説明

洗浄剤組成物

【課題】 泡立ちや髪の感触が良いと共に、保存安定性が良好で、複合体等の地肌への吸着を抑制する洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩5〜40質量%と、
(B)特定のシリコーン化合物0.01〜3質量%と、
(C)式
【化1】


(式中、R1、R2及びR3は炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
で表される芳香族カルボン酸又はその塩0.01〜0.5質量%と、
(D)カチオン化セルロース及びカチオン化グァーガムから選ばれるカチオンポリマーと、(E)塩化ジメチルジアリルアンモニウムと(メタ)アクリルアミドとの共重合体とを含有し、上記(D)及び(E)成分の合計含有量が0.1〜1質量%、(D)/(E)=1/9〜9/1、pHが3.0〜5.5である洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡立ちや洗浄・乾燥後の髪の感触が良いと共に、保存安定性が良好で、配合成分の地肌への過剰な吸着を抑制する洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪洗浄剤組成物の最も一般的な洗浄成分は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩である。この洗浄成分は、泡立ちが良くて皮膚刺激の少ない低コストの洗浄成分である。この界面活性剤とカチオンポリマーとを組成中に併用し、泡立てた毛髪洗浄剤組成物をすすいでいる時に両者の複合体が形成され髪に吸着することで、指通りが良い感触になり髪同士のからまりを防いでいる。また、この複合体は、洗浄剤組成物中に配合されているシリコーン化合物を複合体と一緒に髪に吸着させ、ドライヤーで乾燥させた後の髪のなめらかさを向上させる。
【0003】
しかしながら、この複合体は髪だけでなく地肌にも吸着する。一般的によく用いられるカチオンポリマーであるカチオン化セルロースやカチオン化グァーガムを併用すると、複合体が皮膜を形成しやすくなり、過剰に吸着すると地肌のべたつきやつっぱり感を感じることがある。また、皮膚の弱い人にとっては軽いかゆみ感を感じやすくなることもある。
【0004】
また、これらのカチオンポリマーはシリコーン化合物の分散安定化効果に乏しいため、洗浄剤組成物を保管条件の悪いところ、例えば、夏場に倉庫の屋根直下等の温度が高いところで保管した場合、シリコーン化合物の粒子径が大きくなり、地肌に過剰にシリコーン化合物が付着する場合がある。さらに、複合体は洗浄剤組成物中に共存する防腐剤も地肌に吸着させるため、人によってはかゆみ等を感じる場合もある。
以上のことから、泡立ちや洗浄・乾燥後の髪の感触が良いと共に、保存安定性が良好で、複合体や防腐剤の地肌への過剰な吸着を抑制して、地肌がべたつかず、地肌のかゆみを抑制する洗浄剤組成物が望まれていた。なお、本発明に関連する先行技術文献としては下記が挙げられる。
【0005】
【特許文献1】特開平1−128914号公報
【特許文献2】特開平11−79956号公報
【特許文献3】特開2000−290148号公報
【特許文献4】特開2002−187819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、泡立ちや洗浄・乾燥後の髪の感触が良いと共に、保存安定性が良好で、複合体や防腐剤の地肌への過剰な吸着を抑制して、地肌がべたつかず、地肌のかゆみを抑制する洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、洗浄成分としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩を用い、すすぎ性能付与剤としてカチオンポリマーを、髪感触改善剤としてシリコーン化合物を配合した洗浄剤ベースを用い、地肌に対する吸着を防ぐ技術を鋭意検討した。その結果、カチオンポリマーとして、(D)カチオン化セルロースやカチオン化グァーガムと(E)塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体とを併用し、これらの合計含有量を0.1〜1質量%にし、かつ上記質量比(D)/(E)=1/9〜9/1にし、一般式(1)で表される芳香族カルボン酸又はその塩0.01〜0.5質量%を配合し、かつ洗浄剤組成物のpHを3.0〜5.5にすることにより、複合体や防腐剤が地肌に過剰に吸着することを抑制すること、保存安定性が向上することを知見した。より具体的には、(1)皮膜形成しにくく柔らかいべたつきにくい物性の複合体を析出させることができるため、複合体や防腐剤が地肌に過剰に吸着することを抑制することができる。(2)シリコーン化合物の安定分散力が向上し、シリコーン化合物の粒子径が大きくなって地肌に過剰に吸着することを抑制することができる。(3)これらの洗浄剤組成物に対して少量で効果の高い、一般式(1)で表される芳香族カルボン酸又はその塩を使用することで、防腐剤量もできるだけ少なく設定できる。
【0008】
従って、本発明は下記発明を提供する。
[1].(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩5〜40質量%と、
