説明

洗浄装置、および洗浄方法

【課題】輸送管内壁への酸化物の付着を低減できる洗浄装置を提供する。
【解決手段】対象物11に水素ラジカルを供給することによって前記対象物11を洗浄する洗浄装置27であって、加熱された触媒1に気体を供給することによって水素ラジカルを生成する生成手段と、前記生成手段から前記対象物11への気体の供給を制限可能な制限手段と、前記制限手段により気体の供給が制限された状態で、前記触媒1の周囲の気体を前記対象物11を介さずに排気可能な排気手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に水素ラジカルを供給することによって対象物を洗浄する洗浄装置、および洗浄方法に関する。また、このような洗浄装置を備えたリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置において、水素ラジカルを用いて装置の一部を洗浄する構成が特許文献1に記載されている。該文献において、水素含有ガスを加熱された触媒(例えば1500〜3000Kに加熱されたタングステン)に供給し、水素ラジカルを発生させることが記載されている。発生させた水素ラジカルは、配管および流量調整用のシャッタを介して洗浄すべき部分に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−184577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の洗浄装置において、触媒を加熱したときに触媒表面の酸化物が蒸発し、蒸発した酸化物が配管等の供給経路の内壁に付着してしまうという問題があった。内壁に付着した酸化物は、水素ラジカルと反応し、それによって水素ラジカルが失活してしまう。そして、反応により生成された水が再び触媒を酸化させてしまう。この現象は、Water Vapor Cycle(Langmuir Cycle)と呼ばれ、例えば、タングステンWを触媒とした場合には以下の反応を起こす。
WO+ 2H(水素ラジカル) → HO + W
W + HO → WO + H
これらの反応を繰返してしまうと、水素ラジカルが失活し続けるため、水素ラジカルの供給効率が低下してしまう。
【0005】
水素ラジカルの供給効率が低下してしまうと、洗浄に要する時間が長くなってしまい、例えばリソグラフィ装置の場合には、生産性(スループット)が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、対象物に水素ラジカルを供給することによって対象物を洗浄する洗浄装置において、水素ラジカルの供給経路の内壁への酸化物の付着を低減した洗浄装置を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本願発明は、対象物に水素ラジカルを供給することによって前記対象物を洗浄する洗浄装置であって、加熱された触媒に気体を供給することによって水素ラジカルを生成する生成手段と、前記生成手段から前記対象物への気体の供給を制限可能な制限手段と、前記制限手段により気体の供給が制限された状態で、前記触媒の周囲の気体を前記対象物を介さずに排気可能な排気手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
発明によれば、対象物に水素ラジカルを供給することによって対象物を洗浄する洗浄装置において、水素ラジカルの供給経路の内壁への酸化物の付着を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の洗浄装置を示した図である。
【図2】第1の実施形態の変形例1を示した図である。
【図3】第1の実施形態の変形例2を示した図である。
【図4】第2の実施形態の洗浄装置を示した図である。
【図5】EUV露光装置を示す概略構成図である。
【図6】第1の実施形態に係る洗浄方法を示すフロー図である。
【図7】第1の実施形態の変形例2に係る洗浄方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の洗浄装置を示す概略図である。図中の矢印は気体の流れを示す。洗浄装置27は、洗浄すべき対象物11に水素ラジカルを供給することによって対象物11を洗浄する。洗浄装置27は、加熱された触媒に気体を供給することによって水素ラジカルを発生させる水素ラジカル生成ユニット(生成手段)を有し、水素ラジカル生成ユニットからの水素ラジカルは配管9を介して対象物11に供給される。水素ラジカル生成ユニットは、筐体21と、筐体21の内部に配置された触媒1と、触媒1に気体を供給可能な供給部15と、触媒1を加熱する加熱部29とを備える。
【0012】
触媒1は、供給部15からの気体と反応して水素ラジカルを生成可能な触媒であり、例えば、タングステン、白金、タンタル、モリブデン、ニッケル、レニウムのうち少なくとも一つを含む。
【0013】
