説明

波によりオブジェクトを照らすための、又は波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステム

レンズ(10)と、複数の変換器(20)と、前記複数の変換器に接続された制御ユニット(30)とを備え、波によりオブジェクトを照らすための、或いは波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステム。レンズは、媒体(11)内に組み込まれた複数の共振素子(12)を備え、また、レンズの近傍界波を遠方界波に、又は相互に変換することができる。共振素子は、互いにサブ波長の距離だけ離れている。制御ユニットは、要求に応じてオブジェクトの複数点が照らされるように変換器に対して信号を提供し、或いは、オブジェクトの複数点のイメージを構築するために変換器から信号を取得する。それらの点は互いにサブ波長の距離だけ離れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波によりオブジェクトを照らすための、又は波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の金属拡散器によって囲まれた反応タイプのアンテナ素子を有するデバイスが、出願人自身の特許出願WO−2008/007024により知られている。この装置のために、電磁波は、サブ波長の距離でアンテナ素子に近接する位置iに焦点が合わされる。
【0003】
このデバイスは効率的であるが、反応アンテナ素子のコアへの、即ち、金属拡散器から短距離にある単一点のみへの波の焦点合わせに限られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の第1の目的は、波によりオブジェクトを照らすためのシステムであり、前記オブジェクトがそのシステムのレンズからサブ波長の距離にあるものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この効果のために、波によりオブジェクトを照らすためのシステムは、
・遠方界波を近傍界波に収束させるレンズを備え、
前記レンズは、媒体と、当該媒体内に組み込まれる複数の共振素子とを備え、各共振素子は媒体内で他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fとを有し、
・前記レンズから離れた複数の変換器を備え、前記複数の変換器は変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、インデックス番号jの信号t(t)に基づいてレンズに向けて遠方界波を放射するために適合されており、また、
・前記変換器に接続された制御ユニットを備え、前記制御ユニットは変換器に対してインデックス番号jの信号t(t)を提供して、その結果、その信号に対応する遠方界波を変換器が放射し、かつ、所望の近傍界波をレンズが生成し、前記近傍界波はオブジェクトに属する少なくともインデックス番号iの複数の点Piに焦点が合わされ、その結果、前記所望の近傍界波により前記オブジェクトが照射され、
そこにおいて、
・共振波長λは変換器波長バンド幅Δλ内のλminとλmaxの間から成り、その結果、近傍界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλに広がり、
・第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、かつ、
・当該システムは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Pを位置決めするために適合された位置決め手段を更に備え、前記第2の距離dはλmax/5より短い。
【0006】
これらの特徴のため、システムは、レンズから短いサブ波長の距離に置かれたオブジェクト上の複数の点Pを照らすことができる。
【0007】
照射のためのシステムの各種実施形態において、以下の特徴の一つ、及び/又はその他は、任意に組み込まれることができる。
・所望の近傍界波は、前記複数の点上に同時に焦点が合わされる。
・幅wはd/5より短く、また、好ましくはd/20より短い。
・第1の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い。
・第2の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い。
・共振素子の長さlは概ねλ/2又はその倍数に等しい。
・共振素子は複数の長さを有し、その結果、レンズがλminとλmaxの間に複数の共振波長λを有する。
・システムが、前記レンズに組み込まれた少なくとも一つのレンズ変換器を更に備え、前記レンズ変換器がレンズ信号l(t)の供給を受け、制御ユニットが、前記レンズ変換器に接続され、かつ、前記レンズ信号l(t)を供給する。
・制御ユニットが、以下の式の何れか一つにより、インデックス番号jの変換器の信号t(t)を計算する。
時間領域において、t(t)=hij−1(t)*o(t)
周波数領域において、t(t)=IFFT(Hij−1(ω)・O(ω))
但し、
(t)は、オブジェクト上の所望の近傍界波に対応するオブジェクト信号、
ij(t)は、オブジェクトのインデックス番号iの点上に近傍界波の焦点を合わせるために設計された所定のフィルタ、
tは時間値、
*はコンボリューション積の演算子、
(ω)はオブジェクト信号o(t)のフーリエ変換、
ij(ω)は所定フィルタhij(t)のフーリエ変換、
IFFTは逆フーリエ変換、また、
ωは、fが所望の近傍界波の周波数であるところの、2・π・fに等しい周波数脈動である。
・所定フィルタhij(t)は、以下のうちの一つである。
・遅延フィルタであり、その結果、制御ユニットがビーム形成式を演算する。また、
・オブジェクトのインデックス番号iの点とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)に基づいて決定されるフィルタ。また、
・オブジェクトのインデックス番号iの点とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)の時間的反転gij(−t)。
・インパルス応答gij(t)は、インデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に少なくとも一つの校正変換器が置かれ、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される初期学習ステップの間に決定される。
・インパルス応答gij(t)は、コンピュータで作動中のシミュレーションツールがシステムのモデルで満たされる初期学習ステップの間に決定され、前記モデルはインデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に置かれた少なくとも一つの校正変換器を備え、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される。
・変換器が電磁遠方界波を放射するために適合された電磁アンテナ素子であり、また、共振素子が電磁遠方界波を受信して電磁近傍界波を放射するために適合された導電ワイヤである。
