説明

波長選択スイッチ

【課題】必要となるポート数が少ないユーザが、ポート数の多い波長選択スイッチの一部のポートを利用した場合、機能しないポートが数多く存在する。
【解決手段】本発明にかかる波長選択スイッチは、波長多重された光を入力または出力可能なポートを複数備えた光入出力部と、光を反射する反射領域を複数有し、波長多重された光を波長ごとに偏向可能な第1の偏向部材と、光入出力部および第1の偏向部材の間の光路中に配置された分散素子と、光入出力部および分散素の間の光路中に配置された第1の光学系と、分散素子および第1の偏向部材の間の光路中に配置された第2の光学系と、第1の光学系および第1の偏向部材の間の光路中に配置可能な光学部材と、光を反射する反射領域を複数有し、波長多重された光のうち、光学部材からの光を波長ごとに偏向可能な第2の偏向部材とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から波長選択スイッチが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1の波長選択スイッチは、MEMSプロセスにより製作されるミラーアレイ(MEMSミラーアレイ)により、周波数ごとに光信号を出力部へと切り替えることができる。波長選択スイッチは、波長多重された光を入出力することができる光入出力部を備えている。そして、光入出力部を構成するポートの数によって、波長選択スイッチで切り替えることができる経路の数が異なる。
【0003】
一方で、必要となるポートの数は、波長選択スイッチを使用するユーザによって異なる。ここで、ポート数の多い波長選択スイッチであれば、この波長選択スイッチのポートを部分的に利用することができるため、必要となるポートの数が多いユーザに限らず、必要となるポート数が少ないユーザも利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−126561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、必要となるポート数が少ないユーザが、ポート数の多い波長選択スイッチの一部のポートを利用した場合、機能しないポートが数多く存在するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、波長選択スイッチにおいて、機能しないポート数を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の波長選択スイッチは、
波長多重された光を入力または出力可能なポートを複数備えた光入出力部と、
光を反射する反射領域を複数有し、波長多重された光を波長ごとに偏向可能な第1の偏向部材と、
光入出力部および第1の偏向部材の間の光路中に配置された分散素子と、
光入出力部および分散素子の間の光路中に配置された第1の光学系と、
分散素子および第1の偏向部材の間の光路中に配置された第2の光学系と、
第1の光学系および第1の偏向部材の間の光路中に配置可能な光学部材と、
光を反射する反射領域を複数有し、波長多重された光のうち、光学部材からの光を波長ごとに偏向可能な第2の偏向部材と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる波長選択スイッチは、機能しないポート数を低減することができるので、ポートを効率よく利用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第1の状態での側面図、(b)は第1の状態での上面図である。
【図2】回折格子で分散される光線の実際の様子を示す図である。
【図3】第1実施形態の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第2の状態での側面図、(b)は第2の状態での上面図である。
【図4】第1実施形態におけるプリズムが配置された位置の拡大図である。
【図5】第1実施形態におけるプリズムの移動を示す図である。
【図6】第1実施形態の変形例であって、プリズムを複数備える構成を示す図である。
【図7】第2のミラーアレイの偏向角を抑える配置を示す図で(a)は第2のミラーアレイの法線が光軸と直交しない配置を示す図、(b)は第2のミラーアレイの法線が光軸と直交する配置を示す図である。
【図8】第2実施形態の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)第1の状態での側面図、(b)第2の状態での側面図である。
【図9】第2実施形態の変形例の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第1の状態での側面図、(b)は第1の状態での上面図である。
【図10】第2実施形態の変形例の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第2の状態での側面図、(b)は第2の状態での上面図である。
【図11】第2実施形態の変形例における光学ブロックの拡大図である。
【図12】第2実施形態の変形例における光学ブロックの移動を示す図であって、(a)反射面内での移動(b)光軸に直交する方向への移動を示す図である。
【図13】第2実施形態の変形例において、光学ブロックを複数備える構成を示す図である。
【図14】第2実施形態の波長選択スイッチにおける変形例の光学ブロックの図である。
【図15】第2実施形態の別の変形例の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第1の状態での側面図、(b)は第2の状態での側面図である。
【図16】第3実施形態の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、(a)は第1の状態での側面図、(b)は第2の状態での側面図である。
【図17】第3実施形態の変形例の波長選択スイッチであって、台形プリズムを複数備える構成を示す第2の状態での側面図である。
【図18】第4実施形態の波長選択スイッチにおける構成と光線を示す図であって、第1の状態での側面図である。
【図19】回折素子における光線の実際の様子を示す図である。
【図20】第4実施形態の波長選択スイッチにおける構成の斜視図である。
【図21】第4実施形態の波長選択スイッチにおける第2のミラーアレイ上の光線の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、波長選択スイッチの実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
すなわち、実施形態の説明に当たって、例示のために特定の詳細な内容が多く含まれるが、これらの詳細な内容に色々なバリエーションや変更を加えても、本発明の範囲を超えない。従って、以下で説明する本発明の例示的な実施形態は、権利請求された発明に対して、一般性を失わせることなく、また、何ら限定をすることもなく、述べられたものである。
【0011】
(第1実施形態)
図1、図2、図3は、波長選択スイッチの第1実施形態を示す図である。図1は、1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図であって、図1(a)は側面から見たときの構成を示す図、図1(b)は上面から見たときの構成を示す図である。
図2は、回折格子12で分散される光線の実際の様子を示す図である。
図3は、2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第2の状態)を示す図であって、図3(a)は側面から見たときの構成を示す図、図3(b)は上面から見たときの構成を示す図である。図4は、プリズム16が配置された位置の拡大図である。図5は、プリズム16の移動を示す図である。
【0012】
図1(a)に示すように、波長選択スイッチ1は、ファイバアレイ10(光入出力部)と、レンズアレイ11(第1の光学系)と、回折格子12(分散光学素子)と、レンズ13(第2の光学系)と、第1のミラーアレイ14(第1の偏向部材)と、第2のミラーアレイ15(第2の偏向部材)と、プリズム16(光学部材)を備えている。ファイバアレイ10から第1のミラーアレイ14までの間には、レンズアレイ11と、回折格子12と、レンズ13が、この順で光路中に配置されている。なお、Lは、レンズ13の光軸を示している。ここで、「光路中に配置する」とは、光学系を伝播する光に物理的に干渉する位置に配置することをいう。逆に、「光路外に配置する」とは、光学系を伝播する光に物理的に干渉しない位置に配置することをいう。
【0013】
図1(a)、(b)では、ファイバアレイ10から回折格子12までの光路と、回折格子12から第1のミラーアレイ14までの光路が、同一直線上に形成されている。しかしながら、実際には、図2に示すように、回折格子12で分散された光は入射光に対して略直交する方向に向かうので、2つの光路は略直交する。
【0014】
本実施形態の波長選択スイッチ1では、レンズ13から第1のミラーアレイ14までの間に、プリズム16を位置させることが可能となっている。そして、プリズム16からの光を受ける位置に、第2のミラーアレイ15が配置されている。
【0015】
ファイバアレイ10は、複数のファイバ10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10jを備えている。ファイバ10a、10b、…10jは、図1(a)に示すように、第1の方向に等間隔で配置されている。各ファイバ10a、10b、…10jは、それぞれ、光を入出力するための、入力ポートまたは出力ポートとして機能する。各ファイバには、その端面を介して光が入射あるいは出射するため、何れのファイバを入力ポートと出力ポートとして機能させるかは、適宜設定することができる。入力ポートとして機能するファイバには、波長選択スイッチ1の外から、波長多重された光が入力する。また、出力ポートとして機能するファイバからは、波長選択スイッチ1の外に向かって、第1のミラーアレイ14または第2のミラーアレイ15を構成する各ミラーの傾きに応じて、単波長の光または波長多重された光が出力される。
