説明

活性光線硬化型インクジェットインクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置

【課題】 文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】 光開始剤、光重合性化合物、顔料を含有する活性光線硬化型インクジェットインクの4色以上からなる活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいて、該インクセットに含まれるブラックインクは光重合性化合物としてオキセタン化合物及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリレート化合物とを併用し、更に、該ブラックインクを除く3色以上のインク中あるいは該ブラックインクを含む全部のインク中に330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な記録材料に高精細な画像を安定に再現できる活性光線硬化型インクジェットインクセット、そのインクセットを用いた画像形成方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップが問題となる。そこで、専用紙と異なる被転写媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後紫外線(UV)光により架橋させるUVインクジェット方式などである。
【0004】
中でも、UVインクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、紫外線硬化型インクジェットインクが開示されて(例えば、特許文献1、2参照。)いる。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録材料の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、様々な記録材料に対して、高精細な画像を形成することは不可能である。
【0006】
特に、紫外線硬化型インクジェット用インクにおいて、例えば、カチオン重合性化合物を用いたインクは(例えば、特許文献3〜6参照。)、酸素阻害作用をうけることがないが、分子レベルの水分(湿度)の影響を受けやすいといった問題がある。
【0007】
そして、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、フェノチアジン誘導体、チオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を増感剤として用いることはよく知られている(例えば、特許文献4〜6参照。)が、インクジェットインクとして用いて高精細な画像を形成する場合、安定に画像形成できる構成ではなかった。また、特にブラックインク、ホワイトインクにおいて、環境(温度、湿度)により吐出・硬化性が不安定となりやすいという問題があった。
【特許文献1】特開平6−200204号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特表2000−504778号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2002−188025号公報 (第2〜第7頁)
【特許文献4】特許第3437069号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特開2000−239648号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【特許文献6】特開2002−239309号公報 (特許請求の範囲、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0010】
(請求項1)
光開始剤、光重合性化合物、顔料を含有する活性光線硬化型インクジェットインクの4色以上からなる活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいて、該活性光線硬化型インクジェットインクセットに含まれる活性光線硬化型インクジェットブラックインクは光重合性化合物としてオキセタン化合物及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリレート化合物とを併用し、更に、該活性光線硬化型インクジェットブラックインクを除く3色以上の活性光線硬化型インクジェットインク中あるいは該活性光線硬化型インクジェットブラックインクを含む全部の活性光線硬化型インクジェットインク中に330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0011】
(請求項2)
増感剤が、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、フェノチアジン誘導体、チオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0012】
(請求項3)
前記活性光線硬化型インクジェットブラックインク中の光開始剤としてヨウドニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤を1〜10質量%含有し、光ラジカル発生剤を0〜1質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0013】
(請求項4)
前記活性光線硬化型インクジェットインクセットが活性光線硬化型インクジェットホワイトインクを有する場合、該活性光線硬化型インクジェットホワイトインク中の光重合性化合物としてオキセタン化合物及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリレート化合物とを併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0014】
(請求項5)
前記活性光線硬化型インクジェットホワイトインク中の光開始剤としてヨウドニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤を1〜10質量%含有し、光ラジカル発生剤を0〜1質量%含有することを特徴とする請求項4に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0015】
(請求項6)
光開始剤として光照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩を含有し、活性光線硬化型インクジェットブラックインク及び活性光線硬化型インクジェットホワイトインク以外の3色以上の活性光線硬化型インクジェットインク中の光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0016】
(請求項7)
各活性光線硬化型インクジェット色インクの25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【0017】
(請求項8)
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットの活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【0018】
