説明

活性エネルギー線硬化性組成物及び太陽電池用裏面保護シート

【課題】太陽電池用裏面保護シートを構成する活性エネルギー線硬化接着層の形成に最適で、接着力、耐湿熱性に優れ、さらに歩留まりがよく、エージングを不要にすることで生産性に優れ、接着剤層中の気泡発生による外観不良やデラミネーションが生じない活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分とする(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)と(メタ)アクリロイル基を有するポリオール成分(a2)とポリイソシアネート成分(a3)とを反応させてなる、(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が5000〜150000であって、ガラス転移温度が−60〜−10℃のウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)及びアジリジン系化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用裏面保護シートを構成する活性エネルギー線硬化接着層に適した、接着力、耐湿熱性、生産性に優れ、接着剤層中の気泡発生による外観不良やデラミネーションが生じない活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから環境汚染がなくクリーンなエネルギー源として太陽電池が注目され、有用なエネルギー資源としての太陽エネルギー利用の面から鋭意研究され実用化が進んでいる。これら太陽電池は、太陽光が入射してくる面と反対側の面に、太陽電池素子を保護する目的で裏面保護シートが設けられている。太陽電池用裏面保護シートには耐候性、水蒸気透過性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能が必要とされ、数種類のシート状部材を積層させたものが一般的である。
【0003】
このシート状部材の積層には主剤である水酸基含有の樹脂と硬化剤であるイソシアネート化合物を反応させて硬化させるポリウレタン系接着剤が使用されているのが一般的である(特許文献1、2)。
ところで、複数のシート状部材を積層し、太陽電池用裏面保護シートを工業的に生産する場合、長尺状態のものをロール状に巻き取る。しかし、ポリウレタン系接着剤は硬化反応が遅いので、ロール状に巻き取った積層体中の接着剤層の硬化が不十分となり易く、巻き取った後、シート状部材がずれ易く、不良品発生率が高く、歩留まりが悪いという問題があった。
また、十分に硬化させる為に高温に維持した倉庫にて数日エージングさせる必要があり、その点でも生産性が悪く、倉庫の温度を維持する為の電気代コストがかかるなど生産コストが大きくなるという問題もあった。
さらに、硬化剤であるイソシアネート化合物は、主剤である水酸基含有樹脂と反応するだけでなく、空気中の水とも反応する。水と反応した後、脱炭酸反応が起きるために、シート状部材を積層した後に接着剤層に気泡が発生し、外観不良やデラミネーションが生じるという問題もあった。
【0004】
また、特許文献3に、ポリカーボネートジオールと、分子中に2個の水酸基と2個のエチレン性不飽和基とを含有する2官能エポキシ(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとを反応させた不飽和基含有ウレタン樹脂に光重合開始剤を配合させた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が開示されているが、これを太陽電池裏面保護シート用の接着剤として使用した場合、シート状間の接着力および耐湿熱性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−320218号公報
【特許文献2】特開2007−253463号公報
【特許文献3】特開2008−127475号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、太陽電池用裏面保護シートを構成する活性エネルギー線硬化接着層の形成に最適で、接着力、耐湿熱性に優れ、さらに歩留まりがよく、エージングを不要にすることで生産性に優れ、接着剤層中の気泡発生による外観不良やデラミネーションが生じない活性エネルギー線硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分とする(メタ)アクリロイル基を有しないポリオール成分(a1)と(メタ)アクリロイル基を有するジオール成分(a2)とポリイソシアネート成分(a3)とを反応させてなる、(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が5000〜150000であって、ガラス転移温度が−60〜−10℃のウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)及びアジリジン系化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0008】
第2の発明は、ポリオール成分(a2)がジオール成分であり、ポリイソシアネート成分(a3)がジイソシアネート成分であることを特徴とする第1の発明に記載の活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0009】
第3の発明は、エポキシ樹脂(B)の数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする第1又は第2の発明に記載の活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0010】
第4の発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)をさらに含有することを特徴とする第1の発明ないし第3の発明のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0011】
