説明

泡安定化剤ならびに該泡安定化剤を添加した飲食品

【課題】飲食品に添加できる天然由来の起泡剤・泡安定化剤を提供する。
【解決手段】酵母細胞壁由来可溶性画分の起泡剤・泡安定化剤であり、当該起泡剤・泡安定化剤を飲食品に添加することにより、飲食品に起泡性・泡安定化性を付与する。酵母細胞壁由来可溶性画分は、酵母菌体内の可溶性成分を除去した後の残渣を酵素処理、アルカリ処理、酸処理等から得られる可溶性画分または酵母細胞壁可溶性画分放出能を有する酵母から得られた酵母可溶性画分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母細胞壁可溶性画分から得られる飲食品の泡安定化剤であり、当該泡安定化剤を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品にビールのような泡を付与したり、あるいはビールなどの発泡性飲料の泡の安定化を図ることは消費者の嗜好性にマッチした商品を開発するにあたり、重要な商品特性となる。これまで、飲食品の起泡剤及び発酵麦芽飲料(ビール等)の泡安定化剤としては複数の素材が提案されている。
【0003】
ビールや発泡酒のような麦芽とホップと水を主原料とするアルコール炭酸飲料は飲用時に液面を覆うクリーミーな泡が形成され、飲料の嗜好性を高めている。ビールの泡は麦芽由来の泡タンパクとホップ成分が結合し膜を形成し、その膜に空気が巻き込まれることにより形成されている。近年では、消費者の嗜好の多様性に応じて、原料に麦芽以外の糖質を用いるビアテイスト飲料(第3のビール)も開発されている。しかしながら、このようなビアテイスト飲料は麦芽由来の泡タンパクが存在しないため、ビールの特徴である泡品質(起泡性、泡付き、泡持ちなど)と比較しても劣っているのが現状である。
【0004】
ビールの泡を安定化するために、増粘性多糖類であるジェランガムを添加する方法(特許文献1、特許文献2)、キサンタンガムまたはガラクトマンナンを添加する方法(特許文献3)、キサンタンガムと低温水溶性タンパク質(コラーゲン、ゼラチン、乳タンパクなど)を添加する方法(特許文献4)、糖重合物(ポリデキストロース)を添加する方法(特許文献5)、ホップ苞溶媒抽出物を添加する方法(特許文献6)などが開示されている。
【0005】
また、ビアテイスト飲料や果汁を含むビール様起泡性飲料については、植物由来のサポニンを起泡剤として添加する方法(特許文献7)、植物から抽出したサポニン系と化学的に合成されたグリセリン脂肪酸エステル系、プロピレングリコール脂肪酸エステル系からなる起泡剤と増粘安定剤として作用し、飲料に適当な粘度を与え泡持ちを良くする寒天、ゼラチン、キサンタンガム、カラギーナン、ペクチン、タマリンドガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等の泡保持剤を添加する方法(特許文献8)、茶葉の水またはエタノール抽出物を添加する方法(特許文献9)などが開示されている。
【0006】
ビアテイスト飲料においては、窒素源として細胞壁を除いた酵母エキスを使用する方法(特許文献10)も開示されているが、酵母細胞壁が除かれているため、泡の安定化効果はほとんどみられない。
【0007】
天然物由来の水溶性の食物繊維としてはコンニャクマンナン、ペクチン、グァーガム、タマリンド種子ガム、カラギーナンなどの多糖類が飲食品素材として利用されているが、それらはいずれも水に対する溶解性、色、味、臭い、等のいくつかの点で問題がある。更に、これらは粘度が高く(通常103cps/1%以上、25℃)、汎用性に欠け、特定の分野にしか利用できず。また、飲食品素材として広く用いられているポリデキストロースは合成品であり、天然志向の消費者意識にマッチしていない。従って、飲料用の食物繊維としては、白色、無味無臭で水溶性が高い低粘性の天然物由来の素材が望まれている。
【特許文献1】特開平4-228060号公報
【特許文献2】特開平4-22806号公報
【特許文献3】米国特許第4720389号明細書
【特許文献4】米国特許第4729900号明細書
【特許文献5】特表2004-536604公報
【特許文献6】特許3551995号号公報
【特許文献7】特開昭60-126065号公報
【特許文献8】特開平11-299473号公報
【特許文献9】WO2003/105610パンフレット