(B)ジメチルポリシロキサン及びシラノール基末端ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上のシリコーン化合物0.01〜3質量%と、
(C)下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
で表される芳香族カルボン酸及び/又はその塩0.01〜0.5質量%と、
(D)カチオン化セルロース及びカチオン化グァーガムから選ばれる1種又は2種以上のカチオンポリマーと、
(E)塩化ジメチルジアリルアンモニウムと(メタ)アクリルアミドとの共重合体とを含有し、上記(D)及び(E)成分の合計含有量が0.1〜1質量%、かつ質量比(D)/(E)=1/9〜9/1であって、pHが3.0〜5.5である洗浄剤組成物。
[2].(D)成分のカチオン度が0.1〜3.0meq/g、分子量10万〜300万であり、(E)成分のカチオン度が0.5〜3.0meq/g、分子量10万〜300万であり、かつ(C)成分が安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、及びサリチル酸塩から選ばれる化合物である[1]記載の洗浄剤組成物。
[3].さらに、(F)炭素数8〜22の一価炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤1〜10質量%を含有する[1]又は[2]に記載の洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、泡立ちや洗浄・乾燥後の髪の感触が良い洗浄剤組成物、保存安定性が良好な洗浄剤組成物、複合体や防腐剤の地肌への過剰な吸着を抑制して、地肌がべたつかず、地肌のかゆみを抑制する洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の(A)成分はポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
4O−(BO)n−SO3M (2)
(式中、R4は炭素数6〜24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、BOは炭素数2〜3のアルキレンオキサイド基、nはアルキレンオキサイド基の平均付加モル数を示し、1〜6であり、n個のBOは同一でも異なっていてもよい。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカノールアミン又はアンモニウムを示す。)
【0011】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、炭素数12〜16が主体である天然アルコールや炭素数11〜15の合成アルコールに、エチレンオキサイドを平均で0.5〜5モル付加したアルコールエトキシレートを硫酸化したものが好ましい。中でも、天然アルコールを用い、エチレンオキサイドを平均1〜3モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。塩としてはナトリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好ましい。なお、原料は取り扱いがしやすいため、水溶液で供給されることが多いが、濃度60〜70質量%の粘度の高いタイプ、濃度25〜30質量%の粘度の低いタイプのいずれも好適に用いることができる。
【0012】
(A)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して5〜40質量%であり、好ましくは10〜20質量%である。5質量%未満では洗浄力、起泡力が不十分であり、40質量%を越えると組成物の粘度が著しく増加して容器から取り出し難くなったり、溶液安定性が悪化したりする可能性がある。
【0013】
本発明の(B)成分は、(B)ジメチルポリシロキサン及びシラノール基末端ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上のシリコーン化合物である。本発明においては、ジメチルシリコーンの繰り返し構造を持つジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、ジメチルポリシロキサンの末端メチル基が水酸基になったシラノール基末端ジメチルポリシロキサン(ジメチコノール)が使用される。
【0014】
ジメチルポリシロキサンとしては、25℃における動粘度が10万mm2/s(約10万cSt)以上の高分子量シリコーン化合物が好適であるが、25℃における動粘度が10万mm2/s(約10万cSt)〜500万mm2/s(約500万cSt)未満のジメチルポリシロキサンと、500万mm2/s(約500万cSt)〜2,000万mm2/s(約2000万cSt)ジメチルポリシロキサンとを混合して、重合度に広い分布を持たせたものがより好ましい。また、25℃における動粘度が1万mm2/s(約1万cSt)以下の液状シリコーン化合物と混合して扱いやすくすることもできる。また、オイルだけでなく、前記シリコーン化合物を界面活性剤により乳化し、エマルション化したものも使用することができる。なお、このようなエマルションは、乳化剤や乳化方法に特に制限はなく、種々使用することができる。
