説明

洗浄用樹脂組成物

【課題】 樹脂の成形加工機の洗浄性と残留物の除去性が良い洗浄用樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (B)有機繊維及び/又は無機充填剤と(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物。(B)成分により洗浄性が向上され、(C)成分により残留物の除去性が向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種樹脂材料、セラミックス材料等の成形に使用する成形加工機を洗浄するために用いる洗浄用樹脂組成物と、それを用いた成形加工機の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、射出成形品、押出成形品、フィルム等に幅広く利用されている。これらのプラスチック成形品は多品種少量生産の傾向にあり、品種の切替え頻度が多くなっているため、品種切替え時の成形機内の洗浄が品質管理上重要となってきている。熱可塑性樹脂の成形加工において、品種切替えの際における成形機の洗浄法としては、洗浄剤で洗浄する方法が知られている。
【0003】
この洗浄剤による洗浄法の場合も、洗浄後に前剤が残留して焼けや成形不良の原因になったり、また完全に前剤を排出できても洗浄剤が残留し、次の樹脂への置換に多量の樹脂と長い時間を必要とするという問題がある。
【0004】
特許文献1には、洗浄材料の成分として、無機充填剤及び/又は無機粉末、有機繊維及び/又は有機粉末、金属繊維及び/又は金属粉末を配合することが記載されている。有機繊維としてセルロース繊維が例示されているが、セルロース繊維についての具体的な記載はなく、実施例で使用されているものはガラス繊維のみである。
【0005】
特許文献2には、洗浄剤の成分として、木粉、もみがら、パルプ、コルク等のセルロース材料を配合することが記載されているが、実施例で使用されているものは木粉のみである。
【0006】
また、洗浄剤を使用したときの課題として、洗浄剤自体が成形加工機内の溝等に残留し易く、分解掃除をした場合でも取り除き難いということがある。特許文献3、4には、可塑剤を配合した洗浄剤により、前記課題を解決することが記載されている。しかし、可塑剤の配合量については、特許文献3では、熱可塑性樹脂100重量部に対する好ましい量として0.1〜5重量部が記載され、特許文献4では、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部程度で良いと記載されている。
【特許文献1】特許第3050774号公報
【特許文献2】特開2000−34499号公報
【特許文献3】特開平9−183133号公報
【特許文献4】特開2001−88139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3、4の発明では、洗浄効果が十分でないこと、可塑剤の配合量が少ないため、残留した洗浄剤の除去性が悪いことの点で改善すべき課題がある。
【0008】
本発明は、高い洗浄性を有しており、分解掃除等において容易に取り除くことができる(即ち、残留物の除去性が良い)洗浄用樹脂組成物と、それを用いた成形加工機の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、下記の各発明を提供する。
1.(B)有機繊維及び/又は無機充填剤と(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物。
2.(A)熱可塑性樹脂、(B)有機繊維及び/又は無機充填剤、(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物。
3.(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維である請求項1又は2記載の洗浄用樹脂組成物。
4.(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維であり、前記セルロース繊維とセルロースエステルが一体化されたものである、請求項1記載の洗浄用樹脂組成物。
5.(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維であり、前記セルロース繊維と熱可塑性樹脂が一体化されたものである、請求項2記載の洗浄用樹脂組成物。
6.(B)成分の無機充填剤が、ガラス繊維、金属繊維、溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、人造鉱物繊維及びウォラストナイトから選ばれるものである、請求項1又は2記載の洗浄用樹脂組成物。
7.(C)成分が可塑剤20〜50質量%、セルロースエステル50〜80質量%からなるものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の洗浄用樹脂組成物。
8.組成物中における(C)成分中の可塑剤のみの含有量が、(A)及び(B)成分の合計量100質量部に対して3〜35質量部である、請求項1〜7のいずれか1項記載の洗浄用樹脂組成物。
9.樹脂やセラミックスを含む材料を成形加工するために用いる成形加工機の洗浄方法であって、
前記成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に請求項1記載の洗浄用樹脂組成物を投入するか、又は前記成形加工機内に請求項1記載の洗浄用樹脂組成物中の(B)成分を投入した後、(C)成分を投入する、成形加工機の洗浄方法。
10.樹脂やセラミックスを含む材料を成形加工するために用いる成形加工機の洗浄方法であって、
前記成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に請求項2記載の洗浄用樹脂組成物を投入するか、又は前記成形加工機内に請求項2記載の洗浄用樹脂組成物中の(A)成分及び(B)成分を投入した後、(C)成分を投入する、成形加工機の洗浄方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、成形加工機の洗浄性が良く、成形加工機内に残留した組成物の除去性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、
(1)(B)有機繊維及び/又は無機充填剤と(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物(以下「第1洗浄用樹脂組成物」という)と、
(2)(A)熱可塑性樹脂、(B)有機繊維及び/又は無機充填剤、(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物(以下「第2洗浄用樹脂組成物」という)の両方を含むものである。
【0012】
よって、以下において「洗浄用樹脂組成物」というときは、第1洗浄用樹脂組成物と第2洗浄用樹脂組成物の両方を含むものである。以下、本発明で使用する(A)〜(C)成分と、必要に応じて含有することができる他の成分を説明する。
【0013】
<(A)成分>
(A)成分の熱可塑性樹脂にはセルロースエステルは含まれず、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリメタクリレート、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリサルホン系樹脂(PSF)、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリメタクリレート、ポリアセタールから選ばれるものが好ましい。なお、セルロースエステルは単独では熱可塑性がなく、(A)成分には含まれない。
【0014】
スチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーの単独又は共重合体のほか、これらのスチレン系モノマーと共重合可能なモノマー、例えばアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル系モノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0015】
