波長板、偏光変換子、偏光照明装置、及び光ピックアップ装置
【課題】3波長対応光ピックアップ装置用の積層1/2波長板を構成する手段を得る。
【解決手段】複屈折を有する結晶を用いた第1及び第2の波長板を光学軸が交差するように貼り合わせ、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、所定の波長λに対し、常光線及び異常光線に対する第1及び第2の波長板の位相差をΓ1、Γ2、高次モードの次数を自然数nとし、Γ1=180°+360°×n、Γ2=180°+360°×nを満足するように高次モード積層1/2波長板を構成する。
【解決手段】複屈折を有する結晶を用いた第1及び第2の波長板を光学軸が交差するように貼り合わせ、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、所定の波長λに対し、常光線及び異常光線に対する第1及び第2の波長板の位相差をΓ1、Γ2、高次モードの次数を自然数nとし、Γ1=180°+360°×n、Γ2=180°+360°×nを満足するように高次モード積層1/2波長板を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層波長板に関し、特に変換効率を改善した高次モードの積層波長板と、これを用いた偏光変換子と、該偏光変換子を用いた偏光照明装置bと、高次モードの積層波長板を用いたピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用の波長板は、従来から光ディスク装置、液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ等に用いられてきたが、使用される光の波長帯で波長板としての機能、例えば1/2波長板であれば、使用される波長帯に亘って位相が180°推移する等の機能を備えていることが必要である。水晶等の複屈折を用いて1/2波長板を1枚の水晶板で作る場合、水晶の常光線屈折率、異常光線屈折率を夫々no、neとし、水晶板の厚さをtとすると、波長λの光が1/2波長板を透過したときの、常光線と異常光線との位相差Γは、Γ=2π/λ×(ne−no)×tで与えられ、位相差Γは波長λに依存することになる。
【0003】
所望の波長帯で位相差がほぼ一定となる広帯域波長板が、特許文献1に開示されている。図12(a)に示す1/4波長板40は、1/2波長板41と、接着剤42と、1/4波長板43とから構成される。図12(b)に示すように、1/4波長板40に入射する直線偏光の偏光方向に対して1/2波長板41の延伸軸は−15°、1/4波長板43の延伸軸は−75°の方向に配置されている。尚、前記延伸軸の角度はyz平面内でy軸から右向きを正とした角度で記載されている。この1/2波長板41や1/4波長板43は、ポリカーボネイトを材料とした高分子フィルムを延伸処理したもので、1/4波長板40は可視光の範囲(400nm〜700nm)において、波長に依存しないほぼ完全な1/4波長板として機能することが開示され、1/4波長板40の作用を、ポアンカレ球を用いて説明している。
【0004】
また、複数の水晶板を積層して1/2波長板としての機能を持たせた積層波長板が特許文献2に開示されている。図13(a)は1/2波長板44の構成を示す斜視図であって、水晶板45と46とを貼り合わせて構成されている。図13(b)は1/2波長板44の分解斜視図であって、波長420nmに対し位相差Γ1が190°、光学軸方位角θ1が19°の水晶板45と、同様に波長420nmに対し位相差Γ2が200°、光学軸方位角θ2が64°の水晶板46と、を夫々の光学軸49、50が45°の角度で交差するように貼り合わせて、全体として波長400nm〜700nmの高帯域で1/2波長板として機能するように構成したと開示されている。図13(a)に示すように、1/2波長板44にP偏光47が入射すると、出射面では位相が180°ずれるので、入射光の偏光面は90°回転し、S偏光に変換する機能を有していることが開示されている。
尚、光学軸方位角θ1とθ2の関係が、θ2=θ1+45°、0°<θ1<45°であることが開示されている。
【0005】
1/2波長板44の作用はポアンカレ球を用いて説明されるが、詳細な解析は水晶板45、46の夫々のミューラ行列A1、A2と、入射及び出射偏光状態を示す夫々のストークスベクトルT、Sとすると、ストークスベクトルSは次式で表される。
S=A2・A1・T・・・(1)
ストークスベクトルSの成分から1/2波長板44の位相差を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−68816号公報
【特許文献2】特開2004−170853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の1/4波長板を応用して、1/2波長板を製作し、液晶プロジェクタ等に使用してみると、熱の影響による黄変が生じるという問題があった。また、特許文献2に記載の1/2波長板はシングルモードの波長板で構成されており、2枚の水晶板の夫々の位相差を概ね180°程度となるように加工する必要がある。実際に水晶板を製造する場合、研磨のし易さ、歩留まり等を勘案すると水晶板の厚さを100μm以上に設定することが望ましい。しかるに水晶の常光、異常光の屈折率差から位相差180°程度の水晶板を製作すると、その厚さは数十μmとなり、歩留まりが悪いのと、加工に時間を要するという問題があった。
【0008】
この厚さの問題を解決する手段として、水晶板の光学軸が水晶板の主面における法線方向から斜め方向になるように水晶板を切断することで、上記屈折率差を小さくし、水晶板の厚さを厚くすることは可能である。そこで、特許文献2においては、使用する水晶板の厚みの加工性を考慮して、水晶板の切断角度は、水晶板の主面における法線方向に対して光学軸が27°となる角度、所謂、カットアングルを27°Zとすることが開示している。しかし、水晶板の切断角度を27°Zとすると、入射角度に対する1/2波長板の位相差の変化が、大きくなるという問題が生ずる。液晶プロジェクタ又は光ピックアップの光学系で波長板を使用する場合、光源やレンズ系の配置の関係で波長板は、光が円錐状に収束(発散)する経路に配置されることがある。この場合、光線の中心付近は波長板に垂直に入射するが、円錐状の端では入射角が生じる。このため、入射角に対して位相差の変動が大きくなる1/2波長板を用いると光量のロスが生ずるという問題が生じる。
【0009】
図14は、切断角度が27°Z板を用い、波長420nmに対し位相差Γ1が190°、光学軸方位角θ1が19°の水晶板45と、同様に波長420nmに対し位相差Γ2が200°、光学軸方位角θ2が64°の水晶板46と、を夫々の光学軸49、50が45°の角度で交差するように貼り合わせて構成したシングルモードの1/2波長板の、入射角を−5°、0°、5°と変化させ、350nm〜750nmの波長に対する変換効率を示した図である。
ここで、変換効率とはP偏光をS偏光に変換する割合を表し、変換効率が1のとき、P偏光が全てS偏光に変換されることを表している。この変換効率はできるだけ高いことが望ましいが、一般的には0.93程度は必要であると言われている。図14から明らかなように入射角5°では、波長が525nm以上で変換効率0.9を割り込むという問題があった。
本発明は、上記の黄変、加工上の歩留まり、入射角の問題等を解決する高次モード積層波長板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層波長板は、波長λに対して位相差Γ1の第1の波長板と位相差Γ2の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、前記第1の波長板の面内方位角をθ1とし、前記第2の波長板の面内方位角をθ2とし、前記積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と、前記積層波長板から出射する直線偏光の偏光方向とのなす角度をθとしたときに、下式(1)〜(3)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ1=180°+360°×n、Γ2=180°+360°×n、θ2=θ1+θ/2、但し、nは1からはじまる自然数、を満足するように構成した。
このような積層波長板によれば、nを適切に設定することにより、積層波長板を構成する2つの波長板の厚さを加工し易い厚さとすることができるという効果がある。
【0011】
また本発明の積層波長板は、n=4、θ1=22.5°、θ2=67.5°とした。このように構成することにより、液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長帯400nm帯、500nm帯、675nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ1にできるという効果がある。
【0012】
また本発明の積層波長板は、n=5、θ1=22.5°、θ2=67.5°とした。このように構成することにより、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される波長帯405nm帯、660nm帯、785nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ1にできるという効果がある。
【0013】
また本発明の積層波長板は、波長λに対して位相差Γ11の第1の波長板と位相差Γ22の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、前記第1の波長板の面内方位角をθ3とし、前記第2の波長板の面内方位角をθ4とし、前記第2の波長板の波長λ1に対する位相差をΓ211、波長λ2(λ1<λ2)に対する位相差をΓ222としたとき、Γ11=360°+360°×2×n、Γ22=180°+360°×n、cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cos2ΔΓ2)、θ4=45°±10°、但し、nは1からはじまる自然数、ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2、を満足するよう構成した。このような積層波長板によれば、次数n1、n2を適切に設定することにより、積層波長板を構成する2つの波長板の厚さを加工し易い厚さとすることができるという効果がある。
【0014】
また本発明の積層波長板は、n=4、θ3=−16°若しくは−21°とした。このように構成することにより、液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長帯400nm帯、500nm帯、675nm帯において積層1/2波長板の波長−変換効率特が0.94以上にできるという効果がある。