供給部15は、触媒1と反応して水素ラジカルを生成可能な気体を触媒1に供給可能に構成される。また、これに加えて、触媒1の酸化物を還元可能な還元性気体を触媒1に供給可能に構成されてもよい。この場合、供給部15は選択的に2つの気体を供給可能であればよい。
【0014】
触媒1と反応して水素ラジカルを生成可能な気体は、例えば、水素、アンモニアの少なくとも一つを含む。還元性気体は、例えば水素ラジカル、エタノール、一酸化炭素、メタン、プロパンのうち少なくとも一つを含む。また、供給部15からの気体は触媒1の近傍に供給されることが望ましい。
【0015】
加熱部29は、触媒1を加熱可能であり、例えば、触媒1に電流を流す電源を含む。ここでいう「加熱」は、触媒そのものを発熱させる形態を含む。
【0016】
また、洗浄装置27は、触媒1の周囲から対象物11への気体の供給を制限可能なシャッタ7(制限手段)と、シャッタ7により気体の供給が制限された状態で、触媒1の周囲の気体を対象物11を介さずに排気可能な排気部17(排気手段)と、を備える。シャッタ7は不図示の駆動機構を介して駆動可能である。駆動機構としては周知の技術を適用しうる。また、制限手段はゲートバルブ等であってもよい。
【0017】
「シャッタにより気体供給が制限された状態」とは、シャッタ7により気体の供給が完全に遮蔽された状態だけでなく、シャッタ7により筐体21および配管9を含む気体の供給経路のコンダクタンスを小さくして供給が制限された状態も含む。以下の説明においては、シャッタ7により供給が完全に遮蔽される場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態において、シャッタ7は筐体21の内部に設けられる。しかしながら、シャッタ7の配置はこれに限られず、触媒1と対象物11との間に設ければよい。供給経路9に設ける場合には、できるだけ触媒1に近い位置に設けることが好ましい。
【0019】
排気部17は、触媒1の周囲の気体を対象物11を介さずに排気可能であればよく、例えば、シャッタ7に対して触媒側に設けられる。
【0020】
なお、上述の構成に加えて、供給部15、排気部17、配管9、シャッタ7、筐体21の内壁の少なくとも一部を水素ラジカルの失活を抑制可能な材料で構成してもよい。例えば、SiOなど、水素ラジカルの消滅確率が0.2以下の材料が適用される。水素ラジカルの消滅確率が0.2とは、材料の表面と水素原子が10回衝突した場合に、水素原子の90%が消滅することをいう。
【0021】
上述の洗浄装置を用いた洗浄方法について説明する。図6は洗浄方法を例示的に示すフロー図である。洗浄方法として2つの方法を例示する。一つは、シャッタ7を閉じた状態で排気しながら触媒1の酸化物を蒸発させる方法であり、もう一つはシャッタ7を閉じた状態で排気しながら触媒1の酸化物を還元させる方法である。
【0022】
前者の洗浄方法について説明する。
【0023】
まず、シャッタ7が閉じられる(ステップS10)。
【0024】
つぎに、排気部17により、筐体21内の気体の排気が開始される(ステップS20)。これにより、筐体21内に存在する、触媒1を酸化させうる気体が除去される。
【0025】
そして、供給部15により、筐体21内に気体の供給が開始される(ステップS30)。供給される気体として、例えば、水素が用いられる。加熱部により、触媒1の加熱が開始される(S40)。このとき触媒1としてのタングステンは1100℃〜2000℃に加熱されている。
【0026】
タングステンの表面に存在する酸化物(酸化タングステン)は1100℃以上で蒸発を始めるため、蒸発された酸化物が排気部17を介して排気される。すなわち、酸化物が配管9等の内壁に付着することを防止することができる。また、このとき、タングステンを酸化させうるHOも排気されるため、タングステンの酸化を抑えることができる。
【0027】
なお、以上のステップS10〜S40のタイミングは適宜変更が可能であり、蒸発された酸化物の排気が可能であればよい。
【0028】
以上のステップS10〜S40により、水素ラジカルを対象物11に供給して洗浄を行う前に、シャッタ7を閉じた状態で供給部15から水素を供給し、排気部17から気体を排気する。 所定の時間が経過したら、供給部15による気体の供給を停止する(ステップS50)。なお、本ステップを省略してもよい。
【0029】
つぎに、排気部17による気体の排気を停止する(ステップS60)。本ステップは,洗浄を行うときに生成された水素ラジカルが対象物11に向かうことなく排気されることを防ぐために行われる。ステップS60は洗浄が開始されると同時に行われてもよく、洗浄が開始された後に行われてもよい。
【0030】
そして、水素ラジカルにより対象物を洗浄する工程に移る。まず、供給部15により水素の供給を開始する(S70)。このとき、触媒1としてのタングステンは1600℃以上に加熱される。タングステンの表面の酸化物はS10〜S40により事前に除去されているため、酸化物がタングステンの表面から蒸発して配管9等の供給経路の内壁に付着することを抑えることができる。