(請求項9)
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総活性光線硬化型インクジェットインク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【0019】
(請求項10)
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出する活性光線硬化型インクジェットインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【0020】
(請求項11)
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【0021】
(請求項12)
請求項8〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、文字品質に優れ、色混じりの発生のない、高精細な画像を再現性よく非常に安定に記録することができる活性光線硬化型インクジェットインクセット、画像形成方法及びインクジェット記録装置を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を更に詳しく説明する。
【0024】
本発明者は、4色以上の活性光線硬化型インクジェットインク(以後単にインクともいう)からなる活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいて、活性光線硬化型インクジェットブラックインク(以後単にブラックインクともいう)中の光重合性化合物としてオキセタン化合物及びまたは脂環式エポキシ化合物と(メタ)アクリレート化合物とを併用し、更に、ブラックインクを除く3色以上のインク中あるいはブラックインクを含む全インク中に330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を含有することで、前記問題を解決できることを見出した。
【0025】
更にブラックインク中の光開始剤としてはヨウドニウム塩あるいはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤のみを用い、実質光ラジカル発生剤は含有しない(1質量%以下)ことがより好ましい。活性光線硬化型インクジェットホワイトインク(以後単にホワイトインクともいう)についてもブラックインクと同様な組成にすることが好ましい。
【0026】
最も好ましい構成として、光開始剤としては活性光線照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩を用い、かつ、ブラックインク以外の3色以上のインク中の光重合性化合物としては少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種のオキシラン基を有する化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを用いることが挙げられる。
【0027】
本発明の活性光線硬化型インクジェットインクセットに用いられる各インクは、光開始剤、光重合性化合物、顔料を含有する。
【0028】
ブラックインク中の光重合性化合物としてはオキセタン化合物及びまたは脂環式エポキシ化合物と(メタ)アクリレート化合物とを併用する。更に好ましくは、ホワイトインク中の光重合性化合物としてもオキセタン化合物及びまたは脂環式エポキシ化合物と(メタ)アクリレート化合物とを併用する。
【0029】
オキセタン化合物としては公知のあらゆるものを用いることができ、例えば東亞合成株式会社製OXT221、OXT121、RSOX、HQOX、BPOX、OXT212、OXT101、OXT213などが挙げられるが、この限りではない。
【0030】
エポキシ化合物には、以下の芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシド等が挙げられる。
【0031】
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジ又はポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールA或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0032】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0033】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリン或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0034】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
(メタ)アクリレート化合物としては、公知のあらゆる(メタ)アクリレートモノマー及びまたはオリゴマーを用いることができる。
【0036】
例えば、イソアミルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、イソミルスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等の単官能モノマー、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の三官能以上の多官能モノマーが挙げられる。この他、重合性のオリゴマー類も、モノマー同様に配合可能である。重合性オリゴマーとしては、エポキシアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、芳香族ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、直鎖アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0037】
ブラックインク中の光重合性化合物の好ましい配合例としては、オキセタン化合物及びまたは脂環式エポキシ化合物を50〜90質量%、(メタ)アクリレート化合物を5〜40質量%である。
【0038】
本発明において、ブラックインクを除く3色以上のインクあるいはブラックインクを含む全インクは、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、フェノチアジン誘導体、チオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物を増感剤として含有する。これらを含有せしめることで、環境(温度、湿度)変化による吐出性・硬化性が安定化し、安定に高精細な画像を形成できる。
【0039】