【特許文献10】特開2005-323585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、発泡性炭酸飲料の泡品質を改良するための技術であり、飲料液面に形成された泡の安定性を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、酵母細胞壁由来可溶性画分を用いることにより炭酸飲料に起泡を付与できることを見いだし本発明を完成するに至った、
すなわち、本発明は以下に関するものである、
(1) 酵母細胞壁由来可溶性画分からなることを特徴とする泡安定化剤。
(2) 酵母細胞壁由来可溶性画分が、酵母細胞壁から抽出された酵母細胞壁由来可溶性画分であることを特徴とする(1)記載の泡安定化剤。
(3) 酵母由来可溶性画分が,酵母細胞壁画分放出能を有する酵母により産生された酵母細胞壁由来可溶性画分であることを特徴とする(1)記載の泡安定化剤。
(4) 酵母細胞壁由来可溶解性画分中のマンノース含量が乾物重量あたり75〜95%であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の泡安定化剤。
(5) 酵母可溶解性画分を添加したことを特徴とする起泡性を付与されたまたは泡安定化された飲食品。
(6) 酵母可溶解性画分を100ppm〜200000ppm添加したことを特徴とする(5)記載の飲食品。
(7) さらに炭酸ガスを含有することを特徴とする(5)または(6)に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、飲食品に起泡性を付与し、ビールなどの発泡性飲料については発泡性飲料の液面に形成される泡を安定化させ、泡品質(泡付き、泡持ちなど)を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における酵母細胞壁由来可溶性画分とは、酵母細胞の表層を形成する多糖類から得られる可溶性画分である。酵母細胞の表層を形成する可溶性画分は主にマンナンと呼ばれるマンノース含有多糖類であり、酵母菌体から菌体内可溶性成分である酵母エキスを抽出した残渣である酵母細胞壁を熱水抽出法(希アルカリ含む)抽出、自己消化法、細胞壁溶解酵素による消化などの方法により抽出されることが知られており、これらの細胞壁抽出多糖類は酵母マンナンとも呼ばれている。酵母マンナンの抽出に用いられる酵母は、酵母細胞壁由来可溶性画分の原料となりうる酵母細胞壁であれば特に限定されないが、例えばビール酵母細胞壁、発泡酒酵母細胞壁、雑酒酵母細胞壁、清酒酵母細胞壁、ワイン酵母細胞壁、ウィスキー酵母細胞壁等の醸造用酵母細胞壁、パン酵母細胞壁、トルラ酵母細胞壁等を挙げることができる。
【0012】
酵母細胞壁を得る方法としては酵母菌体を5〜20時間45〜65℃に加温して自己消化させた後、遠心分離機で上清(酵母エキス)を除去する方法や、酵母菌体を80℃以上に昇温殺菌した後、そのまま遠心分離で上清(酵母エキス)を除去する方法や、酵素を添加、反応後に遠心分離して上清(酵母エキス)を除去する方法等がある。
【0013】
次いで、得られた酵母細胞壁をアルカリ条件下で洗浄する。酵母細胞壁に残留したタンパク質やアミノ酸が洗浄により除去できれば、その洗浄方法は限定されない。洗浄方法はイーストセパレーターにより加水しながら行う方法などがあるが、洗浄後の固液分離した液が無色〜淡色、透明になればよい。洗浄温度は4〜95℃、好ましくは20℃〜50℃とする。
【0014】
上述のアルカリ条件は、酵母細胞壁スラリーに25%NaOH溶液を添加し、pHを8.0〜14.0好ましくは9.5〜12.0とする。添加方法はバッチ式でも連続式でもよい。
【0015】
次にアルカリ条件下で洗浄した酵母細胞壁のpHを8.0〜14.0、好ましくは10.0〜12.0に調整し、60〜120℃、好ましくは85〜95℃で3〜24時間、好ましくは12〜20時間加水分解する。加水分解の際、攪拌はしてもしなくてもよい。
【0016】
上記加水分解後、酵母水溶性多糖類を得るため、固液分離を行う。酵母水溶性多糖類は上清溶液に含まれる。固液分離の方法は、イーストセパレーターによる遠心分離や、珪藻土濾過、限外濾過膜を用いる方法等があるが特に限定されない。
【0017】
