説明

注型機及び液状物供給方法

【課題】 ウレタンの反応速度を速めるため、供給タンクの原料液状物温度を低めに設定し、定量ポンプを通して混合室へ向かう配管温度を高めに設定しても、供給タンクの材料に影響を与えること無く、注型することが可能な、注型機及び液状物供給方法を提供することである。
【解決手段】 原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を混合室に吐出する経路と、混合室へは吐出されずに循環する経路と、を有する注型機であって、該循環経路は、該供給タンクと該定量ポンプとの間に液循環合流部があることを特徴とする注型機、及び液状物供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状ウレタン樹脂等の原料液状物を定量ポンプにより、混合室に吐出させ、混合室にて混合させて金型に注入し、注入する必要のない時は定量ポンプを止めずに循環させている注型機及び液状物供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真用ブレードは、複写機やプリンター等において転写後の感光体表面に付着した余分なトナーを除去するために(クリーニングブレード)、あるいは現像担持体に均一な膜厚のトナーを形成させるために(現像ブレード)用いられるが、これらブレードはポリウレタン等を原料として製造されている。すなわち、ポリウレタンの場合、イソシアネート成分からなる主剤とポリオール成分からなる硬化剤を注型機の供給タンクへ投入し、予熱、脱泡させた後、定量ポンプにより、混合室へ吐出し、混合攪拌した後に、その混合液を所定の金型内に注入し、所定の時間金型内にて硬化反応させて、脱型、切断させて上記クリーニングブレード等を得る。
【0003】
ところで、上記ポリウレタンは上記金型に連続的に注入されてはいるものの、注型している金型と次に注型する金型とのタイムラグが生ずる場合は、ポリウレタンをロスショットしなければならず材料ロスにつながり、近年のローコスト化、排出物削減の流れに逆行するものとなる。また、この材料ロスをなくすべく定量ポンプを止めると、停止、開始の初期段階においては吐出量が安定せず主剤と硬化剤の比率が変化するという問題が発生する。特にクリーニングブレードの場合、この比率が変化すると、硬度や引っ張り特性等のウレタンゴム物性が変化し、すなわち、電子写真用として使用中にエッジ欠け、すり抜け等のクリーニング不良が発生する。そこで、特許文献1に記載のように、定量ポンプを止めることなく、吐出循環を繰り返し、更に、循環路内におけるタンクから混合室へ向かう往路側と混合室からタンクへ向かう復路側に圧力センサーを設けて吐出時と循環時の圧力を検出し制御する、という吐出方法が開示されている。
【0004】
また、近年のローコスト化のためには、金型へのウレタンの注入から脱型までの時間(硬化時間)を短くしてラインサイクルを短縮させることも必要になる。そのためには、硬化剤中に触媒を添加させて反応を早める方法(例えば、特許文献2)、金型の温度を高くする方法もあるが、硬化反応を早めるためには材料温度を高くすることも重要である。
【0005】
しかしながら、従来のタンクに向かう液状物供給方法だと、原料液状物投入初期に生産したブレードにおいては所定の硬度が得られるが、徐々にブレードの硬度が低下してくる、という問題が発生する。そこで、供給タンクの原料液状物温度を低めに設定し、定量ポンプを通して混合室へ向かう配管温度を高めに設定し、配管内で原料液状物温度を高め混合室内では高温で混合させることが望まれている。
【0006】
しかしながら、従来のタンクに戻る原料液状物循環型の注型機においては、混合室への吐出、タンクへの循環を繰り返すと、結局はタンク内の原料液状物温度も高温になってしまい、温度を別設定しても意味がなくなってしまう。
【特許文献1】特開平6−210150号公報 (第5頁、図1)
【特許文献2】特開2001−318569号公報 (第6頁、表1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の点に鑑みなされたもので、ウレタンの反応速度を速めるため、供給タンクの原料液状物温度を低めに設定し、定量ポンプを通して混合室へ向かう配管温度を高めに設定しても、供給タンクの材料に影響を与えること無く、注型することが可能な、注型機及び液状物供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を混合室に吐出する経路と、混合室へは吐出されずに循環する経路と、を有する注型機であって、該循環経路は、該供給タンクと該定量ポンプとの間に液循環合流部があることを特徴とする注型機が提供される。