また、スチレン系樹脂は、ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、エチレン/プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム等に上記のスチレン系モノマー及びビニル系モノマーをグラフト重合させたゴム変性スチレン系樹脂にすることができる。このようなスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、MS樹脂、MBS樹脂等を挙げることができる。特に好ましくは、ポリスチレン、AS樹脂である。
【0016】
スチレン系樹脂は、重量平均分子量が100,000〜600,000の範囲のものが好ましく、100,000〜500,000の範囲のものがより好ましく、150,000〜450,000の範囲のものがより好ましい。
【0017】
オレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチルブテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンの単独重合体、又はこれらα−オレフィンのランダム若しくはブロック等の共重合体、或いはこれらのα−オレフィンを主成分として含有し(好ましくは50質量%以上)、その他のモノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
【0018】
他のモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、ジシクロペンジエン、1,4−ヘキサジエン、4−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等のジエン類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、マレイン酸イミド等の不飽和酸又はその誘導体、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物等を挙げることができる。
【0019】
オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びポリプロピレン(PP)から選ばれる1種又は2種以上のものが好ましい。また、(A)成分のポリオレフィン樹脂としては、前記したものと共に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、マレイン酸イミド等の不飽和酸又はその誘導体を共重合させた酸変性ポリオレフィン樹脂を少量含有させることができる。
【0020】
ポリアミド樹脂は、ジアミンとジカルボン酸とから形成されるポリアミド樹脂及びそれらの共重合体、具体的にはナイロン66、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカナミド(ナイロン6・12)、ポリドデカメチレンドデカナミド(ナイロン1212)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)及びこれらの混合物や共重合体;ナイロン6/66、6T成分が50モル%以下であるナイロン66/6T(6T:ポリヘキサメチレンテレフタラミド)、6I成分が50モル%以下であるナイロン66/6I(6I:ポリヘキサメチレンイソフタラミド)、ナイロン6T/6I/66、ナイロン6T/6I/610等の共重合体;ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)テレフタルアミド(ナイロンM5T)、ポリ(2−メチルペンタメチレン)イソフタルアミド(ナイロンM5I)、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/M5T等の共重合体が挙げられ、そのほかアモルファスナイロンのような共重合ナイロンでもよく、アモルファスナイロンとしてはテレフタル酸とトリメチルヘキサメチレンジアミンの重縮合物等を挙げることができる。
【0021】
ポリメタクリレートとしては、公知のメタクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー又は他のモノマーとのコポリマーを挙げることができる。ポリアセタールは、公知のホルムアルデヒドのみが重合したホモポリマーのほか、パラホルムアルデヒドとオキシエチレン単位を含むコポリマー等を挙げることができる。
【0022】
本発明の第2洗浄用樹脂組成物中の(A)成分の熱可塑性樹脂の含有量は、30〜90質量%が好ましく、35〜80質量%がより好ましく、40〜70質量%が更に好ましい。なお、第1洗浄用樹脂組成物中にも、5質量%以下程度の少量の(A)成分が含有されていてもよい。
【0023】
<(B)成分>
本発明で用いる(B)成分は、有機繊維及び無機充填剤から選ばれるものを挙げることができる。
【0024】
〔有機繊維〕
有機繊維としては、公知の各種合成樹脂繊維を用いることができるが、本発明では、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維を用いることが好ましい。セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維は、洗浄性を向上させるための成分であって、機械的手段により、セルロース繊維集合体が解繊されたもので、例えば、解繊された多数のセルロース繊維が絡み合って、全体として塊状になったものである。
【0025】
セルロース繊維集合体は、多数のセルロース繊維が結合一体化されたものであり、天然物(例えば、植物体そのもの、植物体を薄く加工したもの)でも工業製品(例えば、紙パルプ)でもよく、麻繊維、竹繊維、綿繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナツ繊維等の集合体を用いることができる。
【0026】
セルロース繊維は、熱安定性が高い点から、αセルロース含有量が高いものが好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0027】
セルロース繊維集合体としては、パルプシート又はその切断物が好ましい。パルプシート又はその切断物の厚み、形状、大きさは特に制限されず、解繊作業が円滑にできるように選択することができる。
【0028】
セルロース繊維集合体がシートの場合は、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅1〜50cmで、長さ3〜100cm程度のものを用いることができる。
【0029】
セルロース繊維集合体がシートの切断物の場合は、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mmで、幅2mm〜1cmで、長さ3mm〜3cm程度の短冊状のもの、又は一辺が2mm〜1cm程度の四角形状のものが好ましい。
【0030】
セルロース繊維集合体の水分含有率は、20質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。水分含有率が20質量%以下であると、次工程において摩擦熱の発生による昇温が容易になり、セルロース繊維集合体が解繊され易く凝集物が残らないので好ましい。なお、水分含有率は、カールフィッシャー法による水分測定等により求める。
【0031】
必要に応じて、セルロース繊維以外の有機繊維を使用することができるが、セルロース繊維と有機繊維の合計量中、セルロース繊維の割合が50質量%以上になるようにすることが好ましく、より好ましくは55質量%以上である。セルロース繊維以外の有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等を用いることができる。
【0032】
(B)成分は、第1洗浄用樹脂組成物においては、解繊されたセルロース繊維集合体に可塑剤を含むセルロースエステルが付着一体化されたもの(例えば、ペレット状の造粒物の形態のもの)を用いることもできる。
【0033】
(B)成分は、第2洗浄用樹脂組成物においては、解繊されたセルロース繊維集合体に(A)成分と同じ熱可塑性樹脂が付着一体化されたもの(例えば、ペレット状の造粒物の形態のもの)を用いることもできる。
【0034】
セルロース繊維集合体の解繊方法は特に制限されるものではないが、例えば、下記の第1〜第3の解繊方法を適用することができる。
【0035】
(1)第1の解繊方法(特開2007−84713公報に記載されている方法)