【0015】
シラノール基末端ジメチルポリシロキサンとしては、25℃における動粘度が1万mm2/s以上の高分子量シリコーン化合物が好適であるが、25℃における動粘度が1万mm2/s〜10万mm2/s未満のシラノール基末端ジメチルポリシロキサンと、10万mm2/s〜200万mm2/sを混合して重合度に広い分布を持たせたものがより好ましい。また、25℃における動粘度が1万mm2/s以下の液状シリコーン化合物と混合して扱いやすくすることもできる。また、オイルだけでなく、前記シリコーン化合物を界面活性剤により乳化し、エマルション化したものも使用することができる。なお、このようなエマルションは、乳化剤や乳化方法に特に制限はなく、種々使用することができる。なお、シリコーン化合物の25℃における動粘度の測定は、化粧品原料基準一般試験法粘度測定法第1法に準拠して測定した方法による。
【0016】
(B)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.01〜3質量%であり、好ましくは0.3〜2質量%である。0.01質量%未満ではすすぎ時や乾燥後の髪の感触を向上させる効果が不十分であり、3質量%を超えると乾燥後の髪にべたつきを生じ、髪の感触が悪化する可能性がある。
【0017】
本発明の(C)成分は、下記一般式(1)で表される芳香族カルボン酸又はその塩であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【化2】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
【0018】
一般式(1)で表される芳香族カルボン酸又はその塩としては、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、サリチル酸塩が好ましく、塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が好ましい。この中でも、サリチル酸、安息香酸塩が好ましく、さらに好ましくは安息香酸ナトリウムである。安息香酸塩は安息香酸塩として添加しても、安息香酸を添加し組成中でアルカリ剤を別に添加し、安息香酸塩として用いてもよい。一方、A1のカルボキシル基がエステルとなった殺菌剤(たとえばパラオキシ安息香酸エステル)等は、本発明の(C)成分に比べ、本発明の洗浄剤ベースにおいて防腐効果が弱く、かつ皮膚への刺激を示す場合がある点で好ましくない。
【0019】
(C)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.01〜0.5質量%であり、好ましくは0.1〜0.5質量%である。0.01質量%未満では十分な効果が得られない。本発明の洗浄剤組成物においては、(C)成分は0.5質量%以内で十分な効果が得られるため、0.5質量%を超えて配合をする必要はなく、敏感肌の人が使用する点からは、その含有量は0.5質量%を超えないことが好ましい。
【0020】
本発明の(D)成分は、カチオン化セルロース及びカチオン化グァーガムから選ばれる1種又は2種以上のカチオンポリマーである。
カチオン化セルロースは、セルロースにカチオン性官能基を付加したものである。本発明においては、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースであるポリクオタニウム−10が好ましい。
【0021】
カチオン化セルロースのカチオン度は、0.1meq/g〜3.0meq/gの範囲が好ましく、0.5meq/g〜1.7meq/gがより好ましい。カチオン度が0.1meq/g未満だと、泡をすすいだ時の指通りが悪くなる場合があり、乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、カチオン度が3.0meq/gを超えると、洗浄剤組成物の保存安定性に劣る場合がある。
【0022】
カチオン化セルロースの分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、30万〜200万がより好ましい。10万未満だと低いと泡をすすいだ時の指通りが悪くなる場合があり、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、300万を超えると洗浄剤組成物の保存安定性に劣ると共に、洗浄剤組成物中への溶解が困難になる場合がある。
【0023】
具体的な例としては、レオガードLP、GP、MGP、XE−511K(商品名、ライオン(株)製)、UCARE LR−30M、JR−400、JR−30M(商品名、ダウケミカル日本(株)製)、カチナールHC−100(商品名、東邦化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0024】
