説明

波長多重伝送装置

【課題】伝送路で障害が発生した場合にも、送信部の光増幅部出力を一定に保つ。
【解決手段】受信した波長多重光に係る光レベルを監視するモニタ部24と、ダミー光を発光/消光するダミー光源26と、モニタ部24により監視された光レベルに基づいて波長多重光が入力断状態であると判定された場合に、ダミー光源26にダミー光を発光させるダミー光制御部25と、変調した波長光とダミー光源26により発光されたダミー光を合波する合波部29とを備え、送信部2が合波部29により生成された波長多重光を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置において、波長多重光の入力が断状態となった場合にも出力光を安定化させる波長多重伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底光ケーブル伝送方式は、海峡横断などに適用する無中継方式と、大洋横断などを意図した海底中継装置を含む長距離中継方式に大別される。長距離中継方式を必要とする海底光ケーブル中継伝送システムでは、海底中継伝送路とその両端の陸地の海岸局装置等から構成され、50Km程度の中継スパンごとに海底中継装置を配設する構成が一般的である。
【0003】
こうした光ケーブルにより複数の情報を効率良く伝送する技術として、波長分割多重光伝送技術がある。波長分割多重光伝送技術は、複数の信号をそれぞれ波長が異なる光信号に割り当て(分割)、それらを多重化して2本の光ファイバにより双方向に伝送するものである。送信側では、波長が異なる光源からの光信号を光合波器により合成し、受信側では光分波器により各々の波長の光信号に分波して、これらを受光素子により電気信号に変換する。
【0004】
このような海底光ケーブル中継伝送システムでは、各波長多重伝送装置(陸揚げ局)がそれぞれ一対(2本)の光ファイバペア(FP)により接続される。ここで、伝送データの全てを陸揚げする局をトランク局と称し、伝送データの一部を陸揚げする局をブランチ局と称する。
近年、システム建設当時ではトランク局−ブランチ局間にそれぞれ1対のFPを割り当て、トランク局−トランク局間にも1対もしくはそれ以上のFPを割り当て、各局間で信号の送受信を行う。ここで、海底光ケーブル中継伝送システムでは、通常、システム運用開始時から最大波長多重数で運用されることは稀である。すなわち、システム運用開始時では、初期に必要となる波長数(回線数)分だけを運用するようにし、後に回線需要がでた時点で新たに波長多重数を増やす運用を行う。
【0005】
しかしながらシステム運用が開始した後に増設されるFPは均一でなく、通信容量が必要となるFPはトランク局−トランク局間であることが多い。そのため、トランク局−トランク局間では容量限界の波長数となっても、トランク局−ブランチ局間はまだ容量に余裕がある場合がしばしば起こりえる。しかしながら、トランク局−トランク局間の容量増設のため、海底光ケーブルを新設することは、多大な費用が必要となるため困難である。そこで、近年、波長多重伝送装置において、未運用となっている波長をブランチ局で分岐(終端)せずに、トランク局にそのまま伝送することで、トランク局−トランク局間の容量を増設することが可能な波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置が注目されている。
【0006】
この波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置の動作について具体的に説明すると、受信側では、まず、光増幅部は、伝送路から入力した波長多重光を光増幅して、1:2分岐部へ出力する。この光増幅部は伝送路で発生する損失を補償する機能を果たす。次いで、1:2分岐部は、波長多重光を2つに分波して、一方の波長多重光を波長分離部へ出力し、他方の波長多重光を送信部へ出力(波長パススルー)する。この波長パススルーされた波長多重光は、当局で分岐/挿入されない波長帯を含む波長多重光である。次いで、波長分離部は、波長多重光を波長毎の波長光に分離して、波長変換部へ出力する。次いで、波長変換部は、各波長光を元の信号に復調して、受信データとして信号受信部へ出力する。
【0007】
送信側では、まず、波長変換部は、信号送信部から入力した送信データを信号毎に各波長光に変調して、波長多重部へ出力する。次いで、波長多重部は、各波長光を波長多重して、2:1合波部へ出力する。一方、波長フィルタは、受信部から波長パススルーされてきた波長多重光のうち、当局で分岐する波長の波長多重光をブロックして、当局で分岐しない波長の波長多重光のみをスルーして2:1合波部へ出力する。次いで、2:1合波部は、波長多重部からの波長多重光と、波長フィルタからの波長多重光とを合波して、光増幅部へ出力する。次いで、光増幅部は、波長多重光を増幅して伝送路を介して次局の波長多重伝送装置へ送出する。
