説明

洗浄液組成物

【課題】湿潤および浸透効果に優れるため、配向膜基板上に存在する汚染物質に対する洗浄効果に優れた洗浄液組成物を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄液組成物は、アルカリ化合物を含まない洗浄液組成物であって、組成物の総重量に対して、C1〜C5の低級アルコール0.1重量%〜15重量%、水溶性グリコールエーテル化合物0.1重量%〜15重量%、有機リン酸0.01重量%〜10重量%、アゾール系化合物0.001重量%〜10重量%、および残量の水を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶セルの製作工程では、電極パターンの形成された2枚のパターン基板に、配向膜と絶縁膜の機能を持たせるためにポリイミド(以下「PI」という)を塗布し、その上を一定の方向にラビングすることにより、配向膜を形成させる。その後、シール(seal)接着剤と液晶セルの厚さを制御するためにスペーサーを配置し、2枚の基板を接合させる。この際、液晶の注入される配向膜基板上に残留汚染物質が存在すると、鮮明な表示画面を得ることが難しいうえ、パッケージングの際に不良を誘発する。よって、基板に残存する汚染物質を洗浄して除去する必要がある。
【0003】
液晶ディスプレイの液晶セル製造の際に、基板の汚染経路は2枚のPI基板を接合する前のラビング工程でラビング布から落とされた異物やPI粒子を挙げることができる。これらは基板にくっ付いて不良を誘発するおそれがある。このような工程中に発生する汚染物質を取り除くために、従来ではイソプロパノールおよびイソプロパノール水溶液などの溶剤または純水を用いて洗浄した。ところが、前記溶剤による洗浄は、基板上に溶剤が残留する問題を引き起こすおそれがある。前記溶剤による洗浄は、環境に対する安全性および可燃性などの化学的安定性に問題がありうる。前記溶剤による洗浄は、高油価時代に進入しながら原料価格の上昇による製造工程費用の増加をもたらすおそれがある。また、前記純水による洗浄は、汚染物質に対する十分な洗浄力を示さないので、製造収率を減少させるおそれがある。
【0004】
また、アルカリ化合物を含む洗浄液の場合はPI配向膜を損傷させる問題を引き起こす。
一方、特許文献1には、ラビング基板を純水で超音波洗浄して高いプレチルト角(pretilt angle)を安定に形成させる方法が提案されている。ところが、ディスプレイ製造工程に超音波を導入することは容易ではなく、純水による洗浄方法は最近要求されている洗浄液の物性を満たしていない。特許文献2には、ラビング基板の表面をブラシを用いて洗浄する方法が提案されているが、ブラシから発生する2次汚染物および汚染物の基板に対する再付着などにより洗浄効果を期待することができない。
【0005】
これらの特許文献では、洗浄工程に物理的な洗浄力を提供する装置を用いることを特徴とするが、このような方法は、洗浄工程に対する費用を増加させるだけでなく、イソプロパノールと純水を用いることにより、基板上の溶剤残留、リンス不良、粒子(particle)再付着などの問題からも自由になることができない。
【0006】
よって、前述した問題点を解決するために、人体に対する安全性と作業安全性に優れるうえ、様々な界面活性剤を添加して洗浄力およびリンス性に優れた様々な水系洗浄システムが研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−62018号公報
【特許文献2】特開平3−81730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、湿潤および浸透効果に優れるため、配向膜基板上に存在する汚染物質に対する洗浄効果に優れた洗浄液組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、配向膜の損傷も起こさない洗浄液組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、引火性がなくて安全かつ環境調和的であり、気泡性の低い洗浄液組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、銅を含む金属膜、およびアルミニウムを含む金属膜を腐食させない洗浄液組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、アルカリ化合物を含まない洗浄液組成物であって、組成物の総重量に対して、C1〜C5の低級アルコール0.1重量%〜15重量%、水溶性グリコールエーテル化合物0.1重量%〜15重量%、有機リン酸0.01重量%〜10重量%、アゾール系化合物0.001重量%〜10重量%、および残量の水を含むことを特徴とする、洗浄液組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記洗浄液組成物で洗浄された配向膜を含む液晶セルを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記液晶セルを含む液晶ディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄液組成物は、湿潤および浸透効果に優れるため、配向膜の基板上に存在する汚染物質に対する洗浄効果に優れる。本発明の洗浄液組成物は、液晶ディスプレイ装置に含まれる配向膜の損傷も起こさない。よって、本発明の洗浄液組成物は、液晶ディスプレイの液晶セル製造工程中に液晶配向膜のラビング(rubbing)前後に行われる基板洗浄において非常に優れた効果を持つ。特に、本発明の洗浄液組成物が液晶ディスプレイ装置の製造工程に用いられたとき、配向膜上に位置した金属性パーティクルの除去能力に優れる。本発明の洗浄液組成物は、引火性がなくて安全かつ環境調和的であり、気泡の発生による問題も引き起こさない。また、本発明の洗浄液組成物は、銅を含む金属膜およびアルミニウムを含む金属膜を腐食させない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の洗浄液組成物を用いてCu/Ti配線基板を洗浄したときの銅の表面を示す写真である。