・変換器が光の遠方界波を放射するために適合されたフォトエミッタであり、また、共振素子が、前記光の遠方界波を受信し、かつ、光の近傍界波を放射するために適合された導電素子である。
・導電素子は50nmより狭い幅wを有するナノ粒子又は導電素子である。
・導電素子は第1の波長λの波を受信し、かつ、前記第1の波長λとは異なる第2の波長λの波を放射するために適合された活性物質を備える。
・前記活性物質は、量子ドット、及び染料、及び蛍光分子のうちの一つである。
【0008】
本発明の別の目的は、波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステムを提供することであり、前記オブジェクトはシステムのレンズからサブ波長の距離にある。
【0009】
この効果のため、波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステムは、
・近傍界波を遠方界波に発散させるためのレンズを備え、
前記レンズは、媒体と、当該媒体内に組み込まれる複数の共振素子とを備え、各共振素子は他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・共振波長λに対応する共振周波数fと、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlとを有し、
・前記レンズから離れた複数の変換器を備え、前記複数の変換器は変換器波長バンド幅Δλを有し、また、レンズから遠方界波を受け取り、かつ、前記遠方界波を表すインデックス番号jの信号t(t)を提供するために適合されており、また、
・前記変換器に接続された制御ユニットを備え、当該制御ユニットは、前記変換器からインデックス番号jの信号t(t)の供給を受け、かつ、それらによってオブジェクトに属するインデックス番号iの複数の点Piにおける近傍界波を決定し、その結果、前記オブジェクトのイメージを取得するように適合されており、
そこにおいて、
・共振波長λは変換器波長バンド幅Δλの内のλminとλmaxの間から成り、その結果、遠方界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλに広がり、
・第1のdはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、かつ、
・当該システムは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Piを位置決めするために適合された位置決め手段を更に備え、前記第2の距離dはλmax/5より短い。
【0010】
これらの特徴のため、システムは、レンズから短いサブ波長の距離に置かれたオブジェクト上の複数の点Piのイメージを提供することができる。
【0011】
本発明により提案されるイメージ化のためのシステムの各種実施形態において、以下の特徴の一つ、及び/又はその他は、任意に組み込まれることができる。
・近傍界波は、前記複数の点上で同時に決定される。
・幅wはd/5より短く、また、好ましくはd/20より短い。
・第1の距離dはλmax/20より低く、また、好ましくはλmax/50より短い。
・第2の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い。
・共振素子の長さlは概ねλ/2又はその倍数に等しい。
・共振素子は複数の長さを有し、その結果、レンズがλminとλmaxの間に複数の共振波長λを有する。
・システムが、前記オブジェクトに向けてλminとλmaxの間からなる波長を有する波を放射するための放射手段を更に備え、その結果、近傍界波が前記オブジェクトから屈折され又は反射され、前記近傍界波が、λminとλmaxの間からなる波長を備え、かつ、レンズによって遠方界波に発散される。
・システムが、前記オブジェクトに接続された放射手段を更に備え、その結果、λminとλmaxの間からなる波長を備え、かつ、レンズによって遠方界波に発散される近傍界波をオブジェクトそれ自身が放射する。
・システムが、前記レンズに組み込まれた少なくとも一つのレンズ変換器を更に備え、前記レンズ変換器がレンズ信号l(t)の供給を受け、制御ユニットが、前記レンズ変換器に接続され、かつ、前記レンズ信号l(t)を供給する。
・制御ユニットが、
・変換器から信号t(t)を受信し、
・下記の式に従ってインデックス番号iの点の各々のオブジェクト信号o(t)を計算し、
(t)=hij(t)*t(t)
但し、
ij(t)はインデックス番号iの点上の近傍界波を決定するために設計された所定のフィルタ、
*はコンボリューション積の演算子である。また、
・インデックス番号iの点の各々のオブジェクト信号o(t)の起点時間の値o(0)によりオブジェクトのイメージを構築する。
・所定フィルタhij(t)は、以下のうちの一つである。
・遅延フィルタであり、その結果、制御ユニットがビーム形成式を演算する。また、
・オブジェクトのインデックス番号iの位置とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)に基づいて決定されるフィルタ。また、
・オブジェクトのインデックス番号iの位置とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)の時間的反転gij(−t)。
・インパルス応答gij(t)は、インデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に少なくとも一つの校正変換器が置かれ、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器の間で少なくとも校正信号が交換される初期学習ステップの間に決定される。
・インパルス応答gij(t)は、コンピュータで作動中のシミュレーションツールがシステムのモデルで満たされる初期学習ステップの間に決定され、前記モデルはインデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に置かれた少なくとも一つの校正変換器を備え、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される。
・変換器が電磁遠方界波を受信するために適合された電磁アンテナ素子であり、また、共振素子が電磁近傍界波を受信して電磁遠方界波を放射するために適合された導電ワイヤである。
・変換器が光の遠方界波を受信するのに適したフォトレシーバであり、また、共振素子が、前記光の近傍界波を受信し、かつ、光の遠方界波を放射するために適合された導電素子である。
・導電素子は50nmより狭い幅wを有するナノ粒子又は導電素子である。
・導電素子は第1の波長λの波を受信し、かつ、前記第1の波長λとは異なる第2の波長λの波を放射するのに適した活性物質を備える。
・前記活性物質は、量子ドット、及び染料、及び蛍光分子のうちの一つである。
【0012】
本発明の他の目的は、波でオブジェクトを照らすための方法を提供することにある。そこにおいて、
