説明

泡消火設備

【課題】 泡消火設備の発泡試験を泡を基本的に外部に流出させることなく行うことができるようにする。
【解決手段】 二次側配管に接続された閉鎖型又は開放型泡ヘッドと、一次側配管の途中に設けられ、泡原液と水を混合して泡水溶液を生成する混合器とを有する泡消火設備において、流出検出手段3の二次側に試験用配管9を設け、試験用配管9の途中に常時閉の試験弁11を設置するとともに、試験用配管9の先端に試験用泡ヘッド4Aを開放状態で取り付け、試験用泡ヘッド4Aを、下部にリザーブタンク12aを有する容器12からなる発泡試験装置13内に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡試験を泡を基本的に外部に流出させることなく行うことのできる泡消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、火災を泡にて消火する泡消火設備が知られている。この泡消火設備は、空気と可燃物(例えば油)との接触を泡によって防ぎ、これによる窒息作用と泡に含まれる水分による冷却作用によって消火するものである。
【0003】
このような泡消火設備においては、定期的に設備の点検を行う必要がある。点検内容は、手動起動弁を動作させて、流水検知装置がきちんと動作するか、泡ヘッドから泡が放出されるか(発泡試験)、放出された泡は所定時間泡の状態を保ってから水溶液に還元するか(性能試験)等である。
【特許文献1】特開平4−276272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来の泡消火設備では、定期的に手動起動弁を動作させて設備の点検を行い、流水検知装置の検査や発泡試験、性能試験を行っている。しかしながら、この点検を行うと、防護区域全体に泡が放出されるため、後始末が面倒である。更に防護区域全体に泡が放出されると、泡が水溶液に還元した場合、下水に排水される量が多くなる。
【0005】
本発明の技術的課題は、泡消火設備の点検時に泡を基本的に外部に流出させることなく点検を行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一次側配管と二次側配管の間に設置された流出検出手段と、前記二次側配管に接続された閉鎖型又は開放型泡ヘッドと、前記一次側配管の途中に設けられ、泡原液と水を混合して泡水溶液を生成する混合器とを有する泡消火設備において、流出検出手段の二次側に設けた試験用配管と、該試験用配管の途中に設置された常時閉の試験弁と、
前記試験用配管の先端に開放状態で取り付けられた試験用泡ヘッドと、該試験用泡ヘッドから放出される泡をため込む発泡試験装置を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明は、一次側配管と、二次側配管との間に設置された流出検出手段と、前記二次側配管に接続された開放型泡ヘッドと、弁開放用のシリンダ室を有し、前記流出検出手段の二次側に設置された一斉開放弁と、一端が前記一斉開放弁のシリンダ室に接続されるとともに、途中に火災感知用の閉鎖型スプリンクラヘッドと常時閉の起動弁が接続された火災検知用配管と、前記一次側配管の途中に設けられ、泡原液と水を混合して泡水溶液を生成する混合器とを有する泡消火設備において、一斉開放弁と開放型泡ヘッドの間に設置された常時開の仕切弁と、前記一斉開放弁と前記仕切弁の間に分岐させて設けた試験用配管と、該試験用配管の途中に設置された常時閉の試験弁と、前記試験用配管の先端に取り付けられた開放型試験用泡ヘッドと、該開放型試験用泡ヘッドを囲む容器からなる発泡試験装置とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、泡消火設備における発泡試験を、泡を外部に流出させることなく行うことができ、発泡試験のために防護区域全体に泡が放出されることがなくなる。更にリザーブタンクに貯留した泡水溶液を再利用することが可能となって、下水への排水処理の必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施形態1.