カチオン化グァーガムはグァーガムにカチオン性官能基を付加したものである。カチオン基の付加の程度によって、カチオン化グァーガムのカチオン度が異なり、0.1meq/g〜3.0meq/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.5meq/g〜3.0meq/gであり、さらに好ましくは1.0meq/g〜2.4meq/gである。カチオン度が0.1meq/g未満だと、泡をすすいだ時の指通りが悪く、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、カチオン度が3.0meq/gを超えると、洗浄剤組成物の保存安定性に劣る場合がある。
【0025】
分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、30万〜200万がより好ましい。分子量が10万未満だと、泡をすすいだ時の指通りが悪く、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合があり、一方、300万を超えると洗浄剤組成物の保存安定性に劣ると共に、洗浄剤組成物中への溶解が困難になる場合がある。
【0026】
具体的な例としては、ラボールガムCG−M、CG−M7、CG−M8M(商品名、大日本製薬(株)製)、N−Hance3000(商品名、ハーキュレス・ジャパン製)、JAGUAR C−13S、C−14S、C−17、EXCEL(商品名、ローディア製)が挙げられる。カチオン化セルロース及び又はカチオン化グァーガムは、水分を蒸発させて粉末や顆粒状にした原料も使用できるし、水等の溶媒で液体化した原料も使用することができる。
【0027】
本発明の(E)成分は、塩化ジメチルジアリルアンモニウムと(メタ)アクリルアミドとの共重合体であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。なお、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを示す。カチオン性官能基を持つ塩化ジメチルジアリルアンモニウムと、アクリルアミド又はメタクリルアミドとをモノマーとして使用した共重合体であり、塩化ジメチルジアリルアンモニウムと、アクリルアミド又はメタクリルアミドとの2元共重合体が好ましいが、塩化ジメチルジアリルアンモニウムと、アクリルアミド又はメタクリルアミドのモノマーが全モノマー量対して70質量%以上含まれていれば、他のモノマーを構成単位に含むものでもよい。塩化ジメチルジアリルアンモニウム:アクリルアミド又はメタクリルアミドの比率は、質量比で1:9〜9:1が好ましく、2:8〜6:4が最も好ましい。カチオン度としては、0.5meq/g〜3.0meq/gの範囲が好ましく、1.2meq/g〜3.0meq/gがより好ましい。カチオン度が0.5meq/g未満だと、シリコーン化合物の安定分散力が劣る場合があり、かつ泡をすすぐ時の感触に劣る場合がある。一方、3.0meq/gを超えると、シリコーン化合物の安定分散力が劣る場合がある。
【0028】
分子量は、10万〜300万の範囲が好ましく、より好ましくは50万〜200万である。分子量が10万未満だとシリコーン化合物の安定分散力が劣ると共に、泡をすすいだ時の指通りが悪く、かつ乾燥後の髪がパサついた感触になる場合がある。一方、300万を超えると洗浄剤組成物の保存安定性に劣ると共に、洗浄剤組成物中への溶解が困難になる場合がある。
【0029】
(D),(E)成分のカチオンポリマーのカチオン度は、化学構造が明瞭であれば簡単に計算することができるが、モノマー比率等の構造が不明な場合であっても、ケルダール法等のN含量の測定値から計算することができる。なお本発明で示したカチオン度は、ケルダール法である化粧品原料基準の一般試験法の窒素定量法第2法で測定した値を基に算出している。なお、カチオン度の単位であるmeq/gとは試料1g当たりのNカチオン基のミリ当量数を示す。
【0030】
(D),(E)成分の分子量は、一般的なGPCカラムを用いた液体クロマトグラフィーで、分子量既知のポリマーと比較する方法によって測定することができる。本発明で示したポリマーの分子量はGPC−MALLSを用いて測定した値であり、ポリマーの純分濃度が約1,000ppmの移動相で希釈した試料溶液を、TSK−GELαカラム(東ソー(株)製)を用い、0.5moL/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相として、約633nmの波長を多角度光散乱検出器により測定した。標準品としては分子量既知のポリエチレングリコールを用いた。
【0031】
(D)及び(E)成分の合計含有量は、洗浄剤組成物全量に対して0.1〜1質量%であり、より好ましくは0.2〜0.8質量%である。合計含有量が0.1質量%未満だと、すすぎ時の指通りが悪くなると共に、シリコーン化合物の髪への吸着量が不足し、乾燥後の髪の感触が良くない。一方、1質量%を超えると、さっぱり感が好みの人にとっては、シリコーン化合物やカチオンポリマーが髪や地肌に過剰に吸着して、べたついた感触を与える。また、人にとっては地肌に吸着した成分によってかゆみが出る場合がある。
【0032】