【0016】
第1の状態(図1)では、ファイバ10a〜10iが入力ポート、ファイバ10jが出力ポートとして機能している。なお、第2の状態(図3)では、ファイバ10aとファイバ10jが入力ポート、ファイバ10cとファイバ10hが出力ポートとして機能している。この場合波長選択スイッチとしては、多入力1出力(N×1)の構成となるが、1入力多出力(1×N)として機能させることも出来る。また、ファイバ全てが、常に入力ポートあるいは出力ポートとして使用されている必要はなく、使用されていない(機能していない)ファイバが存在していても良い。また、特定のファイバが、常に入力ポートあるいは出力ポートとして使用されている必要もない。図1(a)においては、特に、入力ファイバ10aから出射する光を用いて説明する。
【0017】
入出力ポートの数、入力ポートと出力ポートの並び等は、図に示した構成に限定されるものではない。本実施形態では、説明のために、入力ポートや出力ポートの数が少数の波長選択スイッチを意図的に例示している。実際には、1×2という少数ポートから構成されるものから、例えばCバンド(ITUで規定される)帯域で100GHzの周波数間隔の仕様の波長選択スイッチでは、チャネル数に応じて、〜50程度までのポート数の需要があり、50GHzの周波数間隔の仕様の波長選択スイッチでは、チャネル数に応じて、〜100程度までのポート数の需要が考えられる。
【0018】
レンズアレイ11は、複数のレンズにより構成される。レンズアレイ11は、ファイバアレイ10と回折格子12の間の光路中に配置されている。より具体的には、レンズアレイ11は、ファイバアレイ10の近傍に、各ファイバ端面に対向して配置されている。レンズアレイ11は、複数のレンズで構成されている。そして、レンズアレイ11の各々のレンズは、ファイバ10a〜10jの各々と一対一に対応している。よって、レンズアレイ11の各々のレンズも、図1(a)に示すように、第1の方向に等間隔で配置されている。
【0019】
レンズアレイ11の各々のレンズは、その焦点位置にファイバ10a〜10jの端面が位置するように配置されている。よって、図1では、ファイバ10a(入力ポート)から出射した光は、レンズによって平行光に変換され回折格子12に向かって進行する。一方、回折格子12からレンズに入射した光は、ファイバ10j(出力ポート)の端面に集光される。他のファイバについても、ファイバ端面から出射した光は、レンズアレイ11の対応するレンズによって、略平行光に変換され、レンズアレイ11を構成するレンズに入射した回折格子12からの光は、対応するファイバの端面に集光される点は、同じである。なお、レンズは単レンズが好ましいが、複数のレンズで構成されていても良い。またレンズアレイ11は別部材となっている必要はなく、同一基板上に形成されていても良い。このようなレンズの作製方法として、型を用いた成形方法や、リソグラフィ技術を使用した方法が知られている。
【0020】
回折格子12は、レンズアレイ11とレンズ13の間の光路中に配置されている。回折格子12では光が波長ごとに異なる方向に(異なる角度で)分散(回折)され、あるいは複数の波長の光が1つに多重化される。ファイバアレイ10から回折格子12に光が入射した場合は、光はレンズ13(第1のミラーアレイ)に向けて回折(分散)される。逆に、レンズ13側(第1のミラーアレイ側)から光が入射した場合は、光はファイバアレイ10に向けて回折(多重化)される。
【0021】
なお、図2に示すように、実際には、回折格子12は、その回折面がXZ平面内におけるレンズアレイ11を構成するレンズの光軸L1に対して傾くように配置されている。そして、回折格子12に入射した光は、レンズ13に向かう方向に回折される。図2おいて、L2は、レンズ13の光軸を示している。
【0022】
また、本実施形態では、分散素子として透過型の回折格子12を示しているが、これに限られない。例えば、分散素子として、リットマン−メトカルフ構成の分散素子を用いてもよいし、反射型の回折格子やイマージョングレーティング、グリズム、スーパープリズム等を用いても良い。また、回折格子以外の分散素子としては、例えばプリズムがある。また、使用する分散素子は1つである必要はなく、複数の分散素子を組み合わせて使用しても良い。
【0023】
レンズ13は、回折格子12から第1のミラーアレイ14までの間の光路中に配置されている。より詳しくは、一方の焦点位置(例えば、前側焦点位置)に回折格子12の分散起点(回折面)が位置し、他方の焦点位置(例えば、後側焦点位置)に第1のミラーアレイ14のミラー面が位置するように、レンズ13は配置されている。このレンズ13では光が収束する。なお、レンズ13に代えて反射ミラーを用いてもよい。
【0024】
なお、分散起点とは、分散光を逆方向に追跡したときに分散の起点となっているように見える位置を意味する。また、複数の分散素子から分散素子を構成する場合、分散起点は、複数の分散素子で生じる分散を1つの分散素子で生じさせたと考えた場合の分散起点となる。つまり、最終的な各分散光の分散素子からの進行方向を逆にたどったときに交わる位置である。より厳密には、複数の分散素子を用いた場合、その分散起点の位置は一般に厳密な一点で表すことが出来ない。従って、前記位置とは分散起点と実質的に見なすことの出来る位置を意味する。
【0025】
第1のミラーアレイ14は、レンズ13を挟んで回折格子12と対向する位置に配置されている。よって、レンズ13から出射した光は、直接第1のミラーアレイ14に入射する。第1のミラーアレイ14は、その各々のミラー面の法線方向がレンズ13の光軸Lに略沿うことが可能なように、光軸上に配置されている。ただし、ミラー面の配置は、必ずしも、この配置に限定されない。
【0026】
第1のミラーアレイ14は、複数のミラー面(反射領域)14a、14b、14c、14d、14eを有する。図1(b)に示すように、ミラー面14a〜14eは、第2の方向に等間隔で配置されている。そして、ミラー面14a〜14eの各々は、互いに離れて形成されている。また、ミラー面14a〜14eの各々は、ローカルのX軸とY軸の周りに回転することが可能となっている。ここで、X軸は第2の方向、Y軸は第1の方向にそれぞれ対応している。ミラー面14a〜14eの各々は、X軸の周りに回転することで、入射した光を所望のポートの方向に反射する。
【0027】
第2のミラーアレイ15は、プリズム16が、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に配置された際に、プリズム16からの反射光を波長ごとに偏向可能な位置に、配置されている。より具体的には、第2のミラーアレイ15は、レンズ13と第1のミラーアレイ14の間に配置されている。また、第2のミラーアレイ15は、そのミラー面の法線方向がレンズ13の光軸Lと略直交するように配置されている。このように、第2のミラーアレイ15は、レンズ13の光軸Lから第1の方向に離れた位置に配置されている。よって、レンズ13から出射した光は、第2のミラーアレイ15には直接入射しない。
【0028】
第2のミラーアレイ15は、複数のミラー面(反射領域)15a、15b、15c、15d、15eを有する。図1(b)に示すように、ミラー面15a〜15eは、第2の方向に等間隔で配置されている。そして、ミラー面15a〜15eの各々は、互いに離れて形成されている。また、ミラー面15a〜15eの各々は、ローカルのX軸とY軸の周りに回転することが可能である。ここで、X軸は第2の方向、Y軸は第1の方向にそれぞれ対応している。ミラー面15a〜15eの各々は、X軸の周りに回転することで、入射した光を所望の方向に反射する。
【0029】
なお、本実施形態では、ミラー面14a〜14e、15a〜15eは等間隔で配置されているが、等間隔で配置しなくても良い。一般的に回折格子等の分散素子を使用した場合、一定の周波数(波長)間隔の光はミラーアレイ位置に不等間隔に集光される。従ってこれに各ミラー中心が一致するように設計・配置するのが良い。また、本実施形態では、ミラー面14a〜14e、15a〜15eの各々の形状、面積は同じであるが、異なっていても良い。また、本実施形態では、第1のミラーアレイ14および第2のミラーアレイ15のミラー面の数は、何れも5であるが、5より多くても少なくても良い。ミラー面の数は、伝播される信号の周波数間隔及び周波数帯域幅により決められるものである。実際には、例えばCバンド(ITUで規定される)帯域で100GHzの周波数間隔の仕様の波長選択スイッチ1では、チャネル数に対応して、〜50程度のミラー数が用いられ、50GHzの周波数間隔の仕様の波長選択スイッチ1では、チャネル数に応じて、〜100程度のミラー数が用いられる。また、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15は、ミラー面の数、間隔、形状、面積が同じであっても異なっていても良い。
【0030】
また、反射領域(ミラー面)はMEMS技術を用いて形成することができる。MEMS技術を用いて製作したミラーをMEMSミラー、ミラーアレイをMEMSミラーアレイと呼ぶ。本実施形態では、MEMSミラーアレイを用いているが、単にミラーアレイと称して説明をしている。なお、ミラーアレイに代えて、反射型液晶パネルを用いても良い。
【0031】
