカリ処理液を、該処理部内の吸引,負圧状態に拘らず該処理部から流下,排液して、該表面処理装置へと戻すことが可能となっていること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の泡処理装置は、請求項2において、該表面処理装置内に配設され、発生した該泡を該処理部そして該吸引部に向け吸引すべく開口する吸引口が、浮き子にて保持されている。
そして該浮き子は、該表面処理装置の液槽内の該アルカリ処理液の液面に浮くと共に、該吸引口を、該液面上に一定層厚で漂う該泡中に開口する高さ位置に保持すること、を特徴とする。
【0011】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)表面処理装置では、基板材にアルカリ処理液が噴射される。
(2)そして、アルカリ処理液にてレジストが溶解されるが、その際、泡が発生する。
(3)発生した泡は、液槽の液面上に流下,回収される。
(4)そこで、本発明の泡処理装置では、吸引部の吸引力により泡を吸引する。
(5)吸引された泡は処理部へと供給され、アルカリ処理液へと分離,液状化される。
(6)分離されたアルカリ処理液は、処理部下部に流下,貯留され、所定高さレベルに達すると、レベルセンサの検出やポンプ駆動により、弁が開に切換わる。
(7)そこでアルカリ処理液は、吸引による処理部内の負圧状態に抗し、表面処理装置へと戻される。
(8)このように本発明によれば、泡が短時間の内に連続的かつ確実に、消泡される。
(9)この消泡は、消泡剤を用いることなく実施される。
(10)そして、得られたアルカリ処理液は再使用される。又、この泡処理装置は、吸引部,分離板内蔵処理部,レベルセンサ,弁,ポンプ等からなり、構成が簡単であり、後付け設置も容易である。
(11)さてそこで、本発明は次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0012】
《第1の効果》
第1に、泡を連続的かつ確実に、消泡できる。本発明の泡処理装置では、泡を処理部に吸引して、アルカリ処理液とアルカリガスとに分離せしめ、アルカリ処理液を、レベルセンサ,弁,ポンプ等の組み合わせにより排液して、表面処理装置に戻して再使用する。
このように、発生した泡を短時間のうちに、連続的かつ確実に回収,消泡,再使用可能である。前述したこの種従来例のように、泡が液槽経由でフィルターに供給され、もってレジストの分解,除去が不確実化してしまう虞はない。フィルターにてレジストが順調に分離,除去されるようになり、現像液や剥離液の性能も維持される。
【0013】
《第2の効果》
第2に、消泡剤は使用しない。本発明の泡処理装置では、吸引部と処理部にて、泡を物理的に回収,消泡,除去する。
前述したこの種従来例のように、消泡剤使用により、現像不良や剥離不良を引き起こし、基板材の仕上がりに悪影響を与える虞はない。勿論、消泡剤の廃液中への混入問題や、消泡剤や洗浄剤が高価であるという問題も生じない。
【0014】
《第3の効果》
第3に、諸コスト面に優れている。まず、本発明の泡処理装置では、泡を分離して得られた現像液や剥離液等のアルカリ処理液が再使用されるので、コスト面に優れている。
又、泡処理装置自体も、吸引部,処理部,レベルセンサ,弁,ポンプ等からなり、構成が簡単であり、コスト面に優れている。更に、簡単な構成よりなるので、既存の現像装置や剥離装置に対し、容易に後付け付設可能であり、この面からもコスト面に優れている。
更に、前述したこの種従来例のように、現像液や剥離液等のアルカリ処理液の新液供給量の増加、これに伴う廃液量の増加、泡を含む廃液処理量の増加、環境問題への対応等々について、コスト負担増を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る泡処理装置について、発明を実施するための形態の説明に供し、全体の正面の断面説明図である。
【図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、処理部の正面の断面説明図である。
【図3】同発明を実施するための形態の説明に供し、処理部の外観斜視図である。
【図4】同発明を実施するための形態の説明に供し、要部正面の断面概略図である。そして、(1)図,(2)図,(3)図はレベルセンサの各種配設位置を示し、(4)図は、弁とポンプの組合わせ例を示し、(5)図は、吸引口と浮き子の組合わせ例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《表面処理装置1について》