・遠方界波を近傍界波に収束させるためのレンズを形成するために媒体の内部に共振素子が組み込まれ、前記共振素子は媒体内の他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fとを有し、前記共振波長λはλminとλmaxの間から成り、また、第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合される。
・第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Pが位置決めされ、前記第2の距離dはλmax/5より短い。
・複数の変換器が前記レンズから離れて位置決めされ、前記複数の変換器は、λminとλmaxを備える変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、インデックス番号jの信号t(t)に基づいてレンズに向かう遠方界波を放射するように適合されている。また、
・インデックス番号jの信号t(t)が変換器に提供され、その結果、変換器がその信号に対応する遠方界波を放射し、かつ、レンズが所望の近傍界波を生成する。前記近傍界波は、λminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλの中に含まれる波長を有し、かつ、前記オブジェクトに属するインデックス番号iの少なくとも複数の点Pに焦点が合わされ、その結果、当該所望の近傍界波によって前記オブジェクトが照らされる。
【0013】
本発明の他の目的は、波でオブジェクトをイメージ化するための方法を提供することにある。そこにおいて、
・オブジェクトは近傍界波を放射し、かつ、
・近傍界波を遠方界波に発散させるレンズを形成するために媒体内部に共振素子が組み込まれ、前記共振素子は、第1の距離dより短い距離だけ媒体内の他の共振素子から間隔を置いて配置されており、かつ、
・前記第1の距離dより狭い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fと、を備え、前記共振波長λはλminとλmaxの間に含まれ、また、第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、また、前記遠方界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλの中に含まれる波長を有し、
・オブジェクトの少なくとも一つの点Pは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離だけ離れたところに配置され、前記第2の距離dはλmax/5より短く、
・複数の変換器は前記レンズから離れて配置され、前記複数の変換器は、λminとλmaxを備える変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、レンズから遠方界波を受信するために、また、前記遠方界波を表すインデックス番号jの信号t(t)を提供するために、適合されており、また、
・インデックス番号jの信号t(t)は、オブジェクトに属するインデックス番号iの複数の点Pで、それらによって近傍界波を決定し、その結果、前記オブジェクトのイメージを取得するために、制御ユニットに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の他の特徴及び効果は、添付の図面を参照して、限定的でない例の手法で与えられる、その二つの実施形態に関する以下の詳細な説明により明らかになると思われる。図面の説明は以下の通りである。
【図1】オブジェクトを照らすシステム、又はオブジェクトをイメージ化するシステムの概略図である。
【図2】図1のレンズの詳細図である。
【図3】近傍界波及び遠方界波に関する波長のバンド幅を理解するためのプロットである。
【図4a】図1のレンズ内部の3つのTEM(Transverse Electro-magnetic)モードの1つの図である。
【図4b】図1のレンズ内部の3つのTEMモードの1つの図である。
【図4c】図1のレンズ内部の3つのTEMモードの1つの図である。
【図5】レンズ有り及び無しで図1のシステムによりオブジェクトを照らした場合の結果に関するプロットである。
【図6】図1のシステムによりオブジェクトをイメージ化した場合の結果に関するプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、第1に波でオブジェクトを照らすシステムに、また、第2に波でオブジェクトをイメージ化するシステムに関する。
【0016】
以下にオブジェクトを照らすシステムを記載する。オブジェクトをイメージ化するシステムはこの記載の後に記載する。
【0017】
波は如何なるタイプの波でもよい。音波、電磁波、光学波であり得る。少なくとも変換器に関する僅かな相違を伴うことで、システムは各タイプの波に適応させることができる。変換器は、実際、波の一つのタイプに関して特定の波長バンド幅Δλに通常適合される。
【0018】
図1を参照して、以下、電磁波に適合されたシステムを例示する実施の形態1を記載する。
【0019】
オブジェクトを照らすためのシステムは、
・遠方界波WFFを近傍界波WNFに収束させるレンズ10と、
・複数の変換器20と、を備え、前記変換器は、個々にTで示され(jは複数のうちの一つの変換器のインデックス番号)、かつ、レンズ10に向けて遠方界波WFFを放射するために適合されており、また、
・前記変換器20に接続され、かつ、信号t(t)をインデックス番号jの変換器Tに提供する制御ユニット30を備える。
【0020】
制御ユニット30は、以下に基づいて信号t(t)を演算するように適合されている。
・例えば複数の点Pで要求されるオブジェクト信号o(t)によって定義されるオブジェクト1に焦点が合わされる所望の近傍界波WDNF(iはインデックス番号)、及び、
・システム、例えば近傍界波WNFを点Pに焦点合わせするために設計された所定のフィルタhij(t)フィルタについての知識。
【0021】
各点Pは前記オブジェクト1の表面2に帰属している。前記表面2は平面であってもそうでなくてもよい。
【0022】
制御ユニット30は、従って、以下の数式を演算する。
時間領域において、t(t)=hij−1(t)*o(t)、又は (1)
周波数領域において、t(t)=IFFT(Hij−1(ω)・O(ω))(2)
但し、
(t)は、オブジェクト上の所望の近傍界波に対応するオブジェクト信号、
ij(t)は、オブジェクトのインデックス番号iの点上に近傍界波の焦点を合わせるために設計された所定のフィルタ、
tは時間値、
*はコンボリューション積の演算子、
(ω)はオブジェクト信号o(t)のフーリエ変換、
ij(ω)は所定フィルタhij(t)のフーリエ変換、
IFFTは逆フーリエ変換、また、
ωは、fが所望の近傍界波の周波数であるところの、2・π・fに等しい周波数脈動である。
【0023】
上記の所定フィルタhij(t)は多数の公知方法により決定することができる。
【0024】
第1の変形によれば、上記の所定フィルタhij(t)は遅延フィルタであり、その結果、上記(1)式は公知のビーム形成焦点合わせに対応する。
【0025】
第2の変形例によれば、上記の所定フィルタhij(t)は、変換器jと点Pとの間のインパルス応答gij(t)でそれら自身が演算される。
【0026】