【0015】
また本発明の積層波長板は、n=5、θ3=−16°若しくは−21°とした。このように構成することにより、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される波長帯405nm帯、660nm帯、785nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ0.94以上にできるという効果がある。
偏光ビームスプリッタアレイのP偏光出斜面に、上記の積層波長板を貼り付けて偏光変換子を構成することを特徴する。
このように、上記の積層波長板を用いて偏光変換子を構成することにより、偏光変換子から出射する直線偏光(S偏光)の強度を強めることができるという効果がある。
【0016】
また本発明の偏光照明装置は、本発明の積層波長板を備えて構成される。このように本発明の積層波長板を用いて照明装置を構成することにより、照明装置から出射する直線偏光(S偏光)の強度を強めることができるという効果がある。
【0017】
また本発明の光ピックアップ装置は、本発明の積層波長板を備えて構成される。このように本発明の積層波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成すると、従来3つ必要であった1/2波長板を1つの積層波長板で実現することができる。
また、本発明の積層波長板と、3つの波長のレーザを出射するレーザダイオードとにより3波長対応の光ピックアップ装置を構成すると、光学部品を大幅に削減することが可能となり、光ピックアップ装置のコストを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明に係る高次モードの積層1/2波長板の構成を示した概略斜視図、(b)は分解斜視図。
【図2】(a)は本発明を説明するためのポアンカレ球の斜視図、(b)はポアンカレ球のS1S2平面への透視図。
【図3】本発明に係る積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【図4】本発明に係る他の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【図5】第2の実施例の積層1/2波長板の分解斜視図。
【図6】(a)は第2の実施例の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図、(b)は最適化後の波長−変換効率特性図。
【図7】(a)は第2の実施例の他の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図、(b)は最適化後の波長−変換効率特性図。
【図8】(a)は本発明を説明するためのポアンカレ球の斜視図、(b)はポアンカレ球のS1S3平面への透視図、(c)はポアンカレ球のS2S3平面への透視図。
【図9】本発明に係る偏光変換子の構成を示す概略図。
【図10】本発明に係る偏光照明装置の構成を示す概略図。
【図11】(a)は本発明に係る光ピックアップ装置のブロック構成図、(b)は本発明に係る他の光ピックアップ装置のブロック構成図。
【図12】(a)は従来の1/4波長板の構成を示す斜視図、(b)は夫々の波長板の延伸軸方向を示す図。
【図13】(a)は従来のシングルモードの積層1/2波長板の構成を示した概略斜視図、(b)は分解斜視図。
【図14】従来のシングルモードの積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板と称す)1の構成を示す斜視図であって、水晶を用いた第1の波長板2と、第2の波長板3とを夫々の光学軸が交差するように貼り合わせた構成を備え、全体として1/2波長板として機能するように構成する。図1(b)は1/2波長板1の分解斜視図であって、第1の波長板2の光学軸方位角をθ1、第2の波長板3の光学軸方位角をθ2とする。所定の波長λ、例えば400nmに対する第1の波長板2の位相差をΓ1、第2の波長板3の位相差をΓ2とし、
Γ1=180°+360°×n・・・(2)
Γ2=180°+360°×n・・・(3)
を満足するように第1及び第2の波長板2、3の厚さを設定する。ここで、nは高次モードの次数で、1からはじまる自然数とする。
【0020】
第1及び第2の波長板2、3に高次モードの波長板を用い、全体として1/2波長板1を構成する場合、波長350nmから750nmの全波長帯に亘って位相差を180°とすることは困難である。
そこで、所望する複数の波長帯で位相差を180°とするために、積層1/2波長板1の構成パラメータである第1及び第2の波長板2、3の夫々の高次モード次数n1、n2、所定の波長での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を、種々変化させて、積層1/2波長板1の出射光のストークスベクトルを算出し、これから位相差、変換効率等を求める手法をとった。
【0021】
はじめに、本発明に係る積層1/2波長板の実施例を見つけ出した計算手法を簡単に説明する。直線偏光が2枚の波長板を透過した後の偏光状態は、ミューラ行列、又はジョンズ行列を用いて表すことができる。
【0022】
E=R2・R1・I (4)
【0023】
ここで、Iは入射光の偏光状態、Eは出射光の偏光状態を表すベクトルである。R1は積層1/2波長板1における第1の波長板2のミューラ行列、R2は第2の波長板3のミューラ行列で、夫々次式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数nを決め、夫々の位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角度θ1、θ2を設定して、式(5)、(6)よりミューラ行列R1、R2を求める。そして、入射光の偏光状態Iを設定すると、式(4)より出射光の偏光状態Eを算出することができる。
行列としてミューラ行列を用いた場合について説明すると、出射光の偏光状態Eは次式で表される。
【0027】
【数3】
【0028】
Eの行列要素S01、S11、S21、S31はストークスパラメータと呼ばれ、偏光状態を表している。このストークスパラメータを用いて、波長板の位相差Γは次式のように表される。
【0029】
【数4】
【0030】
このように、式(8)を用いて位相差を算出することができる。
【0031】
図1に示すように、本発明に係る積層1/2波長板1は、直線偏光の偏光面を所定の角度θだけ回転させる機能を有している。例えば、垂直方向の振動面を持つ直線偏光4を入力光として、積層1/2波長板1を透過させ、偏光面をθ=90°だけ回転(位相変調)させて水平方向の振動面を持つ直線偏光5として出射させる場合を、図2(a)に示すポアンカレ球用いて考える。この位相変調(90°回転)はポアンカレ球で考えると、入射偏光状態P0からP2へ変調させることであり、このとき必要な位相差は180°である。しかし、P0からPaへ、P0からPbへ変調させた場合も、位相差は同じく180°となる。即ち、位相差を用いて評価した場合、必要な偏光状態に変調されているかを判断することができない。ポアンカレ球上(赤道上)のP2と、異なるPa、Pbの点は偏光面の方位である。これを検出するため、出射光の偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの積を計算し、得られた光量を評価値とすれば、偏光状態を正確に判定することができる。これを変換効率と定義する。
【0032】
具体的には、偏光子の行列Pの透過軸を90°に設定し、行列Pと出射光偏光状態を表す行列Eとの積から得られる行列Tのストークスパラメータより、90°方向の偏光面成分の光量を算出することができる。出射光偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの積は次式のようになる。
【0033】
T=P・E (9)
【0034】
ここで、行列Tは変換効率を表し、その要素のストークスパラメータで表すと次式のように表される。
【0035】
【数5】
【0036】
ここで、ベクトルTのストークスパラメータのS02が光量を表している。入射光量を1に設定すればS02が変換効率となる。位相差、変換効率とも積層1/2波長板を透過した後の偏光状態を表す行列Eから求めることができる。
【0037】
上記の変換効率を評価基準とし、積層1/2波長板の諸パラメータである第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数n、所定の波長(例えば波長400nm)での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を種々変化させ、計算機を用いてシミュレーションした。シミュレーションを繰り返し行い、所望の複数の波長帯において、変換効率が良い場合の上記パラメータを選び出した。高次モード次数nが大き過ぎると、変換効率が1に近い波長帯域幅が狭くなり、積層1/2波長板としても使いづらくなるので、製造し易さ等を含めて上記パラメータを選定した。その結果を以下に説明する。
【0038】
図1に示す積層1/2波長板1の第1及び第2の波長板2、3の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが4で、波長λを400nmとしたとき、第1の波長板の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1620°(=180°+360°×4)、22.5°、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1620°(=180°+360°×4)、67.5°に設定した場合に、積層1/2波長板1の変換効率をシミュレーションにより求めた結果、良好な波長−変換効率が得られた。図3は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1の変換効率を示す図である。
【0039】
積層1/2波長板1への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で示し、入射角度を夫々−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、上記パラメータの積層1/2波長板1の変換効率はほぼ1となることが判明した。
【0040】