第5の発明は、(A)〜(D)の合計100重量%中に、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を50〜85重量%、エポキシ樹脂(B)を5〜40重量%、アジリジン系化合物(C)を0.2〜10重量%、及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を0〜30重量%含有することを特徴とする第1の発明ないし第4の発明いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【0012】
第6の発明は、第1の発明ないし第5の発明いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物から形成された活性エネルギー線硬化接着剤層を介して、少なくとも2つ以上のシート状部材が積層されてなる太陽電池用裏面保護シートに関する。
【0013】
第7の発明は、シート状部材の1つが、金属箔であるか、あるいは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されてなる蒸着層付きプラスチックフィルムであることを特徴とする第6の発明の太陽電池用裏面保護シートに関する。
【0014】
第8の発明は、活性エネルギー線硬化接着剤層のガラス転移温度が、−20〜20℃であることを特徴とする第6又は第7の発明の太陽電池用バックシートに関する。
【0015】
第9の発明は、一のシート状部材に、第1の発明ないし第5の発明いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、形成された活性エネルギー線硬化性組成物層に他のシート状部材を重ねた後、一方のシート状部材側から又は両シート状部材側から、活性エネルギー線を照射し、両シート状部材間に活性エネルギー線硬化接着剤層を形成することを特徴とする太陽電池用裏面保護シートの製造方法に関する。
【0016】
第10の発明は、一のシート状部材に、第1の発明ないし第5の発明いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性組成物層を形成し、該活性エネルギー線硬化性組成物層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に他のシート状部材を積層することを特徴とする、太陽電池用裏面保護シートの製造方法に関する。
【0017】
第11の発明は、一のシート状部材に、第1の発明ないし第5の発明いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性組成物層を形成し、該活性エネルギー線硬化性組成物層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に、他のシート状部材形成用塗液を塗工し、熱もしくは活性エネルギー線により他のシート状部材を形成することを特徴とする、太陽電池用裏面保護シートの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物によって、シート状部材間の接着力、耐湿熱性に優れ、さらに歩留まりがよく、エージングを不要にすることで生産性に優れ、接着剤層中の気泡発生による外観不良やデラミネーションが生じない太陽電池用裏面保護シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、詳細に説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分とする(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)と(メタ)アクリロイル基を有するジオール成分(a2)とジイソシアネート成分(a3)とを反応させて得ることができる。
ウレタン(メタ)アクリレートの数平均分子量(Mn)は、5000〜150000であり、10000〜100000であることが好ましい。数平均分子量が5000より小さいと、シート状部材と接着剤層との分子間力による接着力が小さくなるためシート状部材間の接着力が不十分となりやすくなる。数平均分子量が150000より大きいと、活性エネルギー線硬化性組成物が高粘度になりやすくなったり、活性エネルギー線硬化性接着剤を構成する他の成分との溶解性が悪くなりやすくなったり、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層にシート状部材を重ねた際、シート状部材に対する接着剤層の濡れ性が乏しくなり、その結果シート状部材間の接着力が不十分となりやすくなったり、するなどの問題が生じやすくなる。
【0020】
ウレタン(メタ)アクリレートのガラス転移温度は、−60〜−10℃であることが好ましく、さらに−50〜−20℃であることが好ましい。ガラス転移温度が−60℃より低いと耐湿熱性試験時にシート状部材間の接着力が低下しやすくなる。ガラス転移温度が−10℃より高いと硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層にシート状部材を重ねた際、シート状部材に対する接着剤層の濡れ性が乏しくなり、その結果シート状部材間の接着力が不十分となりやすくなる。
【0021】
本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、シート状部材間の接着力と耐湿熱性の両立の点から(メタ)アクリロイル基当量が500〜40000であることが好ましく、1000〜30000であることがより好ましい。ここで言う(メタ)アクリロイル基当量とは、ウレタン(メタ)アクリレート分子中の(メタ)アクリロイル基1つあたりの数平均分子量である。
(メタ)アクリロイル基当量が500よりも小さいと、活性エネルギー線硬化時の硬化収縮によりシート状部材間の接着力が不十分となる傾向にある。一方、(メタ)アクリロイル基当量が40000よりも大きいと、接着剤層の架橋が不十分となり、耐湿熱性試験時にシート状部材間の接着力が低下する傾向にある。
【0022】
また、本発明に用いられるウレタン(メタ)アクリレートは、シート状部材間の接着力、および耐湿熱性の点からウレタン結合当量が200〜3000であることが好ましく、250〜2000であることがより好ましい。ここで言うウレタン結合当量とは、ウレタン(メタ)アクリレート分子中のウレタン結合1つあたりの数平均分子量である。
