説明

洗浄装置、フラットパネルディスプレイの製造装置及びフラットパネルディスプレイ

【課題】複雑な機構を必要とせず、表面にムラを生じることなく洗浄することを目的とする。
【解決手段】本発明の洗浄装置1は、基板Bの搬送路となる搬送ローラ2の上部に設けられ、基板Bに供給する洗浄液の流出口となるスリット開口34が少なくとも基板Bの1辺よりも長く設けられたタンク30と、スリット開口34から流出した洗浄液の流れを整えて整流状態にする水平流路32と、水平流路32により流れが整えられた洗浄液の整流状態を維持しながら、洗浄液の流下速度を制御する垂直流路33と、を有している。水平流路32を流れている間に広がって整流状態となった洗浄液は、整流状態を維持しながら垂直流路33を流下して所定の速度が与えられることにより、ムラなく洗浄液を基板Bに供給することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液を基板に供給する洗浄装置に関し、特に基板にムラが生じないように液を供給する洗浄装置、この洗浄装置を適用したフラットパネルディスプレイの製造装置及びこのフラットパネルディスプレイの製造装置により製造されたフラットパネルディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイの製造過程の1つに配向処理がある。配向処理は、ガラス基板の表面にポリイミド等の配向膜を薄く塗布し、ガラス基板に液晶分子を固定した状態で、柔らかい布等で配向膜を一方向に擦る所謂ラビング処理を施して、液晶分子を一定方向に並ばせるという処理を有している。そして、ラビング処理が行われた後には、削り滓を除去するために基板の洗浄が行われるが、従来は洗浄にIPA(イソプロピルアルコール)等を使用していた。しかし、IPA等を使用した洗浄方法は、使用が制限されており、また超音波洗浄等を使用することができない等の観点から、水や純水等の洗浄液を使用した洗浄方法が主流になりつつある。
【0003】
前記の洗浄液を用いて基板表面を洗浄する場合、基板表面にムラが生じてしまい、このムラが要因となって製造された液晶ディスプレイの品質を低下させる。そこで、洗浄液を用いて基板を洗浄するときに、ムラの発生の抑制を図っている発明が特許文献1に開示されている。特許文献1では、洗浄液による洗浄を行う前に、予め基板表面に付着している異物を除去し、さらに純水を供給することにより、界面活性剤の溶出に起因するムラの防止を図っている。
【特許文献1】特開平7−77677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、特許文献1では、界面活性剤の溶出を防止するために、前段階として、異物の除去と純水の供給との2つの処理を基板に施す必要がある。このため、特許文献1にあるように、基板の洗浄を行う前処理として、異物除去を行うためのエアーナイフが必要になり、また純水の供給を行うための高圧スプレイ管が必要になる。エアーナイフや高圧スプレイ管は、基板の洗浄を行うための機構ではなく、前処理を行うためにのみ使用される機構である。このため、前処理機構は洗浄装置において、本来的には必要な機構ではなく、その分洗浄装置の機構の複雑化や高コスト化といった諸問題を招来することになる。
【0005】
そして、前処理が行われた基板は、洗浄液による洗浄が行われるが、洗浄液の供給の仕方によってはやはりムラが発生する。配向膜としてのポリイミド膜は撥水性が高く、一様な分布で洗浄液を供給することができず、ムラの原因となる。また、配向膜にはラビング処理が施されており、ラビング処理が施された基板には液晶分子を一定方向に配向するために細かい溝が形成されているため、洗浄液の分布を一様にすることができず、この点においてもムラの原因となる。さらに、配向膜の下には所定の回路パターン等も形成されているため、一様な分布で洗浄液を供給することができなくなる。
【0006】
また、近年の液晶ディスプレイは薄型化且つ大型化の傾向にあり、液晶ディスプレイを構成する基板も薄型且つ大型のものが用いられる。薄型且つ大型の基板に対して速い速度で洗浄液を衝突させると、衝突時のエネルギーで基板に撓みが生じてしまい、洗浄液の分布状態が均一にならなくなる。従って、薄型且つ大型の基板については、特にムラが生じやすくなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、複雑な機構を必要とせず、表面にムラを生じることなく洗浄することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、基板の搬送路の上部に設けられ、前記基板に供給する洗浄液の流出口となる液流出開口が少なくとも前記基板の1辺よりも長く設けられた液供給手段と、前記液流出開口から流出した洗浄液の流れを整えて整流状態にする整流手段と、前記整流手段により流れが整えられた洗浄液の整流状態を維持しながら、洗浄液の流下速度を制御する流速制御手段と、を有している。