また、積層1/2波長板1の第1及び第2の波長板2、3の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが5で、波長λを400nmとしたとき、第1の波長板の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1980°(=180°+360°×5)、22.5°、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1980°(=180°+360°×5)、67.5°に設定した場合に、良好な変換効率が得られた。図4は350nmから750nmの波長に対する積層1/2波長板1の変換効率を示す図である。積層1/2波長板1への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で、−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。上記のパラメータを用いた積層1/2波長板1の場合、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される405nm帯、660nm帯、785nm帯の波長で、変換効率がほぼ1となることが分かった。
【0041】
ここで、第1の波長板2の光学軸方位角θ1と第2の波長板3の光学軸方位角θ2との関係について、図2に示すポアンカレ球を用いて説明する。図2(a)は1/2波長板1に入射した直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。赤道上の所定の位置P0から偏光方向が赤道に対して垂直な方向となる直線偏光4として光線が入射すると、第1の波長板2によって光軸R1を中心にして180°回転しP1(赤道上)へ移され、さらに第2の波長板3によって光軸R2を中心にして180°回転しP2(赤道上)に到達し、直線偏光4に対してθ=90°だけ回転した直線偏光5となって1/2波長板1を出射することが分かる。
【0042】
次に、図2(b)を用いて、θ1とθ2との関係について検討する。
図2(b)は、図2(a)に示したポアンカレ球において1/2波長板1に入射した光線の偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図(S1S2平面に投影した図)を示す。第1の波長板2の光学軸方位角θ1、第2の波長板3の光学軸方位角θ2、及び直線偏光4(入射光)に対する直線偏光5(出射光)の回転角θの関係は、ポアンカレ球上では図2(b)のように表すことができる。
点O、P0、P1を結んでなる三角形OP0P1は点Oを頂点とする二等辺三角形であり光軸R1は三角形OP0P1の二等分線となり、辺OP0と光軸R1とのなす角及び辺OP1と光軸R1とのなす角は2θ1となる。点O、P1、P2を結んでなる三角形OP1P2は点Oを頂点とする二等辺三角形であり光軸R2は三角形OP1P2の二等分線となる。ここで、辺OP1と光軸R2とのなす角α及び辺OP2と光軸R2とのなす角αは以下のように求められる。
2θ=2×2θ1+2α
α=θ−2θ1
従って、辺OP0と光軸R2とのなす角2θ2は、以下のように表すことができる。
2θ2=α+2×2θ1=θ−2θ1+2×2θ1=θ+2θ1
従って、θ2は、
θ2=θ1+θ/2 ・・・(11)
と表すことができる。
【0043】
次に、図5は本発明に係る第2の実施例の高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板と称す)1’の分解斜視図であって、第1の波長板2’と第2の波長板3’とを夫々の光学軸が交差するように貼り合わせた構成を備え、全体として1/2波長板として機能させる。第1及び第2の波長板2’、3’の高次モードの次数をn1、n2とし、第1及び第2の波長板2’、3’の夫々の位相差をΓ11、Γ22、光学軸方位角を夫々θ3、θ4とする。位相差を決める波長λは400nmとし、次数nは1からはじまる自然数とする。第2の実施例の積層1/2波長板1’の構成条件を次式のように設定した。
Γ11=360°+360°×2×n・・・(12)
Γ22=180°+360°×n・・・(13)
【0044】
第1及び第2の波長板2’、3’を構成する諸パラメータn、Γ11、Γ22、θ3、θ4を式(12)、(13)を満足するように設定して、積層1/2波長板1’構成する。上記のパラメータを種々変えてシミュレーションを行い、変換効率が良好なパラメータの組み合わせを求めた。その結果、第1及び第2の波長板2’、3’の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが4、波長λを400nmとしたときの第3及び4の波長板2’、3’の位相差Γ11、Γ22が夫々3240°(=360°+360°×2×4)、1620°(=180°+360°×4)、光学軸方位角θ3、θ4が−16°、45°の場合に、波長−変換効率特性が良好となった。
【0045】
図6(a)は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1’の変換効率特性を示す図である。入射角度を0°とした場合の積層1/2波長板1’の変換効率を実線で示し、入射角度を夫々−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、夫々の波長帯における積層1/2波長板1’の変換効率は0.94以上となることが判明した。更に、θ3及びθ4について最適化を試みたところ、図6(a)に示した波長−変換効率特性に比べて、図6(b)に示すように波長−変換効率特性は、400nm帯、500nm帯、675nm帯の帯域幅を夫々広げることができた。尚、最適化を行った後の各光学軸方位角の値は、θ3=−21°、θ4=37.5°である。
【0046】
図7は、第2の実施例における他のパラメータの例で、第1及び第2の波長板2’、3’の切断角度が夫々90°Z、高次モードの次数nが5、波長λを400nmとしたときの第3及び4の波長板2’、3’の位相差Γ11、Γ22が夫々3960°、1980°、光学軸方位角θ3、θ4が−16°、45°と設定したの場合に変換効率が良好となった。
図7(a)は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1’の変換効率を示す図である。積層1/2波長板1’への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で、−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。この実施例の場合、3波長対応光ピックアップ用の405nm帯、660nm帯、785nm帯で1/2波長板に要求される変換効率0.93をクリアして0.94以上の値が得られた。更に、θ3及びθ4について最適化を試みたところ、図7(a)に示した波長−変換効率特性に比べて、図7(b)に示すように波長−変換効率特性は、405nm帯、660nm帯、785nm帯の帯域幅を夫々広げることができた。尚、最適化を行った後の各光学軸方位角の値は、θ3=−21°、θ4=37.5°である。
【0047】
ここで、図5に示した積層1/2波長板1’を構成する第1の波長板2’と第2の波長板3’の光学的な作用について図8を用いて説明する。図8(a)は、積層1/2波長板1’に入射した直線偏光4のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。図8(b)は、図8(a)に示したポアンカレ球において積層1/2波長板1’に入射した光線の偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図(S1S3平面に投影した図)である。図8(c)は、本発明に係る積層1/2波長板1’の第1の波長板2’の機能について説明するために、前記偏光状態の軌跡をS1軸方向から見た図(S2S3平面に投影した図)である。図8(b)、(c)において、直線偏光4の光線がポアンカレ球の赤道上の所定の位置P0に入射すると、第1の波長板2’によって光軸R1を中心にして360°回転しP1に到達し(P0=P1)、さらに第2の波長板3’によって光軸R2を中心にして180°回転しP2(赤道)に到達することによって、積層1/2波長板1’を出射する光線が直線偏光4(入射光)に対してθ=90°だけ回転した直線偏光5となって積層1/2波長板1’を出射することが分かる。
【0048】
ここで、第2の波長板3’の位相差Γ22が入射光の波長の変化によりΔΓ2の位相変化を生じた場合、この位相変化ΔΓ2を第1の波長板2’の波長による位相変化ΔΓ1で相殺すれば、積層1/2波長板1’の波長依存性を抑圧し複数の波長帯で1/2波長板として機能できる。
更に、第2の波長板3’の波長による位相変化ΔΓ2は、基板材料の波長分散で決まる一定の数値を有しており、第1の波長板2’の波長による位相変化ΔΓ1は、第1の波長板2’の面内方位角θ3を調整することでその大きさを可変することが可能である。
そこで、第1の波長板2’と第2の波長板3’との関係式を以下に導出する。
入射光の波長が基準波長(設計波長)λ0から波長λ1〜λ2の間(λ1<λ2)で変化すると、波長板の有する波長依存性により第1の波長板2’及び第2の波長板3’の位相差が夫々Γ11及びΓ22より変化する。
また、第2波長板の位相差において、
Γ211:波長λ1のときの位相差
Γ222:波長λ2のときの位相差
と定義すると、第2の波長板3’の波長による位相変化ΔΓ2は、以下の式を満足する。
ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2・・・・(14)
【0049】
図8(b)において、第2の波長板3’に生じた位相変化ΔΓ2により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1”に変化したものとし、このP0→P1”の距離を近似的に直線x2で表すと、ΔΓ2とx2は下式(1)の関係を満足する。
(x2)2=2k2−2k2cosΔΓ2・・・・(15)
但し、kは、ポアンカレ球の半径を示す。
次に同様に、図8(c)において、第1の波長板2’に生じた位相変化ΔΓ1により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1’に変化したものとし、このP0→P1’の距離を近似的に直線x1で表すと、ΔΓ1とx1は下式(16)の関係を満足する。
(x1)2=2r2−2r2cosΔΓ1・・・・(16)
但し、rは、R1を回転軸としてΓ11回転させる時の半径である。
又、rは、第1の波長板2’の面内方位角θ3を用いて下式(17)により表すことができる。
r2=2k2−2k2cos2θ3・・・・(17)
【0050】
更に、式(17)を式(16)に代入すると、式(18)が得られる。
(x1)2=4k2(1−cos2θ3)(1−cosΔΓ1)・・・・(18)
そこで、第1の波長板2’と第2の波長板3’の位相変化がお互いに相殺しあうためには、
x1≒x2
である必要があり、式(15)と式(18)より
(x1)2=(x2)2