【0008】
ここで、海底光ケーブル中継伝送システムでは、1波あたりの光レベルは伝送路適所に設けられた光増幅器の飽和出力を波長数で割った量で概略決まる。しかしながら、波長数が少ない場合には、1波当たりの光レベルが過剰となり、伝送路中で非線形光学効果を引き起こし、伝送品質を著しく劣化させてしまう。この伝送品質劣化を引き起こす非線形光学効果として、4光波混合(FWM)、自己位相変調(SPM)などが良く知られている。
そこで、伝送路を伝播する波長多重光には、変調光(送受信波長光、パススルー波長光)の他に、ピークレベルの高い波長光(ダミー光)が含まれている。このダミー光は、変調光のピークレベルを下げる効果を発揮するものであり、非線形光学効果を抑制することができる。
【0009】
また、伝送路中での非線形光学効果を抑圧するためには、送信側の光増幅部の出力を、1波長あたりの変調光のピークレベルを一定にし、かつトータルレベルを一定に保つようにする必要がある。しかしながら、波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置では、伝送路で海中区間におけるケーブル断等の障害が発生した場合に、波長フィルタへの入力信号がなくなる。その結果、波長数が減少するため、光増幅部が利得一定制御を行っている場合には、出力が正常時と比較して低下してしまい、出力一定制御を行っている場合には、1波長あたりのピークレベルが上昇してしまう。
【0010】
それに対して、光増幅部に入力される波長数やその時の光増幅部出力に基づいて、光増幅部の増幅率を制御することによって、光増幅部出力を一定に保つように構成したものがある(例えば特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4005646号公報
【特許文献2】特許第3379052号公報
【特許文献3】特許第4084144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1−3に開示される方法は、光増幅器の波長数に応じた利得制御を行うものである。したがって、波長パススルーされる複数の波長が同時に断となった場合に、光増幅器の利得を高くするように制御した場合には、1波長あたりのピークレベルが増大してしまい、同一利得のままで1波長あたりのピークレベルを保つように制御した場合にも、伝送路に送出するトータルレベルが減少してしまうという課題がある。
また、光増幅器より出力された波長多重光は、光伝送路適所に設けられた海底中継装置内の光増幅器により必要に応じて光増幅が繰り返されるが、光増幅器は入力される波長数が最大の時に利得プロファイルが最適になるように設計されている。そのため、設計波長数と異なる波長数で運用を行った場合には、設計時の利得プロファイルと異なるため、光増幅のたびに光増幅器の持つ利得プロファイルに応じて利得格差が発生し、伝送品質が保てなくなるという課題がある。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、伝送路で障害が発生した場合にも、送信部の光増幅部出力を一定に保ち、伝送品質を保つことができる波長多重伝送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係る波長多重伝送装置は、ダミー光を発光/消光するダミー光源と、受信した波長多重光に係る光レベルを監視するモニタ部と、モニタ部により監視された光レベルに基づいて波長多重光が入力断状態であると判定された場合に、ダミー光源にダミー光を発光させるダミー光制御部と、変調した波長光とダミー光源により発光されたダミー光を合波する合波部とを備え、送信部が合波部により生成された波長多重光を送信するものである。
【0015】