【0009】
以上の整流手段と流速制御手段とにより、流れが整えられた洗浄液が整流状態を維持しながら基板に向かって流下していくため、洗浄液の分布を均一化した状態で基板に対して供給することができる。そして、流速制御手段により洗浄液の流下速度が適切に制御されるため、基板に対して衝突するときの速度が制御される。このため、基板表面の状態に依らず、一様な分布で洗浄液を供給することができ、ムラの発生を防止できる。また、液流出開口から大量の洗浄液を流出させて基板に供給できるため、基板に対して迅速に必要な洗浄液を供給することができる。従って、基板に対して洗浄液をムラなく迅速に供給することができる。
【0010】
流速制御手段が制御する洗浄液の流下速度は、できる限り緩やかであることが好ましいが、洗浄液の流下速度が遅すぎると、基板に供給されたときに洗浄液が部分的に撥水を起こし、また凹凸の角隅部に液が行き渡らなくなったりして、分布が不均一になる。このため、洗浄液の流下速度が遅すぎてもムラは発生するため、基板に衝突するときにある程度の速度が必要になる。そこで、流速制御手段は、基板の表面状態に応じて、緩やかに且つ分布が不均一にならない程度に最小限の速度を洗浄液に持たせるように制御するようにする。
【0011】
本発明の請求項2の洗浄装置は、請求項1記載の洗浄装置において、前記液供給手段は、洗浄液を送る液送り手段と、この液送り手段から送られる洗浄液を貯蔵する液貯蔵手段と、を有し、前記液流出開口は前記液貯蔵手段に設けられ、前記液貯蔵手段に貯蔵される洗浄液の液面が、前記液流出開口よりも高い位置近傍となるように、前記液送り手段は洗浄液の送り量を制御することを特徴とする。
【0012】
液流出開口からは洗浄液が徐々に溢れ出るようにすることが好ましく、このため、液貯蔵手段に貯蔵される洗浄液の液面が、液流出開口よりも若干高い位置となるように、液送り手段は洗浄液の送り量を調整する。これにより、液流出開口からは徐々に洗浄液が溢れ出すようにして流出するため、液流出開口から流出する洗浄液の圧力を低くすることができる。
【0013】
本発明の請求項3の洗浄装置は、請求項2記載の洗浄装置において、前記液貯蔵手段の内部に、前記液貯蔵手段に貯蔵される洗浄液を、前記液送り手段から送られる洗浄液の領域と前記液流出開口から流出する洗浄液の領域とに分割する領域分割手段を設けたことを特徴とする。
【0014】
液貯蔵手段に貯蔵されている洗浄液に液送り手段から洗浄液が送られてくると、貯蔵されている洗浄液に乱れが生じる。洗浄液が乱れると、液流出開口から均等な圧力で洗浄液を流出させることができなくなり、整流手段を流れる洗浄液の分布を一様にすることができなくなる。そこで、領域分割手段を設けて、液送り手段から排出される洗浄液の領域(流入側領域)と液流出開口から流出する洗浄液の領域(流出側領域)とに領域を分割することにより、液送り手段で発生した洗浄液の乱れは、液流出開口から流出する洗浄液の領域には伝達されない。このため、一様な分布で洗浄液が整流手段を流れることになる。領域分割手段の一例としては、例えば仕切り板等が考えられる。
【0015】
本発明の請求項4の洗浄装置は、請求項1記載の洗浄装置において、前記整流手段は、前記液流出開口から流出した洗浄液を水平方向に流す水平流路として設け、前記流速制御手段は、水平方向に流れている洗浄液の流路を垂直方向の流れに変換し、洗浄液の流下速度を制御する長さの垂直流路として設けたことを特徴とする。
【0016】
整流手段を液流出開口に接続して水平流路とすることにより、液流出開口から流出した洗浄液は水平流路を流れて、分布が均一化される。そして、分布が均一化された洗浄液を基板に向けて流下させるときに、流速制御手段としての垂直流路を洗浄液が流れることにより、分布が均一化した状態のまま、基板に向けて洗浄液が流下される。
【0017】