図1中に示したように、電子回路基板の製造工程中、現像工程や剥離工程では、コンベア7の搬送ローラー等にて水平搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル2からアルカリ処理液Bが噴射されて、基板材Aが表面処理され、感光性のレジストCが溶解,除去される(製造工程等については、前述した背景技術欄を参照)。
すなわち、現像装置や剥離装置等の表面処理装置1のチャンバー10内では、基板材Aに対し、炭酸ナトリウム等の現像液や苛性ソーダ等の剥離液が、アルカリ処理液Bとして噴射される。
そこで基板材A付近では、噴射されたアルカリ処理液BにレジストCが溶解する際に、泡D(気泡,フォーム)が発生して、使用後のアルカリ処理液Bや、基板材Aから溶解,除去された極小破片状のレジストCと共に、液槽3へと流下,回収される。そして泡Dは、液槽3のレジストCを含むアルカリ処理液Bの液面上に、例えば高さ寸法50〜150mm程度の層厚で形成され、浮いて漂う。
表面処理装置1については、以上のとおり。
【0017】
《本発明の概要》
以下、本発明の泡処理装置Eについて、図1〜図4を参照して説明する。まず、その概要について述べる。
この泡処理装置Eは、電子回路基板の製造工程で使用され、基板材Aに対しアルカリ処理液Bを噴射して表面処理する現像装置や剥離装置等の表面処理装置1に、付設される。そして、泡Dを連続的に処理し、吸引部11と処理部12とを有している。
吸引部11は、表面処理装置1から、アルカリ処理液BにレジストCが溶解する際に発生した泡Dを、吸引する。処理部12は、表面処理装置1と吸引部11との間に介装され、吸引により回収された泡Dを、液とガスとに分離する。
処理部12で泡Dを液化,分離して得られたアルカリ処理液Bは、表面処理装置1へと戻されて、再使用される。処理部12で泡Dを分離して得られたアルカリガスFは、吸引部11に吸引された後、排気される。
以下、このような本発明について、更に詳述する。
【0018】
《吸引部11や吸引口13について》
まず図1を参照して、泡処理装置Eの吸引部11や吸引口13について、説明する。吸引部11は、ブロワ14を備えている。ブロワ14の吸引側は、配管15,処理部12,ホース16等を順に介して、吸引口13に接続されている。シューターである吸引口13は、表面処理装置1の液槽3内に、液面に対し例えば30mm程度の高さ寸法位置にて、略逆漏斗状に開口配設される。
これに対し、ブロワ14の吐出側は、排気ダクト17を介しガス浄化塔Kに接続されている。そして、処理部12で泡Dから分離して得られたアルカリガスFは、ブロワ14で吸引,吐出された後、ガス浄化塔Kでアルカリ成分が除去され、もって浄化エアーとなって大気排気される。
吸引部11や吸引口13は、このようになっている。
【0019】
《処理部12について》
次に、図2,図3を参照して、泡処理装置Eの処理部12について、説明する。処理部12は、全体がボックス状をなし、内部が吸引部11にて吸引され負圧状態となると共に、内部に分離板Sが上下多段に配設されている。
そこで、処理部12内部を下方から上方へと吸引されて通過する泡Dは、各分離板Sに衝突することにより、潰され破壊されて液とガスとに分離され、もって得られたアルカリ処理液Bが、処理部12の下部に流下,貯留される。
【0020】
このような処理部12について、更に詳述する。図示例の処理部12は、メンテナンス用のフランジ18を介し、上下部から構成されており、点検窓19が設けられている。処理部12頂部は、フランジ20を介し、配管15にて吸引部11のブロワ14に接続され、処理部12底部は、フランジ21を介し、液槽3内の吸引口13に接続されている。
処理部12内部には、図示例では波板状(例えばネット状のものも可能)の樹脂製の分離板Sが、上下複数段にわたり、相互間に上下間隔を存しつつ、水平に配設されている。各分離板S端縁と処理部12壁面との間には、泡DやアルカリガスF通過用のスペースがそれぞれ存し、各分離板Sにも、通過用の開孔が多数穿設されている。
そこで、吸引口13から吸引,回収された泡Dは、処理部12内を下から上へと通過して行くが、その際、各分離板Sへの衝突を順次繰り返すことにより、液とガスとに分離される。