第3の変形例によれば、上記の所定フィルタhij(t)は、時間的反転に関してとりわけFR−2748137及びWO−2008/007024において説明されているように、変換器jと点Pとの間のインパルス応答gij(t)の時間的反転gij(−t)でそれら自身が演算される。
【0027】
複数の変換器20は、レンズ20から離れており、かつ、レンズ20に向けて遠方界波WFFを放射する。各変換器Tは制御ユニット30により提供される信号t(t)の供給を受け、その結果、複数の変換器20が遠方界波WFFを放射する。
【0028】
前記複数のうちの一つの変換器Tは波長バンド幅Δλを有する。
【0029】
電磁波の場合には、変換器Tは電磁アンテナ素子である。電磁波は、300GHzと300MHzとの間の周波数に対応して、1mmと1mとの間の波長λを例えば有している。
【0030】
レンズ10は、媒体11と、前記媒体11の中に組み込まれる複数の共振素子12とを備える。媒体11は、固体誘電材料とすることができ、また、活性材料を備えてもよい。
【0031】
電磁波の場合には、共振素子12は、伝導性のワイヤ、例えば金属又は銅のワイヤである。レンズ10は、オブジェクト1に面する第1表面10aと前記第1表面と反対側の第2表面10bとを伴う平行6面体形状を有してもよい。遠方界波WFFは、少なくとも、変換器20と、レンズ10の第2表面との間を伝播する。レンズ10は、その遠方界波WFFを近傍界波WNFに変換する。近傍界波WNFは、少なくともレンズ10の第1表面10aとオブジェクト1との間を伝播する。
【0032】
共振素子12は、レンズ10の第1表面10aと第2表面10bとの間に延在する。それらは(図2参照)、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fとを有している。
【0033】
図2の場合は、上記の方向は平面XYの方向であり、また、上記他の方向はZ方向である。
【0034】
共振素子の共振波長λは、λminとλmaxとの間に含まれ、例えば、2・lの倍数である。共振素子12の長さIは、凡そλ/2又はその倍数に等しく、従って、ファブリー・ペロー共振に対応している。
【0035】
共振波長λは、変換器波長バンド幅Δλにも含まれており、その結果、近傍界波WNFは前記λminとλmaxとの間の所望の波長バンド幅Δλの中に広がる。図3は、波長のこれらの間隔を表す。
【0036】
共振素子12は、第1の距離dより低い距離だけ互いに離れて配置されている。第1の距離はサブ波長距離であり、通常はλmax/5より短く、その結果、共振素子が互いに結合される。しかし、第1の距離dは、λmax/20より短く、好ましくはλmax/50より短く、その結果、共振素子が互いに極めて近接し、かつ、互いに高度に連結されていてもよい。
【0037】
共振素子12は、図2に示すように、Z方向に第1表面10aから第2表面に延びる直線であり、かつ、X又はY方向に第1の距離dだけ互いに規則的に離れて配置されていてもよい。しかし、共振素子12は異なる形状を有してもよく、互いに傾斜していてもよく、また、互いに不規則に離れて配置されていてもよい。
【0038】
図2の場合、共振素子12はZ方向に長さIを有している。それらは、第1表面10aに第1の端部12aを、また、第2表面10bに第2の端部12bを有しており、これらの平面10a,10bはZ方向に凡そ垂直な平面である。第1の端部12a及び第2の端12bは、前記表面に小さなディスクのグリッドを形成する。これらのディスクは幅wを有しており、それらの中心は凡そ第1の距離dに等しい距離だけ近隣のディスクから間隔を置いて配置される。
【0039】
共振素子12の幅wは、d/5より短く、また、好ましくはd/20短い。従って、共振素子12の幅wは極めて小さく、また、λmax/25より短く、更に好ましくはλmax/100より短い。
【0040】
この種のレンズはワイヤ媒体としても公知である。ワイヤ導電素子12を備えるこの種のワイヤ媒体では、磁場ベクトルBと電界ベクトルEがZ方向に対して垂直であり、また、伝搬波ベクトルKが前記Z方向と共線的な伝播ベクトルである。ワイヤ媒体の内部において、電磁波は、Z方向に沿って媒体11内部を伝播する平面波である。
【0041】
磁場ベクトルBおよび電界ベクトルEは、波節と波腹を伴い、前記媒体11の内部でトランスバース・エレクトロマグネティックモード(TEM)を有する。これらのTEMモードはX及びY方向に沿ってサブ波長変化を有する。図4a、図4b及び図4cは、3つの異なるモードに従う媒体11内部の電界ベクトルEの振幅変化の例を表している。各モードは、媒体11内部に異なるパターンを有し、かつ、他のモードに対して直角である。磁場ベクトルB及び電界ベクトルEのZ成分は媒体11内部においてゼロである。
【0042】
媒体11は従って異方性の媒体である。各TEMモードは同じ伝搬速度と同じ共振周波数を有している。それらは同じ位相速度を有し、また、TEMモードは分散するものではない。
【0043】
近傍界波WNFは振幅及び位相の固有な組みを有するこれらのTEMモードに分解し、その結果、近傍界波WNFは、レンズ10内部の固有な特定スペクトルに、また、電界の特定の固有な時間的特徴(signature)に変換される。レンズは、固有な特定の方法に従って近傍界波をコード化する。
【0044】
近傍界波空間解像度は、その後共振子間の第1の距離d及びレンズ10内での損失により制限される。
【0045】
TEMモードは横波数kを有しており、また、それらは貫通距離dまで媒体の外部を貫通する。
=1/κ=1/√(|k−|k|
但し、
はTEMモードの横波数、
kは自由空間波数、例えば、k=2・π・f/c、
fは波の周波数、また、
cは真空内での電磁波速度である。
【0046】
TEMモード伝播のための長さは、共振素子12の長さlでなく、下記に等しい実効長さLeffである。
eff=(2/κ)+l
【0047】
この実効長さLeffは、次に共振の条件を定義するために用いることができ(ファブリー・ペロー同様の条件のためにはLeff=λ/2)、また、以下の分散関係を与える。
/f=1+2/π・1/√{(|k|/k−(f/f
但し、
fは共振周波数、
はファブリー・ペロー共振周波数、
はTEMモードの横波数、また、
はファブリー・ペロー波数である。
【0048】
レンズ10のTEMモードは、エバネッセント波を生成するだけのサブ波長モードであり、遠方界までレンズの外側を伝播するものではない。
【0049】
しかしながら、電界ベクトルEのZ成分Eは、レンズ10の長手方向の境界(第1表面10a及び第2表面10bの付近)においてゼロではない。この成分Eは、内部TEMモードに連結される。それは、レンズ10内部のTEMモードに見合う程度の周期性を有し、かつ、遠方界波WFFとして放射される。
【0050】
上記の連結は、従って、遠方界波WFFをレンズ10の近傍界波WNFに変換し、また、その逆の変換を行う。このような連結又は変換は、あまり効率的ではなく、また、横波数kに反比例又は関連する。しかし、TEMモードは、非常に効率的であり、かつ、同じ横波数kと比例した品質因子Qを有する。この品質因子は、レンズ内のロスによって減少される。それから、レンズ内部の近傍界TEMモードを介して近傍界波WNFから伝送される信号が、遠方界波Wffに放射され、また、その逆の放射が生ずる。近傍界波のコーディング又は特徴は、遠方界波内に見られることがある。