また、基板に衝突するときの洗浄液の速度は、流速制御手段としての垂直流路の長さにより変化する。垂直流路が長すぎると洗浄液の速度が速くなりすぎてしまい、短すぎると洗浄液に必要最小限の速度を与えることができなくなる。洗浄液に与えるべき速度は基板の状態によって変化するため、基板の状態に応じて適切となるように垂直流路の長さを設定する。
【0018】
本発明の請求項5の洗浄装置は、請求項1記載の洗浄装置において、前記液供給手段と前記搬送路との間に2枚の垂直板を設けて、2枚の垂直板の間を洗浄液が流れるスリット状通路となし、前記基板は、前記スリット状通路の川幅方向に傾斜した状態で搬送され、前記スリット状通路の流入口及び流出口を前記基板の傾斜方向と平行となるように設け、前記スリット状通路を、前記整流手段と前記流速制御手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
この請求項5の洗浄装置では、基板をスリット状通路の川幅方向に傾斜した状態で搬送させている。基板を傾斜状態で搬送すると、基板に供給された洗浄液は自重により基板から除去される点で有効である。整流手段としての機能は、スリット状通路を流れる間に洗浄液の流れが整うため、その機能が発揮される。また、流速制御手段としての機能は、スリット状通路の長さを適切に設定することにより速度が制御され、流速制御機能が発揮される。
【0020】
また、スリット状通路は何れの場所においても均一な長さとしなければならない。ここで、基板はスリット状通路の川幅方向に傾斜しているため、スリット状通路の流入口(スリット状通路の上端、つまり液受け部との接続部)及び流出口(スリット状通路の下端、つまり基板と対面している部分)を、基板の傾斜方向と平行にする。これにより、スリット状通路を流れる洗浄液は全て等しい距離を流れることになる。
【0021】
本発明の請求項6のフラットパネルディスプレイの製造装置は、請求項1乃至5何れか1項に記載の洗浄装置を有している。洗浄装置としては、種々の製造装置に適用することが可能であるが、特にフラットパネルディスプレイの製造装置に好適である。また、本発明の請求項7のフラットパネルディスプレイは、請求項6記載のフラットパネルディスプレイの製造装置により製造したフラットパネルディスプレイであることを特徴とする。
【0022】
以上の洗浄装置は、基板に配向膜を塗布して、ラビング処理を行った後に基板の洗浄を行う洗浄装置として使用することができる。また、ラビング処理後の洗浄工程だけでなく、任意の洗浄工程に本発明を適用することができる。例えば、基板に現像液を塗布して所定パターンを現像する現像工程の次に、現像液を洗い流して水に置換する水置換工程にも適用することができる。現像工程においては、基板には所定パターンが現像されており、また撥水性も高いため、本発明の洗浄装置を適用することにより、有利な効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明は、整流手段と流速制御手段とを用いることにより、複雑な機構を用いることなく、基板の表面の状態に応じて適切な速度で流れが整った洗浄液を基板に供給できるため、基板にムラが生じることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。まず、最初に第1の実施形態について説明し、次に第2の実施形態について説明する。第1の実施形態及び第2の実施形態の何れも、洗浄装置を適用する一例として、ラビング処理後の洗浄を行う洗浄装置について説明する。
【0025】
<本発明の第1の実施形態>
図1において、洗浄装置1には、搬送ローラ2が設けられ、搬送ローラ2によって基板Bが順次搬送されている。搬送ローラ2は、前段の処理を行う処理装置(例えば、ラビング処理)から連続して設けられており、また後段の処理を行う処理装置に接続されて、所謂インライン処理を行うように設けられている。後段の処理としては、例えば洗浄液が供給されて湿潤状態となった基板Bを乾燥する乾燥処理等がある。
【0026】
搬送ローラ2の上部には液供給手段としてのタンク30が設けられている。タンク30にはノズル31と水平流路32とが接続され、水平流路32には垂直流路33が接続される。図2に示すように、タンク30は洗浄液を貯蔵する液貯蔵手段としての役割を発揮する。タンク30には1又は複数の液送り手段としてのノズル31が接続され、ノズル31から洗浄液をタンク30に供給して、タンク30に貯蔵する洗浄液の量を一定にする。タンク30には液流出開口としてのスリット開口34が設けられており、スリット開口34からタンク30内の洗浄液が流出する。
【0027】
