説明

洗面用排水管

【課題】プラスチック製排水管を現場で、建築躯体に合わせて、長さ調整がされる切断に際して、また弾力性があるが故の変形に際して、剥離、及び亀裂を起こさないようなメッキが施されたポリプロピレン(PP)製排水管を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン(PP)と親和性の塩素化ポリプロピレン系溶剤型プラマー塗料を塗布したポリプロピレン(PP)製排水管表面に、密着性を持ち、該表面を平滑に仕上げ、紫外線(UV)によるアンカー効果を発現する紫外線(UV)硬化型塗料が塗装されてアンダーコート層を形成し、該アンダーコート層を施した排水管の表面に比較的軟らかい金属が真空蒸着されてメッキ層を形成し、該メッキ層の表面には、紫外線(UV)硬化型塗料を塗布し、強度を保持するためのクリアなオーバーコート層が形成されて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的軟らかい金属のメッキが施された洗面用排水管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な排水管類は、金属製のものを使われでいた。しかし、重量が重く、排水の流れに耐え得られるような腐蝕防止処理をしなければならないばかりでなく、高価であるので、最近では、軽く、腐蝕防止処理を必要としない安価なプラスチック製排水管が多用化されている。
プラスチック製排水管は、塩化ビニル(PVC)製のものが一般的に使用されているが、特に、洗面用排水管は、耐薬品性に優れ、排水温度の高低に影響を受けにくく、且つ安価であるポリプロピレン(PP)製排水管が使用されている。ところで、洗面用水槽の下に顕出して使われる排水管では、金属光沢を出して、衛生感、重量感、及び安全感を醸す高級的外観が求められて、真鍮製管にニッケルクロムメッキを施したものが使われているが、しかし、高価となり、価格的に厳しく、下げる必要を生じた場合、及び排水管がキャビネット内に収納されている場合では、ポリプロピレン(PP)製管が使用されている。
しかしながら、所詮、プラスチック製排水管は金属製でないので金属光沢や重量感、強度などに欠けており、外観が安っぽく、排水管が顕出して使われる場合には、その不足を補う金属化のためのメッキが試みられたが、未だ、実現化に値するものがない。
【0003】
ところで、プラスチック製排水管に金属メッキが施されたものとして、塩化ビニル(PVC)製排水管内のヌルヌル発生を阻止するために、内側面に銅メッキを施したものがある(特許文献1)。
この塩化ビニル(PVC)製排水管は、銅、錫などを無電解メッキ、真空蒸着などのメッキ法によって表面に下地メッキ層を形成し、該下地メッキ層を陰極として硫酸銅メッキ液に浸漬し、電気メッキすることによって下地メッキ層の上に、さらに銅メッキ層の積層がされるものである。
【0004】
【特許文献1】 特開2006−266446
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属製排水管より加工性のよい塩化ビニル(PVC)製排水管が内面に銅メッキされ、ヌルヌル発生を銅管と同様に阻止できるようにしたものである。しかし、洗面用排水管では、ポリプロピレン(PP)製管のものが、耐薬品性に優れ、排水温度の高低に影響を受けにくく、そして安価であることで供給されたが、ポリプロピレン(PP)製排水管は、ポリプロピレン(PP)が化学的に安定しており、エッチングしにくいので、塩化ビニル(PVC)製排水管、及びメッキし易いことで知られているアクリコ二トリル・ブタジエン・スチレン(ABS)製のものと同じようにはメッキ処理ができなかった。
【0006】
また、仮に、ポリプロピレン(PP)製排水管にメッキを施すことができたとしても、たやすくメッキが剥離されたり、亀裂してしまって、不具合であった。
【0007】
そこで、本発明は、プラスチック製排水管を現場で、建築躯体に合わせて長さ調整がされる切断に際して、また弾力性あるが故の変形に際して、剥離、及び亀裂を起さないようなメッキが施されたポリプロピレン(PP)製排水管を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗面用排水管は、塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料を塗布したポリプロピレン(PP)製排水管表面に、密着性を持ち、該表面を平滑に仕上げ、紫外線(UV)によるアンカー効果を発現する紫外線(UV)硬化型塗料が塗装されてアンダーコート層を形成し、該アンダーコート層を施した排水管の表面に比較的軟らかい金属が真空蒸着されてメッキ層を形成し、該メッキ層の表面には、紫外線(UV)硬化型塗料を塗布し、強度を保持するためのクリアなオーバーコート層が形成されて構成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗面用排水管は、ポリプロピレン(PP)製排水管である故に、現場で、建築躯体に合わせて長さを調整切断作業が金属管によるよりも容易にでき、ポリプロピレン(PP)製排水管の表面にメッキが施されることによって、金属管と同等の光沢性、重量感、そして高級感ある排水管を供給することができる。
【0010】
本発明の洗面用排水管には、塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料を塗布したポリプロピレン(PP)製配水管表面に紫外線(UV)硬化型塗料が塗布されてアンダーコート層を形成し、該アンダーコート層に比較的軟らかい金属が真空蒸着されてメッキ層を形成してなるものであるので、ポリプロピレン(PP)製管のものであるが故の切断、また弾力性の故の変形では、メッキ層の剥離、亀裂を起さず、特に、剥離部分で人体損傷するなどの危険が免れることになる。
また、メッキ層の表面にオーバーコート層を形成すること、及び比較的柔らかい金属のメッキ層を使用することによって、そのメッキ層の剥離を防止すると共に、万が一、暴力的な外力が加わり破壊されても、その破壊、剥離部分で人体に損傷を与えることがないようにできる。