〔第1工程〕
第1工程において、攪拌手段として回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより、前記セルロース繊維集合体を解繊する。
【0036】
ミキサーは、攪拌手段として回転羽根を有するものであればよく、好ましくは加温手段を有しているものであり、例えば、三井鉱山(株)製ヘンシェルミキサー、FM20C/I(容量20L)や(株)カワタ製スーパーミキサー、SMV−20(容量20L)を用いることができる。
【0037】
回転羽根は、通常、上羽根と下羽根の2枚構成、あるいは上羽根、中間羽根、下羽根の3枚構成であるが、その枚数に制約はない。また、羽根の形状に制約はないが、たとえば上羽根には混練用タイプ、下羽根には高循環・高負荷用、中間羽根を使用する場合は溶融液用を用いる。
【0038】
第1工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。
【0039】
第1工程における処理は、セルロース繊維集合体の解繊を充分に行うことができればよく、例えば、セルロース繊維集合体が綿状に変化したことが目視にて確認できた時点を第1工程の処理の終了とすることができる。回転羽根の平均周速と攪拌時間は、セルロース繊維集合体の種類、形状、大きさ、投入量等により変化するものであるため、前記したように綿状に変化した時点を基準とすることが好適である。
【0040】
この第1工程の処理法を適用して解繊されたセルロース繊維を、そのまま本発明の(B)成分として用いることができるが、更に以下の工程の処理をすることもできる。
【0041】
〔第2工程〕
第2工程において、前記ミキサー内に熱可塑性樹脂を入れた後に攪拌することで、発生した摩擦熱により前記熱可塑性樹脂を溶融させて、解繊されたセルロース繊維に熱可塑性樹脂が付着した混合物を得る。第1工程と第2工程は、ミキサーの攪拌を停止することなく、連続した1つの工程にすることができる。
【0042】
この工程で用いる熱可塑性樹脂は、上記した(A)成分と同じものを用いることができる。(B)成分の製造時に(A)成分と同じものを用いた場合には、組成物中における(A)成分の含有量には、(B)成分に含まれる熱可塑性樹脂の量も含まれることになる。
【0043】
第1工程において、ミキサー内にてセルロース繊維集合体が解繊されているため、そこに所要量の熱可塑性樹脂を投入し、高速攪拌する。この高速攪拌により、摩擦熱が発生してミキサー内が昇温するため、熱可塑性樹脂が溶融し、解繊されたセルロース繊維に付着して、セルロース繊維と熱可塑性樹脂との混合物が得られる。
【0044】
なお、第2工程では、熱可塑性樹脂と共に少量の酸化剤を添加することができる。本発明の第1及び第2洗浄用樹脂組成物をセラミックス粉末とバインダー樹脂を混練して成形するための成形加工機の洗浄用として適用した場合には、洗浄後の成形加工機内に解繊されたセルロース繊維が残留する可能性がある。このようにセルロース繊維が残留していると、成形加工機にセラミックス粉末とバインダー樹脂を投入したとき、それらにセルロース繊維が混入する可能性がある。
【0045】
酸化物系のセラミックスであれば、成形後の焼結工程において酸素雰囲気で加熱されるため、混入したセルロース繊維も燃焼除去されることになるが、窒化物系や炭化物系のセラミックスの場合には、非酸素雰囲気で加熱されるため、燃焼除去されずに成形体中に残存するおそれがある。よって、第2工程において熱可塑性樹脂と共に酸化剤を添加して、セルロース繊維、熱可塑性樹脂、酸化剤が一体化された(B)成分を含む洗浄剤組成物として、成形加工機内にセルロース繊維に付着した状態で酸化剤を残留させることで、非酸素雰囲気で加熱した場合でも、セルロース繊維を燃焼除去できるようになる。
【0046】
第2工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。攪拌を継続するとミキサー内の温度が上昇し続け、モーターの動力が上昇する。この動力の上昇及びミキサー内の温度に応じて攪拌速度を徐々にあるいは一気に減速して回転数を低下させることが好ましく、平均周速が前記範囲になるようにする。
【0047】
この状態で撹拌を継続した場合、再び動力が上昇するので、連結する次の第3工程で使用する冷却ミキサーに混合物を排出する。このとき、この混合物では、解繊されたセルロース繊維が熱可塑性樹脂中にほぼ均一に付着している。
【0048】
第2工程では、ミキサー内の昇温を補助して、セルロース繊維と熱可塑性樹脂との混合物の製造を容易にするため、加温手段により、ミキサーを加温することもできる。このときの温度は120〜140℃程度が好ましい。
【0049】
セルロース繊維と熱可塑性樹脂の総量は、ミキサーの容量等に応じて設定する。セルロース繊維と熱可塑性樹脂の比率は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、セルロース繊維5〜500質量部が好ましく、より好ましくは7〜450質量部、更に好ましくは10〜400質量部である。
【0050】
特に、セルロース繊維の配合比率を多くする場合、例えば、樹脂100質量部に対しセルロース繊維を67質量部超えて配合する場合は、熱可塑性樹脂として粘度が低いものを用いることが望ましい。
【0051】
例えば、ポリプロピレンを用いる場合、そのメルトフローレートは、温度230℃、荷重21、6Nの条件下、20〜200g/10分のものが好ましく、ポリエチレンを用いる場合、そのメルトフローレートは、温度190℃、荷重21、6Nの条件下、10〜200g/10分のものが好ましい。
【0052】
例えば、ABS樹脂を用いる場合、そのメルトフローレートは、温度220℃、荷重100Nの条件下、10〜200g/10分のものが好ましく、ポリスチレンを用いる場合、温度200℃、荷重50Nの条件下、5〜100g/10分のものが好ましい。
【0053】
〔第3工程〕
第3工程において、第2工程で得られた混合物を冷却しながら低速攪拌する。この工程の処理により、前記混合物を固化する(固化により造粒する)。第3工程では、ミキサーの冷却効率を高めるため、第1工程と第2工程で用いたミキサーとは別のミキサー(好ましくは冷却手段を有しているもの)を用いることが好ましい。
【0054】
第3工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が1〜30m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が2〜25m/秒、更に好ましくは平均周速が3〜25m/秒で攪拌する。第3工程の攪拌速度は、第1工程及び第2工程の攪拌速度よりも小さい。
【0055】
第3工程における処理は、セルロース繊維と熱可塑性樹脂との混合物が、成形用の材料として取り扱いできる程度に固化された時点を第3工程の処理の終了とすることができる。なお、摩擦熱の発生により、ミキサー内の温度が上がりすぎると一旦固化された熱可塑性樹脂が再溶融してしまうため、第3工程においても、ミキサー内の温度を管理することが好ましい。
【0056】
このような処理により、セルロース繊維と熱可塑性樹脂を含む固化物(造粒物)が得られ、これを(B)成分として用いることができるほか、(A)成分と(B)成分の両方を含む成分として用いることもできる。
【0057】
(2)第2の解繊方法
〔第1工程〕
第1工程において、セルロース繊維集合体を解繊機により解繊して、綿状のセルロース繊維を得る。
【0058】
解繊機は、セルロース繊維集合体に対して機械的に作用することで解して、綿状のセルロース繊維(多数本のセルロース繊維が絡み合って、綿状になっているもの)にすることができるものであればよい。解繊機は、乾式による解繊方式を採用するものが好ましく、市販されている古紙等の解繊に用いるものを挙げることができる。このような解繊機としては、(株)瑞光製の解繊機(Model FF-270,FF-280,FF-290)、池上機械(株)製のリサイクルブレーカーRB-100、石川県創造化開発共同組合製の古紙解繊機、西日本技術開発(有)製の小型乾式解繊機「ファイバライザ」、ターボ工業(株)のターボミル等を挙げることができる。
【0059】
第1工程における処理は、セルロース繊維集合体の解繊を充分に行うことができればよく、例えば、セルロース繊維集合体が綿状に変化したことが目視にて確認できた時点を第1工程の処理の終了とすることができる。回転羽根の平均周速と攪拌時間は、セルロース繊維集合体の種類、形状、大きさ、投入量等により変化するものであるため、前記したように綿状に変化した時点を基準とすることが好適である。
