説明

波長分散型蛍光X線分析装置

【課題】波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる波長分散型蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】数え落とし補正手段11が、検出器7のデッドタイムに基づいて計数手段10で求められたパルスの計数率を補正するにあたり、波高分析器9で選別される所定の波高範囲とデッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、その記憶した相関に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するようにデッドタイムを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長分散型の蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分散型の蛍光X線分析においては、試料に1次X線を照射し、試料から発生する蛍光X線を分光素子で分光し、分光された蛍光X線を検出器(シンチレーション計数管、ガスフロー型比例計数管など)で検出してパルスを発生させる。このパルスの電圧すなわち波高は蛍光X線のエネルギーに応じたものであり、パルスの単位時間あたりの数は蛍光X線の強度に応じたものである。そこで、パルスのうち所定の波高範囲のものを波高分析器で選別して、その計数率(単位時間あたりのパルス数)をスケーラ等の計数手段(計数回路)で求めている。
【0003】
さて、X線光子が検出器に入射して1個のパルスが発生すると、その直後の一定時間、いわゆるデッドタイム(不感時間)においては、X線光子が検出器に入射してもパルスは発生しない。また、計数率が高くなってくると、計数手段内でパルスが重なるようになる。これらのことから、計数すべきパルスの数え落としが生じる。
【0004】
そこで、従来、検出器と計数手段の両方に起因する数え落としに関し、特定の波高範囲について、検出器ごとに1つの値としてデッドタイムτを求めておき、このデッドタイムτを用いて、例えば次式(1)により、計数手段で求められたパルスの計数率(計数強度)Nmを補正して、数え落とし補正された計数率、すなわち数え落とし補正強度Ntを求めている(特許文献1、2参照)。
【0005】
Nt=Nm/(1−τNm) (1)
【0006】
また、共存元素の高次線の影響を受けないように式(1)とは異なる計数率を用いる式や(特許文献1参照)、式(1)の分母をNmについての高次式にするとともにそれぞれの係数を相異なる値とした式、さらにその式を表に置き換えること(特許文献2参照)なども提案されている。これらの従来技術による数え落とし補正のための式、表によると、波高分析器で選別される所定の波高範囲が測定によって変更されても、それとは関係なくNmについての係数は一定のままで、数え落とし補正強度が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−226058号公報
【特許文献2】特開昭61−175555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、実際には、デッドタイムτは、波高分析器で選別される所定の波高範囲、つまり波高分析器の下限と上限の設定値によって変化し、それゆえ、特定の波高範囲についての固定値としたのでは、測定時の所定の波高範囲が変わると、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できない。
【0009】
本発明は前記従来の問題に鑑みてなされたもので、波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる波長分散型蛍光X線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1構成の波長分散型蛍光X線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生した蛍光X線を分光する分光素子と、その分光素子で分光された蛍光X線が入射されて、蛍光X線のエネルギーに応じた波高のパルスを強度に応じた数だけ発生させる検出器と、その検出器で発生したパルスのうち所定の波高範囲のものを選別する波高分析器と、その波高分析器で選別されたパルスの計数率を求める計数手段と、計数すべきパルスの数え落としに関し、前記検出器のデッドタイムに基づいて前記計数手段で求められたパルスの計数率を補正する数え落とし補正手段とを備えている。そして、その数え落とし補正手段が、前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、その記憶した相関に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する。
【0011】