【0009】
また、本発明に従って、原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を、混合室に吐出する液状物供給方法であって、以下の3つの工程、
(1)該供給タンクに設置した圧力センサーStの圧力値が、前記吐出循環ユニットに設置した圧力センサーScの該吐出循環ユニットの吐出循環切替バルブを循環に切り替えた際の圧力値より、小さく圧力調整する工程、
(2)該吐出循環ユニットの圧力値(Pc)と該供給タンクの圧力値(Pt)の圧力差(Pc−Pt)が0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値となるように設定する工程、
(3)該混合室への吐出と、該定量ポンプ側への循環への切り替える工程、
を含むことを特徴とする液状物供給方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成を有する本発明の注型機及び液状物供給方法によれば、ウレタンの反応速度を速めるため、供給タンクの原料液状物温度を低めに設定し、定量ポンプを通して混合室へ向かう配管温度を高めに設定しても供給タンクと定量ポンプの間に液循環合流部があるため、供給タンクの材料に影響を与えること無く、注型することが可能な、注型機と液状物供給方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を混合室に吐出する経路と、混合室へは吐出されずに循環する経路と、を有する注型機において、該循環経路は、該供給タンクと該定量ポンプとの間に液循環合流部がある注型機である。そして、該循環経路には、該混合室への吐出と該定量ポンプ側への循環を切り替えるための吐出循環切替バルブと、圧力センサーと、圧力調整手段と、が配置してなり、これを吐出循環ユニットとしたものが複数形成されて、該混合室に吐出可能となるよう配置されたものである。
【0012】
以下に、本発明にかかる注型機への液状物供給方法を図1に基づいて説明する。
【0013】
図1は注型機にウレタンエラストマーを供給する装置の実施形態を示す全体図である。図1に示すように、注型機の吐出口よりウレタンエラストマーを金型に対して注入し、クリーニングブレードが成形される。
【0014】
本発明で使用する原料液状物は、主剤としてイソシアネート化合物(液状物A)と、硬化剤としてのポリオール化合物(液状物B)とをミキサーで混合した熱硬化性のウレタン樹脂液である。A系液状物及びB系液状物ともに、供給タンクからそれぞれ供給タンクの定量ポンプによって混合室へ吐出される。それぞれの原料液状物は、減圧下で脱泡した後、不活性ガスを用いてパージする。この時、不活性ガスとしては、窒素やアルゴン等を用いると良い。
【0015】
供給タンク1と混合室17まで液送管2で、混合室17と液送管2の途中まで液戻管5で接続され、液送管2の途中に定量ポンプ6が介装されている。なお、ここで言う定量ポンプは、脈動が無く1回のパルスで定量の液が排出されるポンプであればよい。
【0016】
供給タンク及び液送管は、常に一定温度に保温されている。一定温度とする手段としては、恒温層から定温水を蛇管等に流し該液送管に接触配置して行うこと、等が行われる。なお、供給タンクは、例えば、ステンレス製の概略円筒状で下部が円錐状になった構造が一般的であり、最下部から液が排出される。形状に関しては、原料液状物の滞留が生じない構造であればよい。
【0017】
次に、上記構成からなる注型機について、液状物供給方法を説明する。
【0018】
図1において、供給タンク1から液状物Aを定量ポンプ6により吐出循環切替バルブ4を介して混合室17へ吐出し、吐出する必要のない時は吐出循環切替バルブ4を切り替え液状物Aを液戻管5で液循環合流部7まで送り、定量ポンプ6により循環を繰り返す。再吐出時は、吐出循環切替バルブ4を切り替えればよい。
【0019】
この際、供給タンクの圧力は不活性ガスで圧力(0.05MPa)を掛けており、液送管、ポンプまでは、この圧力値(Pt)で圧送される。該供給タンクの圧力は、液状物Aを液送管、ポンプまで圧送するのに十分な圧力であればよい。該供給タンク側に設置した圧力センサーStの圧力値(Pt)は、該吐出循環ユニットに設置した圧力センサーScの該吐出循環ユニットの該吐出・循環切替バルブを循環に切り替えた際の圧力値(Pc)より、小さいことが好ましい。そして、該供給タンク側の圧力値(Pt)が好ましくは0MPaより大きく0.1MPa以下、より好ましくは0.05〜0.1MPaであり、該吐出循環ユニットの圧力値(Pc)が好ましくは0.1〜1.5MPa、より好ましくは0.5〜1.0MPaであり、Pc−Ptが0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値であることが好ましい。この時、Pcが1.5MPaより高いと、混合室上部シールより液状物が漏れる恐れがある。定量ポンプ以降は圧力値を一定(0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値)になるように圧力調整手段を用いて調整する。