水平流路32について説明する。水平流路32は洗浄液が水平方向に流れる流路であり、スリット開口34から流出した洗浄液は水平流路32を流れていく。水平流路32は洗浄液の流れを整えて整流状態にする整流手段としての機能を発揮する。水平流路32を流れている間に洗浄液が広がっていき、分布が均一になる。このため、水平流路32には親水性が高い素材を適用することが好ましい。親水性が高い素材を使用すれば、スリット開口34から流出した洗浄液は瞬時に広がって整流状態になる。
【0028】
垂直流路33について説明する。垂直流路33は水平流路32に接続される。従って、水平流路32を流れていた洗浄液は進行方向が水平方向から垂直方向に変化し、基板Bに向かって流下する。つまり、垂直流路33は、洗浄液に対して基板Bに向かう速度を与えるという機能を有している。また、洗浄液は垂直流路33を伝って流下することにより、整流状態を維持した状態で流下していく。洗浄液が整流状態を維持したまま流下するために、垂直流路33にも親水性が高い素材を用いることが好ましい。
【0029】
図2に洗浄装置1の断面を示す。この図に示すように、垂直流路33の上端から下端までの間を洗浄液が流下することにより、洗浄液には所定の速度が与えられる(つまり、垂直流路33を流下している間に位置エネルギーが運動エネルギーに変換され、洗浄液に所定の速度が与えられる)。洗浄液に与えられる速度は垂直流路33の長さL1によって変化する。長さL1のうち、垂直流路33の上端からタンク30の下面までの間の長さL2は一定であるため、残りの長さL3(=L1−L2)を適切な長さに設定することにより、洗浄液に与える速度をコントロールする。この長さL3を流速制御領域とする。
【0030】
このとき、基板Bの表面の状態によっては、速い速度で洗浄液を衝突させると、一様な分布で洗浄液を供給することができず、また衝突速度を遅くしすぎると、分布状態が不均一になる。そこで、流速制御領域の長さL3を、基板Bの表面の状態に応じて、緩やかに且つ分布が不均一にならない程度に洗浄液が基板Bに衝突する適切な長さに設定する。
【0031】
また、図2に示されるように、垂直流路33の下部には傾斜部33Sが設けられている。傾斜部33Sにより、洗浄液の流れは、若干基板Bの搬送方向と反対方向の角度を付けられる。傾斜部33Sにより、洗浄液の流れに基板Bの搬送方向の反対方向の速度成分が生じるため、基板Bに洗浄液が広がっていく時間が早くなる。このため、基板Bに対して洗浄液を迅速に供給することが可能になる。なお、洗浄液の広がり時間を考慮しない場合には、傾斜部33Sは設けられていなくてもよい(傾斜部33Sの部位を垂直状態にしてもよい)。
【0032】
スリット開口34について説明する。前述したように、スリット開口34からは洗浄液が流出して、水平流路32を流れていく。図2に示すように、基板Bの搬送方向に対して直交する方向に洗浄液を流下させて、基板Bを搬送することにより、基板Bの全面に対して洗浄液を供給する。このため、スリット開口34は基板Bの搬送方向に対して直交する方向において、基板Bよりも長く形成する。従って、スリット開口34は細長の開口となり、大量の洗浄液を流出させることができる。
【0033】
次に、スリット開口34とタンク30に貯蔵される洗浄液の液面との位置関係について説明する。タンク30には、スリット開口34から流出した洗浄液の分を補充するため、ノズル31から洗浄液が補給される。ノズル31から補給される洗浄液の量をスリット開口34から流出する洗浄液の量と一致させると、タンク30に貯蔵される洗浄液の液面を常に一定に保つことができる。このとき、スリット開口34よりも若干高い位置に常に洗浄液の液面が位置するように、ノズル31から洗浄液を補給する。洗浄液の液面とスリット開口34との間隔が長くなると、スリット開口34から流出する洗浄液の圧力が高くなり、高圧状態で洗浄液がスリット開口34から噴射する。そうすると、水平流路32において洗浄液は一様な分布で流れなくなる。そこで、洗浄液の液面はスリット開口34よりも若干高い位置の近傍に保持するようにすることにより、スリット開口34から流出する洗浄液の圧力を低くすることができ、スリット開口34からは洗浄液が徐々に溢れ出していく状態となる。このため、水平流路32において洗浄液は一様な分布で流れる。
【0034】