ウレタン結合当量が200よりも小さいと、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層の凝集力が大きくなり、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層にシート状部材を重ねた際、シート状部材に対する接着剤層の濡れ性が乏しくなり、接着力が低下する傾向にある。一方、ウレタン結合当量が3000よりも大きいと、耐湿熱性の良好なウレタン結合が少なくなり、耐湿熱性試験後にシート状部材間の接着力が低下する傾向にある。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートの原料として使用される(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)としては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのいわゆるプレポリマーや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,9−ナノンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどが挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を併用してもよいが、カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分として含有することが大事である。カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分として含有することによって、形成される接着剤層の耐湿熱性を向上できる。なお、(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)として、ウレタン結合当量、ガラス転移温度を調整する為にカーボネート構造を有しないジオール成分(a1−2)も使用することは可能であるが、(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)100重量%中、カーボネート構造を有しないジオール成分(a1−2)は、0〜80重量%であることが好ましい。
【0024】
カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)の数平均分子量が小さい場合、例えばMnが3000未満のような場合には、数平均分子量の小さなカーボネート構造を有しないジオール成分(a1−2)を併用するとウレタン結合当量が小さくなり接着力が低下するため、カーボネート構造を有しないジオール成分(a1−2)は少ない方が好ましい。例えば、カーボネート構造を有しないジオール成分(a1−2)は0〜50重量%あることが好ましい。
【0025】
前記プレポリマーの数平均分子量は、500程度以上であることが好ましく、500〜5000であることが好ましい。数平均分子量の小さなプレポリマーを用いると、ウレタン結合基当量が小さくなる傾向にある。ウレタン結合基当量が小さくなりすぎると、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層の凝集力が大きくなりすぎる。凝集力の大きすぎる硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層にシート状部材を重ねた場合、シート状部材に対する接着剤層の濡れ性が乏しくなり、その結果シート状部材間の接着力が低下する傾向にある。一方、前記プレポリマーの数平均分子量が5000を越えるような場合は、凝集力不足によるシート状部材間の接着力の低下が懸念される。
【0026】
ウレタン(メタ)アクリレートの原料として使用される(メタ)アクリロイル基を有するポリオール成分(a2)としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、1,9−ノナンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレートの原料として使用されるポリイソシアネート成分(a3)としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは少なくとも一種以上から選択される上記イソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体が挙げられ、これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。耐候性の点から前記ジイソシアネート成分としては、脂環式ジイソシアネートが好ましい。
【0028】
本発明におけるウレタン(メタ)アクリレートは、原料を無溶剤下で反応させて製造しても、有機溶剤中で反応させて製造しても良い。
有機溶剤としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物などの各種溶剤を使用することができる。
また、必要に応じて触媒を添加することができ、たとえばジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1 ,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル化合物;テレフタル酸ジグリシジルエステルなどのグリシジルエステル化合物;ダイセル化学工業(株)製のEHPE−3150などの脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N’,N’−テトラグリシジルメタキシレンジアミンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物などのエポキシ化合物が挙げられる。これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂を活性エネルギー線硬化性組成物に含有させることにより、耐湿熱試験時にウレタン(メタ)アクリレートより分解して発生した官能基とエポキシ基が反応するので、接着剤層の分子量低下を抑制でき、接着力低下を抑えることができる。