2k2−2k2cosΔΓ2=4k2(1−cos2θ3)(1−cosΔΓ1)の関係が成立する。
そこで、kを正規化してまとめると式(19)が得られる。
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cosΔΓ1)・・・(19)
次に、第1の波長板2’と第2の波長板3’とが同じ分散の基板材料で構成されており、
Γ11/Γ22=m
とすると、式(20)が得られる。
ΔΓ1=mΔΓ2・・・・(20)
そこで、式(20)を式(19)に代入すると式(21)が得られる。
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cosmΔΓ2)・・・(21)
式(21)は、第2の波長板3’により生ずる位相変化ΔΓ2により第1の波長板2’の面内方位角θ3が決定されることを示している。
【0051】
次に、上述した計算式を用いて積層1/2波長板1’を構成する第1の波長板2’と第2の波長板3’の具体的なパラメータを算出する。
具体例として、波長350nm〜850nmの帯域における複数の波長帯において1/2波長板として機能する積層1/2波長板についてパラメータを算出する。
例えば、第1の波長板2’の位相差Γ11=3240°(=360°+360°×2×4)、第2の波長板3の位相差Γ=1620°(=180°+360°×4)とすると、
m=Γ1/Γ2=2
となる。
次に、θ4については、第2の波長板3’に入射する直線偏光の偏光方向を90°回転した直線偏光として出射させるためにθ4の値を45°とするが、前述のシミュレーションにより得られた解に対して最適化を図るため、可変範囲を±10°と設定し、
θ4=45°±10°・・・(22)
とした。
【0052】
図9は本発明に係る偏光変換子の実施例を示すで構成図であって、偏光ビームスプリッタアレイ(偏光分離素子)10のP偏光が出射する面に、本発明に係る上記の積層1/2波長板11を貼り付けて偏光変換子を構成する。周知のように、偏光ビームスプリッタアレイ10の構成は、図9に示すように光学ガラス等を用いて形成した平行六面体透明部材を、複数個互いの側面同士を接合して構成する。平行四辺形状のプリズムを複数個、斜面同士を貼り合わせ、接合したプリズムの一方の斜面に偏光分離部13を形成し、他方の斜面には反射膜14を形成する。偏光変換子の作用は、光(ランダム光)12が偏光ビームスプリッタアレイ10の入射面に入射すると、ランダム光のうち、P偏光は偏光分離部13を透過し、偏光ビームスプリッタアレイ10の出射面に貼り付けられた積層1/2波長板11によりS偏光に変換されて出射する。一方、ランダム光のうちのS偏光は偏光分離部13により反射され、さらに反射膜14で反射されて、偏光変換子を出射する。本発明の偏光変換子の特徴はP偏光からS偏光への変換効率がよく、強い偏光光を作り出せることである。
【0053】
図10は本発明に係る偏光照明装置の実施例を示すで構成図あって、発光光源15と、レンズアレイ18と、上記に説明した本発明の積層1/2波長板19と、を備えている。発光光源15は超高圧水銀ランプやキセノンランプ等のランプ16と反射鏡17、例えば放物面反射鏡とからなり、ランプ16から出射される光は放物面反射鏡17の光軸に略平行光となる。そして、ランプ16から発せられる光は自然光(ランダム光)であり、強度の等しい直交する2つの直線偏光(P偏光、S偏光)の和で表せる。ランダム光は積層1/2波長板19を透過すると、S偏光のみに変換される偏光照明装置である。
【0054】
図11(a)は本発明に係る3波長対応光ピックアップ20の実施例を示すブロック図である。CDに対応した785nm帯の波長のレーザ光を出射するレーザダイオード(以下、LDと称する)21と、DVDに対応した660nm帯の波長のレーザ光を出射するLD22と、前記LD21の出射する直線偏光であるレーザ光を反射すると共に、前記LD22が出射する直線偏光のレーザ光を透過するダイクロイックプリズム23と、BD(405nm帯の青紫色レーザを用いたブルーレイディスクや、HD−DVDに代表されるブルーレーザディスク)に対応した405nm帯の波長のレーザ光を出射するLD24と、LD24が出射する直線偏光のレーザ光を反射すると共に、前記ダイクロイックプリズム23を反射、及び透過したレーザ光を透過する波長分離素子25と、該波長分離素子25を反射、及び透過したレーザ光の位相を180°変換して出射する積層1/2波長板26と、該積層1/2波長板26を出射するレーザ光を所定の比率で反射、及び透過するミラー27と、ミラー27を透過したレーザ光をモニターするフロントモニター(FM)28と、ミラー27を反射したレーザ光を平行光とするコリメートレンズ29と、コリメートレンズ29を透過した直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板30と、光ディスク31に形成されたピット32にレーザ光を集光する集光レンズ33と、ピット32にて反射したレーザ光を、前記集光レンズ33と、1/4波長板30と、コリメートレンズ29と、ミラー27と、を経由して検出する光検出素子PD34とにより構成する。光ピックアップでは1/2波長板をファーフィールドパターンと偏光面の相対角度を変える目的で使用している。
【0055】
以上のように、本発明の積層1/2波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成することにより、従来の構成では1/2波長板を3個必要としたが、本発明に係る積層1/2波長板を用いることにより、積層1/2波長板を1個のみで、3波長対応光ピックアップ装置を構成することができるという効果がある。
【0056】
更に、最近開発された三波長発光レーザダイオードと、本発明の積層1/2波長板を用いることにより、新たな3波長対応光ピックアップ装置を構成することができる。図11(a)と同じ光学デバイスには同じ符号を用いることにする。図11(b)は本発明に係る他の3波長対応光ピックアップ35の実施例を示すブロック図である。CD、DVD及びBDに夫々対応した785nm帯、660nm帯及び405nm帯の波長を出射するLD36a、36b及び36cを備えた複合LD36と、該複合LD36が出射する785nm帯、660nm帯、405nm帯のいずれか1つのレーザ光の位相を180°変換して出射する積層1/2波長板26と、該積層1/2波長板26を出射するレーザ光を所定の比率で反射、及び透過するミラー27と、ミラー27を透過したレーザ光をモニターするフロントモニター(FM)28と、ミラー27を反射したレーザ光を平行光とするコリメートレンズ29と、コリメートレンズ29を透過した直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板30と、光ディスク31に形成されたピット32にレーザ光を集光する集光レンズ33と、ピット32にて反射したレーザ光を、前記集光レンズ33と、1/4波長板30と、コリメートレンズ29と、ミラー27と、を経由して検出する光検出素子PD34とにより構成する。
【0057】
以上のように、本発明の積層1/2波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成することにより、光学部品を大幅に削減することが可能となり、光ピックアップ装置の製造コストを大きく低減することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0058】
1,1’,19,24…積層1/2波長板、2,2’,3,3’…波長板、4,5直線偏光,6,6’,7,7’…光学軸、θ1,θ2,θ3,θ4…光学軸の方位角、10…偏光変換子、11…ビームスプリッタアレイ、12…光軸、13…偏光分離部、14…反射膜、15…発光光源、16…ランプ、17…反射鏡、18…レンズアレイ、20,35…光ピックアップ装置、21,22,24,36a,36b,36c…レーザダイオード(LD)、23…ダイクロイックプリズム、25…波長分離素子、26…積層1/2波長板、27…ミラー、28…フロントモニター、29…コリメートレンズ、30…1/4波長板、33…集光レンズ、34…光検出素子(PD)、36…複合レーザダイオード(LD)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層波長板に関し、特に変換効率を改善した高次モードの積層波長板と、これを用いた偏光変換子と、該偏光変換子を用いた偏光照明装置bと、高次モードの積層波長板を用いたピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用の波長板は、従来から光ディスク装置、液晶ディスプレイ、液晶プロジェクタ等に用いられてきたが、使用される光の波長帯で波長板としての機能、例えば1/2波長板であれば、使用される波長帯に亘って位相が180°推移する等の機能を備えていることが必要である。水晶等の複屈折を用いて1/2波長板を1枚の水晶板で作る場合、水晶の常光線屈折率、異常光線屈折率を夫々no、neとし、水晶板の厚さをtとすると、波長λの光が1/2波長板を透過したときの、常光線と異常光線との位相差Γは、Γ=2π/λ×(ne−no)×tで与えられ、位相差Γは波長λに依存することになる。
【0003】
所望の波長帯で位相差がほぼ一定となる広帯域波長板が、特許文献1に開示されている。図12(a)に示す1/4波長板40は、1/2波長板41と、接着剤42と、1/4波長板43とから構成される。図12(b)に示すように、1/4波長板40に入射する直線偏光の偏光方向に対して1/2波長板41の延伸軸は−15°、1/4波長板43の延伸軸は−75°の方向に配置されている。尚、前記延伸軸の角度はyz平面内でy軸から右向きを正とした角度で記載されている。この1/2波長板41や1/4波長板43は、ポリカーボネイトを材料とした高分子フィルムを延伸処理したもので、1/4波長板40は可視光の範囲(400nm〜700nm)において、波長に依存しないほぼ完全な1/4波長板として機能することが開示され、1/4波長板40の作用を、ポアンカレ球を用いて説明している。
【0004】
また、複数の水晶板を積層して1/2波長板としての機能を持たせた積層波長板が特許文献2に開示されている。図13(a)は1/2波長板44の構成を示す斜視図であって、水晶板45と46とを貼り合わせて構成されている。図13(b)は1/2波長板44の分解斜視図であって、波長420nmに対し位相差Γ1が190°、光学軸方位角θ1が19°の水晶板45と、同様に波長420nmに対し位相差Γ2が200°、光学軸方位角θ2が64°の水晶板46と、を夫々の光学軸49、50が45°の角度で交差するように貼り合わせて、全体として波長400nm〜700nmの高帯域で1/2波長板として機能するように構成したと開示されている。図13(a)に示すように、1/2波長板44にP偏光47が入射すると、出射面では位相が180°ずれるので、入射光の偏光面は90°回転し、S偏光に変換する機能を有していることが開示されている。