本発明で用いることのできる多環芳香族化合物としては、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体が好ましい。置換基であるアルコキシ基としては、炭素数1〜18のものが好ましく、特に炭素数1〜8のものが好ましい。アラルキルオキシ基としては、炭素数7〜10のものが好ましく、特に炭素数7〜8のベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基が好ましい。具体例を挙げると、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−ステアリルオキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−ドデシルオキシナフタレン、4−メトキシ−1−ナフトール、グリシジル−1−ナフチルエーテル、2−(2−ナフトキシ)エチルビニルエーテル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,1’−チオビス(2−ナフトール)、1,1’−ビ−2−ナフトール、1,5−ナフチルジグリシジルエーテル、2,7−ジ(2−ビニルオキシエチル)ナフチルエーテル、4−メトキシ−1−ナフトール、ESN−175(新日鉄化学社製のエポキシ樹脂)またはそのシリーズ、ナフトール誘導体とホルマリンとの縮合体等のナフタレン誘導体、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9−メトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−エトキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジプロポキシアントラセン、9−イソプロポキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジベンジルオキシアントラセン、9−ベンジルオキシ−10−メチルアントラセン、9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2−tブチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、2,3−ジメチル−9,10−ジ−α−メチルベンジルオキシアントラセン、9−(α−メチルベンジルオキシ)−10−メチルアントラセン、9,10−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−エチル−9,10−ジ(2−カルボキシエトキシ)アントラセン等のアントラセン誘導体、1,4−ジメトキシクリセン、1,4−ジエトキシクリセン、1,4−ジプロポキシクリセン、1,4−ジベンジルオキシクリセン、1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等のクリセン誘導体、9−ヒドロキシフェナントレン、9,10−ジメトキシフェナントレン、9,10−ジエトキシフェナントレン等のフェナントレン誘導体などがある。これら誘導体の中でも、特に、炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有していても良い9,10−ジアルコキシアントラセン誘導体が好ましく、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0040】
カルバゾール誘導体としては次の化合物が例示される。N−メチルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、N−プロピルカルバゾール、N−ブチルカルバゾール、N−ビニルカルバゾール、1,3,6,8,9−ペンタメチルカルバゾール、1,4,5,8,9−ペンタメチルカルバゾール(以下、「NMPC」という。)、3−ホルミル−N−エチルカルバゾール、N−フェニルカルバゾール、N−エチル−3,6−ビス(ベンゾイル)−カルバゾール(以下、「NEBC」という。)、9,9’−ジエチル−3,3’−ジカルバゾール(以下、「NEDC」という)。
【0041】
フェノチアジン誘導体としては、例えば、2−メトキシフェノチアジン、2−クロロフェノチアジン、2−シアノフェノチアジン、2−アセチルフェノチアジン、2−トリフロロメチルフェノチアジン、2−メチルチオフェノチアジン、2−ジメチルアミノスルファニルフェノチアジン、などが挙げられる。
【0042】
チオキサントン誘導体としては、例えば、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン2−クロロチオキサントン等を挙げることができる。
【0043】
本発明において、光開始剤としては、「UV・EB硬化技術の応用と市場」(シーエムシー出版、田畑米穂監修/ラドテック研究会編集)などに掲載されているあらゆる公知の光酸発生剤、光ラジカル発生剤を用いることができる。
【0044】
ブラックインクあるいはホワイトインク中の光開始剤としては、ヨウドニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤を1〜10質量%含有し、光ラジカル発生剤を0〜1質量%含有(実質的に含有しない)することが好ましい。光ラジカル発生剤が存在すると(1質量%を超えると特に)、オニウム塩の光酸発生効率が乏しくなり、重合性化合物の反応性が著しく低下してしまい好ましくない。
【0045】
本発明のインクセットにおいて、吐出性・硬化性の面で特に好ましい例としては、全インクの光開始剤としては光照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩を含有し、ブラックインク以外の3色以上のインク中の光重合性化合物としては少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有する。本発明における「光照射によりベンゼンを発生しない」とは、実質的にベンゼンを発生しないことを指し、具体的には、インク組成物中にスルホニウム塩(光開始剤)を5質量%含有したインクを用いて厚さ15μm・約100m2の画像を印字し、インク膜面を30℃に保った状態で光酸発生剤が十分分解する量の活性光線を照射した際に発生するベンゼンの量が、5μg以下の極微量あるいは皆無であることを指す。該スルホニウム塩としては、S+と結合するベンゼン環に置換基をもつものであれば、上記条件を満たし、例えば以下のものが挙げられる。
【0046】
【化1】

【0047】
いずれも、X=PF6-
また、ビニルエーテル化合物としては、あらゆる公知のビニルエーテル化合物を用いてもよい。
【0048】
本発明で用いることのできるビニルエーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0049】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0050】
顔料の具体例として、例えば以下に挙げるものを用いることができるが本発明はこれらに限定されるものではない。
C.I.Pigment Yellow
1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,81,83,87,93,95,97,98,109,114,120,128,129,138,150,151,154,180,185
C.I.Pigment Red
5,7,12,22,38,48:1,48:2,48:4,49:1,53:1,57:1,63:1,101,112,122,123,144,146,168,184,185,202
C.I.Pigment Violet
19,23
C.I.Pigment Blue
1,2,3,15:1,15:2,15:3,15:4,18,22,27,29,60
C.I.Pigment Green
7,36
C.I.Pigment White
6,18,21