第1構成の波長分散型蛍光X線分析装置によれば、数え落とし補正手段が、前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、その記憶した相関に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定するので、波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる。
【0012】
第1構成の波長分散型蛍光X線分析装置においては、前記数え落とし補正手段が、当該装置と同一機種である基準となる装置における前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関、および、基準となる所定の波高範囲における当該装置での前記デッドタイムと前記基準となる装置での前記デッドタイムとの比をあらかじめ記憶しており、それらの記憶した相関および比に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定することが好ましい。この場合には、当該装置において前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ求める必要がなく、当該装置と同一機種である基準となる装置において求められた前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関を利用できる。
【0013】
本発明の第2構成の波長分散型蛍光X線分析装置は、試料に1次X線を照射するX線源と、試料から発生した蛍光X線を分光する分光素子と、その分光素子で分光された蛍光X線が入射されて、蛍光X線のエネルギーに応じた波高のパルスを強度に応じた数だけ発生させる検出器と、その検出器で発生したパルスのうち所定の波高範囲のものを選別する波高分析器と、その波高分析器で選別されたパルスの計数率を求める計数手段と、計数すべきパルスの数え落としに関し、前記検出器のデッドタイムに基づいて前記計数手段で求められたパルスの計数率を補正する数え落とし補正手段とを備えている。そして、その数え落とし補正手段が、複数の計数率における波高分布をあらかじめ記憶しており、その記憶した波高分布に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する。
【0014】
第2構成の波長分散型蛍光X線分析装置によれば、数え落とし補正手段が、複数の計数率における波高分布をあらかじめ記憶しており、その記憶した波高分布に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定するので、波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる。
【0015】
また、本発明の波長分散型蛍光X線分析装置においては、前記数え落とし補正手段が、さらに、蛍光X線のエネルギーの平方根の逆数に対する前記検出器のエネルギー分解能の比例係数、および、前記検出器のエネルギー分解能と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、それらの記憶した比例係数および相関に基づいて、測定時の蛍光X線のエネルギーに対応するように前記デッドタイムを決定することが好ましい。この場合には、走査型の波長分散型蛍光X線分析装置のように、波高分析器で選別される所定の波高範囲のみならず検出器に入射する蛍光X線のエネルギーが変わっても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1および第2実施形態の波長分散型蛍光X線分析装置を示す概略図である。
【図2】従来の波長分散型蛍光X線分析装置の計数直線性を評価した例を示す図である。
【図3】波高分析器の上限設定値を変化させたときのデッドタイムの変化の例を示す図である。
【図4】検出器のエネルギー分解能とデッドタイムとの相関の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態の波長分散型蛍光X線分析装置について、図にしたがって説明する。図1に示すように、この装置は、試料台8に載置された試料3に1次X線2を照射するX線管等のX線源1と、試料3から発生した蛍光X線4を分光する分光素子5と、その分光素子5で分光された蛍光X線6が入射されて、蛍光X線6のエネルギーに応じた波高のパルスを強度に応じた数だけ発生させる検出器7と、その検出器7で発生したパルスのうち所定の波高範囲のものを選別する波高分析器9と、その波高分析器9で選別されたパルスの計数率を求める計数手段10と、計数すべきパルスの数え落としに関し、検出器7のデッドタイムに基づいて計数手段10で求められたパルスの計数率を補正する数え落とし補正手段11とを備えている。そして、その数え落とし補正手段11が、前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、その記憶した相関に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する。
