説明

洗浄装置

【課題】装置全体の小型化に寄与するとともに、高さの異なるコンテナを混在して洗浄する場合であってもコンテナを適正な力で押さえることのできる洗浄装置を提供する。
【解決手段】装置本体4内に配置された被洗浄物の載置台24と、載置台24を水平方向に回転させる回転駆動手段26と、外力が加えられることにより、装置本体4の操作用開口10を閉塞あるいは開放のいずれかの位置に移動する扉体16と、を備えた洗浄装置であって、扉体16の天井部裏面に、扉体16の移動とともに上下方向に移動し、その扉体16が上方位置から下方位置に移動する第1の移動を行なうときに、載置台24に配置されたコンテナ17の上面に押さえ部材32が当接し、扉体16が下方位置から上方位置に移動する第2の移動を行なうときに、載置台24に配置されたコンテナ17の上面に対する押さえ部材32の当接を解除する押さえ手段30と、が具備されていることを特徴としててる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置に関し、詳しくは、金属等の加工部品や食品などを運搬するのに使用される運搬用容器を洗浄するのに好適な洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラスチック製の運搬用容器(以下、コンテナともいう)を用いて金属等の加工部品や食品などを運搬する場合は、付着した塵埃、油脂、汚れなどを取り除く目的で洗浄してから使用される場合がある。このような洗浄を行なう洗浄装置としては、特許文献1が知られている。 この洗浄装置は、図4に示したように、回転軸23の上部に、この回転軸23とともに回転する格子状のラック21を配置し、このラック21にコンテナ17を配置するとともに、ラック21に配置されたコンテナ17を上方からの支持軸27に固定された押さえ部材25で押さえた状態で回転軸23を回転させ、この回転軸23とともにコンテナ17を回転させながら、斜め方向に配置された上下のノズル43から噴出される洗浄水によりコンテナ17を万遍なく洗浄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−37669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記洗浄装置では、押さえ部材25の駆動手段としてシリンダ31が採用され、このシリンダ31から突出された支持軸27に押さえ部材25を回転自在に取り付けているため、洗浄槽1の上部にシリンダ31の設置スペースが必要で、その分装置全体の高さが大型化してしまうという問題があった。また、装置が複雑となりコスト高を招来するという問題があった。
【0005】
さらに、洗浄に際し、コンテナ17の高さが高い場合と低い場合とが混在されていると押さえ部材25による押さえ力が不安定となる。例えば、押さえ力が弱い場合は、底面を上にしたコンテナ17が飛ばされたてしまう。また、押さえ力が強い場合は、コンテナ17に必要以上の力が作用してしまう。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑み、装置全体の小型化に寄与するとともに、高さの異なるコンテナを混在して洗浄する場合であってもコンテナを適正な力で押さえることのできる洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る洗浄装置は、
被洗浄物の出し入れを行なう操作用開口が一側面に具備され、かつ、この一側面の操作用開口に連通して天井部が開口して形成された装置本体と、
前記装置本体内に配置された被洗浄物の載置台と、
前記載置台を回転させる回転駆動手段と、
外力が加えられることにより、前記装置本体の前記操作用開口および前記天井部開口に跨る2面を閉塞あるいは開放のいずれかの位置に移動する扉体と、を備えた洗浄装置であって、
前記扉体が上方位置から下方位置に移動する第1の移動を行なうときに、前記載置台に配置された前記被洗浄物の上面に押さえ部材が当接し、
前記扉体が下方位置から上方位置に移動する第2の移動を行なうときに、前記押さえ部材の当接を解除する押さえ手段が、前記扉体の天井部裏面に具備されていることを特徴としている。
【0008】
係る構成による本発明の洗浄装置によれば、扉体の開閉動作に伴って被線状物に対する押さえ手段が上下動し、扉体が上方位置から下方向に移動する第1の移動を行なうときに、被洗浄物の上面を適宜な力で押圧するので、コスト低減に寄与するとともに、また装置の上部に余分なスペースを確保する必要もない。
【0009】