C.I.Pigment Black 7
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明基材での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装印刷、ラベル印刷においては、白インクを用いることが好ましい。
【0051】
顔料は必要に応じて種々の公知の表面処理を行ってもよい。
【0052】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、必要に応じて分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。
【0053】
分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる活性光線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0054】
本発明のインクにおいては、25℃における粘度が7〜50mPa・sであることが、硬化環境(温度・湿度)に関係なく吐出が安定し、良好な硬化性を得るために好ましい。
【0055】
本発明で用いることのできる記録材料としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録材料の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0056】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録材料によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録材料に良好な高精細な画像を形成できる。
【0057】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録材料のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録材料を使用する方が有利である。
【0058】
次に、本発明の画像形成方法について説明する。
【0059】
本発明の画像形成方法においては、上記のインクセットをインクジェット記録方式により記録材料上に吐出、描画し、次いで紫外線などの活性光線を照射してインクを硬化させる方法が好ましい。
【0060】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明では、記録材料上にインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが好ましい。スクリーン印刷分野の活性光線硬化型インクジェット記録では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録材料が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装印刷分野では、前述した記録材料のカール・皺の問題でだけでなく、印刷物全体のこし・質感が変わってしまうという問題が有るため、過剰な膜厚のインク吐出は好ましくない。
【0061】
尚、ここで「総インク膜厚」とは記録材料に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0062】
(インクの吐出条件)
インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを35〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性光線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0063】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。
【0064】
本来、高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなる。本発明によれば、インクの液滴量が2〜15plのような小液滴量で吐出を行っても吐出安定性は向上し、高精細画像が安定して形成出来る。
【0065】
(インク着弾後の光照射条件)
本発明の画像形成方法においては、活性光線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性光線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングが出来るだけ早いことが特に重要となる。
【0066】
活性光線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらの何れの照射方法も用いることが出来る。
【0067】
次いで、本発明のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0068】
以下、本発明の記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。尚、図面の記録装置はあくまでも本発明の記録装置の一態様であり、本発明の記録装置はこの図面に限定されない。
【0069】
図1は本発明の記録装置の要部の構成を示す正面図である。記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。この記録装置1は、記録材料Pの下にプラテン部5が設置されている。プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録材料Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0070】
記録材料Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行なう。
【0071】
ヘッドキャリッジ2は記録材料Pの上側に設置され、記録材料P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0072】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行なっているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0073】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性光線硬化型インク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録材料Pに向けて吐出する。記録ヘッド3により吐出されるUVインクは色材、重合性モノマー、開始剤等を含んで組成されており、紫外線の照射を受けることで開始剤が触媒として作用することに伴なうモノマーの架橋、重合反応によって硬化する性質を有する。
【0074】
記録ヘッド3は記録材料Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録材料Pの他端まで移動するという走査の間に、記録材料Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0075】