泡Dは、分離板Sの凹凸等に衝突することにより、→潰され破壊されて、元のアルカリ処理液Bへと液状化すると共に、→その際、分離されたアルカリガスFが、処理部12頂部から吸引部11へと吸引され送られて行く。→これに対し、得られたアルカリ処理液Bは、処理部12下部に流下,落下,回収されて、→一旦貯留される。もって、ボックス状をなす処理部12内は、上部ほどアルカリガスFが、下部ほどアルカリ処理液Bが、それぞれ偏在して存在する状態となる。
処理部12は、このようになっている。
【0021】
《レベルセンサ22や電磁弁23等について》
次に、図2〜図4を参照して、泡処理装置Eの処理部12に付設された、レベルセンサ22と電磁弁23について、説明する。
処理部12は、下部に、レベルセンサ22が付設されると共に、底部が、電磁弁23を介して表面処理装置1に接続されている。レベルセンサ22は、処理部12下部に所定高さレベルまで、液状化されたアルカリ処理液Bが貯留されたことを、検出可能である。
電磁弁23は、レベルセンサ22の所定高さレベル検出に基づき、常時の閉から開に切換わり、もって貯留されていたアルカリ処理液Bを、処理部12内の吸引,負圧状態に拘らず処理部12から流下,排液して、表面処理装置1へと戻すことが可能となっている。
なお、図示例では電磁弁23が使用されているが、本発明はこの図示例に限定されるものではなく、レベルセンサ22にて同様に制御され,機能するその他の弁も、使用可能である。
【0022】
レベルセンサ22や電磁弁23について、更に詳述する。前述により分離,液状化されて処理部12下部に流下,回収されたアルカリ処理液Bは、ドレン口24から配管25を介し、表面処理装置1の液槽3に向け、排液して戻すことが予定されている。
しかしながら処理部12内部は、吸引部11にて常時吸引され負圧状態となっている。従って、負圧による略真空化作用により、そのままでは、処理部12下部のアルカリ処理液Bを表面処理装置1に向け排液せしめることは、不可能である。
そこで、このような負圧対策として、本発明の図示例では、まず、処理部12底部のドレン口24付近又は配管25に、常閉の電磁弁23を設置し、もって処理部12下部にアルカリ処理液Bを一旦貯留する。アルカリ処理液Bは、処理部12下部の配管25の電磁弁23付設箇所より上部分と、ドレンボックス26内と、狭義の処理部12下部内とにかけて、一旦貯留される。
これと共に、処理部12下部には、貯留されて行くアルカリ処理液Bが、所定高さレベルまで到達したことを検出可能なレベルセンサ22が、図示例ではセンサボックス27に収納され、分離板Sより下位に付設されている。レベルセンサ22としては、アルカリ処理液Bの液面高さ位置を、例えば電極方式やフロート方式にて検出するレベルスイッチが使用される。
そしてレベルセンサ22が、所定高さレベルの液面位置までアルカリ処理液Bが溜められたことを検出すると、その検出信号に基づき、閉で待機していた電磁弁23が、開に切換わる。もってアルカリ処理液Bが、その自重,質量に基づき、上述した吸引による処理部12内の負圧状態,略真空化作用に抗して、配管25から液槽3へと流下,排液せしめられる。配管25には、図示例では、ストックタンク28やポンプ29が介装される。
事後、電磁弁23は再び閉に復帰する。電磁弁23は間欠的に、例えば2〜3分に一度程度の割合で秒単位で開に切換わり、その間に溜っていたアルカリ処理液Bが、流下,排出される。
レベルセンサ22や電磁弁23等は、このようになっている。
【0023】
《作用等》
本発明の泡処理装置Eは、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)電子回路基板の製造工程において現像装置や剥離装置等の表面処理装置1では、基板材Aに対し、現像液や剥離液等のアルカリ処理液Bが、噴射される(図1を参照)。
【0024】
(2)このような基板材Aの表面処理において、アルカリ処理液Bにて感光性のレジストCが溶解,除去されるが、その際、泡Dが発生する。
【0025】
(3)発生した泡Dは、使用されたアルカリ処理液BやレジストCと共に、液槽3に流下,回収され、液槽3の液面上にて層状をなす。
【0026】
(4)そこで、本発明の泡処理装置Eでは、吸引部11の吸引力に基づき、吸引口13が泡Dを吸引する。
【0027】
(5)吸引口13で吸引された泡Dは、表面処理装置1から処理部12へと吸引供給され、もって、分離板Sに衝突することにより潰され破壊されて、元のアルカリ処理液Bへと分離,液状化される。同時に分離されたアルカリガスFは、吸引部11経由した後、排気される(図1〜図3を参照)。
【0028】