【0051】
これは、近傍界波WNFがどのように、レンズ内部で特定の電界Eに変換され、次いでレンズから遠方界波WFFに放射されるか、つまり自由空間放射されるかを説明している。反対に、遠方界波WFFは、レンズのTEMモードによって、レンズの内部又は近くで、近傍界波WNFにレンズ10によって変形又は変換される。
【0052】
上記のシステムは、更に、短いサブ波長の距離でレンズ10と関連してオブジェクト1を配置するために適合された位置決め手段(図示せず)を備えている。オブジェクト1の表面2の1点Pは、従って、レンズ(少なくともレンズの共振素子12)から第2の距離dの位置に配置される。前記第2の距離はサブ波長距離であり、かつ、λmax/5より短い。
【0053】
第2の距離dは、λmax/20より、また、好ましくはλmax/50より短くてもよく、その結果、オブジェクト1の点Pはレンズ10に非常に近接し、また、近傍界波WNFによって照らされる。
【0054】
オブジェクトを照らすためのこの種のシステムは、オブジェクト1上に所望の近傍界波WDNFを焦点合わせし、或いは前記所望の近傍界波WDNFでオブジェクト1を照らすこととしてもよい。オブジェクト1の点Pは、異なる所望の近傍界波WDNFで同時に全て照らされることとしてもよい。
【0055】
点Pは、夫々から互いにサブ波長の距離、即ち、λmax/20より、また、好ましくはλmax/50より短い所定の距離だけ離れている。
【0056】
レンズのこの種のふるまいを示すために実験を行った。
【0057】
N×N(N=20)の平行な導電性ワイヤの正方形周期的格子を構成した。各ワイヤは、3mmの直径又は幅wと、Z方向における40cmの長さlとを有している。横方向(XY平面)におけるワイヤ間の第1の距離dは1.2cmである。従って、ワイヤは、互いに、λ/66より短い第1の距離だけ離れている。媒体11は空気である。
【0058】
アンテナ素子(小さい横方向電気双極子)は、複数の点Pにおいて、レンズから2mmの第2の距離dだけ離れて置かれている。
【0059】
初期の学習ステップの間、アンテナ素子には、各点Pに対して300MHz周辺を中心とする5nsのパルスが供給される。遠方界波の中で変換器20によって受信される変換器信号tij(t)は、点Pと変換器Tの間にインパルス応答にgij(t)を与える(gij(t)=tij(t))。レンズのTEMモードへの放射せられた信号の分解は独特であり、その結果、インパルス応答gij(t)又はそのフーリエ変換は点Pの素子の位置に依存し、特有の特徴を与える。
【0060】
次に、照明ステップの間、時間反転実験を実施するために、先の信号の時間的反転である変換信号tij(t)(tij(t)=gij(−t))が、ここでは変換器20に供給される。図5のプロットは、レンズから2mmの位置に定期的に整列配置された複数の点P(プロットの横座標又はx軸)で受信された信号振幅(プロットの縦軸又はy軸)を示す。第1の曲線51は、レンズ有りでの受信振幅を示す。
【0061】
これは、λ/25の波長幅Δの焦点スポットが経験されたことを実証している。近傍界波WNFのこの種の焦点合わせは、従って、異なる無相関な値で各位置Pを照らすために適用される。第2の曲線52は、レンズなしで受信された振幅を示す。
【0062】
オブジェクトを照らすためのこの種のシステムは、遠方界変換器20と近傍界オブジェクト1の間に同時に複数のデータを正確に送信するために用いることができる。
【0063】
以下、ここに、光学波に適応するシステムを例示する第2実施形態について説明する。
【0064】
この第2実施形態のシステムは、第1実施形態と類似しており、また、同様に機能する。以下、相違点だけを説明する。
【0065】
変換器20は、光の遠方界波WFFを放射するために適合されたフォトエミッタである。
【0066】
共振素子12は、遠方界波WFFの波長より短い、例えば50nmより短いサイズ又は幅wを有する小さな導電素子である。この種の小さな導電素子は、入射遠方界波WFFと相互に影響し合う共振周波数をも有しており、また、修正近傍界波WNFを屈折させる。
【0067】
この種の導電素子は、ナノ粒子であってもよい。
【0068】
上記の導電素子は、第1波長λで波を受信し、前記第1波長とは異なる第2波長λで波を放射するように適合された活性物質で構成することができる。この種の活性物質は、量子ドット、又は染料、又は蛍光分子等でであってもよい。
【0069】
オブジェクトを照らすためのこの種のシステムは、サブ波長解像度を伴う光波の焦点合わせのために、例えば、20nmより小さい、好ましくは10nmより小さい解像度のために用いることができる。このシステムは、近傍界波の中で、単一の点を、又は同時に複数の点を、又はイメージを伴う完全な面を照射することができる。
【0070】
このため、オブジェクトを照らすこの種のシステムは、例えば半導体デバイスを正確かつ迅速にエッチングするために用いることができる。
【0071】
以下、音波に適応するシステムを例示する第3実施形態を説明する。
【0072】
音響サブ波長レンズ10は、第1の側から第2の側への複数の孔を有する空気中の剛性構造とすることができる。上記の孔はヘルムホルツ共鳴を有し、かつ、レンズ10の共振素子12であり、その一方で、上記の剛性構造は媒体11である。例えば、厚さ10cmの構造を有することで、1500Hz周辺のモードを伴うレンズが提供される。
【0073】
この種の音響レンズ10は、ワイヤ媒体電磁レンズのように振る舞い、サブ波長近傍界波WNFを近傍界波の時間的及びスペクトル的サインを備える放射遠方界波WFFに、またそれらを相互に、変換する。
【0074】
以下、オブジェクトをイメージ化するためのシステムについて説明する。
【0075】
図1にも関連しつつ、電磁波に適応するシステムを例示している第1実施形態について説明する。
【0076】
このシステムは、オブジェクトを照らすためのシステムと非常に類似しており、波が逆方向に伝播する。それは、
・近傍界波WNFを遠方界波WFFに発散させるためのレンズ10と、
・レンズ10から遠方界波WFFを受信するために適合された複数の変換器20と、
・前記変換器に接続され、当該変換器から信号t(t)の供給を受け、それによって、オブジェクトに属する複数の点Pでの近傍界波WNFを決定し、前記オブジェクトのイメージを取得する制御ユニット30と、を備えている。
【0077】
各位置は、オブジェクト1の表面2に属している。点Pは、お互いからサブ波長の距離だけ離れている。
【0078】
システムは、レンズ10の少なくとも一つの共振素子12から第2の距離dだけ離れた位置でレンズ10との関係でオブジェクト1を位置決めするために適合された位置決め手段(図示せず)を更に備えている。第2の距離dは、短い距離であって、本発明の第1実施形態に関して、同じ条件を確認する。
【0079】
システムは、更に放射手段を備えている。
【0080】
第1の変形によれば、近傍界波WNFは、オブジェクト1によって間接的に放射せられる。放射手段はオブジェクト1に向けて放射波を放射し、近傍界波WNFは、オブジェクトからレンズ10に向けて反映又は屈折させられる。放射波及び近傍界波は、λminとλmaxの間の波長を有している。
【0081】