【0018】
このように数え落とし補正手段11を構成するに至った確認実験について、説明する。検出器としてシンチレーション計数管を用いる従来の波長分散型蛍光X線分析装置で、Cu−Kα線を測定した場合の計数直線性を評価した例を図2に示す。縦軸は、数え落とし補正された計数率、つまり数え落とし補正されたX線強度で、単位はcpsである。横軸は、X線管に印加する管電流値(mA)であり、管電圧値(kV)は一定とした。ここで、数え落とし補正に用いるデッドタイムは、波高分布のピークを2Vとした場合、波高分析器の下限設定値LL=1Vかつ上限設定値UL=3Vについて、つまり1〜3Vの波高範囲について求められている。数え落とし補正が適切であれば、電流値とX線強度とは直線性を示すところ、上限設定値が、デッドタイムを求めたときの3Vを超えて、4V、5Vとなると、数え落とし補正が過剰であることが分かる。
【0019】
また、波高分析器の下限設定値LLを1Vに固定して、上限設定値ULを2.5〜5Vで変化させたところ、図3のように、上限設定値ULを大きくするにしたがい、デッドタイムが小さくなることが分かった。
【0020】
そこで、数え落とし補正手段11に、波高分析器9で選別される所定の波高範囲とデッドタイムとの相関をあらかじめ記憶させておき、その記憶した相関に基づいて、分析対象試料(未知試料)の測定時の所定の波高範囲に対応すべくデッドタイムを決定するように構成した。具体的には、この相関は、代表的な、つまりよく用いられる波高分析器9の下限設定値と上限設定値の組合せのそれぞれについてデッドタイムを求めて作成した表である。
【0021】
この表は、例えば、以下のようにして作成できる。まず、代表的な所定の波高範囲の1つ(波高範囲Aとする)について、標準試料を用いて測定を行い、例えば、管電流値5mAにおける計数率NmA1と、管電流値50mAにおける計数率NmA2とを得る。計数率NmA1が正しく数え落とし補正されて計数率NtA1になるとすれば、計数率NmA2が正しく数え落とし補正されれば計数率10NtA1になるはずであるから、前式(1)から、波高範囲Aについてのデッドタイムをτとすれば、次式(2)および(3)が成り立つ。
【0022】
NtA1=NmA1/(1−τNmA1) (2)
【0023】
10NtA1=NmA2/(1−τNmA2) (3)
【0024】
計数率NmA1およびNmA2は既知であるから、式(2)および(3)から、波高範囲Aについてのデッドタイムτを算出できる。この作業を代表的な所定の波高範囲のそれぞれについて行うことにより、前記表を作成できる。
【0025】
また、同一種類の検出器と計数手段(計数回路)を使用している複数の装置では、デッドタイムの絶対値は装置間で若干異なるものの、デッドタイムの相対値の変化量は装置間で少ない。そこで、数え落とし補正手段11に、当該装置における前記所定の波高範囲とデッドタイムとの相関を求めて記憶させる代わりに、当該装置と同一機種である基準となる装置においてすでに求められている所定の波高範囲とデッドタイムとの相関、および、基準となる所定の波高範囲における当該装置でのデッドタイムと基準となる装置でのデッドタイムとの比をあらかじめ記憶させておき、それらの記憶した相関および比に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応すべくデッドタイムを決定するように構成した。
【0026】
さらに、測定する蛍光X線のエネルギーも、波高分析器の下限設定値と上限設定値ほどではないが、デッドタイムに影響するので、蛍光X線のエネルギーとデッドタイムとの相関について検討した。検出器のエネルギー分解能が、蛍光X線のエネルギーの平方根の逆数に比例することと、デッドタイムが実際上検出器のエネルギー分解能に関係することから、測定する蛍光X線を変えてデッドタイムを求め、蛍光X線のエネルギーとデッドタイムとの相関に代えて、検出器のエネルギー分解能とデッドタイムとの相関を調べた。波高分析器の下限設定値LL=1Vかつ上限設定値UL=3Vのときの相関を図4に示す。図4においては、Cu−Kα線でのデッドタイムを基準の0とし、他の蛍光X線でのデッドタイムは、基準との差をプロットしている。図4に示すように、検出器のエネルギー分解能とデッドタイムとは直線相関があることが分かった。
【0027】
そこで、数え落とし補正手段11に、さらに、蛍光X線6のエネルギーの平方根の逆数に対する検出器7のエネルギー分解能の比例係数、および、検出器7のエネルギー分解能とデッドタイムとの相関をあらかじめ記憶させておき、それらの記憶した比例係数および相関に基づいて、測定時の蛍光X線6のエネルギーに対応すべくデッドタイムを決定するように構成した。具体的には、この相関は、波高分析器9の下限設定値と上限設定値の代表的な組合せのそれぞれについて検出器7のエネルギー分解能に対するデッドタイムの変化率(勾配)を求めて作成した表である。ここでも、同一種類の検出器と計数手段(計数回路)を使用している、複数の同一機種の装置において、比例係数は、当該装置において求めて記憶させておく必要があるが、相関は、当該装置と同一機種である基準となる装置においてすでに求められている相関を記憶させておけばよい。