【0030】
接着剤層の耐湿熱性と、ウレタン(メタ)アクリレート(A)と相溶性の観点から、エポキシ樹脂(B)としては数平均分子量500〜5000のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が500より小さいと接着剤層が柔らかくなり十分な耐湿熱性が得られない傾向にある。エポキシ樹脂の数平均分子量が5000より大きいと活性エネルギー線硬化性組成物の他の成分との相溶性が悪化し、組成物が濁りやすくなる傾向にある。
【0031】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれるアジリジン系化合物(C)としては、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタンなどが挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
アジリジン化合物を活性エネルギー線硬化性組成物に含有させることにより、シート状部材とアジリジン化合物の間に共有結合を形成させ、シート状部材への接着力を向上させることができる。
【0032】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物に含まれる、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)としては、ラジカル重合系化合物が挙げられ、分子中にα,β−不飽和二重結合を有する2官能以上の多官能モノマーおよびもしくは単官能のモノマー、ビニル型モノマー、アリル型モノマー、アクリレート型もしくはメタクリレート型(以下、(メタ)アクリレート型という)モノマー等のラジカル重合系モノマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン、(メタ)アクリロイル(メタ)アクリル等のラジカル重合系プレポリマー、ラジカル重合系ポリマーなどを上げることができる。これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、光重合開始剤、活性エネルギー線硬化性を有しない化合物などを含有させることができる。
【0034】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を使用することができる。例えば、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォニルホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノールオリゴマー、イソプロピルチオキサントン、(4−(メチルフェニルチオ)フェニル)フェニルメタン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン等であり、これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
また、光重合開始剤とともに、増感剤としてn-ブチルアミン、トリエチルアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル等の脂肪族アミン、芳香族アミンを併用しても良い。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性を有しないその他の化合物をさらに含有することができる。活性エネルギー線硬化性を有しない化合物としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂などの樹脂、イソシアネート化合物、などの硬化剤、アルミキレート化合物、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、接着助剤、分散剤、乾燥調整剤、耐摩擦剤等を配合することができる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性組成物の固形分を基準として、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を50〜85重量%、エポキシ樹脂(B)を5〜40重量%、アジリジン系化合物(C)を0.2〜10重量%、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を0〜30重量%含有することが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を60〜85重量%、エポキシ樹脂(B)を10〜39.8重量%、アジリジン系化合物(C)を0.2〜5重量%、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を0〜15重量%含有することがより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、50重量%よりも少ないと接着剤層の凝集力が低下し、接着力および耐湿熱性が不十分となる傾向にある。85重量%よりも多いと耐湿熱性が低下する傾向にある。
エポキシ樹脂(B)が5重量%未満だと、耐湿熱性を向上させる効果が得られず、40重量%を越えると接着剤層の架橋密度が低下するために耐湿熱性が低下する傾向にある。
アジリジン化合物(C)が0.2重量%よりも少ないと接着力が不十分となりやすく、10重量%よりも多いと耐湿熱性が低下する傾向にある。
ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)が30重量%より多いと硬化時の収縮により接着力が不十分となりやすい。
【0037】
本発明の太陽電池裏面保護用シートを構成する活性エネルギー線硬化接着剤層は、ガラス転移温度が−20℃〜20℃であることが好ましい。換言すると、活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線の照射により硬化させた場合に、ガラス転移温度が−20℃〜20℃の接着剤層を形成し得るものであることが好ましい。
