説明

洗浄ノズル

【課題】簡単な構造で洗浄効果の高い洗浄ノズルを提供する。
【解決手段】洗浄ノズル8は、被洗浄物に微細気泡を含む加圧水流を洗浄水として噴射するノズル本体81と、ノズル本体81の軸線から偏心した位置に配置され、微細気泡を含む加圧水流を導入して、ノズル本体81の内周壁813の円周方向に沿って流す導水管821として機能する空間S3が形成された混合ホルダ部82と、ノズル本体81の噴射口812の縁部に吸引口831が配置され、回収した洗浄水を再利用するための液部吸引管842として機能する流路が形成されたヘッド部83と、ノズル本体81と同軸線上に配置されていると共に、噴射口812の中心部に吸引口841aが配置され、回収した洗浄水を廃棄するための気泡部吸引管841とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物を洗浄するための微細気泡を含む洗浄水を噴射する洗浄ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細気泡は、気泡径の大きさによってマイクロバブルと称されたり、ナノバブルと称されたりしている。また、微細気泡は、マイクロナノバブルと総称されることがある。このような微細気泡を含む液体は、圧壊するときの作用により洗浄の有効な手段として用いられている。微細気泡を含む洗浄水を噴射する従来の洗浄ノズルとして、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1のウォータジェットノズルは、ノズルの内壁とキャビテータの外周面との間に旋回羽根を配置し、キャビテータの先端をノズルの出口絞り部に臨んで位置させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−126999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のウォータジェットノズルにおいて、洗浄効果を高めるためには、勢いよくキャビティを被洗浄物に噴射する必要があるが、ノズルの軸心に配置されたキャビテータからのキャビティは、キャビテータから押し流されつつ、旋回流の勢いに押し流されて被洗浄物に噴射されるので、旋回羽根を高速に回転させ、高速な旋回流を発生させる必要がある。そのため、旋回羽根としては高速回転するものが必要となり、このような高速回転する旋回羽根をノズルに設けると、ノズルの規模が大きくなり、製造コストも増大する。
【0006】
そこで本発明は、簡単な構造で洗浄効果の高い洗浄ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄ノズルは、被洗浄物に微細気泡を含む加圧水流を洗浄水として噴射するノズル本体と、前記ノズル本体の軸線から偏心した位置に配置され、微細気泡を含む加圧水流を導入して、前記ノズル本体の内周壁の円周方向に沿って水流を流す導水管とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の洗浄ノズルによれば、導水管がノズル本体の軸線から偏心した位置に配置されているので、導水管から導入された微細気泡は、加圧水流と共にノズル本体の内周壁の円周方向に沿って流れるので、微細気泡を含む加圧水流がノズル本体内で旋回流となる。旋回流となった微細気泡を含む加圧水流は、遠心力により液部がノズル本体の内周壁面側へ、微細気泡がその内周側へと分かれる。これにより微細気泡はノズル本体の内周壁との摩擦が減少するため高速回転しながらノズル本体から被洗浄物へ噴射される。被洗浄物へ微細気泡を含む洗浄水が噴射され、被洗浄物の表面にて微細気泡が圧壊することで、剥離洗浄を行うことができる。
【0009】
前記ノズル本体には、同軸線上に配置され、前記導水管からの微細気泡を含む加圧水流を前記ノズル本体の内周壁の円周方向に沿って案内する丸棒部材が設けられていると、丸棒部材の外周壁とノズル本体の内周壁との間に導水管からの加圧水流が案内され、加圧水流の流路となるため、加圧水流の流れが乱れることなく旋回流とすることができる。
【0010】
前記ノズル本体の噴射口には、洗浄水を回収するための吸引管が設けられているのが望ましい。
被洗浄物を洗浄する際には、洗浄に伴って大量の洗浄水が消費され、周囲に流れ出ることが心配されるが、ノズル本体の噴射口には、洗浄水を回収するための吸引管が設けられているので、洗浄水を回収することができ、周囲の汚染を抑制することができると共に、回収した洗浄水を再利用したり、廃棄したりすることができる。