ここで、本発明では、前記押さえ手段は、前記載置台に載置された被洗浄物の上面に当接する押さえ部材と、前記押さえ部材が前記被洗浄物の上面に当接したときに屈曲して押圧力を許容する屈曲する複数のリンクと、から構成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成であれば、押さえ手段による押さえ力を被洗浄物の高さ変化に対応して調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る洗浄装置によれば、扉体の開閉動作に伴って押さえ手段を上下動させることができる。これにより、装置本体の上部にシリンダなどの設置スペースが不要となる。また、深さの浅い運搬用容器あるいは深さのある(深さが大なる)運搬用容器を洗浄する場合であっても面倒な設定を行なわずに適正な力で押さえて洗浄を行なうことができる。よって、コンパクト化に寄与することができ、構造も複雑でないので、コスト的にも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る洗浄装置の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示した洗浄装置の内部の構造を示す概略側断面図である。
【図3】図3は、図1の装置本体内に具備された載置台とこの載置台が取り付けられた回転軸との構造を示した斜視図である。
【図4】図4は、特開2000−37669号公報に開示されている従来の洗浄装置の一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施例に係る洗浄装置の正面図である。
なお、本明細書において、「上」、「下」、「天」など方向に関連する文言は、原則として重力の作用する方向を「下」として規定している。また、装置の「前面」とは、図1に示した装置本体4に対し作業者が立って作業する側を装置本体4の前面としている。よって、図1では、作業者は装置本体4の一側面6の前に立って作業を行なうので、装置本体4の一側面6が装置本体4の前面とする。
【0014】
この洗浄装置2では、略矩形状に形成された装置本体4の一側面6と天井部8との2面に跨って開口が形成され、一側面6に形成された略矩形の開口が操作用開口10とされ、この操作用開口10を介して装置本体4内への被洗浄物の出し入れが行なわれる。
【0015】
なお、この洗浄装置2で洗浄される物品は、プラスチック製の運搬用容器(いわゆるコンテナ)が一般的である。以下では、被洗浄物をコンテナ17として説明する。
この洗浄装置2では、前面側の操作用開口10を覆う前面板部12と天井部と前面の一部を覆う側面視L字状の天板部14とから扉体16が構成され、この扉体16は、装置本体4の背面側にヒンジを介して回動自在に取り付けられている。また、扉体16と前面板部12との間もヒンジ20を介して回動自在に取り付けられている。
【0016】
このような扉体16は、前面板部12に設置された取手部22を手に持って下方位置から上方に持ち上げれば、装置本体4の一側面6に操作用開口10が画成される。なお、この扉体16は、いわゆる跳ね上げ式で、図2に示したガスダンパ40の作用により軽く持ち上げた状態で取手部22から手を離しても、扉体16が下方に下がってしまうことはない。一方、取手部22を手に持って上方位置から下方に押し下げれば、操作用開口10が閉塞される。なお、覗き窓13から覗き込めば、内部の様子を視認することができる。
【0017】
ここで、操作用開口10が形成された状態から、この操作用開口10を閉じるための扉体16の移動(図1における矢印X方向の移動)を第1の移動とする。また、これと反対に操作用開口10が閉じた状態から開くための移動(図1における矢印Y方向の移動)を第2の移動とする。
【0018】
このように上下方向への移動を行なう扉体16が具備された装置本体4の内部には、被洗浄物であるコンテナ17を載置するための載置台24が設置され、この載置台24には図1に示したコンテナ17が天地逆転した状態すなわち裏返しの状態で載置される。なお、コンテナ17の側面には、図示されていないものの多数の開口が形成されている場合もある。また、載置台24は、図3に示したように、棒状体が略矩形枠状に組み込まれて構成されている。そして、載置台24は、図1に示したように下方に収容されたモータ26の駆動力が、図3に示した軸28に伝達されることにより回転する。なお、モータ26と載置台24との間は、図2に示したように遮蔽板27が配置され、遮蔽板27によりモータ26などに水が掛からないように構成されている。
【0019】