(D)成分/(E)成分の質量比は、(D)/(E)=1/9〜9/1であることが必要であり、好ましくは3/7〜7/3である。(D)成分の比率が低すぎると、泡をすすいだ時の髪の指通りが劣り、(E)成分の比率が低すぎると、乾燥した後の髪の感触がごわついたり、洗浄剤組成物中に共存しているシリコーン化合物の分散粒子径を小さく保つことが難しくなり、髪や地肌にシリコーン化合物が過剰かつ不均一に吸着することがある。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物には、さらに、(F)炭素数8〜22の一価炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合するとよい。(F)炭素数8〜22の一価炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤としては、下記一般式(3)で表わされるスルホベタイン、下記一般式(4)で表わされるアルキルベタイン、下記一般式(5)で表わされるアミドプロピルベタイン、下記一般式(6)で表わされるイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらの中でも、ラウリン酸又はヤシ油脂肪酸のアミドプロピルベタイン、及びその混合物が好ましい。
【0034】
【化3】

(各式中、R5はそれぞれ独立に炭素数8〜22の一価炭化水素基、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜4のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基を示し、Xは水酸基又は水素原子を示す。)
【0035】
(F)成分の含有量は、洗浄剤組成物全量に対して1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは1.5〜5質量%である。(F)成分は配合しなくても本発明の効果を発揮することはできるが、配合することで泡立ちがクリーミーになる。含有量が10質量%を超えると洗浄剤組成物の粘度が著しく増加して容器から取り出し難くなったり、溶液安定性が悪化したりする場合がある。
【0036】
さらに、洗浄剤組成物に乳白化剤を加えてリッチな液外観を付与するとよい。前記乳白化剤としては、洗浄剤組成物中に結晶状又は固体状に分散し、真珠様光沢又は乳白色を付与し得るものであれば特に制限されず、化学合成されたもののみならず、例えば、魚鱗、雲母片等の天然物由来のものも使用することができる。品質の安定性、経済性、製造時の取扱い易さ等の点からは化学合成されたものが好ましい。さらに、分散安定性、起泡性等の点も考慮すると、エチレングリコールジ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸(いずれも炭素数は16〜24)エステルが好ましい。これらの乳白化剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、洗浄剤組成物全量に対し、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%配合される。1質量%未満では美しい真珠様光沢が得られない場合があり、10質量%を超えると分散安定性が悪化する可能性がある。
【0037】
また、本発明の洗浄剤組成物には、前記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、水、可溶化剤として、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類等、増粘剤、クエン酸、EDTA、NTA等のキレート剤、色素、防腐・防黴剤等を、必要に応じて適宜、適量配合することができる。その含有量は、水単独又は水を含む上記(A)〜(E)以外の成分が、洗浄剤組成物全量に対し55.5〜94.88質量%である。(F)成分1〜10質量%を含有する場合は、45.5〜93.88質量%である。
【0038】
本発明の洗浄剤組成物は、香料、香料組成物を含んでいてもよい。本発明の洗浄剤組成物に使用される香料、香料組成物は、特開2003−300811号公報の段落[0021]〜[0035]に記載された香料成分、さらに段落[0050]に記載された香料用溶剤等が挙げられる。前記香料用溶剤の使用量は、香料組成物中に0.1〜99質量%配合できるが、好ましくは、1〜50質量%である。また、香料安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンEとその誘導体、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物等が挙げられ、好ましい安定化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエンが挙げられる。これら安定化剤は、香料組成物中に0.0001〜10質量%配合できるが、好ましくは、0.001〜5質量%である。
【0039】
なお、本発明に用いられる香料組成物とは、前記の香料成分、溶剤、香料安定化剤等からなる混合物である。前記香料組成物は、洗浄剤組成物全量に対して、好ましくは0.005〜40質量%、より好ましくは0.01〜10質量%配合される。
【0040】