(6)上述により液状化されたアルカリ処理液Bは、処理部12下部に流下して、一旦貯留される。そして、所定高さレベルまで達したことを、レベルセンサ22が検出すると、図示例では、常閉の電磁弁23が秒単位で開に切換わる(図2,図3を参照)。又、他の図示例では、常閉のチャッキ弁30が、ポンプ31の駆動オン毎に秒単位で開に切換わる(図4の(4)図を参照)。
【0029】
(7)そこで、貯留されていたアルカリ処理液Bは、吸引による負圧状態に抗し、処理部12から表面処理装置1の液槽3へと、戻されて再使用される(図1を参照)。
【0030】
(8)このように本発明の泡処理装置Eによれば、まず、表面処理装置1にて発生した泡Dが、短時間のうちに連続的かつ確実に消泡される。
【0031】
(9)この消泡は、消泡剤による化学的方法によらず、物理的,機械的に実施される。
【0032】
(10)しかも、消泡して得られたアルカリ処理液Bは、再使用に供される。又、この泡処理装置Eは、ブロワ14等の吸引部11と、分離板S内蔵の処理部12と、付設されたレベルセンサ22と、電磁弁23やチャッキ弁30等の弁と、ポンプ31とからなり、構成が簡単である。そこで、表面処理装置1への後付け設置も、容易である。
【0033】
《その他の例》
なお第1に、図1〜図3に示した弁、例えば電磁弁23は、配管25に設けられているが、本発明は、この図示例に限定されるものではない。例えば、処理部12底面に開口連通付設されたドレンボックス26底面のドレン口24や、図示によらず処理部12底面に直接付設されたドレン口24に設けてもよい。
第2に、図1〜図4の(1)図に示したレベルセンサ22は、処理部12下部に開口連通付設されたセンサボックス27内に、収納配設されているが、本発明は、このような図示例に限定されるものではない。例えば、図4の(2)図や(3)図に示したように、処理部12下部に直接配設したり、ドレンボックス26内に配設してもよい(この場合、アルカリ処理液Bの貯留はドレンボックス26内で行われる)。
第3に、泡Dの吸引,回収に際し、液槽3内のアルカリ処理液Bが泡Dと共に吸引されることもある。このように吸引されたアルカリ処理液Bは、処理部12において、泡Dから得られたアルカリ処理液Bと共に一旦貯留された後、液槽3に戻されて再使用される。
第4に、レジストCについてもこれに準じるが、液槽3に戻された後、アルカリ処理液Bの使用に際し、フィルター4にて分離,除去される。
【0034】
第5に、泡処理装置Eの処理部12下部に一旦貯留されたアルカリ処理液Bの液槽3への排液,戻しは、図1に示した例では、貯留用のストックタンク28とポンプ29を、経由して行われる。しかし本発明は、このような圧送戻し方式に限定されるものではなく、落差戻し方式も可能である。
すなわち圧送戻し方式は、処理部12の設置場所が、表面処理装置1の液槽3から、距離的に遠い場合に適用される。近い場合は、アルカリ処理液Bを落差のみを利用して液槽3へ戻すようにしてもよい。両方式の併用も可能である。
第6に、図示例では、管路形成用に配管15,配管25,排気ダクト17等が使用されているが、これらに代えてホース(フレキシブル製やブレード製)を使用してもよい。
【0035】
第7に、図1〜図3に示した例では、レベルセンサ22の検出に基づき、電磁弁23等の弁が開閉してアルカリ処理液Bが戻されるが、本発明は、このような図示例に限定されるものではない。
例えば、図4の(4)図に示したように、処理部12底部を、チャッキ弁30(リフトY型チャッキ弁)のような弁と、ポンプ31とを順に介して、表面処理装置1の液槽3に接続する。
そしてポンプ31は、レベルセンサ22の所定高さレベル検出に基づき、制御部32を介して駆動オンする。そこで弁、例えばチャッキ弁30は、ポンプ31の駆動オン時の吸引力に基づき、常時の閉から開に切換わる。もって、貯留されていたアルカリ処理液Bを、処理部12内の吸引,負圧状態に拘らず処理部12から流下,排液して、表面処理装置1へと戻すことが可能となっている。
更に例えば、次の構成も考えられる。すなわち、レベルセンサ22,電磁弁23,ポンプ31,チャッキ弁30等の弁を使用することなく、処理部12下部に貯留されたアルカリ処理液Bが所定高さレベルに達すると、その流体圧に基づき常閉から開に切換わる弁(例えばスイングチャッキ弁)を、配管25に設けることも考えられる。この弁のその他の作動については、電磁弁23やチャッキ弁30等に準じる。
【0036】
第8に、図4の(5)図に示したように、表面処理装置1内に配設され、発生した泡Dを処理部12そして吸引部11に向け吸引すべく開口する吸引口13を、浮き子33にて保持するようにしてもよい。