よって、安全かつ長期に使用できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
メッキが施された洗面用排水管は、図1に示す如く、ポリプロピレン(PP)と親和性の塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料が塗布されたポリプロピレン(PP)製排水管の基材1の表面に、密着性を持ち、凹凸を吸収するように比較的厚みのある紫外線(UV)硬化型塗料が塗布されてアンダーコート層2を形成し、表面が平滑に仕上げられ、紫外線(UV)照射でアンカー効果を齎し、密着強度を得ることになる該アンダーコート層表面に錫(Sn)、アルミニューム(Al)等の軟らかい金属を真空蒸着して金属外観層であるメッキ層3が密着形成され、更に、該メッキ層表面にその強度を保持する為の透明な紫外線(UV)硬化型塗料のオーバーコート層4が形成されてなるものである。
【0012】
ポリプロピレン(PP)製排水管は、その基材1表面に塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料の塗布によるプライマー層11を施し、その上に、アンダーコート層2を形成する。
【0013】
ポリプロピレン(PP)は、汎用プラスチックよりも耐薬品性が優れているために化学的エッチングを難しくし、また、無電解メッキ、真空蒸着などのメッキ法の極性が乏しい故によるこの密着性の悪い点を解消するために、ポリプロピレン(PP)製排水管の素材1の表面に、ポリプロピレン(PP)と親和性の塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料を薄く塗布し、プライマー層11を形成する。
そして、密着性を高める為、プライマー層11は、ポリプロピレン(PP)と材質上類似する塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマーが最適であって、その厚さは、5〜15ミクロンがよい。また、プライマー層11を施すことによって、金属の真空蒸着によるメッキ層3を形成する際に、ポリプロピレン(PP)製排水管の基材1からの水分、ガス分、添加物などによる金属のメッキ層3の酸化、水酸化による密着性の低下を防止し、更にまた、金属メッキ層3自体の機械的強度低下を抑制することになる。
【0014】
アンダーコート層2は、アクリル樹脂系弱溶剤タイプの紫外線(UV)硬化型塗料の塗布でなる。
ポリプロピレン(PP)製排水管基材1の表面に施された塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料の塗布のよるプライマー層11は、表面に凹凸があり、この上面に形成されるアンダーコート層2とのアンカー効果を齎し、プライマー層11とアンダーコート層2との密着性を確保することができる。
【0015】
アンダーコート層2は、下地に塗布されたプライマー層11の表面の凹凸を埋め、レベリングを行って平滑な表面が形成され、それと同時に真空蒸着されるメッキ層3を均一に、そして綺麗な平滑面に形成するための下地処理となる。
アンダーコート層2は、紫外線(UV)硬化型塗料を塗布して形成され、紫外線(UV)を照射することによってアンカー効果を発現し、プライマー層11と、及びメッキ層3との密着性を保持させるためのものであり、その塗布厚さは、レベリングと密着性とを考慮すると、10〜20ミクロンが必要である。
【0016】
金属メッキ層3は、アルミニューム(Al)、錫(Sn)などの軟らかい金属であって、真空蒸着によって形成される。
剥離や亀裂などの捲れ片によって創傷をすることのない軟らかい金属のメッキ層3厚さは、ポリプロピレン(PP)製排水管の曲げに際して生じる基材1の変形に対して馴染める厚さであって、200〜500オングストロームが適している。
【0017】
オーバーコート層4は、アクリル樹脂系弱溶剤タイプの紫外線(UV)硬化型塗料を用い、軟らかい金属のメッキ層3を保護し、その強度を保持すると共に、該メッキ層3の酸化を防止するものである。そして、オーバーコート層4には、通常、クリア(無色)であるが、若干の色を付けて、特殊な外観を齎してもよい。
オーバーコート層4は、紫外線(UV)硬化型塗料を塗布して形成し、紫外線(UV)の照射で重合して硬化され、傷などを付き難くする。
よって、オーバーコート層4は、輸送時、施工時、使用時、などで外力による傷の防止がされ、軟らかい金属の真空蒸着によるメッキ層3を保護するものである。
そして、オーバーコート層4の厚さは、10〜20ミクロン程度が最適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 ポリプロピレン製排水管の組成を示す一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ポリプロピレン(PP)製排水管の基材
11 プライマー層
2 アンダーコート層
3 メッキ層
4 オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素化ポリプロピレン系溶剤型プライマー塗料を塗布したポリプロピレン(PP)製排水管表面に、密着性を持ち、該表面を平滑に仕上げ、紫外線(UV)によるアンカー効果を発現する紫外線(UV)硬化型塗料が塗装されてアンダーコート層を形成し、該アンダーコート層を施した排水管の表面に比較的軟らかい金属が真空蒸着されてメッキ層を形成し、該メッキ層の表面には、紫外線(UV)硬化型塗料を塗布し、強度を保持するためのクリアなオーバーコート層が形成されて構成したことを特徴とする洗面用排水管。

【図1】
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【公開番号】特開2010−156449(P2010−156449A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17306(P2009−17306)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(392028767)株式会社日本アルファ (73)
【出願人】(509027939)株式会社アスティホリエ (1)
【Fターム(参考)】