本発明の洗浄剤組成物は常法に基づいて調製することができ、そのpHは、3.0〜5.5であり、好ましくは3.0〜5.0の範囲である。洗浄剤組成物pHが3.0〜5.5であることは、(C)成分が抗菌性を有効に発揮させるために必須である。pHが3.0未満だと、(A)成分であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩の安定性が劣化し、洗浄剤組成物が分離する。pHが5.5を超えると、(C)成分の配合量が0.01〜0.5質量%では有効な抗菌力を発揮することができず、かつ洗髪中に形成される界面活性剤とカチオンポリマーとの複合体が形成されにくくなるため、泡をすすいだ時の髪の指通りに劣る。
なお、pHは化粧品原料基準の一般試験法に定められた方法を用い、洗浄剤組成物の原液中にpHメーターの電極を差し込み、安定した後のpH値を読むことで測定することができる。なお、液温は25℃に設定する。
【0041】
pH調整剤として、グリコール酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸、リン酸等の酸や、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリが任意に配合することができる。これらのうち、特に好ましいものは酸ではグリコール酸、クエン酸であり、アルカリでは水酸化ナトリウムである。
【0042】
本発明の洗浄剤組成物としては、シャンプー組成物、リンスインシャンプー組成物等の
毛髪洗浄剤組成物、皮膚洗浄剤組成物等が挙げられるが、毛髪洗浄剤組成物が好ましい。また、地肌に複合体や防腐剤が地肌に過剰に吸着することを抑制し、少量の防腐剤量で防腐効果が得られることから、敏感肌用毛髪洗浄剤組成物としても好適である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、各成分の量は純分換算量(AI)である。
【0044】
[実施例1〜10、比較例1〜10]
表1,2に示す組成の毛髪洗浄剤組成物を調製し、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0045】
[毛髪洗浄剤組成物の性能評価]
「泡立ちの良さ」、「すすぎ時の指通りの良さ」、「すすぎ後の地肌のべたつきのなさ」、「乾燥後の髪のやわらかさ」及び「乾燥後の髪のパサつきのなさ」
茶色系に染毛し、長さがショート〜セミロングの髪の女性パネラー10名が毛髪洗浄剤組成物を10日間使用し、上記項目についてそれぞれ下記評点に基づいて評価した。表中には10名の合計点を下記評価基準で示した。なお、毛髪洗浄後に使用するリンス・コンディショナー等のインバス製品、スタイリング剤及びヘアケア剤等のアウトバス製品は、各パネラーが日常用いているものをそのまま使用した。
〈評点〉
+2点:非常によい
+1点:やや良い
−1点:やや悪い
−2点:非常に悪い
〈評価基準〉
◎ :合計点が15点以上
◎〜○:14〜10点
○ :合計点が9〜5点
△ :合計点が4〜−4点
× :合計点が−5点以下
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
[試験例1]
実施例1及び3の毛髪洗浄剤組成物にそれぞれ硫酸を添加して、下記表3のpHに調整し、実施例11及び比較例11〜13の毛髪洗浄剤組成物を得た。得られた毛髪洗浄剤組成物について、50℃に1又は2週間保存した時の液の外観を評価した。結果を表3に併記する。容器は容量100mLのPET(ポリエチレンテレフタレート)、HDPE(高密度ポリエチレン)を使用した。
【0049】
【表3】

【0050】
pHが3未満の毛髪洗浄剤組成物は、いずれも分離が認められた。分離後の液のpHは1付近の値を示すことから、pHが3未満だとポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムの加水分解が起こり、酸を遊離することでさらに加水分解が加速化し、急激に分離したと考えられる。
【0051】
[試験例2]
実施例4及び6の毛髪洗浄剤組成物中の、(C)成分の量を増減させ、又は防腐効果のあるパラオキシ安息香酸メチルを添加した毛髪洗浄剤組成物、水酸化ナトリウムを添加した毛髪洗浄剤組成物(比較例14〜20)について、細菌数試験及び地肌が敏感と自覚しているパネラー3名による使用試験を実施した。
【0052】
細菌数試験
細菌を凍結保護剤入りの滅菌生理食塩水で108〜109cfu/mLに調整し、懸濁液を得て、これを細菌用供試菌液とした。
液体試料(毛髪洗浄剤組成物)20g中に細菌用供試菌液を0.2mL添加し、十分に混合して、評価用混合液を調製した後、設定温度(25℃あるいは40℃)で暗所に保存した。次に、第14改正日本薬局方 微生物限度試験法の生菌数試験に従い、所定の保存日数(1,14日後)を経た後に、前記評価用混合液から1gを無菌的に採取し、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80液体培地9mLにそれぞれ希釈混合した。希釈混合して得た液1mLをそれぞれシャーレに取り、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・レシチン・ポリソルベート80寒天培地で混釈して試料とした。前記試料を30℃で4日間培養し、前記試料中の生残細菌数を測定した。
【0053】
使用試験