また、この発明に係る波長多重伝送装置は、ダミー光を発光するダミー光源と、受信した波長多重光に係る光レベルを監視するモニタ部と、受信部からパススルーされた波長光とダミー光源からのダミー光を入力し、出力光を選択する波長選択スイッチと、モニタ部により監視された光レベルに基づいて波長多重光が入力断状態であると判定された場合に、波長選択スイッチにダミー光を出力光として選択させるダミー光制御部と、変調した波長光と波長選択スイッチからの出力光を合波する合波部とを備え、送信部が合波部により生成された波長多重光を送信するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、上記のように構成したので、伝送路で障害が発生した場合にも、送信部の光増幅部出力を一定に保ち、伝送品質を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る海底光ケーブル中継伝送システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る波長多重伝送装置の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるダミー光源の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における受信部の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における伝送路から入力した波長多重光(送受信波長光およびパススルー波長光)のスペクトルを示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における送信部の波長多重光送出動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1における波長多重部から出力された波長多重光(送受信波長光)のスペクトルを示す図である。
【図8】この発明の実施の形態1における波長フィルタの特性を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1における波長フィルタから出力された波長多重光(パススルー波長光)のスペクトルを示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1における送信部の波長多重光の入力状態確認動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態1における波長フィルタから出力されたダミー光のスペクトルを示す図である。
【図12】この発明の実施の形態1における2:1合波部から出力された波長多重光(送受信波長光およびダミー光)のスペクトルを示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る波長多重伝送装置の構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2における波長選択スイッチの動作概略を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態2における送信部の波長多重光の入力状態確認動作を示すフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態3におけるダミー光源の構成を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態3におけるCW光とスペクトラムスライス光のスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、波長多重伝送装置が波長パススルーする波長光、入力した送信データを変調した波長光は、どちらも複数の異なる波長の光が多重された波長多重光であるとして説明を行う。
実施の形態1.
まず、波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置を備えた海底光ケーブル中継伝送システムについて説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係る海底光ケーブル中継伝送システムの構成を示す図である。なお図1では、4つの波長多重伝送装置(陸揚げ局A〜D)を備えた場合を示し、各局間がそれぞれ一対(2本)の光ファイバペア(FP)を介して接続されている。
ここで、A局,D局のように、伝送データの全てを陸揚げするトランク局と称し、B局,C局のように、伝送データの一部が陸揚げされるブランチ局と称する。
【0019】
このように構成された海底光ケーブル中継伝送システムにおいて、各波長多重伝送装置は、FPにより接続された波長多重伝送装置間(例えばA局とB局)で波長多重光を伝送している。
また、例えばB局を経由してA局からC局へ波長多重光を伝送する場合には、A局からの波長多重光をB局で波長パススルーしてC局へ伝送する。このように、ある局に入力される波長多重光のうち、その局で分岐しない波長の波長多重光を波長パススルーすることで次局に伝送することが可能となる。