【0031】
つづいて、シャッタ7を開いて、生成された水素ラジカルを対象物11に供給し、洗浄を行う(ステップS80)。
【0032】
洗浄に要する所定の時間が経過したら、シャッタ7を閉じることによって水素ラジカルの供給を停止させ、洗浄を終了する。なお、常時水素ラジカルを対象物1に供給しつづける場合には、洗浄停止の指令に応じて洗浄を停止させてもよい。
【0033】
後者の洗浄方法について説明する。
【0034】
まず、シャッタ7が閉じられる(ステップS10)。
【0035】
つぎに、排気部17により、筐体21内の気体の排気が開始される(ステップS20)。これにより、筐体21内に存在する、触媒1を酸化させうる気体が除去される。
【0036】
そして、供給部15により、筐体21内に気体の供給が開始される(ステップS30)。供給される気体として、触媒1の酸化物を還元可能な気体(還元性気体)が用いられる。このような気体として、例えば、水素ラジカル、エタノール、一酸化炭素、メタン、プロパンの少なくとも一つを含む気体が用いられる。加熱部により、触媒1の加熱が開始される(S40)。このとき触媒1としてのタングステンは1100℃以下に加熱してもよい。
【0037】
なお、ステップS20は、ステップS30と同時に行われてもよく、ステップS30の後に行われてもよい。
【0038】
以上のステップS10〜S40により、水素ラジカルを対象物1に供給して洗浄を行う前に、シャッタ7を閉じた状態で供給部15から水素ラジカルを供給し、排気部17から気体を排気する。触媒1の酸化物を還元させるために要する所定の時間が経過したら、供給部15による気体の供給を停止する(ステップS50)。本ステップは、洗浄を行うときに生成された水素ラジカルと還元性気体が混ざって、対象物1にダメージを与えることを防ぐために行われる。還元性気体によるダメージが許容されるほど小さい場合には、本ステップを省略してもよい。
【0039】
つぎに、排気部17による気体の排気を停止する(ステップS60)。本ステップは,洗浄を行うときに生成された水素ラジカルが対象物11に向かうことなく排気されることを防ぐために行われる。ステップS60は洗浄が開始されると同時に行われてもよく、洗浄が開始された後に行われてもよい。
【0040】
そして、水素ラジカルにより対象物を洗浄する工程に移る。まず、供給部15により水素の供給を開始する(S70)。このとき、触媒1としてのタングステンは1600℃以上に加熱される。タングステンの表面の酸化物はS10〜S40により還元されているため、酸化物がタングステンの表面から蒸発して配管9等の供給経路の内壁に付着することを抑えることができる。
【0041】
つづいて、シャッタ7を開いて、生成された水素ラジカルを対象物1に供給し、洗浄を行う(ステップS80)。
【0042】
洗浄に要する所定の時間が経過したら、シャッタ7を閉じることによって水素ラジカルの供給を停止させ、洗浄を終了する。なお、常時水素ラジカルを対象物1に供給しつづける場合には、洗浄停止の指令に応じて洗浄を停止させてもよい。
【0043】
(第1変形例)
上述の構成に加えて、供給部15、排気部17、配管9、シャッタ7、筐体21の内壁の少なくとも一部を加熱する内壁加熱部を備えてもよい。
【0044】
図2に、洗浄装置の変形例として、内壁加熱部23を筐体21に設けた例を示す。内壁加熱部23として、例えば、リボンヒーターやワイヤヒーターなどのヒーターを適用できる。内壁加熱部23は、筐体23の温度が洗浄装置の周囲の温度以上になるように加熱し、好適には、筐体23が100℃以上になるように加熱する。
【0045】
触媒1の表面の酸化物が蒸発した場合に、酸化物の一部が排気されずに筐体21の内壁に付着する可能性がある。本変形例では、内壁を内壁加熱部23を用いて高温にすることによって、酸化物の付着を抑え、水素ラジカルが内壁に衝突した際の失活を抑制することができる。
【0046】
シャッタ7を閉じた状態で加熱された触媒に気体を供給するとともに排気部17から気体を排気している間に、内壁加熱部23により筐体23を加熱することが好ましい。ただし、内壁加熱部23による加熱のタイミングは、これに限られるものではなく、対象物11を洗浄しているときに加熱してもよい。
【0047】
(第2変形例)
第1変形例の構成に加えて、シャッタ7を冷却する冷却部を備えてもよい。
【0048】
図3に、洗浄装置の変形例として、シャッタ7に冷却部25を設けた例を示す。冷却部25はシャッタ7の少なくとも一部を冷却可能に構成される。冷却部25として、例えば、水冷方式やペルチェ素子による冷却方法を適用できる。冷却部25は、例えば、シャッタ7の温度が洗浄装置の周囲の温度以下になるように冷却する。このような構成により、触媒1の表面の酸化物が蒸発した場合に、排気されなかった酸化物の一部をシャッタ7の表面に付着させることが可能となる。シャッタ7の表面への酸化物の付着を促進させることによって、筐体21の内壁への酸化物の付着を低減させることができる。