【0060】
この第1工程の処理法を適用して解繊されたセルロース繊維を、そのまま本発明の(B)成分として用いることができるが、更に以下の工程の処理をすることもできる。
【0061】
第1工程に続いて、上記した第1の解繊方法の第2工程と第3工程の処理をすることで、セルロース繊維と熱可塑性樹脂を含む固化物(造粒物)が得られ、これを(B)成分として用いることができるほか、(A)成分と(B)成分の両方を含む成分として用いることもできる。
【0062】
(3)第3の解繊方法
〔第1工程〕
第1工程において、攪拌手段として回転羽根を有するミキサー中にセルロース繊維集合体を入れ、高速攪拌することにより、前記セルロース繊維集合体を解繊する。
【0063】
本発明で用いるセルロース繊維集合体は、棒状のパルプシートである。「棒状」とは、細長い形状で、単なる1枚のシートよりも強度の大きなものを意味する。棒状のパルプシートとしては、例えば、
(I)パルプシートを1回巻き又は2回巻き以上(好ましくは2〜5回巻き)丸めて筒状
にしたもの、
(II)パルプシートを1巻き又は2巻き以上丸めて筒状にした後、半径方向に押し潰して細長い板状にしたもの、
(III)パルプシートを交互に異なる方向になるように1回又は複数回(好ましくは2〜10回)折り畳んで細長い板状にしたもの、
(IV)パルプシートを同一方向に1回又は複数回(好ましくは2〜10回)折り畳んで細長い板状にしたもの、(V)パルプシートをランダムな方向に1回又は複数回(好ましくは2〜10回)折り畳んで細長い板状にしたもの、等を用いることができる。
【0064】
パルプシートの形状は特に制限されるものではなく、上記(I)〜(V)の形態にできるものであればよく、長方形、正方形、円、扇形、三角形、五角形以上の多角形等のものを用いることができる。
【0065】
パルプシートは、例えば、厚さが0.1〜5mm、好ましくは1〜3mm、幅10〜50cm、長さ60〜100cm程度のものを用いることができる。
【0066】
パルプシートは、JIS P8112,P8131に記載された方法(ミューレン破裂強さ試験機を使用)により測定される破裂強さが0.5〜10.0kPa・m2/gの範囲であることが好ましい。この範囲内であると、上記した(I)〜(V)の方法を適用して、棒状のパルプシートを得ることができる。なお、引張強度が上記の下限値未満であっても、巻き回数や折り畳み回数をより多くすればよい。
【0067】
(I)の筒状形態のものは、例えば、図1(a)、(b)に示すようにして筒状に巻かれたものである。図1では、パルプシートが2回半巻かれた状態を示している。これを押し潰したものが(II)の板状形態のものになる。
【0068】
(III)の板状形態のものは、例えば、図2(a)、(b)に示すようにして、パルプシートを交互に異なる方向になるように折り畳んで、細長い板状にしたもの(即ち、蛇腹状に折り畳んだもの)である。図2(c)は、(IV)の板状形態に相当する、同じ方向に折り畳まれたものを示している。
【0069】
棒状のパルプシートは、上記(I)〜(V)の筒状又は板状のパルプシートと同程度の強度を有しているものであれば、巻いたり、折り畳んだりすることなく、単に1枚のシートを切断しただけのものでもよい。
【0070】
棒状のパルプシートは、作業性を考慮すると、縦長さ/横幅(直径)の比率が3以上であることが好ましい。
【0071】
ミキサーは、攪拌手段として回転羽根を有するものであればよく、好ましくは加温手段を有しているものであり、例えば、三井鉱山(株)製ヘンシェルミキサー、FM20C/I(容量20L)や(株)カワタ製スーパーミキサー、SMV−20(容量20L)を用いることができる。
【0072】
回転羽根は、通常、上羽根と下羽根の2枚構成、あるいは上羽根、中間羽根、下羽根の3枚構成であるが、その枚数に制約はない。また、羽根の形状に制約はないが、たとえば上羽根には混練用タイプ、下羽根には高循環・高負荷用、中間羽根を使用する場合は溶融液用を用いる。
【0073】
第1工程では、攪拌時の回転羽根の平均周速が10〜100m/秒の範囲で攪拌することが好ましく、より好ましくは平均周速が10〜90m/秒、更に好ましくは平均周速が10〜80m/秒で攪拌する。
【0074】
第1工程では、図3に示すようにして、パルプシートを棒状にしたものと、ミキサーの羽根とのなす角度が所定範囲になるようにして解繊する。図3は、棒状のパルプシートとミキサーの羽根との接触状態を説明するためのものであり、ミキサーの構造を説明するためのものではない。
【0075】
第1工程では、図3に示す棒状のパルプシート1の中心線と、ミキサー10の羽根11の中心線(又は回転状態の羽根11により生じる円形回転面の表面)とのなす角度αは、45〜90°であり、好ましくは60〜90°、より好ましくは75〜90°であり、90°かそれに近似した角度であることが更に好ましい。なお、上記したとおり、ミキサーが上羽根と下羽根の2枚構成、あるいは上羽根、中間羽根、下羽根の3枚構成であるとき、少なくとも最初に接触する上羽根とのなす角度αが上記範囲を満たしていればよい。
【0076】
第1工程では、図3に示す状態にて棒状のパルプシート1の端部(羽根11から遠い方の端部)を機械的又は人為的に固定しておき、解繊の進行と共に、上記した所定角度αを維持したまま、回転状態の羽根11に向かって棒状のパルプシート1を押し込んでいく。そして、棒状のパルプシート1の固定端部が回転状態の羽根11に近づいたとき、固定状態を解放する。このようにして解繊するとき、羽根11の回転圧力により、棒状のパルプシート1の先端の解繊部分(接触部分)も振動するため、上記の角度αも多少変動する可能性があるが、角度αの変動範囲は、初期の設定角度αから±10°程度の範囲であればよい。
【0077】
第1工程における処理は、セルロース繊維集合体の解繊を充分に行うことができればよく、例えば、セルロース繊維集合体が綿状に変化したことが目視にて確認できた時点を第1工程の処理の終了とすることができる。回転羽根の平均周速と攪拌時間は、セルロース繊維集合体の種類、形状、大きさ、投入量等により変化するものであるため、前記したように綿状に変化した時点を基準とすることが好適である。
【0078】
このような第1工程の解繊法を適用することにより、例えば、特開2007−84713公報の発明のように、パルプシートをそのままミキサーで解繊した場合と比べると、より解繊状態が向上され、熱可塑性樹脂と混合した場合の分散性も向上される。
【0079】
この第1工程の処理法を適用して解繊されたセルロース繊維を、そのまま本発明の(B)成分として用いることができるが、更に以下の工程の処理をすることもできる。
【0080】
第1工程に続いて、上記した第1の解繊方法の第2工程と第3工程の処理をすることで、セルロース繊維と熱可塑性樹脂を含む固化物(造粒物)が得られ、これを(B)成分として用いることができるほか、(A)成分と(B)成分の両方を含む成分として用いることもできる。
【0081】
〔無機充填剤〕
無機充填剤としては、ガラス繊維、金属繊維、溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、人造鉱物繊維から選ばれるものを挙げることができ、繊維状のもの、非繊維状のもの(粉末状、粒状、破砕物等)を用いることができる。
【0082】
ガラス繊維や金属繊維は公知のものを用いることができる。ガラス繊維としては、例えば日本電気硝子(株)、日本板硝子(株)、日東紡績(株)のプラスチック用ガラス繊維メーカーで製造されているものが入手可能である。これらは、繊維を束ねるための集束剤、及び樹脂との密着性を向上させるためのカップリング剤が配合されているが、必要に応じて、ガラス繊維の樹脂からの脱落を防止したり、洗浄用樹脂組成物の加工性を向上する目的でカップリング剤を増量したりしてもよい。これら集束剤及びカップリング剤は、高温での熱安定性の高いものがより好ましい。また、繊維径が5〜16μm、繊維長が0.5〜12mmのものが好ましい。
【0083】
溶融スラグは、焼却灰等の廃棄物を燃焼熱や電気から得られた熱エネルギー等により、高温(1200℃以上)で加熱、燃焼させ、無機物を溶融させた後に冷却したガラス質の固化物である。溶融スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0084】