【0028】
以上をまとめると、本装置の数え落とし補正手段11は、次式(4)にしたがってデッドタイムを決定する。
【0029】
τ=τPHA(LL,UL)・τi /τb +ΔτE(LL,UL) (4)
【0030】
ここで、τは、決定されたデッドタイムであり、τPHA(LL,UL)は、測定時の所定の波高範囲(波高分析器の下限設定値と上限設定値の組合せ)における基準となる装置でのデッドタイムで、前述の基準となる装置についての所定の波高範囲とデッドタイムとの相関つまり表から直接にまたは直線補間で求められ、τi は、基準となる所定の波高範囲における当該装置でのデッドタイムであり、τb は、基準となる所定の波高範囲における基準となる装置でのデッドタイムである。
【0031】
ΔτE(LL,UL)は、測定時の蛍光X線のエネルギーに対応させるためのデッドタイムの修正量であり、前述のように記憶した比例係数および相関に基づいて、以下のように求められる。まず、当該装置において求めて記憶した蛍光X線のエネルギーEの平方根の逆数に対する検出器のエネルギー分解能の比例係数kから、測定時の蛍光X線のエネルギーEx についてのエネルギー分解能がk/(Ex )1/2として、基準となる蛍光X線のエネルギーEo についてのエネルギー分解能がk/(Eo )1/2として求められる。また、基準となる装置での検出器のエネルギー分解能とデッドタイムとの相関、つまり基準となる装置での波高分析器の下限設定値と上限設定値の代表的な組合せのそれぞれについて検出器のエネルギー分解能に対するデッドタイムの変化率(勾配)を求めて作成した表から、測定時の所定の波高範囲(波高分析器の下限設定値と上限設定値の組合せ)における同変化率Kが直接にまたは直線補間で求められる。これらから、次式(5)にしたがってΔτE(LL,UL)が求められる。
【0032】
ΔτE(LL,UL)=K(k/(Ex )1/2−k/(Eo )1/2) (5)
【0033】
数え落とし補正の補正誤差について、本発明の第1実施形態の装置による数値と従来技術による数値とを比較した例を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から、第1実施形態の装置によれば、まず、波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できることが分かる。ここで、当該装置において所定の波高範囲とデッドタイムとの相関をあらかじめ求める必要がなく、当該装置と同一機種である基準となる装置において求められた所定の波高範囲とデッドタイムとの相関を利用できる。さらに、第1実施形態の装置によれば、波高分析器で選別される所定の波高範囲のみならず検出器に入射する蛍光X線のエネルギーが変わっても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できることが分かる。
【0036】
なお、多元素同時蛍光X線分析装置のように、測定対象の元素ごとに分光素子と検出器を有する固定チャンネルを備えている装置では、各チャンネルにおいて測定する蛍光X線のエネルギーは変わることがないので、測定時の蛍光X線のエネルギーに対応させるためのデッドタイムの修正、つまり、式(4)におけるΔτE(LL,UL)の項は不要である。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態の波長分散型蛍光X線分析装置について説明する。第2実施形態の装置は、上述の第1実施形態の装置と比べると、数え落とし補正手段において、測定時の所定の波高範囲に対応させるためのデッドタイムの決定の仕方が異なるのみであり、第2実施形態の装置では、数え落とし補正手段12が、複数の計数率における波高分布(波高分布全体の計数率の合計が相異なる複数の波高分布)をあらかじめ記憶しており、その記憶した波高分布に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するようにデッドタイムを決定する。具体的には、以下のようにデッドタイムを決定する。
【0038】
まず、標準試料を用いて測定を行い、例えば、管電流値5mAにおける第1の波高分布と、管電流値50mAにおける第2の波高分布とを得て、数え落とし補正手段12にあらかじめ記憶させておく。これらの波高分布は、多重波高分析器(マルチチャンネルアナライザ)によって求めてもよいし、シングルチャンネルの波高分析器において、下限設定値LLと上限設定値ULの間のいわゆる窓を狭く保ったまま、下限設定値LLを小さい値から少しずつ大きくすることによって求めてもよい。
【0039】