【0020】
次に、上記のような波長パススルー機能を有する波長多重伝送装置の構成について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係る波長多重伝送装置の構成を示す図である。なお、図2では、伝送路A−1から伝送路B−1に向けて波長多重光を伝送する波長多重伝送装置(B局)について示している。
波長多重伝送装置は、図2に示すように、受信部1および送信部2から構成されている。
【0021】
受信部1は、伝送路A−1から入力した波長多重光に対して波長毎に分離を行い、元の信号に復調するものである。この受信部1は、光増幅部11、1:2分波部12、波長分離部13および波長変換部14から構成される。
【0022】
光増幅部11は、伝送路A−1から入力した波長多重光を増幅するものであり、伝送路損失を補償する機能を果たすものである。この光増幅部11により増幅された波長多重光は1:2分波部12へ出力される。
【0023】
1:2分波部12は、光増幅部11により増幅された波長多重光を2つに分波するものである。この1:2分波部12により分波された一方の波長多重光は波長分離部13へ出力され、他方の波長多重光は送信部2へ出力(波長パススルー)される。この波長パススルーされた波長多重光は、当局で分岐/挿入されない波長帯を含む波長多重光である。
【0024】
波長分離部13は、1:2分波部12を介して入力した波長多重光を波長毎の波長光に分離するものである。この波長分離部13により分離された各波長光は波長変換部14へ出力される。
【0025】
波長変換部14は、波長分離部13により分離された各波長光を元の信号に復調するものである。この波長変換部14により復調された各信号は受信データとして不図示の信号受信部へ出力される。
【0026】
送信部2は、複数の信号を異なる波長光に変調し、波長多重して伝送路B−1に送出するものである。この送信部2は、波長変換部21、波長多重部22、1:2分波部23、モニタ部24、ダミー光制御部25、ダミー光源26、2:1合波部27、波長フィルタ28、2:1合波部29および光増幅部30から構成される。
【0027】
波長変換部21は、不図示の信号送信部から入力した送信データを信号毎に波長光に変調するものである。この波長変換部21により変調された各波長光は波長多重部22へ出力される。
【0028】
波長多重部22は、波長変換部21により変調された複数の波長光を波長多重するものである。この波長多重部22により波長多重された波長多重光は2:1合波部29へ出力される。
【0029】
1:2分波部23は、受信部1により波長パススルーされた波長多重光を2つに分波するものである。この1:2分波部23により分波された一方の波長多重光は2:1合波部27へ出力され、他方の波長多重光はモニタ部24へ出力される。
【0030】
モニタ部24は、1:2分波部23を介して入力した波長多重光の光レベルを監視して、波長多重光の入力状態を確認するものである。ここで、モニタ部24は、監視している光レベルが予め設定した期待値と一致する場合には、波長多重光が正常に入力していると判定する。一方、モニタ部24は、監視している光レベルが期待値より小さい場合には、波長多重光が正常に入力していない(入力断状態である)と判定する。このモニタ部24による波長多重光の入力状態結果はダミー光制御部25へ通知される。
【0031】
ダミー光制御部25は、モニタ部24による入力状態結果通知に基づいて、結果が正常を示している(波長多重光が正常に入力している)場合にはダミー光を発光させないようにダミー光源26を制御する。一方、結果が異常を示している(波長多重光が入力断状態である)場合にはダミー光を発光させるようにダミー光源26を制御する。
【0032】
ダミー光源26は、ダミー光制御部25による制御に従い、ダミー光の発光/消光を行うものである。このダミー光源26は、図3に示すように、当局で波長パススルーする(分岐しない)帯域でCW(Continuous Wave)光を発光可能な複数のCW光源261−1〜261−Nと、複数のCW光源261−1〜261−Nの出力光をひとまとめにするN:1合波部262とにより構成されている。このCW光は無変調光である。
なお、ダミー光源26は図3に示す構成以外にも様々な構成が可能である。また、ダミー光源26のダミー光の光レベルは、波長フィルタ28出力が正常状態の場合と同等となるように、受信部1により波長パススルーされる波長多重光の光レベルと同等の値に予め設定される。このダミー光源26により発光されたダミー光は2:1合波部27へ出力される。