以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る泡消火設備を示す模式図である。
【0010】
本実施形態の泡消火設備は、一次側配管1と、防護区画毎に配設された二次側配管2と、一次側配管1と各二次側配管2の間にそれぞれ設置された流出検出手段としての流水検知装置3と、二次側配管2の複数箇所に接続された閉鎖型泡ヘッド4と、一次側配管1の途中に設けられ、泡原液タンク5からの泡原液とポンプ6により汲み上げられる水槽7からの水を混合して泡水溶液を生成する混合器8と、流水検知装置3と閉鎖型泡ヘッド4の間に二次側配管2から分岐させて設けた試験用配管9と、試験用配管9の途中に設置された常時閉の試験弁11と、試験用配管9の先端に開放状態で取り付けられた試験用泡ヘッド4Aと、試験用泡ヘッド4Aを囲む容器12からなり、かつ下部に試験用泡ヘッド4Aから放出される泡をため込むリザーブタンク12aを有する発泡試験装置13とを備えている。なお試験用泡ヘッド4Aは、閉鎖型泡ヘッド4が火災を検知して開放状態にあるもの、つまりグラスバルブ等の感熱部を有しないものが使用される。また容器12の上部は、試験用泡ヘッド4Aよりも高い位置にあればよく、必ずしも試験用泡ヘッド4Aを囲む必要はない。
【0011】
泡原液タンク5は、内部がダイアフラム5aによって上下2室に隔離され、下部室5b内に泡原液が貯留されるとともに、上部室5c内にポンプ6からの水の一部が流入するように構成され、上部室5c内に流入した水が作動流体となって、流入水と同量の泡原液を混合器8に送り出すようになっている。
【0012】
混合器8の二次側配管には、逆止弁14が設置され、補助ポンプ18が起動される際、リザーブタンク12a内の泡水溶液が混合器8側へ流入するのを防止している。
【0013】
ポンプ6の二次側の一次側配管1には圧力空気槽15が接続され、圧力空気槽15にその内部圧力の低下を検出する圧力スイッチ16が接続されており、圧力スイッチ16の信号線がポンプ6を制御するポンプ制御盤17に接続されている。したがって、配管内の圧力低下により圧力空気槽15内の圧力が低下すると、これを圧力スイッチ16が検知してポンプ制御盤17に知らせ、ポンプ制御盤17によって直ちにポンプ6が起動されるようになっている。
【0014】
リザーブタンク12aは、流水検知装置3と混合器8の間、ここでは逆止弁14を設けているため流水検知装置3と逆止弁14の間に、補助ポンプ18を介して接続されており、発泡試験時にリザーブタンク12aに貯留される泡水溶液を回収することなく再利用できるようになっている。
【0015】
発泡試験装置13の容器12の上部には、発泡試験時に容器12内で発泡した泡を外部に取り出す手段である扉19が設けられているとともに、扉19の直下に平板によってスロープ21が形成され、取り出した泡をスロープ21上を伝って下方へ流すことにより下方で泡を採集できるようにしていて、泡水溶液の性能試験を行えるようになっている。なお、ここでは泡を外部に取り出す手段として扉19を例に挙げて説明したが、その他にも例えば容器12上部に、試験用泡ヘッド4Aの下方空間に所定量突出する奥行き寸法を有する引き出しを設置する等、種々のものを採用できることは言うまでもなく、適宜選択すればよい。
【0016】
本実施形態の泡消火設備の点検は以下のように行われる。まず試験用配管9の途中に設置されている常時閉の試験弁11を手動あるいは遠隔操作により開いて、泡消火設備のシステムを擬似的に火災発生状態下におく。二次側配管2には泡水溶液が封入されており、試験弁11を開くと試験用泡ヘッド4Aから泡となって放出される。これにより、二次側配管2内の圧力が低下すると、流水検知装置3が動作して、図示しない監視盤に流水信号を出力する。流水検知装置3から流水信号出力があれば、監視盤の表示装置により確認できるので、流水検知装置3が正常に動作したことがわかる。
【0017】
また、一次側配管1の圧力が低下すると、圧力空気槽15内の圧力が低下する。この圧力空気槽15内の圧力低下は、圧力スイッチ16によって検知され、圧力が低下したことがポンプ制御盤17に知らせられる。ポンプ制御盤17は、圧力スイッチ16からの信号が入力すると、直ちにポンプ6を起動させ、混合器8により泡水溶液を生成させて、泡水溶液の供給を開始させる。
【0018】
容器12内で試験用泡ヘッド4Aから放出された泡や水溶液に還元された泡水溶液は、発泡試験装置13のリザーブタンク12aに全て貯留され、次回の発泡試験時に、再利用される。この再利用は、点検時に圧力スイッチ16が圧力低下を検知して、ポンプ制御盤17に圧力低下信号が入力したら、ポンプ6を起動させるかわりに、補助ポンプ18を起動することで行われる。またリザーブタンク12a内に水位センサを設け、あるいはリザーブタンク12aと補助ポンプ18との間の配管内に泡水溶液の存在を検出する一対の電極からなるフロースイッチを設け、火災時に、初めに補助ポンプ18を起動させて、リザーブタンク12a内の泡水溶液がなくなったことを水位センサあるいはフロースイッチの出力により検知したら、ポンプ6を起動させるようにしてもよい。
【0019】
泡水溶液の性能試験は、発泡試験装置13の容器12内に泡が充満している状態で扉19を開け、泡の一部を取り出し、取り出した泡をそのままスロープ21上を下方へ流し、その泡を箱等で採集して、泡が所定時間泡の状態を保っているか、また発泡倍率が適正であるかを確認する。
【0020】
このように、本実施形態の泡消火設備においては、流水検知装置3の二次側、即ち閉鎖型泡ヘッド4の手前に分岐させて試験用配管9を設け、試験用配管9の途中に常時閉の試験弁11を設置するとともに、試験用配管9の先端に試験用泡ヘッド4Aを開放状態で取り付け、試験用泡ヘッド4Aを、下部にリザーブタンク12aを有する容器12からなる発泡試験装置13内に配置することにより、火災発生を閉鎖型泡ヘッド4で感知する方式の泡消火設備における発泡試験を、泡を外部に流出させることなく行うことができ、発泡試験のために防護区域全体に泡が放出されることがなくなる。
【0021】
また、リザーブタンク12aに貯留した泡水溶液を再利用することができ、下水への排水処理の必要がなくなる。
【0022】
実施形態2.