溶融スラグの平均粒径(球に換算したときの平均粒径)は、1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが更に好ましい。
【0085】
鉄鋼スラグは、鉄鋼製造工程において副産物として生成されるもので、高炉スラグと製鋼スラグに分けることができる。高炉スラグと製鋼スラグは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。高炉スラグと製鋼スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0086】
高炉スラグは、冷却方法により、徐冷スラグ(徐冷処理したもの)と水砕スラグ(急冷処理したもの)に分けることができる。徐冷スラグと水砕スラグは、単独で用いてもよいし、併用してもよい。徐冷スラグと水砕スラグは、必要に応じて破砕したものを用いることができる。
【0087】
高炉スラグと製鋼スラグ(徐冷スラグ、水砕スラグ)の平均粒径(球に換算したときの平均粒径)は、1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、5〜50μmが更に好ましい。
【0088】
人造鉱物繊維としては、ロックウール(岩綿)、スラグウール(鉱さい綿)から選ばれるものを用いることができる。
【0089】
ロックウールは、玄武岩その他の天然鉱物などを主原料として、キュポラや電気炉で1,500〜1,600℃の高温で溶融するか、又は高炉から出たのち、同程度の高温に保温した溶融スラグを炉底から流出させ、遠心力などで吹き飛ばして繊維状にした人造鉱物繊維である。なお、けい酸分と酸化カルシウム分を主成分とする高炉スラグを原料としたものもロックウールとする場合もある。
【0090】
スラグウールは、けい酸分と酸化カルシウム分を主成分とする高炉スラグを原料としてロックウールと同様にして製造したもの人造鉱物繊維である。
【0091】
人造鉱物繊維の平均繊維長Lは、1〜5,000μmが好ましく、1〜1,000μmがより好ましく、5〜500μmが更に好ましい。
【0092】
人造鉱物繊維の平均繊維径Dは、1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、2〜7μmが更に好ましい。
【0093】
人造鉱物繊維の平均繊維長Lと平均繊維径Dとの比L/Dは、1〜1000が好ましく、1〜100がより好ましく、2〜80が更に好ましい。
【0094】
ウォラストナイトは公知のものを用いることができ、例えば、平均繊維長が1000μm以下で、平均繊維径が5〜20μmのものを挙げることができる。
【0095】
本発明の第2洗浄用樹脂組成物中の(B)成分の含有量は5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜60質量%が更に好ましい。なお、(B)成分として解繊されたセルロース繊維集合体に(A)成分と同じ熱可塑性樹脂が付着一体化されたものを用いる場合には、前記熱可塑性樹脂は(A)成分として換算する。
【0096】
<(C)成分>
(C)成分は、可塑剤とセルロースエステルの混合物であり、好ましくは可塑剤とセルロースエステルからなる所望形状の成形体であり、具体的には実施例に記載の方法で製造することができる。このような混合物乃至は成形体にすることで、組成物中において可塑剤を安定に配合することができ、可塑剤の含有量を高めることができるので、成形加工機内の残留物の除去性も高めることができる。
【0097】
可塑剤は、樹脂分野で汎用されている公知のものを用いることができ、例えば、リン酸エステル、カルボン酸エステル類[芳香族カルボン酸エステル、脂肪酸エステル、多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等)の低級脂肪酸エステル(トリアセチン(TA)、ジグリセリンテトラアセテート等)、グリコールエステル(ジプロピレングリコールジベンゾエート等)、クエン酸エステル(クエン酸アセチルトリブチル(OACTB)等)等]、アミド類[例えば、N−ブチルベンゼンスルホンアミド(BM−4)等のスルホンアミド]、エステルオリゴマー(カプロラクトンオリゴマー等)等が挙げられる。
【0098】
リン酸エステルとしては、脂肪族リン酸エステル[例えば、リン酸トリアルキルエステル(リン酸トリエチル、リン酸トリブチル等のリン酸トリC1-12アルキルエステル)、リン酸トリアルコキシアルキルエステル(例えば、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸トリC1-6アルコキシC1-12アルキルエステル)等]、芳香族リン酸エステル[リン酸アルキルジアリールエステル(例えば、リン酸オクチルジフェニル、リン酸2−エチルヘキシルジフェニル等のリン酸C1-20アルキル−ジC6-15アリールエステル、好ましくはリン酸C1-12アルキル−ジC6-10アリールエステル)、リン酸トリアリールエステル(例えば、リン酸トリフェニル(TPP)、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸クレジル−2,6−ジ(キシレニル)等のリン酸トリC6-15アリールエステル、好ましくはリン酸トリC6-10アリールエステル等)等]、縮合リン酸エステル{例えば、ジヒドロキシアレーン−ビス(ジアリールホスフェート)[例えば、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシノールビス(ジキシリルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジクレジルホスフェート)、ハイドロキノンビス(ジキシリルホスフェート)等のジヒドロキシC6-10アレーン−ビス(ジC6-10アリールホスフェート)等]、ビフェノールホスフェート[例えば、ビフェノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビフェノールビス(ジクレジルホスフェート)、ビフェノールビス(ジキシリルホスフェート)等]、ジ(ヒドロキシアリール)アルカン−ビス(ジアリールホスフェート)[例えば、ビスフェノール−Aビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Aビス(ジキシリルホスフェート)等のジ(ヒドロキシC6-10アリール)C1-6アルカン−ビス(ジC6-10アリールホスフェート)等]、ビスフェノール−Sビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−Sビス(ジクレジルホスフェート)、ビスフェノール−Sビス(ジキシリルホスフェート)等}等が挙げられる。
【0099】
芳香族カルボン酸エステルとしては、芳香族ポリカルボン酸エステル、例えば、芳香族ジカルボン酸エステル[例えば、フタル酸ジアルキルエステル(例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)等のフタル酸ジC1-12アルキルエステル等)、フタル酸ジ(アルコキシアルキル)エステル(例えば、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸C1-6アルコキシC1-12アルキルエステル等)、フタル酸アルキル−アラルキルエステル(例えば、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸C1-12アルキル−(C6-10アリール−C1-4アルキル)エステル等)、アルキルフタリルアルキレングリコレート(例えば、エチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレート等のC1-6アルキルフタリルC2-4アルキレングリコレート等)等のフタル酸エステル等]、芳香族トリカルボン酸エステル(例えば、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル(TOTM)等のトリメリット酸トリC1-12アルキルエステル)、芳香族テトラカルボン酸エステル(例えば、ピロメリット酸テトラオクチル等のピロメリット酸テトラC1-12アルキルエステル等)が挙げられる。
【0100】