ガラス転移温度が20℃を超える場合には、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層にシート状部材を重ねた場合、シート状部材に対する接着剤層の濡れ性が乏しくなり、その結果シート状部材間の接着力が低下する傾向にある。一方、ガラス転移温度が−20℃未満の場合には接着剤層の凝集力が低下し、接着力および耐湿熱性が不十分となりやすい。
【0038】
本発明の太陽電池用裏面保護シートは、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により形成される活性エネルギー線硬化接着剤層を介して、少なくとも1つ以上のシート状部材が積層されてなるものである。
本発明の太陽電池用裏面保護シートを構成するシート状部材は特に限定されるものではなく、プラスチックフィルム、金属箔、前記プラスチックフィルムに金属酸化物もしくは非金属酸化物が蒸着されてなるもの等が挙げられる。
【0039】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、
ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリスルホン系樹脂フィルム、ポリ(メタ)アクリル系樹脂フィルム、
ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエチレンテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。
これらのプラスチックフィルムを支持体とし、アクリル系、フッ素系塗料がコーティングされてなるフィルムや、ポリフッ化ビニリデンやアクリル樹脂などが共押出しにより積層されてなる多層フィルムなどを使用することができる。さらに、ウレタン系接着剤層などを介して上記のプラスチックフィルムが複数積層されたシート状部材を用いても良い。
【0040】
金属箔としては、アルミニウム箔が挙げられる。
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる
【0041】
これらの中でも、太陽電池モジュールとして使用する際の耐候性、水蒸気透過性、電気絶縁性、機械特性、実装作業性などの性能を満たす為に、温度に対する耐性を有する、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルムと、
太陽電池セルの水の影響による出力低下を防止する為に水蒸気バリア性を有する金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されたプラスチックフィルムまたはアルミニウム箔などの金属箔と、
光劣化による外観不良発生を防止する為に耐候性の良好なフッ素系樹脂フィルムとが積層されてなる太陽電池用裏面保護シートが好ましい。
【0042】
本発明の太陽電池裏面保護用シートは、例えば、次のような製造方法で得ることができる。
[1] 一のシート状部材に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、形成された活性エネルギー線硬化性接着剤層に他のシート状部材を重ねた後、一方のシート状部材側から又は両シート状部材側から、活性エネルギー線を照射し、両シート状部材間に活性エネルギー線硬化接着剤層を形成したり、あるいは
【0043】
[2] 一のシート状部材に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性接着剤層を形成し、該活性エネルギー線硬化性接着剤層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に他のシート状部材を積層したり、あるいは、
【0044】
[3] 一のシート状部材に活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性接着剤層を形成し、該活性エネルギー線硬化性接着剤層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に、他のシート状部材形成用塗液を塗工し、熱もしくは活性エネルギー線により他のシート状部材を形成したりすることによって、本発明の太陽電池用裏面保護シートを製造することができる。
[3]の方法において用いられる他のシート状部材形成用塗液としては、プラスチックフィルムの形成に使用され得る、ポリエステル系樹脂溶液、ポリエチレン系樹脂溶液、ポリプロピレン系樹脂溶液、ポリ塩化ビニル系樹脂溶液、ポリカーボネート系樹脂溶液、ポリスルホン系樹脂溶液、ポリ(メタ)アクリル系樹脂溶液、フッ素系樹脂溶液等が挙げられる。
【0045】
[1]の方法は、2つのシート状部材で活性エネルギー線硬化性接着剤層を挟んだ状態で活性エネルギー線を照射するので、活性エネルギー線硬化性組成物がラジカル重合性の場合、硬化の際に酸素阻害を受けにくいという長所を持つ。しかし、その反面、シート状部材を通して活性エネルギー線硬化性接着剤層に活性エネルギー線が照射されることになるので、活性エネルギー線硬化性組成物がラジカル重合性であるか否かに関わらず、活性エネルギー線をできるだけ減衰させることなく透過し得るシート状部材を使用することが肝要である。
[2]の方法は、[1]の方法とは全く反対の特徴を有する。即ち、酸素阻害を受けやすい状況で活性エネルギー線を照射することになる反面、使用し得るシート状部材の選択肢が広がるという長所を有する。
[3]の方法は、最初の工程で酸素阻害を受けやすい状況で活性エネルギー線を照射することになる反面、形成された接着剤層に他のシート状部材形成用塗液を塗工し、他のシート状部材を形成するので、接着剤層と他のシート状部材との接着力を確保しやすいという長所を有する。
太陽電池用裏面保護シートとして要求される性能、価格、生産性等を勘案して、種々の製造方法を選択したり、さらに組み合わせたりすることができる。
なお、[1]、[2]の場合、硬化性接着剤層に又は硬化接着剤層に他のシート状部材を重ねる際に、加熱及び/又は加圧条件下に重ね合わせることができる。
【0046】