プリズム16は、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に配置可能である。ここで、「光路中に配置可能」とは、実際の光が進行している光路中に配置されている場合と、プリズム16の移動により光路が変化したときに光路となりうる位置に配置されている場合との、両方の場合を含むことをいう。すなわち、このプリズム16は、図1(b)に示すように、第1の状態では、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路外に位置する。また、プリズム16は、図3に示すように、第2の状態では、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に配置する。第2の状態では、レンズ13から出射した光とプリズム16の少なくとも一部が交わっている。
【0032】
プリズム16をレンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路に対して挿脱するには、駆動機構と制御部を用いて電気的に制御することで行うのが良い。駆動機構は、例えば、プリズム16を載置するステージとステージを移動させるモータで構成すれば良い。制御部は、駆動機構を制御するもので、例えば、CPUやメモリを含む電子回路を用いて構成する。
また、プリズム16の移動状態を確認するために、移動状態を確認する確認機構(センサー)を設けても良い。この場合、制御部には、フィードバック回路を持たせるのが望ましい。これにより、確認機構からの信号を用いて、プリズム16を最適な位置へ移動させることができる。
【0033】
プリズム16は、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に位置したとき、レンズ13から出射した光の少なくとも一部を反射させて、第2のミラーアレイ15へ偏向して導く。また、第2のミラーアレイ15で反射された光を反射させてレンズ13へ偏向して導く。そのため、プリズム16はX方向に細長い反射面16Rを有する。なお、反射面16Rには反射膜(ミラーコート)を設けておくことが好ましい。また、本実施例では、プリズム16は三角柱であるが、これに限られない。平面を1面持っていれば良く、例えば、平行平板、多角柱(4以上)、半円柱であっても良い。
【0034】
なお、第1の状態にあるとき、プリズム16は、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路外に位置しているので光学的に機能しない。また、このときは、第2のミラーアレイ15へ実質的に入射する光はないので、第2のミラーアレイ15も光学的に機能していない。従って、第1の状態にある場合、第2のミラーアレイ15への電力供給は必ずしも必要ではない。
【0035】
次に、上記構成を持つ波長選択スイッチの動作について説明する。まず、第1の状態について図1を使って説明する。
【0036】
図1において実線で示すように、第1の状態では、ファイバ10a〜10iが入力ポートとして、ファイバ10jが出力ファイバとして振舞う。ファイバ10a(入力ポート)から出射する光を用いて説明をする。ファイバ10aから出射した光は発散しながら、レンズアレイ11に入射する。レンズアレイ11に入射した光はレンズアレイ11で収束され、略平行光に変換される。その結果、レンズアレイ11からは略平行光が出射する。平行光は回折格子12に入射する。
【0037】
ここで、ファイバ10aから出射した光は波長多重された光であるので、複数の波長の光が含まれている。このような波長多重光が回折格子12に入射すると、波長多重光は回折格子12で分散(回折)される。その結果、異なる波長の光が、波長ごとに異なる方向に(異なる角度で)回折格子12から出射する。すなわち、図1(b)に示すように、各波長の光は第2の方向に広がって回折格子12から出射する。ただし、第1の方向については平行のままである。
【0038】
回折格子12から出射した光はレンズ13に入射する。ここで、第1の方向については、どの角度で回折された光も、レンズ13によって収束される。また、レンズ13の(前側)焦点位置は分散起点(回折面)と一致している。そのため、第2の方向については、どの角度で回折された光も、レンズ13によって収束されてレンズ13の光軸Lに対して平行な光となる。
【0039】
また、回折格子12から出射した光は、レンズ13の光軸Lから離れた位置を通過している。そのため、レンズ13に入射した光は、レンズ13によってレンズ13の光軸Lに向かって屈折される。よって、第1のミラーアレイ14上には、第2の方向に細長く延びたライン状の集光領域が形成される。このライン状の集光領域には、一端側から他端側に向かって、λ1、λ2、λ3、…λnというように、波長ごとに分かれて(分光されて)光が集光している。
【0040】
ライン状の集光領域の光は、第1のミラーアレイ14のミラー面14a〜14eで反射される。ここで、ミラー面14a〜14eの向きを変えると、波長ごとに、光が反射する方向を変えることができる。すなわち、波長多重された光のうち、所望の波長の光だけの反射する向きを選択して変えることができる。これにより、所望の波長の光について任意の入力ポートからの光を出力ポートに導くことが出来る。
【0041】
ミラー面14a〜14eで反射された各波長の光は、破線で示すように、レンズ13に向かう。ここで、第1の状態において、プリズム16は、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路外に位置している。よって、各波長の光はレンズ13に入射し、レンズ13によって収束される。ここで、第1の方向については、各波長の光は発散した状態でレンズ13に入射する。よって、各波長の光は平行となってレンズ13から出射する。また、第2の方向については、各波長の光は光軸Lに平行な状態でレンズ13に入射する。よって、各波長の光は回折格子12の分散起点(回折面)に向けて収束される。
【0042】
回折格子12に入射した各波長の光は、回折格子12で波長多重される。このように、各波長の光は、同一方向に、他の波長の光と重なるように波長多重される。その結果、波長多重光が回折格子12から出射する。出射した波長多重光は平行光であるので、レンズアレイ11で収束され、ファイバ10j(出力ポート)に集光する。
【0043】
以上のように、第1の状態では、1つの出力ポートからの光を処理することができる。具体的には、波長選択スイッチは、9×1のポート構成を持つ波長選択スイッチとして機能する。しかしながら、第1の状態では、9より少ない入力ポートを必要とするユーザが使用する場合、入出力ポートの一部は余ってしまう。そのため、ポートに余りがある場合、これらのポートは機能しないポートとして残ってしまう。すなわち、入出力ポートの利用効率が良いとはいえない。
【0044】
そこで、第2の状態にすることで、機能しないポート数を低減すること、すなわち、入出力ポートの利用効率を高めることができる。第2の状態について図3を使って説明する。第2の状態は、2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態である。これを実現するために、第2の状態では、プリズム16をレンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に移動させて、位置させる。
【0045】
第2の状態では、ファイバ10aとファイバ10jが入力ポート、ファイバ10cとファイバ10hが出力ポートになっている場合を例示している。波長多重された光は、ファイバ10aから出射し、ファイバ10cに入射する。また、別の波長多重された光は、ファイバ10jから出射し、ファイバ10hに入射する。
【0046】
第2の状態では、プリズム16が、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に位置しているにもかかわらず、ファイバ10aから出射した光は、ファイバ10cに入射している。これは、第1方向に関して、プリズム16がレンズ13の光軸Lの一方の側(ファイバ10j側)のみ挿入されていることと、第1のミラーアレイ14のミラー面の向きが第1の状態と異なっているからである。プリズム16の挿入位置は、ファイバ10a〜10eを入出力ポートとして使用する光路に対しては光を反射しない位置に、ポート10f〜10jを入出力ポートとして使用する光路に対しては光を反射する位置になっている。
【0047】
第1の状態では、ファイバ10aから出射した光は、ファイバ10jに入射していた。これに対して、第2の状態では、ファイバ10aから出射した光は、ファイバ10cに入射する。そのため、第2の状態では、第1のミラーアレイ14のミラー面の向きを変えて、反射光の方向を変えている。この点以外は第1の状態と同じなので、ファイバ10aから出射した光についての重複する説明は省略する。
【0048】
次に、ファイバ10jから出射した光について説明する。ファイバ10jからレンズ13までの光学的な作用は、第1の状態におけるファイバ10aからレンズ13までの光学的な作用と同じなので、重複する説明は省略する。
【0049】
図3において、レンズ13から出射した光は、第1のミラーアレイ14に向かって進む。しかしながら、第2の状態では、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に、プリズム16が位置している。そのため、第1のミラーアレイ14に向かって進む光は、プリズム16の反射面16Rで第2のミラーアレイ15に向かって反射される。これにより、第2のミラーアレイ15上には、第2の方向に細長く延びたライン状の集光領域が形成される。このライン状の集光領域には、一端側から他端側に向かって、λ1、λ2、λ3、…λnというように、波長ごとに分かれて(分光されて)光が集光している。