脂肪酸エステル(脂肪族カルボン酸エステル)としては、脂肪族ジカルボン酸エステル(例えば、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(BXA)等のアジピン酸エステル、アゼライン酸ジエチル、アゼライン酸ジブチル、アゼライン酸ジオクチル等のアゼライン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル等のC6-12ジカルボン酸C1-12アルキルエステル)、不飽和脂肪酸エステル(オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル等のC8-30アルケンカルボン酸−C1-12アルキルエステル等)等が挙げられる。
【0101】
セルロースエステルとしては、例えば、セルロース有機酸エステル[セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のセルロースC2-6カルボン酸エステル]、前記有機酸エステルの誘導体(ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート等のグラフト体等)、セルロース有機酸エステル・エーテル類(アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース等のC2-6アシルセルロースC1-6アルキルエーテル、アセチルヒドロキシエチルセルロース、アセチルヒドロキシプロピルセルロース等のC2-6アシルセルロースヒドロキシC2-6アルキルエーテル等)、セルロース無機酸エステル(硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等)、セルロース有機酸・無機酸混合エステル(硝酸酢酸セルロース等)等が挙げられる。これらのセルロースエステルは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0102】
(C)成分中の可塑剤の含有量は、好ましくは20〜50質量%、より好ましくは25〜40質量%、更に好ましくは30〜40質量%であり、セルロースエステルの含有量は、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは60〜75質量%、更に好ましくは60〜70質量%である。
【0103】
第1洗浄用樹脂組成物中における(B)成分と(C)成分の含有量は、(B)成分は3〜60質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましく、(C)成分は40〜97質量%が好ましく、50〜95質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。(B)成分が(C)成分と同じセルロースロースエステルを含むときは、前記セルロースロースエステルは(C)成分として換算する。
【0104】
第2洗浄用樹脂組成物中における(C)成分の含有量は、(A)及び(B)成分の合計量100質量部に対して3〜150質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、10〜80質量部が更に好ましい。
【0105】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、必要に応じて、(D)成分のアニオン界面活性剤を含有することができる。
【0106】
(D)成分のアニオン界面活性剤は、洗浄性及び排出性を向上させるための成分であって、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、炭素数8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩類、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0107】
アニオン界面活性剤としては、特にアルカンスルホン酸又はその塩を50質量%以上含む陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0108】
アルカンスルホン酸又はその塩は、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。一般式(1)中のnは平均値であるから、一般式(1)で表されるものは炭素数の異なるものの混合物となる。(D)成分として用いるアルカンスルホン酸又はその塩は、自己排出性の発現に寄与する。
【0109】
【化1】

【0110】
〔式中、mは平均で5〜30の数、nは0〜30、n≦m、Mは、好ましくはH、Na、K、Mg、Caを示す。〕
【0111】
アルカンスルホン酸又はその塩以外の陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、炭素数8〜20のα−オレフィンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルフォ脂肪酸塩、α−スルフォ脂肪酸エステル、炭素数が12〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0112】
(D)成分中のアルカンスルホン酸又はその塩の含有量は50質量%以上、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは99〜100質量%である。
【0113】
(D)成分のアニオン系界面活性剤の含有量は、第1洗浄用樹脂組成物の場合は(B)成分100質量部に対して、第2洗浄用樹脂組成物の場合は(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。配合量が20重量部を超えると(A)成分のポリオレフィン樹脂と混じり合わず、0.1重量部未満である洗浄性及び排出性の効果が低くなる。
【0114】
<その他の成分>
本発明の洗浄用樹脂組成物は、必要に応じて、更に(E)アルキレングリコール脂肪酸エステル、(F)有機燐化合物、(G)多価アルコール、(H)金属石鹸から選ばれるものを含有することができる。
【0115】
(E)成分のアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等のアルキレングリコールと炭素数12〜22の脂肪酸のエステル化合物を挙げることができる。
【0116】
(F)成分の有機燐化合物としては、燐原子に結合するエステル性酸素原子を1つ以上有するものが好ましい。(F)成分は、焦げに対して高い溶解力を有しているため、特に異物除去性の発現に寄与する成分である。
【0117】
(G)成分の多価アルコールは、複数個のヒドロキシル基が結合している非環式及び環式化合物である。かかる(G)成分としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ペンチトール類(アドニトール、アラビトール等)、ヘキシトール類(ズルシトール、イノシトール等)、サッカリド類(アミロース、キシラン等)及びこれらの誘導体(N−メチルグルカミン等)等から選ばれる1又は2以上を挙げることができる。
【0118】
(H)成分の金属石鹸としては、炭素数6〜22の脂肪酸と金属(Mg,Li,Zn,Ca,Al,Sn等)の塩が好ましい。
【0119】
本発明の洗浄用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を溶融混練して成形するための成形加工機の洗浄用、セラミックス粉末とバインダー樹脂を混練して成形するための成形加工機の洗浄用として適用することができる。本発明の洗浄用樹脂組成物の洗浄対象となる成形加工機は、各種樹脂の成形加工において加熱状態で混合乃至は混練するもの全てであり、バンバリミキサー、ヘシェルミキサー、ニーダー等の混合機、射出成形機、押出成形機等の成形機を含む。
【0120】
本発明の洗浄用樹脂組成物を、熱可塑性樹脂を溶融混練して成形するための成形加工機の洗浄用として適用する場合には、洗浄性能を高めるため、(B)成分として、セルロース繊維等の有機繊維、ガラス繊維、人造鉱物繊維、金属繊維及びウォラストナイト等の無機充填剤を含有させることが好ましい。
【0121】