次に固液分離した上清溶液に塩酸を添加し、pH2.5〜5.0、好ましくは3.5〜4.5に調整後、90〜140℃、好ましくは115〜125℃で15〜120秒、好ましくは30〜60秒加熱し、熱凝固物を発生させる。pH調整はバッチ式でも連続式でもよい。また加熱の方法はプレート式の熱交換機による方法等があるが特に限定されない。発生した熱凝固物はイーストセパレーターによる遠心分離や、珪藻土濾過、限外濾過膜を用いる除去するが、その方法は特に限定されない。
【0018】
上記の方法で熱凝固物を除去した溶液を分画分子量3,000~200,000カット、好ましくは6,000〜100,000カットのUF膜で限外濾過をすることにより、溶液中の塩濃度が低下する。限外濾過後の溶液はそのままアセプティック充填するか、スプレードライヤーで乾燥してもよい。
【0019】
スプレードライヤーで乾燥した場合、白色で無味無臭の粉末が得られる。水によく溶け(30g/水100ml以上)、粘度も低く(15.0cp/20%以下、25℃)、糖質として70~95%を含有し、多糖類中のマンノースとグルコースの構成比は75〜95:5〜25で、食物繊維含有率は70〜95%である。またその粉末の収率は、原料として使用した酵母細胞壁の乾燥物量対比8〜20%である。
【0020】
また酵母細胞の細胞壁画分放出能を有する酵母も知られており、これらの酵母が培地中に放出する酵母細胞壁画分(マンナンタンパク質)も本発明における酵母可溶性画分として用いることができる。酵母細胞壁画分放出能を有する酵母とは、酵母をエチルメタンスルホネート(EMS)等の変異処理、UV照射、放射線照射などにより変異誘発し、マンナンタンパク質を細胞壁にとどまらせることができなくなった酵母株を選抜することにより得ることができる。この変異処理する酵母は特に限定されないが、サッカロミセス・セレビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・パラドキサス(Saccharomyces paradouxus)、サッカロミセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae)、サッカロマイセス・ウチリス(Saccharomyces utilis)、カンジダ・アリビカンス(Candida alibicans)などを用いることができる。
【0021】
酵母細胞壁から得られるマンナン及びマンナンタンパク質は、マンノースがα(1→6)結合した主鎖からα(1→2)結合によって分枝した側鎖構造をもつ。この酵母由来のマンナンは低温溶解性が高く、粘性も低く、発泡性飲料の持つ本来の泡品質を改善し、泡を安定化させる効果がある。
【0022】
添加する酵母細胞壁由来可溶性画分は酵母細胞を熱水抽出や酵素分解法などの方法により調製し、100ppm〜200000ppm、好適には2000〜100000ppm添加することが望ましい。
【0023】
本発明における起泡剤とは、飲食品に溶解し、飲食品をかき混ぜたり(ホイップしたり)あるいは別容器に移しかえたときに空気を巻き込んで形成される泡の状態を保持する性質を持つ素材のことを示す。
【0024】
本発明における飲食品とは、果汁飲料、酒類、炭酸飲料などの液状飲料、ソース、スープ、ルー、シチューなどの液状調味料、ホイップクリーム、メレンゲなどの混練により起泡する食品である。
【0025】
(実施例)
(酵母マンナンの調製)
酵母細胞壁は酵母菌体を17時間55℃に加温して自己消化させた後、遠心分離機で上清を除去して得た。
【0026】
次いで、得られた酵母細胞壁をアルカリ条件下で洗浄した。洗浄方法はイーストセパレーターにより加水しながら行った。洗浄後の固液分離した液が無色になるまで行った。洗浄温度は25℃で行った。
【0027】
上述のアルカリ条件は、酵母細胞壁スラリーに25%NaOH溶液を添加し、pHを10.0とした。添加方法は連続式で行った。
【0028】
次にアルカリ条件下で洗浄した酵母細胞壁のpHを11.0に調整し、90℃で17時間攪拌しながら加水分解した。
【0029】
上記加水分解後、酵母水溶性多糖類を得るため、固液分離を行った。酵母水溶性多糖類は上清溶液に含まれる。
【0030】
次に固液分離した上清溶液に塩酸を添加し、pH4.0に調整後、125℃で30秒加熱し、熱凝固物を発生させた。pH調整はバッチ式で行った。プレート式の熱交換機にて加熱した。発生した熱凝固物は珪藻土濾過で除去した。
【0031】
上記の方法で熱凝固物を除去した溶液を分画分子量50,000カットのUF膜で限外濾過し、溶液中の塩濃度を低下させた。限外濾過後の溶液は、スプレードライヤーで乾燥した。