数え落とし補正手段12は、分析対象試料の測定時の所定の波高範囲(第1の波高分布にも第2の波高分布にも含まれる波高範囲であって、波高範囲Bとする)について、第1の波高分布からの管電流値5mAにおける計数率NmB1と、第2の波高分布からの管電流値50mAにおける計数率NmB2とを得る。計数率NmB1が正しく数え落とし補正されて計数率NtB1になるとすれば、計数率NmB2が正しく数え落とし補正されれば計数率10NtB1になるはずであるから、波高範囲Bについてのデッドタイムをτとすれば、前式(2)および(3)と同様の式が成り立ち、波高範囲Bについてのデッドタイムτを算出して決定できる。
【0040】
第2実施形態の装置によっても、第1実施形態の装置と同様に、波高分析器で選別される所定の波高範囲が変更されても、計数手段で求められたパルスの計数率を正確に補正できる。また、第2実施形態の装置においても、第1実施形態の装置と同様に、必要に応じて、さらに、測定時の蛍光X線のエネルギーに対応するようにデッドタイムを決定することが好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 X線源
2 1次X線
3 試料
4 試料から発生した蛍光X線
5 分光素子
6 分光素子で分光された蛍光X線
7 検出器
9 波高分析器
10 計数手段
11、12 数え落とし補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生した蛍光X線を分光する分光素子と、
その分光素子で分光された蛍光X線が入射されて、蛍光X線のエネルギーに応じた波高のパルスを強度に応じた数だけ発生させる検出器と、
その検出器で発生したパルスのうち所定の波高範囲のものを選別する波高分析器と、
その波高分析器で選別されたパルスの計数率を求める計数手段と、
計数すべきパルスの数え落としに関し、前記検出器のデッドタイムに基づいて前記計数手段で求められたパルスの計数率を補正する数え落とし補正手段とを備えた波長分散型蛍光X線分析装置であって、
前記数え落とし補正手段が、前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、その記憶した相関に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する波長分散型蛍光X線分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の波長分散型蛍光X線分析装置において、
前記数え落とし補正手段が、当該装置と同一機種である基準となる装置における前記所定の波高範囲と前記デッドタイムとの相関、および、基準となる所定の波高範囲における当該装置での前記デッドタイムと前記基準となる装置での前記デッドタイムとの比をあらかじめ記憶しており、それらの記憶した相関および比に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する波長分散型蛍光X線分析装置。
【請求項3】
試料に1次X線を照射するX線源と、
試料から発生した蛍光X線を分光する分光素子と、
その分光素子で分光された蛍光X線が入射されて、蛍光X線のエネルギーに応じた波高のパルスを強度に応じた数だけ発生させる検出器と、
その検出器で発生したパルスのうち所定の波高範囲のものを選別する波高分析器と、
その波高分析器で選別されたパルスの計数率を求める計数手段と、
計数すべきパルスの数え落としに関し、前記検出器のデッドタイムに基づいて前記計数手段で求められたパルスの計数率を補正する数え落とし補正手段とを備えた波長分散型蛍光X線分析装置であって、
前記数え落とし補正手段が、複数の計数率における波高分布をあらかじめ記憶しており、その記憶した波高分布に基づいて、測定時の所定の波高範囲に対応するように前記デッドタイムを決定する波長分散型蛍光X線分析装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の波長分散型蛍光X線分析装置において、
前記数え落とし補正手段が、さらに、蛍光X線のエネルギーの平方根の逆数に対する前記検出器のエネルギー分解能の比例係数、および、前記検出器のエネルギー分解能と前記デッドタイムとの相関をあらかじめ記憶しており、それらの記憶した比例係数および相関に基づいて、測定時の蛍光X線のエネルギーに対応するように前記デッドタイムを決定する波長分散型蛍光X線分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242285(P2012−242285A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113735(P2011−113735)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【特許番号】特許第5076012号(P5076012)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】