本発明の洗浄用樹脂組成物をセラミックス粉末とバインダー樹脂を混練して成形するための成形加工機の洗浄用として適用する場合には、セラミックス材料の不純物となるような成分を実質的に含有しないことが望ましい。このため、(B)成分としては有機繊維を配合し、上記したガラス繊維、人造鉱物繊維、金属繊維及びウォラストナイト等の無機充填剤、他の無機化合物や金属も配合しない。前記の「実質的に含有しない」とは、組成物中の無機化合物や金属の含有量が1質量%以下であることを意味し、前記含有量は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%であり、0質量%であることが特に好ましい。
【0122】
本発明の第1洗浄用樹脂組成物は、(B)成分の有機繊維及び/又は無機充填剤(可塑剤を含むセルロースエステルが付着一体化されていないもの)と(C)成分を下記の方法で混合する方法(実施例8〜10の方法)、(B)成分の有機繊維及び/又は無機充填剤と可塑剤を含むセルロースエステルが付着一体化されたものと(C)成分を下記の方法で混合する方法を適用して製造することができる。
【0123】
本発明の第2洗浄用樹脂組成物は、上記各成分を、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、ニーダー等の混合機で予備混合した後、押出機で混練したり、加熱ロール、バンバリーミキサーで溶融混練したりすることによって製造する。
【0124】
<成形加工機の洗浄方法>
本発明の洗浄方法としては、
(i)成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に第1洗浄用樹脂組成物又は第2洗浄用樹脂組成物を投入する方法、
(ii)成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に洗浄用樹脂組成物中の(B)成分又は(A)成分及び(B)成分を投入した後、(C)成分を投入する方法、のいずれかの方法を適用できる。(i)の洗浄方法に代えて(ii)の洗浄方法を適用した場合でも、実質的に洗浄用樹脂組成物を用いて洗浄した場合と同等の効果を得ることができる。
【0125】
本発明の洗浄用樹脂組成物を用いて成形加工機を洗浄するときには、成形加工機を加熱した状態で前記組成物を添加する方法を適用する。前記加熱温度は含有成分により、適宜調整する。例えば、(B)成分としてセルロース繊維を含有しているときは、200℃程度以下にて加熱することができる。
【0126】
本発明の洗浄用樹脂組成物を用いてセラミックス粉末とバインダー樹脂を混練して成形するための成形加工機を洗浄した後、窒化物系又は炭化物系のセラミックス粉末とバインダー樹脂を混練して成形するときには、セラミックス粉末とバインダー樹脂と共に酸化剤を配合して混練成形することができる。窒化物系又は炭化物系のセラミックスは、非酸素雰囲気(窒素雰囲気等)で焼結するが、洗浄用樹脂組成物に含まれていたセルロース繊維が成形加工機内に残留し、それが成形体に混入した場合には、燃焼されずに残留してしまうことになる。しかし、原料中に酸化剤を混入させておくことにより、非酸素雰囲気中で焼結した場合でも、残留するセルロース繊維を燃焼除去できるようにすることができる。
【0127】
本発明の洗浄用樹脂組成物を用いて成形加工機を洗浄すると、(i)及び(ii)のいずれの洗浄方法であっても、(B)成分による掻き取り作用によって高い洗浄性が発揮され、(C)成分による残留物の除去作用によって成形加工機を分解掃除するときの作業性が向上される。
【実施例】
【0128】
製造例B−1〔(B-1)成分の製造〕
〔第1工程〕
ヒーターミキサー(上羽根:混練用タイプ、下羽根:高循環・高負荷用,ヒーター及び温度計付き,容量20L,品名ヘンシェルミキサーFM20C/I,三井鉱山(株)製)を140℃に加温し、表1に示す各種セルロース繊維品を投入し、平均周速50m/秒で攪拌した。約2分経過時点において、セルロース繊維品が綿状に変化した。
【0129】
〔第2工程〕
引き続き、ヒーターミキサー内にポリプロピレンを投入した後、平均周速50m/秒で攪拌を続けた。このときのモーターの動力は2.5kWであった。ミキサーの温度が120℃に達した時に、MPPを投入し攪拌を続けた。
【0130】
約10分経過時点において、動力が上がり始めた。更に1分後、動力は4kWに上昇したので、周速を25m/secの低速に落とした。更に、低速の撹拌の継続により、動力が再度上昇し始めた。低速回転開始1分30秒後、電流値は5kWに達したので、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサーに排出した。
【0131】
〔第3工程〕
冷却ミキサー〔回転羽根:冷却用標準羽根,水冷手段(20℃)及び温度計付き,容量45L,品名クーラーミキサーFD20C/K,三井鉱山(株)製〕平均周速10m/秒で攪拌を開始し、ミキサー内の温度が80℃になった時点で攪拌を終了した。第3工程の処理により、セルロース繊維とポリプロピレンの混合物は固化して、表1に示す組成の直径が数mmから2cm程度の造粒物が得られた。
【0132】
製造例B−2〔(B-2)成分の製造〕
〔第1工程〕
解繊機(ターボ工業株式会社;ターボミル T−250)内に表1に示す各種セルロース繊維品を投入し、解繊した。目視上は、きれいに完全に解繊されていることを確認した。運転条件は、8300rpmで実施。処理能力は、約20kg/hであった。
【0133】
〔第2工程〕
引き続き、ヒーターミキサー内にポリプロピレンを投入した後、平均周速50m/秒で攪拌を続けた。このときのモーターの動力は2.5kWであった。ミキサーの温度が120℃に達した時に、MPPを投入し攪拌を続けた。
【0134】
約10分経過時点において、動力が上がり始めた。更に1分後、動力は4kWに上昇したので、周速を25m/secの低速に落とした。更に、低速の撹拌の継続により、動力が再度上昇し始めた。低速回転開始1分30秒後、電流値は5kWに達したので、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサーに排出した。
【0135】
〔第3工程〕
冷却ミキサー〔回転羽根:冷却用標準羽根,水冷手段(20℃)及び温度計付き,容量45L,品名クーラーミキサーFD20C/K,三井鉱山(株)製〕平均周速10m/秒で攪拌を開始し、ミキサー内の温度が80℃になった時点で攪拌を終了した。第3工程の処理により、セルロース繊維とポリプロピレンの混合物は固化して、表1に示す組成の直径が数mmから2cm程度の造粒物が得られた。
【0136】
製造例B−3〔(B-3)成分の製造〕
〔第1工程〕
ヒーターミキサー(上羽根:混練用タイプ、下羽根:高循環・高負荷用,ヒーター及び温度計付き,容量200L)を140℃に加温し、表1に示す棒状のパルプシートを所定角度αにてミキサーに投入し(図3参照)、平均周速50m/秒で攪拌した。約3分経過時点において、棒状のパルプシートが綿状に変化した。
【0137】
〔第2工程〕
引き続き、ヒーターミキサー内にポリプロピレンを投入した後、平均周速50m/秒で攪拌を続けた。このときのモーターの電流値は30Aであった。ミキサーの温度が120℃に達した時に、MPPを投入し攪拌を続けた。
【0138】
約10分経過時点において、動力が上がり始めた。更に1分後、電流値が50Aに上昇したので、周速を25m/secの低速に落とした。更に、低速の撹拌の継続により、動力が再度上昇し始めた。低速回転開始1分30秒後、電流値が60Aに達したので、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサーに排出した。
【0139】
〔第3工程〕
冷却ミキサー〔回転羽根:冷却用標準羽根,水冷手段(20℃)及び温度計付き,容量500L〕平均周速10m/秒で攪拌を開始し、ミキサー内の温度が80℃になった時点で攪拌を終了した。第3工程の処理により、セルロース繊維とポリプロピレンの混合物は固化して、表1に示す組成の直径が数mmから2cm程度の造粒物が得られた。
【0140】
【表1】

【0141】
製造例C−1、C−2、C−3〔(C−1)〜(C−3)成分の製造〕
表2に示す割合の酢酸セルロース(ダイセル化学工業(株)製の酢酸セルロース「L-20」)と可塑剤としてフタル酸ジエチルを用いて、次の方法にて(C)成分を製造した。
【0142】
酢酸セルロースとフタル酸ジエチルをヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製,1M20B)で乾式混合した後、乾燥機にて70℃で1昼夜予備乾燥した。予備乾燥後、二軸押出機(池貝機販(株)製のPCM30)を用いて、シリンダー温度200℃、ダイス温度220℃、スクリュー回転速度100r/mで溶融押出し、ペレットを得た。