【0032】
スプレードライヤーで乾燥した結果、白色で無味無臭の粉末が得られた。水によく溶け(30g/水100ml以上)、粘度も低く(15.0cp/20%以下、25℃)、糖質として90%以上含有し、多糖類中のマンノースとグルコースの構成比は95:5で、食物繊維含有率は70%以上であった。またその粉末の収率は、原料として使用した酵母細胞壁の乾燥物量対比約10%であった。
【0033】
(マンナンタンパク質の調製)
特願2004-250129記載の方法により得られたマンナンタンパク質放出酵母株AB9を20Lの合成培地(Difco社 Yeast Nitrogen Base w/o Amino acid and Ammonium sulfate 0.17%,Glucose 2%,アミノ酸0.13%)で50Lジャーファメンターで培養し(30℃、pH5.5、通気量1vvm、攪拌600rpm)、培養開始後48時間後に、7000rpm、15分の遠心分離にて培養上清を回収した。上清をセラミック限外ろ過膜(Membralox社製)にてクロスフローろ過し、100kDa(膜面積:0.35m2、ポアサイズ50nm)の分子量で分画濃縮した。限外ろ過残留液に加水し、分画濃縮と同じ条件で限外ろ過を行うことで脱塩した。脱塩後の残留液をスプレードライヤーで乾燥し粉体とし、培養上清1Lあたり0.2gのマンナンタンパク質が回収された。
【0034】
スプレードライヤーで乾燥することにより得られたマンナンタンパク質の粉体は白色で無味無臭であり、主な構成単糖がマンノースである。粉体中のマンノース含量は80〜90%であった。
【実施例1】
【0035】
95%醸造用アルコール60mL、5倍濃縮グレープフルーツ果汁 4g、果糖ブドウ糖液糖(Brix75)100g、クエン酸 2g、香料 1gの溶液に、酵母マンナンを0.5g、2g、4g、8g添加し、その溶液を500mLになるように水に溶解した。この175mLについて350mL容の缶に入れ、175mLの炭酸水と混合後、封缶してガス入り果汁低アルコール飲料(ガス圧は20℃において0.23Mpa)を調製した。
【0036】
それぞれを5℃で48時間冷却し、グラスに注いで起泡性と泡持ちを比較した(表1)。
【0037】
なお、起泡性は溶液をグラスに注いだ直後に液面に形成される泡量を指し、泡持ちとは溶液をグラスに注いだ後、1分後の液面に残った泡量を目視で確認した。
【0038】
【表1】

【0039】
酵母マンナン無添加区(対照区)では起泡性がみられなかったが、酵母マンナンを添加した試料1〜試料4は良好な起泡性を示し、泡安定性(泡持ち)も良好であった。
【実施例2】
【0040】
95%醸造用アルコール540mL、5倍濃縮グレープフルーツ果汁 36g、果糖ブドウ糖液糖(Brix75)900g、クエン酸 18g、香料 9gの溶液に、酵母マンナンを4.5g、18g、36g、72g添加し、その溶液を1.5Lになるように水に溶解した。この全量について図1に示すような10L容の樽缶61に入れ、7.5Lの炭酸水と混合後、封缶してガス入り果汁低アルコール飲料(ガス圧は20℃において0.23Mpa)を調製した。(即ちそれぞれの酵母マンナン添加量は0.5、2、4、8g/Lに相当する。)
各樽缶を図1に示すような生ビール用ディスペンサー1に接続し、炭酸ガスボンベ4から炭酸ガスを供給しながら常法により樽缶61から溶液をグラスに注いで実施例1と同様に起泡性と泡持ちを比較した(表2)。
【0041】
【表2】

【0042】
酵母マンナン無添加区(対照区)では起泡性がみられなかったが、酵母マンナンを添加した試料5〜試料8は良好な起泡性を示し、泡持ちも良好であった。
【0043】
料飲店で酎ハイを供する時には、焼酎等のベースアルコールに糖類やフルーツフレーバーの含有した濃縮シロップを加え、ソーダ水で希釈する場合が多い。
【実施例3】
【0044】
95%醸造用アルコール60mL、5倍濃縮グレープフルーツ果汁 4g、果糖ブドウ糖液糖(Brix75)100g、クエン酸 2g、香料 1gの溶液に、マンナンタンパク質を2g、4g添加し、その溶液を500mLになるように水に溶解した。この175mLについて350mL容の缶に入れ、175mLの炭酸水と混合後、封缶してガス入り果汁低アルコール飲料(ガス圧は20℃において0.23Mpa)を調製した。
【0045】
それぞれを5℃で48時間冷却し、グラスに注いで起泡性と泡持ちを比較した(表3)。