【0049】
また、本変形例において、シャッタ7は水素ラジカルの供給経路から退避可能に構成されている。シャッタ7を閉じた状態で加熱された触媒に気体を供給するとともに排気部17から気体を排気している間に、冷却部25によりシャッタ7を冷却することが好ましい。対象物11の洗浄を行うときにシャッタ7を退避させることによって、シャッタ7に付着した酸化物によって水素ラジカルの供給効率が低下することを抑制する。シャッタ7は供給経路を含む空間から完全に退避させる必要はなく、シャッタ7の酸化物を付着させた面が供給経路を含む空間に面しないようにシャッタ7を駆動可能であればよい。
【0050】
上述の変形例における洗浄装置を用いた洗浄方法について説明する。図7は洗浄方法を例示的に示すフローチャートである。図6と同様の工程については同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本変形例において、ステップS11においてシャッタを冷却を開始する。ステップS11のタイミングは図7に限られず、例えば、ステップS40と同時におこなってもよく、ステップS40よりも前に行えばよい。
【0052】
つづいて、内壁加熱部23により、筐体の内壁の加熱を開始する(ステップS12)。ステップS11のタイミングは図7に限られず、例えば、ステップS40と同時におこなってもよく、ステップS40よりも前に行えばよい。
【0053】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の洗浄装置を示す概略図である。図中の矢印は気体の流れを示す。第1実施形態と同様の構成及び同様の機能を有する部分については、図中において同一の符号を付しており、説明を省略する。
【0054】
第2実施形態は、洗浄装置が、供給部3に水素ラジカルを供給可能な水素ラジカル生成ユニット28を備える点で第1実施形態と異なる。ここで、水素ラジカル生成ユニット28は、第1実施形態の水素ラジカル生成ユニットと同様の構成でよい。
【0055】
水素ラジカル生成ユニット28は、筐体22と、筐体22の内部に配置された触媒2と、触媒2に気体を供給する供給部4と、触媒2を加熱する加熱部36とを備える。また、洗浄装置27は、供給部3への水素ラジカルの供給を制限可能なシャッタ8(制限手段)と、シャッタ8により供給が制限された状態で、触媒2の周囲の気体を供給部3を介さずに排気可能な排気部18(排気手段)と、を備える。これらの構成の詳細は、第1実施形態の水素ラジカル生成ユニットと同様であるとして説明を省略する。
【0056】
水素ラジカル生成ユニット28による水素ラジカル生成の方法は、第1実施形態の図6を用いて説明した方法と同様である。水素ラジカル生成ユニット28により生成された水素ラジカルは、第1実施形態の洗浄方法のステップS30の気体として供給部3を介して供給される。
【0057】
(洗浄装置をパターン転写装置に適用した例)
上述の洗浄装置はパターン転写装置に適用した例について説明する。パターン転写装置とは、基板にパターンを転写する装置である。パターン転写装置は、一般的には、光や電子線等の粒子線を利用し、上述の洗浄装置は、粒子船を制御可能な光学部材の洗浄装置に好適に用いられる。ここでは、パターン転写するために波長13nm程度の極紫外光を用いたEUV(EUV:Extreme Ultra Violet)露光装置の照明光学ユニットまたは投影光学ユニットに適用した例について説明する。
【0058】
図5は、EUV露光装置の概略を示す図である。EUV露光装置は、極紫外光を用いて、レチクル(原版)66に形成されたパターンをウエハ(基板)に転写する。EUV露光装置は、極紫外光を生成する光源ユニットと、生成された極紫外光をレチクルに導く照明光学ユニットと、レチクルの表面で反射された極紫外光をウエハに導く投影光学ユニットを備える。また、露光装置は、ウエハを移動させるウエハステージと、レチクルを移動させるレチクルステージと、を備える。これらの構成要素は、容器67の内部に配置される。また、露光装置は、真空ポンプ等の排気手段を備え、排気口62を介して排気することにより容器67の内部に真空環境(例えば1Pa以下の圧力)を形成可能となっている。
【0059】
光源ユニットは、レーザー35と、発光媒体61と、集光ミラー60とを備える。レーザー35から発光媒体61にレーザーを照射することによって、極紫外光が取り出され、取り出された極紫外光は、集光ミラー60により集光される。集光ミラー60からの極紫外光は、照明光学ユニットとしての多層膜ミラー64により反射され、レチクル66に導かれる。
【0060】
レチクル66の表面で反射した極紫外光は、投影光学ユニットとしての多層膜ミラー65により反射され、ウエハ30に導かれる。投影光学ユニットは、レチクルのパターンをウエハに縮小させて投影する機能を有する。
【0061】