尚、光学軸方位角θ1とθ2の関係が、θ2=θ1+45°、0°<θ1<45°であることが開示されている。
【0005】
1/2波長板44の作用はポアンカレ球を用いて説明されるが、詳細な解析は水晶板45、46の夫々のミューラ行列A1、A2と、入射及び出射偏光状態を示す夫々のストークスベクトルT、Sとすると、ストークスベクトルSは次式で表される。
S=A2・A1・T・・・(1)
ストークスベクトルSの成分から1/2波長板44の位相差を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−68816号公報
【特許文献2】特開2004−170853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の1/4波長板を応用して、1/2波長板を製作し、液晶プロジェクタ等に使用してみると、熱の影響による黄変が生じるという問題があった。また、特許文献2に記載の1/2波長板はシングルモードの波長板で構成されており、2枚の水晶板の夫々の位相差を概ね180°程度となるように加工する必要がある。実際に水晶板を製造する場合、研磨のし易さ、歩留まり等を勘案すると水晶板の厚さを100μm以上に設定することが望ましい。しかるに水晶の常光、異常光の屈折率差から位相差180°程度の水晶板を製作すると、その厚さは数十μmとなり、歩留まりが悪いのと、加工に時間を要するという問題があった。
【0008】
この厚さの問題を解決する手段として、水晶板の光学軸が水晶板の主面における法線方向から斜め方向になるように水晶板を切断することで、上記屈折率差を小さくし、水晶板の厚さを厚くすることは可能である。そこで、特許文献2においては、使用する水晶板の厚みの加工性を考慮して、水晶板の切断角度は、水晶板の主面における法線方向に対して光学軸が27°となる角度、所謂、カットアングルを27°Zとすることが開示している。しかし、水晶板の切断角度を27°Zとすると、入射角度に対する1/2波長板の位相差の変化が、大きくなるという問題が生ずる。液晶プロジェクタ又は光ピックアップの光学系で波長板を使用する場合、光源やレンズ系の配置の関係で波長板は、光が円錐状に収束(発散)する経路に配置されることがある。この場合、光線の中心付近は波長板に垂直に入射するが、円錐状の端では入射角が生じる。このため、入射角に対して位相差の変動が大きくなる1/2波長板を用いると光量のロスが生ずるという問題が生じる。
【0009】
図14は、切断角度が27°Z板を用い、波長420nmに対し位相差Γ1が190°、光学軸方位角θ1が19°の水晶板45と、同様に波長420nmに対し位相差Γ2が200°、光学軸方位角θ2が64°の水晶板46と、を夫々の光学軸49、50が45°の角度で交差するように貼り合わせて構成したシングルモードの1/2波長板の、入射角を−5°、0°、5°と変化させ、350nm〜750nmの波長に対する変換効率を示した図である。
ここで、変換効率とはP偏光をS偏光に変換する割合を表し、変換効率が1のとき、P偏光が全てS偏光に変換されることを表している。この変換効率はできるだけ高いことが望ましいが、一般的には0.93程度は必要であると言われている。図14から明らかなように入射角5°では、波長が525nm以上で変換効率0.9を割り込むという問題があった。
本発明は、上記の黄変、加工上の歩留まり、入射角の問題等を解決する高次モード積層波長板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の積層波長板は、波長λに対して位相差Γ1の第1の波長板と位相差Γ2の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、前記第1の波長板の面内方位角をθ1とし、前記第2の波長板の面内方位角をθ2とし、前記積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と、前記積層波長板から出射する直線偏光の偏光方向とのなす角度をθとしたときに、下式(1)〜(3)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ1=180°+360°×n、Γ2=180°+360°×n、θ2=θ1+θ/2、但し、nは1からはじまる自然数、を満足するように構成した。
このような積層波長板によれば、nを適切に設定することにより、積層波長板を構成する2つの波長板の厚さを加工し易い厚さとすることができるという効果がある。
【0011】
また本発明の積層波長板は、n=4、θ1=22.5°、θ2=67.5°とした。このように構成することにより、液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長帯400nm帯、500nm帯、675nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ1にできるという効果がある。
【0012】
また本発明の積層波長板は、n=5、θ1=22.5°、θ2=67.5°とした。このように構成することにより、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される波長帯405nm帯、660nm帯、785nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ1にできるという効果がある。
【0013】
また本発明の積層波長板は、波長λに対して位相差Γ11の第1の波長板と位相差Γ22の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、前記第1の波長板の面内方位角をθ3とし、前記第2の波長板の面内方位角をθ4とし、前記第2の波長板の波長λ1に対する位相差をΓ211、波長λ2(λ1<λ2)に対する位相差をΓ222としたとき、Γ11=360°+360°×2×n、Γ22=180°+360°×n、cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cos2ΔΓ2)、θ4=45°±10°、但し、nは1からはじまる自然数、ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2、を満足するよう構成した。このような積層波長板によれば、次数n1、n2を適切に設定することにより、積層波長板を構成する2つの波長板の厚さを加工し易い厚さとすることができるという効果がある。
【0014】
また本発明の積層波長板は、n=4、θ3=−16°若しくは−21°とした。このように構成することにより、液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長帯400nm帯、500nm帯、675nm帯において積層1/2波長板の波長−変換効率特が0.94以上にできるという効果がある。
【0015】
また本発明の積層波長板は、n=5、θ3=−16°若しくは−21°とした。このように構成することにより、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される波長帯405nm帯、660nm帯、785nm帯において積層波長板の波長−変換効率特がほぼ0.94以上にできるという効果がある。
偏光ビームスプリッタアレイのP偏光出斜面に、上記の積層波長板を貼り付けて偏光変換子を構成することを特徴する。
このように、上記の積層波長板を用いて偏光変換子を構成することにより、偏光変換子から出射する直線偏光(S偏光)の強度を強めることができるという効果がある。
【0016】
また本発明の偏光照明装置は、本発明の積層波長板を備えて構成される。このように本発明の積層波長板を用いて照明装置を構成することにより、照明装置から出射する直線偏光(S偏光)の強度を強めることができるという効果がある。
【0017】
また本発明の光ピックアップ装置は、本発明の積層波長板を備えて構成される。このように本発明の積層波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成すると、従来3つ必要であった1/2波長板を1つの積層波長板で実現することができる。
また、本発明の積層波長板と、3つの波長のレーザを出射するレーザダイオードとにより3波長対応の光ピックアップ装置を構成すると、光学部品を大幅に削減することが可能となり、光ピックアップ装置のコストを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明に係る高次モードの積層1/2波長板の構成を示した概略斜視図、(b)は分解斜視図。
【図2】(a)は本発明を説明するためのポアンカレ球の斜視図、(b)はポアンカレ球のS1S2平面への透視図。
【図3】本発明に係る積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【図4】本発明に係る他の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【図5】第2の実施例の積層1/2波長板の分解斜視図。
【図6】(a)は第2の実施例の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図、(b)は最適化後の波長−変換効率特性図。
【図7】(a)は第2の実施例の他の積層1/2波長板の波長−変換効率特性図、(b)は最適化後の波長−変換効率特性図。
【図8】(a)は本発明を説明するためのポアンカレ球の斜視図、(b)はポアンカレ球のS1S3平面への透視図、(c)はポアンカレ球のS2S3平面への透視図。
【図9】本発明に係る偏光変換子の構成を示す概略図。
【図10】本発明に係る偏光照明装置の構成を示す概略図。
【図11】(a)は本発明に係る光ピックアップ装置のブロック構成図、(b)は本発明に係る他の光ピックアップ装置のブロック構成図。
【図12】(a)は従来の1/4波長板の構成を示す斜視図、(b)は夫々の波長板の延伸軸方向を示す図。
【図13】(a)は従来のシングルモードの積層1/2波長板の構成を示した概略斜視図、(b)は分解斜視図。
【図14】従来のシングルモードの積層1/2波長板の波長−変換効率特性図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1(a)は高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板と称す)1の構成を示す斜視図であって、水晶を用いた第1の波長板2と、第2の波長板3とを夫々の光学軸が交差するように貼り合わせた構成を備え、全体として1/2波長板として機能するように構成する。図1(b)は1/2波長板1の分解斜視図であって、第1の波長板2の光学軸方位角をθ1、第2の波長板3の光学軸方位角をθ2とする。所定の波長λ、例えば400nmに対する第1の波長板2の位相差をΓ1、第2の波長板3の位相差をΓ2とし、