地肌が敏感と自覚しているパネラー3名が毛髪洗浄剤組成物を使用後、使用直後から翌日にかけての地肌のかゆみ感を以下の基準で評価した。
++:強いかゆみあり
+ :弱いかゆみあり
− :かゆみなし
【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
実施例では毛髪洗浄剤組成物中に混入した菌が死滅すると共に、地肌が敏感と自覚しているパネラーにおいてもかゆみ等が認められなかった。
【0057】
[実施例12]
以下に示す洗浄剤組成物を調製した。
組成(質量%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(2E.O.) 15
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 3
ヤシ油アルキルベタイン 1
ジメチルポリシロキサン(1,000万mm2/s) 2
安息香酸ナトリウム 0.1
サリチル酸 0.05
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース(1) 0.2
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム(1)
0.1
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(1) 0.2
テトラデセンスルホン酸ナトリウム 1
ラウリルジメチルアミンオキシド 0.5
POE(20)硬化ヒマシ油 1
ステアリン酸モノグリセリル 0.5
POEステアリルエーテル 0.5
ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド 1.5
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1
ベントナイト 0.1
グリセリン 0.5
ソルビトール 1.5
アモジメチコン 0.15
(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー 0.05
エチレングリコールジステアレート 1.5
ローマカミツレエキス 0.05
スギナエキス 0.05
ホップエキス 0.05
マツエキス 0.05
レモンエキス 0.05
ローズマリーエキス 0.05
オトギリソウエキス 0.05
セイヨウオトギリソウエキス 0.05
カミツレエキス 0.05
トウキンセンカエキス 0.05
フユボダイジュ花エキス 0.05
ヤグルマギクエキス 0.05
黄色203号 0.001
赤色106号 0.001
緑色3号 0.00025
アルギニン 0.1
グルタミン酸 0.1
香料 0.9
クエン酸:適量(pH=4.2に調整)
精製水 残部
合計 100.0
【0058】
実施例及び比較例で使用した原料を下記に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
【表7】

【0061】
本実施例及び比較例で用いた香料は特願2004−249835号[表5]〜[表10]記載の香料A〜Dである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩5〜40質量%と、
(B)ジメチルポリシロキサン及びシラノール基末端ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上のシリコーン化合物0.01〜3質量%と、
(C)下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、水酸基又は水素原子を示し、A1はカルボキシル基又はその塩を示す。)
で表される芳香族カルボン酸及び/又はその塩0.01〜0.5質量%と、
(D)カチオン化セルロース及びカチオン化グァーガムから選ばれる1種又は2種以上のカチオンポリマーと、
(E)塩化ジメチルジアリルアンモニウムと(メタ)アクリルアミドとの共重合体とを含有し、上記(D)及び(E)成分の合計含有量が0.1〜1質量%、かつ質量比(D)/(E)=1/9〜9/1であって、pHが3.0〜5.5である洗浄剤組成物。
【請求項2】
(D)成分のカチオン度が0.1〜3.0meq/g、分子量10万〜300万であり、(E)成分のカチオン度が0.5〜3.0meq/g、分子量10万〜300万であり、かつ(C)成分が安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸、及びサリチル酸塩から選ばれる化合物である請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、(F)炭素数8〜22の一価炭化水素基を有するベタイン型両性界面活性剤1〜10質量%を含有する請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−70469(P2007−70469A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259062(P2005−259062)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】