このようなEUV露光装置において、照明光学ユニットや投影光学ユニットを構成する多層膜ミラーに異物が付着するおそれがある。このような異物として、例えば炭素が挙げられ、EUV露光装置を構成する部材から放出されるアウトガスや、ウエハに塗布されたレジスト(感光剤)から放出される炭素化合物が要因となる。この異物の付着は、極紫外光の反射率を低下させてしまう。
【0062】
本形態において、EUV露光装置は、上述の洗浄装置27を備えており、洗浄装置27からの水素ラジカルをこれらの多層膜ミラーに供給することによって、水素ラジカルと異物を反応させて、異物を除去することが可能となる。
【0063】
なお、図5において、多層膜ミラー64を洗浄する例を示したが、他の光学素子を洗浄するために用いてもよく、光学素子以外の部材を洗浄するために用いてもよい。また、生産装置として稼働をしている時に洗浄を行ってもよいし、稼働をしていないメンテナンス時に洗浄を行ってもよい。
【0064】
本形態によれば、洗浄に要する時間を短くできるため、パターン転写装置の生産性(スループット)を向上させることができる。
【0065】
(パターン転写を用いたデバイス製造方法の例)
パターン転写を用いたデバイス製造方法の例を説明する。デバイスとして、例えば、半導体デバイス、液晶表示デバイスが製造される。半導体デバイスは、ウェーハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウェーハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウェーハを露光する工程と、ウェーハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に水素ラジカルを供給することによって前記対象物を洗浄する洗浄装置であって、
加熱された触媒に気体を供給することによって水素ラジカルを生成する生成手段と、
前記生成手段から前記対象物への気体の供給を制限可能な制限手段と、
前記制限手段により気体の供給が制限された状態で、前記触媒の周囲の気体を前記対象物を介さずに排気可能な排気手段と、
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記触媒が配置される空間を囲む筐体と、
前記筐体を加熱可能な加熱手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記制限手段を冷却可能な冷却手段を備え、
前記制限手段は、前記水素ラジカルが通過する空間とは異なる空間に退避可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記触媒の表面に付着した酸化物を還元可能な第1気体と、前記過熱された触媒に供給することによって水素ラジカルを生成可能な第2気体と、を選択的に前記触媒に供給可能であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記第1気体は水素ラジカルであることを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
加熱された第2触媒に気体を供給することによって、前記触媒に供給される水素ラジカルを生成する第2生成手段と、
前記第2生成手段と前記触媒との間に配置され、前記第2生成手段から前記触媒への気体の供給を制限可能な第2制限手段と、
前記第2制限手段により供給が制限された状態で、前記第2触媒の周囲の気体を前記触媒を介さずに排気可能な第2排気手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の洗浄装置を用いて、粒子線を制御可能な光学部材を洗浄することを特徴とするパターン転写装置。
【請求項8】
加熱された触媒に気体を供給して生成させた水素ラジカルを用いて対象物を洗浄する洗浄方法であって、
前記触媒の周囲から前記対象物への気体の供給が制限された状態で、前記触媒の周囲の気体を排気する工程と
前記排気する工程と並行して、前記触媒の表面の酸化物を還元または蒸発させることにより前記酸化物を除去する工程と、
前記加熱された触媒に気体を供給して水素ラジカルを生成する工程と、
前記制限が解除された状態で、生成された水素ラジカルを前記対象物に供給する工程と、
を備えることを特徴とすることを特徴とする洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−230053(P2011−230053A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102521(P2010−102521)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「極端紫外線露光システムの基盤技術開発/EUV露光装置用非球面加工技術およびコンタミネーション制御技術の研究開発(継続研究)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】