Γ1=180°+360°×n・・・(2)
Γ2=180°+360°×n・・・(3)
を満足するように第1及び第2の波長板2、3の厚さを設定する。ここで、nは高次モードの次数で、1からはじまる自然数とする。
【0020】
第1及び第2の波長板2、3に高次モードの波長板を用い、全体として1/2波長板1を構成する場合、波長350nmから750nmの全波長帯に亘って位相差を180°とすることは困難である。
そこで、所望する複数の波長帯で位相差を180°とするために、積層1/2波長板1の構成パラメータである第1及び第2の波長板2、3の夫々の高次モード次数n1、n2、所定の波長での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を、種々変化させて、積層1/2波長板1の出射光のストークスベクトルを算出し、これから位相差、変換効率等を求める手法をとった。
【0021】
はじめに、本発明に係る積層1/2波長板の実施例を見つけ出した計算手法を簡単に説明する。直線偏光が2枚の波長板を透過した後の偏光状態は、ミューラ行列、又はジョンズ行列を用いて表すことができる。
【0022】
E=R2・R1・I (4)
【0023】
ここで、Iは入射光の偏光状態、Eは出射光の偏光状態を表すベクトルである。R1は積層1/2波長板1における第1の波長板2のミューラ行列、R2は第2の波長板3のミューラ行列で、夫々次式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
【数2】
【0026】
第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数nを決め、夫々の位相差Γ1、Γ2、光学軸方位角度θ1、θ2を設定して、式(5)、(6)よりミューラ行列R1、R2を求める。そして、入射光の偏光状態Iを設定すると、式(4)より出射光の偏光状態Eを算出することができる。
行列としてミューラ行列を用いた場合について説明すると、出射光の偏光状態Eは次式で表される。
【0027】
【数3】
【0028】
Eの行列要素S01、S11、S21、S31はストークスパラメータと呼ばれ、偏光状態を表している。このストークスパラメータを用いて、波長板の位相差Γは次式のように表される。
【0029】
【数4】
【0030】
このように、式(8)を用いて位相差を算出することができる。
【0031】
図1に示すように、本発明に係る積層1/2波長板1は、直線偏光の偏光面を所定の角度θだけ回転させる機能を有している。例えば、垂直方向の振動面を持つ直線偏光4を入力光として、積層1/2波長板1を透過させ、偏光面をθ=90°だけ回転(位相変調)させて水平方向の振動面を持つ直線偏光5として出射させる場合を、図2(a)に示すポアンカレ球用いて考える。この位相変調(90°回転)はポアンカレ球で考えると、入射偏光状態P0からP2へ変調させることであり、このとき必要な位相差は180°である。しかし、P0からPaへ、P0からPbへ変調させた場合も、位相差は同じく180°となる。即ち、位相差を用いて評価した場合、必要な偏光状態に変調されているかを判断することができない。ポアンカレ球上(赤道上)のP2と、異なるPa、Pbの点は偏光面の方位である。これを検出するため、出射光の偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの積を計算し、得られた光量を評価値とすれば、偏光状態を正確に判定することができる。これを変換効率と定義する。
【0032】
具体的には、偏光子の行列Pの透過軸を90°に設定し、行列Pと出射光偏光状態を表す行列Eとの積から得られる行列Tのストークスパラメータより、90°方向の偏光面成分の光量を算出することができる。出射光偏光状態を表す行列Eと、偏光子の行列Pとの積は次式のようになる。
【0033】
T=P・E (9)
【0034】
ここで、行列Tは変換効率を表し、その要素のストークスパラメータで表すと次式のように表される。
【0035】
【数5】
【0036】
ここで、ベクトルTのストークスパラメータのS02が光量を表している。入射光量を1に設定すればS02が変換効率となる。位相差、変換効率とも積層1/2波長板を透過した後の偏光状態を表す行列Eから求めることができる。
【0037】
上記の変換効率を評価基準とし、積層1/2波長板の諸パラメータである第1及び第2の波長板2、3の高次モード次数n、所定の波長(例えば波長400nm)での夫々の位相差Γ1、Γ2、夫々の光学軸方位角θ1、θ2を種々変化させ、計算機を用いてシミュレーションした。シミュレーションを繰り返し行い、所望の複数の波長帯において、変換効率が良い場合の上記パラメータを選び出した。高次モード次数nが大き過ぎると、変換効率が1に近い波長帯域幅が狭くなり、積層1/2波長板としても使いづらくなるので、製造し易さ等を含めて上記パラメータを選定した。その結果を以下に説明する。
【0038】
図1に示す積層1/2波長板1の第1及び第2の波長板2、3の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが4で、波長λを400nmとしたとき、第1の波長板の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1620°(=180°+360°×4)、22.5°、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1620°(=180°+360°×4)、67.5°に設定した場合に、積層1/2波長板1の変換効率をシミュレーションにより求めた結果、良好な波長−変換効率が得られた。図3は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1の変換効率を示す図である。
【0039】
積層1/2波長板1への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で示し、入射角度を夫々−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、上記パラメータの積層1/2波長板1の変換効率はほぼ1となることが判明した。
【0040】
また、積層1/2波長板1の第1及び第2の波長板2、3の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが5で、波長λを400nmとしたとき、第1の波長板の位相差Γ1、光学軸方位角θ1が夫々1980°(=180°+360°×5)、22.5°、第2の波長板の位相差Γ2、光学軸方位角θ2が夫々1980°(=180°+360°×5)、67.5°に設定した場合に、良好な変換効率が得られた。図4は350nmから750nmの波長に対する積層1/2波長板1の変換効率を示す図である。積層1/2波長板1への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で、−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。上記のパラメータを用いた積層1/2波長板1の場合、3波長対応光ピックアップ用の波長板として要求される405nm帯、660nm帯、785nm帯の波長で、変換効率がほぼ1となることが分かった。
【0041】
ここで、第1の波長板2の光学軸方位角θ1と第2の波長板3の光学軸方位角θ2との関係について、図2に示すポアンカレ球を用いて説明する。図2(a)は1/2波長板1に入射した直線偏光のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。赤道上の所定の位置P0から偏光方向が赤道に対して垂直な方向となる直線偏光4として光線が入射すると、第1の波長板2によって光軸R1を中心にして180°回転しP1(赤道上)へ移され、さらに第2の波長板3によって光軸R2を中心にして180°回転しP2(赤道上)に到達し、直線偏光4に対してθ=90°だけ回転した直線偏光5となって1/2波長板1を出射することが分かる。
【0042】
次に、図2(b)を用いて、θ1とθ2との関係について検討する。
図2(b)は、図2(a)に示したポアンカレ球において1/2波長板1に入射した光線の偏光状態の軌跡をS3軸方向から見た図(S1S2平面に投影した図)を示す。第1の波長板2の光学軸方位角θ1、第2の波長板3の光学軸方位角θ2、及び直線偏光4(入射光)に対する直線偏光5(出射光)の回転角θの関係は、ポアンカレ球上では図2(b)のように表すことができる。
点O、P0、P1を結んでなる三角形OP0P1は点Oを頂点とする二等辺三角形であり光軸R1は三角形OP0P1の二等分線となり、辺OP0と光軸R1とのなす角及び辺OP1と光軸R1とのなす角は2θ1となる。点O、P1、P2を結んでなる三角形OP1P2は点Oを頂点とする二等辺三角形であり光軸R2は三角形OP1P2の二等分線となる。ここで、辺OP1と光軸R2とのなす角α及び辺OP2と光軸R2とのなす角αは以下のように求められる。
2θ=2×2θ1+2α
α=θ−2θ1
従って、辺OP0と光軸R2とのなす角2θ2は、以下のように表すことができる。
2θ2=α+2×2θ1=θ−2θ1+2×2θ1=θ+2θ1
従って、θ2は、
θ2=θ1+θ/2 ・・・(11)
と表すことができる。
【0043】
次に、図5は本発明に係る第2の実施例の高次モード積層1/2波長板(以下、積層1/2波長板と称す)1’の分解斜視図であって、第1の波長板2’と第2の波長板3’とを夫々の光学軸が交差するように貼り合わせた構成を備え、全体として1/2波長板として機能させる。第1及び第2の波長板2’、3’の高次モードの次数をn1、n2とし、第1及び第2の波長板2’、3’の夫々の位相差をΓ11、Γ22、光学軸方位角を夫々θ3、θ4とする。位相差を決める波長λは400nmとし、次数nは1からはじまる自然数とする。第2の実施例の積層1/2波長板1’の構成条件を次式のように設定した。
Γ11=360°+360°×2×n・・・(12)
Γ22=180°+360°×n・・・(13)
【0044】
第1及び第2の波長板2’、3’を構成する諸パラメータn、Γ11、Γ22、θ3、θ4を式(12)、(13)を満足するように設定して、積層1/2波長板1’構成する。上記のパラメータを種々変えてシミュレーションを行い、変換効率が良好なパラメータの組み合わせを求めた。その結果、第1及び第2の波長板2’、3’の切断角度が夫々90°Z(水晶板の主面における法線方向と光学軸(z軸)との交差角度が90°)、高次モードの次数nが4、波長λを400nmとしたときの第3及び4の波長板2’、3’の位相差Γ11、Γ22が夫々3240°(=360°+360°×2×4)、1620°(=180°+360°×4)、光学軸方位角θ3、θ4が−16°、45°の場合に、波長−変換効率特性が良好となった。