図2は本発明の第2の実施形態に係る泡消火設備を示す模式図であり、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。
【0023】
この実施形態の泡消火設備は、防護区画毎に配設された二次側配管2に接続される泡ヘッドに開放型泡ヘッド31を用い、一次側配管1と各二次側配管2の間にそれぞれ設置された流水検知装置3の二次側に、弁開放用のシリンダ室を有する一斉開放弁32を設置し、一斉開放弁32のシリンダ室には、途中に火災感知用の閉鎖型スプリンクラヘッド33と常時閉の起動弁34が接続された火災検知用配管35の一端を接続している。
【0024】
そして、一斉開放弁32と開放型泡ヘッド31の間には、常時開の仕切弁36を設置するとともに、一斉開放弁32と仕切弁36の間に分岐させて試験用配管9Aを設け、試験用配管9Aの途中には、常時閉の試験弁11Aを設置し、更に試験用配管9Aの先端に、発泡試験装置13の容器12内に位置させて前記開放型泡ヘッド31と同じ型の開放型試験用泡ヘッド31Aを取り付けて構成されている。それ以外の構成は、前述の第1実施形態のものと同様である。
【0025】
この実施形態の泡消火設備の点検は以下のように行われる。まず一斉開放弁32と開放型泡ヘッド31の間に設置してある常時開の仕切弁36を手動あるいは遠隔操作により閉じるとともに、試験用配管9Aに設置してある常時閉の試験弁11Aを手動あるいは遠隔操作により開き、この状態で火災検知用配管35に設置してある常時閉の起動弁34を手動あるいは遠隔操作により開いて、泡消火設備のシステムを擬似的に火災発生状態下におく。
【0026】
このようにして、一斉開放弁32の二次側配管2を開放型試験用泡ヘッド31Aを介して発泡試験装置13と接続した状態で、起動弁34を開くと、火災検知用配管35に封入してある加圧水または圧縮空気が流出する。火災検知用配管35に封入してある加圧水または圧縮空気が流出すると、火災検知用配管35内の圧力が低下して一斉開放弁32が開放し、一斉開放弁32の一次側と二次側が連通し、一斉開放弁32の一次側配管に封入してある泡水溶液が試験用配管9Aへと流れ、開放型試験用泡ヘッド31Aから泡となって放出される。これにより、流水検知装置3が動作し、図示しない制御盤に流出信号を出力する。流水検知装置3から流出信号出力があれば、制御盤の表示装置により確認できるので、流水検知装置3が正常に動作したことがわかり、延いては一斉開放弁32が正常に動作したことを確認することができる。
【0027】
また、一次側配管1の圧力低下を、圧力空気槽15の圧力スイッチ16が検知し、ポンプ制御盤17に圧力低下信号を出力し、ポンプ6が起動され、混合器8により泡水溶液を生成させて泡水溶液の供給を開始させる。そして、容器12内で開放型試験用泡ヘッド31Aから放出された泡や水溶液に還元された泡水溶液は、発泡試験装置13下部のリザーブタンク12aに貯留される。
【0028】
このように、一斉開放弁32と仕切弁36の間に分岐させて試験用配管9Aを設け、試験用配管9Aの途中に常時閉の試験弁11Aを設置するとともに、試験用配管9Aの先端に開放型試験用泡ヘッド31Aを取り付け、開放型試験用泡ヘッド31Aを、下部にリザーブタンク12aを有する容器12からなる発泡試験装置13内に配置することにより、火災発生を閉鎖型スプリンクラヘッド33で感知して、開放型泡ヘッド31より泡を放出する方式の泡消火設備における発泡試験を、泡を外部に流出させることなく行うことができ、発泡試験のために防護区域全体に泡が放出されることがなくなる。更にリザーブタンク12aに貯留した泡水溶液は、再利用することが可能であり、下水への排水処理の必要もなくなる。なお仕切弁36と試験弁11Aを三方切換弁で構成してもよい。
【0029】
なお、前述の第1実施形態において、試験用配管は閉鎖型泡ヘッドの手前で手前で分岐させなくてよく、例えば二次側配管の末端に試験用配管を設けてもよい。
【0030】