タンク30の内部について説明する。図2を参照すると、タンク30には洗浄液を送る手段としてのノズル31が接続され、洗浄液の液面が一定に保持されるように、常時洗浄液が送られている。ノズル31からは洗浄液が所定の圧力で噴射されているため、噴射された洗浄液によってタンク30に貯蔵されている洗浄液に乱れが生じる。そうすると、スリット開口34の場所によって洗浄液の流れが一定にならず、洗浄液の分布を一様にすることができなくなる。このため、図2に示すように、洗浄液の領域を分割する領域分割手段としての仕切り板36をタンク30に設ける。仕切り板36を設けると、仕切り板36を境界にしてノズル31から洗浄液が流入する側の領域(流入側領域)とスリット開口34から洗浄液が流出していく側の領域(流出側領域)とに分割することができる。流入側領域内にはノズル31から洗浄液が噴射されているため、この領域内の洗浄液には乱れが生じているが、流出側領域の洗浄液には乱れが生じない。従って、スリット開口34から流出する洗浄液は一様な分布とすることができる。
【0035】
また、仕切り板36は、図2に示すように、L字状をしている。これにより、仕切り板36は、流入側領域から流出側領域に移行する移行部における乱れを緩衝することができ、洗浄液分布の均一化効果をより高めることが可能になる。
【0036】
以上の洗浄装置により、整流手段により洗浄液の流れが整流状態にされ、流速制御手段により洗浄液には適切な速度が付与されるため、基板に供給されたときにムラなく、迅速に且つ確実に洗浄液を供給することができる。
【0037】
<本発明の第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、図3に示すように、基板Bは後述するスリット状通路55の川幅方向に傾斜した状態(傾斜角θとする)で搬送されている。本実施形態では、横板50と第1の垂直板51と第2の垂直板52と液受け部53と液排出部54とを有している。
【0038】
図3及び図4に示すように、横板50はタンク30のスリット開口34から流出された洗浄液を水平方向に流す板部材である。第1の垂直板51は横板50に接続される垂直方向に洗浄液を流す板部材であり、水平方向に流れていた洗浄液は垂直方向に流れが変換される。第2の垂直板52は、第1の垂直板51と相互に近接した状態で平行に配置される板部材であり、第1の垂直板51と第2の垂直板52との間に狭小な空間であるスリット状通路55を形成する。液受け部53は、第1の垂直板51を流れてきた洗浄液を一時的に溜める受け部となっている。液受け部53には第2の垂直板52が接続され、液受け部53に溜まった洗浄液がスリット状通路55を流下していく。液受け部53は第2の垂直板52に一体的に取り付けることが可能であり、例えば第2の垂直板52の上端を第1の垂直板51から離間する方向に突出させて突出部52Tを形成することにより、この突出部52Tと第1の垂直板51との間の領域を液受け部53とすることができる。
【0039】
スリット状通路55は整流手段及び流速制御手段として機能する。整流手段として機能する場合について説明すると、スリット状通路55は狭小なスリット状の空間であるため、スリット状通路55を流下している間に洗浄液の流れは整流状態になる。次に、流速制御手段として機能する場合について説明すると、スリット状通路55は垂直方向に設けられているため、液受け部53で一時的に溜まった状態となる洗浄液は、スリット状通路55を流下する間に所定の速度が与えられる。スリット状通路55の長さを基板Bの状態に応じて適切に設定することにより、基板Bに衝突するときの洗浄液は適切な速度となっている。
【0040】
また、図3に示すように、スリット状通路55の流入口(洗浄液の流入口)及び流出口(洗浄液の流出口)を、基板Bの傾斜方向と平行に設ける(傾斜角θで設ける)。スリット状通路55の上端が傾斜角θで設けられることに伴い、液受け部53も傾斜角θで設けられる。つまり、スリット状通路55は整流手段及び流速制御手段として機能するため、流下する全ての洗浄液に対して等しく整流機能及び流速制御機能を作用させる必要がある。そうすると、基板Bの搬送方向と直交する方向(図中のX方向)において、スリット状通路55の長さは何れの場所においても等しくしなければならない。このため、スリット状通路55の流入口及び流出口を傾斜角θで設けている。
【0041】
液受け部53には洗浄液を排出する液排出部54が設けられている。液受け部53にはタンク30から流出した洗浄液が溜まっていくが、溜まった洗浄液の液面も傾斜角θとなるようにしなくてはならない。液面が傾斜角θでない場合には、図中のX方向において、液受け部53と液面との間の間隔が場所によって異なり、液受け部53の場所によって液圧が異なる。場所によって液圧が異なると、一様な流れでスリット状通路55を洗浄液が流れなくなるため、液受け部53の最も下側に、洗浄液を排出する液排出部54を設けている。