【0143】
【表2】

【0144】
実施例1〜7、比較例1〜4
表4に示す成分のうち、(A)、(B)、(D)、(E)成分をタンブラーで混合後、押出機にて溶融混練してペレットを得た。このペレットと(C)成分をタンブラーで乾式混合して、第2洗浄用樹脂組成物を得た。これらの組成物を使用し、下記の方法で洗浄試験を行った。実施例、比較例における使用成分、材料、及び測定方法は下記のとおりである。結果を表3に示す。
【0145】
(A)成分
ポリプロピレン(J139,(株)プライムポリマー製)
酸変性ポリプロピレン(MPP)(三洋化成工業(株)製,ユーメックス1010)
(B)成分
セルロース繊維(上記製造例B−1〜B−3で製造したもの)
ガラス繊維:日本電気硝子(株)ECS-03-T-120
ウォラストナイト:関西マテック(株)KGP-Y40
ロックウール:日本ロックウール(株)エスファイバーFF120
(C)成分
上記製造例C−1〜C−2で製造したもの。
(D)成分
α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(商品名ルポランPB-800,ライオン(株)製)
(E)成分
プロピレングリコールモノベヘネート(商品名リケマールPB-100,理研ビタミン(株)製)
(F)成分
ガラス繊維:日本電気硝子(株)のECS-03-T-120。
【0146】
(1)洗浄性の評価
射出成形機(三菱重工業(株)製「三菱射出成形機265/100MSII」)を用い、成形温度175℃で下記の先行樹脂1kgを流した。その後、表1の各組成物を流して、黒色が消えるまでの使用量(kg)により、洗浄性を評価した。
【0147】
(先行樹脂)
ポリプロピレン(J139,(株)プライムポリマー製)に対して1質量%濃度となるようにカーボンブラックを添加したものを用いた。
【0148】
(2)残留物の除去性
(1)の洗浄性の評価後、射出成形機からスクリューを抜き出し、スクリューに付着した残留物(実質的に洗浄用樹脂組成物の残留物)を作業員が金属へらを使って除去した。そのときの除去作業性を下記の基準で評価した。
◎:保護手袋をはめた手で容易に取り除くことができた
○:金属へらで容易に取り除くことができた
×:金属へらでは取り除くことが困難であった
【表3】

実施例1〜7の第2洗浄用樹脂組成物は、金属へらを使わずに作業員が保護手袋をした手指のみでも容易に残留物の除去ができた。
【0149】
実施例8〜10、比較例5、6
以下の方法により、表3に示す実施例8〜10の第1洗浄用樹脂組成物を得た。
【0150】
〔第1工程〕
ヒーターミキサー(上羽根:混練用タイプ、下羽根:高循環・高負荷用,ヒーター及び温度計付き,容量200L)を140℃に加温し、表1に示す棒状のパルプシートを所定角度αにてミキサーに投入し(図3参照)、平均周速50m/秒で攪拌した。約3分経過時点において、棒状のパルプシートが綿状に変化した。
【0151】
〔第2工程〕
引き続き、ヒーターミキサー内に(C−2)成分又は(C−3)成分を投入した後、平均周速50m/秒で攪拌を続けた。このときのモーターの電流値は30Aであった。
【0152】
約10分経過時点において、動力が上がり始めた。更に1分後、電流値が50Aに上昇したので、周速を25m/secの低速に落とした。更に、低速の撹拌の継続により、動力が再度上昇し始めた。低速回転開始1分30秒後、電流値が60Aに達したので、ミキサーの排出口をあけ、接続する冷却ミキサーに排出した。
【0153】
〔第3工程〕
冷却ミキサー〔回転羽根:冷却用標準羽根,水冷手段(20℃)及び温度計付き,容量500L〕平均周速10m/秒で攪拌を開始し、ミキサー内の温度が80℃になった時点で攪拌を終了した。第3工程の処理により、セルロース繊維とポリプロピレンの混合物は固化して、表4に示す組成の直径が数mmから2cm程度の造粒物(第1洗浄用樹脂組成物)が得られた。
【0154】
これらの実施例8〜10、比較例5、6の組成物((C)成分のみ)を使用し、実施例1〜7と同様にして洗浄試験を行った。使用成分、材料、及び測定方法は実施例1〜7、比較例1〜4と同じである。結果を表4に示す。
【表4】

【0155】
実施例8〜10の第1洗浄用樹脂組成物は、実施例1〜7の第2洗浄用樹脂組成物と比べても、より容易に残留物の除去ができた。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】(a)は、セルロース繊維集合体の解繊(第3の解繊方法)の第1工程で使用する筒状のパルプシートの斜視図、(b)は(a)の平面図。
【図2】(a)は、セルロース繊維集合体の解繊(第3の解繊方法)の第1工程で使用する別形態の板状のパルプシートの斜視図、(b)は(a)の平面図、(c)は更に別形態の板状のパルプシートの平面図。
【図3】セルロース繊維集合体の解繊(第3の解繊方法)の第1工程の解繊方法を説明するための図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(B)有機繊維及び/又は無機充填剤と(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂、(B)有機繊維及び/又は無機充填剤、(C)可塑剤とセルロースエステルの混合物を含有する洗浄用樹脂組成物。
【請求項3】
(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維である請求項1又は2記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項4】
(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維であり、前記セルロース繊維とセルロースエステルが一体化されたものである、請求項1記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の有機繊維が、セルロース繊維集合体が解繊されたセルロース繊維であり、前記セルロース繊維と熱可塑性樹脂が一体化されたものである、請求項2記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分の無機充填剤が、ガラス繊維、金属繊維、溶融スラグ、鉄鋼スラグ又はこれらの破砕物、人造鉱物繊維及びウォラストナイトから選ばれるものである、請求項1又は2記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が可塑剤20〜50質量%、セルロースエステル50〜80質量%からなるものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項8】
組成物中における(C)成分中の可塑剤のみの含有量が、(A)及び(B)成分の合計量100質量部に対して3〜35質量部である、請求項1〜7のいずれか1項記載の洗浄用樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂やセラミックスを含む材料を成形加工するために用いる成形加工機の洗浄方法であって、
前記成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に請求項1記載の洗浄用樹脂組成物を投入するか、又は前記成形加工機内に請求項1記載の洗浄用樹脂組成物中の(B)成分を投入した後、(C)成分を投入する、成形加工機の洗浄方法。
【請求項10】
樹脂やセラミックスを含む材料を成形加工するために用いる成形加工機の洗浄方法であって、
前記成形加工機を加熱した状態にて、前記成形加工機内に請求項2記載の洗浄用樹脂組成物を投入するか、又は前記成形加工機内に請求項2記載の洗浄用樹脂組成物中の(A)成分及び(B)成分を投入した後、(C)成分を投入する、成形加工機の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197216(P2009−197216A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300627(P2008−300627)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】