第2の変形によれば、近傍界波WNFは、オブジェクト1によって直接放射せられる。放射手段はオブジェクト1に接続され、オブジェクト1自身が、λminとλmaxの間の波長を有する近傍界波WNFを放射する。
【0082】
オブジェクト1は、レンズ10に向けて直接的又は間接的に近傍界波WNFを放射する。レンズ10は、上述した通り、レンズのTEMモードによってこの種の近傍界波WNFを遠方界波WFFに変換又は変性する。
【0083】
レンズは、第1実施形態のものと同一である。
【0084】
複数の変換器20は、レンズから離れており、レンズ10から遠方界波WFFを受信する。各変換器Tは、制御ユニット30に対して変換器信号t(t)を分配する。
【0085】
制御ユニット30は、以下の式に従って、各点Pでのオブジェクト信号o(t)を演算する。
(t)=hij(t)*t(t)
但し、
ij(t)はインデックス番号iの点上の近傍界波を決定するために設計された所定のフィルタであり、この種のフィルタは、上述した通り初期学習ステップにおいて決定される。
また、*はコンボリューション積の演算子である。
【0086】
オブジェクトのイメージは、次いで、オブジェクト信号o(t)の起点時の値o(0)で構築される。
【0087】
レンズのイメージ化能力を実演するために他の実験が実行された。
【0088】
全ての点Pのアンテナ素子と共に、同じ正方形の周期的格子又はグリッドが用いられる。インパルス応答gij(t)を決定するために同じ学習ステップが用いられ、また、制御ユニット30において所定のフィルタが用いられる。所定のフィルタhij(t)は、例えばインパルス応答gij(t)と等しい。
【0089】
次いで、異なる所定の励起がレンズ10前方の各位置Piで生成され、また、制御ユニット30が、オブジェクト信号o(t)と、オブジェクト1のイメージ値を演算する。図6のプロットにおいて、x軸はオブジェクト上の複数の点Piであり、また、y軸は信号の振幅である。図6の点61は前記励起を表しており、また、図6の曲線62は演算されたオブジェクト1のイメージを表している。
【0090】
これらの点と曲線との良好な一致は、システムが、無相関なピクセルを備えるオブジェクト1の正確なイメージを演算し得ること、その結果イメージがλ/80より小さい解像度を有することを実証する。
【0091】
オブジェクトをイメージ化するこの種のシステムは、従って、電子顕微鏡として小さなオブジェクトを正確にイメージ化するために用いることができる。しかしながら、走査型トンネル効果顕微鏡において不可欠であるところ、この種のシステムでは先端(tip)をオブジェクトの表面上方に移動させる必要がない。
【0092】
イメージ化のためのシステムの第2実施形態は、光学波に適合させてもよい。この種の光学システムは、上述した電磁装置と比較して同様の変化を有する。
【0093】
イメージ化のためのシステムの第3実施形態は、音波に適合させてもよい。
【0094】
前述した実施形態及び変形の全ての改良として、システムは、レンズ10に組み込まれ、かつ、制御ユニット30に接続される少なくとも一つのレンズ変換器を備えてもよい。
【0095】
このレンズ変換器は、レンズ10の特性を修正するために制御ユニットによって提供されるレンズ信号l(t)の供給を受けてもよい。例えば、電磁装置の場合は、レンズ変換器は、要求通りにTEMモードを修正するレンズ10内部で電界を生成することができる。
【0096】
このレンズ変換器は、レンズ10内部で情報を回収するために制御ユニット30にレンズ信号l(t)を提供することもできる。この種のレンズ信号は他の変換器が扱われるように制御ユニットによって用いられてもよい。例えば、オブジェクトを構築するイメージはこの種の追加情報により改良することとしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・遠方界波を近傍界波に収束させるレンズを備え、
前記レンズは、媒体と、当該媒体内に組み込まれる複数の共振素子とを備え、
各共振素子は媒体内で他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fとを有し、
・前記レンズから離れた複数の変換器を備え、前記複数の変換器は変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、インデックス番号jの信号t(t)に基づいてレンズに向けて遠方界波を放射するために適合されており、また、
・前記変換器に接続された制御ユニットを備え、前記制御ユニットは変換器に対してインデックス番号jの信号t(t)を提供して、その結果、その信号に対応する遠方界波を変換器が放射し、かつ、所望の近傍界波をレンズが生成し、前記近傍界波はオブジェクトに属する少なくともインデックス番号iの複数の点Piに焦点が合わされ、その結果、前記所望の近傍界波により前記オブジェクトが照射され、
そこにおいて、
・共振波長λは変換器波長バンド幅Δλ内のλminとλmaxの間から成り、その結果、近傍界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλに広がり、
・第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、かつ、
・当該システムは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Pを位置決めするために適合された位置決め手段を更に備え、前記第2の距離dはλmax/5より短い、
波によりオブジェクトを照らすためのシステム。
【請求項2】
上記所望の近傍界波は前記複数の点上に同時に焦点が合わされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記幅wはd/5より短く、また、好ましくはd/20より短い、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
上記第1の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記第2の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
上記共振素子の長さlは概ねλ/2又はその倍数に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
上記共振素子は複数の長さを有し、その結果、レンズがλminとλmaxの間に複数の共振波長λを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記レンズに組み込まれた少なくとも一つのレンズ変換器を更に備え、前記レンズ変換器がレンズ信号l(t)の供給を受け、上記制御ユニットが、前記レンズ変換器に接続され、かつ、前記レンズ信号l(t)を供給する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
上記制御ユニットが、以下の式
時間領域において、 t(t)=hij−1(t)*o(t)
周波数領域において、t(t)=IFFT(Hij−1(ω)・O(ω))
の何れか一つにより、インデックス番号jの変換器の信号t(t)を計算し、
但し、
(t)は、オブジェクト上の上記所望の近傍界波に対応するオブジェクト信号、