【0045】
図6(a)は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1’の変換効率特性を示す図である。入射角度を0°とした場合の積層1/2波長板1’の変換効率を実線で示し、入射角度を夫々−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。液晶プロジェクタで用いる青、緑、赤の波長は夫々400nm帯、500nm帯、675nm帯であるので、夫々の波長帯における積層1/2波長板1’の変換効率は0.94以上となることが判明した。更に、θ3及びθ4について最適化を試みたところ、図6(a)に示した波長−変換効率特性に比べて、図6(b)に示すように波長−変換効率特性は、400nm帯、500nm帯、675nm帯の帯域幅を夫々広げることができた。尚、最適化を行った後の各光学軸方位角の値は、θ3=−21°、θ4=37.5°である。
【0046】
図7は、第2の実施例における他のパラメータの例で、第1及び第2の波長板2’、3’の切断角度が夫々90°Z、高次モードの次数nが5、波長λを400nmとしたときの第3及び4の波長板2’、3’の位相差Γ11、Γ22が夫々3960°、1980°、光学軸方位角θ3、θ4が−16°、45°と設定したの場合に変換効率が良好となった。
図7(a)は波長350nmから750nmに対する積層1/2波長板1’の変換効率を示す図である。積層1/2波長板1’への入射角度を0°とした場合の変換効率を実線で、−5°、+5°としたときの変換効率を、菱形、三角の印を付けて表示してあるが、ほぼ重なった曲線となっている。この実施例の場合、3波長対応光ピックアップ用の405nm帯、660nm帯、785nm帯で1/2波長板に要求される変換効率0.93をクリアして0.94以上の値が得られた。更に、θ3及びθ4について最適化を試みたところ、図7(a)に示した波長−変換効率特性に比べて、図7(b)に示すように波長−変換効率特性は、405nm帯、660nm帯、785nm帯の帯域幅を夫々広げることができた。尚、最適化を行った後の各光学軸方位角の値は、θ3=−21°、θ4=37.5°である。
【0047】
ここで、図5に示した積層1/2波長板1’を構成する第1の波長板2’と第2の波長板3’の光学的な作用について図8を用いて説明する。図8(a)は、積層1/2波長板1’に入射した直線偏光4のポアンカレ球上での軌道の推移を説明するための図である。図8(b)は、図8(a)に示したポアンカレ球において積層1/2波長板1’に入射した光線の偏光状態の軌跡をS2軸方向から見た図(S1S3平面に投影した図)である。図8(c)は、本発明に係る積層1/2波長板1’の第1の波長板2’の機能について説明するために、前記偏光状態の軌跡をS1軸方向から見た図(S2S3平面に投影した図)である。図8(b)、(c)において、直線偏光4の光線がポアンカレ球の赤道上の所定の位置P0に入射すると、第1の波長板2’によって光軸R1を中心にして360°回転しP1に到達し(P0=P1)、さらに第2の波長板3’によって光軸R2を中心にして180°回転しP2(赤道)に到達することによって、積層1/2波長板1’を出射する光線が直線偏光4(入射光)に対してθ=90°だけ回転した直線偏光5となって積層1/2波長板1’を出射することが分かる。
【0048】
ここで、第2の波長板3’の位相差Γ22が入射光の波長の変化によりΔΓ2の位相変化を生じた場合、この位相変化ΔΓ2を第1の波長板2’の波長による位相変化ΔΓ1で相殺すれば、積層1/2波長板1’の波長依存性を抑圧し複数の波長帯で1/2波長板として機能できる。
更に、第2の波長板3’の波長による位相変化ΔΓ2は、基板材料の波長分散で決まる一定の数値を有しており、第1の波長板2’の波長による位相変化ΔΓ1は、第1の波長板2’の面内方位角θ3を調整することでその大きさを可変することが可能である。
そこで、第1の波長板2’と第2の波長板3’との関係式を以下に導出する。
入射光の波長が基準波長(設計波長)λ0から波長λ1〜λ2の間(λ1<λ2)で変化すると、波長板の有する波長依存性により第1の波長板2’及び第2の波長板3’の位相差が夫々Γ11及びΓ22より変化する。
また、第2波長板の位相差において、
Γ211:波長λ1のときの位相差
Γ222:波長λ2のときの位相差
と定義すると、第2の波長板3’の波長による位相変化ΔΓ2は、以下の式を満足する。
ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2・・・・(14)
【0049】
図8(b)において、第2の波長板3’に生じた位相変化ΔΓ2により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1”に変化したものとし、このP0→P1”の距離を近似的に直線x2で表すと、ΔΓ2とx2は下式(1)の関係を満足する。
(x2)2=2k2−2k2cosΔΓ2・・・・(15)
但し、kは、ポアンカレ球の半径を示す。
次に同様に、図8(c)において、第1の波長板2’に生じた位相変化ΔΓ1により、ポアンカレ球上の座標P0(P1)がP1’に変化したものとし、このP0→P1’の距離を近似的に直線x1で表すと、ΔΓ1とx1は下式(16)の関係を満足する。
(x1)2=2r2−2r2cosΔΓ1・・・・(16)
但し、rは、R1を回転軸としてΓ11回転させる時の半径である。
又、rは、第1の波長板2’の面内方位角θ3を用いて下式(17)により表すことができる。
r2=2k2−2k2cos2θ3・・・・(17)
【0050】
更に、式(17)を式(16)に代入すると、式(18)が得られる。
(x1)2=4k2(1−cos2θ3)(1−cosΔΓ1)・・・・(18)
そこで、第1の波長板2’と第2の波長板3’の位相変化がお互いに相殺しあうためには、
x1≒x2
である必要があり、式(15)と式(18)より
(x1)2=(x2)2
2k2−2k2cosΔΓ2=4k2(1−cos2θ3)(1−cosΔΓ1)の関係が成立する。
そこで、kを正規化してまとめると式(19)が得られる。
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cosΔΓ1)・・・(19)
次に、第1の波長板2’と第2の波長板3’とが同じ分散の基板材料で構成されており、
Γ11/Γ22=m
とすると、式(20)が得られる。
ΔΓ1=mΔΓ2・・・・(20)
そこで、式(20)を式(19)に代入すると式(21)が得られる。
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cosmΔΓ2)・・・(21)
式(21)は、第2の波長板3’により生ずる位相変化ΔΓ2により第1の波長板2’の面内方位角θ3が決定されることを示している。
【0051】
次に、上述した計算式を用いて積層1/2波長板1’を構成する第1の波長板2’と第2の波長板3’の具体的なパラメータを算出する。
具体例として、波長350nm〜850nmの帯域における複数の波長帯において1/2波長板として機能する積層1/2波長板についてパラメータを算出する。
例えば、第1の波長板2’の位相差Γ11=3240°(=360°+360°×2×4)、第2の波長板3の位相差Γ=1620°(=180°+360°×4)とすると、
m=Γ1/Γ2=2
となる。
次に、θ4については、第2の波長板3’に入射する直線偏光の偏光方向を90°回転した直線偏光として出射させるためにθ4の値を45°とするが、前述のシミュレーションにより得られた解に対して最適化を図るため、可変範囲を±10°と設定し、
θ4=45°±10°・・・(22)
とした。
【0052】
図9は本発明に係る偏光変換子の実施例を示すで構成図であって、偏光ビームスプリッタアレイ(偏光分離素子)10のP偏光が出射する面に、本発明に係る上記の積層1/2波長板11を貼り付けて偏光変換子を構成する。周知のように、偏光ビームスプリッタアレイ10の構成は、図9に示すように光学ガラス等を用いて形成した平行六面体透明部材を、複数個互いの側面同士を接合して構成する。平行四辺形状のプリズムを複数個、斜面同士を貼り合わせ、接合したプリズムの一方の斜面に偏光分離部13を形成し、他方の斜面には反射膜14を形成する。偏光変換子の作用は、光(ランダム光)12が偏光ビームスプリッタアレイ10の入射面に入射すると、ランダム光のうち、P偏光は偏光分離部13を透過し、偏光ビームスプリッタアレイ10の出射面に貼り付けられた積層1/2波長板11によりS偏光に変換されて出射する。一方、ランダム光のうちのS偏光は偏光分離部13により反射され、さらに反射膜14で反射されて、偏光変換子を出射する。本発明の偏光変換子の特徴はP偏光からS偏光への変換効率がよく、強い偏光光を作り出せることである。
【0053】
図10は本発明に係る偏光照明装置の実施例を示すで構成図あって、発光光源15と、レンズアレイ18と、上記に説明した本発明の積層1/2波長板19と、を備えている。発光光源15は超高圧水銀ランプやキセノンランプ等のランプ16と反射鏡17、例えば放物面反射鏡とからなり、ランプ16から出射される光は放物面反射鏡17の光軸に略平行光となる。そして、ランプ16から発せられる光は自然光(ランダム光)であり、強度の等しい直交する2つの直線偏光(P偏光、S偏光)の和で表せる。ランダム光は積層1/2波長板19を透過すると、S偏光のみに変換される偏光照明装置である。
【0054】
図11(a)は本発明に係る3波長対応光ピックアップ20の実施例を示すブロック図である。CDに対応した785nm帯の波長のレーザ光を出射するレーザダイオード(以下、LDと称する)21と、DVDに対応した660nm帯の波長のレーザ光を出射するLD22と、前記LD21の出射する直線偏光であるレーザ光を反射すると共に、前記LD22が出射する直線偏光のレーザ光を透過するダイクロイックプリズム23と、BD(405nm帯の青紫色レーザを用いたブルーレイディスクや、HD−DVDに代表されるブルーレーザディスク)に対応した405nm帯の波長のレーザ光を出射するLD24と、LD24が出射する直線偏光のレーザ光を反射すると共に、前記ダイクロイックプリズム23を反射、及び透過したレーザ光を透過する波長分離素子25と、該波長分離素子25を反射、及び透過したレーザ光の位相を180°変換して出射する積層1/2波長板26と、該積層1/2波長板26を出射するレーザ光を所定の比率で反射、及び透過するミラー27と、ミラー27を透過したレーザ光をモニターするフロントモニター(FM)28と、ミラー27を反射したレーザ光を平行光とするコリメートレンズ29と、コリメートレンズ29を透過した直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板30と、光ディスク31に形成されたピット32にレーザ光を集光する集光レンズ33と、ピット32にて反射したレーザ光を、前記集光レンズ33と、1/4波長板30と、コリメートレンズ29と、ミラー27と、を経由して検出する光検出素子PD34とにより構成する。光ピックアップでは1/2波長板をファーフィールドパターンと偏光面の相対角度を変える目的で使用している。