【0011】
前記吸引管は、前記ノズル本体の噴射口の縁部に吸引口が配置され、回収した洗浄水を再利用するための液部吸引管と、前記ノズル本体の噴射口の中心部に吸引口が配置され、回収した洗浄水を廃棄するための気泡部吸引管とを備えたものであるのが望ましい。
微細気泡を含む加圧水流は、遠心力により液部がノズル本体の内周壁面側へ、微細気泡がその内周側へと分かれるので、微細気泡の含有割合の少ない洗浄水は吸引口がノズル本体の噴射口の縁部に配置された液部吸引管により回収することができる。この微細気泡の含有割合が少ない洗浄水は、洗浄により被洗浄物から剥離した汚物が含まれる量が少なく、洗浄水は再度利用が可能である。また、微細気泡の含有割合の多い洗浄水は、吸引口がノズル本体の噴射口の中心部に配置された気泡部吸引管により回収することができる。この微細気泡の含有割合の多い洗浄水は、被洗浄物から剥離した汚物を多く含むので廃棄するのが望ましい。
【0012】
前記気泡部吸引管は、少なくとも前記ノズル本体の噴射口から前記導水管まで、前記ノズル本体の同軸線上に配置されていれば、気泡部吸引管の外周壁とノズル本体の内周壁との間に導水管からの加圧水流が案内され、加圧水流の流路となるため、加圧水流の流れが乱れることなく旋回流とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導水管から導入された微細気泡が、加圧水流と共にノズル本体の内周壁の円周方向に沿って水流が流れ、ノズル本体内で旋回流となって、被洗浄物へ噴射され、剥離洗浄を行うことができるので、簡単な構造で洗浄効果の高い洗浄ノズルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗浄ノズルを備えた洗浄装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示す洗浄装置の洗浄ノズルの断面図である。
【図3】図2に示す洗浄ノズルのA−A線断面図である。
【図4】図2に示す洗浄ノズルのB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る洗浄装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す洗浄装置1は、マイクロバブルやナノバブルなどの微細気泡を含む洗浄水により被洗浄物を洗浄するものである。洗浄装置1は、まず、給水タンク2に市水が供給される。洗浄水として使用される市水は、被洗浄物の種類に応じて中水としたり純水としたりすることができる。例えば、洗浄水に含まる不純物が被洗浄物に影響を与えないようであれば、市水や中水を用いることができ、半導体製造に用いられるウエハを洗浄するような場合であれば、純水が好適である。
【0016】
給水タンク2からの市水は、気液混合装置であるターボミキサー3により空気が取り込まれることで、気泡が混合された混合水となって第1気泡発生部4へ送水される。
【0017】
第1気泡発生部4に送水された混合水は、バルブ41により流量コントロールされた空気と第1流体混合器42により混合され、第1気泡発生器43へ送水される。そして、第1気泡発生器43では、ターボミキサー3により混合された気泡と、第1流体混合器42により混合された気泡とが小径化され、小径気泡を含む洗浄水として気泡貯留タンク5へ送水される。
【0018】
気泡貯留タンク5では、洗浄に洗浄水を大量に噴射しても洗浄水が欠乏しないように、一旦、小径気泡を含む洗浄水が貯留されている。
気泡貯留タンク5に貯留された洗浄水は、送水装置であるダイヤフラム式のエアポンプ6により第2気泡発生部7へ送水される。
【0019】
第2気泡発生部7に送水された小径気泡を含む洗浄水は、バルブ71により流量コントロールされた空気と第2流体混合器72により混合され、第2気泡発生器73へ送水される。そして、第2気泡発生器73では、気泡貯留タンク5からの気泡と、第2流体混合器72により混合された気泡とが更に微細気泡へと微細化され、微細気泡を含む洗浄水として、洗浄ノズル8へ送水される。
【0020】
洗浄ノズル8は、図2に示すように、ノズル本体81と、混合ホルダ部82と、ヘッド部83と、吸引管84とを備えている。