上記走査を適宜回数行ない、1領域の着弾可能領域に向けてUVインクの吐出を行なった後、搬送手段で記録材料Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行ないながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行なう。
【0076】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段及び搬送手段と連動して記録ヘッド3からUVインクを吐出することにより、記録材料P上にUVインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0077】
照射手段4は特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプ及び特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザー、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0078】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0079】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録材料Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0080】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録材料Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録材料Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にすると更に好ましい。
【0081】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプ又はフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0082】
本発明のインクは、非常に吐出安定性が優れており、ラインヘッドタイプの記録装置を用いて画像形成する場合に、特に有効である。
【0083】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0084】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色の記録ヘッド3を、記録材料Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0085】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側には、同じく記録材料Pの全幅をカバーするようにして、照射手段4が設けられている。
【0086】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2及び照射手段4は固定され、記録材料Pのみが、搬送されて、インク出射及び硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0087】
以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。
【0088】
《分散液Aの調製》
以下の組成で顔料を分散した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤) 9部
OXT−221(東亞合成社製) 71部
室温まで冷却した後これに下記顔料20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 10時間
顔料2:Pigment Blue 15:4
(山陽色素株式会社製、シアニンブルー4044) 6時間
顔料3:Pigment Yellow 150
(LANXESS社製、E4GN−GT CH20003) 10時間
顔料4:Pigment Red 122(大日精化社製、特注) 10時間
顔料5:酸化チタン(アナターゼ型:粒径0.2μm) 10時間
《分散液Bの調製》
以下の組成で顔料を分散した。以下2種の化合物をステンレスビーカーに入れ、65℃ホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解した。
PB822(味の素ファインテクノ社製分散剤) 9部
OXT−221(東亞合成社製) 71部
室温まで冷却した後これに下記顔料20部を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gと共にガラス瓶に入れ密栓し、ペイントシェーカーにて下記時間分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
顔料1:Pigment Black 7(三菱化学社製、#52) 10時間
顔料2:Pigment Blue 15:4
(大日精化社製、ブルーNo.32) 6時間
顔料3:Pigment Yellow 180(大日精化社製、特注) 10時間
顔料4:Pigment Red 19(大日精化社製、特注) 10時間
顔料5:酸化チタン(アナターゼ型:粒径0.2μ) 10時間
《インク組成物の調製》
表1及び表2に記載のインク組成1〜6でインクを作製し、ロキテクノ社製PP3μmディスクフィルターで濾過を行った。各インク粘度は表に示す通りである。尚、表中の各成分の数字は質量%である。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
【化2】

【0092】
表中、インクの記号は下記の通り。
【0093】
K:濃ブラックインク
C:濃シアンインク
M:濃マゼンタインク
Y:濃イエローインク
Lk:淡ブラックインク
Lc:淡シアンインク
Lm:淡マゼンタインク
Ly:淡イエローインク。
【0094】
《インクジェット画像形成方法》
ピエゾ型インクジェットノズルを備えた図1に記載の構成からなるインクジェット記録装置に、上記調製した各インク組成物セット1〜3を装填し、表3に記載の巾600mm、長さ500mの長尺の各記録材料へ、下記の画像記録を連続して行った。画像データとしては「高精細カラーデジタル標準画像データ『N5・自転車』(財団法人 日本規格協会 1995年12月発行)」を用いた。インク供給系は、インクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク、フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなり、前室タンクからヘッド部分まで断熱して50℃の加温を行った。ピエゾヘッドは、2〜15plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で吐出できるよう駆動して、各インクを連続吐出した。着弾した後、キャリッジ両脇のランプユニットにより瞬時(着弾後1秒未満)に硬化される。記録後、トータルインク膜厚を測定したところ、2.3〜13μmの範囲であった。本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。なお、インクジェット画像の形成は、上記方法に従って、10℃、20%RHの環境下、25℃、50%RHの環境下及び27℃、80%RHの環境下でそれぞれ行った。
【0095】