【0042】
液排出部54を設けて洗浄液を排出し、タンク30から十分な量の洗浄液を流すことにより、液受け部53に溜まる洗浄液の液面を傾斜角θとすることができる。このとき、タンク30から流出させる洗浄液の量は、基板Bに供給される洗浄液の供給量と液排出部54から排出される洗浄液の量との合計となる。このため、タンク30から十分な洗浄液の量を流出させるため、例えばスリット開口34の開口面積を大きくするようにする。
【0043】
以上説明したように、基板が傾斜した状態で搬送されている場合には、前述してきた構成を採用することにより、基板に対して洗浄液をムラなく瞬時に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施形態におけるタンク、水平流路及び垂直流路の構成を説明する図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】第2の実施形態におけるタンク、第1の垂直流路及び第2の垂直流路の構成を説明する図である。
【図4】図3の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 洗浄装置 2 搬送ローラ
30 タンク 31 ノズル
32 水平流路 33 垂直流路
34 スリット開口 51 第1の垂直板
52 第2の垂直板 53 液受け部
54 液排出部 55 スリット状通路
B 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の搬送路の上部に設けられ、前記基板に供給する洗浄液の流出口となる液流出開口が少なくとも前記基板の1辺よりも長く設けられた液供給手段と、
前記液流出開口から流出した洗浄液の流れを整えて整流状態にする整流手段と、
前記整流手段により流れが整えられた洗浄液の整流状態を維持しながら、洗浄液の流下速度を制御する流速制御手段と、を有する洗浄装置。
【請求項2】
前記液供給手段は、洗浄液を送る液送り手段と、この液送り手段から送られる洗浄液を貯蔵する液貯蔵手段と、を有し、前記液流出開口は前記液貯蔵手段に設けられ、
前記液貯蔵手段に貯蔵される洗浄液の液面が、前記液流出開口よりも高い位置近傍となるように、前記液送り手段は洗浄液の送り量を制御することを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記液貯蔵手段の内部に、前記液貯蔵手段に貯蔵される洗浄液を、前記液送り手段から送られる洗浄液の領域と前記液流出開口から流出する洗浄液の領域とに分割する領域分割手段を設けたことを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記整流手段は、前記液流出開口から流出した洗浄液を水平方向に流す水平流路として設け、
前記流速制御手段は、水平方向に流れている洗浄液の流路を垂直方向の流れに変換し、洗浄液の流下速度を制御する長さの垂直流路として設けたことを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記液供給手段と前記搬送路との間に2枚の垂直板を設けて、2枚の垂直板の間を洗浄液が流れるスリット状通路となし、
前記基板は、前記スリット状通路の川幅方向に傾斜した状態で搬送され、
前記スリット状通路の流入口及び流出口を前記基板の傾斜方向と平行となるように設け、
前記スリット状通路を、前記整流手段と前記流速制御手段として機能させることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至5何れか1項に記載の洗浄装置を有するフラットパネルディスプレイの製造装置。
【請求項7】
請求項6記載のフラットパネルディスプレイの製造装置により製造したフラットパネルディスプレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−284414(P2008−284414A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128995(P2007−128995)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】