【0050】
なお、本実施形態では、プリズム16と第2のミラーアレイ15との間の光路中には何も介在していない。そのため、プリズム16からの光は、直接、第2のミラーアレイ15に入射する。しかしながら、プリズム16と第2のミラーアレイ15の間の光路中に、光学素子(レンズ、ミラー、光学フィルタ等)や光学素子の組み合わせを配置しても良い。そして、これらを介して、光を第2のミラーアレイ15に入射させても良い。
【0051】
ライン状の集光領域の光は、第2のミラーアレイ15のミラー面15a〜15eで反射される。ここで、ミラー面15a〜15eの向きを変えると、波長ごとに、光が反射する方向を変えることができる。すなわち、波長多重された光のうち、所望の波長の光だけを選択的に所望の角度に偏向することができる。
【0052】
本実施形態では、ミラー面15a〜15eの向きを傾けなくても(レンズ13の光軸Lと平行にしておいても)、ミラー面15a〜15eで反射された光はファイバ10hに入射する。反射面16Rの光軸Lに対する角度は、上記の関係となるように設定されている。また、本実施形態では、ファイバ10jから出射された波長多重された全ての波長の光を、ファイバ10hに入射させるようにしている。そのため、本実施形態では、ミラー面15a〜15eの向きは変わっていない。なお、ファイバ10jとは異なる入力ファイバ10f、10g、10iのいずれかから出射した特定の波長の光を、ファイバ10hに入射させる場合は、ミラー面14a〜14eのうち特定波長に対応するミラーについて、そのミラー面の向きを所望の入力ファイバと出力ファイバ10hとが光学的に結合するように変えればよい。また、反射面16Rのレンズ13の光軸Lに対する角度によっては、ミラー面15a〜15eを予め傾けておく必要がある。
【0053】
ミラー面15a〜15eで反射された各波長の光は、破線で示すように、レンズ13に向かう。上記のように、プリズム16が、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に位置しているので、各波長の光はプリズム16の反射面16Rで反射される。反射された各波長の光は、レンズ13に入射し、レンズ13によって収束される。続いて、各波長の光は、回折格子12、レンズアレイ11を経て、ファイバ10hに入射する。
【0054】
このように、本実施形態の波長選択スイッチでは、ファイバ10a〜10eとファイバ10f〜10jとは、ほとんどの構成(光学部材)を共有しながら、それぞれ別の波長選択スイッチとして機能することができる。すなわち、第2の状態においては、ファイバ10a〜10eは、ファイバ10cを出力ポートとした4×1の波長選択スイッチとして、ファイバ10f〜10jはファイバ10jを出力ポートとした4×1の波長選択スイッチとして、それぞれ機能している。
このように、2つのミラーアレイ14、15を備え、波長多重された光のうち、光学部材からの光を波長ごとに偏向可能であるため、ミラーアレイ14による波長選択に用いないポートを、ミラーアレイ15による波長選択に用いることができる。
従って、機能しないポート数を低減することができる。
さらに、制御部が、プリズム16(光学部材)の位置を制御することにより、ミラーアレイ15による波長選択スイッチに用いるポートの数を変更可能である。
【0055】
以上のように、本実施形態の波長選択スイッチ1では、第1の出力ポートへの光を処理する際に使われないポートがあっても、その使われていないポートを第2の出力ポートへの光の処理に利用することができる。このように、本実施形態の波長選択スイッチ1によれば、機能しないポートが低減できるので、入出力ポートの利用効率を高くすることができる。
また、波長選択スイッチを2つ使用する場合に比べて、光学系を共通化できる。よって本実施形態の波長選択スイッチによれば、コンパクトで、低コストな波長選択スイッチを実現できる。
【0056】
なお、本実施形態では、図4に示すように、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15は、互いのミラー面の法線が直交するように配置されている。しかしながら、これに限られない。例えば、法線のなす角度が、鋭角あるいは鈍角となるように第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15を配置しても良い。
【0057】
また、本実施形態では、入出力ポートが等間隔であるとしたが、不等間隔であっても良い。プリズム16の反射面16R位置では、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15に入射する境界に存するポート、本実施形態ではポート10eと10f、からの光の光束が十分分離されているのが望ましい。従ってこの2ポートの間の間隔は他のポート間隔より大きくなっていても良い。この場合、ポート間隔に応じてマイクロレンズアレイ間隔も不等間隔となる。
【0058】
また、本実施形態では、図4に示すように、プリズム16の反射面16Rを含む平面51に対して、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15とが対称となるように、プリズム16、第1のミラーアレイ14及び第2のミラーアレイ15が配置されている。
【0059】
また、本実施形態では、第2のミラーアレイ15の位置は、複数のファイバからの光が第1の方向に略交わる位置となっている。これは、図4における、ファイバ10jから入力され光学系に出射された光の光路を示す50jと、ファイバ10fから入力され光学系に出射された光の光路を示す50fが、第2の状態における反射面16Rから第2のMEMSミラーアレイ15までの伝播距離(実線で示す線分)と、第1の状態における、第2の状態において反射面16Rがある位置から第1のMEMSミラーアレイ14までの伝播距離(長鎖線で示す線分)とが等しくなっているからである。
【0060】
また、図5に示すようにプリズム16が、反射面16Rを含む平面51内で移動可能となるようにしても良い。この場合、プリズム16をレンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路に対して挿脱する駆動機構と制御機構(不図示)を、プリズム16を矢印の方向に移動させるために利用することができる。
ここで、制御部は、プリズム16(光学部材)の位置を制御する。図5に示す状態では、波長多重された光の一部が第1のミラーアレイ14(第1の偏向部材)に集光している。この状態を「第1の状態」とみることもできる。
次に、プリズム16を図5に示す状態よりも、ファイバ10a〜10gからの光がすべて反射面16Rで反射される位置まで、平面51内において紙面上方へ移動する。この状態では、第1のミラーアレイ14へは光は入射しない。そして、波長多重された光の全部は、反射面16Rで反射されて、第2のミラーアレイ15(第2の偏向部材)に集光する。この状態を「第2の状態」とする。このような、第1の状態と第2の状態とを切替えることもできる。
これにより、第1のミラーアレイ15と第2のミラーアレイ16との選択の自由度が向上する。
なお第1の状態と第2の状態との切り替えは、2値的であっても、連続的であっても良い。
【0061】
図5において、ファイバ10a〜10gから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線50a〜50g(光線50a〜50eは不図示)は反射面16Rで反射されない。よって、光線50a〜50gは第1のミラーアレイ14に入射する。一方、ファイバ10h〜10jから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線50h〜50j(光線50iは不図示)は反射面16Rで反射される。よって、光線50h〜50jは第2のミラーアレイ15に入射する。
【0062】
図5のように、プリズム16を平面51内において移動可能に構成すると、ファイバ10a〜10gまでを1つの波長選択スイッチ1、ファイバ10h〜10jまでを別の波長選択スイッチとして、それぞれ独立に機能させることが出来る。これにより、機能しないポートが低減できるので、入出力ポートの利用効率を高くすることができる。
【0063】
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例を図6に示す。本変形例では、光路を切替えるための光学部材を複数用いている。そのため、本変形例では、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの間に、2つのプリズム161と162を位置させている。これに伴い、第1のミラーアレイ14に加えて2つのミラーアレイ151と152も配置している。
【0064】
図6において、第2のミラーアレイ151や第1のプリズム161の位置や機能は、それぞれ、図5における第2のミラーアレイ15やプリズム16と同じなので、重複する説明は省略する。第3のミラーアレイ152(第3の偏向部材)や第2のプリズム162(第2の光学部材)は、レンズ13の光軸Lに対して、第2のミラーアレイ151や第1のプリズム161と対称になるように配置されている。第2のプリズム162は、第1のプリズム161と同様に、平面512内で移動可能に構成されている。
【0065】