【表3】

【0096】
なお、表3に記載の各記録材料の略称の詳細は、以下の通りである。
【0097】
PET:polyethylene terephthalate
PVC:poly vinyl chloride
また、全く同様に図2に記載のラインヘッド記録方式のインクジェット記録装置を用い、インク組成物セット4〜6を用いて、画像を形成した。
【0098】
《インクジェット記録画像の評価》
上記画像形成方法で記録した各画像について、1m、100m出力時に下記の各評価を行った。
【0099】
(文字品質)
Y、M、C、K各色インクを用いて、目標濃度で6ポイントMS明朝体文字を印字し、文字のガサツキをルーペで拡大評価し、下記の基準に則り文字品質の評価を行った。
【0100】
◎:ガサツキなし
○:僅かにガサツキが見える
△:ガサツキが見えるが、文字として判別でき、ギリギリ使えるレベル
×:ガサツキがひどく、文字がかすれていて使えないレベル
(色混じり(滲み、皺))
720dpiで、Y、M、C、K各色1ドットが隣り合うように印字し、隣り合う各色ドットをルーペで拡大し、滲み具合を目視観察し、下記の基準に則り色混じりの評価を行った。
【0101】
◎:隣り合うドット形状が真円を保ち、滲みがない
○:隣り合うドット形状はほぼ真円を保ち、ほとんど滲みがない
△:隣り合うドットが少し滲んでいてドット形状が少しくずれているが、ギリギリ使えるレベル
×:隣り合うドットが滲んで混じりあっており、また、重なり部に皺の発生があり、使えないレベル
以上により得られた各評価結果を、表4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
本発明の構成は、印字環境に因らず、様々な記録材料に非常に安定に高精細な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
P 記録材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始剤、光重合性化合物、顔料を含有する活性光線硬化型インクジェットインクの4色以上からなる活性光線硬化型インクジェットインクセットにおいて、該活性光線硬化型インクジェットインクセットに含まれる活性光線硬化型インクジェットブラックインクは光重合性化合物としてオキセタン化合物及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリレート化合物とを併用し、更に、該活性光線硬化型インクジェットブラックインクを除く3色以上の活性光線硬化型インクジェットインク中あるいは該活性光線硬化型インクジェットブラックインクを含む全部の活性光線硬化型インクジェットインク中に330nmよりも長波長に紫外線スペクトル吸収を有する増感剤を含有することを特徴とする活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項2】
増感剤が、置換基として水酸基、置換されていてもよいアラルキルオキシ基またはアルコキシ基を少なくとも1つ有する多環芳香族化合物、カルバゾール誘導体、フェノチアジン誘導体、チオキサントン誘導体から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項3】
前記活性光線硬化型インクジェットブラックインク中の光開始剤としてヨウドニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤を1〜10質量%含有し、光ラジカル発生剤を0〜1質量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項4】
前記活性光線硬化型インクジェットインクセットが活性光線硬化型インクジェットホワイトインクを有する場合、該活性光線硬化型インクジェットホワイトインク中の光重合性化合物としてオキセタン化合物及び脂環式エポキシ化合物から選ばれる少なくとも1種と(メタ)アクリレート化合物とを併用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項5】
前記活性光線硬化型インクジェットホワイトインク中の光開始剤としてヨウドニウム塩またはスルホニウム塩などのオニウム塩光酸発生剤を1〜10質量%含有し、光ラジカル発生剤を0〜1質量%含有することを特徴とする請求項4に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項6】
光開始剤として光照射後にベンゼンを発生しないスルホニウム塩を含有し、活性光線硬化型インクジェットブラックインク及び活性光線硬化型インクジェットホワイトインク以外の3色以上の活性光線硬化型インクジェットインク中の光重合性化合物として、少なくとも1種のオキセタン環を有する化合物を30〜95質量%、少なくとも1種の脂環式エポキシ化合物を5〜70質量%、少なくとも1種のビニルエーテル化合物0〜40質量%とを含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項7】
各活性光線硬化型インクジェット色インクの25℃における粘度が7〜50mPa・sであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性光線硬化型インクジェットインクセット。
【請求項8】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットの活性光線硬化型インクジェットインクを記録材料上に噴射し、該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾した後、0.001〜1.0秒の間に活性光線を照射することを特徴とする画像形成方法。
【請求項9】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該活性光線硬化型インクジェットインクが着弾し、活性光線を照射して硬化した後の総活性光線硬化型インクジェットインク膜厚が、2〜20μmであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、該インクジェット記録ヘッドの各ノズルより吐出する活性光線硬化型インクジェットインク液滴量が、2〜15plであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
インクジェット記録ヘッドより、請求項1〜7のいずれかに記載の活性光線硬化型インクジェットインクセットを記録材料上に噴射して該記録材料上に印刷を行う画像形成方法であって、ラインヘッド方式の記録ヘッドより噴射して画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法に用いられるインクジェット記録装置であって、活性光線硬化型インクジェットインク及び記録ヘッドを35〜100℃に加熱した後、吐出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−232889(P2006−232889A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−45842(P2005−45842)
【出願日】平成17年2月22日(2005.2.22)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】