活性エネルギー線硬化性組成物をシート状部材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程においてシート状部材への影響がない範囲内で溶剤が含まれてもよい。活性エネルギー線硬化性組成物が溶剤を含む場合には、溶剤を揮散させた後、活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させることができる。
溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素化合物、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。これら溶剤は単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
本発明において活性エネルギー線硬化性組成物をシート状部材に塗工する装置としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等が挙げられる。
シート状部材に塗布される接着剤量は、乾燥膜厚で0.1〜50g/m程度であることが好ましい。
【0048】
活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させるために照射する活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、γ線、赤外線、可視光線などが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により本発明についてより具体的に説明するが、本発明が実施例に限定されるものでない。なお、実施例中の部および%は、すべて重量部および重量%を示している。
以下にウレタン(メタ)アクリレートの合成、活性エネルギー線硬化性組成物、および太陽電池用裏面保護シートの作成方法について示す。
【0050】
(ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
合成例1
重合槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管、滴下槽を備えた重合反応装置の重合槽に、メチルエチルケトン(MEK)を823.8部、クラレポリオールC−2050(クラレ社製)を746.0部、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を54.1部、プロピレングリコールジグリシジルエーテルに2モルのアクリル酸が付加した化合物であるエポキシエステル70PA(共栄社化学社製)を23.7部仕込み、窒素気流下、攪拌しながら重合槽内の温度を80℃に上げた。80℃になったらジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を0.5部加えた。次に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)176.2部とMEK176.2部との混合物を滴下槽から、2時間かけて重合槽に滴下した。滴下終了1時間後にDBTDLを0.05部加え、その後、赤外分光光度計でイソシアネート基の赤外吸収ピークが消滅するまで反応を続け、イソシアネート基の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、反応を終了した。重合槽の温度を40℃まで下げて、MEKを500.0部加えて、固形分40%のウレタンアクリレート(A−1)溶液を得た。(A−1)の性状を表−1に示す。
【0051】
合成例2〜6
表−1の組成に従って、合成例1と同様の方法で反応を行いウレタンアクリレート(A−2)〜(A−6)溶液を得た。(A−2)〜(A−6)の性状を表−1に示す。
【0052】
<Mn、Mw>
Mn、Mwの測定は東ソー社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「HPC−8020」を用い、溶媒はテトラヒドロフランを用いた。MnとMwはポリスチレン換算で行った。
【0053】
<ガラス転移温度(Tg)>
ガラス転移温度の測定は、セイコーインスツルメンツ社製DSC「RDC220」を用いて行った。ウレタンアクリレート(A−1)〜(A−6)溶液を乾燥した試料、約10mgをアルミニウムパンに量り採り、DSC装置にセットして液体窒素で−100℃まで冷却した後、10℃/minで昇温して得られたDSCチャートからガラス転移温度を算出した。
【0054】
【表1】

【0055】
(活性エネルギー線硬化性組成物1〜9)
上記合成により得られたウレタン(メタ)アクリレート(A)溶液、エポキシ樹脂(B)、アジリジン化合物(C)、ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)、光重合開始剤、活性エネルギー線硬化性を有しない他の化合物、溶剤を表2に示す重量部に従って配合し、活性エネルギー線硬化性組成物を得た。
【0056】
【表2】

【0057】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
エピコート1001:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製) 数平均分子量900
エピコート1002:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製) 数平均分子量1200
ケミタイトDZ−22E:4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン(日本触媒社製)
ケミタイトPZ−33:2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート](日本触媒社製)
ビスコート#230:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学社製)
M305:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成社製)
M315:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(東亞合成社製)