ij(t)は、オブジェクトのインデックス番号iの点上に上記近傍界波の焦点を合わせるために設計された所定フィルタ、
tは時間値、
*はコンボリューション積の演算子、
(ω)はオブジェクト信号o(t)のフーリエ変換、
ij(ω)は所定フィルタhij(t)のフーリエ変換、
IFFTは逆フーリエ変換、また、
ωは、fが上記所望の近傍界波の周波数であるところの、2・π・fに等しい周波数脈動である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
上記所定フィルタhij(t)は、
・上記制御ユニットがビーム形成式を演算するように遅延フィルタ、
・オブジェクトのインデックス番号iの点とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)に基づいて決定されるフィルタ、及び
・オブジェクトのインデックス番号iの位置とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)の時間的反転gij(−t)、
のうちの一つである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
上記インパルス応答gij(t)は、インデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に少なくとも一つの校正変換器が置かれ、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される初期学習ステップの間に決定される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
上記インパルス応答gij(t)は、コンピュータで作動中のシミュレーションツールがシステムのモデルで満たされる初期学習ステップの間に決定され、前記モデルはインデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に置かれた少なくとも一つの校正変換器を備え、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
上記変換器が電磁遠方界波を放射するために適合された電磁アンテナ素子であり、また、上記共振素子が電磁遠方界波を受信して電磁近傍界波を放射するために適合された導電ワイヤである、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
上記変換器が光の遠方界波を放射するために適合されたフォトエミッタであり、また、上記共振素子が、前記光の遠方界波を受信し、かつ、光の近傍界波を放射するために適合された導電素子である、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
上記導電素子は50nmより狭い幅wを有するナノ粒子又は導電素子である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
上記導電素子は第1の波長λの波を受信し、かつ、前記第1の波長λとは異なる第2の波長λの波を放射するために適合された活性物質を備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記活性物質は、量子ドット、染料、及び蛍光分子のうちの一つである、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
・近傍界波を遠方界波に発散させるためのレンズを備え、
前記レンズは、媒体と、当該媒体内に組み込まれる複数の共振素子とを備え、
各共振素子は他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・共振波長λに対応する共振周波数fと、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlとを有し、
・前記レンズから離れた複数の変換器を備え、前記複数の変換器は変換器波長バンド幅Δλを有し、また、レンズから遠方界波を受け取り、かつ、前記遠方界波を表すインデックス番号jの信号t(t)を提供するために適合されており、また、
・前記変換器に接続された制御ユニットを備え、当該制御ユニットは、前記変換器からインデックス番号jの信号t(t)の供給を受け、かつ、それらによってオブジェクトに属するインデックス番号iの複数の点Piにおける近傍界波を決定し、その結果、前記オブジェクトのイメージを取得するように適合されており、
そこにおいて、
・共振波長λは変換器波長バンド幅Δλの内のλminとλmaxの間から成り、その結果、遠方界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλに広がり、
・第1のdはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、かつ、
・当該システムは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Piを位置決めするために適合された位置決め手段を更に備え、前記第2の距離dはλmax/5より短い、
波によりオブジェクトをイメージ化するためのシステム。
【請求項19】
上記近傍界波は、前記複数の点上で同時に決定される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
上記幅wはd/5より短く、また、好ましくはd/20より短い、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
上記第1の距離dはλmax/20より低く、また、好ましくはλmax/50より短い、請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
上記第2の距離dはλmax/20より短く、また、好ましくはλmax/50より短い、請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
上記共振素子の長さlは概ねλ/2又はその倍数に等しい、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
上記共振素子は複数の長さを有し、その結果、レンズがλminとλmaxの間に複数の共振波長λを有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
前記オブジェクトに向けてλminとλmaxの間からなる波長を有する波を放射するための放射手段を更に備え、その結果、近傍界波が前記オブジェクトから屈折され又は反射され、前記近傍界波が、λminとλmaxの間からなる波長を備え、かつ、レンズによって遠方界波に発散される、請求項18に記載のシステム。
【請求項26】
前記オブジェクトに接続された放射手段を更に備え、その結果、λminとλmaxの間からなる波長を備え、かつ、レンズによって遠方界波に発散される近傍界波をオブジェクトそれ自身が放射する、請求項18に記載のシステム。
【請求項27】
前記レンズに組み込まれた少なくとも一つのレンズ変換器を更に備え、前記レンズ変換器がレンズ信号l(t)の供給を受け、上記制御ユニットが、前記レンズ変換器に接続され、かつ、前記レンズ信号l(t)を供給する、請求項18に記載のシステム。