図6において、ファイバ10a〜10cから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線50a〜50c(光線50bは不図示)は反射面162R2で反射される。よって、光線50a〜50cは第3のミラーアレイ152に入射する。ファイバ10d〜10gから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線50d〜50g(光線50e、50fは不図示)は反射面161R1、162R2のいずれでも反射されない。よって、光線50d〜50gは第1のミラーアレイ14に入射する。ファイバ10h〜10jから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線50h〜50j(光線50iは不図示)は反射面161R1で反射される。よって、光線50h〜50jは第2のミラーアレイ151に入射する。
【0066】
このように、本変形例では、ファイバ10a〜10cまでを1つの波長選択スイッチ、ファイバ10d〜10gまでを別の波長選択スイッチ、ファイバ10h〜10jまでを更に別の波長選択スイッチとして、それぞれ独立に機能させることが出来る。これにより、機能しないポートが低減できるので、入出力ポートの利用効率を高くすることができる。また、光路を切替えるための光学部材の数をiとしたとき、1〜1+i個のそれぞれ独立した波長選択スイッチとして機能することができるので、さらに入出力ポートの利用効率を高くすることができる。
具体的には、更に偏向部材を備えるので、同時に3つ以上の処理が行える。よって、更にポートの利用効率が高まる。
【0067】
次に、ミラーアレイの偏向角の大きさを低減する構成について説明する。図7は、第2のミラーアレイ15の偏向角を抑える配置を示す図である。図7(a)は第2のミラーアレイ15の法線が、レンズ13の光軸Lと直交しない配置を示す図、図7(b)は第2のミラーアレイ15の法線が、レンズ13の光軸Lと直交する配置を示す図である。
【0068】
第2のミラーアレイ15を使って説明する。図7(a)に示すように、第2のミラーアレイ15に、光線50aと50eを入射させたとする。ここで、レンズ13の光軸Lと直交する軸をL’とすると、光線50aと軸L’とのなす角はθa、光線50eと軸L’とのなす角はθeとなる(時計回りを正、反時計回りを負とする)。ミラーアレイ14、15では、入射した光の反射方向を変えるために、各ミラーがX軸の周りに回転する。このときの回転角すなわち、偏向角を抑えると、各ミラーへの負荷を軽減することができる。
【0069】
ここで、ミラーアレイ14、15は、ミラー面とミラー面を支持する基板を備えている。そして、ミラー面は、所定の角度を中心にして振れる。所定の角度がゼロのとき、各ミラー面の法線と基板の法線は一致する。この場合、基板の法線と軸L’とのなす角θが、θe+(θa−θe)/2と一致、あるいはできるだけ一致するように、第2のミラーアレイ15を配置する。このようにすると、光線50aの第2のミラーアレイ15への入射角度と、光線50eの第2のミラーアレイ15への入射角度を略等しくすることができる。そのため、第2のミラーアレイ15の最大振れ角度を小さくすることができる。よって、MEMSミラーの作製時の難易度や、駆動電圧を小さくすることができる。なお、所定の角度がゼロでない場合、その分を考慮して、第2のミラーアレイ15を配置すれば良い。
【0070】
また、プリズム16について、次のようにしても良い。図7(b)では、各ミラー面の法線と基板の法線は一致しており、基板の法線と軸L’とのなす角θは略0°である。このような状態で、第2のミラーアレイ15に、光線50aと50eを入射させたとする。このとき、|θa|と|θe|が略等しくなるようなに反射する反射面16Rをプリズム16が持つようにする。このようにすれば、図7(a)と同じような効果が得られる。
【0071】
なお、図7(a)、(b)のいずれにおいても、第2のミラーアレイ15は、レンズ16から第1のミラーアレイ14までの伝播距離と、レンズ16から第2のミラーアレイ15までの伝播距離が等しくなるように配置されるのが望ましい。
【0072】
(第2実施形態)
図8は、波長選択スイッチの第2実施形態を示す図である。図8は波長選択スイッチを側面から見たときの構成と光線を示す図である。図8(a)は1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図であり、図8(b)は2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第2の状態)を示す図である。なお、第1実施形態で説明したように、第1の状態は、1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態、第2の状態は、2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態である。
【0073】
第2実施形態の波長選択スイッチにおいても、プリズム17はレンズ13と第1のミラーアレイ14の間に位置している。ただし、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15は、第1実施形態の波長選択スイッチ1では、各々のミラー面の法線が直交するように配置されていたが、第2実施形態の波長選択スイッチ1では、各々のミラー面の法線方向がレンズ13の光軸Lに略沿うことが可能なように配置されている。ただし、ミラー面の配置は、必ずしも、この配置に限定されない。
【0074】
第1の状態と第2の状態について説明する。第1の状態では、第1実施形態と同様に、プリズム17は、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路外に位置している。よって、第1の状態についての説明は省略する。また、第2の状態において、ファイバアレイ10からレンズ13までは、第1実施形態と同じなので重複する説明は省略する。
【0075】
第2の状態では、図8(b)に示すように、ファイバ10jからの光はレンズ13から出射し、第1のミラーアレイ14に向かって進む。ここで、本実施形態では、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に、プリズム17が位置している。そのため、第1のミラーアレイ14に向かって進む光は、プリズム17を通過する際に屈折される。プリズム17で屈折された光は、第2のミラーアレイ15に向かう。これにより、第2のミラーアレイ15上には、第2の方向に細長く延びたライン状の集光領域が形成される。このライン状の集光領域には、一端側から他端側に向かって、λ1、λ2、λ3、…λnというように、波長ごとに分かれて(分光されて)光が集光している。
ここで、第2の状態において、ファイバ10aからの光については、レンズ13とミラーアレイ14との間の光路中にはプリズム17は位置していない。このため、図8(b)に示すように、ミラーアレイ14を傾斜させることで、図中破線で示す光線のように、ファイバ10aからの光のミラーアレイ14による反射光を、レンズ13へ向かわせることができる。ミラーアレイ15に戻って説明を続ける。
【0076】
ライン状の集光領域の光は、第2のミラーアレイ15のミラー面15a〜15eで反射される。ここで、ミラー面15a〜15eの向きを変えると、波長ごとに、光が反射する方向を変えることができる。すなわち、波長多重された光のうち、所望の波長の光だけを選択的に所望の角度に偏向することができる。そして、ミラー面15a〜15eで反射された各波長の光は、破線で示すように、レンズ13に向かう。
【0077】
なお、第2実施形態においても、レンズ13と第1のミラーアレイ14との間の伝播距離と、レンズ13と第2のミラーアレイ15との間の伝播距離とが等しくなるように、第2のミラーアレイ15は配置されるのが望ましい、ここで媒質中を伝播する伝播距離は空気換算長(幾何学的伝播距離を媒質屈折率で除したものとする)を用いるものとする。
【0078】
以上のように、第2実施形態の波長選択スイッチ1においても、第2のミラーアレイ15を備えているので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第2実施形態の波長選択スイッチ1では、第1のミラーアレイ14と第2ミラーアレイ15を近接させることができるので、波長選択スイッチの小型化可能となる。場合によっては、1つの基板上に、第1のミラーアレイ14と第2ミラーアレイ15を形成することも可能となる。
【0079】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例を図9に示す。図9は1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図である。図9(a)は側面から見たときの構成と光線を示す図であり、図9(b)は上面から見たときの構成と光線を示す図である。
また、図10は2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第2の状態)を示す図であって、図10(a)は側面から見たときの構成と光線を示す図、図10(b)は上面から見たときの構成と光線を示す図である。
【0080】
本変形例では、プリズム17に代えて光学ブロック18を用いている。それ以外の構成はプリズム17を用いる構成と同じなので説明は省略し、光学ブロック18を中心に説明する。図10(b)に示すように、ファイバ10jからの光はレンズ13から出射し、第1のミラーアレイ14に向かって進む。ここで、本変形例の第2の状態では、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に、光学ブロック18が位置している。そのため、第1のミラーアレイ14に向かって進む光の一部は、光学ブロック18の内部で複数回反射して光学ブロック18から出射する。光学ブロック18から出射した光は、第2のミラーアレイ15に向かう。
【0081】