【0033】
2:1合波部27は、1:2分波部23を介して受信部1から入力した波長パススルーされた波長多重光と、ダミー光源26により発光されたダミー光とを合波するものである。この2:1合波部27により合波された波長多重光は波長フィルタ28へ出力される。
【0034】
波長フィルタ28は、2:1合波部27を介して入力した波長多重光のうち、当局で分岐する波長の波長多重光をブロックして、当局では分岐しない波長の波長多重光のみをスルーするものである。この波長フィルタ28によりスルーされた波長多重光は2:1合波部29へ出力される。
【0035】
2:1合波部29は、波長多重部22により波長多重された波長多重光と、波長フィルタ28から入力した波長多重光とを合波するものである。この2:1合波部29により合波された波長多重光は光増幅部30へ出力される。
光増幅部30は、2:1合波部29により合波された波長多重光を増幅するものである。この光増幅部30により増幅された波長多重光は伝送路B−1へ送出される。
【0036】
次に、上記のように構成される波長多重伝送装置の動作について説明する。まず、受信部1の動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1における受信部1の動作を示すフローチャートである。
受信部1での動作では、図4に示すように、まず、光増幅部11は、伝送路A−1から入力した波長多重光を増幅する(ステップST41)。ここで、伝送路A−1から入力した波長多重光は、図5に示すように、当局で分岐する送受信波長光と、当局では分岐しない(次局へ波長パススルーする)パススルー波長光とから構成されている。また、この波長多重光には、変調光(送受信波長光、パススルー波長光)の帯域両側に位置する、ピークレベルの高い波長光(ダミー光)が含まれている。このダミー光は、変調光のピークレベルを下げる効果を発揮するためのものである。この光増幅部11により増幅された波長多重光は1:2分波部12へ出力される。
【0037】
次いで、1:2分波部12は、光増幅部11により増幅された波長多重光を2つに分波する(ステップST42)。この1:2分波部12により分波された一方の波長多重光は波長分離部13へ出力され、他方の波長多重光は送信部2へ出力(波長パススルー)される。
【0038】
次いで、波長分離部13は、1:2分波部12により分波された波長多重光を波長毎の波長光に分離する(ステップST43)。この波長分離部13により分離された波長光は波長変換部14へ出力される。
【0039】
次いで、波長変換部14は、波長分離部13により分離された各波長光を元の信号に復調する(ステップST44)。この波長変換部14により復調された信号は受信データとして信号受信部へ出力される。
【0040】
次に、送信部2の動作について説明する。まず、送信部2の通常時の波長多重光送出動作について説明する。
図6はこの発明の実施の形態1における送信部2の波長多重光送出動作を示すフローチャートである。
送信部2の波長多重光送出動作では、図6に示すように、まず、波長変換部21は、信号送信部から入力した送信データを信号毎に波長光に変調する(ステップST61)。この波長変換部21により変調された各波長光は波長多重部22へ出力される。
【0041】
次いで、波長多重部22は、波長変換部21により変調された各波長光を波長多重する(ステップST62)。この波長多重部22により波長多重された波長多重光は、図7に示すように、送受信波長光から構成されている。また、この波長多重光には、送受信波長光のピークレベルを下げるためのダミー光が含まれている。この波長多重部22により波長多重された波長多重光は2:1合波部29へ出力される。
【0042】
一方、波長フィルタ28は、1:2分波部23および2:1合波部27を介して受信部1により波長パススルーされた波長多重光のうち、当局で分岐する波長の波長多重光をブロックして、当局では分岐しない波長の波長多重光のみをスルーさせる(ステップST63)。ここで、この波長フィルタ28は、図8に示すようなフィルタ特性を有し、図9に示すように、パススルー波長光のみをスルーさせる。この波長フィルタ28によりスルーされ出力された波長多重光は2:1合波部29へ出力される。
【0043】
次いで、2:1合波部29は、波長多重部22により波長多重された波長多重光と、波長フィルタ28から入力した波長多重光とを合波する(ステップST64)。この2:1合波部29により合波された波長多重光は、再び図5に示すように、送受信波長光とパススルー波長光とにより構成される波長多重光となる。この2:1合波部29により合波された波長多重光は光増幅部30へ出力される。