【請求項28】
上記制御ユニットが、
・変換器から信号t(t)を受信し、
・下記の式
(t)=hij(t)*t(t)
に従ってインデックス番号iの点の各々のオブジェクト信号o(t)を計算し、
但し、
ij(t)はインデックス番号iの点上の近傍界波を決定するために設計された所定のフィルタであり、
*はコンボリューション積の演算子であり、また、
・インデックス番号iの点の各々のオブジェクト信号o(t)の起点時間の値o(0)によりオブジェクトのイメージを構築する、請求項18に記載のシステム。
【請求項29】
上記所定フィルタhij(t)は、
・制御ユニットがビーム形成式を演算するように遅延フィルタ、
・オブジェクトのインデックス番号iの位置とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)に基づいて決定されるフィルタ、及び
・オブジェクトのインデックス番号iの位置とインデックス番号jの変換器との間のインパルス応答gij(t)の時間的反転gij(−t)、
のうちの一つである、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
上記インパルス応答gij(t)は、インデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に少なくとも一つの校正変換器が置かれ、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器の間で少なくとも校正信号が交換される初期学習ステップの間に決定される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
上記インパルス応答gij(t)は、コンピュータで作動中のシミュレーションツールがシステムのモデルで満たされる初期学習ステップの間に決定され、前記モデルはインデックス番号iの前記点の各々においてオブジェクトの場所内に置かれた少なくとも一つの校正変換器を備え、かつ、前記校正変換器とインデックス番号jの変換器との間で少なくとも校正信号が交換される、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
上記変換器が電磁遠方界波を受信するために適合された電磁アンテナ素子であり、また、上記共振素子が電磁近傍界波を受信して電磁遠方界波を放射するために適合された導電ワイヤである、請求項18に記載のシステム。
【請求項33】
上記変換器が光の遠方界波を受信するのに適したフォトレシーバであり、また、上記共振素子が、前記光の近傍界波を受信し、かつ、光の遠方界波を放射するために適合された導電素子である、請求項18のシステム。
【請求項34】
上記導電素子は50nmより狭い幅wを有するナノ粒子又は導電素子である、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
上記導電素子は第1の波長λの波を受信し、かつ、前記第1の波長λとは異なる第2の波長λの波を放射するのに適した活性物質を備える、請求項34のシステム。
【請求項36】
前記活性物質は、量子ドット、染料、及び蛍光分子のうちの一つである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
・遠方界波を近傍界波に収束させるためのレンズを形成するために媒体の内部に共振素子が組み込まれ、前記共振素子は媒体内で他の共振素子から第1の距離dに満たない距離だけ離されており、かつ、
・前記第1の距離dより短い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fとを有し、前記共振波長λはλminとλmaxの間から成り、また、第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、
・第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離にオブジェクトの少なくとも一つの点Pが位置決めされ、前記第2の距離dはλmax/5より短く、
・複数の変換器が前記レンズから離れて位置決めされ、前記複数の変換器は、λminとλmaxを備える変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、インデックス番号jの信号t(t)に基づいてレンズに向かう遠方界波を放射するように適合されており、また、
・インデックス番号jの信号t(t)が変換器に提供され、その結果、変換器がその信号に対応する遠方界波を放射し、かつ、レンズが所望の近傍界波を生成し、
前記近傍界波は、λminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλの中に含まれる波長を有し、かつ、前記オブジェクトに属するインデックス番号iの少なくとも複数の点Pに焦点が合わされ、その結果、当該所望の近傍界波によって前記オブジェクトが照らされる、
波でオブジェクトを照らすための方法。
【請求項38】
・オブジェクトは近傍界波を放射し、かつ、
・近傍界波を遠方界波に発散させるレンズを形成するために媒体内部に共振素子が組み込まれ、前記共振素子は、第1の距離dより短い距離だけ媒体内で他の共振素子から間隔を置いて配置されており、かつ、
・前記第1の距離dより狭い、近隣の共振素子に向かう方向の幅wと、
・他の方向の長さlと、
・共振波長λに対応する共振周波数fと、を備え、前記共振波長λはλminとλmaxの間に含まれ、また、第1の距離dはλmax/5より短く、その結果、前記共振素子が互いに結合され、また、前記遠方界波はλminとλmaxの間の所望の波長バンド幅Δλの中に含まれる波長を有し、
・オブジェクトの少なくとも一つの点Pは、第2の距離dより短い少なくとも一つの共振素子の距離だけ離れたところに配置され、前記第2の距離dはλmax/5より短く、
・複数の変換器は前記レンズから離れて配置され、前記複数の変換器は、λminとλmaxを備える変換器波長バンド幅Δλを有し、かつ、レンズから遠方界波を受信するために、また、前記遠方界波を表すインデックス番号jの信号t(t)を提供するために、適合されており、また、
・インデックス番号jの信号t(t)は、オブジェクトに属するインデックス番号iの複数の点Pで、それらによって近傍界波を決定し、その結果、前記オブジェクトのイメージを取得するために、制御ユニットに提供される、
波でオブジェクトをイメージ化するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2013−520904(P2013−520904A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554427(P2012−554427)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000626
【国際公開番号】WO2011/101702
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(509011400)サントル ナシオナル デ ラ ルシェルシュ シアンティフィク セエヌエールエス (2)
【Fターム(参考)】