図11は、光学ブロック18のより詳細な形状と、光学ブロック18を通過する光線の様子を示している。図11では、光路中に光学ブロック18が挿入されているので第2の状態を示している。
【0082】
図11に示すように、光学ブロック18は入射面、出射面、第1の反射面18Raおよび第2の反射面18Rbを持ち、屈折率nの媒質で構成されている。ここで、各面はいずれも平面である。また、第2の反射面18Rbは第1の反射面18Raと対向する位置に設けられている。
【0083】
このような光学ブロック18の材料としては、例えば、BSL7(株式会社オハラ製)といった市販の光学ガラスや、石英ガラス、樹脂、あるいはシリコン(Si)といった赤外領域に高い透過率をもつ材料がある。以下の説明において、光学ブロック18は、例えば、材料がSBSL7で、θ1が133°、θ2が47°、Hが2.7mm、Dが5.4mmとなっている。
【0084】
図11に示すように、ファイバ10a〜10eから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線120a〜120e(光線120a〜120eは不図示)は光学ブロック18に入射しない。よって、光線120a〜120eは第1のミラーアレイ14に入射する。
【0085】
一方、ファイバ10f〜10jから回折格子12に向かって光を出射させた場合、光線120f〜120j(光線120g、120iは不図示)は光学ブロック18に入射する。光学ブロック18に入射した光線120f〜120jは、第1の反射面18Raでレンズ13の光軸Lと略直交する方向に反射される。第1の反射面18Raで反射された光線120f〜120jは、第2の反射面18Rbでレンズ13の光軸Lに沿う方向に反射される。第2の反射面18Rbで反射された光線120f〜120jは第2のミラーアレイ15に入射する。
【0086】
また、本変形例においても、第2ミラーアレイ15の位置は、複数の入力ポートからの光が第1の方向に略交わる位置となっている。これは、図11における、ファイバ10jから入力され光学系に出射された光の光路を示す120jと、ファイバ10fから入力され光学系に出射された光の光路を示す120fが、第2の状態における光学ブロック18の入射面から第2のミラーアレイ15までの伝播距離(実線で示す線分)と、第1の状態における、第2の状態において光学ブロック18の入射面がある位置から第1のミラーアレイ15までの伝播距離(長鎖線で示す線分)とが略等しくなっているからである。ここで媒質中を伝播する伝播距離は空気換算長(幾何学的伝播距離を媒質屈折率で除したものとする)を用いるものとする。
【0087】
本実施形態においても、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15との位置関係は、同一平面内に位置している。第2の方向について、両者は重なり合うように位置している。一方、第1の方向について、両者は離れて位置している。両者はこのような位置関係にあるので、第1ミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15は、MEMSプロセスにより同一工程で、同一基板上に作製されている。
【0088】
また、光学ブロック18は、第1実施形態(図5)と同様に移動可能な構成にすることができる。図12は、光学ブロック18の移動を示す図である。図12(a)は反射面内での移動を示し、図12(b)は光軸に直交する方向への移動を示す図である。図12(b)に示すように、第1の方向に駆動可能な構成としても良い。
【0089】
図12(a)や図12(b)のようにすると、光学ブロック18の位置を変えることで、例えば、ポート10fに入力され光学系に出射された光線120fを、第1のミラーアレイ14に入射させたり、第2のミラーアレイ15に入射させたりすることができる。光学ブロック18の位置を大きく変化させれば、他の光線も第1のミラーアレイ14に入射させたり、第2のミラーアレイ15に入射させたりすることができる。
【0090】
また、本変形例の光学ブロック18では、第1反射面18Raと第2反射面18Rbとが平行になるように、θ1およびθ2が設定されている。よって、前述の駆動を行った際に、光学ブロック18の位置が異なっても、光学ブロック18の入射面から第2のミラーアレイ15までの伝播距離に差異がほとんど生じない。そのため、駆動時に第2のミラーアレイ15上における集光状態に与える影響が小さくて済む。
【0091】
また、光学ブロック18は、第1実施形態の変形例(図6)と同様に複数用いても良い。図13は、光学ブロック18を複数備える構成を示す図である。
【0092】
図13に示すように、第1の光学ブロック181と第2の光学ブロック182を設ける。第1の光学ブロック181は、反射面181R1、181R2を有する。第2の光学ブロック182は、反射面182R1、182R2を有する。これに伴い、2つのミラーアレイ151と152を設けてもよい。これにより、光路を切替えるための光学部材の数をiとしたとき、1〜1+i個のそれぞれ独立した波長選択スイッチとして機能することができるので、さらに入出力ポートの利用効率を高くすることができる。
ここで、3つのミラーアレイ14、151、152のうち、少なくとも2つのミラーアレイは、それぞれの反射領域が略同一平面となるように設けることができる。これにより、ミラーアレイの製造、設置が容易になる。
【0093】
また、第1の光学ブロック181の反射面181R1と、第2の光学ブロック182の反射面181R2の2つの反射面は平行にしなくても良い。図14は、2つの反射面が非平行な光学ブロック18を示している。この点について説明する。
【0094】
図11に示すように、第2のミラーアレイ15に入射する光線120f、120h、120jは、いずれも軸AXに対して全て片側に位置している。そのため、第2のミラーアレイ15のミラー面の向きを、入力ファイバと出力ファイバとが光学的に結合するような角度に偏向しようとすると、その角度は軸AXに対して片側に向けることとなる。従って一方向に大きな偏向量が必要となる。この場合、ミラー面に負荷がかかるので好ましくない。
【0095】
そこで、図14に示すように、光学ブロック18の第2反射面18Rbの角度θ2を、適宜設定することで上記の問題を解消できる。すなわち、図14の光学ブロック18では、第2反射面18Rbで反射された光線120hが、射出面に対して略垂直となるように第2反射面18Rbの角度θ2が設定されている。その結果、光線120fと120jが軸AXを挟んで位置するようになっている。すなわち、第2のミラーアレイの基板、あるいはミラーの振れ角中心に対して、120fの入射角度と120jの入射角度とが略等しいようになっている。光学ブロック18をこのように構成することで、第2のミラーアレイ15の第1方向の最大振れ角度を第1のミラーアレイ14に比べ約半分程度に小さくすることができる。よって、MEMSミラーの作製時の難易度や、駆動電圧を小さくすることができる。
【0096】
(第2実施形態の別の変形例)
第2実施形態の別の変形例を図15に示す。図15は側面から見たときの構成と光線を示す図である。図15(a)は、1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図、図15(b)2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第2の状態)を示す図である。
【0097】
本変形例では、プリズム17に代えて平行平面板19を用い、さらに平行平面板30を光路中に位置させている。それ以外の構成は図8と同じなので重複する説明は省略し、平行平面板19と平行平面板30を中心に説明する。
本変形例では、レンズ13と第1のミラーアレイ14の間に、平行平面板19と平行平面板30が位置している。ここで、平行平面板30は伝播距離補償光学素子である。平行平面板19と平行平面板30は、それぞれ傾斜した面を備えている。この傾斜した面を合わせると、1枚の平行平面板が形成されるような形状となっている。
レンズ13の光軸を挟んで一方の側に平行平面板30と第1のミラーアレイ14が配置され、他方の側に平行平面板19と第2のミラーアレイ15が配置されている。本変形例では、平行平面板19が図8におけるプリズム17の役割をする。
【0098】
第1の状態では、図15(a)に示されているように、平行平面板30と平行平面板19は、互いの傾斜した面が向かい合うように配置されている。すなわち、平行平面板30と平行平面板19を合わせた全体の形状が平行平面板となるように配置されている。このような配置において、ファイバ10aから出射した光は、レンズアレイ11、回折格子12、レンズ13、平行平面板30を経て、第1のミラーアレイ14に入射する。第1のミラーアレイ14で反射された光は、平行平面板19、レンズ13、回折格子12、レンズアレイ11を経て、ファイバ10jに入射する。
第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15とは、それぞれの反射領域が略同一平面となるように設けられている。
【0099】
次に、第2の状態では、図15(b)に示されているように、平行平面板19が所定の角度だけ回転する。また、第1のミラーアレイ14のミラー面と第2のミラーアレイ15のミラー面も、それぞれ第1の状態とは異なる向きに回転する。
なお図面では、平行平面板19が回転した場合、平行平面板19面の陵線部が平行平面板30と接触するように見える。しかしながら、反時計回りに回動する場合は接触せずに所望の角度にすることが出来る。また、例えば、平行平面板19の回転に先立って平行平面板30を移動させる構成、または2つの平行平面板の間隔を十分取る構成などして、平行平面板どうしに接触が生じないようにすることも出来る。