次いで、光増幅部30は、2:1合波部29により合波された波長多重光を増幅する(ステップST65)。この光増幅部30により増幅された波長多重光は伝送路B−1へ送出される。
【0044】
次に、送信部2の波長多重光の入力状態確認動作について説明する。
図10はこの発明の実施の形態1における送信部2の波長多重光の入力状態確認動作を示すフローチャートである。
送信部2の波長多重光の入力状態確認動作では、図10に示すように、まず、モニタ部24は、1:2分波部23を介して受信部1から入力した波長多重光を監視して、波長多重光が正常に入力しているかを判定する(ステップST101)。すなわち、モニタ部24は、監視している光レベルが、予め設定した期待値と一致する場合には波長多重光が正常に入力していると判定し、期待値より小さい場合には波長多重光が正常に入力していないと判定する。
【0045】
このステップST101において、モニタ部24が、波長多重光が正常に入力していると判定した場合には、次いで、ダミー光制御部25は、ダミー光を発光させないようにダミー光源26を制御する(ステップST102)。
これにより、2:1合波部27にダミー光源26からのダミー光は入力されず、波長フィルタ28は受信部1より波長パススルーされた波長多重光のうち、当局で分岐する波長をブロックし、次局に波長パススルーする波長のみを出力する。したがって2:1合波部29出力は通常通りとなり、伝送路B−1へ送出される波長多重光の1波長あたりのピークレベルならびにトータルレベルは一定となり、伝送品質が保たれる。
【0046】
一方、ステップST101において、モニタ部24が、波長多重光が正常に入力していない(入力断状態である)と判定した場合には、次いで、ダミー光制御部25は、ダミー光を発光させるようにダミー光源26を制御する(ステップST103)。
例えば伝送路A−1に海中区間におけるケーブル断等の障害が発生し、受信部1への入力が断となった場合、当局での受信データは全波長分、断となる。そのため、波長パススルー対象の波長多重光が存在しないため、光増幅部30出力は通常値より低くなり不安定となる。
【0047】
しかしながら、ステップST103において、ダミー光源26からダミー光を発光させ、波長フィルタ28で、当局で分岐しない波長成分をブロックさせることで、図11に示すようなダミー光を出力することができる。この際、波長フィルタ9出力が通常時と同様になるように、ダミー光の強さを調節しておく。なお、ダミー光は送信する波長数分用意する必要はなく、全体の伝送スペクトル形状が保たれる範囲で、複数の信号波長のトータルレベルをダミー光1波長分にまとめてしまっても問題はない。
【0048】
また、ダミー光として広帯域ASE(Amplified Spontaneous Emission)光を用いた場合、このASE光は変調光と比較してピークレベルが低い。そのため、多段増幅中継を行うシステムでは、スペクトラルホールバーニングによる効果で、ピークレベルの強い変調光に利得が集中し、トータルレベルが安定しない。そこで、実施の形態1におけるダミー光源26では、ダミー光としてCW光を用いて、トータルレベルを安定させる。
【0049】
その後、2:1合波部29により、波長多重部22からの波長多重光と合波されて、図12に示すような波長多重光となる。このように、入力断状態の波長パススルー対象の波長多重光をダミー光で補填することで、光増幅部30出力は通常値と同等の値となり安定する。
【0050】
なお、ダミー光は信号成分を含んでいないため、このダミー光を分岐するトランク局の波長変換部では送信元のデータ信号に復号できない。そのため、End−to−Endのシステム全体としても異常を検出することができる。
【0051】
その後、伝送路A−1の障害がなくなり、波長多重光が入力断状態から正常状態に復旧した場合には、モニタ部24で監視している光レベルが期待値と一致するため、波長多重光が正常状態に復旧したことを検知することができる。この旨はダミー光制御部25に通知され、ダミー光制御部25はダミー光の発光を停止させるようにダミー光源26を制御する。
【0052】
以上のように、この実施の形態1によれば、光増幅部30の増幅率を制御することなく、受信部1から入力した波長多重光の光レベルを監視し、波長多重光が入力断状態であると判定した場合には、ダミー光を発光させるように構成したので、伝送路A−1で障害が発生した場合にも、光増幅部30出力を一定に保つことができ、伝送品質を高く保つことができる。
【0053】
実施の形態2.