一方、扉体16の天井部裏面には、図2に示したように、載置台24上に配置されたコンテナ17を押さえるための押さえ手段30が設置されている。
この押さえ手段30は、扉体16の移動とともに連動して上下移動し、下方向への移動により載置台24上に載置されたコンテナ17の上面を押さえるものである。この押さえ手段30は、コンテナ17に直接当接する平板状の押さえ部材32と、中央の屈曲点34を介して連結された第1のリンク36と第2のリンク38とから構成されている。
【0020】
そして、第1のリンク36と第2のリンク38とは、上記扉体16が上方に位置して操作用開口10が開いた状態にあるとき、若干屈曲した姿勢にある。この若干屈曲した姿勢から扉体16が下方に移動して、コンテナ17に押さえ部材32が当接したときに、下方から反力として力の作用し、これにより屈曲点34が前面6側に押し出されて変形するように構成されている。この変形は、コンテナ17の背が高い場合に、より大きく変形する。
【0021】
押さえ部材32は、例えば、コンテナ17を載置する載置台24と同様に、格子状に形成されていても良い。そして、この押さえ部材32は、第2のリンク38の先端部に、軸受けを介して回動自在に支持されている。
【0022】
本実施例による洗浄装置2は、上記のように形成されているが、以下に作用について説明する。
今、装置本体4の操作用開口10は閉じられている。この状態からコンテナ17を一つずつ洗浄する場合について説明する。
【0023】
なお、この洗浄装置2で洗浄するコンテナ17は、背が高い場合と、背が低い場合とがあり、高さは様々である。本発明では、コンテナ17の背が高い場合も背が低い場合も、いずれも上記押さえ手段30を作動させて適正な力でコンテナ17を押さえることができる。
【0024】
最初に、背の高いコンテナ17を洗浄する場合について、以下に説明する。
作業者は、操作用開口部10を図1に示したように開とするため、取っ手22を手で持って、扉体16を矢印Y方向に移動させる。すなわち、第1の移動を行なう。この移動に伴って、装置本体4の前面6に操作用開口10が形成される(図1の状態)。図1のように操作用開口10が形成されているとき、扉体16の裏面に具備された押さえ手段30は、屈曲点34で連結された第1のリンク36と第2のリンク38とは、略直線に近い位置にある。この状態から洗浄すべき背の高い(深さが深い)コンテナ17を装置本体4内に収容し、載置台24の上に配置する。
【0025】
このとき、コンテナ17は、図1に示した姿勢とは反対の姿勢でセットする。このようにコンテナ17をセットすれば、仮にコンテナ17の底面に開口が形成されていない場合であっても、ノズル42から噴出される洗浄水を下方に滴下させることができる。
【0026】
コンテナ17のセットが完了した後、今度は扉体16の取っ手22を持って扉体16を下方(X方向)に下げる。すなわち、第1の移動を行なう。このように扉体16を上方位置から下方位置へと移動させると、移動の最終部分で、操作用開口10が閉となる。なお、扉体16がコンテナ17に向かって下方に移動している最中には、押さえ手段30を構成する第1のリンク36と第2のリンク38とは、上記した略直線状の姿勢で移動してくる。そして、第2のリンク38の先端部に設置された押さえ部材32がコンテナ17に当接すると、それ以上、押さえ部材32が下方に移動することはない(なお、この押さえ部材32は、図3に示した載置台24と同様に棒状体が略枠状に組み込まれて構成されている)。以後の移動は、屈曲点34が変形することにより吸収される。また、押さえ部材32がコンテナ17に当接した後には、下方のコンテナ17から上方向に向かって反力が伝えられるので、この反力により、屈曲点34を介して第1のリンク36と第2のリンク38とが中折れする。以後、中折れが進み、屈曲が大きくなりながら扉体16が下方に移動する。これにより、コンテナ17に押さえ部材32から大きな力が作用することがない。
【0027】
このようにしてコンテナ17に上方から押さえ手段30が作用した後、装置本体4の前面6に設けられた操作スイッチ44を操作することにより公知の洗浄が行なれる。この洗浄は、ノズル42から所定時間、洗浄水が噴出することにより行なわれる。なお、洗浄水が噴出している間、軸28がモータ26の駆動力で回転するので、これに伴って載置台24上のコンテナ17が回転する。よって、ノズル42からの洗浄水により、コンテナ17の内部をくまなく洗浄することができる。また、ノズル42を載置台24の下面のみならず周囲にも設ければ、様々な方向からコンテナ17を洗浄することができる。洗浄後の水は回収され,所定の手段で再使用される。なお、載置台24の下面以外に設けられるノズル形状は、ノズル42の形状に限定されるものではく、他の形状であっても良い。