【0100】
第2の状態では、第1のミラーアレイ14の向きが変わったため、ファイバ10aから出射した光はファイバ10cに入射する。一方、ファイバ10jから出射した光は、レンズアレイ11、回折格子12、レンズ13を経て、平行平面板19に入射する。ここで、平行平面板19は、第1の状態の姿勢から回転している。そのため、平行平面板19に入射した光は、第1のミラーアレイ14には向かわず、第2のミラーアレイ15に入射する。第2のミラーアレイ15で反射された光は、平行平面板19、レンズ13、回折格子12、レンズアレイ11を経て、ファイバ10hに入射する。
【0101】
本変形例では、光路中に平行平面板30が常に挿入されている。この平行平面板30は、平行平面板19と同一素材で形成され、同じ厚みを持つことが望ましい。平行平面板30は、平行平面板19の操作に対して変化を生じない入出力部からの光に作用するように配置される。
本変形例によれば、平行平面板30と平行平面板19を備え、両者を合わせると全体の形状が、平行平面板となる。また、第1の状態および第2の状態の何れの状態においても、平行平面板30と平行平面板19が光路中に配置されている。従って、レンズ13と第1のミラーアレイ14との間の伝播距離と、レンズ13と第2のミラーアレイ15との間の伝播距離とが等しくなるように、第2のミラーアレイ15を配置することができる。
その結果、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15とは、それぞれの反射領域が略同一平面となるように設けることができるため、偏向部材の製造、設置が容易となる。
【0102】
(第3実施形態)
図16は、波長選択スイッチの第3実施形態を示す図である。図16は波長選択スイッチを側面から見たときの構成と光線を示す図で、図16(a)は1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図、図16(b)は2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第2の状態)を示す図である。なお、第1実施形態で説明したように、第1の状態は、1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態、第2の状態は、2つの出力ポートへの光(それぞれが1×Nとして機能する場合は、2つの入力ポートからの光)を処理するときの状態である。
【0103】
第3実施形態の波長選択スイッチ1も、第2実施形態の波長選択スイッチ1と同じように、第1のミラーアレイ14と第2ミラーアレイ15は、各々のミラー面の法線がレンズ13の光軸Lに沿うように配置されている。ここで、光路を切替えるための光学部材(台形プリズム20)は、第2実施形態の波長選択スイッチ1では、レンズ13と第1のミラーアレイ14との間に配置することが可能であった。これに対して、第3実施形態の波長選択スイッチ1では、回折格子12とレンズ13の間に配置することが可能である。
【0104】
第1の状態と第2の状態について説明する。第1の状態では、第2実施形態と同様に、台形プリズム20は、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの光路外に位置している。よって、第1の状態についての説明は省略する。
【0105】
本実施形態の波長選択スイッチ1では、図16(b)に示すように、台形プリズム20は、レンズアレイ11および第1のミラーアレイ14の間の光路中に配置されている。より具体的には、台形プリズム20は、回折格子12からレンズ13までの間に位置している。
ここで、第2の状態において、ファイバ10aからの光については、レンズアレイ11から第1のミラーアレイ14までの間の光路中にはプリズム20は位置していない。このため、図16(b)に示すように、ミラーアレイ14を傾斜させることで、図中破線で示す光線のように、ファイバ10aからの光のミラーアレイ14による反射光を、レンズ13へ向かわせることができる。
【0106】
台形プリズム20は、入射面と出射面が少なくとも第一方向にクサビ状に角度をもった屈折率nを有する媒質で構成されている。台形プリズム20の材料としては、例えばBSL7(株式会社オハラ製)といった市販の光学ガラスや、石英ガラス、樹脂、あるいはシリコン(Si)といった赤外領域に高い透過率をもつ材料を用いることが出来る。以下の説明において、台形プリズム20は、例えば、材料がSBSL7で、楔角度が3°、中心素子厚みが0.5mmとなっている。
【0107】
第2の状態では、図16(b)に示すように、ファイバ10jからの光は、レンズアレイ12を介した後、回折格子12で分散(回折)される。ここで、本実施形態では、回折格子12からレンズ13までの光路中に、台形プリズム20が位置している。そのため、第1のミラーアレイ14に向かって進む光は、台形プリズム20を通過する際に屈折される。台形プリズム20で屈折された光は、レンズ13を介して、第2のミラーアレイ15に向かう。これにより、第2のミラーアレイ15上には、第2の方向に細長く延びたライン状の集光領域が形成される。このライン状の集光領域には、一端側から他端側に向かって、λ1、λ2、λ3、…λnというように、波長ごとに分かれて(分光されて)光が集光している。
【0108】
ライン状の集光領域の光は、第2のミラーアレイ15のミラー面15a〜15eで反射される。ここで、ミラー面15a〜15eの向きを変えると、波長ごとに、光が反射する方向を変えることができる。すなわち、波長多重された光のうち、所望の波長の光だけを選択的に所望の角度に偏向することができる。そして、ミラー面15a〜15eで反射された各波長の光は、破線で示すように、レンズ13に向かう。
【0109】
本実施形態においても、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15との位置関係は、同一平面内に位置している。第2の方向について、両者は重なり合うように位置している。一方、第1の方向について、両者は離れて位置している。両者はこのような位置関係にあるので、第1ミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15は、MEMSプロセスにより同一工程で、同一基板上に作製されている。
【0110】
また、台形プリズム20を、ファイバアレイ10(レンズアレイ11)と回折格子12の間に位置させても良い。より詳細には、回折格子12の直前に配置するのが良い。この構成では、回折格子12による分散の起点と、レンズ13の主点位置の間隔を、第1の状態と第2の状態とでより厳密にレンズ13の焦点距離に一致させることが出来る。
【0111】
ただし、第2の状態において、台形プリズム20の作用を受ける光は、回折格子12への第1の方向の入射角度が変化することから、第1の状態と厳密には分散角度が一致しなくなる。そのため、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15のピッチはそれぞれの分散角度とレンズ13の焦点距離から、それぞれ設計する方が良い。
【0112】
また、上記のように、台形プリズム20は、回折格子12とレンズ13との間の光路中に配置されている。これにより、台形プリズム20による光線の角度変化を、第1の方向に平行な光束群に対して生じさせることができる。そのため、台形プリズム20に対する第1の方向に関する入出射の角度を、各入力部からの光で精度良く揃えることが出来、第2の状態における第2のミラーアレイ上における第1方向の集光位置のバラつきを精度良く抑えることが可能である。
【0113】
以上のように、第3実施形態の波長選択スイッチ1においても、第2のミラーアレイ15を備えているので、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、第3実施形態の波長選択スイッチでは、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15を近接させることができるので、波長選択スイッチ1の小型化可能となる。場合によっては、1つの基板上に、第1のミラーアレイ14と第2のミラーアレイ15を形成することも可能となる。
【0114】
(第3実施形態の変形例)
【0115】
また、台形プリズム20は、第1実施形態の変形例(図6)と同様に複数用いても良い。図17は、台形プリズム20を複数備える構成を示す図である。
【0116】
図17に示すように、本変形例では、第1の台形プリズム201と第2の台形プリズム202を設け、これに伴い、第1のミラーアレイ14に加えて2つのミラーアレイ151と152を設けている。これにり、光路を切替えるための光学部材の数をiとしたとき、1〜1+i個のそれぞれ独立した波長選択スイッチ1として機能することができるので、さらに入出力ポートの利用効率を高くすることができる。
【0117】
(第4実施形態)
図18は、波長選択スイッチ1の第4実施形態を示す図である。図18は1つの出力ポートへの光(1×Nとして機能する場合は1つの入力ポートからの光)を処理するときの状態(第1の状態)を示す図である。
【0118】
第4実施形態の波長選択スイッチは、第1実施形態の波長選択スイッチ(図1)の構成に、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3が加わったものである。その他の構成は第1実施形態(図1)と同じである。よって、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3を中心に説明を行う。
【0119】