【図2】実施例2の洗浄液組成物を用いてMo/Al/Mo配線基板を洗浄したときのアルミニウムの表面を示す写真である。
【図3】比較例1の洗浄液組成物を用いてMo/Al/Mo配線基板を洗浄したときのアルミニウムの表面を示す写真である。
【図4】比較例1の洗浄液組成物を用いてCu/Ti配線基板を洗浄したときの銅の表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る洗浄液組成物は、アルカリ化合物を含まない洗浄液組成物であって、C1〜C5の低級アルコール、水溶性グリコールエーテル化合物、有機リン酸、アゾール系化合物、および水を含む。
【0019】
一般に、アルカリ化合物は、大気中の汚染物や有機物を除去する場合に洗浄液として使用されるが、液晶ディスプレイ装置の液晶セル製造工程中に使用される場合、液晶配向膜、より詳しくはPI配向膜の損傷をもたらすおそれがある。よって、本発明の洗浄液組成物は、このようなアルカリ化合物を含まないので、液晶配向膜の損傷を防止することができる。
【0020】
また、本発明の洗浄液組成物は、C1〜C5の低級アルコール、水溶性グリコールエーテル化合物および有機リン酸の組み合わせからなり、ディスプレイの液晶セル製造工程中の液晶配向膜のラビング工程前・後に行われる基板洗浄の際に、優れた汚染物質洗浄効果を示しながら、配向膜を損傷させず、引火性がなく、低気泡性を示すという利点がある。液晶配向膜のうち、特にPI配向膜の洗浄において優れた汚染物質洗浄効果を発揮する。また、本発明の洗浄液組成物は、アゾール系化合物により、銅を含む金属膜およびアルミニウムを含む金属膜の損傷を生じさせないので、液晶配向膜がコートされていない領域に位置する電極または配線を腐食させない。
【0021】
本発明の洗浄液組成物に含まれるC1〜C5の低級アルコールは、基板に対する洗浄液の湿潤および浸透力を高め、汚染物の再付着防止能力を向上させて基板から汚染物質を容易に除去する作用をする。
【0022】
前記低級アルコールの含量は、組成物の総重量に対して0.1重量%〜15重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%である。前記低級アルコールの含量が0.1重量%未満であれば、表面張力を低下させないため湿潤浸透力を期待することが難しい。前記低級アルコールの含量が15重量%超過であれば、基板上に低級アルコールの残留による不良をもたらすおそれがある。
【0023】
前記C1〜C5の低級アルコールの種類は特に限定されないが、水溶性などの物性を考慮するとき、C1〜C4の低級アルコールが好ましく、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオールなどを使用することができ、これらは1種単独で或いは2種以上の組み合わせが使用できる。
【0024】
本発明の洗浄液組成物に含まれる水溶性グリコールエーテル化合物は、低級アルコール水溶液のみでは除去することが難しいラビング基板表面のオイル成分を除去し、水に対する溶解力を向上させる役目をする。
【0025】
前記水溶性グリコールエーテル化合物の含量は、組成物の総重量に対して0.1重量%〜15重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%である。前記水溶性グリコールエーテル化合物の含量が0.1重量%未満であれば、ラビング基板表面のオイル成分を除去することが難しくなる。前記水溶性グリコールエーテル化合物の含量が15重量%超過であれば、洗浄液の粘度上昇により洗浄の際に基板への湿潤浸透力に悪影響を及ぼす。
【0026】
前記水溶性グリコールエーテル化合物の中でも、C1〜C10の水溶性グリコールエーテルが好ましく使用でき、C1〜C10の水溶性グリコールエーテルは、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(MG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPG)、エチレングリコールモノエチルエーテル(EG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)などがあり、これらは1種単独で或いは2種以上の組み合わせが使用できる。
【0027】
本発明の洗浄液組成物に含まれる有機リン酸は、汚染粒子が互いに凝集しないように分散させるうえ、洗浄の際に基板に対する湿潤浸透力を向上させて洗浄効果を向上させる役目をする。また、前記有機リン酸は、金属性パーティクルを効果的に除去することができる。また、前記有機リン酸は、銅を含む金属膜とアルミニウムを含む金属膜の腐食を抑制することができる。
【0028】
前記有機リン酸の含量は、組成物の総重量に対して0.01重量%〜10重量、好ましくは0.1重量%〜5重量%である。前記有機リン酸の含量が0.01重量%未満であれば、ラビングした基板表面の湿潤浸透力を向上させることができない。前記有機リン酸の含量が10重量%超過であれば、基板上に残留することにより、不良の原因になるおそれがある。
【0029】
前記有機リン酸は、特に限定されず、例えば、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキセンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシホスホノ酢酸、および2−ホスフィン酸ブタン−1,2,4−トリカルボン酸などから選択でき、特に好ましくは(1−ヒドロキシエチリデン)−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、アミノトリメチレンホスホン酸または2−ホスフィン酸ブタン−1,2,4−トリカルボン酸である。