図13はこの発明の実施の形態2に係る波長多重伝送装置の構成を示す図である。この図13に示す実施の形態2に係る波長多重伝送装置は、図2に示す実施の形態1に係る波長多重伝送装置からダミー光源26、2:1合波部27および波長フィルタ28を削除し、CW光源261−1〜261−Nおよび波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)31を追加したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
なお、ダミー光制御部25は、モニタ部24による入力状態結果通知に基づいて、結果が正常を示している(波長多重光が正常に入力している)場合にはパススルー波長光を出力光として選択させるように波長選択スイッチ31を制御する。一方、結果が異常を示している(波長多重光が入力断状態である)場合にはダミー光を出力光として選択させるように波長選択スイッチ31を制御する。
【0055】
各CW光源261−1〜261−Nは、ダミー光の発光を行うものである。このCW光源261−1〜261−Nは、ダミー光として、当局で波長パススルーする帯域でCW光を発光する。また、CW光源261−1〜261−Nのダミー光の光レベルは、波長選択スイッチ31出力が正常状態の場合と同等となるように、受信部1により波長パススルーされる波長多重光の光レベルと同等の値に予め設定される。この各CW光源261−1〜261−Nにより発光されたダミー光は波長選択スイッチ31へ出力される。
なお、CW光源261−1〜261−Nではなく、実施の形態1におけるダミー光源26を用いても同様の効果が得ることができる。
【0056】
波長選択スイッチ31は、1:2分波部23を介して受信部1から波長パススルーされた波長光と、CW光源261−1〜261−Nからのダミー光を入力し、ダミー光制御部25による制御に従い、出力光を選択するものである。この波長選択スイッチ31は、図14に示すように、任意の入力ポートから入力された任意波長の光信号を選択して、任意波長の光信号を挿入する機能を有する(もしくはこの逆方向)1対多接続機能を持つ光デバイスである。
【0057】
次に、送信部2の波長多重光の入力状態確認動作について説明する。
図15はこの発明の実施の形態2における送信部2の波長多重光の入力状態確認動作を示すフローチャートである。
送信部2の波長多重光の入力状態確認動作では、図15に示すように、まず、モニタ部24は、1:2分波部23を介して受信部1から入力した波長多重光を監視して、波長多重光が正常に入力しているかを判定する(ステップST151)。
【0058】
このステップST151において、モニタ部24が、波長多重光が正常に入力していると判定した場合には、次いで、ダミー光制御部25は、パススルー波長光を出力光として選択させるように波長選択スイッチ31を制御する(ステップST152)。すなわち、ダミー光制御部25は、波長選択スイッチ31に対して、波長パススルー光が入力されるポートに対しては全ての波長を通過させ、CW光源261−1〜261−Nからのダミー光が入力されるポートに対しては全ての波長を遮断する。
これにより、波長選択スイッチ31にCW光源261−1〜261−Nからのダミー光は入力されず、次段に波長パススルーする波長のみを出力する。したがって2:1合波部29出力は通常通りとなり、伝送路B−1へ送出される波長多重光の1波長あたりのピークレベルならびにトータルレベルは一定となり、伝送品質が保たれる。
【0059】
一方、ステップST151において、モニタ部24が、波長多重光が正常に入力していない(入力断状態である)と判定した場合には、次いで、ダミー光制御部25は、ダミー光を出力光として選択させるように波長選択スイッチ31を制御する(ステップST153)。すなわち、ダミー光制御部25は、波長選択スイッチ31に対して、波長パススルー光が入力されるポートに対しては全ての波長を遮断させ、CW光源261−1〜261−Nからのダミー光が入力されるポートに対しては各CW光源波長を通過させる。
これにより、伝送路B−1に出力される波長多重光は図12に示すようになり、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0060】
以上のように、この実施の形態2によれば、CW光源251−1〜261−Nと、入力した波長光から出力光を選択する波長選択スイッチとを設けるように構成したので、実施の形態1と比較して2:1合波部27、波長フィルタ28およびN:1合波部262を削除することができるため、部品数を削減することができる。
また、波長選択スイッチ31は、接続されたCW光源261−1〜261−Nのポートを遮断する機能を有している。そのため、実施の形態1で必要であった、CW光源261−1〜261−Nに対する出力ON/OFF制御を不要とすることができ、制御を簡略化できる。また、ポート単位での挿入損失調整が可能であるため、ダミー光のレベル調整が容易となる。
さらに、実施の形態1では波長パススルー帯域が波長フィルタにより固定されてしまうため、ブランチ局側への容量増設が困難となるが、実施の形態2では波長パススルー帯域を任意に変更できるため、システムの柔軟な変更に対応できる。
【0061】
実施の形態3.