ノズル本体81は、円筒状の細管により形成され、被洗浄物に微細気泡を含む加圧水流を洗浄水として噴射するものである。ノズル本体81の内周壁の基端部(上部)には、奥行き方向へ進むに従って内径が徐々に狭くなる縮径部811が形成されている。
【0021】
混合ホルダ部82の内部には、ノズル本体81の基端部が挿入されてノズル本体81を保持するための空間S1と、ノズル本体81の縮径部811の開口部に繋がる円柱状の空間S2と、ノズル本体81の軸線から偏心した位置に配置されていることで導水管821として機能する空間S3と、空間S2の上端から混合ホルダ部82の上端まで軸線に沿って設けられ、吸引管84の気泡部吸引管841を挿通させる貫通孔S4とが形成されている。
【0022】
ヘッド部83は、ノズル本体81の先端部に設けられている。ヘッド部83には、ノズル本体81の噴射口812の縁部に吸引口831を向けて、洗浄水を吸引するための流路が、斜め上方に向かって形成され、吸引管84の液部吸引管842として設けられている。
【0023】
吸引管84は、気泡部吸引管841と液部吸引管842とから形成されている。気泡部吸引管841は、ノズル本体81の噴射口812から導水管821を超え、貫通孔S4を挿通して、混合ホルダ部82から突出する位置までの長さに形成されている。気泡部吸引管841の基端部には、吸引した洗浄水を送水するためのホースを接続する接続部材843が設けられている。また、液部吸引管842として機能する流路にも、吸引した洗浄水を送水するためのホースを接続する接続部材844が設けられている。本実施の形態では、気泡部吸引管841が、ノズル本体81の噴射口812から混合ホルダ部82から突出する位置までの長さに形成されているが、噴射口812から導水管821までの長さがあれば、混合ホルダ部82の側面から突出させてもよい。
【0024】
このように構成された洗浄ノズル8に、微細気泡を含む洗浄水が第2気泡発生器73(図1参照)から加圧水流として送水されると、導水管821として機能する混合ホルダ部82の空間S3へ流れ込む。導水管821が、図3に示すように、ノズル本体81の軸線Oから偏心した位置に配置されているので、導水管821から導入された微細気泡は、加圧水流と共にノズル本体81の内周壁813の円周方向に沿って流れる。従って、微細気泡を含む加圧水流が混合ホルダ部82の空間S2とノズル本体81内とで旋回流となる。ノズル本体81の基端部には、縮径部811が設けられているため、旋回流を更に高速なものとすることができる。
【0025】
この旋回流となった微細気泡を含む加圧水流は、遠心力により液部がノズル本体81の内周壁813側へ、微細気泡がその内周側へと分かれる。これにより微細気泡は、ノズル本体81の内周壁813との摩擦が減少することで、スーパーキャビテーション状態となるため、更に高速回転しながらノズル本体81の先端方向へ流れる。
【0026】
このとき、図2に示す気泡部吸引管841が、ノズル本体81の噴射口812から導水管821を超える位置まで、ノズル本体81の同軸線上に配置されているので、丸棒部材である気泡部吸引管841の外周壁とノズル本体81の内周壁813との間に導水管821からの微細気泡を含む加圧水流が案内され、加圧水流の流路となる。従って、加圧水流の流れが乱れることなくノズル本体81で旋回流とすることができる。
【0027】
微細気泡を含む加圧水流がノズル本体81の噴射口812から被洗浄物へ噴射されると、被洗浄物の表面にて微細気泡が圧壊することで、剥離洗浄を行うことができる。
このように、洗浄ノズル8は、特別な装置を設けることなく旋回流を発生させることができ、微細気泡が高速に回転することで、微細気泡の圧壊の際の強い衝撃力を発生させることができるので、被洗浄物の表面に付着した取れ難い汚物を剥離させることができる。従って、洗浄ノズル8は、簡単な構造で高い洗浄効果を得ることができる。
【0028】
被洗浄物の洗浄に伴って大量の洗浄水が消費されるが、図4に示すように、ノズル本体81の噴射口812には、洗浄水を回収するための吸引管84が設けられているので、洗浄水を回収することができる。
【0029】
図3に示すように、微細気泡を含む加圧水流は、遠心力により液部(水)がノズル本体81の内周壁813側へ偏り、水に対して軽い微細気泡がその内周側(旋回流の中心方向)へと分かれる。