【0055】
以上のように、本発明の積層1/2波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成することにより、従来の構成では1/2波長板を3個必要としたが、本発明に係る積層1/2波長板を用いることにより、積層1/2波長板を1個のみで、3波長対応光ピックアップ装置を構成することができるという効果がある。
【0056】
更に、最近開発された三波長発光レーザダイオードと、本発明の積層1/2波長板を用いることにより、新たな3波長対応光ピックアップ装置を構成することができる。図11(a)と同じ光学デバイスには同じ符号を用いることにする。図11(b)は本発明に係る他の3波長対応光ピックアップ35の実施例を示すブロック図である。CD、DVD及びBDに夫々対応した785nm帯、660nm帯及び405nm帯の波長を出射するLD36a、36b及び36cを備えた複合LD36と、該複合LD36が出射する785nm帯、660nm帯、405nm帯のいずれか1つのレーザ光の位相を180°変換して出射する積層1/2波長板26と、該積層1/2波長板26を出射するレーザ光を所定の比率で反射、及び透過するミラー27と、ミラー27を透過したレーザ光をモニターするフロントモニター(FM)28と、ミラー27を反射したレーザ光を平行光とするコリメートレンズ29と、コリメートレンズ29を透過した直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板30と、光ディスク31に形成されたピット32にレーザ光を集光する集光レンズ33と、ピット32にて反射したレーザ光を、前記集光レンズ33と、1/4波長板30と、コリメートレンズ29と、ミラー27と、を経由して検出する光検出素子PD34とにより構成する。
【0057】
以上のように、本発明の積層1/2波長板を用いて3波長対応光ピックアップ装置を構成することにより、光学部品を大幅に削減することが可能となり、光ピックアップ装置の製造コストを大きく低減することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0058】
1,1’,19,24…積層1/2波長板、2,2’,3,3’…波長板、4,5直線偏光,6,6’,7,7’…光学軸、θ1,θ2,θ3,θ4…光学軸の方位角、10…偏光変換子、11…ビームスプリッタアレイ、12…光軸、13…偏光分離部、14…反射膜、15…発光光源、16…ランプ、17…反射鏡、18…レンズアレイ、20,35…光ピックアップ装置、21,22,24,36a,36b,36c…レーザダイオード(LD)、23…ダイクロイックプリズム、25…波長分離素子、26…積層1/2波長板、27…ミラー、28…フロントモニター、29…コリメートレンズ、30…1/4波長板、33…集光レンズ、34…光検出素子(PD)、36…複合レーザダイオード(LD)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λに対して位相差Γ1の第1の波長板と位相差Γ2の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、
前記第1の波長板の面内方位角をθ1とし、
前記第2の波長板の面内方位角をθ2とし、
前記積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と、前記積層波長板から出射する直線偏光の偏光方向とのなす角度をθとしたとき、
下式(1)〜(3)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ1=180°+360°×n ・・・(1)
Γ2=180°+360°×n ・・・(2)
θ2=θ1+θ/2 ・・・(3)
但し、nは1からはじまる自然数
【請求項2】
請求項1において、
n=4、
θ1=22.5°
θ2=67.5°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項3】
請求項1において、
n=5、
θ1=22.5°
θ2=67.5°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項4】
波長λに対して位相差Γ11の第1の波長板と位相差Γ22の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、
前記第1の波長板の面内方位角をθ3とし、
前記第2の波長板の面内方位角をθ4とし、
前記第2の波長板の波長λ1に対する位相差をΓ211、波長λ2(λ1<λ2)に対する位相差をΓ222としたとき、
下式(4)〜(7)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ11=360°+360°×2×n ・・・・(4)
Γ22=180°+360°×n ・・・・(5)
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cos2ΔΓ2)・・・・(6)
θ4=45°±10° ・・・・(7)
但し、nは1からはじまる自然数、ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2
【請求項5】
請求項4において、
n=4、
θ3=−16°若しくは−21°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項6】
請求項4において、
n=5、
θ3=−16°若しくは−21°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項7】
複数の透光性部材と、該複数の透光性部材の間に交互に配置された偏光分離部と反射膜とを備えた偏光分離素子と、
1/2波長板とから構成される偏光分離素子であって、
前記1/2波長板が請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板であることを特徴する偏光変換子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板を備えていることを特徴する偏光照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項1】
波長λに対して位相差Γ1の第1の波長板と位相差Γ2の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、
前記第1の波長板の面内方位角をθ1とし、
前記第2の波長板の面内方位角をθ2とし、
前記積層波長板に入射する直線偏光の偏光方向と、前記積層波長板から出射する直線偏光の偏光方向とのなす角度をθとしたとき、
下式(1)〜(3)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ1=180°+360°×n ・・・(1)
Γ2=180°+360°×n ・・・(2)
θ2=θ1+θ/2 ・・・(3)
但し、nは1からはじまる自然数
【請求項2】
請求項1において、
n=4、
θ1=22.5°
θ2=67.5°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項3】
請求項1において、
n=5、
θ1=22.5°
θ2=67.5°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項4】
波長λに対して位相差Γ11の第1の波長板と位相差Γ22の第2の波長板とを光軸が交差するよう貼り合わせて、全体として1/2波長板として機能する積層波長板であって、
前記第1の波長板の面内方位角をθ3とし、
前記第2の波長板の面内方位角をθ4とし、
前記第2の波長板の波長λ1に対する位相差をΓ211、波長λ2(λ1<λ2)に対する位相差をΓ222としたとき、
下式(4)〜(7)を満足するよう構成したことを特徴とする積層波長板。
Γ11=360°+360°×2×n ・・・・(4)
Γ22=180°+360°×n ・・・・(5)
cos2θ3=1−(1−cosΔΓ2)/2(1−cos2ΔΓ2)・・・・(6)
θ4=45°±10° ・・・・(7)
但し、nは1からはじまる自然数、ΔΓ2=(Γ222−Γ211)/2
【請求項5】
請求項4において、
n=4、
θ3=−16°若しくは−21°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項6】
請求項4において、
n=5、
θ3=−16°若しくは−21°
であることを特徴とする積層波長板。
【請求項7】
複数の透光性部材と、該複数の透光性部材の間に交互に配置された偏光分離部と反射膜とを備えた偏光分離素子と、
1/2波長板とから構成される偏光分離素子であって、
前記1/2波長板が請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板であることを特徴する偏光変換子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板を備えていることを特徴する偏光照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の積層波長板を備えていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−76097(P2011−76097A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243316(P2010−243316)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2007−97996(P2007−97996)の分割
【原出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【分割の表示】特願2007−97996(P2007−97996)の分割
【原出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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