【0020】
吐出時においては、供給タンク1から液状物Aを液送管2で定量ポンプ6により混合室17へ送液され、混合された後、吐出ノズルより適量吐出される。しかし、該混合室への吐出と、該定量ポンプ側への循環に切り替える吐出循環切替バルブを循環側に切り替えた場合には、供給タンクの圧力値(Pt)が吐出循環ユニットの圧力値(Pc)より小さくなるように圧力調整し、その圧力差(Pc−Pt)が0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値の範囲となるので、液循環合流部において、液戻管で戻っている材料が優先的に循環され、再吐出時には循環を繰り返していた液状物から吐出される。
【0021】
吐出循環切替バルブは、極短時間の液回路の切り替えが行われる構造が選択される。また、塗料の液循環に用いられるものであるので、バルブの切り替え構造部での磨耗が無いか、極少ないことが要求される。従って、バルブの摺動機構部分の材質は、低摩耗性、或いは、高潤滑性の表面を有するものが好ましい。例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、有機シラン等でコーティングされたものが挙げられる。
【0022】
圧力調整手段は、吐出・循環切替バルブと液循環合流部の間に設けられ、循環時と吐出時の圧力が異なる場合に、前記吐出循環ユニットに設置した圧力センサーにおいて、吐出時の圧力値(Pd)と循環時の圧力(Pc)の差が好ましくは0.1MPa以下、より好ましくは0.05MPa以下になるよう調整を行う。本発明の事例としては、螺子調整のタイプを採用した。
【0023】
ところで、上記実施形態では、液状物Aの搬送方法のみ示したが、両方或いは片方のみに適用してもよい。
【0024】
また、供給タンクの材料温度を低めに設定し、定量ポンプを通して混合室へ向かう間の配管温度を高めに設定し、混合室内では高温で反応させると、反応速度を増加させ、生産効率を上げることができる。このとき、本発明の循環方法を用いると原料劣化が少なくなる。
【実施例】
【0025】
実施例としては図1に示したような、該定量ポンプの前後を結ぶ経路が、循環路となるものであり、該循環路には、圧力センサーと、該混合室への吐出と、該定量ポンプ側への循環に切り替える吐出循環切替バルブと、圧力調整手段と、から構成されたものを用い、比較例としては図2に示したような循環の戻りが直接供給タンクに行くものを用いた。
【0026】
(実施例1)
供給タンク内温度を60℃とし、混合室内原料温度を90℃、タンク圧力(Pt)0.05MPa、循環圧力(Pc)0.8MPa、吐出圧力(Pd)0.7MPaにして図1の注型装置を用いてウレタンを注型し、クリーニングブレードを作製した。
【0027】
(比較例1)
タンク内温度を90℃とし、混合室内原料温度を90℃、タンク圧力(Pt)0.05MPa、循環圧力(Pc)0.9MPa、吐出圧力(Pd)0.9MPaにして図2の注型装置を用いてウレタンを注型し、クリーニングブレードを作製した。
【0028】
(比較例2)
タンク内温度を60℃とし、混合室内原料温度を60℃、タンク圧力(Pt)0.05MPa、循環圧力(Pc)1.0MPa、吐出圧力(Pd)1.1MPaにして図2の注型装置を用いてウレタンを注型し、クリーニングブレードを作製した。
【0029】
このようにして作製したクリーニングブレードについて、その製造過程の硬化脱型時間、エージング後の硬度を評価した。その結果を表1に示す。なお、上記特性の評価は以下のようにして行った。
【0030】
<硬化脱型時間>
原料混合物を130℃の成型型に注入、硬化反応させ、次いで硬化物を脱型するまでの時間を測定した。脱型するまでの時間の目安としては、脱型時の硬度で40°以上とした。
【0031】
<ブレード硬度>
液状物を供給タンクに投入し、注型を開始した直後、3時間後、12時間後にブレードをサンプリングし、1日間室温でエージングした後、ウレタンゴム硬度を測定した。なお、上記硬度(IRHD)の測定はウォーレス(H.W.WALLACE)社製ウォーレス微小硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて行った。