従って、洗浄後の微細気泡の含有割合の少ない洗浄水は、ヘッド部83の吸引口831がノズル本体81の噴射口812の縁部に配置された液部吸引管842により回収することができる。この微細気泡の含有割合が少ない洗浄水は、洗浄により被洗浄物から剥離した汚物が含まれる量が少なく、洗浄水は再度利用が可能である。特に、半導体を洗浄する純水であれば高価であるため再利用することで、製造コストを抑制することができる。
【0030】
ヘッド部83の液部吸引管842を通じて回収される洗浄水は、図1に示すように、吸引装置として機能するポンプ9により吸引される。そして、吸引された洗浄水は、フィルタ10を介して給水タンク2へ戻り、再利用される。
【0031】
次に、洗浄後の微細気泡の含有割合の多い洗浄水であるが、図4に示すように、吸引口841aがノズル本体81の噴射口812の中心部に配置された気泡部吸引管841により回収することができる。この微細気泡の含有割合の多い洗浄水は、被洗浄物から剥離した汚物を多く含むので、図1に示すように、吸引装置として機能するポンプ11により吸引され、廃棄するために廃液タンク12に貯留される。
【0032】
このように洗浄後の洗浄水を回収することができるので、周囲の汚染を抑制することができると共に、回収した洗浄水を再利用したり、廃棄したりすることができる。
【0033】
なお、本実施の形態では、混合ホルダ部82により導水管821が形成され、混合ホルダ部82にノズル本体81が挿入されて保持されているが、導水管となる配管をノズル本体81の軸線から偏心した位置に直接接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の洗浄ノズルは、被洗浄物として、金属製品や成形品、半導体などの様々なものの洗浄に使用される洗浄装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 洗浄装置
2 給水タンク
3 ターボミキサー
4 第1気泡発生部
41 バルブ
42 第1流体混合器
43 第1気泡発生器
5 気泡貯留タンク
6 エアポンプ
7 第2気泡発生部
71 バルブ
72 第2流体混合器
73 第2気泡発生器
8 洗浄ノズル
81 ノズル本体
811 縮径部
812 噴射口
813 内周壁
82 混合ホルダ部
821 導水管
83 ヘッド部
831 吸引口
84 吸引管
841 気泡部吸引管
841a 吸引口
842 液部吸引管
843,844 接続部材
9 ポンプ
10 フィルタ
11 ポンプ
12 廃液タンク
S1〜S3 空間
S4 貫通孔
O 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物に微細気泡を含む加圧水流を洗浄水として噴射するノズル本体と、
前記ノズル本体の軸線から偏心した位置に配置され、微細気泡を含む加圧水流を導入して、前記ノズル本体の内周壁の円周方向に沿って流す導水管とを備えたことを特徴とする洗浄ノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体には、同軸線上に配置され、前記導水管からの微細気泡を含む加圧水流を前記ノズル本体の内周壁の円周方向に沿って案内する丸棒部材が設けられている請求項1記載の洗浄ノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体の噴射口には、洗浄水を回収するための吸引管が設けられている請求項1記載の洗浄ノズル。
【請求項4】
前記吸引管は、
前記ノズル本体の噴射口の縁部に吸引口が配置され、回収した洗浄水を再利用するための液部吸引管と、
前記ノズル本体の噴射口の中心部に吸引口が配置され、回収した洗浄水を廃棄するための気泡部吸引管とを備えたものである請求項3記載の洗浄ノズル。
【請求項5】
前記気泡部吸引管は、少なくとも前記ノズル本体の噴射口から前記導水管まで、前記ノズル本体の同軸線上に配置されている請求項4記載の洗浄ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103197(P2013−103197A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249913(P2011−249913)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(504109746)株式会社熊本アイディーエム (3)
【Fターム(参考)】