【0046】
なお、起泡性は溶液をグラスに注いだ直後に液面に形成される泡量を指し、泡持ちとは溶液をグラスに注いだ後、1分後の液面に残った泡量を目視で確認した。
【0047】
【表3】

【実施例4】
【0048】
麦芽粉砕物70kg及びデンプン質副原料(コーンスターチ)150kgを仕込釜に入れた。これに、温水770リットルを加えて、これらの原料を混合して液化を行いマイシェを作った。この操作は、開始時の液温を55℃とし、徐々に昇温して、65〜70℃とした後、該温度で10分間保持し、さらに段階的に昇温して、90〜100℃まで液温を高め、この温度で30分保持した。一方、仕込槽では、別の麦芽粉砕物380kgに温水950リットルを加えて混合し、40〜50℃とし、20〜90分間保持してマイシェを作った。その後、仕込槽中のマイシェに、仕込釜で製造したマイシェと温水680リットルを加えた。次いで、このマイシェ混合物を仕込槽2中において、68〜75℃で10〜30分間保持して、糖化を行った。糖化工程終了後、これを麦汁濾過槽において濾過して、その濾液として透明な麦汁3100リットルを得た(糖度12.7%)。
【0049】
得られた麦汁を煮沸釜に移し、これにホップ2.5kg、酵母マンナン0〜4kg/KLとなるように加えて、100℃で90分間煮沸した。煮沸した麦汁をワールプール槽5に入れて、沈殿により生じたタンパク質などの粕を除去した。この際、煮沸後麦汁2700リットル(糖度14.5%)に温水400リットルを加えて糖度12.7%に調整した。次いで、これをプレートクーラーにより、5℃まで冷却して、冷却した麦汁3000リットルを得た。
【0050】
得られた麦汁3000リットルを、発酵タンクに移した。次いで、発酵タンクに、麦汁1mlあたり20×10個の酵母を添加し、10℃で7日間発酵を行った。その後−1℃で十分熟成させた後、珪藻土ろ過機によりろ過して、アルコール含量約5%のビールを得た。尚、アルコール含量の微調整は、脱気水を用いて希釈により行った。
【0051】
濾過後のビールについて泡分析を行った。それぞれの分析値を表4に示す。なお、泡分析はビールで一般的な測定法であるNIBEM泡に従った。
【0052】
【表4】

【0053】
酵母マンナンを添加した試料12〜試料14は無添加対照区よりも良好な起泡性を示し、泡持ちも良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、飲食品に起泡性を付与し、発泡性炭酸飲料の泡持ちを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】生ビール用ディスペンサーの説明図。
【符号の説明】
【0056】
1 ディスペンサー
2 ディスペンスヘッド
3 ホース
4 炭酸ガスボンベ
6 ガスホース
12 ディスペンスコック
61 樽缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵母細胞壁由来可溶性画分からなることを特徴とする泡安定化剤。
【請求項2】
酵母細胞壁由来可溶性画分が、酵母細胞壁から抽出された酵母細胞壁由来可溶性画分であることを特徴とする請求項1記載の泡安定化剤。
【請求項3】
酵母由来可溶性画分が,酵母細胞壁画分放出能を有する酵母により産生された酵母細胞壁由来可溶性画分であることを特徴とする請求項1記載の泡安定化剤。
【請求項4】
酵母細胞壁由来可溶解性画分中のマンノース含量が乾物重量あたり75〜95%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の泡安定化剤。
【請求項5】
酵母可溶解性画分を添加したことを特徴とする起泡性を付与されたまたは泡安定化された飲食品。
【請求項6】
酵母可溶解性画分を100ppm〜200000ppm添加したことを特徴とする請求項5記載の飲食品。
【請求項7】
さらに炭酸ガスを含有することを特徴とする請求項5または6に記載の飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2008−271820(P2008−271820A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117929(P2007−117929)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】