本実施形態においては、レンズアレイ11と回折格子12の間に、第1レンズL1、第2レンズL2、第3レンズL3が配置されている。第1レンズL1に入射した光は、第1レンズL1と第2レンズL2によって集光される。
【0120】
第1レンズL1は焦点距離f1、第2レンズL2は焦点距離f2を有しており、第2レンズL2は第2方向にだけパワーを持ったシリンドリカルレンズである。その集光位置での光のビーム形状は、第2レンズL2を配置することによって、図20のような第1方向に大きい楕円状のビーム形状となる。この時の第1方向のビームの幅をS1、第2方向のビームの幅をS2としている。
【0121】
また、その集光位置は複数の入力ポートの光が交わる位置であり、集光位置での入力ポート10aの光が進む方向と第1レンズL1と第2レンズL2の光軸との角度はβ1aで表される。
【0122】
また、入力ポート10aの中心位置と第1レンズL1の光軸は第1方向にYだけ離れており、Yが大きくなればなるほど、その入射角度β1aは大きくなる。その関係は次式で表される。
【0123】
【数1】

【0124】
集光された光は、集光位置を過ぎると、広がったビームとなり、第3レンズL3に入射する。第3レンズL3は、焦点距離fを有しており、光が第3レンズL3に入射する位置は第1方向にY2だけ離れた位置である。Yは式(2)より求められる。
【0125】
【数2】

【0126】
第3レンズL3に入射した光は、第3レンズL3によって、コリメートされ、回折格子12の方向に出射し、回折格子12に第2方向にαだけ傾いて入射する。
【0127】
回折格子12は、第3レンズL3でコリメートされた光を、第1方向とは異なる第2方向に波長に応じて角度分散させる。つまり、回折格子12に入る波長多重された光は、各波長に応じて第2方向に且つ異なった角度α2a〜α2eの角度範囲の間で進行していく事となり、その角度は式(3)で表される。
【0128】
【数3】

mは回折次数、dは回折格子のピッチ、λは波長を示している。
【0129】
その分散する様子は、図19では簡略化して5つの波長のみ図示している。なお、回折格子12は図1のような透過型の分散素子を示しているが、反射型を用いても良い。
【0130】
レンズ13は焦点距離f4有しており、回折格子12により分散された各波長の光は、レンズ13によって、第1のミラーアレイ14のミラー上にそれぞれ集光されている。
【0131】
回折格子12とレンズ13の間隔は、焦点距離fだけ離れている事が望ましい。なぜなら、回折格子12と集光レンズ13の間隔は焦点距離fからずれた位置に配置されると、レンズ13から出射した各波長の光の角度が波長ごとに異なってしまう為である。
【0132】
つまり、回折格子12とレンズ13の間隔がfであると、レンズ13から出射した光は波長ごとに一致した方向に第1のミラーアレイ14の各ミラーに向かって進んでいく。その結果、回折格子12により分散された各波長の光は、第1のミラーアレイ14の各波長に対応したミラー上にそれぞれ集光する。その集光位置は、複数の入力ポートの光が交わる位置であり、集光位置での入力ポート10aの光が進む方向と集光レンズ16の光軸との角度であるβ2aは式(4)より求められる。
【0133】
【数4】

【0134】
また、その集光位置での光のビーム形状は、図21に示すように第1方向に大きい楕円のビーム形状であり、第1方向のビーム幅をS、第2方向のビームをSとし、それらの大きさは次式で表される。
【0135】
【数5】

【0136】
【数6】

【0137】
第1のミラーアレイ14の各ミラーによって反射された光は、広がりを持ったビーム形状でレンズ13に入射する。レンズ13に入射した各波長の光は、コリメート光となってレンズ13から回折格子12に向かって進んでいく。コリメート光は、回折格子12に入射し、その入射する位置は各ミラーの回転角が略等しい場合、各波長の光は回折格子12上で一点に集まる(波長多重される)。
【0138】
回折格子12によって波長多重された光は、コリメート状態を保ったまま第3レンズL3に入射し、第3レンズL3によって集光され、その集光位置での光のビーム形状は第1方向に大きい楕円状のビーム形状となる。
【0139】
第3レンズL3によって集光された光は、第2レンズL2と第1レンズL1によって、円形のビーム形状にコリメートされる。コリメートされた光は、出力ポート10eに対応したレンズアレイ11のレンズに入射し、出力ポート10eに集光される。
【0140】
以上のように、第4実施形態の波長選択スイッチにおいても、第2のミラーアレイ15を備えているので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0141】
以上説明したすべての実施形態において、単に波長選択スイッチを2つ並べた構成と比較すると、上記各実施形態では、2つの偏向部材のうち、何れも第2の光学系を利用している。換言すると、2つの波長選択スイッチの機能を発揮している場合に、第2の光学系が共通として使用されている点が単に波長選択スイッチを2つ並べた構成と大きく異なっている。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上のように、本発明にかかる波長選択スイッチは、機能しないポートが低減でき、入出力ポートの利用効率が高い波長選択スイッチであって、例えば光学系や通信の分野において有用である。
【符号の説明】
【0143】
1 波長選択スイッチ
10 ファイバアレイ(光入出力部)
10a、10b、…10j ファイバ
11 レンズアレイ(第1の光学系)
12 回折格子(分散光学素子)
13 レンズ(第2の光学系)
14 第1のミラーアレイ(第1の偏向部材)
14a、14b、14c、14d、14e ミラー面(反射領域)
15、151 第2のミラーアレイ(第2の偏向部材)
152 第3のミラーアレイ(第3の偏向部材)
15a、15b、15c、15d、15e ミラー面(反射領域)
16、161、17 プリズム(光学部材)
162 プリズム(第2の光学部材)
18、181 光学ブロック(光学部材)
16R、18Ra、18Rb 反射面
181R1、181R2、182R1、182R2 反射面
182 光学ブロック(第2の光学部材)
19 平行平面板(光学部材)
20、201 台形プリズム(光学部材)
202 台形プリズム(第2の光学部材)
30 平行平面板(伝播距離補償光学素子)
L1、L2、L3 レンズ
L、L1 光軸
L’、AX 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された光を入力または出力可能なポートを複数備えた光入出力部と、
光を反射する反射領域を複数有し、前記波長多重された光を波長ごとに偏向可能な第1の偏向部材と、
前記光入出力部および前記第1の偏向部材の間の光路中に配置された分散素子と、
前記光入出力部および前記分散素子の間の光路中に配置された第1の光学系と、
前記分散素子および前記第1の偏向部材の間の光路中に配置された第2の光学系と、
前記第1の光学系および前記第1の偏向部材の間の光路中に配置可能な光学部材と、
光を反射する反射領域を複数有し、前記波長多重された光のうち、前記光学部材からの光を波長ごとに偏向可能な第2の偏向部材と、
を備えることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記光学部材の位置を制御する制御部を備える請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記制御部は、前記光学部材の位置を制御することにより、
前記第2の偏向部材による波長選択スイッチに用いる前記ポートの数を変更可能な請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記制御部は、前記光学部材の位置を制御することにより、
前記波長多重された光の全部が前記第1の偏向部材に集光する第1の状態と、
前記波長多重された光の一部が前記第2の偏向部材に集光する第2の状態と、
に切り替え可能な請求項3に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記制御部は、前記光学部材の位置を制御することにより、
前記波長多重された光の一部が前記第1の偏向部材に集光する第1の状態と、
前記波長多重された光の全部が前記第2の偏向部材に集光する第2の状態と、
に切り替え可能な請求項3に記載の波長選択スイッチ。
【請求項6】
前記第1の偏向部材と、前記第2の偏向部材は、それぞれの反射領域が略同一平面となるように設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の波長選択スイッチ。
【請求項7】
前記第1の光学系および前記第1の偏向部材の間の光路中に配置可能な第2の光学部材と、
光を反射する反射領域を複数有し、前記波長多重された光のうち、前記第2の光学部材からの光を波長ごとに偏向可能な第3の偏向部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の波長選択スイッチ。
【請求項8】
前記第1の偏向部材、前記第2の偏向部材、および前記第3の偏向部材のうち、少なくとも2つの偏向部材は、それぞれの反射領域が略同一平面となるように設けられていることを特徴とする請求項7に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−11719(P2013−11719A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143941(P2011−143941)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】