【0028】
洗浄が完了したら、作業者は取手部22を手に持って上方に持ち上げれば、操作用開口10が再び開になるとともに、押さえ手段30が扉体16とともに上方に移動する。この扉体16の上方への移動に伴って、屈曲されていた第1のリンク36と第2のリンク38とは、再び直線状に延びるように変形する。また、扉体16が最上方位置に到達した状態から手を離してもダンパ40の作用により扉体16が下方に下がることはない。よって、コンテナ17を操作用開口10から取り出すことができる。
【0029】
以上、コンテナ17の背が高い場合の洗浄について説明したが、以下、コンテナ17の背が低い場合の洗浄について説明する。
扉体16が開いた状態にあるとき、押さえ手段30は、上記したコンテナ17が背が高い場合と同様の姿勢にある。すなわち、第1のリンク36と第2のリンク38とは、略直線に近い位置関係にある。
【0030】
この状態から扉体16が下方に押し下げられてくると、押さえ手段30もこの移動に伴って下方に移動してくる。コンテナ17の背が高い場合、扉体16の移動があまり進まない状態でコンテナ17に押さえ部材32が当接が、コンテナ17の背が低い場合は、押さえ手段30の移動がさらに進んで、低い位置にあるコンテナ17に当接する。
【0031】
このとき、屈曲点34はあまり変形せず、第1のリンク36と第2のリンク38は略直線に近い位置にある。扉体16の上方への移動は上記と同様である。
このように、本発明では、コンテナ17の背が高い場合も低い場合も扉体16への同じ操作で自動的に押さえ部材32がコンテナ17を押圧するので、作業性が良好である。
【0032】
本実施例による洗浄装置によれば、高さの高いコンテナ17も高さの低いコンテナ17を洗浄する場合も同様に押さえ手段30でコンテナ17を押さえることができる。しかも、扉体16の開閉動作に伴って同時に作動するので、構造がコンパクトであるともに、装置本体の上部に突出する設置スペースが不要となる。
【0033】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されない。
例えば、上記実施例では、被洗浄物としてコンテナ17を例示したが、被洗浄物は、コンテナ17に何ら限定されない。
【0034】
さらに、装置本体4内において、洗浄用の薬液タンクに連通したノズルと、すすぎ用の水タンクに連通したノズルの両方を用意し、洗浄とすすぎの両方を時間をあけて連続的に行なうこともできる。
【符号の説明】
【0035】
2 洗浄装置
4 装置本体
6 一側面
10 操作用開口
12 前面板部
14 天板部
16 扉体
24 ラック
28 回動軸
30 押さえ手段
36 第1のりリンク
38 第2のリンク
40 ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物の出し入れを行なう操作用開口が一側面に具備され、かつ、この一側面の操作用開口に連通して天井部が開口して形成された装置本体と、
前記装置本体内に配置された被洗浄物の載置台と、
前記載置台を回転させる回転駆動手段と、
外力が加えられることにより、前記装置本体の前記操作用開口および前記天井部開口に跨る2面を閉塞あるいは開放のいずれかの位置に移動する扉体と、を備えた洗浄装置であって、
前記扉体が上方位置から下方位置に移動する第1の移動を行なうときに、前記載置台に配置された前記被洗浄物の上面に押さえ部材が当接し、
前記扉体が下方位置から上方位置に移動する第2の移動を行なうときに、前記押さえ部材の当接を解除する押さえ手段が、前記扉体の天井部裏面に具備されていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記押さえ手段は、前記載置台に載置された被洗浄物の上面に当接する押さえ部材と、前記押さえ部材が前記被洗浄物の上面に当接したときに屈曲して押圧力を許容する屈曲する複数のリンクと、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274145(P2010−274145A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126257(P2009−126257)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(305034889)株式会社キサミツ技研 (5)
【Fターム(参考)】