浮き子33は、表面処理装置1の液槽3内のアルカリ処理液Bの液面に浮くと共に、吸引口13を、液面上に一定層厚で漂う泡D中に開口する高さ位置に、保持する。図示例の吸引口13は、4個の浮き子33にてベース板34を介して保持されている。
液面は上下変動する可能性があり、もってその上に浮く泡Dも共に上下変動する可能性があるが、このように浮き子33上に吸引口13を保持することにより、吸引口13がこのような上下変動に追従し、確実に泡D中への開口を維持する。
【符号の説明】
【0037】
1 表面処理装置
3 液槽
11 吸引部
12 処理部
13 吸引口
22 レベルセンサ
23 電磁弁(弁)
30 チャッキ弁(弁)
31 ポンプ
33 浮き子
A 基板材
B アルカリ処理液
C レジスト
D 泡
E 泡処理装置
F アルカリガス
S 分離板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板の製造工程で使用され、基板材に対しアルカリ処理液を噴射して表面処理する表面処理装置に付設される、泡の連続的な処理装置であって、吸引部と処理部とを有しており、
該吸引部は、該表面処理装置から、該アルカリ処理液に感光性レジストが溶解する際に発生した該泡を、吸引し、
該処理部は、該表面処理装置と該吸引部との間に介装され、吸引により回収された該泡を、液とガスとに分離すること、を特徴とする泡処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した泡処理装置において、該処理部は、全体がボックス状をなし、内部が該吸引部にて吸引され負圧状態となっていると共に、内部に分離板が上下多段に配設されており、
該処理部の内部を下方から上方へと吸引されて通過する該泡は、各該分離板に衝突することにより、潰され破壊されて液とガスとに分離され、
もって、液化,分離して得られた該アルカリ処理液は、該処理部の下部に流下,貯留された後、該表面処理装置へと戻されて再使用され、該処理部で該泡を分離して得られたアルカリガスは、該吸引部に吸引された後、排気されること、を特徴とする泡処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載した泡処理装置において、該処理部は、下部に、レベルセンサが付設されると共に、底部が、弁を介して該表面処理装置に接続されており、
該レベルセンサは、該処理部下部に所定高さレベルまで該アルカリ処理液が貯留されたことを、検出可能であり、該弁は、該レベルセンサの所定高さレベル検出に基づき、常時の閉から開に切換わり、
もって、貯留されていた該アルカリ処理液を、該処理部内の吸引,負圧状態に拘らず該処理部から流下,排液して、該表面処理装置へと戻すことが可能となっていること、を特徴とする泡処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載した泡処理装置において、該処理部は、下部に、レベルセンサが付設されると共に、底部が、弁とポンプを順に介して該表面処理装置に接続されており、
該レベルセンサは、該処理部下部に所定高さレベルまで該アルカリ処理液が貯留されたことを、検出可能であり、該ポンプは、該レベルセンサの所定高さレベル検出に基づき、駆動オンし、該弁は、該ポンプの駆動オン時の吸引力に基づき、常時の閉から開に切換わり、
もって、貯留されていた該アルカリ処理液を、該処理部内の吸引,負圧状態に拘らず該処理部から流下,排液して、該表面処理装置へと戻すことが可能となっていること、を特徴とする泡処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載した泡処理装置において、該表面処理装置内に配設され、発生した該泡を該処理部そして該吸引部に向け吸引すべく開口する吸引口が、浮き子にて保持されており、
該浮き子は、該表面処理装置の液槽内の該アルカリ処理液の液面に浮くと共に、該吸引口を、該液面上に一定層厚で漂う該泡中に開口する高さ位置に保持すること、を特徴とする泡処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−212660(P2010−212660A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544(P2010−544)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】