実施の形態1におけるダミー光源26が発光するダミー光として、自然放出光(ASE)を帯域濾波フィルタにて濾波した無変調のスペクトラムスライス光を適用してもよい。
この場合には、ダミー光源26は、例えば図16に示すように、入力を無反射終端することで広帯域の自然放出光を発生する光増幅器263と、光増幅器263により発生された自然放出光を帯域濾波し、必要な波長帯のスペクトラムスライス光を出力する帯域通過光フィルタ264とから構成する。
【0062】
ここで、CW単一波長で発光するレーザダイオードを光源と想定するCW光源261−1〜261−Nでは、図17(a)に示すように、出力レーザ光のスペクトル線幅が狭い。そのため、非線形光学効果のひとつである誘導ブリュアン散乱(SBS)を引き起こし、波長多重光の伝送品質を劣化させてしまう恐れがある。また、出力レーザ光が固有方向に偏光しているため、光増幅器の利得偏光依存性(PDG)が原因で一定偏光方向の変調光の利得が低下したり低下幅が時間変動したりする恐れがある。しかしながら、スペクトラムスライス光では、図17(b)に示すように、スペクトル線幅を広くすることができるため、上記の影響を低減できる効果がある。
【0063】
以上のように、この実施の形態3によれば、ダミー光源26が発光するダミー光として、自然放出光(ASE)を帯域濾波フィルタにて濾波した無変調のスペクトラムスライス光を適用するように構成したので、スペクトル線幅を広くすることができ、誘導ブリュアン散乱(SBS)の発生による伝送品質の劣化や、光増幅器の利得偏光依存性(PDG)による変調光の利得低下、低下幅の時間変動等の発生を低減させることができる。
【0064】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 受信部、2 送信部、11 光増幅部、12 1:2分波部、13 波長分離部、14 波長変換部、21 波長変換部、22 波長多重部、23 1:2分波部、24 モニタ部、25 ダミー光制御部、26 ダミー光源、27 2:1合波部、28 波長フィルタ、29 2:1合波部、30 光増幅部、31 波長選択スイッチ、261−1〜261−N CW光源、262 N:1合波部、263 光増幅器、264 帯域通過フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した波長多重光を分波して、一方を復調し受信データを出力すると共に他方をパススルーする受信部と、入力した送信データにより変調した波長光と前記受信部からパススルーされた波長光を合波して、波長多重光を送信する送信部とを備えた波長多重伝送装置において、
ダミー光を発光/消光するダミー光源と、
前記受信した波長多重光に係る光レベルを監視するモニタ部と、
前記モニタ部により監視された光レベルに基づいて前記波長多重光が入力断状態であると判定された場合に、前記ダミー光源にダミー光を発光させるダミー光制御部と、
前記変調した波長光と前記ダミー光源により発光されたダミー光を合波する合波部とを備え、
前記送信部が前記合波部により生成された波長多重光を送信する
ことを特徴とする波長多重伝送装置。
【請求項2】
受信した波長多重光を分波して、一方を復調し受信データを出力すると共に他方をパススルーする受信部と、入力した送信データにより変調した波長光と前記受信部からパススルーされた波長光を合波して、波長多重光を送信する送信部とを備えた波長多重伝送装置において、
ダミー光を発光するダミー光源と、
前記受信した波長多重光に係る光レベルを監視するモニタ部と、
前記受信部からパススルーされた波長光と前記ダミー光源からのダミー光を入力し、出力光を選択する波長選択スイッチと、
前記モニタ部により監視された光レベルに基づいて前記波長多重光が入力断状態であると判定された場合に、前記波長選択スイッチにダミー光を出力光として選択させるダミー光制御部と、
前記変調した波長光と前記波長選択スイッチからの出力光を合波する合波部とを備え、
前記送信部が前記合波部により生成された波長多重光を送信する
ことを特徴とする波長多重伝送装置。
【請求項3】
前記ダミー光源は、ダミー光としてCW(Continuous Wave)光を発光する
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の波長多重伝送装置。
【請求項4】
前記ダミー光源は、ダミー光としてスペクトラムスライス光を発光する
ことを特徴とする請求項1記載の波長多重伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−109653(P2012−109653A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254727(P2010−254727)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】