【0030】
本発明の洗浄液組成物に含まれるアゾール系化合物は、銅を含む金属膜とアルミニウムを含む金属膜の腐食を最小化する役目をする。
【0031】
前記アゾール系化合物の含量は、組成物の総重量に対して0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜3重量%である。上述した範囲を満足すると、銅を含む金属膜とアルミニウムを含む金属膜の損傷、すなわち腐食を最小化することができ、経済的である。
【0032】
前記アゾール系化合物は、下記化学式1で表されることが好ましい。
【0033】
【化1】

【0034】
前記化学式1におぃて、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C3〜C6のシクロアルキル基、アリル基、アリール基、アミノ基、C1〜C6のアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、C1〜C6のアルキルメルカプト基、ヒドロキシ基、C1〜C6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、C1〜C6のカルボキシアルキル基、アシル基、C1〜C6のアルコキシ基、または複素環を有する1価の基である。
【0035】
前記化学式1で表されるアゾール系化合物は、2,2’−[[[ベンゾトリアゾール]メチル]イミノ]ビスエタノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスメタノール、2,2’−[[[エチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスプロパノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスカルボン酸、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスメチルアミン、および2,2’−[[[アミン−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノールよりなる群から選ばれることが好ましい。
【0036】
本発明の洗浄液組成物に含まれる水は、特に限定されないが、半導体工程用の水であって、比抵抗値18MΩ・cm以上の脱イオン水を使用することが好ましい。前記水の含量は他の構成成分の含量に応じて調節できる。そして、上記の水の含量は造成物の総重量が100%になるように残量が含まれる。
【0037】
本発明の洗浄液組成物は有機酸を含まないことが好ましい。その理由は、有機酸の含まれた洗浄液組成物が液晶ディスプレイ装置の製造工程中に配向膜のラビング工程後に用いられると、配向膜、特にPI配向膜の表面に位置する金属パーティクルの除去効果を得ることができるが、金属電極または配線の腐食を加速化させることもできるためである。
【0038】
本発明の洗浄液組成物は、洗浄性能を向上させるために、当業界における公知の通常の添加剤、例えば防食剤、湿潤浸透剤、分散剤、表面改質剤などをさらに含むことができる。
【0039】
本発明の洗浄液組成物に含まれる構成成分は、通常、公知の方法によって製造可能であり、特に半導体工程用純度を持つことが好ましい。
【0040】
また、本発明は、前記洗浄液組成物で洗浄された配向膜を含む液晶セルを提供する。本発明は、前記液晶セルを含む液晶ディスプレイ装置を提供する。
【0041】
本発明の洗浄液組成物を使用すると、配向膜基板上に存在する残留汚染物質が完璧に除去されるので、このような配向膜を含む液晶セルは優れた品質を持つ。また、このような液晶セルを含む液晶ディスプレイ装置は鮮明な表示画面を提供することができる。
【0042】
本発明の洗浄液組成物を使用する洗浄方法は、特に限定されず、浸漬洗浄法や揺動洗浄法、超音波洗浄法、シャワー・スプレー洗浄法、パドル洗浄法、ブラシ洗浄法などが適用できる。
【0043】
本発明の洗浄液組成物は、湿潤・浸透効果に優れるため、配向膜基板上に存在する汚染物質に対する洗浄効果に優れる。本発明の洗浄液組成物は、液晶ディスプレイ装置に含まれる配向膜の損傷も起こさない。よって、本発明の洗浄液組成物は、液晶ディスプレイの液晶セル製造工程中に液晶配向膜のラビング前後に行われる基板の洗浄において非常に優れた効果を持つ。特に、本発明の洗浄液組成物が液晶ディスプレイ装置の製造工程に用いられたとき、配向膜上に位置した金属パーティクルの除去能力に優れる。本発明の洗浄液組成物は、引火性がなくて安全かつ環境調和的であり、気泡発生による問題も引き起こさない。また、本発明の洗浄液組成物は、銅を含む金属膜およびアルミニウムを含む金属膜を腐食させない。
【0044】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。ところが、これらの実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提供されるもので、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
実施例1〜11および比較例1〜8:洗浄液組成物の製造
表1に記載された成分を所定の含量に応じて攪拌器付きの混合槽に仕込み、常温で1時間500rpmの速度で攪拌して洗浄液組成物を製造した。
【0046】
【表1】

【0047】
A−1 :エタノール
A−2:イソプロパノール
A−3:グリセロール
B−1:ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)