また、前述の第2実施形態では火災感知用の閉鎖型スプリンクラヘッドと一斉開放弁を備えた泡消火設備を例に挙げて説明したが、次のような消火設備にも本発明を適用可能である。つまり流出検出手段として、流水検知機能付きの常時閉の弁を設け、この弁を防護区画に設けた火災感知器が火災を検知した時に開放させる方式の消火設備にも本発明を適用することができる。
【0031】
リザーブタンクは、流出検出手段と混合器の間に補助ポンプを介して接続したので、前回の発泡試験時にリザーブタンクに貯留した泡水溶液の再利用が容易となる。
発泡試験装置に、該発泡試験装置内で発泡した泡を外部に取り出す手段を設けたので、泡水溶液の性能試験が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る泡消火設備を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る泡消火設備を示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 一次側配管、 2 二次側配管、 3 流水検知装置(流出検出手段)
4 閉鎖型泡ヘッド、 4A 試験用泡ヘッド、 8 混合器、
9,9A 試験用配管、 11,11A 常時閉の試験弁、 12 容器、
12a リザーブタンク、 13 発泡試験装置、 18 補助ポンプ、
19 扉(泡取り出し手段)、 31 開放型泡ヘッド、
31A 開放型試験用泡ヘッド、 32 一斉開放弁、
33 火災感知用の閉鎖型スプリンクラヘッド、 34 常時閉の起動弁
35 火災検知用配管、 36 常時開の仕切弁、tt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側配管と二次側配管の間に設置された流出検出手段と、前記二次側配管に接続された閉鎖型又は開放型泡ヘッドと、前記一次側配管の途中に設けられ、泡原液と水を混合して泡水溶液を生成する混合器とを有する泡消火設備において、
前記流出検出手段の二次側に設けた試験用配管と、
該試験用配管の途中に設置された常時閉の試験弁と、
前記試験用配管の先端に開放状態で取り付けられた試験用泡ヘッドと、
該試験用泡ヘッドから放出される泡をため込む発泡試験装置を設けたことを特徴とする泡消火設備。
【請求項2】
前記試験用泡ヘッドを囲む容器を備え、泡を外部に流出させることなく発泡試験を行うことを特徴とする請求項1記載の泡消火設備。
【請求項3】
前記発泡試験装置は、リザーブタンクを有することを特徴とする請求項1又は2いずれかに記載の泡消火設備。
【請求項4】
前記リザーブタンクは、前記流出検出手段と前記混合器の間に補助ポンプを介して接続されていることを特徴とする請求項3記載の泡消火設備。
【請求項5】
一次側配管と、二次側配管との間に設置された流出検出手段と、前記二次側配管に接続された開放型泡ヘッドと、弁開放用のシリンダ室を有し、前記流出検出手段の二次側に設置された一斉開放弁と、一端が前記一斉開放弁のシリンダ室に接続されるとともに、途中に火災感知用の閉鎖型スプリンクラヘッドと常時閉の起動弁が接続された火災検知用配管と、前記一次側配管の途中に設けられ、泡原液と水を混合して泡水溶液を生成する混合器とを有する泡消火設備において、
前記一斉開放弁と開放型泡ヘッドの間に設置された常時開の仕切弁と、前記一斉開放弁と前記仕切弁の間に分岐させて設けた試験用配管と、該試験用配管の途中に設置された常時閉の試験弁と、前記試験用配管の先端に取り付けられた開放型試験用泡ヘッドと、該開放型試験用泡ヘッドを囲む容器からなる発泡試験装置とを備えたことを特徴とする泡消火設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−247431(P2006−247431A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−174061(P2006−174061)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【分割の表示】特願平9−30636の分割
【原出願日】平成9年2月14日(1997.2.14)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】