ビームセット700:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(荒川化学社製)
S−510:3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(チッソ社製)
イルガキュア819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
【0058】
表2に示す各接着剤の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、以下のようにして求めた。
厚み約200μの接着剤硬化物シートを作成し、動的粘弾性測定装置DVA−200(アイティー計測制御社製)を用いて測定し、tanδのピーク値の温度をガラス転移温度とした。
なお、接着剤硬化物シートは、シリコーン系離形層を有するポリエステルフィルムにブレードコーターにて接着剤を塗工し、溶剤を乾燥後に紫外線(120Wメタルハライドランプ、UV−A領域の積算光量500mJ/cm)を照射し活性エネルギー線硬化接着剤層を形成させ、ポリエステルフィルムを剥離することにより得た。
【0059】
(太陽電池用裏面保護シートの作成方法1〜3)
作成方法1
シート状部材(S1)に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、他のシート状部材(S2)を重ねつつ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層後、他のシート状部材(S2)側から紫外線(120Wメタルハライドランプ、UV−A領域の積算光量500mJ/cm)を照射し活性エネルギー線硬化接着剤層を形成させ太陽電池用裏面保護シートを作成した。なお、接着剤層の量は8〜10g/平方メートルとした。
【0060】
作成方法2
シート状部材(S1)に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面側から紫外線(120W高圧水銀ランプ、UV−A領域の積算光量200mJ/cm)を照射し活性エネルギー線硬化接着剤層を硬化させた後、他のシート状部材(S2)を重ねつつ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層後、太陽電池用裏面保護シートを作成した。なお、接着剤層の量は8〜10g/平方メートルとした。
【0061】
作成方法3
シート状部材(S1)に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面側から紫外線(120W高圧水銀ランプ、UV−A領域の積算光量200mJ/cm)を照射し活性エネルギー線硬化接着剤層を硬化させた後、他のシート状部材(S2)を重ねつつ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層後、積層物を作成した。
次にこの積層物に活性エネルギー線硬化性接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面側から紫外線(120W高圧水銀ランプ、UV−A領域の積算光量200mJ/cm)を照射し活性エネルギー線硬化接着剤層を硬化させた後、もう一つのシート状部材(S3)を重ねつつ、60℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層後、太陽電池用裏面保護シートを作成した。なお、2つの接着剤層の量はいずれも8〜10g/平方メートルとした。
【0062】
(実施例1〜9、比較例1〜6)
表3に示す活性エネルギー線硬化性接着剤と、太陽電池用裏面保護シートの作成方法、シート部材の組合せで、太陽電池用裏面保護シートを得た。後述する方法に従い、接着性、耐湿熱性、生産性、気泡の有無を評価した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
表3中のシート部材(S1〜S3)の略語の意味は以下の通りである。
・PET(1):無色透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm)
・PET(2):無色透明のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)
・蒸着PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)の片面に、珪素酸化物とフッ化マグネシウムの比率(モル%)が90/10の混合物を500Åの厚さに蒸着したフィルム。
・AL(1):アルミニウム箔(厚さ30μm)の片面に10μの耐候性樹脂層*を設けたもの。
耐候性樹脂層*:オブリガートPS2012(白) 主剤:硬化剤(13:1)(AGCコーテック社製)
・AL(2):アルミニウム箔(厚さ30μm)。
・白色PET:白色ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)
【0065】
表3中の各評価方法、評価基準は以下の通りである。
(1)接着性
太陽電池用裏面保護シートを200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験を行った。各シート状部材間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示した。
○・・・4N以上
△・・・3N以上〜4N未満
×・・・3N未満
【0066】
(2)耐湿熱性
太陽電池用裏面保護シートを85℃、85%RH雰囲気下に1000時間保存した。保存した太陽電池用裏面保護シートを200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM D1876−61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて荷重速度300mm/分でT型剥離試験を行った。各シート状部材間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示した。
○・・・4N以上
△・・・3N以上〜4N未満
×・・・3N未満
【0067】
(3)生産性