B−2:ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)
B−3:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)
C−1:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)
C−2:2−ホスフィン酸ブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)
C−3:ヒドロキシホスホノ酢酸(HPA)
D−1:2,2’−[[[エチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノール
D−2:2,2’−[[[アミン−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノール
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
E−1:シュウ酸
【0048】
試験例:洗浄力および配向膜損傷の評価
1.PI配向膜の損傷およびパーティクル洗浄力の評価
PI配向膜をラビングした基板(5×5×0.7cm)を大気中に24時間放置して大気中の各種有機物、無機物、パーティクルなどに汚染させた後、スプレー式ガラス基板洗浄装置を用いて2分間常温で実施例1〜11および比較例1〜8の洗浄液組成物で洗浄した。洗浄の後、超純水で30秒洗浄した後、窒素で乾燥させた。前記基板を走査電子顕微鏡(SEM:日立社、モデル名S−4700)で検査してPI配向膜の損傷有無評価と共に、基板の表面に残っている異物の粒子数で洗浄力を評価した。
【0049】
その結果は下記表2に示した。非常に良好は◎、良好は○、普通は△、不良は×でそれぞれ表示した。 そして、PI配向膜が剥離され、結果が測定できないものはーと表示している。
【0050】
2.有機汚染物除去力の評価
ガラス基板を大気中に24時間放置して大気中の各種有機物、無機物、パーティクルなどに汚染させた後、0.5μLの超純水滴を滴下して洗浄前の接触角を測定し、表面汚染を確認した。洗浄は、容量250mLのビーカーに、実施例1〜11および比較例1〜8で製造された洗浄液組成物100mLを入れ、常温(25℃)で2分間担持させた後、超純水で30秒洗浄し、しかる後に、窒素で乾燥させた。前記ガラス基板上に0.5μLの超純水滴を滴下して洗浄後の接触角を測定した。
【0051】
その結果は下記表2に示した。洗浄の後、接触角の変化が30°以上は◎、15°以上30°未満は○、5°以上15°未満は△、5°以下は×でそれぞれ表示した。
【0052】
3.アルミニウムと銅の損傷評価
配線損傷評価のために、Mo/Al/Mo配線基板でアルミニウム損傷評価を行い、Cu/Ti配線基板を用いて銅損傷評価を行った。評価は、容量250mLのビーカーに、前記実施例1〜11および比較例1〜8で製造された洗浄液組成物100mLを入れ、常温(25℃)で30分間担持させた後、超純水で30秒洗浄し、しかる後に、窒素で乾燥させた。前記基板を走査電子顕微鏡(SEM:日立社、モデル名S−4700)で検査してアルミニウムと銅の損傷有無評価結果を表2に示した。
【0053】
また、配線損傷評価結果を図1〜図4に示した。
【0054】
【表2】

【0055】
表2に示されている結果より、本発明の実施例1〜11の洗浄液組成物は全て優れた洗浄力を示し、PI配向膜に対する損傷も引き起こさないものと確認された。また、アルミニウムおよび銅に対する損傷も全く観察されなかった。
【0056】
これに対し、少ない量であるが、アルカリ化合物の含まれた比較例1の洗浄液組成物は、PI配向膜を完全に除去し、アルミニウムおよび銅を含む金属膜を損傷させた。また、比較例2の洗浄液組成物は、異物に対する洗浄効果はあったが、基板に有機物質が残って斑が生じて不良をもたらした。また、比較例3の洗浄液組成物は、配向膜に対する損傷はないが、異物に対する洗浄力が低い結果を示した。また、比較例4の洗浄液組成物は、配向膜に対する損傷がなく、優れた洗浄力を示すが、銅を損傷させる。また、本発明の構成要素を全て含むが、アルカリ化合物もさらに含む比較例5の洗浄液組成物を用いると、PI配向膜が剥離されるので好ましくない。また、アゾール系化合物が含まれていない比較例6の洗浄液組成物の場合、銅を損傷させるので好ましくない。また、純水からなる比較例7の洗浄液組成物は、PI配向膜には損傷を与えないが、洗浄力が低くて不良をもたらすことが分かる。また、有機酸を含む比較例8の場合、銅を損傷させるので好ましくない。
【0057】
一方、図1は実施例1の洗浄液組成物を用いてCu/Ti配線基板を洗浄したときの銅の表面を示す写真である。図2は実施例2の洗浄液組成物を用いてMo/Al/Mo配線基板を洗浄したときのアルミニウムの表面を示す写真である。図3は比較例1の洗浄液組成物を用いてMo/Al/Mo配線基板を洗浄したときのアルミニウムの表面を示す写真である。図4は比較例1の洗浄液組成物を用いてCu/Ti配線基板を洗浄したときの銅の表面を示す写真である。
【0058】
図1〜図4を参照すると、本発明に係る実施例1および実施例2の洗浄液組成物を用いて洗浄した場合にCu/Ti配線、Mo/Al/Mo配線に対する損傷が全くないことが分かる。これに対し、比較例1ではCu/Ti配線、Mo/Al/Mo配線の両方ともを損傷させることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ化合物を含まない洗浄液組成物であって、
組成物の総重量に対して、C1〜C5の低級アルコール0.1重量%〜15重量%、水溶性グリコールエーテル化合物0.1重量%〜15重量%、有機リン酸0.01重量%〜10重量%、アゾール系化合物0.001重量%〜10重量%、および残量の水を含むなることを特徴とする、洗浄液組成物。
【請求項2】