【0032】
実施例と比較例の構成装置における原料液状物に対する影響を、ブレード硬度で評価した。原料投入初期に生産したブレードにおいては所定の硬度が得られるが、徐々にブレードの硬度が低下してくる。その硬度変化を、液循環方法の異なる2つの注型装置に対して検討した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果より、実施例1では、混合室内原料温度をタンク内温度より上げると、反応速度が速くなり、脱型時間が1分と短くなる。更に、注型開始後3時間、12時間後の硬度変化がなかった。
【0035】
一方、比較例1では、タンク内及び混合室内の温度を90℃に設定しており、反応速度は1分と速かったものの、硬度変化が大きかった。ここで、ブレード硬度が65°より低下すると、クリーニング不良となることが分かっている。また、比較例2では、タンク内及び混合室内の温度を60℃に設定しており、ブレードの硬度変化はなかったものの、反応速度が10分と遅かった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明にかかる注型機への液状物供給方法を説明する概略図である。
【図2】従来の注型機への液状物供給方法を説明する概略図である。
【0037】
1 供給タンクA
2 液送管
3 吐出液
4 吐出循環切替バルブ
5 液戻管
6 定量ポンプ
7 液循環合流部
8 圧力センサーSc
9 圧力調整ネジ
10 圧力センサーSt
11 供給タンクB
12 液送管
13 吐出循環切替バルブ
14 液戻管
15 定量ポンプ
16 ヘッドカバー
17 混合室
18 吐出口
19 液循環合流部
20 圧力センサーSc
21 圧力調整ネジ
22 圧力センサーSt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を混合室に吐出する経路と、混合室へは吐出されずに循環する経路と、を有する注型機であって、該循環経路は、該供給タンクと該定量ポンプとの間に液循環合流部があることを特徴とする注型機。
【請求項2】
前記循環経路には、前記混合室への吐出と循環を切り替えるための吐出循環切替バルブと、圧力センサーと、圧力調整手段と、が配置してなり、これを吐出循環ユニットとしたものが複数形成されて、前記混合室に吐出可能となるよう配置されている請求項1に記載の注型機。
【請求項3】
前記供給タンクに設置した圧力センサーStの圧力値(Pt)が、前記吐出循環ユニットに設置した圧力センサーScの該吐出循環ユニットの前記吐出循環切替バルブを循環に切り替えた際の圧力値(Pc)より、小さい請求項1又は2に記載の注型機。
【請求項4】
前記供給タンクの圧力値(Pt)が0MPaより大きく0.1MPa以下、前記吐出循環ユニットの圧力値(Pc)が0.1〜1.5MPaであり、Pc−Ptが0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値である請求項1〜3のいずれかに記載の注型機。
【請求項5】
前記吐出循環ユニットに設置した圧力センサーにおいて、吐出時の圧力値(Pd)と循環時の圧力(Pc)の差が0.1MPa以下になるよう前記圧力調整手段により圧力調整した請求項4に記載の注型機。
【請求項6】
原料液状物の供給タンクから配管を経由して定量ポンプにより一定量の該原料液状物を、混合室に吐出する液状物供給方法であって、以下の3つの工程、
(1)該供給タンクに設置した圧力センサーStの圧力値(Pt)が、前記吐出循環ユニットに設置した圧力センサーScの該吐出循環ユニットの吐出循環切替バルブを循環に切り替えた際の圧力値(Pc)より、小さく圧力調整する工程、
(2)該吐出循環ユニットの圧力値(Pc)と該供給タンクの圧力値(Pt)の圧力差(Pc−Pt)が0.01MPaより大きく1.5MPaより小さい値となるように設定する工程、
(3)該混合室への吐出と、該定量ポンプ側への循環への切り替える工程、
を含むことを特徴とする液状物供給方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−123202(P2006−123202A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311034(P2004−311034)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】