50cm巾、500m長の太陽電池用裏面保護シートのロール状物を作成し、巻芯を天地方向にした状態に立て、外周をつかみ持ち上げた。
○・・・接着したシート内にズレが生じることはなく、ロールの形状も維持できた。
×・・・接着したシート内にズレが生じ、ロールの形状も維持できなかった。
【0068】
(4)気泡、浮きの有無
50cm巾、500m長の太陽電池用裏面保護シートのロール状物を作成し、巻芯を天地方向にした状態に立て、60℃の環境に1週間保存した。
透明なシート状部材を通して接着剤層の状態を観察したり、シート状部材の浮きの有無を観察したりした。
○・・・異常なし
△・・・小さな気泡発生又は小さな浮きが発生。
×・・・大きな気泡発生又は大きな浮きが発生。
【0069】
表3に示されるように、カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分とする(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)と(メタ)アクリロイル基を有するジオール成分(a2)とジイソシアネート成分(a3)とを反応させてなる、(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が5000〜150000であって、ガラス転移温度が−60〜−10℃のウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)及びアジリジン系化合物(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、少なくとも2つ以上のシート部材を積層させることでシート状部材間の接着力、耐湿熱性に優れ、さらに歩留まりがよく、エージングを不要にすることで生産性に優れ、接着剤層中の気泡発生による外観不良やデラミネーションが生じない太陽電池用裏面保護シートを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

カーボネート構造を有するジオール成分(a1−1)を必須成分とする(メタ)アクリロイル基を有しないジオール成分(a1)と(メタ)アクリロイル基を有するポリオール成分(a2)とポリイソシアネート成分(a3)とを反応させてなる、(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が5000〜150000であって、ガラス転移温度が−60〜−10℃のウレタン(メタ)アクリレート(A)、エポキシ樹脂(B)及びアジリジン系化合物(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
ポリオール成分(a2)がジオール成分であり、ポリイソシアネート成分(a3)がジイソシアネート成分であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂(B)の数平均分子量が500〜5000であることを特徴とする請求項1又2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
(A)〜(D)の合計100重量%中に、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を50〜85重量%、エポキシ樹脂(B)を5〜40重量%、アジリジン系化合物(C)を0.2〜10重量%、及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(D)を0〜30重量%含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物から形成された活性エネルギー線硬化接着剤層を介して、少なくとも2つ以上のシート状部材が積層されてなる太陽電池用裏面保護シート。
【請求項7】
シート状部材の1つが、金属箔であるか、あるいは、プラスチックフィルムの少なくとも一方の面に金属酸化物もしくは非金属無機酸化物が蒸着されてなる蒸着層付きプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項6記載の太陽電池用裏面保護シート。
【請求項8】
活性エネルギー線硬化接着剤層のガラス転移温度が、−20〜20℃であることを特徴とする請求項6または7記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
一のシート状部材に、請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、形成された活性エネルギー線硬化性組成物層に他のシート状部材を重ねた後、一方のシート状部材側から又は両シート状部材側から、活性エネルギー線を照射し、両シート状部材間に活性エネルギー線硬化接着剤層を形成することを特徴とする太陽電池用裏面保護シートの製造方法。
【請求項10】
一のシート状部材に、請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性組成物層を形成し、該活性エネルギー線硬化性組成物層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に他のシート状部材を積層することを特徴とする、太陽電池用裏面保護シートの製造方法。
【請求項11】
一のシート状部材に、請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、活性エネルギー線硬化性組成物層を形成し、該活性エネルギー線硬化性組成物層側から及び/又はシート状部材側から活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化接着剤層を形成した後、該活性エネルギー線硬化接着剤層に、他のシート状部材形成用塗液を塗工し、熱もしくは活性エネルギー線により他のシート状部材を形成することを特徴とする、太陽電池用裏面保護シートの製造方法。

【公開番号】特開2011−21173(P2011−21173A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279067(P2009−279067)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】