前記洗浄液組成物は液晶ディスプレイ装置の製造工程中に配向膜のラビング工程の前後に基板を洗浄するのに用いられることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項3】
前記C1〜C5の低級アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールおよび1,2,4−ブタントリオールよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項4】
前記水溶性グリコールエーテル化合物はC1〜C10の水溶性グリコールエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項5】
前記水溶性グリコールエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテル(MG)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(MDG)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(MTG)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPG)、エチレングリコールモノエチルエーテル(EG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(EDG)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(BTG)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFDG)よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項6】
前記有機リン酸は、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチリデンジホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロピリデン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシブチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、1,2−プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトロトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキセンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシホスホノ酢酸、および2−ホスフィン酸ブタン−1,2,4−トリカルボン酸よりなる群から選ばれる1種以上で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項7】
前記アゾール系化合物は下記化学式1で表されることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物:
【化1】

前記化学式1におぃて、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、C1〜C6のアルキル基、C3〜C6のシクロアルキル基、アリル基、アリール基、アミノ基、C1〜C6のアルキルアミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、C1〜C6のアルキルメルカプト基、ヒドロキシ基、C1〜C6のヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、C1〜C6のカルボキシアルキル基、アシル基、C1〜C6のアルコキシ基、または複素環を有する1価の基である。
【請求項8】
前記アゾール系化合物は、2,2’−[[[ベンゾトリアゾール]メチル]イミノ]ビスエタノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスメタノール、2,2’−[[[エチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスプロパノール、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスカルボン酸、2,2’−[[[メチル−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスメチルアミン、および2,2’−[[[アミン−1水素−ベンゾトリアゾール−1−イル]メチル]イミノ]ビスエタノールよりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の洗浄液組成物。
【請求項9】
前記洗浄液組成物は有機酸を含まないことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄液組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の洗浄液組成物で洗浄された配向膜を含む液晶セル。
【請求項11】
請求項10項に記載の液晶セルを含む液晶ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1719(P2012−1719A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129478(P2011−129478)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(506171277)ドンウー ファイン−ケム カンパニー リミテッド (15)
【Fターム(参考)】